説明

プレイリスト作成装置

【課題】ユーザの気分や感情を反映したプレイリストを、ユーザの直感的な操作に基づいて作成する。
【解決手段】楽曲及び楽曲情報が格納されている楽曲データベースと、各楽曲の楽曲情報を配置するための楽曲の特徴に対応する座標軸を有する座標系と所定の領域とが表示される表示手段と、表示手段に座標を入力する座標入力手段であって、座標系に入力する座標及び座標の軌跡に応じて楽曲を選択する座標入力手段と、座標系において選択されて所定の領域に移動された楽曲に基づいてプレイリストを作成するプレイリスト作成手段とを有し、各楽曲は、座標入力手段によって選択されると、座標入力手段によって座標系に入力される座標に追従することを特徴とするプレイリスト作成装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザが直感的に楽曲のプレイリストを作成することができるプレイリスト作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、楽曲データをMP3(MPEG-1 Audio Layer-3)などの高圧縮率の音声圧縮コーデックを用いて圧縮して、HDD(Hard Disk Drive)などの大容量記憶媒体に記憶するオーディオ装置が普及している。この種のオーディオ装置では、膨大な数の楽曲をHDDに記憶することができる。したがって、ユーザは、HDDの残容量に注意を払うことなく所望の楽曲をオーディオ装置に記憶することができる。しかし、HDDに多数の楽曲を記憶することができる反面、そのなかから聴きたい楽曲を速やかに探し出すことが難くなるといった新たな問題が生じている。
【0003】
上記の問題を解消すべく、膨大な数の楽曲から所望の楽曲を検索してプレイリストを作成するのに好適なプレイリスト作成技術が種々提案されている。その一例が特許文献1や特許文献2に開示されている。特許文献1によれば、ユーザが現在聴いている楽曲のアーティストに関連する他の楽曲を記憶媒体から検索してプレイリストを作成し、その結果を表示して、ユーザ操作によりプレイリストの楽曲を再生することができる。これにより、ユーザの現在の好みに合う楽曲データが利用可能であることを通知したり再生したりすることができる。
【0004】
また、特許文献2によれば、楽曲は、CD(Compact Disc)などからリッピングされて楽曲データベースに格納される。このとき楽曲は、複数の評価項目によって評価され、各評価項目の評価結果と関連付けられる。このようにして楽曲データベースに格納された各楽曲は、評価結果に基づいて、各評価項目に対応する3軸で表現された仮想的な三次元空間にマッピングされる。この仮想的な三次元空間は、各楽曲へのリンクの他、各評価項目に対応した楽曲のイメージを表すラベルが当該空間内に重畳されてディスプレイに表示される。ユーザは、ディスプレイに表示された各楽曲へのリンクの位置を視認して各楽曲のイメージを視覚的に捉えることにより、聴きたい楽曲を感覚的に選び出すことができる。そして、ユーザが選択した楽曲の特徴情報に基づいて関連する複数の楽曲を選択してプレイリストを作成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−116068号公報
【特許文献2】特開2007−11913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような従来のプレイリスト作成技術においては、現在のユーザの気分や感情を反映したプレイリストを作成することができるとはいえ、ユーザが選択した楽曲に基づいて関連する楽曲を選択してプレイリストを作成するため、ユーザがこれからどのような気分や感情で楽曲を聴いていきたいかを反映したプレイリストを作成することはできない。例えば、最初は落ち着いたテンポの楽曲を聴き、徐々に明るいビートの効いた楽曲を聴いていき、途中に静かな楽曲を挟みつつ、最後に再びゆったりとしたリズムの楽曲を聴いて終わるプレイリストを作成する場合、ユーザは所望の楽曲を聴きたい順番で1曲ずつ選択しなければならない可能性がある。