説明

プリント配線板およびプリント配線板の製造方法

【課題】歩留まりに優れたプリント配線板を提供する。
【解決手段】プリント配線板101の製造方法は、少なくとも絶縁層102の一面上にキャリア基材付き銅箔が積層された積層板からキャリア基材を分離する工程と、銅箔層104上に、銅箔層104よりも厚い金属層115を全面にまたは選択的に形成する工程と、少なくとも銅箔層104をエッチングすることにより、銅箔層104および金属層115から構成される導電回路119のパターンを得る工程と、を含み、金属層115と接する銅箔層104の面(上面20)において、XRD(X−ray Diffraction)薄膜法で測定したときの面方位(111)、(200)、(220)および(311)のピーク強度の和に対して、面方位(200)のピーク強度の比率が26%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板およびプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の高機能化等の要求に伴い、電子部品の高密度集積化、さらには高密度実装化等が進んでおり、これらに使用される高密度実装対応のプリント配線板等は、従来にも増して、小型薄型化、高密度化、及び多層化が進んでいる。
こうしたプリント配線板の基板上に高密度でパターン精度の高い導体回路層を効率よく形成する方法としてセミアディティブ法が行われ始めている。このセミアディティブ法を用いたプリント配線板の製造方法は、たとえば、特許文献1、および特許文献2に記載されている。
特許文献1および2に記載の製造方法は、まず、両面銅張積層板上にレジストパターンを形成し、続いて、レジストパターンの開口部内にめっき層を充填した後、このレジストパターンを除去する。この後、めっき層のパターンをマスクとして、下層の銅箔をエッチングすることにより、めっき層及び銅箔から構成される導電回路パターンを形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−69218号公報
【特許文献2】特開2003−60341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の微細な導電回路パターンを形成する工程においては、配線形状を所望の形状に維持することが難しい点に改善の余地があった。
すなわち、従来の導電回路パターンは、上層(めっき層)と下層(銅箔)との2層で構成されており、これらの上層と下層とでは、その上面の面方位や構成材料が異なることがある。このため、上層に合わせてエッチング条件を調整したとしても、下層においてエッチング速度が速くなったり遅くなったりする。その結果、平面視において、上層(めっき層)の側壁から外側の領域に、はみ出すようにして下層(銅箔)の一部が残ること(以下、裾残りという)が生じることがあり得る。
しかし、この下層の裾残りを除去するためにエッチング量を多くすると、反対に上層(めっき層)が過剰に削られることになるので、従来の導電回路パターンを形成する工程では配線形状が不良となり得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、
少なくとも絶縁層の一面上にキャリア基材付き銅箔が積層された積層板から前記キャリア基材を分離する工程と、
前記銅箔上に、前記銅箔よりも厚い金属層を全面にまたは選択的に形成する工程と、
少なくとも前記銅箔をエッチングすることにより、前記銅箔および前記金属層から構成される導電回路パターンを得る工程と、を含み、
前記金属層と接する前記銅箔の面において、XRD薄膜法で測定したときの面方位(111)、(200)、(220)および(311)のピーク強度の和に対して、前記面方位(200)のピーク強度の比率が26%以下である、プリント配線板の製造方法が提供される。
【0006】
本発明者らは、下層(銅箔)のエッチングレートをコントロールするために、種々の実験を行った結果、下層の上面において、面方位(111)よりエッチングされやすい面方位(200)の比率を少なくすることにより、従来と比較してエッチング特性に優れた下層(銅箔)が得られることを見出した。
本発明者らは、こうした知見に基づいて、下層の上面(金属層と接する面)における結晶面(200)の比率を所定値以下とすることにより、従来にない良好な配線形状を実現できることを見出し、本発明に至ったものである。
【0007】
また、本発明によれば、
絶縁層と、
前記絶縁層上に設けられており、銅箔および金属層が積層して構成される導電回路パターンと、を備え、
前記金属層と接する前記銅箔の面において、XRD薄膜法で測定したときの面方位(111)、(200)、(220)および(311)のピーク強度の和に対して、前記面方位(200)のピーク強度の比率が26%以下である、プリント配線板が提供される。
【0008】
本発明によれば、銅箔の上面(金属層と接する面)における面方位(200)の比率が所定値以下であるので、前述のとおり、従来にない良好な配線形状が形成されやすくなり、歩留まりに優れた構造が実現される。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、歩留まりに優れたプリント配線板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0011】
【図1】第1の実施の形態のプリント配線板の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】第1の実施の形態のプリント配線板の一部を模式的に示す断面図である。
【図3】裾残りを説明するためのプリント配線板を模式的に示す断面図である。
【図4】第1の実施の形態の効果を説明するためのプリント配線板を模式的に示す平面図である。
【図5】第1の実施の形態の配線形状を説明するための断面図である。
【図6】第1の実施の形態の配線形状の変形例を模式的に示す断面図である。
【図7】第2の実施の形態のプリント配線板の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。
【図8】第2の実施の形態のプリント配線板の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。
【図9】第2の実施の形態の配線形状の変形例を模式的に示す断面図である。
【図10】第3の実施の形態のプリント配線板の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。
【図11】第3の実施の形態のプリント配線板の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。
【図12】第3の実施の形態のプリント配線板の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。
【図13】第1の実施の形態のプリント配線板の製造方法の変形例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0013】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態のプリント配線板の製造方法の工程手順を示す断面図である。第1の実施の形態のプリント配線板101の製造方法は、少なくとも絶縁層102の一面上にキャリア基材付き銅箔が積層された積層板(キャリア箔付き銅張積層板10)からキャリア基材(キャリア箔層106)を分離する工程と、銅箔層104上に、銅箔層104よりも厚い金属層115を全面にまたは選択的に形成する工程と、少なくとも銅箔層104をエッチングすることにより、銅箔層104および金属層115から構成される導電回路119のパターンを得る工程と、を含む。本製造工程において、金属層115と接する銅箔層104の面(上面20)において、XRD(X−ray Diffraction)薄膜法で測定したときの面方位(111)、(200)、(220)および(311)のピーク強度の和に対して、面方位(200)のピーク強度の比率が26%以下である。
【0014】
また、図2は、第1の実施の形態のプリント配線板101における導電回路119の拡大断面図である。図2に示すように、本実施の形態のプリント配線板101は、絶縁層102と、絶縁層102上に設けられており、銅箔層104および金属層115から構成される導電回路119のパターンと、を備えている。この金属層115と接する銅箔層104の面(上面20)は、XRD薄膜法で測定したときの面方位(111)、(200)、(220)および(311)のピーク強度の和に対して、面方位(200)のピーク強度の比率が26%以下により特定される。
【0015】
本実施の形態において、XRD薄膜法は、入射角が0.2〜10度の条件を用いる。XRD薄膜法により得られたピーク強度とは、各面方位に相当する強度における最大値を意味する。具体的には、全自動粉末X線回折装置(Philips社製、PW1700型)、線源としてCu−Kα線を使用して測定した。X線の入射角(α)を、試料面(今回の場合、キャリア箔を剥離した表面)に対して1°の角度となるように入射させ、2θ走査で検出される面方位(111)、(200)、(220)および(311)からの回折線のピーク積分強度をそれぞれ求めるものである。薄膜法の場合、入射角は固定であるため、θと区別するため、αとの表示が用いられ、2θについては、入射線に対する計数管の位置という意味において、通常法と同じであるので同じ表示をしている。また、薄膜法は、通常法と異なり、X線の侵入深さを必要最小限に抑えることができ、試料面の数ナノ〜数ミクロンの範囲での結晶構造解析が可能である。このため、0.1〜5.0μm厚み銅箔層の結晶配向を正確に評価するためには上述の薄膜法によるX線回折が必要である。
【0016】
また、XRD薄膜法により測定される銅金属(たとえば、銅粉末)の主な結晶面は、面方位(111)、(200)、(220)および(311)から構成されることが知られている。これらのピーク強度の値は、結晶面の面積に比例する関係にある。
このことから、銅箔の上面における面方位(111)、(200)、(220)および(311)のピーク強度の合計値は、その上面における各種の結晶面の面積の合計値に比例する。したがって、面方位(111)、(200)、(220)および(311)のピーク強度の和に対する、面方位(200)のピーク強度の比率は、銅箔の上面における主要な結晶面に対する面方位(200)の占有面積率を示すと言える。
【0017】
また、銅箔の原子面密度は、面方位(111)>面方位(200)>面方位(220)の順となる。原子面密度が小さいほど、通常、エッチングされやすさを示すエッチング特性が高くなる。このため、銅箔におけるエッチング特性は、面方位(220)>面方位(200)>面方位(111)の順となる。すなわち、面方位(220)および面方位(200)は、面方位(111)より高いことが言える。
【0018】
以上より、XRD薄膜法で測定したときの面方位(111)、(200)、(220)および(311)のピーク強度の和に対して、面方位(200)のピーク強度の比率が低いことは、面方位(200)の占有面積率が低くなるので、その銅箔の上面におけるエッチング特性が低いことを示す。このようにピーク強度の比率は占有面積の比率とは、同じ技術的意味を示すので、以下、これらをまとめて、単に比率と呼称することがある。
【0019】
また、本書において、銅箔層104のおける側面24に対するエッチングを、サイドエッチングという。このサイドエッチングにおいては、絶縁層102の上面に対して水平方向にエッチングが進行する。
一方、銅箔層104の上面20に対するエッチングを、縦エッチングという。この縦エッチングにおいては、絶縁層102の上面に対して垂直方向にエッチングが進行する。
【0020】
以下、第1の実施の形態のプリント配線板の製造方法の概略について説明した後に、この製造方法の作用効果を、従来の製造方法と比較しながら説明する。なお、第1の実施の形態の詳細な製法条件や材料等については、第2の実施の形態の欄にて後述する。
【0021】
第1の実施の形態のプリント配線板の製造方法の工程は以下の工程を含む。すなわち、まず、図1(a)に示すように、キャリア箔付き銅張積層板10を準備する。このキャリア箔付き銅張積層板10においては、絶縁層102の両面に銅箔層104とともにキャリア箔層106が貼り付けられている。続いて、図1(b)に示すように、キャリア箔付き銅張積層板10からキャリア箔層106を引きはがす等して除去する。続いて、図1(c)に示すように、残された銅箔層104上に所定の開口パターンを有するレジスト層112を形成する。このレジスト層112の開口パターン内および銅箔層104上に、めっき処理によりめっき層(金属層115)を形成する(図1(d))。引き続き、図1(e)に示すように、レジスト層112を除去する。これにより、銅箔層104上に所定の金属層115のパターンを選択に形成できる。このとき、金属層115に覆われていない領域においては、銅箔層104の上面20における面方位(200)のピーク強度の比率が26%以下である。この後、図1(f)に示すように、金属層115に覆われていない領域における銅箔層104を、例えば、ソフトエッチングにより除去する。このような銅箔層104の除去工程の後、残された銅箔層104と金属層115とにより、導電回路119のパターンを形成することができる。
以上の工程により、本実施の形態のプリント配線板101が得られる(図1、図2)。
【0022】
続いて、特許文献1や2等の従来のプリント配線板の製造方法で発生する裾残りについて、図3を用いて説明する。
従来のプリント配線板の製造方法は、以下の工程を含む。すなわち、前述のとおり、プレーン形状の銅箔層4上に所定のパターンを有する上層の金属層14を形成し、この金属層14をマスクとして、下層の銅箔層4をエッチングにより除去する。
【0023】
しかし、本発明者らの検討によれば、従来のプリント配線板の製造方法においては、これらの銅箔層4と金属層14とは構成材料や上面における面方位が異なるので、これらのエッチングレートも異なる。したがって、従来、こうしたエッチングの条件を、金属層14が削られないような条件に調整したとしても、銅箔層4に対するエッチング速度が遅くなり、銅箔層4の裾残りが発生することがあり得る(図3(a))。このような裾残りが存在すると、導電回路19の間のスペースS2(以下、スペースS2という)が狭くなり、微細な配線パターンを形成することが難しくなる。
これに対して、こうしたスペースS2を広くすることを目的として、裾残りを除去するために、下層の銅箔層104に対するエッチング量を増加させると、金属層14が削られることになる(図3(b))。この金属層14の形状が変形すると、導電回路19の形状(配線形状)が不良となり、接続不良が発生することがあり得る、という事が判明した。
【0024】
本発明者らは、さらに検討した結果、下層(銅箔)のエッチングレートをコントロールするために、種々の実験結果から、下層の上面20において、面方位(111)よりエッチングされやすい面方位(200)の比率を少なくすることにより、従来と比較してサイドエッチング特性に優れた下層(銅箔)が得られることを見出した。
このメカニズムは明確ではないが、銅箔層104の上面20において、エッチング特性に優れる面方位(200)の比率を低くすることにより、側面24において面方位(200)の比率が高くなるので、側面24におけるサイドエッチングの速度を向上させることができると、推察される。
こうした知見から、本実施の形態においては、銅箔層104の上面20において、エッチング特性に優れる面方位(200)の比率を所定値以下としている。これにより、銅箔層104のサイドエッチング特性を向上させることができるので、従来にない良好な配線形状を実現でき、その結果、歩留まりに優れたプリント配線板が得られる。
【0025】
ここで、良好な配線形状について、図2〜図4を用いて説明する。図4において、銅張積層板1は、絶縁層2、銅箔層4、金属層14を有する。良好な配線形状とは、第1に、従来と比較して裾残りが少ないという特性で特定されている形状を指す。この裾残りとは、図4に示すように、平面視において、金属層14の延在方向と直交する幅方向において、金属層14の外側の領域に銅箔層4がはみ出て形成されている部分をいう。この裾残りが発生しているか否かの判断について、図2、図3を用いて説明する。これらの図に示すように、たとえば、断面視において、上記幅方向における銅箔層104(14)の最大幅をL1とし、上記幅方向における金属層115(14)の最小幅をL2としたとき、L1−L2=ΔLが0より大きい場合には、裾残りが発生していると判断する。こうした場合において、本実施の形態における導電回路119においては、ΔLが従来のものより小さければよく、より好ましくは、L1とL2とが同一であり(図2(a))、さらに好ましくはL1がL2より小さいものである。L1がL2より小さい場合に、断面視における銅箔層104が、銅箔層104の平面方向の幅が金属層115の平面方向の幅よりも小さいくなる領域を有する(図2(b))。このようなL1およびL2で特定される導電回路119の形状は、良好な配線形状ということができる。
