説明

プリント配線板用の樹脂付き銅箔およびプリント配線板

【課題】耐折り曲げ性、層間絶縁性、および、耐熱性に優れたプリント配線板用の樹脂付き銅箔を提供すること。
【解決手段】銅箔10と、銅箔10の片面に設けられた樹脂層18とを有し、樹脂層18が、銅箔10の片面に、第一の接着層12と、耐熱フィルム14と、未硬化状態の第二の接着層16とをこの順に積層された構成を有することを特徴とするプリント配線板用の樹脂付き銅箔1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板用の樹脂付き銅箔およびプリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器、特に携帯電話やDSC(デジタルスチルカメラ)に代表されるモバイル機器は小型軽量化、高機能多機能化が進んでいる。そして、このような電子機器に搭載されるプリント配線板にも小型軽量化、高密度実装対応が求められており、また、プリント配線板として多層プリント配線板が多用されてきている。この多層プリント配線板も従来のリジッド基板を積層した形態から、折り曲げを可能とし3次元実装する事の出来るフレックスリジッド配線板、フレキシブルプリント配線板のみを用いて、リジッド板より薄くする事が出来るフレキシブル多層プリント配線板などへ形態を変え、現在の多層プリント配線板の主流となっている。フレックスリジッド配線板やフレキシブル多層プリント配線板は増加する電子部品に対応する実装エリアを確保しながら、狭いスペースの組み込みに有効である。
【0003】
このような多層プリント配線板に用いられる材料として樹脂付き銅箔がある。この樹脂付き銅箔もプリント配線板の小型軽量化、高密度実装対応に伴い薄型化、絶縁信頼性、高周波特性や3次元実装を想定したフレキシブル性が求められている。従来から用いられている樹脂付き銅箔としては、銅箔にエポキシ系樹脂を塗布して作製されたものが広く知られている。また、銅箔に誘電特性に優れるポリフェニレンエーテル樹脂を塗布し作製されたものや(特許文献1参照)、銅箔に、例えばポリイミド樹脂を含む層とエポキシ樹脂を含む層とを順次積層したもの(特許文献2参照)が提案されている。さらに、成型時の寸法安定性を考慮した繊維基材入り樹脂付き銅箔も提案されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2004−83735号公報
【特許文献2】特許第3992225号公報
【特許文献3】特開2001−395593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
銅箔に樹脂層のみを形成した樹脂付き銅箔では、絶縁層を薄くした場合、銅箔の粗面の影響で層間の接続信頼性が低下してしまうことがある。さらに、樹脂層がエポキシ樹脂を主成分として含む場合は耐燃性や誘電特性が不十分となり易い。また、繊維基材入り樹脂付き銅箔は剛性があるために、折り曲げ時にクラックが発生し回路の断線が発生しやすい。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、耐折り曲げ性、層間絶縁性、および、耐熱性に優れたプリント配線板用の樹脂付き銅箔およびプリント配線板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は以下の本発明により達成される。
すなわち、本発明のプリント配線板用の樹脂付き銅箔は、銅箔と、該銅箔の片面に設けられた樹脂層とを有し、上記樹脂層が、上記銅箔の片面に、第一の接着層と、耐熱フィルムと、未硬化状態の第二の接着層とをこの順に積層された構成を有することを特徴とする。
【0007】
本発明のプリント配線板用の樹脂付き銅箔の一実施態様は、前記樹脂層の厚みが、13μm〜205μmの範囲内であることが好ましい。
【0008】
本発明のプリント配線板用の樹脂付き銅箔の他の実施態様は、前記耐熱フィルムが、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート樹脂および液晶ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましい。
【0009】
本発明のプリント配線板用の樹脂付き銅箔の他の実施態様は、前記第一の接着層および前記第二の接着層から選択される少なくとも一方の層が、エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0010】
本発明のプリント配線板用の樹脂付き銅箔の他の実施態様は、前記第二の接着層の前記耐熱フィルムが設けられた側と反対側に剥離フィルムを設けたものであることが好ましい。
