説明

プリントヘッドおよび画像形成装置

【課題】 機体内のトナー等の粉塵やほこりの基板や封止材にガラスへの付着を防止することにより、露光量の低下や、濃度不足、濃度むら等の不良画像発生要因を排除して、安定した露光量が得られ、かつ濃度むらが発生しにくいプリントヘッドおよびそのプリントヘッドを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】 有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた光源を有し、前記光源からの光が放出される側の基板外面に帯電防止部材を含有する層を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子)を光源としたプリントヘッドおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL素子を光源として使用したプリントヘッド及び、それを適用した画像形成装置が開発されている。
【0003】
しかし、上述したプリントヘッドには、発光素子から光を取り出すために、基板や封止材にガラスや樹脂等の透明部材が用いられており、画像形成装置に適用した際、機体内のトナー等の粉塵やほこりが透明部材であるガラス基板や封止材に付着し、光路を妨げ露光量の低下を招き、濃度不足や濃度むら等の不良画像を発生させるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−214252公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、機体内のトナー等の粉塵やほこりの付着を防止し安定した露光量が得られ、濃度むらが発生しにくいプリントヘッドおよびそのプリントヘッドを備えた画像形成装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するために、本発明によるプリントヘッドは、有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた光源を有し、前記光源からの光が放出される側の基板外面に帯電防止部材を含有する層を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施の形態にかかる画像形成装置の画像形成部の構成を示すブロック図。
【図2】本実施の形態にかかるプリントヘッド全体を示す外観斜視図。
【図3】本実施の形態にかかるプリントヘッドの断面図。
【図4】下面発光型の有機EL素子を使用したプリントヘッドの発光部の断面図。
【図5】有機EL素子を直線状に配置した基板の上面図。
【図6】有機EL素子を千鳥状に配置した基板の上面図。
【図7】上面発光型の有機EL素子を使用したプリントヘッドの発光部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本実施の形態)
以下、本発明の実施の形態について図1乃至図7を参照して説明する。
【0009】
図1は、本発明の実施形態を画像形成装置に応用した場合の画像形成部の図である。画像形成部は回転する搬送ローラ対1に支持、張架されたベルト状の転写媒体2、プリントヘッド3、現像位置にトナーを供給する現像ローラ4、プリントヘッド3から照射される光と現像ローラ4から供給されるトナーとによって表面に画像が形成される感光体ドラム5、感光体ドラム5に電荷を与える帯電チャージャー6、転写媒体に画像を転写させる転写ローラ7、不要なトナーを除去するクリーナ8を備える。
【0010】
図1には、上記説明の画像形成部のユニットが4セット設けてある。これは、カラーの画像(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)を形成するために、それぞれの色に対応して設けてある。従って、1組のユニットについてのみ説明した。
【0011】
図2は、図1に示すプリントヘッド3の外観斜視図である。このプリントヘッド3は発光部(有機EL素子)が格納されたホルダ9と発光部からの光を通すレンズアレイ10を備える。
【0012】
図3は、図2に示すプリントヘッド3の断面図を示したものである。ホルダ9と、正立等倍結像のロッドレンズアレイ10を備えており、ホルダ9内には発光部11が保持収納され、さらにホルダ9を覆う蓋12を備える。このロッドレンズアレイ10は、発光部11と所定の距離を保持した状態で、ホルダ9に固定されている。また、発光部11からの光路を確保するため空間13を設けてある。さらに、ホルダ9は前記画像形成装置内に、ロッドレンズアレイ10と感光体ドラム4との距離が所定の距離となるように固定される。また、発光部11は基板14、薄膜トランジスタ(以下TFT)15、陽極16、発光層17、陰極18を備える。
【0013】
図4は、本発明の実施の形態の下面発光型のプリントヘッドの発光部11の一例を示した図である。このプリントヘッドの発光部はガラスもしくは樹脂性の基板14上にTFT15を介して、陽極16、発光層17、陰極18、および、前記陽極16と発光層17と陰極18とを封止する封止基板19で構成される。この陽極16、発光層17および陰極18により図5に示す発光素子(以下「有機EL素子」)ひとつひとつが構成されている。また、光の放出面となる基板14の下面(図3においては上面に相当)に帯電防止部材で構成された帯電防止層20を備える。この帯電防止層はたとえばグリセリン脂肪酸エステルのような界面活性剤を添加したシリコン樹脂やフッ素樹脂などをコーティングしてコーティング層を設けたものである。また、界面活性剤を添加したPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂等からなる帯電防止フィルムを、透明性を保ちながら一様に隙間なく接着可能なアクリル系粘着剤等を用いて基板に貼り付けてもよい。このようなプリントヘッドの発光部11からの光の放出する方向を破線ブロック矢印で表わす。この下面発光型では、陰極を水濡れから防ぐためのゲッター剤を用いることが可能であり、設計が容易である。
【0014】
以下、図4に示すプリントヘッドの有機EL素子の発光のメカニズムについて説明する。
【0015】
発光源となる有機EL素子はITO(インジウムスズ酸化物)などの透明な金属薄膜である陽極16、発光層17、アルミニウムや銀・マグネシウム合金、カルシウム等の金属薄膜である陰極18で構成される。この図に示すように、正孔を注入する電極である陽極16と、電子を注入する電極である陰極18と、さらに陽極16と陰極18との間には、有機物質からなる発光層17が挟まれている。陽極16を正極(+極)として、陰極18を負極(−極)として直流電圧又は直流電流を印加すると、発光層17には、陽極16から正孔が注入されるとともに陰極18からは電子が注入される。発光層17では、注入された正孔と電子との再結合によって生成された励起子が励起状態から基底状態へ移行する際に発光現象が起こる。この陽極16は透明な金属薄膜であるため、発光した光と、陰極18から反射された光が、陽極16、基板14および帯電防止層20を透過して放射される。
