説明

プリント基板

【課題】はんだ上がり性を向上させることができ、且つ、電解コンデンサのような熱容量の大きな部品にも対応可能なプリント基板を提供する。
【解決手段】本プリント基板1は、挿入実装部品がフローはんだ付けされるものであって、挿入実装部品、例えば、アルミ電解コンデンサの陰極側のリード端子3が挿入される部品スルーホール5と、部品スルーホール5に近接する位置に形成された受熱スルーホール8とを備える。受熱スルーホール8は、上記リード端子3には挿入されず、例えば、部品スルーホール5の周囲を取り囲むように等間隔に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、挿入実装部品のリード端子がスルーホールに通された状態でフローはんだ付けされるプリント基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アキシャル部品やラジアル部品といった挿入実装部品をプリント配線板に固定する場合、プリント配線板に形成されたスルーホールに挿入実装部品のリード端子を挿入し、はんだ付けを行う。
【0003】
近年、RoHS指令に適応するため、鉛フリーはんだが多く用いられるようになっている。しかし、鉛フリーはんだは、従来から使用されている共晶はんだと比較して、融点が高い・濡れ性が悪いといった欠点がある。このため、大型の電解コンデンサのような熱容量の大きな部品については、リード端子の温度が十分に上がらずにはんだが馴染み難いため、基板表面のはんだ付けランドまではんだが十分に行き届かず、はんだ上がり不良が発生することがあった。なお、はんだ上がり不良が発生すると、はんだ付けの接合強度が小さくなり、はんだ品質(接合品質等)の信頼性が低下してしまう。
【0004】
これに対し、下記引用文献1には、挿入実装部品のリード端子を通すスルーホール形状(開口形状)を変えることにより、はんだの濡れ上がり性を向上させたプリント基板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−27031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のものでは、スルーホールの開口形状(平面形状)を、円の両側を半円状或いは三日月状に更に広げたように構成し、スルーホール内に供給されたはんだの溶融状態を長く保持させている。しかし、このようなスルーホール形状では、スルーホール自体によって挿入実装部品を保持することができず、実装時に挿入実装部品が倒れてしまう恐れがあった。なお、挿入実装部品の転倒・傾倒を防止するためには、半円状或いは三日月状に広げる部分を小さく(例えば、上記半円の径をリード端子の径以下に)しなければならない。しかし、かかる構成では、電解コンデンサのような熱容量の大きな部品に対し、十分な効果を得ることができなくなってしまう。
【0007】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、はんだ上がり性を向上させることができ、且つ、電解コンデンサのような熱容量の大きな部品にも対応可能なプリント基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るプリント基板は、挿入実装部品がフローはんだ付けされるプリント基板であって、挿入実装部品の第1リード端子が挿入される第1部品スルーホールと、第1部品スルーホールに近接する位置に形成された、挿入実装部品のリード端子が挿入されない受熱スルーホールと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係るプリント基板であれば、はんだ上がり性を向上させることができ、必要な接合強度を確実に得ることが可能となる。また、この発明に係るプリント基板であれば、電解コンデンサのような熱容量の大きな部品にも対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1におけるプリント基板の要部C面(部品が実装される面:部品実装面)を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1におけるプリント基板の要部S面(はんだが当たる面:はんだ面)を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態2におけるプリント基板の要部C面を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態2におけるプリント基板の要部S面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明をより詳細に説明するため、添付の図面に従ってこれを説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0012】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるプリント基板の要部C面を示す図、図2はこの発明の実施の形態1におけるプリント基板の要部S面を示す図である。
【0013】
図1及び図2において、1はリード端子を有する挿入実装部品がフローはんだ付けされるプリント基板である。本実施の形態では、アルミ電解コンデンサからなる挿入実装部品をプリント基板1にはんだ付けする場合を例に、具体的な説明を行う。2はアルミ電解コンデンサの部品径、3はアルミ電解コンデンサの陰極側のリード端子、4はアルミ電解コンデンサの陽極側のリード端子を示している。陰極側のリード端子3は、アルミ電解コンデンサの内部素子を覆っているアルミケースと同電位に構成されている。
【0014】
プリント基板1には、陰極側のリード端子3が挿入される部品スルーホール5と、陽極側のリード端子4が挿入される部品スルーホール6とが所定の間隔で形成されている。
【0015】
部品スルーホール5は、その開口形状が、リード端子3の径よりも一回り大きな円形を呈している。なお、部品スルーホール5は、リード端子3が部品スルーホール5に通された状態でアルミ電解コンデンサが転倒或いは傾倒することを防止するための所定のホールド力が発生するように構成されている。即ち、部品スルーホール5は、一般的な標準サイズで形成されている。