【0011】
本発明のプリント配線板は、本発明のプリント配線板用の樹脂付き銅箔を用いて作製されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐折り曲げ性、層間絶縁性、および、耐熱性に優れたプリント配線板用の樹脂付き銅箔およびプリント配線板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<プリント配線板用の樹脂付き銅箔>
本実施形態のプリント配線板用の樹脂付き銅箔(以下、「樹脂付き銅箔」と略す場合がある)は、銅箔と、該銅箔の片面に設けられた樹脂層とを有し、上記樹脂層が、上記銅箔の片面に、第一の接着層と、耐熱フィルムと、未硬化状態の第二の接着層とをこの順に積層された構成を有することを特徴とする。
【0014】
本実施形態の樹脂付き銅箔では、樹脂層中に繊維基材を含まないため、耐折り曲げ性に優れる。このため、折り曲げ時のクラック発生を抑制できる。このため回路の断線を抑制できる。これに加えて、本実施形態の樹脂付き銅箔は、3層構成からなる樹脂層を構成する1層として耐熱フィルムを用いているため、耐熱性にも優れる。
【0015】
一方、プリント配線板の作製に際しては、樹脂付き銅箔と内層板とを熱プレス成形する。このため、樹脂層には、内層板と密着した状態で接着固定できるように流動性と硬化性とが求められる。しかし、樹脂層が単層構成であれば、熱プレス成形時に樹脂が流動することにより樹脂層の一部が薄くなる上に、銅箔の粗面の影響も加わることで結果として層間絶縁性が低下してしまう可能性がある。そして、このような問題は、樹脂層の厚みがより薄くなった場合により顕著になってくる。
【0016】
これに対して、本実施形態の樹脂付き銅箔は、樹脂層が3層から構成されている。そして、最外層の第二の接着層が未硬化状態であるため、熱プレス成形時に内層板表面と密着して接合することができる。このため、従来の単層構成の樹脂層を有する樹脂付き銅箔と同様に内層板に対して優れた接着性を確保できる。これに加えて、本実施形態の樹脂付き銅箔は、第二の接着層の銅箔側に、耐熱フィルムが設けられている。そして、この耐熱フィルムは既に樹脂成分が硬化した状態にあるため、熱プレス成形時に耐熱フィルムが流動変形することが無い。このため、仮に、第二の接着層や第一の接着層が熱プレス成形時に著しく流動変形したとしても、銅箔と内層板との間には一定の厚みを有する樹脂層(すなわち、耐熱フィルム)が存在することになる。このため、本実施形態の樹脂付き銅箔は、優れた層間絶縁性を有する。
【0017】
次に、本実施形態の樹脂付き銅箔の層構成や、各層の構成の詳細、製造方法等についてより詳細に説明する。
【0018】
−層構成−
本実施形態の樹脂付き銅箔は、銅箔上に、第一の接着層と、耐熱フィルムと、第二の接着層とがこの順に積層された構成を有する。なお、樹脂付き銅箔の取扱いを容易にするために、第二の接着層表面に更に剥離フィルムを設けることが好ましい。図1は、本実施形態の樹脂付き銅箔の層構成の一例を示す模式断面図である。図1に示す樹脂付き銅箔1は、銅箔10上に、第一の接着層12と、耐熱フィルム14と、第二の接着層16とがこの順に積層された構成を有する。そして、第一の接着層12と、耐熱フィルム14と、第二の接着層16とにより樹脂層18が形成される。図2に示す樹脂付き銅箔2は、本実施形態の樹脂付き銅箔の層構成の他の例を示す模式断面図である。図2に示す樹脂付き銅箔2は、図1に示す樹脂付き銅箔1の第二の接着層16表面に、更に剥離フィルム20を設けた構成を有するものである。
【0019】
樹脂付き銅箔の厚みとしては特に限定されないが、実用上は14μm〜275μmの範囲内が好ましく、14μm〜115μmの範囲内が好ましい。また、樹脂層の厚みの下限は少なくとも13μm以上であることが好ましい。樹脂層の厚みを13μm以上とすることにより、樹脂層を構成する各層が、本来の機能を発揮するのに十分な膜厚を確保することができる。また、樹脂層の厚みの上限は、材料コスト低減などの実用上の観点からは205μm以下であることが好ましい。このように樹脂層の厚みは13μm〜205μmの範囲が好適であるが、電子機器の小型軽量化等に対応するという観点では、13μm〜80μmの範囲がより好ましく、13μm〜45μmの範囲が更に好ましい。
【0020】
なお、従来の樹脂層が単層構成の樹脂付き銅箔では、既述したように樹脂層の厚みが薄くなればなる程、層間絶縁性が不十分となる可能性が高くなり、特に樹脂層厚みが30μm以下ではこのような問題が深刻になるものと予想される。しかし、本実施形態の樹脂付き銅箔では、樹脂層を構成する1層として耐熱フィルムが用いられているため、樹脂層厚みが30μm以下であっても優れた層間絶縁性を確保することができる。
