説明

プリント配線基板、その製造方法および半導体装置

【課題】インナーリードの先端の変形による不良率が低減されたプリント配線基板およびその製造方法、半導体装置を提供する。
【解決手段】プリント配線基板10は、電子部品を実装するためのデバイスホール14を有する絶縁フィルム12の少なくとも一方の面に配線パターン18が形成されてなり、配線パターン18はデバイスホール14内にインナーリード20を構成し、他端部側にアウターリード22を構成している。デバイスホール14内に片持ち状態で延設されたインナーリード20の先端部は、デバイスホール14の各辺毎に連結部材30によって連接されており、該デバイスホール14の各辺毎に形成された連結部材30が、デバイスホール14の対向する辺に形成された連結部材30との間に形成された橋渡し構造によって相互に拘束しあっている。
【効果】インナーリードの変形が著しく低い安定した特性の製品を効率よく製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明のデバイスホールが形成され、このデバイスホール内にインナーリードが延設され、このインナーリードの先端が連結されているプリント配線基板およびこのようなプリント配線基板を製造する方法、さらにこのようなプリント配線基板に電子部品が実装された半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムなどの絶縁フィルムの表面に導電性金属を配置してこの導電性金属を選択的にエッチングすることにより配線パターンを形成したプリント配線基板が使用されている。
【0003】
このようなプリント配線基板には、電子部品を実装するためのデバイスホールを有するものがあり、このようなデバイスホール内には電子部品に形成されたバンプ電極の間で電気的な接続を確立するように、インナーリードが延設されている。このようなインナーリードは、絶縁フィルムに片持ち状態でデバイスホール内に延設されている。
【0004】
このような絶縁フィルムから片持ち状態でデバイスホール内に延設されたインナーリードは、絶縁保護層の形成工程、メッキ工程などインナーリードを形成した後の工程で変形あるいは損傷を受けることがある。こうしたデバイスホール内に延設されたインナーリードの変形および損傷を防止するために、例えば、特公昭56−2895号公報(特許文献1)、特開平4−109643号公報(特許文献2)、特開平11−307593号公報(特許文献3)、特開2000−58599号公報(特許文献4)には、デバイスホール内に延設されたインナーリードの先端部を、デバイスホール内に形成された導電性金属板に接合させて、インナーリードの変形あるいは損傷を防止する方法が採られている。ここで使用される導電性金属板は、通常は、配線パターンなどを形成している導電性金属箔をエッチングせずにデバイスホール内に残すことにより形成される導電性の金属板であり、このような導電性金属板の各辺にインナーリードの先端部が接合することにより、インナーリードが、絶縁フィルムとこの導電性金属板とによって固定され、製造工程中におけるインナーリードの変形を有効に防止することができる。
【0005】
また、このようなデバイスホール内に形成された導電性金属板にインナーリードの先端部を結合させることにより、後の工程で行われることもある電気メッキの際の電力供給源、および、電気メッキ後に、この導電性金属板をこの導電性金属板を切除して各配線パターンを電気的に独立させるという意味もある。
【0006】
上記のようなインナーリードは、一般に堅牢に導電性金属板に固定されていることが良いとされており、さらにこの導電性金属板を介して全ての配線パターンに電気メッキ用の電力を供給できるようにされていることが望ましい。このためデバイスホール内に形成される導電性金属板は、配線パターンなどの形成に用いる導電性金属箔(例えば電解銅箔)をエッチングされないようにマスクしてデバイスホール内に一枚板として残すことにより形成されるのが一般的である。
【0007】
このようにデバイスホール内に形成された一枚板状の導電性金属板にインナーリードの先端を固定することにより、プリント配線基板全体に平均的にかかる外部応力によってインナーリードが変形することあるいは損傷を受けることは殆どなくなる。
【0008】
ところが、このようなプリント配線基板には外部応力が常に全体に平均的にかかるわけ
