説明

プリント基板のハンダ付け方法

【課題】 プリント基板上のハンダの有無を容易に識別することができるプリント基板のハンダ付け方法を提供する。
【解決手段】 糸ハンダをハンダゴテで溶融してプリント基板にハンダ付けする方法において、アルコール系溶剤に溶かした染料で、溶融する前の糸ハンダの表面を着色してから、プリント基板にハンダ付けし、ハンダ付け後のハンダの表面にフラックスとともに染料を拡散させてハンダの表面を着色するようにした方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路等に用いられるプリント基板のハンダ付け方法に関し、特に糸ハンダでプリント基板にハンダ付けをする方法において、プリント基板上のハンダの有無を容易に識別することができるハンダ付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糸ハンダをハンダゴテで溶融してプリント基板にハンダ付けする方法については、たとえば、特許文献1がある。
特許文献1の技術では、ハンダ付けロボットにおけるハンダ送り装置を提案している。この種のハンダ付けロボットは、糸ハンダを送るためのハンダ送りローラがあり、このハンダ送りローラで糸ハンダをロールから引き出し、またハンダゴテに向かって送り出す作用をさせて、ハンダゴテで順次、ハンダ付けを行っていた。
【特許文献1】実開昭62−146570号公報
【特許文献2】特開平7−323391号公報
【特許文献3】特開2002−293618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の考案においては、次の問題があった。
ハンダ付け後に、ハンダ不良箇所がないか、未ハンダ部がないかをチェックする必要があるが、プリント基板のプリントパターン部分の色がハンダの色と似ていることがあり、目視によるチェックが困難であった。それゆえ、ハンダ付けチェックに見落としが出て不良品の原因になったり、作業性が悪いという問題があった。
そこで、着色粉末化合物として、希土類化合物又はフッ化金属化合物をフラックス中に混合してハンダ材料を作り、このハンダ材料を用いてプリント配線板にハンダ付けを行い、ハンダ付け部の検査を容易にした方法が知られている(特許文献2参照。)
しかしながら、この方法では着色粉末化合物として、希土類化合物又はフッ化金属化合物をフラックス中に混合してハンダ材料を作る必要があり、コストアップの原因となる。
特に近年では、有害物質である鉛を含まない、所謂、鉛レスハンダが用いられるようになってきており(特許文献3)、鉛レスハンダにこれらの着色粉末化合物を混合した場合の接合度の低下も考えなければならない。
【0004】
本発明は、上記課題を解決し、プリント基板上のハンダの有無を容易に識別することができるプリント基板のハンダ付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、糸ハンダをハンダゴテで溶融してプリント基板にハンダ付けする方法において、アルコール系溶剤に溶かした染料で、溶融する前の糸ハンダの表面を着色してから、プリント基板にハンダ付けし、ハンダ付け後のハンダの表面にフラックスとともに染料を拡散させてハンダの表面を着色するようにしたことにある。
また、本発明は、前記プリント基板の回路に対応して、該プリント基板の円周方向に沿って一定間隔で取付穴を形成し、ステータに設けられたインシュレータの周縁部に沿って立設された複数の導体に、前記プリント基板の取付穴を介して組み付け、前記導体を前記プリント基板の回路に前記着色したハンダでハンダ付けをすることにある。
【発明の効果】
【0006】
請求項1によれば、ハンダ付け後に、プリント基板上のハンダの有無を容易に識別することができる。本発明のハンダ付け方法によれば、簡便な方法によってハンダ付け表面を任意の色に着色できるため、ハンダ付けの目視チェックが容易になるという効果を奏する。
本発明によれば、ハンダの表面を任意の色に着色することが可能であるが、染料はフラックスと共にハンダの外表面にだけ付着するので、ハンダ合金自体に混ざることはなく、したがってハンダ合金としての品質を低下させることはない。
本発明は、特許文献1のようなハンダ付け装置において実施することが可能であるだけでなく、手作業でのハンダ付けにおいても実施可能である。
請求項2によれば、多数のハンダ付けの箇所がある場合にも、容易に未ハンダ部分を識別することができるので、不良品の発生を未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、モータのステータに組みつけられたプリント基板の回路に適用した図示の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0008】
図1は、モータのステータに取付けられたプリント基板をハンダ付けした状態を示す斜視図、図2は図1のプリント基板を外した状態のステータを示す斜視図、図3は図1のプリント基板のハンダ付け部分を示す断面図である。
【0009】
図1ないし図3において、1は5相10極のステータを構成するモータのステータコアであり、ステータコア1の内周側には、円周方向に所定間隔で、中心方向に向けて放射状に10個の突極部1aが設けられている。ステータコア1のスロットには、両側から絶縁体としてのインシュレータ2,3が嵌入されて前記突極部1aの周囲を絶縁しており、前記インシュレータ2,3を介して突極1aには巻線4がそれぞれ巻装されている。
各巻線4は、突極部1aに対応してインシュレータ2に立設されている中継ピン5に端末4aが巻き付けられている。
【0010】
