説明

プレキャストコンクリート板の接合方法とその方法に用いられる鉄筋の接合構造

【課題】狭隘な作業場所でも効率よくかつ容易に接合作業を行う。
【解決手段】接合継手5を、内部に鉄筋を重ねて収容するスリーブ状接合継手本体7と、楔孔9から圧入され内部の鉄筋を接合させる楔材10とを備えて構成し、プレキャストコンクリート板2、2の配置前に、向かい合う鉄筋4A、4Bのそれぞれに、接合継手本体7を予め嵌め入れて凹陥部6側に移動させる。次に、隣り合うプレキャストコンクリート板2、2を設計プランに応じて配置して鉄筋4A、4Bの端部4Aa、4Ba同士を向かい合わせ、接合継手本体7に棒状接合用鉄筋材4Cを挿入し、挿入された接合用鉄筋材4Cとともに接合継手本体7を向かい合う鉄筋4A、4Bの端部4Aa、4Ba側に移動させ、接合用鉄筋材4Cと鉄筋4A、4Bとが重なって収容された接合継手本体7の楔孔9に楔材10を圧入して接合するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストコンクリート板の接合方法とその方法に用いられる鉄筋の接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、多層集合住宅等の構造躯体(建物)は、コンクリートの現場打ちによるものと、予め成型されたプレキャスト鉄筋コンクリート板を多数接合して組み立てられるものとが知られている。現場打ちによる建物の築造は、型枠を現場で組み立ててコンクリートを打設するので、設計の自由度を得られる反面、施工日数がかかる。一方、プレキャスト鉄筋コンクリート板による建物の築造は、予め成型されたプレキャストコンクリート板を現場で接合し順次組み立てて建物を構築して行くので、施工日数を短縮できしかも作業性がよいという利点がある。このため、近年では、プレキャストコンクリート板を用いた構築工法が増加する傾向にある。
【0003】
このようなプレキャストコンクリート板の接合には、フレア溶接が用いられている。フレア溶接は継手工法の一種で、棒鋼同士または棒鋼と鋼板とをアーク溶接により接合するようになっている。例えば、プレキャストコンクリート構造(以下、PC構造という)では、壁と壁との接合部で、鉛直接合部コッター筋の部位、鉛直接合部たて筋の部位、床と床との接合部、ファスナー筋の部位といった場所でフレア溶接が採用されている。しかしながら、このようなフレア溶接継手工法では、施工精度の確保が難しいという問題がある。また、溶接で火気を用いるため雨天の場合、作業できないという問題がある。このため、従来、両端に開口を有し断面楕円状のスリーブ継手に、プレキャストコンクリート板から突出した鉄筋の折曲端部を収容し、スリーブ継手の両側壁を貫通して形成された楔孔に楔材を圧入して鉄筋同士を接合する接合工法が知られている(特許文献1参照。)。また、プレキャストコンクリート板の互いに向き合う平行な2本の鉄筋同士に、このようなスリーブ継手を嵌め入れ、スリーブ継手両端開口部側に設けられた楔孔に楔材を圧入して接合する接合工法が知られている(特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−209442号公報
【特許文献2】特開平6−108588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のプレキャストコンクリート板の接合工法では、スリーブ継手の両端方向寸法が予め決められている。このため、スリーブ継手を現場に持ち込んだものの、例えば、隣り合って配置されたプレキャストコンクリート板の向かい合う鉄筋の端部間が狭隘な場合や向かい合う鉄筋の端部同士が重なり合っている場合には、これら端部間の隙間からスリーブ継手を鉄筋に嵌め入れられないという問題がある。このような場合、現場で鉄筋の端部を、工具等を利用して折り曲げ、鉄筋の端部間にスリーブ継手が差し込める空間を確保してスリーブ継手を鉄筋に嵌め入れ、再び鉄筋を曲げ戻し、両鉄筋の端部側にスリーブ継手を引き戻して楔孔に楔材を圧入しなければならず、作業に手間がかかるという問題がある。