【0016】
TFT15は、スイッチング素子としてのトランジスタである。このTFT15は、陽極16、発光層17、陰極18からなる一つの有機EL素子21(図5参照)に対して複数個付属させることが多く、発光輝度を制御する。また、前記帯電防止部材は帯電防止層20表面の表面抵抗を10^6乃至10^14Ω/sqとすることで、埃や塵の付着を防止する。
【0017】
空中に漂っているごみ、あるいは埃や塵は、正か負いずれかの静電気を帯びている。そのため、正に帯電している埃や塵は、負に帯電している物質に引き付けられ、その逆の場合もある。大気中には、正や負に帯電している埃や塵が無数にあるため、帯電したあらゆる物質に付着する。
【0018】
ガラスや樹脂等は絶縁体であるため、その表面に帯電した電荷をアース、グランド等の接地によって放電させて電位を取り除くことができない。従って、ガラスや樹脂に導体である金属を接触させ接地したところで、ガラスや樹脂に帯電した電荷を逃がすことが出来ない。
【0019】
従って、ガラスや樹脂等の絶縁物は、帯電しないように加工・処理することが必要であり、この実施形態では、上述したように表面に帯電防止層20を設けて帯電を防止する。
【0020】
図5は、発光部に有機EL素子を使用したプリントヘッドの基板14の上面図(光の放射側から見た図)であり、基板14上に陽極16、発光層17、陰極18からなる有機EL素子21が配置されている。ここで例えば、主走査方向の解像度が1200dpiのA3サイズの画像形成に対応したヘッドならば、有機EL素子21をおよそ21μm(=25.4mm/1200)間隔で、一直線上に、合計15,360個配設する。図1、図2、およびこの図に示すように有機ELを発光源として用いるヘッドは、ポリゴンモーターを擁するレーザースキャニングユニットのような可動部を必要とせず、またヘッド基板上に高精細で配置した発光素子像を感光体上に正立等倍で像形成可能なロッドレンズアレイを使用しているので、小型化・薄型化を図ることができる。
【0021】
また、より高い解像度を確保したい場合は、図6に示すように有機EL素子21を二列にし、千鳥状に配設するとよい。千鳥状に配設した場合には、解像度を2倍に向上させることができる。また、解像度はそのままで、発光素子の面積を大きくすることも可能であるため、印加する電流を大きくし、発光光量を大きくすることができる。
【0022】
また、この実施形態では図7に示すように上面発光型の有機EL素子を使用したプリントヘッドを構成することも可能である。同図において、発光層17から発した光は破線ブロック矢印で示す方向に、陰極18を通過し、ガラスや樹脂等で形成された透明な封止基板19を透過し、かつ帯電防止層20を介して素子外部に出てくる。なお、この陰極18には下面発光型では通常は陽極に用いられる透明な薄膜であるITOが用いられるが、ITOの界面にマグネシウムやリチウムの薄い膜を付けて、電子の注入の能率を上げて陰極として用いる。また、この場合も素子外部と接する封止基板に帯電している塵や埃が付着すると光量の低下やむらが発生するので、封止基板19の表面に帯電防止措置(帯電防止層20)をとることが必要である。
【0023】
図4に示した下面発光型のプリントヘッドの場合には、発光部からの光はTFT16を介するため、開口率が制限され、高精細化を図れない。しかしながら、この上面発光型はTFT15を介すことがないので、高い開口率を得ることが可能である。したがって高精細化を図ることが可能である。この場合にも、帯電防止部材の帯電防止層20を封止基板19の外表面に設けることにより、トナー等の付着を防止できる。
【0024】
以上、示すような構成をとることで機体内のトナー等の粉塵やほこりの付着を防止し安定した露光量が得られ、濃度むらが発生しにくいプリントヘッドおよびそのプリントヘッドを備えた画像形成装置の提供が可能となる。また、帯電防止層を施す基板もしくは封止部材はいずれも平面であるため、光学特性に歪が起こりにくい。したがって、他のプリントヘッドと比較しても光学むらの発生を防止することが可能となる。また、発光効率が向上するので消費電力の低減を図ることが可能にもなる。
【0025】
以上のようにして、本実施の形態によれば、小型で駆動電力の少ない有機ELヘッドを用い、かつ埃や塵などの付着による画質劣化がない画像形成装置を提供することが可能となる。
【0026】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0027】
1…搬送ローラ
2…転写ベルト
3…プリントヘッド
4…現像ローラ
5…感光ドラム
6…現像ローラ
7…転写ローラ
8…クリーナ
14…基板
15…TFT
16…陽極
17…発光層
18…陰極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を介して光を放出する有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた光源と、
前記光源からの光が放出される前記基板外面に形成された帯電防止部材を含有する層とを備えることを特徴とするプリントヘッド。
【請求項2】
前記帯電防止部材を含有する層は、コーティング層であることを特徴とする請求項1に記載のプリントヘッド。
【請求項3】
前記帯電防止部材の表面抵抗は、10^6乃至10^14Ω/sqであることを特徴とする請求項1に記載のプリントヘッド。
【請求項4】
前記基板は、光を透過するガラス基板であることを特徴とする請求項1に記載のプリントヘッド。
【請求項5】
前記基板は、光を透過する樹脂製基板であることを特徴とする請求項1に記載のプリントヘッド。
【請求項6】
基板を介して光を放出する有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた光源および光源からの光が放出される基板外面に帯電防止部材を含有する層を備えるプリントヘッドを備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−183802(P2011−183802A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46654(P2011−46654)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】