【0016】
7は部品スルーホール5用に設けられた環状を呈するランドである。ランド7は、部品スルーホール5の周囲を取り囲むように、部品スルーホール5の開口縁部に沿って一定の幅で形成されている。なお、ランド7は、プリント基板1のC面とS面とに、同じ形状で設けられている。
【0017】
陰極側のリード端子3がアルミ電解コンデンサのアルミケースと同電位であるため、リード端子3が通される部品スルーホール5には、基本的に、最も効果的なはんだ上がり対策が可能である。このため、本実施の形態におけるプリント基板1には、部品スルーホール5に近接する位置に、複数の受熱スルーホール8が形成されている。
【0018】
受熱スルーホール8は、S面から伝わる熱を、内層を介して部品スルーホール5に伝えるために形成されたものである。受熱スルーホール8には、アルミ電解コンデンサのリード端子は挿入されない。受熱スルーホール8は、その開口形状が、リード端子3(及び、部品スルーホール5)の径よりも一回り小さい径の円形を呈している。また、受熱スルーホール8は、部品スルーホール5の周囲を取り囲むように等間隔に配置されている。図1及び図2には、10個の受熱スルーホール8を部品スルーホール5の周囲に等間隔に形成し、全体として環状に配置した場合を一例として示している。
【0019】
9aはC面に設けられた受熱スルーホール8用のランド、9bはS面に設けられた受熱スルーホール8用のランドである。S面のランド9bは、フロー時に、より多くのはんだをアルミ電解コンデンサのリード端子3に伝えるために一体的に形成されており、受熱スルーホール8の各開口形状に対応する形状には形成されていない。具体的に、ランド9bは、全体として一定の幅を有する環状に形成されており、ランド7の周囲を取り囲むように配置されている。一方、C面のランド9aは、全体としては一続きに形成されているものの、受熱スルーホール8の各開口形状に対応する形状を有している。具体的に、ランド9aは、受熱スルーホール8毎に環状に、即ち、各受熱スルーホール8の開口縁部に沿って一定の幅で形成されている。なお、ランド9aをランド9bの形状のようにしないのは、ランド9aからはんだの熱が逃げてしまうことを防止するためである。
【0020】
10は部品スルーホール5及び受熱スルーホール8間の接続パターンを示している。部品スルーホール5と受熱スルーホール8とを任意の層で接続するこの接続パターン10は、その長さが短ければ短いほど効果が期待できる。しかし、接続パターン10が短いということは、部品スルーホール5と受熱スルーホール8との間が短いことを意味するため、基板製造メーカの製造能力や基板品質等の観点から、接続パターン10を極端に短くすることはできない。なお、接続パターン10をC面に接続すると、接続パターン10から熱が逃げてしまう恐れがある。しかし、部品スルーホール5と受熱スルーホール8との距離が短ければ、放熱よりも伝熱の効果が大きいと見込まれるため、接続パターン10の接続層は、全層接続とすることが好適である。
【0021】
一方、陽極側の部品スルーホール6は、その開口形状が、リード端子3及び4を結ぶ向と直交する方向に長手を有する長円状(図1及び図2に示すような、長孔状も含む)を呈している。このため、はんだ付けが行われる前であれば、リード端子3が部品スルーホール5に、リード端子4が部品スルーホール6に挿入された状態で、アルミ電解コンデンサは、リード端子3(部品スルーホール5)を基点として、所定範囲の角度内で回転することができる。11は部品スルーホール6用のランドである。ランド11は、部品スルーホール6の周囲を取り囲むように、部品スルーホール6の開口縁部に沿って一定の幅で形成されている。なお、ランド11は、プリント基板1のC面とS面とに、同じ形状で設けられている。
【0022】
アルミ電解コンデンサの陽極側のリード端子4は、アルミケースと同電位ではないため、リード端子4とアルミケースとの間には、ある一定の沿面距離を確保する必要がある。即ち、陽極側のリード端子4を通すための部品スルーホール6の周辺には、受熱のためのスルーホールを形成することはできない。本実施の形態では、一定の沿面距離を保ちつつはんだ量を増加させるため、アルミ電解コンデンサのアルミケースとランド11との沿面距離を確保した範囲で部品スルーホール6を長孔化している。上述したように、アルミ電解コンデンサは所定範囲の角度内で回転するため、回転しても一定の沿面距離を確保する必要がある。なお、アルミ電解コンデンサのアルミケースとランド11との沿面距離は、一般に、アルミ電解コンデンサの封口ゴムで確保されている。このため、部品スルーホール6用のランド11は、アルミ電解コンデンサの封口ゴムの形状内に収められる。
【0023】
上記構成を有するプリント基板1であれば、アルミ電解コンデンサのような熱容量の大きな挿入実装部品をフローはんだ付けする場合であっても、はんだ上がり性を大幅に向上させることができ、十分な接合強度を確保することが可能となる。即ち、上記構成のプリント基板1であれば、フローはんだ付けを行う際に、挿入実装部品のリード端子により多くのはんだを当てることができ、リード端子の温度を十分に上昇させることができる。また、上記構成のプリント基板1であれば、一方の部品スルーホール5が標準サイズの円形を呈するため、挿入実装部品の転倒防止・傾倒防止に必要な十分な保持力も確保できる。更に、他方の部品スルーホール6は、表面実装部品のケースとの沿面距離を確保した範囲で長孔化されているため、その表面積を大きくすることができ、はんだからより多くの熱をリード端子に与えることが可能となる。
【0024】
なお、受熱スルーホール8を部品スルーホール5と同径で形成した場合は、アルミ電解コンデンサの実装時に、リード端子3を誤って受熱スルーホール8に挿入してしまうといった不具合が発生し得る。しかし、本実施の形態におけるプリント基板1では、受熱スルーホール8の径をリード端子3(部品スルーホール5)の径よりも小さくしているため、上記不具合が発生することはなく、工作性が低下する恐れもない。
【0025】
実施の形態2.
