説明

プリント配線板

【課題】実装される表面実装部品のランドに対する半田付け強度をより高めつつ、表面実装部品を前記ランドにリフローで半田付けをする際の、表面実装部品の前記ランドに対する位置ずれを抑える。
【解決手段】表面実装部品2が実装されるプリント配線板1は、互いに間隔をあけて配置され、表面実装部品2の両側の電極2a,2aがそれぞれ電気的に接続される1対のランド13,13を備える。各ランド13,13は、対をなす相手方のランド13から遠ざかるにつれて増大するY軸方向の幅を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面実装部品が実装されるプリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1の図5(a)には、小型サイズの表面実装部品が実装されたフレキシブルプリント配線板が開示されている。この従来のプリント配線板は、互いに間隔をあけて配置された1対のランドと、カバーレイフィルムとを備えている。カバーレイフィルムは、前記1対のランドを露出させる開口を有している。前記1対のランドには、前記表面実装部品の両側の電極がそれぞれ半田付けされている。前記開口の寸法は、長さ方向のみならず幅方向についても、前記表面実装部品の寸法よりも大きくされている。
【0003】
そして、この従来のプリント配線板では、前記1対のランドはそれぞれ、前記電極の幅と同じ幅を有する長方形状に構成されている。なお、前記幅の方向は、前記1対のランドの間隔の方向(表面実装部品の端面間の方向に相当)と直交する方向である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−368349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来のプリント配線板では、前述したように、前記1対のランドはそれぞれ、前記電極の幅と同じ幅を有する長方形状に構成されている。したがって、前記従来のプリント配線板では、前記1対のランドはそれぞれ、マウントされた前記表面実装部品の各端面からはみ出す一方で、前記表面実装部品の各側面からはみ出さない。
【0006】
このため、前記従来のプリント配線板では、前記表面実装部品が、下面(プリント配線板側の面)及び端面のみならず側面にも前記1対の電極がそれぞれ形成されている部品であっても、前記表面実装部品の電極の側面部分と前記1対のランドとの間には半田フィレットが形成されない。よって、前記従来のプリント配線板では、表面実装部品のランドに対する半田付け強度を必ずしも十分に高めることができなかった。
【0007】
また、このようなプリント配線板では、接続不良の防止などの点から、前記表面実装部品を前記1対のランドにリフローで半田付けをする際に、前記表面実装部品が前記1対のランドに対して所期の位置から極力ずれないことが、好ましい。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、実装される表面実装部品のランドに対する半田付け強度をより高めつつ、前記表面実装部品を前記ランドにリフローで半田付けをする際の、前記表面実装部品の前記ランドに対する位置ずれを抑えることができるプリント配線板を、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段として、以下の各態様を提示する。第1の態様によるプリント配線板は、表面実装部品が実装されるプリント配線板であって、互いに間隔をあけて配置され前記表面実装部品の両側の電極がそれぞれ電気的に接続される1対のランドを備え、前記1対のランドの各ランドは、前記1対のランドの相手方のランドから遠ざかるにつれて増大する幅を有するものである。
【0010】
第2の態様によるプリント配線板は、前記第1の態様において、前記1対のランドの各ランドは、前記間隔の方向に沿った直線に対して対称形状を有するものである。
【0011】
第3の態様によるプリント配線板は、前記第1又は第2の態様において、前記1対のランドの各ランドの幅方向の一方側の辺及び他方側の辺が、前記間隔の方向に対して、互いに逆向きに10゜以上かつ20゜以下の範囲内の角度で傾くものである。その範囲のうち、12゜以上かつ18゜以下の範囲がより好ましく、14゜以上かつ16゜以下の範囲がより一層好ましい。
【0012】