【0026】
また、本実施の形態における良好な配線形状とは、第2に、金属層115の形状が、所望の形状を維持しているという特性で特定されているものを指す(図2(a)および(b))。ここでいう、所望の形状とは、設計通りの形状を意味しており、例えば、四角形状などを指す。L1がL2と同一、さらにはL1がL2より小さい場合であっても、銅箔層104のサイドエッチング特性を向上させているので、このような形状が実現できる。
【0027】
また、銅箔層104の断面形状としては、図2(a)に示すように、金属層115と同じ幅を有する矩形形状でもよいし、図2(b)に示すように、逆テーパ形状でもよい。この逆テーパ形状の銅箔層104は、平面視において、第1面(上面20)から第2面(下面22)に向かって、その面積が小さくなるものでもよい(ただし、製造工程におけるバラツキにより、側面24の一部において凹凸が形成されていてもよい)。また、図5に示すように、幅方向の断面視において、絶縁層102に対する垂線と側面24との成す角θ(左回りの角度)が、たとえば、好ましくは0度以上20度以下であり、より好ましくは1度以上10度以下である。
【0028】
また、その他の銅箔層104の形状としては、図6(a)に示す、かまぼこ形状でもよいし、図6(b)に示す、くびれ形状でもよい。このような形状の銅箔層104を用いることで、導電回路119においてL1をL2より小さくすることができ、さらには、逆テーパ形状と比較して絶縁層102との接触面積を一定以上確保することも可能となる。
【0029】
また、本実施の形態のプリント配線板においては、ラインアンドスペース(以下、L/Sと呼称する)制御性が優れることについて、図4を用いて説明する。
図4に示す、スペースS2およびスペースS1は、導電回路19、119が延在する方向に対して、直交する方向の幅方向における、最も隣接している導電回路19、119の間の距離を示す。
従来のプリント配線板の製造方法においては、銅箔層4のエッチング条件は金属層14の形状をエッチングしないように調整されていたため、金属層14の外側に延在する裾残りの長さは、長くなったり短くなったりする。こうした裾残り部分を常に離間するために、図4(b)に示すように、スペースS2を充分確保する必要があった。言い換えると、スペースS2は、L1の変動に合わせて、調整する必要がある。従来のプリント配線板の製造方法においては、こうしたL1/S2の制御性は低いために、微細な配線を形成することが難しかった。
【0030】
これに対して、本実施の形態のプリント配線板の製造方法においては、銅箔層104のサイドエッチング特性を向上させることができるので、金属層115の形状を所望の形状に維持したまま、幅方向における銅箔層104の幅を制御することが可能となる。このため、L1をL2以下とすることができるので(すなわち、裾残りがなくなるので)、スペースS1を、金属層115の最小幅L2により決定することができる。このL2は、前述のとおり、設計通りの値とすることができる。したがって、本実施の形態のプリント配線板の製造方法においては、こうしたL2/S1の制御性に優れている。したがって、L/S制御性に優れているので、接続不良を抑制しつつも、微細配線加工が可能なプリント配線板の製造方法が得られる。
【0031】
(第2の実施の形態)
以下、第2の実施の形態のプリント配線板の製造方法について説明する。第2の実施の形態では、第1の実施の形態で省略した、詳細な製法条件や材料等について例示する。
【0032】
第2の実施の形態のプリント配線板の製造方法は、金属層116を全面にまたは選択的に形成する工程が、銅箔層104および絶縁層102から構成される銅張積層板100を貫通する貫通孔108を形成する工程と、少なくとも貫通孔108の内壁に薬液を接触させる工程と、無電解めっきにより、絶縁層102の上面上と裏面上との銅箔層104とを電気的に接続する無電解めっき層110を形成する工程と、をさらに含む点が、第1の実施の形態と異なる。
図7および図8は、第2の実施の形態のプリント配線板の製造方法の工程手順を示す断面図である。
【0033】
まず、図7(a)に示すように、絶縁層102の両面にキャリア箔層106とともに銅箔層104を張り合わせたキャリア箔付き銅張積層板10を準備する。
【0034】
キャリア箔付き銅張積層板10としては、たとえば、銅張積層板100の少なくとも一面に剥離可能なキャリア箔層106が積層されている。この銅張積層板100は(以下、積層板と呼称することもある)、特に限定されないが、例えば、基材入りの絶縁樹脂層を有する絶縁層102の少なくとも一面に銅箔層104が積層されたものを用いることができる(図では、繊維基材を省略)。この積層板は、単層でもよいが多層構造を有していてもよい。すなわち、積層板としては、コア層のみで構成されていてもよいが、コア層上にビルドアップ層が形成されているものを用いてもよい。このような積層板は、公知のものを適用することができ、例えば、プリプレグを複数枚重ね合わせたもの等を用いることができる。このプリプレグは、特に限定されないが、例えば、ガラスクロス等の基材に、熱硬化性樹脂、硬化剤、及び充填剤等を含有した樹脂組成物を含浸させる等の方法によって得られる。そして、積層板としては、少なくとも片面にキャリア箔付き極薄金属箔を重ね合わせて加熱加圧成形したもの等を用いることができる。また、ビルドアップ層の層間絶縁層には、コア層と同じ材料のものを用いてもよいが、基材または樹脂組成物が異なっていてもよい。本実施の形態では、絶縁層102は、コア層またはビルドアップ層を構成する絶縁樹脂層に相当するものであり、単層又は多層構造のいずれでもよい。ビルドアップ層を備える積層板を用いた例については、第3の実施の形態にて後述する。
【0035】
本実施の形態に用いられる積層板、および層間絶縁層を構成する樹脂組成物は、プリント配線板の絶縁材料として用いられる公知の樹脂(以下、絶縁樹脂組成物とも称する)を用いることができ、通常、耐熱性、耐薬品性の良好な熱硬化性樹脂が主に用いられる。上記樹脂組成物は、特に限定されず、少なくとも熱硬化性樹脂が含まれる樹脂組成物であることが好ましい。
【0036】
熱硬化性樹脂としては、例えば、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂、マレイミド化合物、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、ビスアリルナジイミド化合物、ビニルベンジル樹脂、ビニルベンジルエーテル樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、シアネート樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、硬化性樹脂は、ガラス転移温度が200℃以上になる組合せが好ましい。例えば、スピロ環含有、複素環式、トリメチロール型、ビフェニル型、ナフタレン型、アントラン型、ノボラック型の2または3官能以上のエポキシ樹脂、シアネート樹脂(シアネート樹脂のプレポリマーを含む)、マレイミド化合物、ベンゾシクロブテン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂を用いるのが好ましい。エポキシ樹脂および/またはシアネート樹脂を用いる場合には、線膨張が小さくなり、耐熱性が著しく向上する。また、エポキシ樹脂および/またはシアネート樹脂を高充填量の充填材と組み合わせると、難燃性、耐熱性、耐衝撃性、高剛性、および電気特性(低誘電率、低誘電正接)に優れるというメリットがある。ここで、耐熱性の向上は、上記熱硬化性樹脂の硬化反応後にガラス転移温度が200℃以上になること、硬化後の樹脂組成物の熱分解温度が高くなること、250℃以上での反応残渣などの低分子量が低減することに起因すると考えられる。更に、また、難燃性の向上は、芳香族系の熱硬化性樹脂のためその構造上ベンゼン環の割合が高いため、このベンゼン環が炭化(グラファイト化)し易く、炭化部分が生じることに起因すると考えられる。
【0037】
上記樹脂組成物は、さらに、本発明の効果を損なわない範囲で難燃剤を含有しても良いが、環境の側面から非ハロゲン系難燃剤が好ましい。難燃剤としては、例えば、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。有機リン系難燃剤としては、三光(株)製のHCA、HCA−HQ、HCA−NQ等のホスフィン化合物、昭和高分子(株)製のHFB−2006M等のリン含有ベンゾオキサジン化合物、北興化学工業(株)製のPPQ、クラリアント(株)製のOP930、大八化学(株)製のPX200等のリン酸エステル化合物、東都化成(株)製のFX289、FX310等のリン含有エポキシ樹脂、東都化成(株)製のERF001等のリン含有フェノキシ樹脂等が挙げられる。有機系窒素含有リン化合物としては、四国化成工業(株)製のSP670、SP703等のリン酸エステルアミド化合物、大塚化学(株)社製のSPB100、SPE100、(株)伏見製作所製FP−series等のホスファゼン化合物等が挙げられる。金属水酸化物としては、宇部マテリアルズ(株)製のUD650、UD653等の水酸化マグネシウム、住友化学(株)製CL310、昭和電工(株)製、HP−350等の水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0038】
上記樹脂組成物に用いるエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂などのアリールアルキレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、2官能ないし4官能エポキシ型ナフタレン樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂などのナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0039】
エポキシ樹脂として、これらの中の1種類を単独で用いてもよいし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用してもよい。また、これらの中の1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーとを併用してもよい。
【0040】
これらエポキシ樹脂の中でもとくにアリールアルキレン型エポキシ樹脂が好ましい。これにより、吸湿半田耐熱性および難燃性をさらに向上させることができる。
【0041】
アリールアルキレン型エポキシ樹脂とは、繰り返し単位中に一つ以上のアリールアルキレン基を有するエポキシ樹脂をいう。例えばキシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中でもビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂が好ましい。ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂は、例えば下記一般式(1)で示すことができる。また、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂としては、例えば日本化薬(株)製のNC−3000、NC−3000L、NC−3000−FHが挙げられる。
【0042】
【化1】

【0043】
上記一般式(1)で示されるビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂の平均繰り返し単位nは任意の整数である。nの下限は、とくに限定されないが、1以上が好ましく、とくに2以上が好ましい。nが小さすぎると、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂が結晶化しやすくなり、汎用溶媒に対する溶解性が比較的低下するため、取り扱いが困難となる場合がある。nの上限は、とくに限定されないが、10以下が好ましく、とくに5以下が好ましい。nが大きすぎると樹脂の流動性が低下し、成形不良などの原因となる場合がある。
【0044】
上記以外のエポキシ樹脂としては、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。これにより、耐熱性、低熱膨張性をさらに向上させることができる。
【0045】
縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂は、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、クリセン、ピレン、トリフェニレン、およびテトラフェン、その他の縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂である。縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂は、複数の芳香環が規則的に配列することができるため低熱膨張性に優れる。また、ガラス転移温度も高いため耐熱性に優れる。さらに、繰返し構造の分子量が大きいため従来のノボラック型エポキシ樹脂に比べ難燃性に優れ、シアネート樹脂と組合せることでシアネート樹脂の弱点の脆弱性を改善することができる。したがって、シアネート樹脂と併用して用いることで、さらにガラス転移温度が高くなるため鉛フリー対応の実装信頼性に優れる。
【0046】
縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂は、フェノール類化合物とホルムアルデヒド類化合物、および縮合環芳香族炭化水素化合物から合成された、ノボラック型フェノール樹脂をエポキシ化したものである。
【0047】
フェノール類化合物は、とくに限定されないが、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾールなどのクレゾール類、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノールなどのキシレノール類、2,3,5トリメチルフェノールなどのトリメチルフェノール類、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノールなどのエチルフェノール類、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、t−ブチルフェノールなどのアルキルフェノール類、o−フェニルフェノール、m−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、カテコール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレンなどのナフタレンジオール類、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、ピロガロール、フルオログルシンなどの多価フェノール類、アルキルレゾルシン、アルキルカテコール、アルキルハイドロキノンなどのアルキル多価フェノール類が挙げられる。これらのうち、コスト面および分解反応に与える効果から、フェノールが好ましい。
【0048】
アルデヒド類化合物は、とくに限定されないが、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ポリオキシメチレン、クロラール、ヘキサメチレンテトラミン、フルフラール、グリオキザール、n-ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、テトラオキシメチレン、フェニルアセトアルデヒド、o-トルアルデヒド、サリチルアルデヒド、ジヒドロキシベンズアルデヒド、トリヒドロキシベンズアルデヒド、4−ヒドロキシ−3−メトキシアルデヒドパラホルムアルデヒドなどが挙げられる。
【0049】