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、ユーザがこれからどのような気分や感情で楽曲を聴きたいかを反映したプレイリストを、ユーザの直感的な操作に基づいて作成することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決する本発明の一実施形態におけるプレイリスト作成装置は、楽曲及び楽曲情報が格納されている楽曲データベースと、各楽曲の楽曲情報を配置するための楽曲の特徴に対応する座標軸を有する座標系と所定の領域とが表示される表示手段と、表示手段に座標を入力する座標入力手段であって、座標系に入力する座標及び座標の軌跡に応じて楽曲を選択する座標入力手段と、座標系において選択されて所定の領域に移動された楽曲に基づいてプレイリストを作成するプレイリスト作成手段とを有し、各楽曲は、座標入力手段によって選択されると、座標入力手段によって座標系に入力される座標に追従する。したがって、ユーザは、楽曲の特徴に基づいて配置されている楽曲を、これからどのような気分や感情で音楽を聴きたいかという意図に基づいて座標系から直感的に楽曲を選択してプレイリストを作成することができる。
【0009】
好ましくは、座標系において、各楽曲の楽曲情報がそれぞれ所定の図形内に表示され、座標入力手段によって座標系に入力される座標と所定の図形内の所定の座標との距離が所定の値以下になると、該所定の図形に表示される楽曲情報を有する楽曲が選択される。また、座標入力手段による楽曲選択の所要時間に応じて、プレイリストに含めることができる楽曲数が変更される。さらに、座標入力手段によって座標系に入力される座標の移動方向に基づいてプレイリストにおける楽曲の再生順が決定される。そして、座標入力手段によって座標系に入力される座標の移動速度に基づいてプレイリストに含める楽曲が決定される。
【0010】
さらに好ましくは、プレイリストに含めることができる楽曲数の上限や楽曲の合計再生時間の上限があらかじめ設定されている。あるいは、プレイリストに含めることができる楽曲数の上限を設定する楽曲数設定手段やプレイリストに含めることができる楽曲の合計再生時間の上限を設定する再生時間設定手段をさらに有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のプレイリスト作成装置によれば、ユーザがこれからどのような気分や感情で楽曲を聴きたいかを反映したプレイリストを、ユーザの直感的な操作に基づいて作成することができる。特に、本発明のプレイリスト作成装置を車載機器に組み込む場合、車載機器という操作の制約が厳しい状況下でも、ユーザの気分や感情を直感的な操作で反映させつつプレイリストを作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の一実施形態におけるオーディオ装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態におけるプレイリスト作成用のGUIを示す模式図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態におけるプレイリスト作成処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態におけるプレイリスト作成装置としてのオーディオ装置について説明する。
【0014】
図1は、本実施形態のオーディオ装置100の構成を示すブロック図である。図1に示すように、オーディオ装置100の各ブロックは、システムバス30を介して相互に接続されている。各ブロックは、オーディオ装置100の電源投入後、システムバス30を介して必要なハードウェアにアクセスする。
【0015】
例えば、オーディオ装置100の電源投入直後、CPU14がROM(Read-Only Memory)12にアクセスする。CPU14は、ROM12に格納されているファームウェアを呼び出して、ファームウェアをRAM13(例えばSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)など)のワークエリアに展開して、オーディオ装置100のシステムを起動する。これにより、各ブロックがCPU14による制御下で必要に応じて連係動作して処理を実行し、ユーザ操作などにより選択された楽曲が再生される。
【0016】
ユーザ操作を受け付けるデバイスとして、操作キー10がオーディオ装置100のフロントパネル(図示せず)に設けられている。オーディオ装置100のフロントパネルには、再生中の楽曲に関する情報を表示する液晶ディスプレイ22も設けられている。液晶ディスプレイ22はタッチパネルを有し、入力手段としての機能も備える。ユーザは、操作キー10を用いたキー入力や、液晶ディスプレイ22に表示されるGUI(Graphical User Interface)に対する指やペンによるタッチ入力を行うことにより、オーディオ装置100を操作する。
【0017】
