説明

プリント配線板、このプリント配線板を用いた半導体装置の製造方法、半導体装置並びに音響変換装置

【課題】小型化および薄型化に必要とされるプリント配線板に特に半導体チップ、例えばMEMSチップを搭載する場合の電気的接続方法であるφ25からφ50μmの細いアルミニウム線を用いたウェッジボンディングの作業性の向上を図ることができ、しかも信頼性の高い接続を得る事が可能なプリント配線板を提供する。
【解決手段】ハンダ付け用のパッケージ部品の搭載とMEMSチップに代表されるベアタイプの半導体チップの共存搭載を有するとともに、MEMSチップの電気的接続にアルミニウム線のワイヤボンディングを用いるプリント配線板において、前記プリント配線板の導体部に金めっきを有するとともに導体部の表面粗さを特定条件としたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板、このプリント配線板を用いた半導体装置の製造方法、半導体装置並びに音響変換装置に係り、特に、音圧センサやエレクトレットコンデンサマイクロホンなどの実装に、φ25からφ50μmのアルミニウム細線を用いたウェッジボンディングによる実装を行うためのパッド領域の表面構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の電気部品や電子部品などに用いる部品搭載の部材として、例えば、音圧センサやエレクトレットコンデンサマイクロホン(以下、「ECM」とよぶ)などの音響変換装置には、プリント配線板が用いられ、このプリント配線板上で、マイクロホンを構成するMEMSチップとアンプやフィルタなど他の電子部品との電気的接続が達成されている。
【0003】
近年、電子機器では、小型化・薄型化の傾向にあるが、特に音響変換装置などに使用するプリント配線板にあっては、小型・薄型化に伴い半導体チップを直接搭載して、その製品厚さを薄くすることが必須となってきている。
【0004】
また、従来弱耐熱部品であった、例えば、ECMなどの音響変換装置では、リフロー耐熱性を有する性能が求められてきている。
【0005】
このため、プリント配線板には半導体チップを直接搭載する事が求められている。特に耐熱的に有利なMEMSチップに代表される新しいタイプの半導体チップの搭載には今までにはないプリント配線板への要求事項が必要になってきた。
ところが従来からのプリント配線板では、それらMEMSチップに代表される新しい半導体チップに適合した仕様(または条件)が明確になっていない。
【0006】
特に音響変換装置において昨今MEMSチップを搭載するタイプのECM(例えば、特許文献1参照)では、電気的接続にアルミニウム線を用いたワイヤボンディングで接続を得ている。
【特許文献1】特開2003−79981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常、プリント配線板と部品の接続にはハンダ付けが一般的であるが、前記のように半導体チップを直接搭載する場合、主にチップ自体の固定の役割ではなく電気的接続のためにワイヤボンディングによる方法が用いられる。
【0008】
ところが、ハンダ付けで部品の接合を得ている場合には問題とはなっていなかったが、ワイヤボンデイングで電気的接続を得る場合、従来にない新たな問題が発生している。
具体的には、プリント配線板にアルミニウム線をボンディングした場合、その条件によっては、ボンディング不良、例えばプリント配線板の導体部への未接合が多発する。
【0009】
即ち、プリント配線板にワイヤボンデイングする上で重要な条件(仕様)の設定が必要となっている。
この場合、特に、ワイヤとして、φ25からφ50μmの細いアルミニウム線(アルミニウム細線)が用いられる事で、更に特殊な条件設定が重要となる。
【0010】
また、ハンダ付けとダイボンディングおよびワイヤボンディングが共存する場合でも、同様である。例えば複数の部品を搭載する場合、ある部品はハンダ付けでの接合とし、例えばMEMSチップなどの半導体チップは、ワイヤボンディング(ワイヤボンディングの場合は半導体チップをプリント配線板にダイボンディングにより接合した後ワイヤボンディングを行う)により接続する場合である。このような場合、ハンダ付け条件とダイボンディング、ワイヤボンディングの各々の条件を満たしたプリント配線板を実現しなければならない。
【0011】