縮合環芳香族炭化水素化合物は、とくに限定されないが、例えば、メトキシナフタレン、ブトキシナフタレンなどのナフタレン誘導体、メトキシアントラセンなどのアントラセン誘導体、メトキシフェナントレンなどのフェナントレン誘導体、その他テトラセン誘導体、クリセン誘導体、ピレン誘導体、誘導体トリフェニレン、およびテトラフェン誘導体などが挙げられる。
【0050】
縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂は、とくに限定されないが、例えば、メトキシナフタレン変性オルトクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ブトキシナフタレン変性メタ(パラ)クレゾールノボラックエポキシ樹脂、およびメトキシナフタレン変性ノボラックエポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中でも、下記式(2)で表される縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。また、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂としては、例えばDIC(株)製のHP−5000が挙げられる。
【0051】
【化2】

【0052】
(式中、Arは縮合環芳香族炭化水素基であり、Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1以上10以下の炭化水素基またはハロゲン元素、フェニル基、ベンジル基などのアリール基、およびグリシジルエーテルを含む有機基から選ばれる基であり、n、p、およびqは1以上の整数であり、またp、qの値は、繰り返し単位毎に同一でも、異なっていてもよい。)
【0053】
【化3】

【0054】
(式(2)中のArは、式(3)中の(Ar1)〜(Ar4)で表される構造であり、式(3)中のRは、互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1以上10以下の炭化水素基またはハロゲン元素、フェニル基、ベンジル基などのアリール基、およびグリシジルエーテルを含む有機基から選ばれる基である。)
【0055】
さらに上記以外のエポキシ樹脂としてはナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、2官能ないし4官能エポキシ型ナフタレン樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂などのナフタレン型エポキシ樹脂が好ましい。これにより、耐熱性、低熱膨張性をさらに向上させることができる。また、ベンゼン環に比べナフタレン環のπ−πスタッキン効果が高いため、特に、低熱膨張性、低熱収縮性に優れる。更に、多環構造のため剛直効果が高く、ガラス転移温度が特に高いため、リフロー前後の熱収縮変化が小さい。
ナフトール型エポキシ樹脂は、例えば下記一般式(4−1)で示すことができる。また、ナフトール型エポキシ樹脂としては、例えば新日鐵化学(株)製のESN−375が挙げられる。
ナフタレンジオール型エポキシ樹脂は、例えば下記式(4−2)で示すことができる。ナフタレンジオール型エポキシ樹脂としては、例えばDIC(株)製のHP−4032Dが挙げられる。
2官能ないし4官能エポキシ型ナフタレン樹脂は、例えば下記式(4−3)(4−4)(4−5)で示すことができる。2官能ないし4官能エポキシ型ナフタレン樹脂としては、例えばDIC(株)製のHP−4700、HP−4770が挙げられる。
ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂は、例えば下記一般式(4−6)で示すことができる。ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂としては、例えばDIC(株)製のHP−6000が挙げられる。
【0056】
【化4】

(nは平均1以上6以下の数を示し、Rはグリシジル基または炭素数1以上10以下の炭化水素基を示す。)
【0057】
【化5】

【0058】
【化6】

【0059】
【化7】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rはそれぞれ独立的に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、アラルキル基、ナフタレン基、又はグリシジルエーテル基含有ナフタレン基を表し、o及びmはそれぞれ0〜2の整数であって、かつo又はmの少なくとも何れか一方は1以上である。)
【0060】
上記樹脂組成物に用いるシアネート樹脂は、例えばハロゲン化シアン化合物とフェノール類とを反応させることにより得ることができる。シアネート樹脂の具体例としては、例えばフェノールノボラック型シアネート樹脂、クレゾールノボラック型シアネート樹脂等のノボラック型シアネート樹脂、ナフトールアラルキル型シアネート樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂、ビフェニル型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールAD型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂等を挙げることができる。
【0061】
これらの中でも特にノボラック型シアネート樹脂、ナフトールアラルキル型シアネート樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂、ビフェニル型シアネート樹脂を含むことが好ましい。さらに、樹脂組成物は、このシアネート樹脂を樹脂組成物の全固形分中に10重量%以上含むことが好ましい。これにより、プリプレグの耐熱性(ガラス転移温度、熱分解温度)を向上できる。またプリプレグの熱膨張係数(特に、プリプレグの厚さ方向の熱膨張係数)を低下することができる。プリプレグの厚さ方向の熱膨張係数が低下すると、多層プリント配線の応力歪みを軽減できる。更に、微細な層間接続部を有する多層プリント配線板においては、その接続信頼性を大幅に向上することができる。
【0062】
上記樹脂組成物に用いるノボラック型シアネート樹脂の中でも好適なものとしては、下記式(5)で表わされるノボラック型シアネート樹脂が挙げられる。重量平均分子量が2000以上、より好ましくは2,000〜10,000、更に好ましくは2,200〜3,500の式(5)で表わされるノボラック型シアネート樹脂と、重量平均分子量が1500以下、より好ましくは200〜1,300の式(5)で表わされるノボラック型シアネート樹脂とを組み合わせて用いることが好ましい(以下、「〜」は、特に明示しない限り、上限値と下限値を含むことを表す)。なお、本実施の形態において重量平均分子量は、ポリスチレン換算のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法で測定した値である。
【0063】
【化8】

式(5)中、nは0以上の整数を示す。
また、シアネート樹脂としては、下記一般式(6)で表わされるシアネート樹脂も好適に用いられる。下記一般式(6)で表わされるシアネート樹脂は、α−ナフトールあるいはβ−ナフトール等のナフトール類とp−キシリレングリコール、α,α'−ジメトキシ−p−キシレン、1,4−ジ(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ベンゼン等との反応により得られるナフトールアラルキル樹脂とシアン酸とを縮合させて得られるものである。一般式(6)のnは1以上であるが、10以下であることがさらに望ましい。nが10以下の場合、樹脂粘度が高くならず、基材への含浸性が良好で、積層板としての性能の低下を抑制できる。また、合成時に分子内重合が起こりにくく、水洗時の分液性が向上し、収量の低下を防止できる。
【0064】
【化9】

式(6)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは同一でも異なっていてもよく、nは1以上の整数を示す。
【0065】
また、シアネート樹脂としては、下記一般式(7)で表わされるジシクロペンタジエン型シアネート樹脂も好適に用いられる。下記一般式(7)で表わされジシクロペンタジエン型シアネート樹脂は、下記一般式(7)のnは0以上8以下であることがさらに望ましい。nが8以下の場合、樹脂粘度が高くならず、基材への含浸性が良好で、積層板としての性能の低下を防止できる。また、ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂を用いることで、低吸湿性、および耐薬品に優れる。
【0066】
【化10】

nは0〜8の整数を示す。
【0067】
また、樹脂組成物はさらに硬化促進剤を含有しても良い。例えば、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂やシアネート樹脂であれば、フェノール樹脂やエポキシ樹脂やシアネート樹脂の硬化促進剤を用いることができる。フェノール樹脂は、特に限定されないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、アリールアルキレン型ノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、未変性のレゾールフェノール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油等で変性した油変性レゾールフェノール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂等が挙げられる。上記フェノール樹脂としては、フェノールノボラック又はクレゾールノボラック樹脂が好ましい。中でも、ビフェニルアラルキル変性フェノールノボラック樹脂が、吸湿半田耐熱性の点から好ましい。
これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用したり、1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーを併用したりすることもできる。
【0068】
上記硬化促進剤は、特に限定されないが、例えば、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)等の有機金属塩、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン等の3級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−エチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチルー2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチルー2−ウンデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ(1,2−a)ベンズイミダゾール等のイミダゾール類、フェノール、ビスフェノールA、ノニルフェノール等のフェノール化合物、酢酸、安息香酸、サリチル酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸、オニウム塩化合物等またはこの混合物が挙げられる。これらの中の誘導体も含めて1種類を単独で用いることもできるし、これらの誘導体も含めて2種類以上を併用したりすることもできる。
【0069】
また、上記熱硬化性樹脂中には、耐熱性の点から、マレイミド化合物が含まれていてもよい。マレイミド化合物は1分子中に1個以上のマレイミド基を有する化合物であれば、特に限定されるものではない。その具体例としては、N−フェニルマレイミド、N−ヒドロキシフェニルマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス{4−(4−マレイミドフェノキシ)−フェニル}プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5−ジエチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド、これらマレイミド化合物のプレポリマー、もしくはマレイミド化合物とアミン化合物のプレポリマーなどが挙げられる。
【0070】
また、上記熱硬化性樹脂中には、金属箔との密着性の点から、フェノキシ樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂が含まれていてもよい。
【0071】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール骨格を有するフェノキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するフェノキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。また、これらの骨格を複数種有した構造のフェノキシ樹脂を用いることもできる。
これらの中でも、フェノキシ樹脂には、ビフェニル骨格およびビスフェノールS骨格を有するフェノキシ樹脂を用いるのが好ましい。これにより、ビフェニル骨格が有する剛直性により、フェノキシ樹脂のガラス転移温度を高くすることができるとともに、ビスフェノールS骨格の存在により、フェノキシ樹脂と金属との密着性を向上させることができる。その結果、絶縁層102の耐熱性の向上を図ることができるとともに、多層基板を製造する際に、絶縁層102に対する配線部(導電回路118)の密着性を向上させることができる。また、フェノキシ樹脂には、ビスフェノールA骨格およびビスフェノールF骨格を有するフェノキシ樹脂を用いるのも好ましい。これにより、多層基板の製造時に、配線部の絶縁層102への密着性をさらに向上させることができる。
【0072】
フェノキシ樹脂の市販品としては、東都化成(株)製FX280およびFX293、ジャパンエポキシレジン(株)製YX8100、YX6954、YL6974、YL7482、YL7553、YL6794、YL7213およびYL7290等が挙げられる。フェノキシ樹脂の分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量が5,000〜70,000であるのが好ましく、10,000〜60,000であるのがより好ましい。
フェノキシ樹脂を用いる場合、その含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物全体の1〜40重量%であるのが好ましく、5〜30重量%であるのがより好ましい。
【0073】
ポリビニルアルコール系樹脂の市販品としては、電気化学工業(株)製電化ブチラール4000−2、5000−A、6000−Cおよび6000−EP、積水化学工業(株)製エスレックBHシリーズ、BXシリーズ、KSシリーズ、BLシリーズおよびBMシリーズ等が挙げられる。特に、ガラス転移温度が80℃以上のものが特に好ましい。
【0074】
ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、の市販品としては、東洋紡績(株)社製「バイロマックスHR11NN(登録商標)」及び「HR−16NN」「HR15ET」、日立化成工業(株)製ポリアミドイミド「KS−9300」などが挙げられる。三菱ガス化学(株)社製「ネオプリムC−1210」、新日本理化(株)社製の可溶性ポリイミド「リカコートSN20(登録商標)」及び「リカコートPN20(登録商標)」、日本GEプラスチックス(株)社製のポリエーテルイミド「ウルテム(登録商標)」、DIC(株)製「V8000」及び「V8002」及び「V8005」:日本化薬(株)製「BPAM155」等が挙げられる。
【0075】
ポリエーテルスルホン樹脂の市販品としては、公知のものを用いることができ、例えば、住友化学社製のPES4100P、PES4800P、PES5003P、およびPES5200Pなどを挙げることができる。
【0076】