第4の態様によるプリント配線板は、前記第1乃至第3のいずれかの態様において、前記1対のランドの各ランドの少なくとも一部を露出させる開口を有するカバーレイフィルムを、備えたものである。
【0013】
第5の態様によるプリント配線板は、前記第4の態様において、前記開口は、トラック形状又は楕円形状を有するものである。前記トラック形状は、長方形の両側に半円形又は半楕円形をそれぞれ付加した形状をいう。
【0014】
第6の態様によるプリント配線板は、前記第4又は第5の態様において、前記1対のランドの各ランドにおける、前記1対のランドの相手方のランドとは反対側の部分は、前記開口により露出されずに、前記カバーレイフィルムにより覆われたものである。
【0015】
第7の態様によるプリント配線板は、前記第1乃至第6のいずれかの態様において、当該プリント配線板がフレキシブルプリント配線板であるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、実装される表面実装部品のランドに対する半田付け強度をより高めつつ、前記表面実装部品を前記ランドにリフローで半田付けをする際の、前記表面実装部品の前記ランドに対する位置ずれを抑えることができるプリント配線板を、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態によるプリント配線板の一部を模式的に示す図である。
【図2】チップ部品が実装された状態の、図1に示すプリント配線板の一部を模式的に示す図である。
【図3】第1の比較例によるプリント配線板の一部を模式的に示す図である。
【図4】チップ部品が実装された状態の、図3に示すプリント配線板の一部を模式的に示す図である。
【図5】チップ部品が実装された状態の、第2の比較例によるプリント配線板の一部を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明によるプリント配線板について、図面を参照して説明する。
【0019】
図1(a)は、本発明の一実施の形態によるプリント配線板1の一部を模式的に示す概略平面図である。図1(b)は、図1(a)中のX1−X2線に沿った概略断面図である。図1(c)は、図1(a)中のY1−Y2線に沿った概略断面図である。図1(a)では、理解を容易にするため、1対のランド13,13及び配線パターン14,14にハッチングを付している。
【0020】
図2(a)は、表面実装部品としてのチップ部品2が実装された状態の、図1に示すプリント配線板1の一部を模式的に示す概略平面図であり、図1(a)に対応している。図2(b)は、図2(a)中のX3−X4線に沿った概略断面図であり、図1(b)に対応している。図2(c)は、図2(a)中のY3−Y4線に沿った概略断面図であり、図1(c)に対応している。図2(a)では、理解を容易にするため、チップ部品2にドットパターンを付している。図2(a)では、ランド13,13及び配線パターン14,14には、ハッチングを付していない。半田に関しては、図2(b)において半田フィレット21a,21bのみを示し、図2(c)において半田フィレット21c,21dのみを示し、図2(a)においてはそれらの図示を省略している。
【0021】
なお、図1及び図2に示すように、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸を定義する。また、X軸方向のうち矢印の向きを+X方向又は+X側、その反対の向きを−X方向又は−X側と呼び、Y軸方向及びZ軸方向についても同様とする。XY平面と平行な平面がプリント配線板1の主面と一致している。これらの点は、後述する図についても同様である。
【0022】
本実施の形態によるプリント配線板1は、フレキシブルプリント配線板として構成されている。本実施の形態によるプリント配線板1は、絶縁材料からなる可撓性のベースフィルム11と、ベースフィルム11上に形成された銅箔等の導体パターンと、それらの上を覆う絶縁材料からなる保護用のカバーレイフィルム12とを有している。前記導体パターンの一部によって、1対のランド13,13、及び、これらのランド13,13にそれぞれ連続する配線パターン14,14が、構成されている。1対のランド13,13は、互いにX軸方向に間隔をあけて配置され、チップ部品2の両側(+X側及び−X側)の電極2a,2aがそれぞれ電気的に接続されるものである。
【0023】