このように、通例のハンダ付け条件を満たしたまま、新規にダイボンディング、ワイヤボンディングの接合条件を満たすプリント配線板が必要になる。
【0012】
しかしこの場合、通例のプリント配線板の生産プロセスから逸脱してしまうと、プリント配線板の生産性に問題が生じる可能性もありうる。
【0013】
特に、ハンダ付け条件上、例えば下地Niめっきを有する金めっきを採用しているプリント配線板では、この金めっき固有の特異性を損ねることなく、且つ、アルミニウムワイヤのボンダビリティー、すなわちボンディングの正確性を高める条件が生産性の面で重要である。
【0014】
また、昨今、MEMS搭載のECMなどに使用されるプリント配線板では、ハンダ付けにて接続(搭載)されるパッケージ部品とMEMSチップに代表されるベアチップを共存搭載するような傾向がある。
しかしながら共存搭載をすることによって、特にMEMSチップとプリント配線板の接続においてアルミニウム線を用いる場合、アルミニウム線のワイヤボンディングではウエッジボンディングを用いることからボンディング不良、例えばワイヤの未着、または接合状態の非常に密着力の弱い脆弱な状態となったりすることがあった。その結果、MEMS搭載のECMではその接合不良により生産性が悪化、品質トラブル化に直結する問題があった。
【0015】
特に、ウェッジボンディングにおけるアルミニウム線の密着不良は、微細部の超音波接合であるため、やり直しができず、そのまま製品不良に直結するケースに至っている。
そこで、本発明では、プリント配線板の導体部の表面粗さを、アルミニウム線のワイヤボンディングに最適な設定を得る事で、実質的にボンディングの品質の高位安定化を確保できるようにしている。
【0016】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、小型化および薄型化に必要とされるプリント配線板に特に半導体チップ、例えばMEMSチップを搭載する場合の電気的接続方法であるφ25からφ50μmの細いアルミニウム線を用いたウェッジボンディングの作業性の向上を図ることができ、しかも信頼性の高い接続を得る事が可能なプリント配線板を提供することを目的とする。
また、本発明では、このプリント配線板を用いた半導体装置の製造方法、半導体装置並びに音響変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、ハンダ付け用のパッケージ部品の搭載とMEMSチップに代表されるベアタイプの半導体チップの共存搭載を有するとともに、MEMSチップの電気的接続にアルミニウム線のワイヤボンディングを用いるプリント配線板において、前記プリント配線板の導体部に金めっきを有するとともに導体部の表面粗さを特定条件としたものである。
【0018】
すなわち、本発明では、アルミニウム細線を用いたワイヤボンディングにより、半導体チップを接続するための導体部からなるパッド領域を有するプリント配線板であって、前記プリント配線板の前記パッド領域は、めっき層からなる下地層と、金めっき層とを具備し、表面粗さがアルミニウム細線よりも粗であることを特徴とする。
この構成により、表面が粗であることによってアンカー効果により接合不良がなくなり、超音波接合の密着性が向上する。
【0019】
また本発明は、上記プリント配線板において、前記アルミニウム細線を用いたワイヤボンディングは、φ25からφ50μmのアルミニウム細線を用いたウエッジボンディングであることを特徴とする。
この構成により、前記パッド領域に搭載する半導体チップが、ベアチップの状態でMEMSチップを搭載する場合にも高精度で信頼性の高い接続が可能となる
【0020】
また本発明は、上記プリント配線板において、前記パッド領域の表面粗さが、2.8〜3.3μm(Ry)(但し、Ry:最大面粗さ)であるものを含む。
この構成によれば、プリント配線板導体部の表面粗さを2.8〜3.3μm(Ry)にすることによって、ワイヤとプリント配線板間の接合が最適化され、後述する必要以上のアンカー効果による接合不良がなくなり、超音波接合の密着性が向上し、ワイヤ未着や弱密着状態による剥離を撲滅することができる。
具体的にはワイヤプル強度の保証値である5gfの約2倍の10gf近傍のプル強度が得られ、且つワイヤボンディング不良の発生も実力として1%未満と抑制することができた。