10は前記中継ピン5に組みつけられた環状のプリント基板で、このプリント基板10は、図4に示すように、板面11に、モータを制御するプリント回路12が設けられ、プリント回路以外の部分は絶縁膜13で覆われている。プリント基板10には、周縁に沿ってプリント回路12に対応する位置に一定間隔で孔14が形成されており、この孔14に、インシュレータ2,3に立設されている中継ピン5を挿通してインシュレータ2に組み付けられている。孔14の周囲の絶縁膜13は剥がされており、この絶縁膜13が剥がされた部分12Aと中継ピン5を、鉛レスハンダを用いてハンダ付けすることにより中継ピン5を前記プリント基板10に固着している。
【0011】
ハンダ付けは、図示しない、ハンダ付けロボットにより、ハンダコテを用いて、鉛レスハンダを線状に形成した糸ハンダを溶融し、プリント基板10に中継ピン5を順次ハンダ付けしている。糸ハンダは、アルコール系溶剤に溶かした、例えば赤色等の染料によって、予め着色されており、この糸ハンダに付着した染料はハンダ合金に含有されたフラックスとともに合金の表面を覆う。
糸ハンダをアルコール系溶剤に溶かした染料で着色するには、各種の方法があり、糸ハンダを予めアルコール系溶剤に溶かした染料の中を通過させて着色しても良く、または、糸ハンダにブラシまたは刷毛等を用いて着色しても良い。あるいは、糸ハンダをハンダ付け作業の過程で順次、アルコール系溶剤に溶かした染料で着色しながらハンダ付けを行うこともできる。
こうして、着色された糸ハンダを用いて順次、プリント基板10に中継ピン5をハンダ付けすると、図5に示すように、ハンダ付け部分15が染料によって着色されたように見え、プリント基板10のプリントパターン部分の色と識別されるので、ハンダの有無の確認が容易になる。
【0012】
上記実施の形態によれば、ハンダ付け後に、プリント基板10上のハンダの有無を容易に識別することができる。本発明のハンダ付け方法によれば、簡便な方法によってハンダ付け表面を任意の色に着色できるため、ハンダ付けの目視チェックが容易になるという効果を奏する。
また、ハンダの表面を任意の色に着色することが可能であるが、染料はフラックスと共にハンダの外表面にだけ付着するので、ハンダ合金自体に混ざることはなく、したがってハンダ合金としての品質を低下させることはない。
本発明は、特許文献1のようなハンダ付け装置において実施することが可能であるだけでなく、手作業でのハンダ付けにおいても実施可能である。
さらに、多数のハンダ付けの箇所がある場合にも、容易に未ハンダ部分を識別することができるので、不良品の発生を未然に防止することができる。
【0013】
なお、本発明は、上記実施の形態のみに限定されるものではなく、例えば、上記糸ハンダに着色する色は、赤に限らず、黄色、青など回路基板と明確に識別できる色であれば他の色でもよい。また、上記実施の形態ではモータのステータに取付ける回路基板に本発明の方法を適用したが、回路基板を取付ける部分であれば、どのような箇所にも応用することができる。さらに、上記実施の形態では、巻線4の端末4aは、インシュレータ2に立設されている中継ピン5に巻き付けたが、図6に示すように巻線4の端末4aをそのまま、プリント基板10の孔14を通して引き出し、巻線4の端末4a自体をハンダ付けすることもできる。これによって中継ピン5を省略することができるなど、その他、本発明を変更しない範囲内で適宜変更して実施し得ることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のプリント基板のハンダ付け方法を説明するモータのステータに取付けられたプリント基板をハンダ付けした状態を示す斜視図である。
【図2】図1のプリント基板を外した状態のステータを示す斜視図である。
【図3】図1のプリント基板のハンダ付け部分を示す断面図である。
【図4】ハンダ付け前のプリント基板を示す部分拡大図である。
【図5】ハンダ付け後のプリント基板を示す部分拡大図である。
【図6】本発明のプリント基板のハンダ付け方法を説明する図1の中継ピンを省略した実施の形態を示す概念図である。
【符号の説明】
【0015】
1 ステータコア
2,3 インシュレータ
4 巻線
4a 端末部
5 中継ピン
10 プリント基板
12 プリント回路
13 絶縁膜
14 孔
15 ハンダ付け部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸ハンダをハンダゴテで溶融してプリント基板にハンダ付けする方法において、アルコール系溶剤に溶かした染料で、溶融する前の糸ハンダの表面を着色してから、プリント基板にハンダ付けし、ハンダ付け後のハンダの表面にフラックスとともに染料を拡散させてハンダの表面を着色するようにしたことを特徴とするプリント基板のハンダ付け方法。
【請求項2】
前記プリント基板の回路に対応して、該プリント基板の円周方向に沿って一定間隔で取付穴を形成し、ステータに設けられたインシュレータの周縁部に沿って立設された複数の導体に、前記プリント基板の取付穴を介して組み付け、前記導体を前記プリント基板の回路に前記着色したハンダでハンダ付けをすることを特徴とする請求項1に記載のプリント基板のハンダ付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−300761(P2008−300761A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−147850(P2007−147850)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(000103792)オリエンタルモーター株式会社 (150)
【Fターム(参考)】