説明

プリント基板

【課題】RFIDタグをプリント基板上面の端部に設置する場合、クリアランスとして確保しなければならない領域を減らし、下層の配線層も周辺部まで配線パターンの形成ができるRFIDタグ構成を提供すること。
【解決手段】プリント基板の表裏に形成された配線パターンと表裏を連結するスルーホール配線とをメアンダ状に繋げて形成した放射素子と、ICチップと、からなるICタグ部位を備えたことを特徴とするプリント基板、あるいは前記ICタグ部位の放射素子は、前記プリント基板に形成されたグランドパターン又は電源パターンと接続されていることを特徴とするプリント基板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリント基板に係わり、特にはRFIDタグを備えるプリント基板に関する。
【背景技術】
【0002】
RFIDタグを利用してプリント基板の識別を行うために、一般にはRFIDタグに必要なアンテナパターンをプリント基板上に形成し、アンテナの給電部分にRFIDチップ又はモジュールを実装する方法や、既にRFIDタグ化されたラベルをプリント基板に装着する等の手段が採用される。しかしながら、プリント基板の不正流通防止の観点からは、RFIDタグは外付けする後者よりもプリント基板に一体成形されている前者の形態が好ましい。
【0003】
上記いずれにおいても、RFIDタグ(以下、単にICタグあるいはタグとも記す)が使用する電波の周波数によって必要とするアンテナの形状が大きく異なる。例えば、13.6MHz以下の周波数で交信するICタグにはスパイラル状のループアンテナを、800MHz以上の周波数に対してはダイポール又は単一のループアンテナが望ましい。
【0004】
プリント基板の製造履歴等の管理に供されるICタグに対しては、アンテナ形状が後者のものもしくはその変形したものをプリント基板に作りこむタイプが主で、幾つかの例が特許文献1あるいは非特許文献1に開示されている。
【0005】
これらの記載によれば、図7に示すように所定形状のアンテナ13,14をプリント基板上の隅や周辺部の所定位置に形成し、対抗するように形成してあるアンテナ端部(給電点7)に、CPU、メモリー、フィルターなどから構成されるRFID用ICをベアチップの状態で搭載したり接続したりしている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許5995006号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】EE Times Japan、65−70ページ、3月号、2008年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の先行技術は全てプリント基板上にアンテナを平面的に形成するものであって、ダイポールアンテナ13を基板周辺部に形成した場合(図7参照)、同一層内に形成されたの他の配線パターンあるいは電源・グラウンド等のパターン(図示せず)との間に一定のクリアランス5を設けなくてはならず、さらに下層の配線層でダイポールアンテナ13の下部部分には配線パターンを形成できない領域が生じる。だから、プリント基板上の配線パターンが形成可能な領域が減るという問題がある。
【0009】
ループアンテナ14とする場合にも、ループ回路の内側及びその周辺で、それより下層の配線層にも配線パターンは形成できず、配線可能領域として有効に活用できないという問題がある。
【0010】
そこで本発明は、プリント基板上面のクリアランスとして確保しなければならない領域
とアンテナが基板上で占める面積を減らし、同時に下層配線層も周辺部まで配線パターンの形成ができるRFIDタグ構成を備えるプリント基板を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するための請求項1に係る発明は、プリント基板の表裏に形成された配線パターンと表裏を連結するスルーホール配線とをメアンダ状に繋げて形成した放射素子と、ICチップと、からなるICタグ部位を備えたことを特徴とするプリント基板としたものである。
【0012】
請求項2に係る発明は、プリント基板の表裏に形成された配線パターンと表裏を連結する前記プリント基板の側面に形成された配線パターンをメアンダ状に繋げて形成した放射素子と、ICチップと、からなるICタグ部位を備えたことを特徴とするプリント基板としたものである。
【0013】
かかる構成にあっては、放射素子面(以下、アンテナとも記す)がプリント基板面に対し垂直に形成されるので、プリント基板上でアンテナが占有する面積が小さくなる。