本実施の形態では、チップ部品2は、小型サイズの直方体状に構成されている。例えば、チップ部品2のサイズは、1005と呼ばれる1.0mm×0.5mm以下の小型サイズであり、0603と呼ばれる0.6mm×0.3mmのサイズを挙げることができる。本実施の形態では、チップ部品2は、例えばセラミックコンデンサであり、+X側の電極2aは、+X側において、端面(YZ平面と平行な+X側の面)、下面(XY平面と平行な−Z側の面)、上面(XY平面と平行な+Z側の面)及び2つの側面(XZ平面と平行な2つの面)に渡って、形成されている。チップ部品2を+Z側から−Z方向に見たとき、+X側の電極2aの上面部(XY平面と平行な+Z側の面に形成された部分)が、+X側の電極2aの下面部(XY平面と平行な−Z側の面に形成された部分)とちょうど重なるようになっている。これらの点は、−X側の電極2aについても同様である。
【0024】
各ランド13,13は、対をなす相手方のランド13から遠ざかるにつれて増大する幅(Y軸方向の幅)を有している。すなわち、+X側のランド13は、対をなす相手方の−X側のランド13から遠ざかるにつれて(つまり、+X方向側の位置ほど)その幅(Y軸方向の幅)が広くなっている。また、−X側のランド13は、対をなす相手方の+X側のランド13から遠ざかるにつれて(つまり、−X方向側の位置ほど)その幅(Y軸方向の幅)が広くなっている。
【0025】
本実施の形態では、+X側のランド13の幅方向(Y軸方向)の一方側(+Y側)の辺13a及び他方側の辺13bが、X軸方向に対して、互いに逆向きに所定範囲内の角度で傾いている。この角度が大きいほど、後述する側面の半田フィレット21c,21dの量が多くなることからチップ部品2の半田付け強度がより高まるものの、ランド13,13がチップ部品2の側面からY軸方向へはみ出す面積が増大することから、チップ部品2をランド13,13にリフローで半田付けをする際の、チップ部品2のランド13,13に対する位置ずれが大きくなる。一方、前記角度が小さいほど、ランド13,13がチップ部品2の側面からY軸方向へはみ出す面積が少なくなることから、チップ部品2をランド13,13にリフローで半田付けをする際の、チップ部品2のランド13,13に対する位置ずれが小さくなるものの、側面の半田フィレット21c,21dの量が少なくなることからチップ部品2の半田付け強度が低下してしまう。これらを考慮すると、半田付け強度の増大効果とチップ部品2の位置ずれ低減効果をバランス良く得るためには、前記所定範囲は、10゜以上かつ20゜以下の範囲であることが好ましく、12゜以上かつ18゜以下の範囲であることがより好ましく、14゜以上かつ16゜以下の範囲であることがより一層好ましい。
【0026】
同様に、本実施の形態では、−X側のランド13の幅方向(Y軸方向)の一方側(+Y側)の辺13a及び他方側の辺13bが、X軸方向に対して、互いに逆向きに所定範囲内の角度で傾いている。この所定範囲も、10゜以上かつ20゜以下の範囲であることが好ましく、12゜以上かつ18゜以下の範囲であることがより好ましく、14゜以上かつ16゜以下の範囲であることがより一層好ましい。
【0027】
本実施の形態では、+X側のランド13の幅方向(Y軸方向)の一方側(+Y側)の辺13a及び他方側の辺13bが、X軸方向に対して、互いに逆向きに同じ角度(例えば、15゜)で傾いている。これにより、+X側のランド13は、+X側のランド13のY軸方向の中心を通りX軸方向と平行な直線に対して、対称形状を有している。同様に、−X側のランド13の幅方向(Y軸方向)の一方側(+Y側)の辺13a及び他方側の辺13bが、X軸方向に対して、互いに逆向きに同じ角度(例えば、15゜)で傾いている。これにより、−X側のランド13も、−X側のランド13のY軸方向の中心を通りX軸方向と平行な直線に対して、対称形状を有している。もっとも、本発明では、各ランド13,13は、必ずしも、X軸方向と平行な直線に対して対称形状を有していなくてもよい。
【0028】
また、本実施の形態では、1対のランド13,13は、1対のランド13,13間の間隔のX軸方向の中心を通りY軸方向と平行な直線に対して、対称となっている。もっとも、本発明では、1対のランド13,13は、必ずしも、Y軸方向と平行な直線に対して対称でなくてもよい。
【0029】