ではなく、むしろ、プリント配線基板の一部に応力がかかることが多く、このような応力によるインナーリードの変形力が大きい場合には、この応力が上記一枚板状の導電性金属板によって伝達されて、この導電性金属板に固定されている全部のインナーリードがこの導電性金属板と共に変形する。このようにインナーリードの変形が広汎にわたる場合、生じたインナーリードの変形を修復することはもはや不可能である。
【0009】
このようにインナーリードの変形あるいは損傷を防止するために導電性金属板を配置しても、プリント配線基板への応力のかかり方によっては反ってインナーリードの変形を増長し、さらには修復不能なインナーリード変形を誘発することもある。
【0010】
ところで、特開2000−58599号公報(特許文献4)の図2および段落〔0013〕、〔0015〕には、デバイスホール内で、各辺毎にリード先端が接続されたTABテ
ープが開示されている。このようにデバイスホールの各辺毎に独立してインナーリードの先端を連結することにより、一部にかかるインナーリードの変形応力が、インナーリード全体に及ぶという上記問題は生じない。しかしながら、このようにデバイスホールの各辺毎にインナーリードを連結しただけでは、それぞれの辺にあるインナーリードの先端部にある連結部とインナーリードとが、絶縁フィルムに対して片持ち状態になるだけで、充分な強度が得られない。また、各辺毎に形成された連結部間にはデバイスホール内で電気的接続は形成されていないので、例えば電気メッキをする際には、デバイスホールの各辺毎に電気メッキ用の電源供給手段を形成する必要がある。
【0011】
昨今のプリント配線基板においては、配線パターンが非常に高い密度で形成されており、このような電気メッキのために複数の電力供給用の配線パターンを形成するためのスペースを確保すること自体が相当困難になりつつある。
【特許文献1】特公昭56−2895号公報
【特許文献2】特開平4−109643号公報
【特許文献3】特開平11−307593号個公報
【特許文献4】特開2000−58599号公報、段落0013、0015、図2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、デバイスホールを有し、このデバイスホール内にインナーリードが延長して設けられたプリント配線基板におけるインナーリードの先端の変形による不良率が著しく低減されたプリント配線基板およびこのようなプリント配線基板を製造する方法、ならびに、このようなプリント配線基板を用いた半導体装置を提供することを目的としている。
【0013】
さらに、本発明は、上記のようにインナーリードの先端の変形による不良率が著しく低いと共に、均一性の高いインナーリード幅を有するプリント配線基板に電子部品が実装された半導体装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のプリント配線基板は、電子部品を実装するためのデバイスホールを有する絶縁フィルムの少なくとも一方の面に導電性金属からなる配線パターンが形成されてなり、該デバイスホール内に延設された配線パターンがインナーリードを構成し、該配線パターンの他端部側がアウターリードを構成するプリント配線基板であり、
該デバイスホール内に片持ち状態で延設されたインナーリードの先端部が、デバイスホールの各辺毎に連結部材によって連接されており、該デバイスホールの各辺毎に形成された連結部材が、デバイスホールの対向する辺に形成された連結部材との間に形成された橋渡し構造によって相互に拘束し合っていることを特徴としている。
【0015】
また、本発明の半導体装置は、上記のようなプリント配線基板から連結部材を切除した後、該連結部材が切除されたインナーリードと電子部品に形成された電極とを電気的に接続してなることを特徴としている。
【0016】
上記のプリント配線基板は、デバイスホールが形成された絶縁フィルムと該絶縁フィルムの表面に配置された導電性金属層とからなる基材フィルムの導電性金属層の表面に感光性樹脂層を形成して、該感光性樹脂層を露光現像して所望のパターンを形成すると共に、デバイスホールの裏面側から保護樹脂層を形成し、上記形成されたパターンをマスキング材として、導電性金属を選択的にエッチングして、該デバイスホール内に片持ち状態で延設されたインナーリードの先端部が、デバイスホールの各辺毎に連結部材によって連接されており、該デバイスホールの各辺毎に形成された連結部材が、デバイスホールの対向する辺に形成された連結部材との間に橋渡し構造により拘束された構成を有する配線パターンを形成する工程を有するプリント配線基板の製造方法により製造することができる。
【発明の効果】
【0017】
上記のように、本発明のプリント配線基板には、電子部品を実装するためのデバイスホールが形成されており、このデバイスホール内にインナーリードが延設され、そしてこのインナーリードの先端部が、デバイスホールの各辺毎に設けられた連結部材によって連結されており、そして、これらの連結部材と、デバイスホールの対向する辺に形成された連結部材とが、橋渡し構造によって相互に拘束して合う構成を有している。このように架橋構造によって対向する辺に設けられた連結部材を相互に拘束することにより、インナーリードを変形させるような応力が一部にかかったとしても、この応力が橋渡し構造を介して対向する辺に形成された連結部材に伝達されることはない。しかしながら、これら対向する辺に形成された連結部材は、細い橋渡し構造によって相互に拘束しあっているために、デバイスホールの各辺毎にインナーリードの先端が固定された単独の連結部材よりも応力に対して格段に高い耐久力が発現する。
【0018】
さらに、形成された配線パターンに電気メッキを施すに際しては、この橋渡し構造によって対向する辺に形成された配線パターンにも通電するので、電気メッキに必要な電力供給用の配線パターンを多数設ける必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に本発明のプリント配線基板およびその製造方法、さらにはこのプリント配線基板を用いた半導体装置について具体的に説明する。
図1〜2は、本発明のプリント配線基板を模式的に示す平面図であり、共通の部材には共通の付番が賦してある。
【0020】
図1〜2に示すように、本発明のプリント配線基板10は、絶縁フィルム12の表面に導電性金属からなる配線パターン18が形成された形態を有する。
ここで絶縁フィルム12には、電子部品(図示なし)を実装するためのデバイスホール14が形成されており、またこの絶縁フィルム12の両縁部近傍には、通常は、プリント配線基板(フィルムキャリア)10の位置決めを行い、あるいは、このプリント配線基板10を搬送するためのスプロケットホール16が形成されている。さらに、絶縁フィルム12には、図示していないが、位置決め孔、そのプリント配線基板を折り曲げて使用する際の折り曲げスリットなどの必要な貫通孔が形成されていてもよい。
【0021】
このような絶縁フィルム12は、一般に、可撓性を有すると共に、耐熱性および耐薬品性に優れた樹脂フィルムから形成されている。このような絶縁フィルム12を形成する樹脂フィルムの例としては、ポリイミドフィルム、ポリイミドアミドフィルム、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミドおよび液晶ポリマー等のフィルムを挙
げることできる。これらの中でも耐熱性および耐薬品性に優れたポリイミドフィルムを使用することが好ましい。
【0022】
このような絶縁フィルム12の厚さは特に制限はないが、通常は7〜80μm、好ましくは25〜75μm、特に好ましくは25〜40μmの範囲である。このような絶縁フィルム12は、ヒドラジン・KOH液などを用いた粗化処理、プラズマ処理、火炎処理などの表面
処理が施されていてもよい。
【0023】
上記のような絶縁フィルム12は、上記の樹脂フィルムに、スプロケットホール16、デバイスホール14、さらに必要により設けられる、例えば位置合わせ孔、折り曲げスリット(図示なし)などの貫通孔を有しているが、このような貫通孔は例えばパンチングあるいはレーザー光などにより穿設することにより形成することができる。
【0024】
本発明のプリント配線基板10には、上記のような絶縁フィルム12の表面に配線パターン18が形成されている。この配線パターン18は、導電性金属から形成されており、通常は、この配線パターン18は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金などから形成されている。この配線パターン18の厚さは特に制限はないが、通常は5〜50μm、好ましくは12〜35μmの範囲内にある。
【0025】