また、パッド領域の表面粗さを前記数値にすることによって、全面を同じ状態に形成してもハンダ付け性や基板の生産性に悪影響を及ぼすことがない。更に好ましいことには、導体部全面の表面粗さを前記数値にしても、プリント配線板の表面の光沢や風合いが損なわれないので、商品価値が低下することもない。
【0021】
また本発明は、上記プリント配線板において、前記パッド領域は、配線導体の表面に下地Niめっき層と、この上層に積層された金めっき層とを具備したものを含む。
この構成によれば、前記数値の表面粗さを確保しても、プリント配線板の表面の光沢や風合いが損なわれないために、製品としたときの品位が低下することはない。
【0022】
また本発明は、上記プリント配線板において、前記下地めっき層は、ブラスト加工のなされた層であるものを含む。
この方法によれば、砥粒の選定により品質管理が容易であり、所要の表面粗さの数値が得られやすくなる。
【0023】
また本発明は、上記プリント配線板において、前記下地めっき層は、バフ研磨加工のなされた表面を有するものを含む。
この構成によれば、ブラシ番手の選定により品質管理が容易であり、所要の表面粗さの数値の最適化が容易であり、作業性よく、所望の表面状態を得ることができる。
【0024】
また本発明は、上記プリント配線板において、前記下地めっき層は、エッチング加工のなされた表面を有するものを含む。
この製造方法によれば、薬液の選定および濃度、エッチングレートにより品質管理が容易であり、所要の表面粗さの数値が得られやすくなる。
さらに、ブラスト法、バフ研磨、エッチング、あるいはこれらの工法の組み合わせにより、より最適な表面状態を得ることも可能となる。
この構成により、容易に作業性よく、所望の表面状態を得ることができる。
【0025】
また本発明は、上記プリント配線板において、基板上に導体部を形成しプリント配線板を形成する工程と、前記プリント配線板の導体部の少なくともパッド領域となる領域表面の表面粗さを2.8〜3.3μm(Ry)となるように調整する工程と、前記プリント配線板の前記導体部のうち、少なくともパッド領域となる領域に下地Niめっきを形成すると共に、この下地めっき層上に金めっき層を形成する工程とを含むものを含む。
この構成によれば、表面が粗であることによってアンカー効果により接合不良がなくなり、超音波接合の密着性が向上する。
【0026】
また本発明は、上記プリント配線板と、前記プリント配線板上に搭載された半導体チップと、前記プリント配線板のパッド領域に、φ25からφ50μmのアルミニウム細線の一端をウェッジボンディングされ、他端を前記半導体チップに接続したものを含む。
この構成により、薄型でかつ設計自由度が高く信頼性の高い半導体装置を提供することが可能となる。
【0027】
また本発明の音響変換装置は、上記プリント配線板と、前記プリント配線板の前記パッド領域に、φ25からφ50μmのアルミニウム細線を用いたウェッジボンディングにより接続されたMEMSチップと、電子部品とを具備したことを特徴とする。
この構成により、薄型でかつ設計自由度が高く信頼性の高い半導体装置を提供することが可能となる。
【0028】
また、本発明においては、電子部品接合のためのハンダ接合においては、ハンダ塗布、ハンダ印刷、さらにはハンダ注入などの方法も用いることができる。
この構成によれば、従来からのハンダ塗布、クリームハンダの印刷性、更にはハンダ付け自体に、従来通りの作業性を損なうことはない。
【0029】
また、本発明においては、前記導体部に半導体チップをダイボンディングするようにしてもよい。
この構成によれば、半導体チップのダイボンディング工法における、ダイボンディング材料の塗布、印刷 などのダイボンディング材の供給に従来の作業性を損なうことはなく、且つ、ダイボンディング後の接合強度に従来の強度を損なうことはない。
【0030】
また、本発明は、該当製品、例えば音響変換装置がリフロー耐熱仕様の対象でも用いられる。
この構成によれば、鉛フリー対応のリフロー工程でも従来通りの取り扱いが可能である。
【0031】
本発明は、ハンダ付け用部品の搭載とMEMSチップに代表される新しいタイプの半導体チップの共存搭載を用いるプリント配線板を用いる音響変換装置を提供するようにしたことを特徴としている。
この構成によれば、音響変換装置の従来機能を損なうことは無い。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、プリント配線板の導体部とアルミニウムワイヤ線の密着性が向上し、且つボンディング不良による未着、未接合が発生しないため、組立上の問題がなくなり、