【0021】
銅箔の厚みとしては、その下限値は1μm以上であることが好ましく、9μm以上であることがより好ましい。厚みを1μm以上とすることにより、プリント配線板に形成される銅配線パターンの形成不良を抑制することができる。また、上限値は特に限定されるものではないが、エッチングにより銅配線パターンを形成する際の生産性の確保等の実用上の観点から70μm以下とすることが好ましい。
【0022】
第一の接着層および第二の接着層の厚みとしては、その下限は3μm以上であることが好ましく、7μm以上であることが好ましい。厚みを3μm以上とすることにより接着層の両側に位置する部材同士の接着性を確実に確保することができる。また、厚みの上限は特に限定されるものではないが、材料コスト低減等の実用上の観点から40μm以下であることが好ましい。
【0023】
耐熱フィルムの厚みとしては、その下限値は7μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。厚みを7μm以上とすることにより、層間絶縁性や耐熱性を確実に確保することができる。なお、厚みの上限は、材料コスト低減等の実用上の観点から125μm以下であることが好ましい。
【0024】
−耐熱フィルム−
耐熱フィルムとしては、公知の耐熱性樹脂を主成分として含むフィルムが利用できる。このような耐熱フィルムの融点としては、135℃以上が好ましく200℃以上がより好ましい。
【0025】
また、耐熱フィルムとしては、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN樹脂)および液晶ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含むフィルムを用いることができる。なお、これらの中でも耐熱フィルムを構成する樹脂材料としては、自己消火性を有し耐燃性が高く、誘電特性にも優れるポリイミドや、液晶ポリマーを用いることが好ましい。これらの耐熱性樹脂を含む耐熱フィルムとしては、公知の樹脂フィルム作製方法を利用して作製したものを用いることができるが、市販品の入手が容易なポリイミドフィルム、PETフィルム、PENフィルム、液晶ポリマーフィルムを用いることが好適である。
【0026】
−第一の接着層−
第一の接着層は、銅箔と耐熱性フィルムとを接着することが可能な樹脂成分から構成されるものであれば特に限定されないが、通常は、熱硬化性樹脂を主成分として含むものであることが好ましい。また、熱硬化性樹脂以外に必要に応じて、硬化剤や、硬化促進剤、可とう成分、無機充填剤、難燃剤等の添加剤を必要に応じて用いることができる。また、第一の接着層は、硬化状態であってもよく、未硬化状態であってもよい。なお、第一の接着層が未硬化状態の場合は、プリント配線板を作製する際の熱プレス成形時に第一の接着層が硬化する。
【0027】
熱硬化性樹脂としては公知の熱硬化性樹脂を1種又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、これらの中でもエポキシ樹脂を用いることが好ましい。エポキシ樹脂としては特に限定されるものではないが、例えは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、カテコール型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、キサンテン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール変性型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂、アクリロニトリルブタジエン変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、キレート変性エポキシ樹脂更にこれらのエポキシ樹脂を有機リン化合物で変性させたエポキシ樹脂等である。上記記載のエポキシ樹脂は1種又は2種以上併用する事も出来る。
【0028】
また上記エポキシ樹脂を硬化させる硬化剤としては公知の硬化剤が利用できるが、例えばアミン硬化系としては、ジシアンジアミド(DICY)、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン等が挙げられ、フェノール硬化系としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビフェノールA型ノボラック樹脂、トリアジン変性フェノールノボラック樹脂等を挙げることができる。これら硬化剤は1種又は2種以上を併用する事も出来る。