また、隣り合うプレキャストコンクリート板間の間隔がスリーブ継手を鉄筋に嵌め入れられない程狭い場合、スリーブ継手を用いることができず溶接で鉄筋同士を接合しなければならないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、隣り合うプレキャストコンクリート板の向かい合う鉄筋の端部間が狭隘な場合や鉄筋の端部同士が重なり合っている場合、また、隣り合うプレキャストコンクリート板間の間隙が狭い場合でも、短時間でかつ容易に接合作業を行うことができるプレキャストコンクリート板の接合方法とその方法に用いられる鉄筋の接合構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係るプレキャストコンクリート板の接合方法は、隣り合うプレキャストコンクリート板の本体から露出した鉄筋同士を接合継手により接合するプレキャストコンクリート板の接合方法であって、接合継手を、内部に2本の鉄筋を重ねて収容するスリーブ状の本体と、このスリーブ状本体に形成された楔孔から重ねられた鉄筋間に圧入されてスリーブ状本体と鉄筋とを接合する楔材とを備えて構成し、プレキャストコンクリート板を、プレキャストコンクリート板本体から鉄筋が露出する部位を内側に凹陥させて成型する第1のステップと、隣り合うプレキャストコンクリート板の向かい合う鉄筋のうち少なくともいずれか一方に、接合継手本体を嵌め入れ凹陥部側に移動させる第2のステップと、これら隣り合うプレキャストコンクリート板を設計プランに応じて配置して鉄筋の端部同士を向かい合わせ、接合継手本体に棒状接合用鉄筋材を挿入し、挿入された接合用鉄筋材とともに接合継手本体を向かい合う鉄筋の端部側に移動させる第3のステップと、接合用鉄筋材と鉄筋とが重なって収容された接合継手本体の楔孔に楔材を圧入して接合する第4のステップとを有することを特徴とするものである。
【0008】
請求項1に係るプレキャストコンクリート板の接合方法では、隣り合うプレキャストコンクリート板の本体から露出した鉄筋同士を接合継手により接合するプレキャストコンクリート板の接合方法であって、接合継手を、内部に2本の鉄筋を重ねて収容するスリーブ状の本体と、このスリーブ状本体に形成された楔孔から重ねられた鉄筋間に圧入されてスリーブ状本体と鉄筋とを接合する楔材とを備えて構成し、プレキャストコンクリート板を、プレキャストコンクリート板本体から鉄筋が露出する部位を内側に凹陥させて成型する第1のステップと、隣り合うプレキャストコンクリート板の向かい合う鉄筋のうち少なくともいずれか一方に、接合継手本体を嵌め入れ凹陥部側に移動させる第2のステップと、これら隣り合うプレキャストコンクリート板を設計プランに応じて配置して鉄筋の端部同士を向かい合わせ、接合継手本体に棒状接合用鉄筋材を挿入し、挿入された接合用鉄筋材とともに接合継手本体を向かい合う鉄筋の端部側に移動させる第3のステップと、接合用鉄筋材と鉄筋とが重なって収容された接合継手本体の楔孔に楔材を圧入して接合する第4のステップとを有するようにしたことにより、プレキャストコンクリート板の配置前に、接合継手本体をプレキャストコンクリート板の凹陥部に予め移動させることができるので、隣り合うプレキャストコンクリート板間の間隙や鉄筋の端部間の間隙がたとえ狭くとも接合継手本体を鉄筋に配することができ、しかも、接合用鉄筋材を隣り合うプレキャストコンクリート板間に差し入れやすい。
【0009】
請求項2に係るプレキャストコンクリート板の接合方法は、成型されたプレキャストコンクリート板配置時に、向かい合う鉄筋の端部間に接合継手本体が差し入れ可能なスペースがある場合、プレキャストコンクリート板の配置後に接合継手本体を鉄筋に嵌め入れることを特徴とするものである。
【0010】