また、アンテナ面とグラウンド配線等が互いに垂直な位置関係にあるので、平行な場合に比べて浮遊容量が減少する。
【0014】
請求項3に係る発明は、前記ICタグ部位の放射素子は、前記プリント基板に形成されたグランドパターン又は電源パターンと接続されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプリント基板としたものである。
【0015】
かかる構成では、プリント基板に通常備わる配線をアンテナの放射素子として機能させたものである。メアンダ部分を更に小さくできる。
【0016】
請求項4に係る発明は、前記ICタグ部位は、プリント基板の表裏に形成された配線パターンと表裏を連結するスルーホール配線をメアンダ状に繋げて形成した閉ループ回路をICチップとのインピーダンス整合用回路として備えることを特徴とする請求子1から請求項3のいずれか1項に記載のプリント基板としたものである。
【0017】
かかる構成であると、閉ループ回路がプリント基板面に対し垂直に形成されるので、プリント基板上でループ回路が占有する面積が小さくなる。また、ループ回路面とグラウンド配線等が互いに垂直な位置関係にあるので、平行に配置した場合に比べて浮遊容量が減少する。
【0018】
請求項5に係る発明は、前記インピダンス整合用の閉ループ回路は、前記プリント基板に形成されたグランドパターン又は電源パターンと接続されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプリント基板としたものである。
【0019】
かかる構成であると、アンテナの放射素子が不要となるため、基板上にICタグが占有する面積を大幅に減らすことができる。本構成では、請求項1〜4に示したような専用の放射素子と組み合わせた場合よりも通信距離は少なくなるが、ループアンテナ単体をICタグとして用いるよりも長い通信距離を期待することができる。
【0020】
請求項6に係る発明は前記放射素子と前記プリント基板に形成された配線用パターンの間に設けられたクリアランス部分に長穴加工を施したことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のプリント基板、としたものである。
【0021】
かかる構成では、プリント基板の配線パターンとアンテナ間の電気的な結合を低減させ
ることができるので、クリアランスを更に狭くすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、スルーホール又はプリント基板の側壁を利用してICタグに必要なアンテナをメアンダ状に形成してプリント基板の厚さ方向に収容できる。
その際に、更にプリント基板に元来存在する配線パターンを放射素子として利用し、あるいはインピダンス整合回路を導入することで、電波の送受信効率とS/N比が良好なICタグとすることができる。したがって、良好なをRFIDタグ部位を備えるプリント基板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】プリント基板における本発明になるICタグアンテナ構成の一例を説明する斜視図。スルーホール形成の場合。
【図2】プリント基板における本発明になるICタグアンテナ構成の一例を説明する斜視図。プリント基板側面を利用する場合。
【図3】プリント基板における本発明になるICタグアンテナ構成の一例を説明する斜視図。プリント基板上の配線を利用する場合。
【図4】プリント基板における本発明になるICタグアンテナ構成の一例を説明する斜視図。(a)閉ループ回路を形成し物理的に接続している場合。(b)閉ループ回路を形成し物理的に接続していない場合。
【図5】プリント基板における本発明になるICタグアンテナ構成の一例を説明する斜視図。閉ループ回路とグラウンド配線又は電源と接続している場合。
【図6】プリント基板における本発明になるICタグアンテナ構成の一例を説明する斜視図。クリアランス部分に長穴加工を施した場合。
【図7】プリント基板における従来型のICタグアンテナと配線パターンの位置関係を説明する上面視の図。(a)ダイポールアンテナ、(b)ループアンテナ。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明になるICタグ部位を備えるプリント基板の、当該ICタグ周囲の構成を請求項ごとに図面を用いて説明する。
【0025】
請求項1に係る発明の実施形態の一例を図1に示す。放射素子2は基板の厚さ方向に形成されたスルホール3をメアンダ状に折りたたんで構成される。また、メアンダ配線上には給電点7が形成されICチップと接続する。ICタグの放射素子2はアンテナとしての放射特性が影響を受けないように基板上の配線パターン1との間に10mm程度を目安に配線を形成しない領域、クリアランス5を設ける。メアンダ配線を基板面上に形成するより、本発明のように縦に形成した方が、配線パターンを形成できる面積が増える。