ポリフェニレンエーテル樹脂としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)オキサイド、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)オキサイド、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)オキサイド、ポリ(2−メチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)オキサイド、ポリ(2、6−ジプロピル−1,4−フェニレン)オキサイド、ポリ(2−エチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)オキサイド等が挙げられる。市販品としては、例えば、日本G.E.プラスチック社製「ノリルPX9701(登録商標)」(数平均分子量Mn=14,000)、「ノリル640−111(登録商標)」(数平均分子量Mn=25,000)、及び旭化成社製「SA202」(数平均分子量Mn=20,000)などがあり、これらを公知の方法で低分子量化して用いることができる。
【0077】
これらの中でも、末端を官能基で変性した反応性オリゴフェニレンオキサイドが好ましい。これにより、熱硬化性樹脂との相溶性が向上し、ポリマー間の3次元架橋構造を形成することできるため機械強度に優れる。例えば、特開2006−28111号公報に記載されている2,2′,3,3′,5,5′−ヘキサメチルビフェニル‐4,4′−ジオール−2,6−ジメチルフェノール重縮合物とクロロメチルスチレンとの反応生成物が挙げられる。
このような反応性オリゴフェニレンオキサイドは、公知の方法により製造することができる。また、市販品を用いることもできる。例えば、OPE−2st 2200(三菱瓦斯化学社製)を好適に使用することができる。
反応性オリゴフェニレンオキサイドの重量平均分子量は、2,000〜20,000であることが好ましく、4、000〜15、000であることがより好ましい。反応性オリゴフェニレンオキサイドの重量平均分子量が20,000を超えると、揮発性溶剤に溶解し難くなる。一方、重量平均分子量が2,000未満であると、架橋密度が高くなりすぎるため、硬化物の弾性率や可撓性に悪影響がでる。
【0078】
本実施の形態に用いる樹脂組成物中の熱硬化性樹脂の量は、その目的に応じて適宜調整されれば良く特に限定されないが、樹脂組成物の全固形分中に、熱硬化性樹脂は10〜90重量%であることが好ましく、更に20〜70重量%、より更に25〜50重量%であることが好ましい。
また、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂及び/又はシアネート樹脂を用いる場合には、上記樹脂組成物の全固形分中に、エポキシ樹脂は5〜50重量%であることが好ましく、更にエポキシ樹脂は5〜25重量%であることが好ましい。また、樹脂組成物の全固形分中に、シアネート樹脂は5〜50重量%であることが好ましく、更にシアネート樹脂は10〜25重量%であることが好ましい。
【0079】
上記樹脂組成物中には、無機充填材を含有することが、低熱膨張と機械強度の点から好ましい。無機充填材は、特に限定されないが、例えばタルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラス等のケイ酸塩、酸化チタン、アルミナ、シリカ、溶融シリカ等の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩、水酸化アルミニウム、ベーマイト(AlO(OH)、「擬」ベーマイトと通常呼ばれるベーマイト(すなわち、Al・xHO、ここで、x=1から2)、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩または亜硫酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素等の窒化物、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等のチタン酸塩等を挙げることができる。これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併用することもできる。
【0080】
これらの中でも水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ベーマイト、シリカ、溶融シリカ、タルク、焼成タルク、アルミナが好ましい。低熱膨張性、および絶縁信頼性の点で特にシリカが好しく、更に好ましくは、球状の溶融シリカである。また、耐燃性の点で、水酸化アルミニウムが好ましい。また、本実施の形態では、無機充填材であっても含浸しやすい基材を用いるため、上記樹脂組成物中に無機充填材の量を多くすることができる。樹脂組成物中に無機充填材が高濃度の場合、ドリル摩耗性が悪化するが、無機充填材がベーマイトの場合にはドリル摩耗性が良好になる点から好ましい。
【0081】
無機充填材の粒径は、特に限定されないが、平均粒径が単分散の無機充填材を用いることもできるし、平均粒径が多分散の無機充填材を用いることができる。さらに平均粒径が単分散及び/または、多分散の無機充填材を1種類または2種類以上併用したりすることもできる。前記無機充填材の平均粒径は、特に限定されないが、0.1μm〜5.0μmが好ましく、特に0.1μm〜3.0μmが好ましい。無機充填材の粒径が前記下限値未満であると樹脂組成物の粘度が高くなるため、プリプレグ作製時の作業性に影響を与える場合がある。また、前記上限値を超えると、樹脂組成物中で無機充填材の沈降等の現象が起こる場合がある。尚、平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(島津製作所製、SALD−7000等の一般的な機器)を用いて測定することができる。
【0082】
無機充填材の含有量は、特に限定されないが、上記樹脂組成物の全固形分中に10重量%〜90重量%であることが好ましく、更に30重量%〜80重量%、より更に50重量%〜75重量%であることが好ましい。上記樹脂組成物中にシアネート樹脂及び/又はそのプレポリマーを含有する場合には、上記無機充填材の含有量は、樹脂組成物の全固形分中に50〜75重量%であることが好ましい。無機充填材含有量が上記上限値を超えると樹脂組成物の流動性が極めて悪くなるため好ましくない場合があり、上記下限値未満であると樹脂組成物からなる絶縁層の強度が十分でなく、好ましくない場合がある。
【0083】
また、本実施の形態に用いる樹脂組成物は、ゴム成分も配合することができ、例えば、本実施の形態で使用され得るゴム粒子の好ましい例としては、コアシェル型ゴム粒子、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、架橋スチレンブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子、シリコーン粒子等が挙げられる。
【0084】
コアシェル型ゴム粒子は、コア層とシェル層とを有するゴム粒子であり、例えば、外層のシェル層がガラス状ポリマーで構成され、内層のコア層がゴム状ポリマーで構成される2層構造、または外層のシェル層がガラス状ポリマーで構成され、中間層がゴム状ポリマーで構成され、コア層がガラス状ポリマーで構成される3層構造のもの等が挙げられる。ガラス状ポリマー層は、例えば、メタクリル酸メチルの重合物等で構成され、ゴム状ポリマー層は、例えば、ブチルアクリレート重合物(ブチルゴム)等で構成される。コアシェル型ゴム粒子の具体例としては、スタフィロイドAC3832、AC3816N(商品名、ガンツ化成(株)製)、メタブレンKW−4426(商品名、三菱レイヨン(株)製)が挙げられる。架橋アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)粒子の具体例としては、XER−91(平均粒子径0.5μm、JSR(株)製)等が挙げられる。
【0085】
架橋スチレンブタジエンゴム(SBR)粒子の具体例としては、XSK−500(平均粒子径0.5μm、JSR(株)製)等が挙げられる。アクリルゴム粒子の具体例としては、メタブレンW300A(平均粒子径0.1μm)、W450A(平均粒子径0.2μm)(三菱レイヨン(株)製)等が挙げられる。
【0086】
シリコーン粒子は、オルガノポリシロキサンで形成されたゴム弾性微粒子であれば特に限定されず、例えば、シリコーンゴム(オルガノポリシロキサン架橋エラストマー)そのものからなる微粒子、及び二次元架橋主体のシリコーンからなるコア部を三次元架橋型主体のシリコーンで被覆したコアシェル構造粒子等が挙げられる。シリコーンゴム微粒子としては、KMP−605、KMP−600、KMP−597、KMP−594(信越化学(株)製)、トレフィルE−500、トレフィルE−600(東レ・ダウコーニング(株)製)等の市販品を用いることができる。
【0087】
上記樹脂組成物には、更にカップリング剤を含有しても良い。カップリング剤は、熱硬化性樹脂と無機充填材との界面の濡れ性を向上させることにより、基材に対して樹脂および無機充填材を均一に定着させ、耐熱性、特に吸湿後の半田耐熱性を改良するために配合する。
【0088】
上記カップリング剤は、特に限定されないが、例えば、エポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーンオイル型カップリング剤等が挙げられる。これにより、無機充填材の界面との濡れ性を高くすることができ、それによって耐熱性をより向上させることできる。
上記カップリング剤の添加量は、特に限定されないが、無機充填材100重量部に対して0.05〜3重量部が好ましく、特に0.1〜2重量部が好ましい。含有量が前記下限値未満であると無機充填材を十分に被覆できないため耐熱性を向上する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えると反応に影響を与え、曲げ強度等が低下する場合がある。
【0089】
本実施の形態に用いる樹脂組成物には、必要に応じて、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、発泡剤、酸化防止剤、難燃剤、シリコーンパウダー等の難燃助剤、イオン捕捉剤等の上記成分以外の添加物を添加しても良い。
【0090】
上記樹脂組成物は、プリプレグの低線膨張化、高剛性化、及び高耐熱化を実現しやすい点から、少なくともエポキシ樹脂、シアネート樹脂、及び無機充填材を含むことが好ましい。中でも、樹脂組成物の固形分中に、エポキシ樹脂を5〜50重量%、シアネート樹脂を5〜50重量%、及び無機充填材を10〜90重量%含むことが好ましく、更に、エポキシ樹脂を5〜25重量%、シアネート樹脂を10〜25重量%、及び無機充填材を30〜80重量%含むことが好ましい。
【0091】
本実施の形態に用いるプリプレグは、基材に樹脂組成物のワニスを含浸又は塗工してなるものであり、基材としては各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている周知のものが使用できる。基材の材質の例としては、Eガラス、Dガラス、Tガラス、Sガラス又はQガラス等の無機物繊維、ポリイミド、ポリエステル又はテトラフルオロエチレン等の有機繊維、及びそれらの混合物等が挙げられる。これらの基材は、例えば織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット、サーフェシングマット等の形状を有するが、材質及び形状は、目的とする成形物の用途や性能により選択され必要により単独もしくは2種類以上の材質及び形状からの使用が可能である。基材の厚みには特に制限はないが、通常0.01〜0.5mm程度のものを使用し、シランカップリング剤等で表面処理したものや機械的に開繊処理、および扁平化を施したものは耐熱性や耐湿性、加工性の面から好適である。また、プリプレグは、通常、その樹脂含有率が乾燥後で20〜90重量%となるように基材に樹脂を含浸又は塗工し、120〜220℃の温度で1〜20分加熱乾燥し、半硬化状態(Bステージ状態)とすることで得ることができる。さらに、このプリプレグを通常1〜20枚重ね、さらにその両面にキャリア箔付き極薄銅箔を配置した構成で加熱加圧して積層することで、積層板を得ることができる。複数枚のプリプレグ層の厚みは用途によって異なるが、通常0.03〜2mmの厚みのものが良い。積層方法としては通常の積層板の手法が適用でき、例えば多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用し、通常、温度100〜250℃、圧力0.2〜10MPa、加熱時間0.1〜5時間の条件で積層したり、真空ラミネート装置などを用いてラミネート条件50〜150℃、0.1〜5MPa、真空圧1.0〜760mmHgの条件でラミネートすることができる。
【0092】
本実施の形態に用いる銅箔層104は、前述のとおり、その上面20(絶縁層102側とは反対の面)における、XRD薄膜法で測定したときの面方位(200)のピーク強度の比率が、面方位(111)、(200)、(220)および(311)のピーク強度の和に対して、26%以下であり、好ましくは25%以下であり、より好ましくは24%である。面方位(200)の比率を上記範囲内とすることにより、銅箔層104のサイドエッチング特性を向上させることができる。
【0093】
また、銅箔層104の上面20における面方位(200)および(220)のピーク強度の和の比率が、面方位(111)、(200)、(220)および(311)のピーク強度の和に対して、好ましくは32%以下であり、より好ましくは31%以下であり、さらに好ましくは30%以下である。面方位(200)および(220)のピーク強度の和の比率を上記範囲内とすることにより、一層、銅箔層104のサイドエッチング特性を向上させることができる。したがって、信頼性に優れたプリント配線板が得られるので、その製造方法の歩留まりを向上させることが可能となる。
【0094】
従来の銅箔の形成方法としては、通常、電極上に30μm程度の膜厚の銅箔をめっき処理により形成していた。しかしながら、この形成方法では、銅箔が下層の金属層(たとえば、電極)の配向性を引き継ぐことがあり、所望の結晶面を有する銅箔を作成することが難しかった。また、銅箔の膜厚が厚いと、たとえば30μm以上であると、厚み方向に向かって結晶粒が粗大化する傾向があり、これに対応して、その上面における面方位(220)の比率が高くなり得る。これにより、従来では、面方位(111)よりもエッチング特性に優れた面方位(220)等の比率を高めることにより、銅箔における縦エッチング性を向上させて、上層の金属層に対する下層の銅箔のエッチングレートを上げようとしていた。
【0095】
これに対して、本実施の形態の銅箔層104の形成方法では、電極上に剥離層を形成し、この剥離層上に銅箔層104を形成している。このため、銅箔層104が下層の電極の配向性を引き継ぐことを抑制できる。言い換えると、剥離層と接する銅箔層104の一面における配向性を適切に制御することにより、銅箔層104の結晶面がレイヤーを構成するので、一面における配向性を他面まで引き継がせることが可能となる。これにより、所望の配向性を有する銅箔層104を形成できる。したがって、本実施の形態においては、銅箔層104の上面において、エッチング特性に優れる面方位(200)の比率を所定値以下とすることができるので、後述の工程における銅箔層104のサイドエッチング特性を向上させることができる。これにより、従来にない良好な配線形状を実現でき、その結果、歩留まりに優れたプリント配線板が得られる。なお、詳細な銅箔層104の形成方法は、後述する。
【0096】
また、銅箔層104の膜厚は、とくに限定されないが、このましくは0.1μm以上5μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上3μm以下であり、特に好ましくは、0.5μm以上2μm以下である。銅箔層104の膜厚を、こうした範囲内とすることにより、銅箔層104の結晶粒の粒径を揃えることができる。これにより、銅箔層104の膜厚方向において、その配向性が変動することを抑制できる。
【0097】
以上により、銅箔層104の上面20における配向性を制御することができ、たとえば、銅箔層104の下面22から上面20にかけて、結晶面の比率(すなわち、配向性)を同一、たとえば、面方位(200)の比率、又は面方位(200)および面方位(220)の比率を同一とすることができる。ここでいう同一とは、製造工程上の微差を許容し、例えば、銅箔層104の下面22における面方位(200)の比率が、その上面20における面方位(200)の比率の±5%以内であることを意味する。したがって、XRD薄膜法で測定された銅箔層104の下面22の面方位の比率は、銅箔層104の上面20の比率と言うことができる。
【0098】