請求項2に係るプレキャストコンクリート板の接合方法では、成型されたプレキャストコンクリート板配置時に、向かい合う鉄筋の端部間に接合継手本体が差し入れ可能なスペースがある場合、プレキャストコンクリート板の配置後に接合継手本体を鉄筋に嵌め入れることにより、隣り合うプレキャストコンクリート板の向き合う鉄筋の端部間に接合継手本体を差し入れる空隙がなくとも接合継手本体を鉄筋に配することができる。
【0011】
請求項3に係るプレキャストコンクリート板の接合方法は、接合継手本体は、鉄筋収容部の延長方向寸法が鉄筋一端部の接合性能を満たす長さを有して構成されるとともに、接合継手本体のほぼ中心に楔孔を形成し、接合時、向かい合う鉄筋の各端部にそれぞれ配置されることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に係るプレキャストコンクリート板の接合方法では、接合継手本体は、鉄筋収容部の延長方向寸法が鉄筋一端部の接合性能を満たす長さを有して構成されるとともに、接合継手本体のほぼ中心に楔孔を形成し、接合時、向かい合う鉄筋の各端部にそれぞれ配置されることにより、接合継手本体の収容部延長方向寸法を短寸に形成して小型化することができる。
【0013】
請求項4に係るプレキャストコンクリート板の接合方法は、接合継手本体は、鉄筋収容部が向かい合う鉄筋の両端部を跨いで収容しその延長方向寸法がこれら両端部の接合性能を満たす長さを有して構成されるとともに、接合継手本体の延長方向両側に楔孔を形成し、接合時、向かい合う鉄筋の両端部を跨いで配置されることを特徴とするものである。
【0014】
請求項4に係るプレキャストコンクリート板の接合方法では、接合継手本体は、鉄筋収容部が向かい合う鉄筋の両端部を跨いで収容しその延長方向寸法がこれら両端部の接合性能を満たす長さを有して構成されるとともに、接合継手本体の延長方向両側に楔孔を形成し、接合時、向かい合う鉄筋の両端部を跨いで配置されることにより、向き合う鉄筋同士を単体の接合継手本体で接合することができる。
【0015】
請求項5に係るプレキャストコンクリート板の接合方法は、隣り合うプレキャストコンクリート板の本体から露出した鉄筋同士を接合継手により接合するプレキャストコンクリート板の接合方法であって、接合継手を、内部に2本の鉄筋を重ねて収容するスリーブ状の本体と、このスリーブ状本体に形成された楔孔から重ねられた鉄筋間に圧入されてスリーブ状本体と鉄筋とを接合する楔材とを備えて構成し、プレキャストコンクリート板を、プレキャストコンクリート板が隣り合って配置された際、向かい合う鉄筋の端部側が重複するように鉄筋をプレキャストコンクリート板本体から延長させて成型する第1のステップと、隣り合うプレキャストコンクリート板の重複する鉄筋のうち少なくともいずれか一方を折り曲げる第2のステップと、隣り合うプレキャストコンクリート板を設計プランに応じて配置する第3のステップと、折り曲げにより端部同士が離れた鉄筋の端部から接合継手本体を嵌め入れてプレキャストコンクリート板本体側に移動させ、折り曲げられた鉄筋を元の延長方向に曲げ戻す第4のステップと、接合継手本体を、プレキャストコンクリート板本体側から曲げ戻された鉄筋の端部側に引き戻して重なった鉄筋を収容し、両鉄筋が重なって収容された接合継手本体の楔孔に楔材を圧入して接合する第5のステップとを有することを特徴とするものである。
【0016】
請求項5に係るプレキャストコンクリート板の接合方法では、隣り合うプレキャストコンクリート板の本体から露出した鉄筋同士を接合継手により接合するプレキャストコンクリート板の接合方法であって、接合継手を、内部に2本の鉄筋を重ねて収容するスリーブ状の本体と、このスリーブ状本体に形成された楔孔から重ねられた鉄筋間に圧入されてスリーブ状本体と鉄筋とを接合する楔材とを備えて構成し、プレキャストコンクリート板を、プレキャストコンクリート板が隣り合って配置された際、向かい合う鉄筋の端部側が重複するように鉄筋をプレキャストコンクリート板本体から延長させて成型する第1のステップと、隣り合うプレキャストコンクリート板の重複する鉄筋