また完成品においてもワイヤ剥離・ワイヤ破断 などの原因による不良、不具合を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1(a)および(b)は、本発明の実施の形態1に係るMEMSマイクロホンチップ(以下MEMSチップ)搭載のエレクトレットコンデンサマイク(ECM)を示す図であり、図1(a)はキャップ透過平面図、図1(b)は製品中心横断面図を示す図である。このプリント配線板1は、その上表面に搭載されているMEMSチップ5が音を振動としてセンシングし、コンデンサ容量の変化を電気的に増幅するマイクアンプIC(例えばCMOSFETチップ)4とを具備したもので、電気的接続を得るためのアルミニウム細線からなるワイヤ3で接続されている。すなわち本発明では、φ25からφ50μmのアルミニウム細線を用いたウェッジボンディングにより、半導体チップを接続するための導体部からなるパッド領域を有するプリント配線板において、このプリント配線板の配線層は、銅からなる下地配線10と、この下地配線10に形成されたNiめっき層からなる下地層11と、金めっき層12とを具備し、表面粗さがアルミニウム細線よりも粗であり、前記パッド領域を含む配線層の表面粗さが、2.8〜3.3μm(Ry)であることを特徴とするものである。これにより、プリント配線板1の導体部表面の酸化膜1Sとアルミニウム線表面の酸化膜3Sをウエッジツールと呼ばれる専用のツールでアルミニウム線に印加加重で押し付けながら、ボンディング装置本体内の超音波発生部からホーンを介してウエッジツールに超音波を伝達することで、図2に示すように導体部(ワイヤボンディングランド)1Aとアルミニウム線3の表面に形成された酸化膜1S,3Sを破り、金属間の新生面同士の金属間接合(新生面接合K)を得ることができる。
なおこのNiめっき層は、純粋なNiに限定されることなく、Niを主成分とするめっき層であればよい。
【0034】
MEMSチップ5とマイクアンプIC4はプリント配線板に接着剤によるダイボンボンディングで固定されて構成され、電気的接続はワイヤ3によるワイヤボンデイングによって実現する。
この場合、ワイヤ3には主材料にφ25からφ50μmのアルミニウム細線を用いている。
【0035】
なお、プリント配線板には上記電気部品をノイズから保護するための金属ケース2もハンダ付けにより装着されている。
【0036】
本発明の実施の形態として、プリント配線板の配線導体のベース(下地配線10)を銅とし、下地層11としてのNiめっき層、このうえに形成された金めっき層12とアルミニウム細線3の接合を対象に説明した。
【0037】
本発明によれば、プリント配線板1上に、MEMSチップ5およびマイクアンプIC4を搭載するに際し、MEMSチップ5およびマイクアンプIC4との電気的接続を得るためにワイヤボンディングする場合に、プリント配線板1の導体部表面の表面粗さ(Ry)を0.28〜0.33μmとしているためプリント配線板導体部とワイヤ3との接合密着性を向上することが可能となる。
【0038】
なお、ワイヤボンデイング工法としては一般的に主に金線を用いるボールボンディングと主にアルミニウム細線を用いるウエッジボンディングに大別される。
【0039】
ウエッジボンデイング工法は、図2に概略説明図を示すように、接合対象物側の表面、例えばプリント配線板1の導体部表面の酸化膜1Sとアルミニウム線表面の酸化膜3Sをウエッジツールと呼ばれる専用のツールでアルミニウム線に印加加重で押し付けながら、ボンディング装置本体内の超音波発生部からホーンを介してウエッジツールに超音波を伝達することで、導体部(ワイヤボンディングランド)1Aとアルミニウム線3の表面に形成された酸化膜1S,3Sを破り、(異種金属も含む)金属間の新生面同士の金属間接合(新生面接合N)を得る方法である。
【0040】
図3(a)、(b)は、図1(a)に示す本実施の形態のプリント配線板導体部 ワイヤボンディングランド1Aの拡大写真である。
本発明の着眼になった重要なポイントであるが、その一例として、(a)ではプリント配線板の導体部表面粗さは3.0μmであった。ワイヤボンデイング後、導体部からワイヤを剥してみても、導体部側にワイヤがしっかりと付着し、金属間接合が強固な状態である事が明確である。