電源投入後に楽曲を再生するユーザ操作が行われたとき、所定の楽曲再生用画面が液晶ディスプレイ22に表示されると同時に、前回使用時に最後に再生された楽曲がスピーカ20により再生される。このときオーディオ装置100の各ブロックで実行される処理を以下に説明する。
【0018】
まず、操作キー10や液晶ディスプレイ22によりユーザ操作に応じた操作信号が生成され、CPU14に入力される。CPU14は、入力された操作信号に応答してEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)11にアクセスする。なお、新たに楽曲が再生されるたびに、楽曲データベース16から楽曲名など再生楽曲に関する情報が読み出されてEEPROM11に上書き保存される。すなわち、上記の前回使用時に最後に再生された楽曲に関する情報は、楽曲の再生ごとに逐次更新されて、EEPROM11に保持される。
【0019】
CPU14は、EEPROM11から前回使用時に最後に再生した楽曲に関する情報を読み出したとき、その情報を検索キーとして、楽曲データベース16にアクセスし、楽曲を検索及び抽出する。楽曲データベース16は、容量を優先させる設計であれば例えばHDDが、アクセス速度を優先させる設計であれば例えばフラッシュメモリが、それぞれ採用される。
【0020】
楽曲データベース16には、例えばCDなどからリッピングされた楽曲データが蓄積されている。ここで、オーディオ装置100で実行されるリッピング処理について説明する。
【0021】
リッピング処理は、メディアドライブ17とDSP(Digital Signal Processor)18との連係動作により実行される。メディアドライブ17は、CD、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc)などの記録メディアを再生するドライブである。DSP18は、オーディオデータに対するコーデック処理や、コーデック処理により伸張されたデジタルオーディオデータのアナログ変換処理などを行う信号処理回路である。
【0022】
例えば音楽CDがメディアドライブ17のスロットに挿入されたとき、メディアドライブ17は、各トラックの楽曲データ(例えばPCM(Pulse Code Modulation)形式)を読み込んでDSP18に出力する。DSP18は、メディアドライブ17からのPCM形式の楽曲データをMP3やAAC(Advanced Audio Coding)などの音声圧縮コーデックを用いて圧縮する。圧縮された楽曲データは、CPU14の制御の下、楽曲データベース16に格納される。このようにして楽曲データがリッピングされる。なお、DSP18において実行される音声圧縮コーデックの形式は、MP3やAACに限らない。オーディオ装置100の使用に応じて他の非可逆圧縮コーデックや可逆圧縮コーデックなどが採用されることもある。
【0023】
楽曲データベース16には、各楽曲データを管理するための楽曲情報である楽曲管理レコードが記憶されている。楽曲管理レコードは、各楽曲データに関連付けられたデータであり、例えば「楽曲名」、「アーティスト名」、「アルバム名」、「ジャンル」などの各フィールドにエントリされたテキストや各楽曲のカバーアートなどのデータにより構成されている。ユーザは、操作キー10や液晶ディスプレイ22における操作によって、各フィールドにテキストデータを入力することができる。
【0024】
また、オーディオ装置100は、図示しない通信モデムによりインターネットにアクセスすることができる。例えば、リッピング時にCDのTOC(Table of Contents)情報が読み込まれたとき、CPU14は、通信モデムを介してインターネット上のCDDB(CD DataBase)にアクセスして、リッピングするCDのTOC情報に対応する楽曲名などのメタ情報をダウンロードする。そして、リッピングするCDの楽曲データに対応する楽曲管理レコードを作成する。CPU14は、作成された楽曲管理レコードの各フィールドに、ダウンロードしたメタ情報の各テキストデータをエントリする。この場合、ユーザは、楽曲名などを手入力する必要がない。
【0025】
オーディオ装置100は、通信インタフェース15を介してUSB(Universal Serial Bus)メモリなどの外付けストレージ40や携帯電話端末50と通信可能に構成されている。通信インタフェース15は、例えばUSB規格やIEEE1394(Institute of Electrical and Electronic Engineers 1394)規格に準拠したポートを有し、外付けストレージ40や携帯電話端末50と接続される。また、通信インタフェース15は、携帯電話端末50との間でBluetooth規格やIrDA規格に準拠した無線通信も行うことができるように構成されている。