のうち少なくともいずれか一方を折り曲げる第2のステップと、隣り合うプレキャストコンクリート板を設計プランに応じて配置する第3のステップと、折り曲げにより端部同士が離れた鉄筋の端部から接合継手本体を嵌め入れてプレキャストコンクリート板本体側に移動させ、折り曲げられた鉄筋を元の延長方向に曲げ戻す第4のステップと、接合継手本体を、プレキャストコンクリート板本体側から曲げ戻された鉄筋の端部側に引き戻して重なった鉄筋を収容し、両鉄筋が重なって収容された接合継手本体の楔孔に楔材を圧入して接合する第5のステップとを有することにより、鉄筋を予め折り曲げているので、プレキャストコンクリート板の配置後であっても、接合継手本体を鉄筋に嵌め入れることができる。接合継手本体の嵌め入れ後、鉄筋を曲げ戻して、接合継手本体を嵌め入れるので、向かい合う鉄筋が重複するプレキャストコンクリート板であっても接合継手本体を用いて接合することができる。
【0017】
請求項6に係るプレキャストコンクリート板の接合方法は、プレキャストコンクリート板は、プレキャストコンクリート板本体から鉄筋が露出する部位を内側に凹陥させて成型されることを特徴とするものである。
【0018】
請求項6に係るプレキャストコンクリート板の接合方法では、プレキャストコンクリート板は、プレキャストコンクリート板本体から鉄筋が露出する部位を内側に凹陥させて成型されることにより、鉄筋に嵌め入れた接合継手本体をプレキャストコンクリート板の凹陥部に移動させることができるので、鉄筋の曲げ戻し作業がしやすくなる。
【0019】
請求項7に係る鉄筋の接合構造は、隣り合って配置されたプレキャストコンクリート板の本体から露出し端部間に空隙を有して向き合う鉄筋に、接合用鉄筋材を重ね合わせ、楔孔を有するスリーブ状接合継手本体をこれら重ね合わされた鉄筋と接合用鉄筋材とに嵌め入れて収容し、楔孔から楔材を圧入し、接合用鉄筋材を介してこれら鉄筋を接合する鉄筋の接合構造であって、接合用鉄筋材を、棒状鉄筋片の一端を折曲した折曲鉄筋材を形成し、これら折曲鉄筋材同士または折曲鉄筋材と棒状鉄筋片とを溶接し、溶接部から単独で延びる接合用延長端部を上記鉄筋の端部の配置に沿うように構成したことを特徴とするものである。
【0020】
請求項7に係る鉄筋の接合構造では、隣り合って配置されたプレキャストコンクリート板の本体から露出し端部間に空隙を有して向き合う鉄筋に、接合用鉄筋材を重ね合わせ、楔孔を有するスリーブ状接合継手本体をこれら重ね合わされた鉄筋と接合用鉄筋材とに嵌め入れて収容し、楔孔から楔材を圧入し、接合用鉄筋材を介してこれら鉄筋を接合する鉄筋の接合構造であって、接合用鉄筋材を、棒状鉄筋片の一端を折曲した折曲鉄筋材を形成し、これら折曲鉄筋材同士または折曲鉄筋材と棒状鉄筋片とを溶接し、溶接部から単独で延びる接合用延長端部を上記鉄筋の端部の配置に沿うように構成したことにより、下肢部を1本の鉄筋とすることができ、鉄筋に、接合用鉄筋材を重ね合わせてスリーブ状継手本体を用いることができる。
【0021】
請求項8に係る鉄筋の接合構造は、接合用鉄筋材が、2以上の鉄筋の端部に応じて接合用延長端部が形成されることを特徴とするものである。
【0022】
請求項8に係る鉄筋の接合構造では、接合用鉄筋材が、2以上の鉄筋の端部に応じて接合用延長端部が形成されることにより、下肢部を鉄筋の端部の配置に沿わせることができ、鉄筋の端部の配置が2以上の複雑な配置であっても接合継手本体により接合することができる。
【0023】
本発明の請求項9に係るプレキャストコンクリート板の接合方法は、請求項7または請求項8に記載の接合用鉄筋材を用いたことを特徴とするものである。
【0024】
請求項9に係るプレキャストコンクリート板の接合方法では、請求項7または8に記載の接合用鉄筋材を用いたことにより、隣り合うプレキャストコンクリート板間の間隙や鉄筋の端部間の間隙がたとえ狭くとも、また、鉄筋の端部の配置が2以上の複雑な配置であっても接合用鉄筋材を隣り合うプレキャストコンクリート板間に差し入れやすい。
