説明

プルトップ缶

【課題】液体と固形物とが同時に収容されている缶で、まず、小さく開けて液体を飲み、飲んだあとに残った固形物を大きく開けて完食できるようにした新規なプルトップ缶を提供する。
【解決手段】缶本体2の上蓋3に、全開用の切開線4とその線に沿って切蓋するための全開プルタブ5と、部分開用の切開線6とその線に沿って切蓋するための部分開プルタブ7とを設けた。また、全開プルタブが、部分開プルタブの下に隠れており、部分開プルタブを開操作して液体口を開けなければ、全開プルタブを開操作して固形物口を開けることができないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体と固形物とが同時に収容され、先ず、液体を飲み、そのあとに残った固形物を完全に食べることのできるプルトップ缶に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のプルトップ缶は、コーヒーやジュース等の液体を入れるものには、部分開用の切開線とその線に沿って切蓋するための部分開プルタブを有し、シャケやツナなど主に固形物を入れるものには、全開用の切開線とその線に沿って切蓋するための全開プルタブを有していた。
【0003】
近年、例えば、コーン粒入りコーンスープとか、小豆粒入りおしることか、果肉入りミカンジュースの如く、液体と固形物とを同時に収容した、飲み物といえるか、食べ物と言うべきかが明確に区別できないものも多く出回っている。このようなコーン粒入りコーンスープや小豆粒入りおしるこなどは、通常、液体として扱われ、コーヒーやジュース等と同様、部分開用の切開線とその線に沿って切蓋するための部分開プルタブが用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コーン粒入りコーンスープや小豆粒入りおしるこは、コーヒーやジュース等と同様に液体を飲むときは問題ないが、部分開した小さな開口では液体を飲んだあとに、固形物が残って仕舞うばかりでなく、残った固形物は開口面積が小さく、これより箸を入れて内容物を摘まみ取ったり、スプーンを入れて掬い取ったりすることが出来ず、従って、通常は、開口を口にあてながら缶を逆立ちさせて側面を叩くなどして固形物を無理やり口の中に落とし仕込む以外に食べる手段がなく、そのようにしても固形物を完全に口の中に落とし仕込むことが出来なかった。
【0005】
一方、コーン粒入りコーンスープや小豆粒入りおしるこなどを、シャケ缶やツナ缶などと同様に、初めから全開用の切開線とその線に沿って切蓋するための全開プルタブにしておくことも考えられるが、開口面積が大きくなると、口の脇から液体がこぼれ易くなり、不便であった。
【0006】
本発明は上記の問題を解消するためのもので、その目的とするところは、液体と固形物とが同時に収容されている缶で、先ず、小さく開けて液体を飲み、飲んだあとに残った固形物を大きく開けて完食できるようにしたプルトップ缶を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るプルトップ缶は、缶本体の上蓋に、全開用の切開線とその線に沿って切蓋するための全開プルタブと、部分開用の切開線とその線に沿って切蓋するための部分開プルタブとを、ダブルで設けたことを特徴とし、液体を飲むときは小さく開け、液体を飲んだあとに残った固形物は大きく開けて食べられるように構成した。
【0008】
また、請求項2に記載の発明に係るプルトップ缶は、前記全開プルタブが、部分開プルタブの下に隠れてあることを特徴とし、部分開プルタブを開操作して液体口を開けなければ、全開プルタブを開操作して固形物口を開けることができないように構成した。
【0009】
さらに、請求項3に記載の発明に係るプルトップ缶は、前記缶本体が、固形物をつまみ取るか掬い取るための器具を備え付けていることを特徴とし、液体を飲んだあとに残った固形物がすぐに食べられるように構成した。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液体のみを飲むときは小さく開けて口脇からこぼし難くし、液体を飲んだあとに残った固形物を食べるときは大きく開けて食べ易くするという優れた効果を奏するものである。
【0011】
また、請求項2に記載の発明によれば、部分開プルタブを開操作しなければ、全開プルタブが開操作できないため、先ず、液体を飲み、飲んだあとに残った固形物の完食まで開口を徐々に拡大できるという優れた効果を奏するものである。
【0012】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、液体を飲んだあとに残った固形物は備え付けの器具を使って完全に食べられるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本願缶の上蓋部分を略示的に示す斜視図、図2は本願缶の上蓋部分を略示的に示す断面図、図3は部分開プルタブを開けた場合の斜視図、図4は全開プルタブを開けた場合の斜視図である。
【0014】
本願缶1は、缶本体2の上蓋3に、全開用の切開線4とその切開線4に沿って切蓋するための全開プルタブ5を設けるとともに、部分開用の切開線6とその切開線6に沿って開蓋するための部分開プルタブ7を設けてなる。すなわち、全開プルタブ5と部分開プルタブ7とを一つの缶本体2の上蓋3にダブルで設けたものである。
【0015】
前記缶本体2は、前記上蓋3と、側面(ボディ)8と、下蓋9とで円筒形に形成され、たとえば、コーン粒入りコーンスープ、小豆粒入りおしるこ、果肉入りミカンジュース、果肉入りマンゴージュースなど、液体と固形物とが同時に収容された密封容器を構成している。勿論、液体と固形物との組合せは上記例に限らず、任意である。
【0016】