【0026】
オーディオ装置100では、外付けストレージ40や携帯電話端末50に格納された楽曲データも楽曲データベース16に格納することができる。すなわち、CPU14は、PnP(Plug and Play)やGAP(Generic Access Profile)などにより外付けストレージ40や携帯電話端末50を認識してリソースの割当てやデバイスドライバの導入などを行う。そして、CPU14が外付けストレージ40や携帯電話端末50などの外部デバイスを認識することにより、外部デバイスに記憶されたデータにアクセスできるようになる。
【0027】
ユーザが外付けストレージ40や携帯電話端末50に記憶された楽曲データをオーディオ装置100に保存する操作をしたとき、CPU14は、外付けストレージ40や携帯電話端末50の楽曲データを楽曲データベースにコピーする。楽曲データに楽曲名などのメタ情報が含まれている場合には、当該楽曲データに対応する楽曲管理レコードを作成後、メタ情報の各テキストデータを該当するフィールドにエントリする。このように楽曲データベース16には、CDなどからのリッピング以外によっても楽曲データが格納される。
【0028】
このようにして多数の楽曲データが蓄積された楽曲データベース16から、CPU14により生成された検索キーに対応する楽曲データが抽出されてDSP18に出力される。DSP18は、入力された楽曲データを伸張し、伸張された楽曲データをアナログ形式の楽曲データに変換して音声増幅回路19に出力する。音声増幅回路19は、データ容量に応じた増幅率によりアナログ形式の楽曲データの信号のゲインを調整してスピーカ20に出力する。これにより、オーディオ装置100の前回使用時に最後に再生された楽曲が、スピーカ20により再生される。
【0029】
上述の楽曲データに対する処理と同時に、液晶ディスプレイ22に所定の楽曲再生用画面を表示する処理が実行される。楽曲データベース16から楽曲データが抽出される際に、楽曲データに関連付けられた楽曲管理レコードのデータ、すなわち、楽曲名などのテキストデータも抽出されて画像処理回路21に入力される。画像処理回路21は、例えばROM12から、楽曲名やアーティスト名などを表示するアイコンが配置された楽曲再生用画面を読み出す。そして、楽曲データベース16から抽出されたテキストデータを用いて楽曲再生用画面を加工し、液晶ディスプレイ22に出力する。これにより、スピーカ20から楽曲が再生されると同時に、再生中の楽曲に関する情報が液晶ディスプレイ22に表示される。
【0030】
なお、DSP18は、上述のリッピング処理とともに、タイムシフト再生処理も実行する。すなわち、DSP18は、メディアドライブ17により読み取ったPCM形式の楽曲データをMP3データなどに圧縮変換しつつ、圧縮変換された楽曲データを例えばDSP18に内蔵されたリングバッファにバッファリングする。リングバッファは、所定再生時間分の楽曲データをバッファリングして順次掃き出す。掃き出された楽曲データは、アナログ形式の楽曲データに変換されて音声増幅回路19に送られ、スピーカ20に出力される。したがって、DSP18は、楽曲データのリッピングと再生を並行して実行する。このため、オーディオ装置100において、楽曲データのリッピング中に長い時間無音状態が発生しないようにすることができ、ユーザにストレスを感じさせない。タイムシフト再生処理による楽曲再生時にも液晶ディスプレイ22には所定の楽曲再生用画面が表示される。
【0031】
ところで、オーディオ装置100の製品形態には、室内に設置される据置型のオーディオセットコンポや、持ち運びを想定したポータブル音楽プレイヤ、乗用車などに搭載される車載型オーディオ機器やカーナビゲーション装置などが想定される。このなかでオーディオ装置100が車載型オーディオ機器やカーナビゲーション装置の一部として構成される場合、オーディオ装置100には、ユーザの運転をできる限り妨げないように高い操作性が要求される。このような要求に応えるべく、本発明に係るオーディオ装置100においては、以下に説明するプレイリスト作成用の表示手段としてのGUIが実装されており、このGUIによりユーザは楽曲の選択操作を直感的に行うことができる。
【0032】