【0029】
また、上述したように熱硬化性樹脂と共に必要に応じて硬化促進剤、可とう成分、無機充填剤、難燃剤を用いることが出来る。ここで硬化促進剤には用いる硬化剤の種類によって公知の材料より選択出来、例えば2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、三フッ化ホウ素アミン錯体、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。これらの硬化促進剤は1種又は2種以上併用して使用することができる。
【0030】
また、可とう成分としては公知のものが利用できるが、例えば、アクリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、カルボキシ含有アクリロニトリルブタジエンゴム等の各種合成ゴム、ゴム変性の高分子量化合物、変性ポリイミド、変性ポリアミドイミド、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタンポリエステル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、フェノキシ樹脂等を用いることができる。これらの成分は、1種又は2種類以上を併用することができる。
【0031】
無機充填剤としては公知のものが利用できるが、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ、水酸化マグネシウム、タルク、クレー等を挙げることができる。これらの成分は、1種又は2種以上を併用することができる。
【0032】
難燃剤としては公知のものが利用できるが、例えば、燐原子含有化合物や窒素原子含有化合物や無機系難燃化合物などが挙げることができる。より具体的には、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、トリス(2,6ジメチルフェニル)ホスフェート、レゾルシンジフェニルホスフェートなどのリン酸エステル、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸アミド、赤リン、リン酸グアニジン、ジアルキルヒドロキシメチルホスホネートなどの縮合リン酸エステル化合物などの燐原子含有化合物、メラミンなどの窒素原子含有化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、硼酸カルシウムなどの無機系難燃化合物等を挙げることができる。これらの成分は、1種又は2種以上を併用することができる。
【0033】
なお、樹脂付き銅箔の耐熱性の確保という観点で樹脂層を構成する成分として、例えばポリイミド樹脂を用いる場合は、ポリイミドフィルム表面に電解メッキ等により銅箔を形成したり、銅箔表面にポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸溶液を塗布した後、焼成するなどにより、第一の接着層を省略した2層構成とすることも考えられる。このような第一の接着層を省略した2層構成の樹脂付き銅箔は、本実施形態の樹脂付き銅箔と比べると層構成が簡略化できる。しかし、以下に説明する理由を考慮すれば、樹脂層を2層構成とするよりも、本実施形態の樹脂付き銅箔のように3層構成とすることがより好ましいと考えられる。
【0034】
すなわち、製造プロセスに着目すると、2層構成では、電解メッキ処理や、耐熱フィルムに相当する層としてポリイミド樹脂を用いる場合には高温での焼成処理が必要である。これに対して、3層構成を採用する本実施形態の樹脂付き銅箔では、後述するように電解メッキ処理や高温焼成処理が不要であり、生産性という点で有利である。
【0035】
また、2層構成を採用し、且つ、2層からなる樹脂層のうち銅箔側に設ける層としてポリイミド樹脂からなる層を設けた場合、プリント配線板の作製時に銅箔をエッチングし、レジストを塗布する際に、ポリイミド樹脂からなる層とレジストとが接触することになる。しかし、プリント配線板の作製時に使用されるレジストはエポキシ系樹脂を主成分として用いるものが多いため、ポリイミド樹脂からなる層とレジストとの親和性が低い。このため、使用可能なレジストが制限されることになる。しかしながら、本実施形態の樹脂付き銅箔では、仮に、耐熱フィルムとしてポリイミドフィルムを用いたとしても、耐熱フィルムの銅箔側には第一の接着層が設けられているためこのような問題が発生することは無い。これに加えて、第一の接着層として上述したようにエポキシ系樹脂を用いれば、エポキシ系樹脂を主成分とするレジストに対しても優れた親和性を確保できる。このため、プリント配線板の作製時に使用できるレジストにも著しい制限が発生することも無い。