【0041】
即ち、本発明の実施の形態を示す図3(a)では、プリント配線板の導体部表面粗さがRy=3.0μmで、導体部とワイヤが十分な接合を得ており、且つ、ワイヤ不着 等の不良もない。このことから、Ry=3.0μmのときプリント配線板導体部の表面粗さが最適な値であることが分かる。
【0042】
また、図3(b)ではプリント配線板の導体部表面粗さは2.3μmであった。ワイヤボンデイング後、導体部からワイヤを剥してみると、導体部側にはワイヤの付着が不完全であり、特にワイヤ中央部、本来、強固な金属間接合を得たい部分にワイヤの付着残りがない事が必要であることは明確である。
【0043】
即ち、図3(b)では、プリント配線板の導体部表面粗さがRy=2.3μmとしており、このとき、導体部とワイヤが十分な接合が得られていない状態であり、プリント配線板導体部の表面粗さが最適な値でない事がわかる。
この事例からも、表面粗さが適切でない場合、接合強度が不安定であり、さらに、場合によっては接合不良の発生になることが明らかである。
【0044】
さらに、図4を用いて、本発明の重要なポイントの概念を説明する。
図2でも説明したが、ここでのワイヤボンデイングによる接合は2種の異種金属の新生面の金属間接合によって得られる。
この場合、新生面の接合距離(または面積)が大きいほど、接合強度は有利となる。
本発明ではこの点に注目し、接合面積を大きく得るための手段として、表面粗さの違いによる平面的な単位面積に含まる、立体的に表面積を大きく得る条件を実験により最適な値とした。
【0045】
即ち、図4(a)では、プリント配線板1の導体部表面粗さが細かい状態、即ち滑らかな状態であると、拡大図を図2(a)に示したように導体部表面とワイヤの接触となる面積は少なくなり、アルミニウム細線表面の自然酸化膜3Sがパッド領域の金めっき層表面との間に介在しており、接合強度が弱い。
しかし、本発明の実施の形態である図4(b)では拡大図を図2(b)に示したように強固な接合面積を得られる最適な表面粗さとなる。
【0046】
また、図4(c)では、プリント配線板の導体部表面粗さが荒い状態、即ちギザギザまたはデコボコした状態であると、導体部表面にワイヤが突き刺さり、見かけの接触面積は大きいがウエッジツールがワイヤ上面で滑ってしまい、超音波が伝わらず、新生面接合が得られない、所謂、アンカー効果のみの接合となる。
ここでのアンカー効果とは、アルミニウム線に導体部の凸部が突き刺さり、見掛けの接合がなされている状態を指す。
この場合、実際に金属間接合はなされていないため、接合強度は弱く、生産歩留まりや信頼性品質的にも十分な状態ではない。
【0047】
φ25からφ50μmのアルミニウム細線を用いたウェッジボンディングにより、プリント配線板導体部の表面粗さ[Ry:μm]:横軸と、ボンダビリティすなわち接合強度[gf]:左縦軸と、ワイヤボンディング不良率「%」:右縦軸との関係を測定した結果を図5に示す。図中、Aはプル強度値のばらつき範囲、曲線aはワイヤボンディング不良率、曲線bは接合強度を示す。また水平な一点鎖線はプル強度保証値を示す。
プリント配線板導体部の表面粗さが2.5μm未満の場合、図5のように、ボンディング不良率が10%を超え極端に悪化する。この現象は表面粗さが滑らかになる事により導体表面とアルミニウム線の酸化膜がワイヤボンディング工法で使用される超音波による衝撃では破れづらく新生面同士の金属間接合が十分に得られないことに起因する。
【0048】
即ち、図5で示すように、導体部の材料表面が滑らかな状態であることで、異種金属による新生面同士の結合が接合面積全面で得られ辛く、接合不良、すなわち、ワイヤ不着や接合強度不足の状態となる。
ここでの現象は、ワイヤプル強度にも現れていて、プル強度のバラツキが大きいことも同時に確認できており、裏付けデータとして確認できている。
【0049】
また、プリント配線板導体部の表面粗さが3.5μm以上の場合も、2.5μm未満の場合と同様、図5のように、ボンディング不良率が10%を超え極端に悪化する。
この現象は表面粗さが粗すぎる事により導体表面とアルミニウム線がワイヤボンディング工法での印加加重により、いわゆる「アンカー効果」により食い込んでしまい、その後の超音波による摩擦が得られない状態により新生面同士の金属間接合が得られないために起因する。
【0050】