図2に、本実施形態において楽曲選択時にプレイリストを作成するためのGUI200を示す。また、図3に、本実施形態におけるプレイリスト作成処理のフローチャートを示す。以下、図2及び図3を参照しながらプレイリストの作成について説明する。プレイリスト作成用のGUI200は、ユーザがオーディオ装置100においてプレイリストの作成を開始する操作を行うと、液晶ディスプレイ22に表示される。まず、図2(a)に示すように、GUI200において、パレット表示領域60に、プレイリストを構成する楽曲を選択するためのパレット60a〜60cが表示される。各パレットは、上下左右に曲調やリズム、ジャンルなど楽曲の傾向の推移を示す座標軸を有する座標系を構成する。すなわち、座標軸の両端には相反する楽曲の特徴が設定される。したがって、例えば1つの座標軸において一端に「明るい」が、他端に「暗い」が設定され、一端に向かうに従って「明るい」楽曲が配置され、他端に向かうに従って「暗い」楽曲が配置される。後述するように、楽曲の明るさや暗さなどの特徴は、楽曲の抑揚度や周波数比から決定することができる。ユーザによるGUI200の操作により、パレット表示領域60から所望の座標軸が設定されているパレットが選択されて楽曲表示領域61に表示されるパレットが設定される(ステップS101)。
【0033】
使用するパレットを決定すると、図2(b)に示すように、GUI200には、楽曲表示領域61とプレイリスト作成領域62が表示される。楽曲表示領域61には、選択したパレットが表示され、さらにパレットに設定されている軸に従って各楽曲が配置され、各楽曲には曲名とカバーアートなどの楽曲情報が所定の図形内に表示される(ステップS103)。図2では、各楽曲の楽曲情報がそれぞれ異なる長方形の領域内に表示されているが、長方形に限らず任意の図形を用いて楽曲情報を表示することができる。カバーアートがない場合は、所定のアイコンを用いて表示してもよい。なお、パレットにおける楽曲の傾向は、抑揚度と周波数比で決めることができる。抑揚度が高いほどビートが効いた印象の楽曲とみなし、周波数比が高いほど力強く激しい印象の楽曲とみなす。抑揚度は、楽曲のパワーあるいはビートの強さに対応しており、具体的には、クラシック、ジャズ、レゲエなどのようなジャンルの違いによってある程度一定の値を示す傾向にある(例えば、クラシックのようなビートの弱い曲は低い値となり、逆にレゲエ、ラップのようなビートの強い曲は高い値となる傾向にある)ことから、楽曲の特徴を表す指標とすることができる。一方、周波数比は、楽曲の音のバランスの程度に対応しており、具体的には、クラシック、ポップ、ロックなどのようなジャンルの違いによってある程度一定の値を示す傾向にある(例えば、クラシックやイージーリスニングのような静かな曲は低い値となり、ロックやパンクのような激しい曲は高い値となる傾向にある)ことから、楽曲の特徴を表す指標とすることができる。
【0034】
ユーザによって楽曲表示領域61を指やペンでタッチしてなぞる操作が行われると、指先やペン先の位置や軌跡に応じてパレットに表示されている楽曲が選択される(ステップS105)。例えば、ユーザが楽曲表示領域61を指でなぞる場合、指先の動きに合わせて指先の軌跡上にある楽曲が次々と選択されて指先に追従する。図2(c)には、楽曲表示領域61のパレットについて、「明るい」、「暗い」、「激しい」、「ゆったり」という4つの指標によって構成される座標系の第2象限から第1及び第3象限を経由して第4象限まで指でなぞった場合の楽曲の選択状態の一例を示す。GUI200では、GUI200上に置かれる指が検出され、指先の座標が算出される。したがって、指やペンが座標入力手段として機能し、指先やペン先の座標や座標の軌跡に基づいて楽曲が選択される。各楽曲は、指先の位置を示す座標がカバーアートの表示領域と重なったときに指先への追従を開始する。
【0035】
ユーザは、楽曲の選択を完了した時点で、楽曲表示領域61上の任意の位置から、指先に追従した楽曲をプレイリスト作成領域62に移動する。なお、楽曲の選択を終了する判定基準としては、さまざまな条件に基づいて決定することができる。まず、1つのアルバムを作成することを念頭に置き、選択可能な楽曲数をあらかじめ設定された所定の数に限定することを条件とすることができる。例えば、最大12曲まで選択可能とすることで、ユーザが、好みに合わせた独自のCDアルバムを作成する感覚でプレイリストを作成することができる。1つのプレイリストに含めることができる楽曲数の上限は、ユーザが楽曲数設定手段としての操作キー10や液晶ディスプレイ22のタッチパネルを用いてプレイリスト作成前に指定するように構成してもよい。なお、選択した楽曲数が所定の数に達した場合は、その後は楽曲を選択できないように構成してもよいし、引き続き楽曲を選択可能にしておき、選択した各楽曲に対して過去の再生回数などを基準に優先度を設定し、優先度に基づいてプレイリストが作成されるように構成してもよい。さらに、プレイリスト作成後に、ユーザが楽曲数を入力して上限を増減させることもできる。そして、例えば、楽曲数の上限を減らした場合は、楽曲が優先度が低いものからプレイリストから削除され、楽曲数の上限を増やした場合は、ユーザに追加の楽曲選択を促してプレイリストを作成するように構成することができる。