【0036】
−第二の接着層−
第二の接着層は、耐熱性フィルムと内層板とを接着することが可能な樹脂成分から構成されるものであれば特に限定されないが、基本的に第一の接着層として利用可能なものであればいずれの材料も利用できる。なお、第一の接着層を構成する材料と第二の接着層を構成する材料とは同一であっても異なっていてもよい。
【0037】
−剥離フィルム−
既述したように、本実施形態の樹脂付き銅箔には、必要に応じて剥離フィルムを用いることができる。この剥離フィルムとしては、基材表面を離型処理したものが利用できる。ここで、基材としては、シート状の部材であれば特に限定されないが、例えばPETフィルム等の樹脂フィルムを用いることができる。また離型処理としては、公知の離型処理が利用できるが、例えば、シリコーン処理、アルキッド処理などが利用できる。なお、剥離フィルムを設けた場合、プリント配線板の作製前に、剥離フィルムを剥離して本実施形態の樹脂付き銅箔を用いる。
【0038】
−樹脂付き銅箔の製造方法−
本実施形態の樹脂付き銅箔は、例えば、以下の手順で作製することができる。まず、耐熱フィルムの表面に、第一の接着層形成用の樹脂溶液を塗布し乾燥させることで、耐熱フィルム表面に未硬化状態の第一の接着層が形成されたシート(以下、「シート1」と称す)を作製する。なお、樹脂溶液は、未硬化状態の熱硬化性樹脂を主成分とし、これを溶媒に溶解させたものである。また、樹脂溶液を塗布して形成された膜の乾燥条件は、溶液の濃度や、溶媒の沸点等に応じて適宜選択できるが、一般的には温度が80℃〜150℃程度で5分〜20分程度が好適である。
【0039】
次に、シート1の第一の接着層側と銅箔とを貼り合わせる。貼り合わせの方法としては公知の貼り合わせ方法が利用できるが、ロールを利用してラミネートする方法を利用することが好ましい。貼り合わせ後は、加熱処理を行い未硬化状態の第一の接着層を硬化させる。これにより、銅箔上に、硬化状態の第一の接着層と、耐熱フィルムとを積層したシート(以下、「シート2」と称す)が得られる。なお、加熱条件は第一の接着層を構成する未硬化状態の熱硬化性樹脂に応じて適宜選択することができるが、一般的には温度が120℃〜180℃程度で10時間〜30時間程度が好適である。
【0040】
一方、剥離フィルムの表面(離型処理された面)に、第二の接着層形成用の樹脂溶液を塗布し乾燥させることで、剥離フィルム表面に未硬化状態の第二の接着層が形成されたシート(以下、「シート3」と称す)を作製する。なお、樹脂溶液は、未硬化状態の熱硬化性樹脂を主成分とし、これを溶媒に溶解させたものである。また、樹脂溶液を塗布して形成された膜の乾燥条件は、溶液の濃度や、溶媒の沸点等に応じて適宜選択できるが、一般的には温度が80℃〜150℃程度で5分〜20分程度が好適である。
【0041】
最後に、シート2の耐熱フィルム側とシート3の第二の接着層側とを貼り合わせる。これにより、図2に例示するような樹脂付き銅箔を得ることができる。なお、貼り合わせの方法としては公知の貼り合わせ方法が利用できるが、ロールを利用してラミネートする方法を利用することが好ましい。
【0042】
<プリント配線板>
本実施形態のプリント配線板は、本実施形態の樹脂付き銅箔を用いて作製されたものである。具体的には、本実施形態の樹脂付き銅箔の第二の接着層と1層以上の内層板とを熱プレス成形した後、更に、ビアホールを形成することで作製することができる。なお、熱プレス条件としては、使用する樹脂付き銅箔や内層板に応じて適宜選択できるが、一般的には、温度120℃〜180℃、時間40分〜90分、押圧力1MPa〜5.5MPaの範囲で実施することが好適である。
【0043】

また、内層板としては公知のものが利用できるが、フレキシブル性、耐燃性に優れるポリイミド基材フレキシブルプリント配線板を用いるとより好ましい。また、プリント配線板の作製に関しては、ビアホールの形成方法等の作製方法は特に限定されず、積層数についても多層とし、多層プリント配線板を作製してもよい。
【実施例】
【0044】
以下に本発明を実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【0045】
<接着層形成用溶液の準備>
接着層形成用溶液の作製に際しては下記に示す材料を準備した。