本実施の形態では、(i)+X側のランド13の+Y側の辺13aの−X側端点Aが、チップ部品2の+X側の電極2aの下面部(XY平面と平行な−Z側の面に形成された部分)の−X側かつ+Y側の角と一致し、(ii)+X側のランド13の−Y側の辺13bの−X側端点Bが、チップ部品2の+X側の電極2aの下面部の−X側かつ−Y側の角と一致し、(iii)−X側のランド13の+Y側の辺13aの+X側端点Cが、チップ部品2の−X側の電極2aの下面部(XY平面と平行な−Z側の面に形成された部分)の+X側かつ+Y側の角と一致し、(iv)−X側のランド13の−Y側の辺13bの+X側端点Dが、チップ部品2の−X側の電極2aの下面部の+X側かつ−Y側の角と一致するように、1対のランド13,13が形成されている。もっとも、必ずしもこれに限らず、例えば、+X側のランド13を、全体的に、図示の位置から−X方向に又は+X方向に若干ずらしてもよい。また、+X側のランド13の+Y側の辺13aを、端点Aから+X方向に若干延ばした後に、図示の角度で斜めに延ばしたものとし、+X側のランド13の−Y側の辺13bを、端点Aから+X方向に若干延ばした後に、図示の角度で斜めに延ばしたものとしてもよい。これらの点は、−X側のランド13についても同様である。
【0030】
カバーレイフィルム12には、各ランド13,13の一部を露出させてチップ部品2を実装するための開口12aが、形成されている。本実施の形態では、開口12aは、+X側のランド13の−X側部分、−X側のランド13の+X側部分及び1対のランド13,13間の部分を含むように、形成されている。各ランド13,13は、対をなす相手方のランド13とは反対側の部分は、開口12aにより露出されずに、カバーレイフィルム12により覆われている。すなわち、+X側のランド13の+X側部分及び−X側のランド13の−X側部分は、開口12aにより露出されずに、カバーレイフィルム12により覆われている。したがって、カバーレイフィルム12によって、各ランド13,13のベースフィルム11に対する接着状態が補強され、チップ部品2の実装時又は実装後に、各ランド13,13が剥がれ難くなるので、好ましい。もっとも、本発明では、各ランド13,13の全体を露出させるように、開口12aを形成してよい。
【0031】
カバーレイフィルム12の開口12aは、一般的に、フィルムに対して型を用いて抜き加工を行うことで、形成される。したがって、前記型の精度等の関係で、開口12aの最小寸法には制約がある。本実施の形態では、チップ部品2のY軸方向の幅が開口12aの最小寸法よりも小さいので、開口12aの+Y側の縁とチップ部品2の+Y側の側面との間、及び、開口12aの−Y側の縁とチップ部品2の−Y側の側面との間に、比較的大きな間隔が生じている。本実施の形態では、開口12aの形状はトラック形状とされている。
【0032】
本実施の形態によるプリント配線板1にチップ部品2を実装する場合、例えば、ハンダスクリーン印刷によって、各ランド13,13の領域のうちカバーレイフィルム12の開口12aから露出している領域上に、クリーム半田を形成する。次に、マウンタによって、チップ部品2を図2(a)に示す位置にプリント配線板1上にマウントする。その後、リフローによって、チップ部品2の電極2a,2aをランド13,13にそれぞれ半田付けする。これにより、+X側の電極2aの+X側の端面部と+X側のランド13におけるその端面部からのはみ出し部分との間に、半田フィレット21aが形成され、−X側の電極2aの−X側の端面部と−X側のランド13におけるその端面部からのはみ出し部分との間に、半田フィレット21bが形成される。のみならず、電極2a,2aの+Y側の側面部とランド13,13におけるそれらの側面部からのはみ出し部分との間に、半田フィレット21cが形成され、電極2a,2aの−Y側の側面部とランド13,13におけるそれらの側面部からのはみ出し部分との間に、半田フィレット21dが形成される。以上により、プリント配線板1へのチップ部品2の実装が完了する。
【0033】
図3(a)は、本実施の形態によるプリント配線板1と比較される第1の比較例によるプリント配線板31の一部を模式的に示す概略平面図であり、図1(a)に対応している。図3(b)は、図3(a)中のX5−X6線に沿った概略断面図であり、図1(b)に対応している。図3(c)は、図3(a)中のY5−Y6線に沿った概略断面図であり、図1(c)に対応している。
【0034】
図4(a)は、チップ部品2が実装された状態の、図3に示すプリント配線板31の一部を模式的に示す概略平面図であり、図2(a)に対応している。図4(b)は、図4(a)中のX7−X8線に沿った概略断面図であり、図2(b)に対応している。図4(c)は、図4(a)中のY7−Y8線に沿った概略断面図であり、図2(c)に対応している。