図3はこの発明の実施の形態2におけるプリント基板の要部C面を示す図、図4はこの発明の実施の形態2におけるプリント基板の要部S面を示す図である。本実施の形態におけるプリント基板1は、受熱スルーホール12、受熱スルーホール12用のランド13a及び13b、接続パターン14の各構成が、実施の形態1の場合と相違する。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0026】
受熱スルーホール12は、受熱スルーホール8と同様の目的で形成されたものであるが、本実施の形態では、部品スルーホール5の周囲の一部を取り囲むように等間隔に配置されている。図3及び図4には、6個の受熱スルーホール12を部品スルーホール5の周囲の一部に等間隔に形成し、全体として、部品スルーホール6側に開口する円弧状に配置した場合を一例として示している。即ち、受熱スルーホール12は、部品スルーホール5及び6間には配置されていない。
【0027】
受熱スルーホール12用のランド13a及び13bは、受熱スルーホール12の上記配置に対応するように設けられている。具体的に、C面のランド13aは、各受熱スルーホール12の開口縁部に沿って一定の幅で形成されている。また、S面のランド13bは、全体として、一定の幅を有する環状の一部を呈するように形成され、部品スルーホール6側に開口する円弧状に配置されている。
なお、ランド13a及び13bの双方とも、部品スルーホール5及び6間には配置されていない。また、部品スルーホール5と受熱スルーホール12とを接続する接続パターン14も、部品スルーホール5及び6間には配置されていない。
【0028】
受熱スルーホール12、ランド13a及び13b、接続パターン14について詳説しない部分については、実施の形態1における受熱スルーホール8、ランド9a及び9b、接続パターン10と同様の構成及び機能を有している。
【0029】
上記構成を有するプリント基板1であっても、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。また、上記構成のプリント基板1であれば、アルミ電解コンデンサの電解液の漏れによる短絡等の問題も防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0030】
1 プリント基板
2 アルミ電解コンデンサの部品径
3、4 リード端子
5、6 部品スルーホール
7、9a、9b、11、13a、13b ランド
8、12 受熱スルーホール
10、14 接続パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入実装部品がフローはんだ付けされるプリント基板であって、
挿入実装部品の第1リード端子が挿入される第1部品スルーホールと、
前記第1部品スルーホールに近接する位置に形成された、前記挿入実装部品のリード端子が挿入されない受熱スルーホールと、
を備えたことを特徴とするプリント基板。
【請求項2】
前記第1部品スルーホール及び前記受熱スルーホールを接続する接続パターンと、
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載のプリント基板。
【請求項3】
前記接続パターンは、第1部品スルーホールと前記受熱スルーホールとを任意の層で接続することを特徴とする請求項2に記載のプリント基板。
【請求項4】
前記受熱スルーホールは、前記第1部品スルーホールの周囲を取り囲むように、複数個が形成されたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載のプリント基板。
【請求項5】
部品実装面及びはんだ面に設けられた受熱スルーホール用のランドと、
を更に備え、
部品実装面の前記ランドは、前記各受熱スルーホールの開口縁部に沿って一定の幅で形成され、
はんだ面の前記ランドは、全体として、一定の幅を有する環状に形成された
ことを特徴とする請求項4に記載のプリント基板。
【請求項6】
前記挿入実装部品の第2リード端子が挿入される第2部品スルーホールと、
を更に備え、
前記受熱スルーホールは、前記第1部品スルーホールの周囲の一部を取り囲むように、複数個が形成され、前記第1部品スルーホールと前記第2部品スルーホールとの間に配置されていないことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載のプリント基板。
【請求項7】
部品実装面及びはんだ面に設けられた受熱スルーホール用のランドと、
を更に備え、
部品実装面の前記ランドは、前記各受熱スルーホールの開口縁部に沿って一定の幅で形成され、
はんだ面の前記ランドは、全体として、一定の幅を有する環状の一部を呈するように形成された
ことを特徴とする請求項6に記載のプリント基板。
【請求項8】
前記第1部品スルーホールは、その開口形状が円形を呈し、
前記受熱スルーホールは、その開口形状が、前記第1部品スルーホールの径よりも小さい径の円形を呈する
ことを特徴とする請求項1から請求項7の何れかに記載のプリント基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−119421(P2012−119421A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266416(P2010−266416)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】