また、加熱加圧成形により銅張積層板100を形成した後の銅箔層104の上面20においても、前述の面方位(200)の比率や、面方位(200)および面方位(220)の比率は、加熱加圧成形前の銅箔層(ピーラブルタイプのキャリア箔付き銅箔)の値が維持されている。言い換えると、加熱加圧成形の銅箔層104の上面20における、面方位(200)の比率は、26%以下であり、好ましくは24%以下であり、より好ましくは23%以下であり、一方、面方位(200)および面方位(220)の比率は、好ましくは32%以下であり、より好ましくは31%以下であり、さらに好ましくは30%以下である。ここでの加熱加圧成形の条件としては、たとえば、200℃で1h、圧力3MPaとする。このように比率が維持される理由は明確ではないが、銅箔層104の中の結晶粒の平均粒径が小さいこと、この平均粒径が一定程度そろっていること等が推察される。
したがって、後述の銅箔層104のエッチング工程の前後においても、銅箔層104の上面(すなわち、金属層116(たとえば無電解めっき層110)との接触面)における面方位(200)の比率や、面方位(200)および面方位(220)の比率は同一であるといえる。
【0099】
本実施の形態の銅箔層104は、長辺の平均長さが2μm以下の結晶粒を有していることが好ましい。銅箔層104中の結晶粒の形状としては、例えば、柱状、三角錐形状となる。このため、断面視において、銅箔層104の結晶粒の最大の長さを長辺とする。この長辺の平均長さは、FIB−SIM(Focused Ion Beam Scanning Ion Microscope)、またはFIB−SEM(Focused Ion Beam Scanning Electron Microscope)を用いて約1万〜1万2千倍の間で、縦10μm、横10μmの断面画像から平均を算出し、合計3つの視野画像の平均値として算出する。これにより、銅箔層104のエッチング特性が向上する。
【0100】
また、本実施の形態の銅箔層104においては、断面視において、長辺の平均長さが2μm以下の結晶粒が占める面積率が、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。この面積率は、前記と同様の断面画像の視野を画像処理して、合計3つの視野の平均値として算出する。これにより、銅箔層104のエッチング特性が向上する。
【0101】
また、本実施の形態に用いる、キャリア箔付き極薄銅箔(銅箔層104)は、その極薄銅箔の粗化面にこぶ状の電着物層(ヤケめっきといわれる。たとえば、特開平9−195096号参照)の形成や酸化処理、還元処理、エッチングなどによる粗化面処理がされている。したがって、本実施の形態に用いる極薄銅箔の粗化面の表面粗さはJIS B0601に示す10点平均粗さ(Rz)の上限値が、5.0μm以下であることが好ましく、2.0μm以下であることがより好ましく、一方、下限値は特に限定されないが、0.1μm以上が好ましい。さらに、算術平均粗さ(Ra)1.0μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましい。
なお、こぶ状の電着物層の形成や、粗化面処理が行われることにより、銅箔層104は、バルク部分、およびバルク部分の一面に形成されたこぶ付け部分(以下、粗化足部分ともいう。)を有することとなる。
【0102】
また、本実施の形態においては、銅箔層104としては、銅からなる銅箔(製造工程上に不可避に混入する混入物を除く)の他に、ニッケルやアルミなどの添加金属成分を含む銅箔でもよい(この場合、銅の含有量は、特に限定されないが、銅箔層104を構成する全金属成分の重量の合計値に対して、90重量%以上が好ましく、95重量%以上がより好ましく、99重量%以上がさらに好ましい。また、添加金属成分としては、単独でもよいし、複数種併用しても良い)。また、銅箔層104に代えて、ニッケル箔、アルミ箔などの金属箔を用いてもよい。
【0103】
230℃、1時間の条件の加熱処理の前後における、銅箔層104のビッカース硬度の差は、好ましくは0Hv以上50Hv以下であり、より好ましくは0Hv以上30Hv以下である。銅箔層104のビッカース硬度の差を上限値以下とすることにより、加熱によって銅箔層104の再結晶が進んで結晶粒度が大きくなることでエッチング速度が遅くなることを抑制したり、エッチング後の細回路の歪みが蓄積することを抑制したりすることができる。
【0104】
また、銅箔層104は、230℃、1時間加熱処理後のビッカース硬度が、好ましくは180Hv以上240Hv以下であり、より好ましくは185Hv以上235Hv以下である。加熱後のビッカース硬度を180Hv以上とすることにより、加熱によって薄銅層(銅箔層104)の再結晶が進んで結晶粒度が大きくなることを抑制したり、エッチング後の回路直線性が低下することを抑制したりすることができる。一方、加熱後のビッカース硬度を240Hv以下とすることにより、薄銅層が硬くなり過ぎて脆くなることを抑制することができる。これにより、ハンドリング時に割れが発生することを抑制すること、および、形成した微細配線の冷熱衝撃耐性を向上させることができる。
【0105】
本実施の形態において、ビッカース高度は以下の方法により測定できる。
すなわち、ビッカース硬度の測定は、JIS Z 2244に準拠し、以下の手順で、アカシ社製、微小硬度計(型番MVK−2H)を用いて23℃で行う。(1)薄銅層まで形成した支持体付極薄銅箔を230℃に加熱したオーブン(窒素雰囲気)中に1時間放置した後、10×10mm角にカットする。(2)カット試料に負荷速度3μm/秒、試験荷重5gf、保持時間15秒の条件で圧痕をつけ、圧痕の測定結果からビッカース硬度を算出する。(3)任意の5点のビッカース硬度を測定した平均値を、本実施の形態のビッカース硬度の値とする。
【0106】
銅箔層104(薄層銅箔)のエッチングレートは、0.68μm/min以上1.25μm/min以下であり、より好ましくは0.68μm/min以上、1.24μm/min以下であり、さらに好ましくは0.69μm/min以上、1.23μm/min以下である。本実施の形態の銅箔層104のエッチングレートは、とくに、バルク部分のエッチングレートのみを指し示す。
なお、上述した銅箔層104のエッチングレートは、60gの95%硫酸、1000ccの純水、及び20ccの34.5%過酸化水素水からなり、かつ液温30℃±1℃の硫酸過水に、積層板を浸漬させるエッチング条件下において特定されるものである。
【0107】
本実施の形態において、銅箔層104のエッチングレートを下限値以上とすることにより、銅箔層104のエッチング残渣を低減できるとともに、配線形状を良好とすることができる。また、銅箔のエッチングレートを上限値以下とすることにより、銅箔層104の側壁に切り欠きが形成され、配線と絶縁層との密着性が低下することを抑制できる。また、銅箔層104の粗化足部分までエッチングする際に、銅箔層104のバルク部分に異常なくびれが発生することを抑制することができる。
【0108】
本実施の形態において、銅箔のエッチングレートは、以下の方法により測定できる。
1.キャリア箔(キャリア箔層106)を除去した、極薄銅箔を両面に積層した基板(銅張積層板100)を、40mm×80mmに裁断してサンプル片を得る。サンプル片をノギスで、小数点以下2桁まで読み取り、サンプル片の片面積を算出する。
2.水平乾燥ラインにて、80℃ 1分×3回の乾燥処理をサンプル片に行う。
3.サンプル片の初期重量W0を測定する(ただし、基板重量含む)。
4.エッチング液を調整する。
4−1:95%硫酸(和光純薬社製、特級)を60g秤量し、1Lのビーカーに入れる。
4−2:純水をビーカーに投入し、計1000ccにする。
4−3:マグネチックスターラーで30±1℃で、3分攪拌する。
4−4:34.5%過酸化水素水(関東化学社製、鹿一級)を20cc秤量し、ビーカーに入れる。
5.上記エッチング液(液温30±1℃、攪拌条件マグネチックスターラー、250rmp)に浸漬する。
6.極薄箔のバルク層が完全にエッチングされるまで、30秒ごとに、処理後の重量W1を測定する(ただし、基板重量含む)。
7.エッチング重量(W0−W1)/(浸漬させた両面面積=m)を算出し、X軸に時間(秒)、Y軸にエッチング質量(g/m)をプロットし、0〜150秒の間を最小二乗法で、傾きKを算出する。
【0109】
本実施の形態のエッチングレートの換算式を示す。
エッチングレート(μm/min)=K(g/sec・m)÷8.92(銅比重g/cm)×60(sec/min)
【0110】
本実施の形態では、銅箔層104の結晶粒径を小さくすること、加熱後のビッカース硬度の変化を小さくすること、粗化足部分のエッチング速度を高めることなどにより、銅箔層104(とくに、バルク部分)のエッチング速度を高めることができる。また、粗化足部分のエッチング速度は、通常、バルク部分よりもエッチング速度が遅いものであるが、たとえば、電解密度を小さくすることにより高めることが可能となる。
【0111】
ここで、銅箔層104に用いるピーラブルタイプの銅箔の詳細な形成方法を説明する。
本実施の形態に用いる銅箔の製造方法としては、特に限定されず、例えば、キャリアを有するピーラブルタイプの銅箔を製造する場合、厚み10〜50μmのキャリア箔上に剥離層となる金属等の無機化合物或いは有機化合物層を形成し、その剥離層上に銅箔をめっき処理により形成する。めっき処理の条件としては、例えば、硫酸銅浴を用いた場合には、硫酸50〜100g/L、銅30〜100g/L、液温20℃〜80℃、電流密度0.5〜100A/dmの条件であり、ピロリン酸銅浴を用いた場合には、ピロリン酸カリウム100〜700g/L、銅10〜50g/L、液温30℃〜60℃、pH8〜12、電流密度1〜10A/dmの条件とすることができる。また、銅箔の物性や平滑性を考慮して、上記浴中に各種添加剤を添加してもよい。なお、ピーラブルタイプの金属箔とは、キャリアを有する金属箔であり、キャリアが引き剥がし可能な金属箔である。
【0112】
本実施の形成において、剥離層上への銅箔の形成は、例えば平均分子量が5000以下のゼラチンを添加剤として15〜35ppm含有する硫酸銅めっき浴を用いて陰極電解処理することにより行うことができる。この場合、銅箔の形成は、剥離層を形成したキャリア箔を陰極とし、上記の硫酸銅めっき浴を用いて電解処理して剥離層上に銅めっきすることにより行われる。このような銅箔の形成方法によれば、高温加熱後も適度な機械的強度を有し、エッチング性に優れ、かつハンドリング性にも優れる銅箔を形成することができる。このような効果は、ゼラチンを添加することにより、銅箔を構成する結晶を微細化できることに起因する。
【0113】
ゼラチンの平均分子量が5000以下である場合、加熱による薄銅層の再結晶を抑制することができる。これにより、加熱後における結晶の微細化が実現される。この理由については十分に解明されていないが、ゼラチンの分子量を一定値以下とすることで、ゼラチンがめっき時に結晶粒界に取り込まれやすくなり、結果として再結晶が進むことを抑制することができるためと考えられる。ゼラチンの平均分子量は、500〜5000であることが好ましく、1000〜5000であることがより好ましい。ゼラチンの平均分子量が500以上とすることで、硫酸銅めっき浴に添加したゼラチンが酸性溶液中で分解されて、低分子量のアミノ酸等の有機化合物に分解されることを抑制することができる。これにより、ゼラチンがめっき時に結晶粒界に取り込まれることにより再結晶を防止する、という効果が低下してしまうことを抑制することができる。
【0114】
硫酸銅めっき浴中のゼラチンの濃度は15〜35ppmであることが好ましい。ゼラチンの濃度が15ppm以上である場合、加熱による再結晶の抑制効果を十分に得ることができる。このため、加熱後において微細な結晶状態を維持することが可能となる。ゼラチンの濃度が35ppm以下である場合、めっきにより形成される銅箔の内部応力が高くなることを抑制することができる。これにより、キャリア箔付極薄銅箔がカールして、搬送時に不具合が発生することを抑制することができる。
【0115】
硫酸銅めっき浴としては、例えば、硫酸銅5水和物、硫酸、ゼラチン及び塩素を含有する硫酸酸性硫酸銅メッキ浴が好適に用いられる。硫酸銅めっき浴中の硫酸銅5水和物の濃度は、好ましくは50g/L〜300g/L、より好ましくは100g/L〜200g/Lである。硫酸の濃度は、好ましくは40g/L〜160g/L、より好ましくは80g/L〜120g/Lである。ゼラチンの濃度は、上記のとおりである。塩素の濃度は、好ましくは1〜20ppm、より好ましくは3〜10ppmである。めっき浴の溶媒は、通常、水である。めっき浴の温度は、好ましくは20〜60℃、より好ましくは30〜50℃である。電解処理時の電流密度は、好ましくは1〜15A/dmであり、より好ましくは2〜10A/dmである。
【0116】
銅箔を形成する際、上記の硫酸銅めっき浴を用いる電解処理前に、ピンホールの発生を防止するため、いわゆる付きまわりの良いめっき浴を用いたストライクめっきを用いることができる。ストライクめっきに用いられるめっき浴としては、例えば、ピロリン酸銅めっき浴、クエン酸銅めっき浴、クエン酸銅ニッケルめっき浴等が挙げられる。
【0117】
ピロリン酸銅めっき浴としては、例えば、ピロリン酸銅及びピロリン酸カリウムを含有するめっき浴が好適である。ピロリン酸銅めっき浴中のピロリン酸銅の濃度は、好ましくは60g/L〜110g/L、より好ましくは70g/L〜90g/Lである。ピロリン酸カリウムの濃度は、好ましくは240g/L〜470g/L、より好ましくは300g/L〜400g/Lである。めっき浴の溶媒は、通常、水である。めっき浴のpHは、好ましくは8.0〜9.0、より好ましくは8.2〜8.8である。pH値調整のために、アンモニア水等を添加してもよい(以下同様)。めっき浴の温度は、好ましくは20〜60℃、より好ましくは30〜50℃である。電解処理時の電流密度は、好ましくは0.5〜10A/dmであり、より好ましくは1〜7A/dmである。電解処理時間は、好ましくは5〜40秒、より好ましくは10〜30秒である。
【0118】
クエン酸銅めっき浴としては、例えば、硫酸銅5水和物及びクエン酸3ナトリウム2水和物を含有するめっき浴が好適である。クエン酸銅めっき浴中の硫酸銅5水和物の濃度は、好ましくは10g/L〜50g/L、より好ましくは20g/L〜40g/Lである。クエン酸3ナトリウム2水和物の濃度は、好ましくは20g/L〜60g/L、より好ましくは30g/L〜50g/Lである。めっき浴の溶媒は、通常、水である。めっき浴のpHは、好ましくは5.5〜7.5、より好ましくは6.0〜7.0である。めっき浴の温度は、好ましくは20〜60℃、より好ましくは30〜50℃である。電解処理時の電流密度は、好ましくは0.5〜8A/dmであり、より好ましくは1〜4A/dmである。電解処理時間は、好ましくは5〜40秒、より好ましくは10〜30秒である。
【0119】
クエン酸銅ニッケルめっき浴としては、例えば、硫酸銅5水和物、硫酸ニッケル6水和物及びクエン酸3ナトリウム2水和物を含有するめっき浴が好適である。クエン酸銅ニッケルめっき浴中の硫酸銅5水和物の濃度は、好ましくは10g/L〜50g/L、より好ましくは20g/L〜40g/Lである。硫酸ニッケル6水和物の濃度は、好ましくは1g/L〜10g/L、より好ましくは3g/L〜8g/Lである。クエン酸3ナトリウム2水和物の濃度は、好ましくは20g/L〜60g/L、より好ましくは30g/L〜50g/Lである。めっき浴の溶媒は、通常、水である。めっき浴のpHは、好ましくは5.5〜7.5、より好ましくは6.0〜7.0である。めっき浴の温度は、好ましくは20〜60℃、より好ましくは30〜50℃である。電解処理時の電流密度は、好ましくは0.5〜8A/dmであり、より好ましくは1〜4A/dmである。電解処理時間は、好ましくは5〜40秒、より好ましくは10〜30秒である。
【0120】
上記剥離層は、金属物等の無機化合物或いは有機化合物層であり、積層時の100〜300℃の間の熱処理を受けても剥離可能であれば公知のものを用いることができる。金属酸化物としては、例えば、亜鉛、クロム、ニッケル、銅、モリブデン、合金系、金属と金属化合物との混合物が用いられる。有機化合物としては、窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸の中から選択される1種又は2種以上からなるものを用いることが好ましい。
【0121】