【0026】
請求項2の実施形態を図2に示す。請求項1のスルーホールをエッチング及びルータ加工で基板の側面に形成した配線パターン8に置き換えたものである。メアンダ形状の放射素子は側面形成とスルーホールを併用することもできる。
【0027】
請求項3の発明に係る実施形態の例を図3に示す。これは図1の放射素子2の両端を配線用パターン1と物理的に接続するもので、放射素子をループアンテナ化したものである。放射素子2と配線パターン1は物理的に接続されているが、電磁的結合又は静電容量結合によって電気的に接続されたものでも構わない。
【0028】
請求項4の発明に係る実施形態の例を図4に示す。ICタグのアンテナには放射素子2の他にインピーダンス整合用として給電点7を含む閉ループ回路10が付加されたものである。図4(a)は閉ループ回路10を基板の厚さ方向に物理的に接続して付加した例で
あり、図4(b)は静電容量結合又は電磁的結合をするように付加形成した場合である。
【0029】
請求項5の発明に係る実施形態の例を図5に示す。これはインピーダンス整合用閉ループ回路10とプリント基板のグラウンド又は電源パターン11とを電気的に接続したものである。図5では閉ループ回路10と上記配線パターン11が物理的に接続しているが、静電容量結合又は電磁的結合をするように付加形成しても構わない。
【0030】
請求項6の発明に係る実施形態の例を図6に示す。これは放射素子2とプリント基板の配線パターン1間のクリアランス部分に長穴加工を施した場合である。長穴12を形成することにより、放射素子2と配線パターン1間の静電結合量を減らすことができ、その分クリアランスを狭くできる。
また、配線パターン1が形成された面とインピーダンス整合用の閉ループ回路10が互いに直交する位置関係となるため、配線パターンと閉ループ回路の電磁的結合が生じないのでアンテナとしての性能低下がない。
【符号の説明】
【0031】
1、配線パターン(基板上)
2、放射素子
3、スルーホール(メアンダ状に接続)
4、創出された配線スペース
5、クリアランス
6、絶縁体
7、給電点
8、基板側面の配線パターン
9、配線パターンと接続する放射素子
10、閉ループ回路
11、グラウンド配線又は電源配線
12、長穴
13、ダイポールアンテナ
14、ループアンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板の表裏に形成された配線パターンと表裏を連結するスルーホール配線とをメアンダ状に繋げて形成した放射素子と、ICチップと、からなるICタグ部位を備えたことを特徴とするプリント基板。
【請求項2】
プリント基板の表裏に形成された配線パターンと表裏を連結する前記プリント基板の側面に形成された配線パターンをメアンダ状に繋げて形成した放射素子と、ICチップと、からなるICタグ部位を備えたことを特徴とするプリント基板。
【請求項3】
前記ICタグ部位の放射素子は、前記プリント基板に形成されたグランドパターン又は電源パターンと接続されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプリント基板。
【請求項4】
前記ICタグ部位は、プリント基板の表裏に形成された配線パターンと表裏を連結するスルーホール配線をメアンダ状に繋げて形成した閉ループ回路をICチップとのインピーダンス整合用回路として備えることを特徴とする請求子1から請求項3のいずれか1項に記載のプリント基板。
【請求項5】
前記インピダンス整合用の閉ループ回路は、前記プリント基板に形成されたグランドパターン又は電源パターンと接続されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプリント基板。
【請求項6】
前記放射素子と前記プリント基板に形成された配線用パターンの間に設けられたクリアランス部分に長穴加工を施したことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のプリント基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−29563(P2011−29563A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176589(P2009−176589)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】