【0035】
図3及び図4において、図1及び図2中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0036】
この第1の比較例が本実施の形態と異なる所は、この第1の比較例では、1対のランド13,13がそれぞれ長方形状に構成されて、ランド13,13のY軸方向の幅がチップ部品2のY軸方向の幅(したがって、チップ部品2の電極2a,2aの下面部のY軸方向の幅)と同一にされている点と、この第1の比較例では、カバーレイフィルム12の開口12aが長方形状に形成されている点と、この第1の比較例では、各ランド13,13の全体が露出されるように開口12aが形成されている点である。
【0037】
本実施の形態によるプリント配線板1に対するチップ部品2の前記実装方法と同様の方法で、この第1の比較例によるプリント配線板31にチップ部品2が実装される。その実装時のリフローに際して、ランド13,13上に形成されていたクリーム半田が一旦溶融した後に固化する。しかし、溶融したクリーム半田は、ランド13,13の領域から逸脱することはないことから、この第1の比較例では、ランド13,13のY軸方向の幅がチップ部品2の電極2a,2aの下面部のY軸方向の幅と同一にされているので、クリーム半田の溶解やその後の固化に際して、チップ部品2の位置ずれ(Y軸方向へのずれやZ軸と平行な軸回りの回転ずれなど)が生じ難い。
【0038】
ところが、この第1の比較例では、ランド13,13のY軸方向の幅がチップ部品2の電極2a,2aの下面部のY軸方向の幅と同一にされているので、ランド13,13は、チップ部品2の電極2a,2aの+Y側の側面部や−Y側の側面部からのはみ出し部分を有していない。したがって、本実施の形態では図2(c)のように電極2a,2bの+Y側の側面部とランド13,13との間及び−Y側の側面部とランド13,13との間にそれぞれ形成される半田フィレット21c,21dが、この第1の比較例では図4(c)に示すように、形成されない。したがって、この比較例では、チップ部品2のランド13,13に対する半田付け強度を高めることができない。
【0039】
これに対し、本実施の形態では、各ランド13,13が、対をなす相手方のランド13から遠ざかるにつれて増大する幅(Y軸方向の幅)を有することで、ランド13,13は、チップ部品2の電極2a,2aの+Y側の側面部や−Y側の側面部からのはみ出し部分を有している。したがって、本実施の形態では、図2(c)のように、半田フィレット21c,21dが、電極2a,2bの+Y側の側面部とランド13,13との間及び−Y側の側面部とランド13,13との間に、それぞれ形成される。よって、本実施の形態によれば、前記第1の比較例に比べて、チップ部品2のランド13,13に対する半田付け強度を大幅に高めることができる。
【0040】
本実施の形態では、ランド13,13は、チップ部品2の電極2a,2aの+Y側の側面部や−Y側の側面部からのはみ出し部分を有しているので、前記第1の比較例と比べると、クリーム半田の溶解やその後の固化に際して、チップ部品2の位置ずれ(Y軸方向へのずれやZ軸と平行な軸回りの回転ずれなど)が生じ易いことは、否めない。
【0041】
しかし、本実施の形態では、各ランド13,13が、対をなす相手方のランド13から遠ざかるにつれて増大する幅(Y軸方向の幅)を有しているので、前記はみ出し部分のはみ出し量を少なくし易いことから、半田フィレット21c,21dが形成される程度に前記はみ出し部分のはみ出し量を少なく設定することで、チップ部品2の位置ずれ(Y軸方向へのずれやZ軸と平行な軸回りの回転ずれなど)を低減することができる。しかも、各ランド13,13が、対をなす相手方のランド13から遠ざかるにつれて増大する幅(Y軸方向の幅)を有しているので、チップ部品2の電極2a,2aの+Y側の側面部や−Y側の側面部からのはみ出し部分は、そのY軸方向の幅が非常に小さい箇所(図2(a)中の点A〜D付近の箇所を含むことから、そのはみ出し部分のY軸方向の幅がいずれの箇所でも同一である場合に比べて、クリーム半田の溶解やその後の固化に際して、チップ部品2の位置ずれ(Y軸方向へのずれやZ軸と平行な軸回りの回転ずれなど)が生じ難い。
【0042】
本実施の形態では、前記第1の比較例と比べると、チップ部品2の位置ずれが生じ易いとは言え、ほとんど前記第1の比較例と同程度に、チップ部品2の位置ずれを生じ難くすることができる。
【0043】