[エポキシ樹脂]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製エピクロン1051)
[硬化剤A]
アミノトリアジンノボラック樹脂(DIC社製、LA7054)
[硬化剤B]
DICY
[エラストマーA]
フェノキシ樹脂(JER社製、JER1256)
[エラストマーB]
カルボキシ基含有アクリロニトリルブタジエンゴム(日本ゼオン社製、ニポール1072J)
[難燃剤]
芳香族リン酸エステル(大八化学社製、PX−200)
[金属水酸化物]
水酸化アルミニウム(日本軽金属社製、BF−013ST)
【0046】
そして、固形分が下記表1に示す配合割合となるように、上記各成分をMEK(メチルエチルケトン)に添加攪拌し接着層形成用の溶液A,Bを調整した。
【0047】
【表1】

【0048】
<樹脂付き銅箔の作製>
(実施例1)
ポリイミドフィルム(厚み12.5μm、東レ・デュポン社製、商品名:カプトンV)の表面に溶液Aを厚さ7μmとなるように塗工した後、150℃で10min乾燥することで、シート1を得た。次に厚み12μmの電解銅箔とシート1の溶液Aが塗付乾燥された面とをロールラミネータで貼り合せた後、150℃で25hr加熱処理することで、シート2を得た。
【0049】
また、剥離フィルム(厚み38μm、リンテック社製、商品名:PET38SK−1)の表面に溶液Bを厚さ15μmとなるように塗工し、150℃で10min乾燥処理することで、シート3を得た。その後、シート2のポリイミドフィルム面とシート3の第二の接着層面(溶液Bを塗布乾燥した面)とをロールラミネータで貼り合せを行い、樹脂付き銅箔を得た。
【0050】
(実施例2)
耐熱フィルムとしてポリイミドフィルムの代わりにPETフィルム(厚み12.5μm、帝人デュポンフィルム社製、商品名:テトロン)へ変更した以外は実施例1と同様にして樹脂付き銅箔を得た。
【0051】
(実施例3)
耐熱フィルムとしてポリイミドフィルムの代わりにPENフィルム(厚み12.5μm、帝人デュポンフィルム社製、商品名:テオネックス)へ変更した以外は実施例1と同様にして樹脂付き銅箔を得た。
【0052】
(実施例4)
耐熱フィルムとしてポリイミドフィルムの代わりに液晶ポリマーフィルム(厚み25μm、クラレ社製、商品名:ベクスター)へ変更した以外は実施例1と同様にして樹脂付き銅箔を得た。
【0053】
(比較例1)
剥離フィルム(厚み38μm、リンテック社製、商品名:PET38SK−1)の表面に溶液Aを厚さ25μmとなるように塗工した後、150℃で10min乾燥処理した。次に、このシートの溶液Aが塗付・乾燥処理された面と、電解銅箔(厚み12μm)とを貼り合せることにより樹脂付き銅箔を得た。
【0054】
(比較例2)
ガラス繊維基材(厚み20μm、旭シュエーベル社製、商品名:IPC1027タイプ)の表面に溶液Aを塗布した後、150℃で15min乾燥処理した。次に、次に、このシートの溶液Aが塗付・乾燥処理された面と、電解銅箔(厚み12μm)とを貼り合せることにより樹脂付き銅箔を得た。
【0055】
<評価>
各実施例および比較例の樹脂付き銅箔について、層間の絶縁性、ハゼ折り試験、耐燃性、引き剥がし強さ、はんだ耐熱性、および、比誘電率について評価した。結果を表2に示す。
【0056】
【表2】

【0057】
なお、表2中に示す層間の絶縁性、ハゼ折り試験、耐燃性、引き剥がし強さ、はんだ耐熱性、および、比誘電率の評価方法および評価基準は以下の通りである。
【0058】
(1)層間の絶縁性
各実施例および比較例の樹脂付き銅箔とL/S=75μm/75μmにパターニングされたフレキシブルプリント配線板用銅張績層板(デュポン社製パイララックスAX352535Type)とを160℃,4MPa,60minプレス成型することによりプリント配線板を作製した。次に、このプリント配線板の断面を、プリント配線板の平面方向に沿って光学顕微鏡で観察することにより、プリント配線板の厚み方向に対して配線間を絶縁するように樹脂層(絶縁層)が存在するか否かを確認した。なお、表2中に示す結果の評価基準は以下の通りである。
○:配線間に十分な厚みの絶縁層が必ず存在しており絶縁性が確保されている。
×:配線間に部分的に絶縁層が存在しない、又は、絶縁層が極めて薄くなっている部分が存在し、絶縁性が確保されていない。
【0059】
(2)ハゼ折り試験
各実施例および比較例の樹脂付き銅箔とL/S=75μm/75μmにパターニングされたフレキシブルプリント配線板用銅張績層板(デュポン社製パイララックスAX352535Type)とを160℃,4MPa,60minプレス成型した後、更に電解銅箔をエッチングにより完全に除去した。その後、エッチング面が内側となるように500gの荷重をかけ180°の一回ハゼ折り行い、白化の有無を評価した。