この配線パターン18は、具体的には、上記のような絶縁フィルム12に積層された導電性金属層の表面に、感光性樹脂層を形成し、この感光性樹脂層を露光現像することにより感光性樹脂の硬化体からなるパターンを形成し、こうして形成されたパターンをマスキング材として導電性金属層を選択的にエッチングすることにより形成することができる。
【0026】
ここで導電性金属層は、例えば、銅箔、アルミニウム箔を用いて形成することもできるし、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金などの導電性金属を蒸着することにより形成することもできる。
【0027】
絶縁フィルム12と導電性金属層とは、接着剤からなる接着層を介して積層することもできるし、接着剤を用いずに絶縁フィルム12上に導電性金属層を直接積層することもできる。また、金属を蒸着させる場合には、絶縁フィルム12の表面に、同種または異種の金属からなるシード層を形成し、このシード層の上に上記導電性金属を析出させてもよい。
【0028】
また、これとは逆に、上記のような導電性金属からなる金属箔の表面に絶縁フィルムを形成する樹脂あるいはその前駆体の塗膜を形成し、これを乾燥あるいは硬化させて絶縁フィルムを形成することもできる。
【0029】
上記導電性金属層を選択的にエッチングして配線パターン18を形成するに際しては、デバイスホール内に露出している導電性金属層は、絶縁フィルム12の裏面側から保護樹脂を塗布してこのデバイスホール内に露出している導電性金属層の裏面側をエッチング液から保護した後に、選択的にエッチングすることにより配線パターン18を形成することができる。
【0030】
上記のようにして形成された配線パターン18のうち、デバイスホール14側に形成された配線パターン18がインナーリード20になり、外側に形成され外部の装置などと接続可能にされている配線パターン18がアウターリード22になる。本発明のプリント配線基板において、上記のようなインナーリード20およびアウターリード22の中間にあって、インナーリード20とアウターリード22とを接続する配線パターン18は、通常は絶縁保護層(図示なし)により被覆されている。
【0031】
本発明のプリント配線基板10において、デバイスホール14内に延設されたインナーリード20の先端部は、図1に示すように、デバイスホール14の各辺毎に連結部材30に接合している。このデバイスホール14内に延設された上記インナーリードのリード幅は特に制限はないが、通常は20〜300μm、好ましくは30〜100μmの範囲内にある。
【0032】
そして、デバイスホール14の各辺毎に独立して形成された連結部材30は、デバイスホールを形成する絶縁フィルムの対峙する辺に同様に形成された連結部材30と橋渡し構造32を介して相互に拘束しあっている。
【0033】
この橋渡し構造32は、連結部材30と対向する辺に形成された連結部材30とを結ぶ金属細線であり、ひとつの連結部材30に弾性変形する応力が加えられたとしても、この弾性変形をもたらす応力は、橋渡し構造32を介して対向辺にある連結部材30には伝達されない。しかしながら、この橋渡し構造32が形成された対峙する連結部材30,30は、橋渡し構造32に
よって、相互に引張り合うように張設されているので、インナーリード20の一部にこれを変形させるような応力がかかったとしても、このインナーリード20は連結部材30によって補強されており、さらにこの連結部材30は、対峙する辺に形成された連結部材30と橋渡し構造32によって支持されているので、デバイスホールの一辺に形成されたインナーリード20がこれらと連接された連結部材30と共に変形するといった事態が生ずることがない。
【0034】
本発明のプリント配線基板10において、連結部材30は、図1に示すように、デバイスホールの一辺に形成されているインナーリード20の先端部に位置して隣接するインナーリード20を相互に連接するように形成されている。連結部材30は、図1に示すように両側端部が最外側のインナーリード20が接合できる位置になるように形成されていればよく、従って、通常の場合、連結部材30の両側端部は、デバイスホール14を形成する絶縁フィルム12のデバイスホール縁部とは接触していない。しかしながら、図1に示すようなインナーリード20と連結部材30とは、橋渡し構造32を除くと、デバイスホール14を形成する絶縁フィルム12の縁部からデバイスホール内に片持ち状態で延設されたインナーリード20およびこのインナーリード20の先端に接合した連結部材30が、インナーリード20によって絶縁フィルム12に対して片持ち状態になっている。