さらに、前記第1の比較例では、各ランド13,13の全体が開口12aにより露出されているため、チップ部品2の実装時又は実装後に、各ランド13,13が剥がれ易い。これに対し、本実施の形態では、前述したように、+X側のランド13の+X側部分及び−X側のランド13の−X側部分が、開口12aにより露出されずに、カバーレイフィルム12により覆われているので、カバーレイフィルム12によって、各ランド13,13のベースフィルム11に対する接着状態が補強され、チップ部品2の実装時又は実装後に、各ランド13,13が剥がれ難くなる。
【0044】
図5(a)は、チップ部品2が実装された状態の、第2の比較例によるプリント配線板41の一部を模式的に示す概略平面図であり、図2(a)に対応している。図5(b)は、図5(a)中のX9−X10線に沿った概略断面図であり、図2(b)に対応している。図5(c)は、54(a)中のY9−Y10線に沿った概略断面図であり、図2(c)に対応している。図5において、図1及び図2中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0045】
この第2の比較例が本実施の形態と異なる所は、この第2の比較例では、1対のランド13,13がそれぞれ+Y方向及び−Y方向に大幅に拡張された長方形状に構成されている点と、この第2の比較例では、カバーレイフィルム12の開口12aが長方形状に形成されている点である。
【0046】
本実施の形態によるプリント配線板1に対するチップ部品2の前記実装方法と同様の方法で、この第2の比較例によるプリント配線板41にチップ部品2が実装される。
【0047】
この第2の比較例では、各ランド13,13が+Y方向及び−Y方向に大幅に拡張されることで、ランド13,13は、チップ部品2の電極2a,2aの+Y側の側面部や−Y側の側面部からのはみ出し部分を有している。したがって、この第2の比較例では、図5(c)のように、半田フィレット21c,21dが、電極2a,2bの+Y側の側面部とランド13,13との間及び−Y側の側面部とランド13,13との間に、それぞれ形成される。よって、この第2の比較例によれば、本実施の形態と同様に、チップ部品2のランド13,13に対する半田付け強度を高めることができる。
【0048】
ところが、この第2の比較例では、各ランド13,13が+Y方向及び−Y方向に大幅に拡張されており、各ランド13,13は、チップ部品2の電極2a,2aの+Y側の側面部や−Y側の側面部から大幅にはみ出したはみ出し部分を有しているので、チップ部品2の実装時のリフローにおいて、クリーム半田の溶解やその後の固化に際して、チップ部品2の位置ずれ(Y軸方向へのずれやZ軸と平行な軸回りの回転ずれなど)が生じ易い。
【0049】
これに対し、本実施の形態によれば、前述したように、各ランド13,13が、対をなす相手方のランド13から遠ざかるにつれて増大する幅(Y軸方向の幅)を有しているので、ほとんど前記第1の比較例と同程度に、チップ部品2の位置ずれを生じ難くすることができる。
【0050】
このように、本実施の形態によれば、前記第1の比較例及び第2の比較例では、トレードオフになっていた半田付け強度の向上という利点とチップ部品2の位置ずれの低減という利点を両方とも得ることができる。すなわち、本実施の形態によれば、実装されるチップ部品2のランド13,13に対する半田付け強度をより高めつつ、チップ部品2をランド13,13にリフローで半田付けをする際の、チップ部品2のランド13,13に対する位置ずれを抑えることができる。
【0051】
また、前記第2の比較例では、各ランド13,13が+Y方向及び−Y方向に大幅に拡張されているため、高密度実装には不向きである。これに対し、本実施の形態では、図1(a)及び図2(a)に示すように、各ランド13,13は+Y方向及び−Y方向に張り出さないので、高密度実装に適している。
【0052】
さらに、本実施の形態によれば、開口12aの形状が図2(a)に示すようにトラック形状とされていることによって、次の利点が得られる。
【0053】