【0036】
別の条件として、合計再生時間を基準を用いてプレイリストを作成することもできる。一般にCDアルバムの合計再生時間は60分前後であることから、例えば60分を閾値として、合計再生時間が60分に達するまで楽曲を選択可能とするように設定してもよい。合計再生時間の閾値は、ユーザが再生時間設定手段としての操作キー10や液晶ディスプレイ22のタッチパネルを用いてプレイリスト作成前にユーザが指定するように構成してもよい。なお、選択した楽曲の合計再生時間が閾値に達した場合は、その後は楽曲を選択できないように構成してもよいし、引き続き楽曲を選択可能にしておき、過去の再生回数などを基準にして優先度を設定し、優先度に基づいてプレイリストが作成されるように構成してもよい。さらに、プレイリスト作成後に、ユーザが合計再生時間の閾値を増減させることもできる。そして、例えば、閾値を減らした場合は、合計再生時間が閾値以内になるように楽曲が優先度が低いものからプレイリストから削除され、閾値を増やした場合は、ユーザに追加の楽曲選択を促してプレイリストを作成するように構成することができる。また、さらに別の条件として、指先やペン先の検出開始から所定の時間が経過すると楽曲選択が無効になり、それまでに指やペンに追従した楽曲をプレイリスト作成領域62に自動的に又は手動で移動させる構成としてもよい。
【0037】
オーディオ装置100が図示しないカーナビゲーション装置と接続又は一体化されている場合、別の条件として、ユーザがカーナビゲーション装置において目的地を設定していることを前提として、目的地までの到着予想時間を考慮して選択可能な楽曲数あるいは選択可能な楽曲の合計再生時間を設定してプレイリストを作成することもできる。これにより、目的地を設定して運転を開始してから目的地に到着するまでに、ユーザが聴きたい楽曲すべてを、再生中に運転を終了することなく漏れなく再生することができるため、車載装置においてより快適な音楽再生環境を構築することが可能となる。
【0038】
続いて、図2(d)に示すように、プレイリスト作成領域62に移動された楽曲に基づいて、プレイリストが作成される(ステップS107)。プレイリストの作成条件としては、上述の楽曲数や合計再生時間のほか、楽曲選択の所要時間、すなわち指やペンで楽曲表示領域61をなぞった時間や、楽曲表示領域61をなぞる方向あるいは速度などをGUI200において測定した結果を用いることができる。楽曲表示領域61における指やペンの移動時間を測定する場合、楽曲の選択にかける時間が長くなるほどプレイリストに含めることが可能な楽曲数を増やすように構成することができる。また、楽曲表示領域61における指やペンの座標の移動方向を検知することにより、例えば図2に示すパレット60aを使用する場合、「暗い」から「明るい」に向かってなぞって選択すると、プレイリストにおいて、暗い曲から徐々に明るい曲に移行するように再生順が設定されるように構成することができる。また、楽曲表示領域61における指やペンの座標の移動速度を測定する場合、早くなぞって選択された楽曲が複数ある場合は、過去の再生回数が多いものほど優先的にプレイリストに追加され、ゆっくりなぞって選択された楽曲が複数ある場合は、過去の再生回数が少ないものほど優先的にプレイリストに追加されるように構成することができる。これらの条件を組み合わせてプレイリストを作成することもできる。
【0039】
プレイリスト作成手段としてのCPU14により上記のプレイリストの作成条件に基づいて作成されたプレイリストは、図2(e)に示すように、GUI200においてプレイリスト表示領域63に表示される(ステップS109)。プレイリスト表示領域63には、プレイリストの各楽曲の曲名やアーティスト名が再生順にソートされて表示される。ユーザは、作成されたプレイリストを確認し、必要に応じてGUI200上で指やペンによるタッチ操作によって楽曲の追加や削除、再生順の変更などを行ってプレイリストをカスタマイズすることができる。
【0040】