上記窒素含有有機化合物は、置換基を有する窒素含有有機化合物であることが好ましい。具体的には、置換基を有するトリアゾール化合物である1,2,3−ベンゾトリアゾール(以下、「BTA」と称する。)、カルボキシベンゾトリアゾール(以下、「CBTA」と称する。)、N',N'−ビス(ベンゾトリアゾリルメチル)ユリア(以下、「BTD−U」と称する。)、1H−1,2,4−トリアゾール(以下、「TA」と称する。)及び3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール(以下、「ATA」と称する。)等を用いることが好ましい。
【0122】
硫黄含有有機化合物としては、メルカプトベンゾチアゾール(以下、「MBT」と称する。)、チオシアヌル酸(以下、「TCA」と称する。)及び2−ベンズイミダゾールチオール(以下、「BIT」と称する)等を用いることが好ましい。
【0123】
カルボン酸としては、特にモノカルボン酸を用いることが好ましく、中でもオレイン酸、リノール酸及びリノレイン酸等を用いることが好ましい。
【0124】
以上のように、電解密度を高くしたり、膜厚を薄くしたりする等、製法を適切に制御することにより、本実施の形態の銅箔層104の上面において、所望の配向性を実現することができる。
【0125】
また、本実施の形態に用いる銅箔層104の少なくとも下面22(絶縁層102の一面と接する面)には、銅箔層104と絶縁層102との密着性を実用レベルもしくはそれ以上とするために表面処理が施されていてもよい。銅箔層104に用いる金属箔に対する粗し処理としては、例えば、防錆処理、クロメート処理、シランカップリング処理のいずれか、もしくはこれらの組み合わせなどが挙げられる。絶縁層102を構成する樹脂材料に合わせて、適切にいずれの表面処理手段を選択することができる。
【0126】
上記防錆処理は、例えば、ニッケル、錫、亜鉛、クロム、モリブデン、コバルトなどの金属のいずれか、若しくはそれらの合金を、スパッタや電気めっき、無電解めっきにより金属箔上に薄膜形成することで施すことができる。コストの面からは電気めっきが好ましい。金属イオンの析出を容易にするためにクエン酸塩、酒石酸塩、スルファミン酸等の錯化剤を必要量添加することも出来る。めっき液は、通常酸性領域で用い、室温(たとえば、25℃)〜80℃の温度で行う。めっき条件は、電流密度0.1〜10A/dm、通電時間1〜60秒、好ましくは1〜30秒の範囲から適宜選択する。防錆処理金属の量は、金属の種類によって異なるが、合計で10〜2000μg/dmが好適である。防錆処理が厚すぎるとエッチング阻害と電気特性の低下を引き起こし、薄すぎると樹脂とのピール強度低下の要因となりうる。
【0127】
また、絶縁層102を構成する樹脂組成物中にシアネート樹脂を含む場合には、防錆処理がニッケルを含む金属により行われていることが好ましい。この組み合わせにおいては、耐熱劣化試験や耐湿劣化試験におけるピール強度の低下が少なく有用である。
【0128】
上記クロメート処理として、好ましくは六価クロムイオンを含む水溶液を用いる。クロメート処理は単純な浸漬処理でも可能であるが、好ましくは陰極処理で行う。重クロム酸ナトリウム0.1〜50g/L、pH1〜13、浴温0〜60℃、電流密度0.1〜5A/dm、電解時間0.1〜100秒の条件で行うことが好ましい。重クロム酸ナトリウムの代わりにクロム酸或いは重クロム酸カリウムを用いて行うことも出来る。また、上記クロメート処理は上記防錆処理上に重ねて施すことが好ましい。これにより、絶縁樹脂組成物層(絶縁層102)と金属箔(銅箔層104)との密着性をより向上させることができる。
【0129】
上記シランカップリング処理に用いるシランカップリング剤としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性シラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ官能性シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルフェニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン等のオレフィン官能性シラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリル官能性シラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリル官能性シラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性シランなどが用いられる。これらは単独で用いても良いし、複数を混合して用いても良い。これらのカップリング剤は水などの溶媒に0.1〜15g/Lの濃度で溶解させて用い、得られた溶液を室温〜50℃の温度で金属箔に塗布または電着させることで、金属箔にシランカップリング剤を吸着させる。これらのシランカップリング剤が金属箔表面の防錆処理金属の水酸基と縮合結合することで、金属箔上に被膜が形成される。シランカップリング処理後は、加熱、紫外線照射等によって、かかる結合を安定的にさせる。加熱処理においては、たとえば、100〜200℃の温度、2〜60秒の乾燥を行うことが好ましい。紫外線照射は、例えば、波長200〜400nm、200〜2500mJ/cmの範囲で行うことが好ましい。また、シランカップリング処理は金属箔の最外層に行うことが好ましい。絶縁層102を構成する絶縁樹脂組成物中にシアネート樹脂を含む場合には、アミノシラン系のカップリング剤で処理されていることが好ましい。この組み合わせは、耐熱劣化試験や耐湿劣化試験におけるピール強度の低下が少なく有用である。
【0130】
また、シランカップリング処理に用いるシランカップリング剤としては、好ましくは60〜200℃、より好ましくは80〜150℃の加熱により、絶縁層102を構成する絶縁樹脂組成物と化学反応するものであることが好ましい。これにより、上記絶縁樹脂組成物中の官能基とシランカップリング剤の官能基が化学反応し、より優れた密着性を得ることが可能となる。例えば、エポキシ基が含まれる絶縁樹脂組成物に対しては、アミノ官能性シランを含むシランカップリング剤を用いることが好ましい。これは、熱によりエポキシ基とアミノ基が容易に強固な化学結合を形成し、この結合が熱や水分に対して極めて安定であることに起因する。このように化学結合を形成する組み合わせとして、エポキシ基−アミノ基、エポキシ基−エポキシ基、エポキシ基−メルカプト基、エポキシ基−水酸基、エポキシ基−カルボキシル基、エポキシ基−シアナト基、アミノ基−水酸基、アミノ基−カルボキシル基、アミノ基−シアナト基などが例示される。
【0131】
また、本実施の形態に用いる絶縁樹脂組成物の絶縁樹脂として、常温で液状のエポキシ樹脂を用いることが好ましく、この場合、溶融時の粘度が大幅に低下するため、接着界面における濡れ性が向上し、エポキシ樹脂とシランカップリング剤の化学反応が起こりやすくなり、その結果、強固なピール強度が得られる。具体的にはエポキシ当量200程度のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0132】
また、絶縁樹脂組成物が硬化剤を含む場合、硬化剤としては、特に加熱硬化型潜在性硬化剤を用いることが好ましい。すなわち、絶縁樹脂組成物中の官能基とシランカップリング剤の官能基が化学反応する場合は、絶縁樹脂組成物中の官能基とシランカップリング剤の官能基の反応温度が絶縁樹脂組成物の硬化反応が開始される温度より低くなるように硬化剤を選択することが好ましい。これにより、絶縁樹脂組成物中の官能基とシランカップリング剤の官能基の反応が優先的、選択的に行われ、金属箔(銅箔層104)と絶縁樹脂組成物層(絶縁層102)の密着性がより高くなる。エポキシ樹脂を含む絶縁樹脂組成物に対する熱硬化型潜在性硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド、ジヒドラジド化合物、イミダゾール化合物、アミン−エポキシアダクトなどの固体分散−加熱溶解型硬化剤や尿素化合物、オニウム塩類、ボロントリクロライド・アミン塩類、ブロックカルボン酸化合物などの反応性基ブロック型硬化剤が挙げられる。
【0133】
以上のような絶縁樹脂組成物を含有するプリプレグと、粗化面が微細で均一な粗し処理され、なおかつ上記表面処理が施されたキャリア箔付き極薄銅箔とを前述の方法により積層一体化することで、図7(a)に示すような、キャリア箔付き銅張積層板10を得ることができる。続いて、図7(b)に示すように、このキャリア箔層106を引きはがすことにより、銅箔層104を絶縁層102の両面に有する銅張積層板100が得られる。なお、この態様に限定されず、銅箔層104は、絶縁層102の少なくとも一面に形成されていればよく、また、絶縁層102の全面または一部に形成されていてもよい。
【0134】
次いで、図7(c)に示すように、銅張積層板100に、その上面から下面に貫通する層間接続用の貫通孔108を形成する。貫通孔108を形成する方法は、各種の公知の手段を用いることができるが、たとえば、孔径が100μm以上の貫通孔108を形成する場合には、生産性の観点から、ドリル等を用いる手段が適しており、100μm以下の貫通孔108を形成する場合には、炭酸ガスやエキシマ等の気体レーザーやYAG等の固体レーザーを用いる手段が適している。
【0135】
次いで、少なくとも銅箔層104上に触媒核を付与することもできるが、本実施の形態では、銅箔層104の全面上および貫通孔108の内壁面上に触媒核を付与する。この触媒核としては、特に限定されないが、例えば、貴金属イオンやパラジウムコロイドを用いることができる。引き続き、この触媒核を核として無電解めっき層を形成するが、この無電解めっき処理前に、銅箔層104や貫通孔108の表面上に対して、例えば薬液によるスミア除去等を行っても良い。デスミア処理としては、特に限定されず、有機物分解作用を有する酸化剤溶液等を使用した湿式法、及び対象物となるものに直接酸化作用の強い活性種(プラズマ、ラジカル等)を照射して有機物残渣を除去するプラズマ法等の乾式法等の公知の方法を用いることができる。湿式法のデスミア処理としては、具体的には、樹脂表面の膨潤処理を施した後、アルカリ処理によりエッチングを行い、続いて中和処理を行う方法等が挙げられる。
【0136】
次いで、図7(d)に示すように、触媒核を付与した銅箔層104上および貫通孔108の内壁上に、無電解めっき処理により薄層の無電解めっき層110を形成する。この無電解めっき層110は、絶縁層102の上面上の銅箔層104とその下面上の銅箔層104とを電気的に接続している。無電解めっきには、例えば、硫酸銅、ホルマリン、錯化剤、水酸化ナトリウム等を含むものを用いる事ができる。なお、無電解めっき後に、100〜250℃の加熱処理を施し、めっき被膜を安定化させることが好ましい。120〜180℃の加熱処理が酸化を抑制できる被膜を形成できる点で、特に好ましい。また、無電解めっき層110の平均厚さは、次の電気めっきが行うことができる厚さであればよく、例えば、0.1〜1μm程度で十分である。また、貫通孔108の内部は、導電ペースト、又は絶縁ペーストを充填してもよいし、電気パターンめっきで充填してもよい。
【0137】
次いで、図7(e)に示すように、銅箔層104上に設けられた無電解めっき層110上に所定の開口パターンを有するレジスト層112を形成する。この開口パターンは、後述の導電回路パターンに相当する。このため、レジスト層112は銅箔層104上の非回路形成領域を覆うように設けられている。言い換えると、レジスト層112は、貫通孔108上と銅箔層104上の導体回路形成領域には形成されていない。レジスト層112としては、特に限定されず、公知の材料を用いることができるが、液状およびドライフィルムを用いることができる。微細配線形成の場合には、レジスト層112としては、感光性ドライフィルム等を用いることが好ましい。レジスト層112を形成するには、例えば、無電解めっき層110上に感光性ドライフィルムを積層し、非回路形成領域を露光して光硬化させ、未露光部を現像液で溶解、除去する。なお、残存する硬化した感光性ドライフィルムが、レジスト層112となる。レジスト層112の厚さは、その後めっきする導体(めっき層114)の厚さと同程度かより厚い膜厚にするのが好適である。
【0138】
次いで、図8(a)に示すように、少なくともレジスト層112の開口パターン内部かつ無電解めっき層110上に、電気めっき処理によりめっき層114を形成する。このとき銅箔層104は給電層として働く。本実施の形態では、絶縁層102の上面、貫通孔108の内壁及びその下面に亘って、連続してめっき層114が設けられていてもよい。こうした電気めっきとしては、特に限定されないが、通常のプリント配線板で用いられる公知の方法を使用することができ、例えば、硫酸銅等のめっき液中に浸漬させた状態で、かかるめっき液に電流を流す等の方法を使用することができる。めっき層114の厚さは、特に限定されないが、回路導体として使用できればよく、例えば、1〜100μmの範囲であることが好ましく、5〜50μmの範囲であることがより好ましい。めっき層114は単層でもよく多層構造を有していてもよい。めっき層114の材料としては、特に限定されないが、例えば、銅、銅合金、42合金、ニッケル、鉄、クロム、タングステン、金、半田などを用いることができる。
【0139】
次いで、図8(b)に示すように、アルカリ性剥離液や硫酸又は市販のレジスト剥離液等を用いてレジスト層112を除去する。
【0140】
次いで、図8(c)に示すように、めっき層114が形成されている領域以外の無電解めっき層110および銅箔層104を除去する。この銅箔層104を除去する手法は、例えば、ソフトエッチング(フラッシュエッチング)等を用いる。これにより、銅箔層104及び金属層116(無電解めっき層110及びめっき層114)が積層して構成される導電回路118のパターンを形成することができる。
【0141】
第2の実施の形態のプリント配線板200の導電回路118の断面形状としては、図9に示すように、通常の矩形形状の他にも、図9(a)に示す逆テーパ形状、図9(b)に示すかまぼこ形状、又は図9(c)に示すくびれ形状のいずれでもよい。
【0142】
ここで、本実施の形態のソフトエッチングに用いるエッチング液について以下説明する。エッチング液としては、特に限定されないが、従来の拡散律速タイプのエッチング液を用いた場合、配線の微細な部分はどうしても液の交換が悪くなるため回路形成性が悪化してしまう傾向がある。このため、エッチング液は、銅とエッチング液の反応が拡散律速ではなく、反応律速で進行するタイプを用いることが望ましい。銅とエッチング液の反応が反応律速であれば、拡散をそれ以上強めたとしてもエッチング速度は変わらない。即ち液交換の良い場所と悪い場所でのエッチング速度差が生じない。このような反応律速エッチング液としては、例えば、過酸化水素とハロゲン元素を含まない酸とを主成分とするものが挙げられる。酸化剤として過酸化水素を用いるので、その濃度を管理することで厳密なエッチング速度制御が可能になる。尚、エッチング液にハロゲン元素が混入すると、溶解反応が拡散律速になりやすい。ハロゲンを含まない酸としては、硝酸、硫酸、有機酸等が使用できるが、硫酸であることが安価で好ましい。更に硫酸と過酸化水素が主成分である場合には、それぞれの濃度を5〜300g/L,5〜200g/Lとする事がエッチング速度、液の安定性の面から好ましい。例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸ソーダ系などが挙げられる。
【0143】
このように、銅箔層104のエッチング特性やエッチング条件を適切に選択することにより、所望の形状の導電回路118が得られる。以上により、絶縁層102の両面に導電回路118が形成されたプリント配線板200が得られる。また、第2の実施の形態のプリント配線板200の製造方法においても、第1の実施の形態と同様の作用効果が得られる。
【0144】
なお、図8(d−1)に示すように、絶縁層102上および導電回路118の一部を覆うようにソルダーレジスト層120を形成してもよい。ソルダーレジスト層120としては、例えば、絶縁性に優れた、フィラー、または基材を含んでも良く、感光性樹脂、熱硬化性樹脂、及び熱可塑性樹脂等の耐熱性樹脂組成物を用いる。次いで、ソルダーレジスト層120の開口部が設けられている導電回路118上に、第1のめっき層122および第2のめっき層124を更に形成してもよい。これにより、金属層116を2以上の多層構造としてもよい。これらの第1のめっき層122および第2のめっき層124としては、金めっき層を採用することができる。金めっきの方法としては、従来公知の方法でよく、特に限定されないが、例えば、めっき層114上に、無電解ニッケルめっきを0.1〜10μm程度行い、置換金めっきを0.01〜0.5μm程度行った後に無電解金めっきを0.1〜2μm程度行うなどの方法がある。以上により、図8(d−1)に示すプリント配線板202が得られる。