【0035】
本発明のプリント配線基板10においては、図2に示すように、このような連結部材30の両側端部を横方向に延長してその側端部をデバイスホールを形成する絶縁フィルム12に到達させて、絶縁フィルム12上まで延長された連結部材30の側端部を絶縁フィルム12に対する固定部(側端部)34とすることもできる。このように固定部34で連結部材30を絶縁フィルム12に固定することにより、インナーリード20および連結部材30の片持ち状態を解消することができ、さらにこれに橋渡し構造32が加わって、本発明のプリント配線基板10においては、インナーリード20に変形あるいは損傷などが生じにくくなる。
【0036】
本発明のプリント配線基板10に形成されている橋渡し構造32は、デバイスホール14を構成する絶縁フィルム12の対峙する辺に形成された連結部材30,30の間に形成される非常に
細い導電性金属線であり、通常は配線パターン18、インナーリード20および連結部材30と同一の金属で形成することができる。対峙する連結部材を相互に拘束し合う橋渡し構造32は、デバイスホールの対向する辺に形成された連結部材の間で、応力が伝達しない程度の細線であることが好ましい。
【0037】
このような橋渡し構造32の細線の線幅は特に制限はないが、通常は50〜3000μm、好ましくは200〜1000μmの範囲内にあり、このような細線で橋渡し構造32を形成することにより、対峙する連結部材30,30の間に適度の拘束力を発現させることができ
る。なお、このような橋渡し構造32は導電性金属で形成されていることから、電気メッキを行う際の電気メッキの電力供給あるいは伝達手段となりうる。
【0038】
また、上記のような橋渡し構造32によって適度の拘束力で拘束される連結部材30は、インナーリード20の変形を防止するために、ある程度の幅を有していることが望ましく、この連結部材30の線幅は、通常は50〜250μm、好ましくは100〜200μmの範囲内にある。このような線幅の連結部材30を配置することにより、さらにこれらの連結部材30が橋渡し構造32によって拘束されるので、インナーリード20の変形の発生を有効に防止することができる。なお、連結部材の線幅が上記範囲を超える場合、インナーリードの補強という面では特に問題はないが、この連結部材30の自重が大きくなり、この連結部材の自重によるインナーリードのへたり込みによる変形が発生することがある。
【0039】
上記のような連結部材30に形成される橋渡し構造32の本数には特に制限がなく、通常は1〜15本、好ましくは2〜10本の範囲内の任意の本数にすることができる。また、こ
の橋渡し構造32は、図1あるいは図2に示すように、連結部材30に略均一な間隙を形成し
て幅方向全体に配置することもできるし、例えば、連結部材30の中央部などに集中して形成してもよい。
【0040】
本発明のプリント配線基板10に形成されている連結部材30および橋渡し構造32は、通常は、インナーリード20などの配線パターン12を形成している金属と同一の金属で形成されている。
【0041】
即ち、上記のような連結部材30、橋渡し構造32は、配線パターンを形成する際のエッチング工程で配線パターンと同様に選択的なエッチングによって形成することが望ましい。
しかしながら、エッチング工程に賦す前の基材フィルムは、デバイスホール14の裏面側に導電性金属が露出しているので、この部分の導電性金属が、デバイスホール14側(裏面側)からエッチングされないように、デバイスホール14内に耐エッチング液性の樹脂などを塗布して導電性金属を裏面から保護した後、エッチング工程に賦して所定の形状のインナーリード20、連結部材30および橋渡し構造32を形成する。こうしてエッチングを行った後、デバイスホール14の裏面側から塗布した保護樹脂は除去される。
【0042】
こうして、エッチング工程を経たプリント配線基板の配線パターン18あるいは配線パターン18の先端部分にあるインナーリード20およびアウターリード22には、通常はメッキ処理がなされる。ここで採用することができるメッキ処理としては、金メッキ、ニッケル-
金メッキ、ハンダメッキ、鉛フリー半田メッキ、スズメッキ、亜鉛メッキ、銀メッキなどがある。これらのメッキ処理は、電子部品の実装方法、電子部品に形成されているバンプ電極の種類などを考慮して適宜決定することができる。このメッキ処理は、無電解メッキあるいは電気メッキのいずれであってもよい。電気メッキの場合には、橋渡し構造が、メッキ電力の供給導体となるので、特別に電気メッキ用の電力供給配線を設ける必要はない。