本実施の形態において、開口12aの形状を図5に示すような長方形状に変更すると、クリーム半田を形成するべき領域(各ランド13,13の領域のうちカバーレイフィルム12の開口12aから露出している領域)において、長方形状の開口12aの+X側の辺及び−X側の辺と各ランド13,13の+Y側の辺13a及び−Y側の辺13bとが交差する付近で、鋭角部分が生じてしまう。クリーム半田を形成する領域が鋭角部分を持つと、クリーム半田をスクリーン印刷する際に、その鋭角部分のクリーム半田がスクリーン側に残ってしまい易く、ひいては、ランド13,13上で鋭角部分付近で意図しないクリーム半田の欠損が生じてしまうため、所望の電気特性を得ることができなくなってしまう可能性がある。これに対し、本実施の形態では、開口12aの形状が図2(a)に示すようにトラック形状とされているので、図2(a)から理解できるように、クリーム半田を形成するべき領域(各ランド13,13の領域のうちカバーレイフィルム12の開口12aから露出している領域)において、鋭角部分は生じない。よって、本実施の形態によれば、ランド13,13上で鋭角部分付近で意図しないクリーム半田の欠損が生じ難くなるという利点が得られる。開口12aをトラック形状に代えて楕円形状としても、同様の利点が得られる。
【0054】
もっとも、本発明では、開口12aの形状は、トラック形状や楕円形状に限らず、例えば、長方形状や、角部にRをつけた長方形状としてもよい。
【0055】
さらに、本実施の形態によれば、各ランド13,13は、前述したようにX軸方向と平行な直線に対して対称形状を有しているので、チップ部品2に作用する力(例えば、リフロー時に一旦溶解した後に固化する際に生ずる力など)が、+Y側と−Y側とで均衡し易くなり、チップ部品2の位置ずれが更に低減される。
【0056】
また、本実施の形態では、前述したように、1対のランド13,13は、1対のランド13,13間の間隔のX軸方向の中心を通りY軸方向と平行な直線に対して、対称となっている。したがって、本実施の形態によれば、チップ部品2に作用する力が+X側と−X側とで均衡し易くなり、チップ部品2の位置ずれが更に低減される。
【0057】
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。例えば、本発明は、フレキシブルプリント配線板のみならず、リジッドプリント配線板等にも適用することができる。また、本発明は、片面プリント配線板のみならず、両面プリント配線板等にも適用することができる。さらに、本発明のプリント配線板に実装される表面実装部品は、セラミックコンデンサのチップ部品に限らない。
【符号の説明】
【0058】
1 プリント配線板
2 チップ部品
12 カバーレイフィルム
12a 開口
13 ランド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面実装部品が実装されるプリント配線板であって、
互いに間隔をあけて配置され、前記表面実装部品の両側の電極がそれぞれ電気的に接続される1対のランドを備え、
前記1対のランドの各ランドは、前記1対のランドの相手方のランドから遠ざかるにつれて増大する幅を有することを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】
前記1対のランドの各ランドは、前記間隔の方向に沿った直線に対して対称形状を有することを特徴とする請求項1記載のプリント配線板。
【請求項3】
前記1対のランドの各ランドの幅方向の一方側の辺及び他方側の辺が、前記間隔の方向に対して、互いに逆向きに10゜以上かつ20゜以下の範囲内の角度で傾くことを特徴とする請求項1又は2記載のプリント配線板。
【請求項4】
前記1対のランドの各ランドの少なくとも一部を露出させる開口を有するカバーレイフィルムを、備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のプリント配線板。
【請求項5】
前記開口は、トラック形状又は楕円形状を有することを特徴とする請求項4記載のプリント配線板。
【請求項6】
前記1対のランドの各ランドにおける、前記1対のランドの相手方のランドとは反対側の部分は、前記開口により露出されずに、前記カバーレイフィルムにより覆われたことを特徴とする請求項4又は5記載のプリント配線板。
【請求項7】
当該プリント配線板がフレキシブルプリント配線板であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−199347(P2012−199347A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61881(P2011−61881)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】