また、図8(d−2)に示すように、ソルダーレジスト層120を形成せずに、導電回路118の周囲に、第1のめっき層122および第2のめっき層124を形成してもよい。これらの第1のめっき層122および第2のめっき層124としては、例えば、ニッケルめっき層および金めっき層の積層体を採用してもよい。以上により、図8(d−2)に示すプリント配線板204が得られる。
【0145】
また、これらのプリント配線板200、202、及び204上に不図示の半導体チップを実装して、半導体装置を得ることができる。
【0146】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態のプリント配線板の製造方法について説明する。
図10〜図12は、第3の実施の形態のプリント配線板の製造方法の製造工程の手順を示す断面図である。第3の実施の形態のプリント配線板の製造方法は、たとえば、第2の実施の形態で得られたプリント配線板200、202、及び204を内層回路基板として用い、この内層回路基板上にビルドアップ層をさらに形成するものである。
【0147】
まず、内層回路基板として、図8(c)で得たプリント配線板200を採用する。このプリント配線板200の内層回路(導電回路118)に対して、粗化処理を施す。ここで、粗化処理とは、導体回路表面に薬液処理、およびプラズマ処理等を実施することを意味する。粗化処理としては、例えば、酸化還元を利用した黒化処理、または、硫酸−過酸化水素系の公知の粗化液を利用した薬液処理等を用いることができる。これにより、絶縁層130を構成する層間絶縁材料とプリント配線板200の導電回路118との密着性を向上させることができる。また、内層回路基板は、第2の実施の形態で得られたプリント配線板200に代えて、特に限定されないが、メッキスルーホール法やビルドアップ法等により、プリプレグ又は基材を含まない樹脂組成物層等が積層された通常の多層プリント配線板を用いることもできる。内層回路となる導体回路層は、従来公知の回路形成方法によって形成しても良い。また、多層プリント配線板においては、そのコア層となる積層体(プリプレグを複数積層させて得られた積層体)及び金属張積層板に、ドリル加工、レーザー加工等を行うことによりスルーホールを形成し、次いで、めっき等で両面の内層回路を電気的接続することもできる。
【0148】
次いで、図10(a)に示すように、導体回路表面が粗化されたプリント配線板200の両側に、それぞれ、絶縁層130(プリプレグ)、及びキャリア箔層107付き銅箔層105(キャリア箔付き極薄銅箔)を配置する。次いで、図10(b)に示すように、これらを重ねた積層体を加熱加圧処理することにより、多層積層板を形成する。続いて、図10(c)に示すように、キャリア箔層107を剥離除去する。
【0149】
次いで、図10(d)に示すように、絶縁層130および銅箔層105の一部を除去して孔109を形成する。孔109の底面においては、導電回路118の表面の一部が露出している。この孔109を形成する手法としては、特に限定されないが、例えば、炭酸ガスやエキシマ等の気体レーザーやYAG等の固体レーザーを用いて、孔径100μm以下のブラインドビアホールを形成する手法などを用いることができる。なお、孔109は図10(d)では、非貫通孔で表しているが、貫通孔でもよい。また、貫通孔の場合は、レーザー照射でも、ドリル加工機を用いて形成してもよい。
【0150】
次いで、図11(a)に示すように、前述の触媒核を付与した導電回路118上、孔109の内壁上、及び銅箔層105上に、薄層の無電解めっき層111を形成する。無電解めっき層111は、前述の無電解めっき層110と同様にして形成する。この無電解めっき前には、前述の通り、薬液によるスミア除去等のデスミア処理を行ってもよい。また、無電解めっき層110の厚さは、次の電気めっきが行うことができる厚さであればよく、0.1〜1μm程度で十分である。また、孔109(ブラインドビアホール)の内部は、導電ペースト、あるいは、絶縁ペーストを充填することもでき、電気パターンめっきで充填しておいてもよい。
【0151】
次いで、図11(b)に示すように、無電解めっき層110上に、導体回路パターンに相当する開口パターンを有するレジスト層113を形成する。言い換えると、レジスト層113を形成することにより、非回路形成部をマスクする。このレジスト層113としては、前述のレジスト層112と同様のものを用いることができる。レジスト層113の厚さは、その後めっきする導体回路の厚さと同程度かより厚い膜厚にするのが好適である。
【0152】
次いで、図11(c)に示すように、レジスト層113の開口パターン内部にめっき層132を形成する。このめっき層132は、孔109内部の導電回路118上に形成してもよいし、上記開口パターン内部の無電解めっき層111上に形成してもよい。めっき層132を形成する電気めっきは、前述のめっき層114と同様の手法を用いることができる。このめっき層132の厚さは、回路導体として使用できればよく、例えば、1〜100μmの範囲である事が好ましく、5〜50μmの範囲である事がより好ましい。
【0153】
次いで、図12(a)に示すように、前述のレジスト層112と同様にして、レジスト層113の剥離を行う。次いで、図12(b)に示すように、前述の銅箔層104と同様にして、銅箔層105及び無電解めっき層111をソフトエッチング(フラッシュエッチング)により除去する。これにより、銅箔層105、無電解めっき層111及びめっき層132から構成される導電回路パターンを形成することができる。また、導電回路118上には、それと電気的に接続するビア及びパッドをめっき層132により形成することができる。以上により、プリント配線板201が得られる。
【0154】
なお、図12(c−1)に示すように、絶縁層130上、導電回路パターンのめっき層132上および、パッドのめっき層132の一部上にソルダーレジスト層121を形成してもよい。ソルダーレジスト層121としては、前述のソルダーレジスト層120と同様のものを用いることができる。次いで、ソルダーレジスト層121の開口部が設けられているめっき層132上に、例えば、ニッケルめっき層および金めっき層から構成される第1のめっき層123および第2のめっき層125を更に形成してもよい。以上により、図12(c−1)に示すプリント配線板203が得られる。
また、図12(c−2)に示すように、ソルダーレジスト層121を形成せずに、導電回路パターンの周囲およびパッドの周囲に、前述の第1のめっき層123および第2のめっき層125を形成してもよい。以上により、図12(c−2)に示すプリント配線板205が得られる。第3の実施の形態においても、第1および第2の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0155】
また、本実施の形態のプリント配線板の製造方法の変形例を図13を用いて説明する。
前述の第1から第3の実施の形態においては、銅箔上に金属層を選択的に形成していたが、本変形例では、銅箔上に金属層を全面に形成する点が異なるものである。
以下、本変形例のプリント配線板の製造方法を説明する。
まず、図13(a)に示すように、キャリア箔付き銅張積層板10を準備する。このキャリア箔付き銅張積層板10においては、絶縁層102の両面に銅箔層104とともにキャリア箔層106が貼り付けられている。続いて、図13(b)に示すように、キャリア箔付き銅張積層板10からキャリア箔層106を引きはがす。続いて、図13(c)に示すように、銅箔層104の全面上に金属層115(めっき層)をめっき処理により形成する。続いて、図13(d)に示すように、プレーン形状の金属層115上に所定の開口パターンを有するレジスト層112を形成する。引き続き、図13(e)に示すように、このレジスト層112の開口パターン内の金属層115および銅箔層104を、例えば、エッチングにより除去する。この後、図13(f)に示すように、レジスト層112を除去する。これにより、銅箔層104および金属層115から構成される導電回路119のパターンを形成することができる。以上の工程により、本変形例のプリント配線板101が得られる。
【0156】
以上のように、本実施の形態によれば、キャリア箔付き極薄銅箔の微細回路加工、微細回路の形状、および絶縁信頼性に優れたプリント配線板の製造方法、およびをそのプリント配線板を提供することが可能となる。
【0157】
本実施の形態のプリント配線板の製造方法は、プリント配線板用基板の両面に導体回路層を形成する場合だけでなく、プリント配線板用基板の片面のみに導体回路層を形成する場合にも適用することができる。また、図8(c)に示すように両面プリント配線板を内層回路板として、第3の実施の形態の多層プリント配線板の場合も適用することができる。従って、本実施の形態のプリント配線板の製造方法によって、片面プリント配線板、両面プリント配線板、及び多層プリント配線板のいずれも製造することができる。
【0158】
以下、本発明に係るキャリア箔付電解銅箔、およびその銅箔を用いた銅張積層板を製造し、本発明のプリント配線板の製造方法の実施の形態について説明する。ここではキャリア箔に電解銅箔を用いた場合を中心に説明するものとする。本発明を実施例及び比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0159】
(金属箔1の製造)
キャリア箔に、18μm厚の電解銅箔(三井金属工業社製、3EC−VLP、光沢面の表面粗さはRa=0.2μm、Rz=1.5μm)の光沢面に接合界面層および極薄銅箔層を順次形成した。製造条件として、まずキャリア箔を酸洗浄槽(希硫酸溶液、150g/L、液温30℃)に20秒浸漬し表面の油分、酸化被膜等の除去を行った。次に、接合界面形成槽(カルボキシベンゾトリアゾール溶液、5g/L、液温40℃、pH5)に浸漬し、キャリア箔の光沢表面に接合界面層を形成した。次に、バルク銅の形成槽(硫酸銅溶液;硫酸濃度150g/L、銅濃度65g/L、ゼラチン濃度5ppm、塩化物イオン10ppm、液温45℃)に浸漬しながら、キャリア箔の片面に対し、平板のアノード電極(鉛)を平行配置し、電流密度20A/dmの平滑めっき条件で電解し1.5μmのバルク銅層を形成した。次に、バルク銅層の表面に微細銅粒形成槽(硫酸銅溶液;硫酸濃度100g/L、銅濃度18g/Lの硫酸溶液、液温25℃)に浸漬しながら、キャリア箔の片面に対し、平板のアノード電極(鉛)を平行配置し、電流密度10A/dmのヤケめっき条件で電解した。次に、微細銅粒の脱落を防止するための被せめっき槽(硫酸銅溶液;硫酸濃度150g/L、銅濃度65g/L、液温45℃)に浸漬しながら、電流密度20A/dmの平滑めっき条件で電解し0.5μmの微細粗化を形成し、総厚2.0μm極薄銅箔を製造した。次に、防錆処理槽(硫酸亜鉛溶液;硫酸濃度70g/L、亜鉛濃度20g/L、液温40℃)に浸漬し、電流密度15A/dmで電解し亜鉛を用いて防錆処理を行った。ここでは、アノード電極として亜鉛板を用いた溶解性アノードとした。次に、クロメート処理槽(クロム酸溶液;クロム酸濃度5g/L、pH11.5、液温55℃)に4秒浸漬させた。最終的に、乾燥処理槽で電熱器により雰囲気温度110℃に加熱された炉内を60秒かけて通過することでキャリア箔付き銅箔を得た。尚、各槽毎の工程間には、約30秒間の水洗可能な水洗槽に浸漬洗浄している。
【0160】
(金属箔2の製造)
キャリア箔に、12μm厚の電解銅箔(古河電気工業社製、F2−WS、光沢面の表面粗さはRa=0.2μm、Rz=1.2μm)の光沢面に接合界面層および極薄銅箔層を順次形成した。製造条件として、まずキャリア箔を酸洗浄槽(希硫酸溶液、150g/L、液温30℃)に20秒浸漬し表面の油分、酸化被膜等の除去を行った。次に、接合界面形成槽(カルボキシベンゾトリアゾール溶液、5g/L、液温40℃、pH5)に浸漬し、キャリア箔の光沢表面に接合界面層を形成した。次に、バルク銅の形成槽(硫酸銅溶液;硫酸濃度150g/L、銅濃度65g/L、ゼラチン濃度3ppm、塩化物イオン30ppm、液温45℃)に浸漬しながら、キャリア箔の片面に対し、平板のアノード電極(鉛)を平行配置し、電流密度25A/dmの平滑めっき条件で電解し1.5μmのバルク銅層を形成した。次に、バルク銅層の表面に微細銅粒形成槽(硫酸銅溶液;硫酸濃度100g/L、銅濃度18g/Lの硫酸溶液、液温25℃)に浸漬しながら、キャリア箔の片面に対し、平板のアノード電極(鉛)を平行配置し、電流密度10A/dmのヤケめっき条件で電解した。次に、微細銅粒の脱落を防止するための被せめっき槽(硫酸銅溶液;硫酸濃度150g/L、銅濃度65g/L、液温45℃)に浸漬しながら、電流密度20A/dmの平滑めっき条件で電解し0.5μmの微細粗化を形成し、総厚2.0μmの極薄銅箔を製造した。次に、防錆処理槽(硫酸亜鉛溶液;硫酸濃度70g/L、亜鉛濃度20g/L、液温40℃)に浸漬し、電流密度15A/dmで電解し亜鉛を用いて防錆処理を行った。ここでは、アノード電極として亜鉛板を用いた溶解性アノードとした。次に、クロメート処理槽(クロム酸溶液;クロム酸濃度5g/L、pH11.5、液温55℃)に4秒浸漬させた。最終的に、乾燥処理槽で電熱器により雰囲気温度110℃に加熱された炉内を60秒かけて通過することでキャリア箔付き銅箔を得た。尚、各槽毎の工程間には、約30秒間の水洗可能な水洗槽に浸漬洗浄している。
【0161】
(金属箔3の製造)
キャリア箔に、12μm厚の電解銅箔(古河電気工業社製、F2−WS、光沢面の表面粗さはRa=0.2μm、Rz=1.2μm)の光沢面に接合界面層および極薄銅箔層を順次形成した。製造条件として、まずキャリア箔を酸洗浄槽(希硫酸溶液;150g/L、液温30℃)に20秒浸漬し表面の油分、酸化被膜等の除去を行った。次に、接合界面形成槽(カルボキシベンゾトリアゾール溶液;5g/L、液温40℃、pH5)に浸漬し、キャリア箔の光沢表面に接合界面層を形成した。次に、バルク銅の形成槽(ピロリン酸銅溶液;ピロリン酸カリウム濃度250g/L、銅濃度25g/L、pH11、液温45℃)に浸漬しながら、キャリア箔の片面に対し、平板のアノード電極(鉛)を平行配置し、電流密度10A/dmの平滑めっき条件で電解し1.5μmのバルク銅層を形成した。次に、バルク銅層の表面に微細銅粒形成槽(硫酸銅溶液;硫酸濃度100g/L、銅濃度18g/Lの硫酸溶液、液温25℃)に浸漬しながら、キャリア箔の片面に対し、平板のアノード電極(鉛)を平行配置し、電流密度10A/dmのヤケめっき条件で電解した。次に、微細銅粒の脱落を防止するための被せめっき槽(硫酸銅溶液;硫酸濃度150g/L、銅濃度65g/L、液温45℃)に浸漬しながら、電流密度20A/dmの平滑めっき条件で電解し0.5μm微細粗化を形成し、総厚2.0μm極薄銅箔を製造した。次に、防錆処理槽(硫酸亜鉛溶液;硫酸濃度70g/L、亜鉛濃度20g/L、液温40℃)に浸漬し、電流密度15A/dmで電解し亜鉛を用いて防錆処理を行った。ここでは、アノード電極として亜鉛板を用いた溶解性アノードとした。次に、クロメート処理槽(クロム酸溶液;クロム酸濃度5g/L、pH11.5、液温55℃)に4秒浸漬させた。最終的に、乾燥処理槽で電熱器により雰囲気温度110℃に加熱された炉内を60秒かけて通過することでキャリア箔付き銅箔を得た。尚、各槽毎の工程間には、約30秒間の水洗可能な水洗槽に浸漬洗浄している。
【0162】
(実施例1)
エポキシ樹脂として、ナフタレン変性クレゾールノボラックエポキシ樹脂(DIC社製、HP−5000)8.5重量部、フェノール硬化剤として、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂(明和化成株式会社、MEH7851−4H)8.5重量部、フェノールノボラック型シアネート樹脂(LONZA社製、Primaset PT−30)17重量部、球状溶融シリカ(アドマテックス社製、SO−25R、平均粒径0.5μm)65.5重量部、エポキシシラン(信越化学工業社製、KBM−403)0.5重量部を、メチルエチルケトンに混合溶解させた。次いで、高速撹拌装置を用い撹拌して不揮発分70重量%となるように調整し、樹脂ワニスを調製した。
前記樹脂ワニスをガラス織布(坪量104g、厚さ87μm、日東紡製Eガラス織布、WEA−116E)に含浸し、150℃の加熱炉で2分間乾燥して、プリプレグ中のワニス固形分が約50重量%のプリプレグを得た。