【0043】
上記のようにして形成された配線パターン18の表面には、端子部分となるインナーリード20、アウターリード22が露出するように絶縁保護層(図示なし)を形成して配線パターン18の表面を保護する。この絶縁保護層は、ソルダーレジストインクを塗布して形成することもできるし、また、所望の形状に打ち抜かれたカバーレイ(接着剤層付樹脂フィルム)を貼着することによって形成することもできる。
【0044】
なお、メッキ層の形成は、上記のようにして絶縁保護層を形成した後に行うことができるが、こうした絶縁保護層などを形成する前に第一回目のメッキ処理を行い、次いで絶縁保護層などを形成した後、第二回目以降のメッキ処理を行って、メッキ層を2層以上積層
してもよい。このようにメッキ層を分割して形成することにより、絶縁保護層下部における配線パターンのえぐれ部の発生を防止できると共に、ホイスカの発生防止にも効果があ
る。
【0045】
上記のようにして得られた本発明のプリント配線基板を使用するに際しては、連結部分30および橋渡し構造32を切除して使用する。
インナーリード20と連結部材30との接合部近傍においては、インナーリード20をより確実に保護するために、インナーリード20の線幅を10〜100%太くすることが望ましく、連結部材30の切除に際しては、このような線幅を太くした部分を連結部材30とともに撤去することが望ましい。
【0046】
このようにして形成された本発明のプリント配線基板は、上述のように、連結部材30を切断撤去した後は、通常のプリント配線基板と同様に電子部品を実装することにより半導体装置となる。
【0047】
このように本発明のプリント配線基板は、連結部材30および対峙する連結部材30.30を
相互に拘束し合う橋渡し構造32が形成されているので、インナーリード20が製造工程中に変形することおよび損傷を受けることが著しく少なくなる。特に昨今のプリント配線基板におけるように配線パターンを形成する導電性金属が非常に薄い場合であっても、こうした薄い導電性金属で形成されたインナーリードにおける変形の発生を有効に防止することができる。
【0048】
〔実施例〕
次に本発明のプリント配線基板およびその製造方法、さらにこのプリント配線基板を用いた半導体装置について実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【実施例1】
【0049】
厚さ75μmの絶縁フィルム(ポリイミドフィルム;宇部興産(株)製、ユーピレックスS)に、スプロケットホール、デバイスホールおよびその他の貫通孔をパンチングによ
り形成し、次いで、このポリイミドフィルムの表面に、接着層を介して、厚さ25μmの電解銅箔を積層した。
【0050】
デバイスホールの裏面側から、露出している電解銅箔の裏面側に樹脂を塗布して保護樹脂層を形成した。次いで、銅箔の表面に感光性樹脂を塗布して、この感光性樹脂を露光現像することにより、図1に示す形状のパターンを形成した。エッチング液を用いて上記のように形成したパターンをマスキング材として銅箔を選択的にエッチングして図1に示す形状の配線パターンを形成し、エッチング後、アルカリ洗浄により、マスキング材として使用したパターンおよび保護樹脂層を除去した。
【0051】
上記のようにして形成された配線パターンにおいて、インナーリードの幅は75μm、デバイスホールの縁から連結部材までのインナーリードの長さは500μm、連結部材の幅は200μm、橋渡し構造の幅は1000μm、長さは8mmであり、この橋渡し構造は、一つのデバイスホール内に4本形成されている。
【0052】
このようにデバイスホールの対峙する辺に形成された連結部材間に橋渡し構造を形成した配線パターンを形成した後、インナーリードおよびアウターリードが露出するように絶縁保護層を形成し、さらに絶縁保護層から露出したインナーリード(連結部材および橋渡し構造を含む)およびアウターリードの表面に平均厚さ0.5μmの無電解スズメッキ層を形成した。
【0053】
このようにしてメッキ処理した後、インナーリードの先端を、連結部材からデバイスホ
ールの縁側に200μmの位置にカット位置を設定して、切断して連結部材および橋渡し構造を撤去した。
【0054】
このようにして形成したプリント配線基板について、インナーリード曲がりの不良率を測定したところ50ppmであった。