前記缶本体2の上蓋3に形成された全開用の切開線4は、上蓋3の肉厚より深くならないV溝を蓋縁部3′に沿って円形に設けている。その切開線4に沿って切蓋するための全開プルタブ5は、嘴端5aを切開線4の一点を指すように位置決めし、鋲5bで上蓋3に留めるとともに、摘まみ部5cが上蓋3の凹み部3″に対応するようにし、手指で摘まみ易く浮かせている。
【0017】
前記部分開用の切開線6は、蓋縁部3′の一側寄りにほぼ楕円形に設けている。この場合も部分開プルタブ7は、嘴端7aを前記切開線6のほぼ中央域の一点を指すように位置決めし、嘴端7aの背面から延びた薄片7a′を鋲7bで上蓋3に留めるとともに、摘まみ部7cを、前記全開プルタブ5の摘まみ部5cの上に重なるように浮かせ、手指で摘まみ易くしている。換言すれば、前記全開プルタブ5は、前記部分開プルタブ7の下に隠れた状態になっている。勿論、部分開プルタブ7は、摘まみ部7cが鋲7bを中心に水平方向に回転でき、したがって、常に、部分開プルタブ7をあけなければ、全開プルタブ5を開操作できないという訳ではない。尤も、前記上蓋3の面積が大きければ、全開プルタブ5と部分開プルタブ7は重ならないようにすることも可能である。
【0018】
前記上蓋3の蓋縁部3′に沿って円形に設けている全開用の切開線4は、エンドレスにはしていない。すなわち、切開線4の両端4′、4′は繋がっていない。これは全開プルタブ5の開操作で、切開線4に囲まれた切り片4″を上蓋3から完全に切り離さないためである。勿論、全開用の切開線4を円形にエンドレスに設け(図示せず)て切開線4に囲まれた切り片4″が上蓋3から完全に切り離されるように構成してもよい。また、部分開用の切開線6の場合も部分開プルタブ7の開操作で切開線6に囲まれた切り片6′を上蓋3から完全に切り離さないようにしても、完全に切り離すように構成してもよい。
【0019】
前記缶本体2の側面8には、スプーン10が透明袋11に入れられて止着されている。このスプーン10は液体を飲んだあとに残った固形物を大きく開けた開口より食べるときに透明袋11を破って取り出しされる。該透明袋11に収容するものはスプーン10に限らず、箸や串やフォークやピンセットでも、その他の固形物を食べるために有効なものであれば何でもよい。
【0020】
次に、本願缶1の作用について説明する。まず、上に重なっている、部分開プルタブ7を、その摘まみ部7cを摘んで鋲7bを支点として起こすと、嘴端7aがテコの作用で切開線6のほぼ中央域の一点に集中して下向きに強く押すから切開線6から割れ(切れ)て切り片6′が下向きに折り曲げられる。この切り片6′の折り曲げにより上蓋3に出来た開口12よりコーン粒入りコーンスープ、小豆粒入りおしるこ、果肉入りミカンジュース、あるいは果肉入りマンゴージュースなどの液体部分を飲むことが可能となる。
【0021】
次に、液体を飲んだあとに缶本体2内に残ったコーン粒、小豆粒、果肉を食べるには、前記全開プルタブ5を、その摘まみ部5cを摘まみ起こすと、嘴端5aが鋲5bとともに下向きに回動して切開線4上の一点を集中的に下向きに押し込むため、前記切開線4が割れ(切られ)て一部開口する。その後、摘まみ部5cを更に、上に向けて強く引くと、前記切開線4で囲まれた部分が上蓋3より開けられ、大きな開口13となる。この結果、缶本体2内に残っているコーン粒、小豆粒、果肉等の固形物は、備え付けのスプーン10を用いるか、身近にあるスプーンを使って食べることが出来るようになる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本願缶1は、先ず、小さく開けて液体を飲み、液体を飲んだあとに残った固形物を大きく開けて完食できるようになるもので、液体と固形物とを同時に収容できるあらゆるものに広く応用でき、産業上の利用可能性が極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本願缶の上蓋部分を略示的に示す斜視図である。
【図2】本願缶の上蓋部分を略示的に示す断面図である。
【図3】部分開プルタブを開けた場合の斜視図である。
【図4】全開プルタブを開けた場合の斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
1 本願缶
2 缶本体
3 上蓋
3′ 蓋縁部
3″ 上蓋の凹み部
4 全開用の切開線
4′ 切開線の両端
4″ 切り片
5 全開プルタブ
5a 嘴端
5b 鋲
5c 摘まみ部
6 部分開用の切開線
6′ 切り片
7 部分開プルタブ
7a 嘴部
7b 鋲
7c 摘まみ部
8 側面(ボディ)
9 下蓋
10 スプーン
11 透明袋
12 開口(液体口)
13 開口(固形物口)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶本体の上蓋に、全開用の切開線とその線に沿って切蓋するための全開プルタブと、部分開用の切開線とその線に沿って切蓋するための部分開プルタブとを、ダブルで設けたことを特徴とするプルトップ缶。
【請求項2】
前記全開プルタブが、部分開プルタブの下に隠れてあることを特徴とする請求項1に記載のプルトップ缶。
【請求項3】
前記缶本体が、固形物をつまみ取るか掬い取る器具を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のプルトップ缶。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−51511(P2009−51511A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217665(P2007−217665)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(507284880)有限会社小林プラスチック製作所 (2)
【Fターム(参考)】