以上が本発明の実施形態に関する説明である。本発明は、上記の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲においてさまざまな変形が可能である。例えば上記の説明では、楽曲選択時、指先の座標とカバーアートの表示領域が重なった場合に、楽曲が選択されてカバーアートが指先への追従を開始するが、指先の座標とカバーアートの表示領域内の任意の位置(例えば、表示領域の中心座標)との距離が所定の値以下になったときに指先の座標への追従を開始するように構成してもよい。そして、この場合、所定の値が0となったときに指先の座標とカバーアートの表示領域が重なったとみなすこともできる。また、楽曲選択時に、現在選択されている楽曲数や合計再生時間を表示するインジケータをGUI200に表示してもよい。これにより、ユーザは選択可能な残りの楽曲数や再生時間を把握することができるため、円滑にプレイリストを作成することができる。
【符号の説明】
【0041】
10 操作キー
14 CPU
16 楽曲データベース
22 液晶ディスプレイ
60 パレット表示領域
60a〜60c パレット
61 楽曲表示領域
62 プレイリスト作成領域
63 プレイリスト表示領域
100 オーディオ装置
200 GUI

【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽曲及び楽曲情報が格納されている楽曲データベースと、
各楽曲の楽曲情報を配置するための楽曲の特徴に対応する座標軸を有する座標系と所定の領域とが表示される表示手段と、
前記表示手段に座標を入力する座標入力手段であって、前記座標系に入力する座標及び座標の軌跡に応じて楽曲を選択する座標入力手段と、
前記座標系において選択されて前記所定の領域に移動された楽曲に基づいてプレイリストを作成するプレイリスト作成手段と、を有し、
各楽曲は、前記座標入力手段によって選択されると、該座標入力手段によって前記座標系に入力される座標に追従する、
ことを特徴とするプレイリスト作成装置。
【請求項2】
前記座標系において、各楽曲の楽曲情報がそれぞれ所定の図形内に表示され、
前記座標入力手段によって前記座標系に入力される座標と前記所定の図形内の所定の座標との距離が所定の値以下になると、該所定の図形に表示される楽曲情報を有する楽曲が選択される、
ことを特徴とする請求項1に記載のプレイリスト作成装置。
【請求項3】
前記座標入力手段による楽曲選択の所要時間に応じて、プレイリストに含めることができる楽曲数が変更される、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプレイリスト作成装置。
【請求項4】
前記座標入力手段によって前記座標系に入力される座標の移動方向に基づいてプレイリストにおける楽曲の再生順が決定される、ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のプレイリスト作成装置。
【請求項5】
前記座標入力手段によって前記座標系に入力される座標の移動速度に基づいてプレイリストに含める楽曲が決定される、ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のプレイリスト作成装置。
【請求項6】
プレイリストに含めることができる楽曲数の上限があらかじめ設定されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のプレイリスト作成装置。
【請求項7】
プレイリストに含めることができる楽曲数の上限を設定する楽曲数設定手段をさらに有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のプレイリスト作成装置。
【請求項8】
プレイリストに含めることができる楽曲の合計再生時間の上限があらかじめ設定されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のプレイリスト作成装置。
【請求項9】
プレイリストに含めることができる楽曲の合計再生時間の上限を設定する再生時間設定手段をさらに有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のプレイリスト作成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−58877(P2012−58877A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199596(P2010−199596)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】