【0060】
(3)耐燃性
各実施例および比較例の樹脂付き銅箔の第二の接着層(又は銅箔と反対側に位置する最外層)が設けられた面と電解銅箔(厚み12μm)とを160℃,4MPa,60minプレス成型した。続いて得られたシートの両面の電解銅箔をエッチングにより完全に除去した。そしてこの状態でUL規格94VTM−0グレードを試験した。
【0061】
(4)引き剥がし強さ
各実施例および比較例の樹脂付き銅箔とフレキシブルプリント配線板用銅張績層板(デュポン社製パイララックスAX352535Type)とを160℃,4MPa,60minプレス成型したサンプルを作製した。測定方法はJIS C6471に準拠し、評価を行った。
【0062】
なお、表2中に示す水準1〜水準3は、下記に示す界面での引き剥がし強さの評価を意味する。
・水準1:銅箔/樹脂層/ポリイミドフィルム界面
・水準2:ポリイミドフィルム/樹脂層/フレキシブルプリント配線板用銅張績層板界面
・水準3:電解銅箔/樹脂層/フレキシブルプリント配線板用銅張績層板界面
【0063】
(5)はんだ耐熱性
各実施例および比較例の樹脂付き銅箔とフレキシブルプリント配線板用銅張績層板(デュポン社製パイララックスAX352535Type)とを160℃,4MPa,60minプレス成型した後、電解銅箔をエッチングにより除去した。その後、得られたサンプルを105℃、1時間乾燥した後、260℃のはんだ浴に30秒浮かべてフクレの有無を確認した。
【0064】
(6)誘電率
各実施例および比較例の樹脂付き銅箔について、JISC6471の測定方法に準拠し、1MHZで比誘電率を測定した。なお、表2中に示す結果の評価基準は以下の通りである。
○:比誘電率が4.0以下
×:比誘電率が4.0を超える
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本実施形態の樹脂付き銅箔の層構成の一例を示す模式断面図である。
【図2】本実施形態の樹脂付き銅箔の層構成の他の例を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1、2 樹脂付き銅箔
10 銅箔
12 第一の接着層
14 耐熱フィルム
16 第二の接着層
18 樹脂層
20 剥離フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅箔と、該銅箔の片面に設けられた樹脂層とを有し、
上記樹脂層が、上記銅箔の片面に、第一の接着層と、耐熱フィルムと、未硬化状態の第二の接着層とをこの順に積層された構成を有することを特徴とするプリント配線板用の樹脂付き銅箔。
【請求項2】
前記樹脂層の厚みが、13μm〜205μmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板用の樹脂付き銅箔。
【請求項3】
前記耐熱フィルムが、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート樹脂および液晶ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のプリント配線板用の樹脂付き銅箔。
【請求項4】
前記第一の接着層および前記第二の接着層から選択される少なくとも一方の層が、エポキシ樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のプリント配線板用の樹脂付き銅箔。
【請求項5】
前記第二の接着層の前記耐熱フィルムが設けられた側と反対側に剥離フィルムを設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のプリント配線板用の樹脂付き銅箔。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載のプリント配線板用の樹脂付き銅箔を用いて作製されたことを特徴とするプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−153530(P2010−153530A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329046(P2008−329046)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(591225545)ニッカン工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】