前記プリプレグ2枚重ね、キャリア箔付き極薄銅箔(金属箔1)を重ねて、圧力3MPa、温度200℃で1時間加熱加圧成形し、絶縁層が厚さ0.20mmの両面に銅箔を有する積層板を得た(図7(a))。
【0163】
実施例で得られた、積層板のキャリア箔は剥離除去し(図7(b))、図7(c)に示すように、極薄金属箔上から炭酸ガスレーザー(三菱電機社製、ML605GTX3−5100U2)により、直径75μmの貫通スルーホールを開け、過マンガン酸カリウム60g/Lと水酸化ナトリウム45g/Lの水溶液に、液温80℃で2分間浸漬し、デスミア処理した。
その後、パラジウム溶液(上村工業社製、MAT−2B/MAT−2A)に液温55℃で5分間浸漬し、触媒付与し、上村工業社製、スルカップPEA−6Aを使用し、液温36℃で15分間浸漬し、無電解めっき層を0.7μm形成した(図7(d))。
この無電解めっき層の表面に、厚さ25μmの紫外線感光性ドライフィルム(旭化成社製、サンフォートUFG−255)をホットロールラミネーターにより貼り合わせ、最小線幅/線間が20/20μmのパターンが描画されたガラスマスク(トピック社製)を使用して、位置を合わせ、露光装置(小野測器EV−0800)にて露光、炭酸ソーダ水溶液にて現像し、レジストマスクを形成した(図7(e))。次に、無電解めっき層を給電層電極として、電解銅めっき(奥野製薬社製81−HL)を3A/dm、25分間行って、厚さ約20μmの銅配線のパターンを形成した(図8(a))。次に、剥離機を用いて、モノエタノールアミン溶液(三菱ガス化学社製R−100)により、前記レジストマスクを剥離した(図8(b))。そして給電層である無電解めっき層及び下地銅箔(2μm)をフラッシュエッチング(三菱ガス化学社製 CPE−800、液温:30℃、スプレー圧0.23MPa)で180秒間処理することにより除去して、L/S=20/20μmのパターンを形成し(パターン状エッチング)、プリント配線板を得た(図8(c))。
最後に、図8(d−1)に示すように、回路表面にソルダーレジスト(太陽インキ社製、PSR4000/AUS308)を形成し、ニッケルめっき層(奥野製薬工業社製、ICPニコロンGM)を、液温80℃で12分間浸漬し2.5μm、ついで金めっき層(奥野製薬工業社製、フラッシュゴールド330)を、液温80℃で9分間浸漬し0.05μmを形成し、プリント配線板を得た。尚、図8(d−2)に示すように、回路表面にソルダーレジストを形成しない場合もある。
【0164】
(実施例2)
キャリア箔付き極薄銅箔を金属箔2に変えた以外は、実施例1と同じにした。
【0165】
(実施例3)
キャリア箔付き極薄銅箔を金属箔3に変えた以外は、実施例1と同じにした。
【0166】
(実施例4)
給電層である無電解めっき層及び下地銅箔(2μm)のフラッシュエッチングの条件を下記の通り変更した以外は、実施例1と同じにした。
給電層である無電解めっき層及び下地銅箔(2μm)をフラッシュエッチング(三菱ガス化学社製 CPE−800、液温:30℃、スプレー圧0.23MPa)で240秒間処理することにより除去して、L/S=20/20μmのパターンを形成し(パターン状エッチング)、プリント配線板を得た。
【0167】
(実施例5)
積層板に用いる樹脂組成物を変えた以外は、実施例1と同じにした。
エポキシ樹脂として、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製、NC−3000)11重量部、ビスマレイミド化合物(ケイアイ化成工業社製、BMI−70)20重量部、4,4'−ジアミノジフェニルメタン3.5重量部、水酸化アルミニウム(昭和電工製HP−360)65重量部、エポキシシラン(信越化学工業社製、KBM−403)0.5重量部を、メチルエチルケトンに混合溶解させた。次いで、高速撹拌装置を用い撹拌して不揮発分70重量%となるように調整し、樹脂ワニスを調製した。
前記樹脂ワニスをガラス織布(坪量104g、厚さ87μm、日東紡製Eガラス織布、WEA−116E)に含浸し、150℃の加熱炉で2分間乾燥して、プリプレグ中のワニス固形分が約50重量%のプリプレグを得た。前記プリプレグ2枚重ね、キャリア箔付き極薄銅箔(金属箔1)を重ねて、圧力3MPa、温度200℃で1時間加熱加圧成形し、絶縁層が厚さ0.20mmの両面に銅箔を有する積層板を得た。
【0168】
(比較例1)
(金属箔4の製造)
キャリア箔に、35μm厚の電解銅箔(古河電気工業社製、F2−WS、光沢面の表面粗さはRa=0.2μm、Rz=1.2μm)の光沢面に接合界面層および極薄銅箔層を順次形成した。製造条件として、まずキャリア箔を酸洗浄槽(希硫酸溶液、150g/L、液温30℃)に20秒浸漬し表面の油分、酸化被膜等の除去を行った。次に、接合界面形成槽(カルボキシベンゾトリアゾール溶液、5g/L、液温40℃、pH5)に浸漬し、キャリア箔の光沢表面に接合界面層を形成した。次に、バルク銅の形成槽(硫酸銅溶液;硫酸濃度150g/L、銅濃度65g/L、液温45℃)に浸漬しながら、キャリア箔の片面に対し、平板のアノード電極(鉛)を平行配置し、電流密度2A/dmの平滑めっき条件で電解し1.5μmのバルク銅層を形成した。次に、バルク銅層の表面に微細銅粒形成槽(硫酸銅溶液;硫酸濃度100g/L、銅濃度18g/Lの硫酸溶液、液温25℃)に浸漬しながら、キャリア箔の片面に対し、平板のアノード電極(鉛)を平行配置し、電流密度10A/dmのヤケめっき条件で7秒間電解した。次に、微細銅粒の脱落を防止するための被せめっき槽(硫酸銅溶液;硫酸濃度150g/L、銅濃度65g/L、液温45℃)に浸漬しながら、電流密度10A/dmの平滑めっき条件で電解し0.5μmの微細粗化を形成し、総厚2.0μmの極薄銅箔を製造した。次に、防錆処理槽(硫酸亜鉛溶液;硫酸濃度70g/L、亜鉛濃度20g/L、液温40℃)に浸漬し、電流密度10A/dmで電解し亜鉛を用いて防錆処理を行った。ここでは、アノード電極として亜鉛板を用いた溶解性アノードとした。次に、クロメート処理槽(クロム酸溶液;クロム酸濃度5g/L、pH11.5、液温55℃)に4秒浸漬させた。最終的に、乾燥処理槽で電熱器により雰囲気温度110℃に加熱された炉内を60秒かけて通過することでキャリア箔付き銅箔を得た。尚、各槽毎の工程間には、約30秒間の水洗可能な水洗槽に浸漬洗浄している。
キャリア箔付き極薄銅箔を金属箔4に変えた以外は、実施例1と同じにしてプリント配線板を得た。
【0169】
(比較例2)
(金属箔5の製造)
キャリア箔に、35μm厚の電解銅箔(古河電気工業社製、F2−WS、光沢面の表面粗さはRa=0.2μm、Rz=1.2μm)の光沢面に接合界面層および極薄銅箔層を順次形成した。製造条件として、まずキャリア箔を酸洗浄槽(希硫酸溶液;150g/L、液温30℃)に20秒浸漬し表面の油分、酸化被膜等の除去を行った。次に、接合界面形成槽(カルボキシベンゾトリアゾール溶液;5g/L、液温40℃、pH5)に浸漬し、キャリア箔の光沢表面に接合界面層を形成した。次に、バルク銅の形成槽1(ピロリン酸銅溶液;ピロリン酸カリウム濃度320g/L、銅濃度80g/L、25%アンモニア水2ml/L、pH8.5、液温40℃)に浸漬しながら、キャリア箔の片面に対し、平板のアノード電極(鉛)を平行配置し、電流密度1.5A/dmの平滑めっき条件で電解し、続いてバルク銅の形成槽2(硫酸銅溶液;硫酸濃度100g/L、銅濃度200g/L、液温45℃)に浸漬しながら、キャリア箔の片面に対し、平板のアノード電極(鉛)を平行配置し、電流密度3A/dmの平滑めっき条件で電解し1.5μmのバルク銅層を形成した。次に、バルク銅層の表面に微細銅粒形成槽(硫酸銅溶液;硫酸濃度100g/L、銅濃度18g/Lの硫酸溶液、液温25℃)に浸漬しながら、キャリア箔の片面に対し、平板のアノード電極(鉛)を平行配置し、電流密度5A/dmのヤケめっき条件で電解した。次に、微細銅粒の脱落を防止するための被せめっき槽(硫酸銅溶液;硫酸濃度150g/L、銅濃度65g/L、液温45℃)に浸漬しながら、電流密度10A/dmの平滑めっき条件で電解し0.5μmの微細粗化を形成し、総厚2.0μmの極薄銅箔を製造した。次に、防錆処理槽(硫酸亜鉛溶液;硫酸濃度70g/L、亜鉛濃度20g/L、液温40℃)に浸漬し、電流密度15A/dmで電解し亜鉛を用いて防錆処理を行った。ここでは、アノード電極として亜鉛板を用いた溶解性アノードとした。次に、クロメート処理槽(クロム酸溶液;クロム酸濃度5g/L、pH11.5、液温55℃)に4秒浸漬させた。最終的に、乾燥処理槽で電熱器により雰囲気温度110℃に加熱された炉内を60秒かけて通過することでキャリア箔付き銅箔を得た。尚、各槽毎の工程間には、約30秒間の水洗可能な水洗槽に浸漬洗浄している。
キャリア箔付き極薄銅箔を金属箔5に変えた以外は、実施例1と同じにしてプリント配線板を得た。
【0170】
(評価)
各実施例および比較例で得られたプリント配線板を用いて、以下の評価を行った。評価項目を内容と共に示し、得られた結果を表1に示す。
【0171】
(1)XRD薄膜法
全自動粉末X線回折装置(Philips社製、PW1700型)、線源としてCu−Kα線を使用して測定した。2θ走査で検出される面方位(111)、(200)、(220)および(311)からの回折線のピーク積分強度をそれぞれ求めるものである。尚、サンプルは、製造例で得られたキャリア箔付き銅箔を真空プレス機で200℃1時間、圧力3MPaの条件で熱処理する前後の薄箔表面を試料面として用いた。尚詳細な測定条件は下記に示す。
<測定条件>
X線源:Cu−Kα
電圧:40kV
電流:50mA
入射角:1.0deg
回折角度:30〜120deg
スキャンスピード:0.02deg/秒
【0172】
(2)銅箔の結晶粒径(長辺)
FIB−FESEM(日立製作所社製 集束イオンビーム加工観察装置FB2000A、日立製作所社製 電界放射型走査電子顕微鏡 S−4500))を用いて、試料断面を集束イオンビーム加工し調製後、SEM像で10000倍の視野として、任意の3点を観察した。尚、サンプルは、製造例で得られたキャリア箔付き銅箔を真空プレス機で200℃1時間、圧力3MPaの条件で熱処理する前後の薄銅箔表面を試料面として用いた。
【0173】
(3)LSの細線加工時の薄銅箔の形状
走査型電子顕微鏡(日本電子社製、装置名:JSM−6060LV)を用いて、配線の真上、および斜め配線形状を観察した。尚、サンプルは、プリント配線板(図8(c))を用いた。
各符号は、以下の通りである。
○:薄銅箔部分の裾残りがない
×:薄銅箔部分の裾残りがある
【0174】
(4)ΔL=L1−L2
走査型電子顕微鏡(日本電子社製、装置名:JSM−6060LV)を用いて、配線の断面形状を観察し、薄銅箔の最大幅をL1、電気パターンめっきの最小幅をL2を算出して計算した。尚、サンプルは、プリント配線板(図8(c))を用いた。
【0175】
(5)LS20(L/S=20μm/20μm)の線間BHAST
微細配線間の電気絶縁信頼性は、印加電圧10V、温度130℃湿度85%の条件で、連続測定で評価した。尚、サンプルは、上記実施例で得られたプリント配線板(図12(b))を用いた。尚、絶縁抵抗値が10Ω未満となる時点で終了とした。
各符号は以下の通りである。
◎:200時間を超えた。
○:100時間以上200時間以下であった。
×:100時間未満であった。
【0176】
【表1】

【符号の説明】
【0177】
1 銅張積層板
2 絶縁層
4 銅箔層
10 キャリア箔付き銅張積層板
14 金属層
19 導電回路
20 上面
22 下面
24 側面
100 銅張積層板
101 プリント配線板
102 絶縁層
104 銅箔層
105 銅箔層
106 キャリア箔層
107 キャリア箔層
108 貫通孔
109 孔
110 無電解めっき層
111 無電解めっき層
112 レジスト層
113 レジスト層
114 めっき層
115 金属層
116 金属層
118 導電回路
119 導電回路
120 ソルダーレジスト層
121 ソルダーレジスト層
122 第1のめっき層
123 第1のめっき層
124 第2のめっき層
125 第2のめっき層
130 絶縁層
132 めっき層
200 プリント配線板
201 プリント配線板
202 プリント配線板
203 プリント配線板
204 プリント配線板
205 プリント配線板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも絶縁層の一面上にキャリア基材付き銅箔が積層された積層板から前記キャリア基材を分離する工程と、
前記銅箔上に、前記銅箔よりも厚い金属層を全面にまたは選択的に形成する工程と、
少なくとも前記銅箔をエッチングすることにより、前記銅箔および前記金属層から構成される導電回路パターンを得る工程と、を含み、
前記金属層と接する前記銅箔の面において、XRD薄膜法で測定したときの面方位(111)、(200)、(220)および(311)のピーク強度の和に対して、前記面方位(200)のピーク強度の比率が26%以下である、プリント配線板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプリント配線板の製造方法であって、
前記金属層と接する前記銅箔の前記面において、前記ピーク強度の和に対して、前記面方位(200)および(220)のピーク強度の和の比率が32%以下である、プリント配線板の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプリント配線板の製造方法であって、
前記銅箔は、長辺の平均長さが2μm以下の結晶粒を有している、プリント配線板の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のプリント配線板の製造方法であって、
断面視において、前記長辺の平均長さが2μm以下の前記結晶粒が占める面積率が80%以上である、プリント配線板の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のプリント配線板の製造方法であって、
前記銅箔の膜厚が、0.1μm以上5μm以下である、プリント配線板の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のプリント配線板の製造方法であって、
前記金属層を選択的に形成する前記工程は、
前記銅箔上に開口パターンを有するレジストを形成する工程と、
前記開口パターン内かつ前記銅箔上に、めっき処理により前記金属層となるめっき層を形成する工程と、
前記レジストを除去する工程と、を含み、
前記導電回路パターンを得る前記工程は、前記銅箔をソフトエッチングする工程を含む、プリント配線板の製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のプリント配線板の製造方法であって、
前記金属層を全面にまたは選択的に形成する前記工程の前に、
前記積層板に貫通孔又は非貫通孔を形成する工程と、
少なくとも前記貫通孔又は非貫通孔の内壁に薬液を接触させる工程と、
無電解めっきにより、少なくとも前記銅箔上及び、前記貫通孔の内壁上又は前記非貫通孔の内壁上に無電解めっき層を形成する工程と、をさらに含む、プリント配線板の製造方法。
【請求項8】
絶縁層と、
前記絶縁層上に設けられており、銅箔および金属層が積層して構成される導電回路パターンと、を備え、
前記金属層と接する前記銅箔の面において、XRD薄膜法で測定したときの面方位(111)、(200)、(220)および(311)のピーク強度の和に対して、前記面方位(200)のピーク強度の比率が26%以下である、プリント配線板。
【請求項9】
請求項8に記載のプリント配線板であって、
前記金属層が2層以上のめっき膜を含む、プリント配線板。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のプリント配線板であって、
断面視において、前記導電回路パターンの延在方向と直交する幅方向における前記銅箔の最大幅をL1とし、前記金属層の最小幅をL2としたとき、
前記L1は、L2と同一、又はL2より小さい、プリント配線板。
【請求項11】
請求項10に記載のプリント配線板であって、
平面視において、前記銅箔の第1面から第2面に向かって、前記銅箔の面積が小さくなる、プリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−169597(P2012−169597A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−8213(P2012−8213)
【出願日】平成24年1月18日(2012.1.18)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】