〔比較例1〕
実施例1において、橋渡し構造を形成しなかった以外は同様にしてプリント配線基板を製造した。得られたプリント配線基板について、インナーリード曲がりの不良率を測定したところ300ppmであった。
【実施例2】
【0055】
実施例1において、連結部材を幅方向に延長して、連結部材の両側端部を、デバイスホールを形成するポリイミドフィルムの縁部に固定して、図2に示す形状のプリント配線基板を製造した。なお、このようにして形成された固定部の長さ(ポリイミドフィルムの表面に固定されている連結部材の側端部の長さ)は500μmである。また、橋渡し構造は、対峙する連結部材間に8本形成した。
【0056】
上記のようにして配線パターンを形成した後、実施例1と同様に連結部材および橋渡し構造をパンチングにより撤去した。
得られたプリント配線基板におけるインナーリード曲がりの不良率は10ppmであった

【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のプリント配線基板は、インナーリードの先端を連結部材によって相互に連結すると共に、この連結部材を、対峙するデバイスホールに形成されたインナーリードの先端部を連結する連結部材との間に形成された橋渡し構造によって相互に拘束しあうことにより、インナーリードにおける曲げ変形を著しく低減することができる。特に、対峙する連結部材を橋渡し構造によって関連付けることにより、インナーリードおよびこの先端にある連結部材が、このインナーリードが形成されたデバイスホールの縁に対して片持ち状態ではなく、対峙する辺の連結部材との間に形成された橋渡し構造によって相互に拘束し合う構成となるので、それぞれのインナーリードにかかる応力は連結部材によって分散され、さらにインナーリードおよび連結部材の両者に応力がかかった場合には、橋渡し構造で連通する対峙する連結部材によって緩和される。このような橋渡し構造が存在せずに、デバイスホールの各縁毎にインナーリードの先端部を接合する連結部材だけを配置した場合には、インナーリードおよび連結部材全体が、デバイスホールを形成する絶縁フィルムの縁部に対して片持ち状態になり、インナーリードの一部に応力が加わった場合に、連結部材があるためにこの縁に形成されたインナーリードおよび連結部材が連座して変形することがあるが、本発明のように対峙する連結部材間に橋渡し構造を形成することにより、連結部を巻き込んだインナーリードの連座的変形を防止できる。他方、デバイスホール全体に導電性金属板を形成して、全てのインナーリードの先端をこの導電性金属板に連結させると、インナーリードがこのデバイスホール内に形成された導電性金属板によって固定されるため、一部のインナーリードにかかった応力がこの導電性金属板を介して全てのインナーリードに伝播し、かえってインナーリードの蒙る変形度合いが大きくなることがある。これに対して、本発明のようにデバイスホールの各辺ごとにインナーリードの先端を連結する連結部材と対峙する辺の連結部材とを連結する橋渡し構造は、それ自体は導電性金属からなる細線であるので、可撓性があり、応力はこの橋渡し構造によって緩和されてしまい、この橋渡し構造を介して応力が伝播することはない。しかしながら、対峙する連結部材は、橋渡し構造によって相互に拘束しあっているので、例えば片持ち状態にあるインナーリードおよび連結部材が一体となったへたり込みのような変形に対しては、対峙する連結部材間に形成された橋渡し構造によって連結部材間に生ずる張力による拘束力が作用
してインナーリードの変形を有効に防止することができる。
【0058】
このように本発明のプリント配線基板においては、金属細線からなる橋渡し構造によって、対峙する連結部材が相互に拘束しあっているだけなので、相互の作用する拘束力は導電性金属板のように強くはなく、むしろ、金属細線からなる橋渡し構造の有する可撓性によって応力は吸収される。
【0059】
また、本発明のプリント配線基板おいては、連結部材の両端部を絶縁フィルム上まで延長して両側端部を絶縁フィルムの表面に固定することにより、このデバイスホールの辺に形成されたインナーリードを支持する連結部材の支持機能が高くなり、橋渡し構造の対峙する連結部材間の拘束力とあいまって、よりインナーリードの曲げ変形しにくいプリント配線基板を提供することができる。
【0060】