即ち図5で示すように、導体部の材料表面が粗すぎる状態であることで、導体表面にアルミニウム線が食い込み、ウエッジツールとワイヤ間で超音波による滑りが発生し、異種金属による新生面同士の結合が得られず、単なるアンカー効果のみの接合となり、本来の新生面接合が得られず、結果、ワイヤ不着や接合強度不足となる。
【0051】
つまり表面粗さが細か過ぎても、表面組さが粗過ぎても、プリント配線板導体部とアルミニウム線の接合界面面積は最適にならない。その結果、接合界面の単位面積あたり「ピール強度」(90°剥離試験)はその表面粗さの状態により左右されることとなる。本発明はこの現象に着目し、密着力が向上する原理として表面粗さの範囲を実験により実証したものである。
本発明はこの現象に着目し、密着力が向上する原理として表面粗さの範囲を実験により実証したものである。
【0052】
次に、本発明に係るプリント配線板の導体部表面粗さの製造方法について、前述の実施の形態に係るプリント配線板導体部について、その製造方法を説明する。
【0053】
本発明のプリント配線板について、材料の種類、層構成は特に問わない。
しかし、最表面の導体、すなわち銅パターンの表面を平坦に加工する場合の工法には次のような方式が該当する。
【0054】
本発明の、プリント配線板導体部の表面粗さを得る方法として、ブラスト(またはスクラブ加工とも言う)加工を採用可能である。
【0055】
また、本発明の、プリント配線板導体部の表面粗さを得る方法として、ベルト研磨(またはバフ研磨とも言う)加工を採用可能である。
【0056】
また、本発明の、プリント配線板導体部の表面粗さを得る方法として、エッチング加工を採用可能である。
【0057】
さらにこれらの工法の組み合わせにより、より最適な表面状態を得ることも可能となる。
【0058】
本発明の実施の形態では、組み合わせ加工とを採用した。
この場合、前工程でベルト研磨(バフ)加工により粗い面を構成したのち、ブラスト加工で狙いの表面粗さを得る、組み合わせの工法により、最適化に貢献した。
【0059】
さらに、ハンダ付け工法と共存を図るため、プリント配線板の導体には一般的な銅層であり、その上に下地Niめっきを3〜8μm積層、その後、0.2〜0.6μm厚の金めっき層を配した。
この層構成によっても、本発明の表面粗さ値は変化は認められず、ボンダビリティーに問題はない。もちろん、ハンダ付け性を損なう事もない。
【0060】
さらに、本発明では半導体チップのダイボンディングにもよい影響が確認できた。
プリント配線板の導体部とダイボンディング接着剤の接着表面積が増えることで、ダイボンディングの接合強度もアップする。
【0061】
このようにしてMEMS搭載のECM用のプリント配線板の導体部のワイヤボンデイングに最適な表面粗さを形成する場合、形成したMEMS搭載のECMは、−45〜−32[dB]に至る高感度を達成できる。
これにより、リフロー耐熱対応で且つ極薄のスタイリッシュな携帯電話、PDAへの搭載が可能になり、さらには同時多者通話可能なハンズフリーホンなども実現可能である。
【0062】
また、このようにしてプリント配線板の導体の表面粗さを最適化形成すると、ワイヤボンディングの不良を起こすことがなく、且つ、信頼性にあっても品質の向上を得る事ができる。
【0063】
以上、本実施の形態では、MEMS搭載ECMでアルミニウム線ワイヤボンデイングとの組み合わせた構成のもので説明してきたが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲での変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0064】
また、前述の実施の形態では、本発明のプリント配線板をMEMS搭載ECMなどの音響変換装置用のプリント配線板に適用したが、各種電気部品や電子部品用のプリント配線板として、アルミニウム線ワイヤボンディングを用いる汎用的なものに適用可能である。
【0065】
なおこの表面粗さは、ワイヤボンディングランドのみでもよいし、配線層全体にわたって形成されていてもよい。