このようして形成された本発明のプリント配線基板は、インナーリードに変形がなく、しかもインナーリードのリード幅が均一で揃っているので、このようなプリント配線基板に電子部品を実装した本発明の半導体装置は、特性にムラがなく、安定した特性を示す。
【0061】
さらに、連結部材及び橋渡し構造の金属細線を電気メッキを行う際の電気メッキの電力供給あるいは伝達手段として使用すれば、メッキ用リード線を多数プリント配線基板に設ける必要がなくなるので、配線パターンをより高密度に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は、本発明のプリント配線基板の一例を示す平面図である。
【図2】図2は、本発明のプリント配線基板の他の例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0063】
10・・・プリント配線基板
12・・・絶縁フィルム
14・・・デバイスホール
16・・・スプロケットホール
18・・・配線パターン
20・・・インナーリード
22・・・アウターリード
30・・・連結部材
32・・・橋渡し構造
34・・・固定部(側端部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を実装するためのデバイスホールを有する絶縁フィルムの少なくとも一方の面に導電性金属からなる配線パターンが形成されてなり、該デバイスホール内に延設された配線パターンがインナーリードを構成し、該配線パターンの他端部側がアウターリードを構成するプリント配線基板であり、
該デバイスホール内に片持ち状態で延設されたインナーリードの先端部が、デバイスホールの各辺毎に連結部材によって連接されており、該デバイスホールの各辺毎に形成された連結部材が、デバイスホールの対向する辺に形成された連結部材との間に形成された橋渡し構造によって相互に拘束し合っていることを特徴とするプリント配線基板。
【請求項2】
上記配線パターン、連結部材および橋渡し構造が同一の導電性金属で形成されていることを特徴とする請求項第1項記載のプリント配線基板。
【請求項3】
上記連結部材が、デバイスホールの対向する辺に形成された連結部材との間に形成された細線状の橋渡し構造によって、応力の伝達によるインナーリードの変形が生じない程度の拘束力で相互に拘束し合っていることを特徴とする請求項第1項記載のプリント配線基
板。
【請求項4】
上記連結部材が両端部方向に延設されており、該延設された連結部材の両端部がデバイスホールの縁部の絶縁フィルム上に固定されていることを特徴とする請求項第1項記載の
プリント配線基板。
【請求項5】
上記連結部材が、メッキ処理後、電子部品実装前に、インナーリードの切断予定部から切除されるものであることを特徴とする請求項第1項記載のプリント配線基板。
【請求項6】
上記配線パターンの厚さが5〜50μmの範囲内にあり、デバイスホール内に延設された上記インナーリードのリード幅が20〜300μmの範囲内にあることを特徴とする請求項第1項記載のプリント配線基板。
【請求項7】
上記橋渡し構造を形成する導電性金属の線幅が50〜3000μmの範囲内にあることを特徴とする請求項第1項記載のプリント配線基板。
【請求項8】
デバイスホールが形成された絶縁フィルムと該絶縁フィルムの表面に配置された導電性金属層とからなる基材フィルムの導電性金属層の表面に感光性樹脂層を形成して、該感光性樹脂層を露光現像して所望のパターンを形成すると共に、デバイスホールの裏面側から保護樹脂層を形成し、上記形成されたパターンをマスキング材として、導電性金属を選択的にエッチングして、該デバイスホール内に片持ち状態で延設されたインナーリードおよび該インナーリードの先端部をデバイスホールの各辺毎に連結する連結部材、さらに該デバイスホールの各辺毎に形成された連結部材がデバイスホールの対向する辺に形成された連結部材とを相互に拘束し合う橋渡し構造を形成する工程を経て配線パターンを形成することを特徴とするプリント配線基板の製造方法。
【請求項9】
上記請求項第1項乃至第7項のいずれかの項記載のプリント配線基板から連結部材を切
除した後、該連結部材が切除されたインナーリードと電子部品に形成された電極とを電気的に接続してなることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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