また、下地配線については銅に限定されることなく適宜選択可能であり、下地層としてはNiめっき層に限定されることなくNiを主成分とするめっき層であればよい。金めっき層についても同様である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のプリント配線板は、プリント配線板導体部とアルミニウム線の密着性が向上し、かつ信頼性も向上するため、組立上の問題およびワイヤボンディングに関する製品品質問題がなくなり、また完成品においても剥離原因による不良、不具合が回避可能になり、音圧センサー更にはエレクトレットコンデンサマイクロホンなどに好適なプリント配線板及びその製造方法とこれらを用いた音響変換装置に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】(a)は本発明の実施の形態に係るMEMS-ECM用の一例の透視(=金属ケース部)概略平面図、(b)はその製品中心横断面図
【図2】本発明のアルミニウム細線ボンディングの接合メカニズム原理を示す図、(a)は従来例のプリント配線板の導体部を示す拡大図、(b)本発明に関わるプリント配線板の導体部を示す拡大図、
【図3】表面粗さの差異によるワイヤボンディング後の接合状態の差異を示す写真
【図4】本発明の接合メカニズムを接合状態毎に示す説明概略図
【図5】本発明のワイヤボンディングにおける表面粗さと接合強度とボンディング不良率の関係を示す図
【符号の説明】
【0068】
1 プリント配線板
1A 導体部(ワイヤボンディングランド部)
2 金属ケース
3 アルミニウム線
4 マイクアンプIC
5 MEMSチップ
10 下地配線
11 Niめっき層
12 Auめっき層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム細線を用いたワイヤボンディングにより、半導体チップを接続するための導体部からなるパッド領域を有するプリント配線板であって、
前記プリント配線板の前記パッド領域は、めっき層からなる下地層と、金めっき層とを具備し、表面粗さが前記アルミニウム細線よりも粗であるプリント配線板。
【請求項2】
請求項1に記載のプリント配線板であって、
前記アルミニウム細線を用いたワイヤボンディングは、φ25からφ50μmのアルミニウム細線を用いたウエッジボンディングであるプリント配線板。
【請求項3】
請求項1に記載のプリント配線板であって、
前記パッド領域の表面粗さが、2.8〜3.3μm(Ry)であるプリント配線板。
【請求項4】
請求項1に記載のプリント配線板であって、
前記パッド領域は、配線導体の表面にNiを主成分とする下地Niめっき層と、この上層に積層された金めっき層とを具備したプリント配線板。
【請求項5】
請求項1に記載のプリント配線板であって、
前記下地めっき層は、ブラスト加工のなされた層であるプリント配線板。
【請求項6】
請求項1に記載のプリント配線板であって、
前記下地めっき層は、バフ研磨加工のなされた表面を有するプリント配線板。
【請求項7】
請求項1に記載のプリント配線板であって、
前記下地めっき層は、エッチング加工のなされた表面を有するプリント配線板。
【請求項8】
基板上に導体部を形成しプリント配線板を形成する工程と、
前記プリント配線板の導体部の少なくともパッド領域となる領域表面の表面粗さを2.8〜3.3μm(Ry)となるように調整する工程と、
前記プリント配線板の前記導体部のうち、少なくともパッド領域となる領域に下地めっき層を形成すると共に、この下地めっき層上に金めっき層を形成する工程とを含む半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれかに記載のプリント配線板と、
前記プリント配線板上に搭載された半導体チップと、
前記プリント配線板のパッド領域に、φ25からφ50μmのアルミニウム細線の一端をウェッジボンディングされ、他端を前記半導体チップに接続した半導体装置。
【請求項10】
請求項1乃至7のいずれかに記載のプリント配線板と、
前記プリント配線板の前記パッド領域に、φ25からφ50μmのアルミニウム細線を用いたウェッジボンディングにより接続されたMEMSチップと、電子部品とを具備した音響変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−267157(P2009−267157A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−116126(P2008−116126)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】