【0025】
請求項10に係るプレキャストコンクリート板の接合方法は、隣り合うプレキャストコンクリート板の本体から露出した鉄筋同士を接合継手により接合するプレキャストコンクリート板の接合方法であって、接合継手を、内部に2本の鉄筋を重ねて収容するスリーブ状の本体と、このスリーブ状本体に形成された楔孔から重ねられた鉄筋間に圧入されてスリーブ状本体と鉄筋とを接合する楔材とを備えて構成し、第1のプレキャストコンクリート板を、プレキャストコンクリート板が隣り合って配置された際、端部同士が向かい合うように鉄筋をプレキャストコンクリート板本体から延長させて成型する第1のステップと、第2のプレキャストコンクリート板を、第1のプレキャストコンクリート板が隣り合って配置された際、隣り合う第1のプレキャストコンクリート板の鉄筋の延長方向に直交し鉄筋間を結ぶ線が内側に配されるU字状筋またはループ状筋をプレキャストコンクリート板本体から突出させて成型する第2のステップと、第1第2のプレキャストコンクリート板を設計プランに応じて配置し、隣り合う第1のプレキャストコンクリート板の向かい合う鉄筋のうち少なくともいずれか一方に、接合継手本体を嵌め入れる第3のステップと、接合継手本体に棒状接合用鉄筋材を挿入し、接合用鉄筋材と鉄筋とが重なって収容された接合継手本体の楔孔に楔材を圧入し接合用鉄筋材と向かい合う鉄筋とを接合し、接合された鉄筋を第2のプレキャストコンクリート板のU字状筋またはループ状筋の内側に配置する第4のステップとを有することを特徴とするものである。
【0026】
請求項10に係るプレキャストコンクリート板の接合方法では、隣り合うプレキャストコンクリート板の本体から露出した鉄筋同士を接合継手により接合するプレキャストコンクリート板の接合方法であって、接合継手を、内部に2本の鉄筋を重ねて収容するスリーブ状の本体と、このスリーブ状本体に形成された楔孔から重ねられた鉄筋間に圧入されてスリーブ状本体と鉄筋とを接合する楔材とを備えて構成し、第1のプレキャストコンクリート板を、プレキャストコンクリート板が隣り合って配置された際、端部同士が向かい合うように鉄筋をプレキャストコンクリート板本体から延長させて成型する第1のステップと、第2のプレキャストコンクリート板を、第1のプレキャストコンクリート板が隣り合って配置された際、隣り合う第1のプレキャストコンクリート板の鉄筋の延長方向に直交し鉄筋間を結ぶ線が内側に配されるU字状筋またはループ状筋をプレキャストコンクリート板本体から突出させて成型する第2のステップと、第1第2のプレキャストコンクリート板を設計プランに応じて配置し、隣り合う第1のプレキャストコンクリート板の向かい合う鉄筋のうち少なくともいずれか一方に、接合継手本体を嵌め入れる第3のステップと、接合継手本体に棒状接合用鉄筋材を挿入し、接合用鉄筋材と鉄筋とが重なって収容された接合継手本体の楔孔に楔材を圧入し接合用鉄筋材と向かい合う鉄筋とを接合し、接合された鉄筋を第2のプレキャストコンクリート板のU字状筋またはループ状筋の内側に配置する第4のステップとを有するようにしたことにより、第2のプレキャストコンクリート板のU字状筋またはループ状筋の内側に、接合された鉄筋を配置した状態でプレキャストコンクリート板間にコンクリートを打設して接続することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の請求項1に係るプレキャストコンクリート板の接合方法は、隣り合うプレキャストコンクリート板の本体から露出した鉄筋同士を接合継手により接合するプレキャストコンクリート板の接合方法であって、接合継手を、内部に2本の鉄筋を重ねて収容するスリーブ状の本体と、このスリーブ状本体に形成された楔孔から重ねられた鉄筋間に圧入されてスリーブ状本体と鉄筋とを接合する楔材とを備えて構成し、プレキャストコンクリート板を、プレキャストコンクリート板本体から鉄筋が露出する部位を内側に凹陥させて成型する第1のステップと、隣り合うプレキャストコンクリート板の向かい合う鉄筋のうち少なくともいずれか一方に、接合継手本体を嵌め入れ凹陥部側に移動させる第2のステップと、これら隣り合うプレキャストコンクリート板を設計プランに応じて配置して鉄筋の端部同士を向かい合わせ、接合継手本体に棒状接合用鉄筋材を挿入し、挿入された接合用鉄筋材とともに接合継手本体を向かい合う鉄筋の端部側に移動させる第3のステップと、接合用鉄筋材と鉄筋とが重なって収容された接合継手本体の楔孔に楔材を圧入して接合する第4のステップとを有するようにしたので、隣り合うプレキャストコンクリート板間の間隙が狭い場合でも、短時間でかつ容易に接合作業を行うことができる。
【0028】
本発明の請求項5に係るプレキャストコンクリート板の接合方法は、隣り合うプレキャストコンクリート板の本体から露出した鉄筋同士を接合継手により接合するプレキャストコンクリート板の接合方法であって、接合継手を、内部に2本の鉄筋を重ねて収容するスリーブ状の本体と、このスリーブ状本体に形成された楔孔から重ねられた鉄筋間に圧入されてスリーブ状本体と鉄筋とを接合する楔材とを備えて構成し、プレキャストコンクリート板を、プレキャストコンクリート板が隣り合って配置された際、向かい合う鉄筋の端部側が重複するように鉄筋をプレキャストコンクリート板本体から延長させて成型する第1のステップと、隣り合うプレキャストコンクリート板の重複する鉄筋のうち少なくともいずれか一方を折り曲げる第2のステップと、隣り合うプレキャストコンクリート板を設計プランに応じて配置する第3のステップと、折り曲げにより端部同士が離れた鉄筋の端部から接合継手本体を嵌め入れてプレキャストコンクリート板本体側に移動させ、折り曲げられた鉄筋を元の延長方向に曲げ戻す第4のステップと、接合継手本体を、プレキャストコンクリート板本体側から曲げ戻された鉄筋の端部側に引き戻して重なった鉄筋を収容し、両鉄筋が重なって収容された接合継手本体の楔孔に楔材を圧入して接合する第5のステップとを有するようにしたので、鉄筋の端部側が重なる場合でも、プレキャストコンクリート板の配置前に端部から接合継手本体を予め嵌め入れることができ、短時間でかつ容易に接合作業を行うことができる。
【0029】
本発明の請求項7に係る鉄筋の接合構造は、隣り合って配置されたプレキャストコンクリート板の本体から露出し端部間に空隙を有して向き合う鉄筋に、接合用鉄筋材を重ね合わせ、楔孔を有するスリーブ状接合継手本体をこれら重ね合わされた鉄筋と接合用鉄筋材とに嵌め入れて収容し、楔孔から楔材を圧入し、接合用鉄筋材を介してこれら鉄筋を接合する鉄筋の接合構造であって、接合用鉄筋材を、棒状鉄筋片の一端を折曲した折曲鉄筋材を形成し、これら折曲鉄筋材同士または折曲鉄筋材と棒状鉄筋片とを溶接し、溶接部から単独で延びる接合用延長端部を上記鉄筋の端部の配置に沿うように構成したので、接合用鉄筋材を鉄筋の配置に応じて自在に形成することができ、鉄筋が複雑な配置であっても確実に接合継手本体で接合することができ、作業性が向上する。
【0030】
本発明の請求項10に係るプレキャストコンクリート板の接合方法は、隣り合うプレキャストコンクリート板の本体から露出した鉄筋同士を接合継手により接合するプレキャストコンクリート板の接合方法であって、接合継手を、内部に2本の鉄筋を重ねて収容するスリーブ状の本体と、このスリーブ状本体に形成された楔孔から重ねられた鉄筋間に圧入されてスリーブ状本体と鉄筋とを接合する楔材とを備えて構成し、第1のプレキャストコンクリート板を、プレキャストコンクリート板が隣り合って配置された際、端部同士が向かい合うように鉄筋をプレキャストコンクリート板本体から延長させて成型する第1のステップと、第2のプレキャストコンクリート板を、第1のプレキャストコンクリート板が隣り合って配置された際、隣り合う第1のプレキャストコンクリート板の鉄筋の延長方向に直交し鉄筋間を結ぶ線が内側に配されるU字状筋またはループ状筋をプレキャストコンクリート板本体から突出させて成型する第2のステップと、第1第2のプレキャストコンクリート板を設計プランに応じて配置し、隣り合う第1のプレキャストコンクリート板の向かい合う鉄筋のうち少なくともいずれか一方に、接合継手本体を嵌め入れる第3のステップと、接合継手本体に棒状接合用鉄筋材を挿入し、接合用鉄筋材と鉄筋とが重なって収容された接合継手本体の楔孔に楔材を圧入し接合用鉄筋材と向かい合う鉄筋とを接合し、接合された鉄筋を第2のプレキャストコンクリート板のU字状筋またはループ状筋の内側に配置する第4のステップとを有するようにしたので、プレキャストコンクリート板間にコンクリートを打設して接続すると、内部で直交する鉄筋を上下で繋ぐことができ、簡素な作業で強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】(A)ないし(D)はそれぞれ、本発明の第1の実施例に係るプレキャストコンクリート板の接合方法について接合の工程を順を追って説明する説明図である。(実施例1)
【図2】(A)ないし(E)はそれぞれ、本発明の第1の実施例に係るプレキャストコンクリート板の接合方法に用いられる接合継手本体の側面図、その正面図、楔材の下面図、その側面図および鉄筋を収容した接合継手本体に楔材を圧入した状態を示す断面図である。
【図3】本発明の第2の実施例に係るプレキャストコンクリート板の接合方法により接合された状態を示す説明図である。(実施例2)
【図4】(A)ないし(D)はそれぞれ、本発明の第3の実施例に係るプレキャストコンクリート板の接合方法により接合する工程を順を追って説明する説明図である。(実施例3)
【図5】(A)ないし(C)はそれぞれ、本発明の第4の実施例に係る鉄筋の接合構造の接合用鉄筋材を示す平面図、その接合用鉄筋材を用いて鉄筋を接合した状態を示す説明図およびその接合用鉄筋材を用いて配置の異なる鉄筋を接合した状態を示す説明図である。(実施例4)
【図6】図5の接合用鉄筋材の変形例を示す平面図である。
【図7】図5の接合用鉄筋材を用いて接合した例を示す説明図である。
【図8】(A)、(B)はそれぞれ、図5の接合用鉄筋材の変形例を示す側面図および平面図である。
【図9】(A)ないし(C)はそれぞれ、図5の接合用鉄筋材の変形例を示す側面図、平面図および正面図である。
【図10】(A)、(B)はそれぞれ、本発明の第5の実施例に係るプレキャストコンクリート板の接合方法により鉄筋を接合した状態を示す説明図およびその上面図である。(実施例5)
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
鉄筋を接合しにくい条件の悪い現場でも短時間でかつ容易に接合作業を行うという目的を、第1のステップで、プレキャストコンクリート板を、プレキャストコンクリート板本体から鉄筋が露出する部位を内側に凹陥させて成型し、第2のステップで、隣り合うプレキャストコンクリート板の向かい合う鉄筋のうち少なくともいずれか一方に、接合継手本体を嵌め入れ凹陥部側に移動させ、第3のステップで、これら隣り合うプレキャストコンクリート板を設計プランに応じて配置し、鉄筋の端部同士を向かい合わせ、接合継手本体に棒状接合用鉄筋材を挿入し、挿入された接合用鉄筋材とともに接合継手本体を向かい合う鉄筋の端部側に移動させ、第4のステップで、接合用鉄筋材と鉄筋とが重なって収容された接合継手本体の楔孔に楔材を圧入し向かい合う鉄筋を接合することにより実現した。
【実施例1】
【0033】
以下、図面に示す実施例により本発明を説明する。図1の(A)ないし(D)はそれぞれ、本発明の第1の実施例に係るプレキャストコンクリート板の接合方法について接合の工程を順を追って説明する説明図である。なお、図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。本発明の第1の実施例に係るプレキャストコンクリート板の接合方法では、隣り合って配置されたプレキャストコンクリート板2の本体3から露出し互いに向き合う鉄筋4A、4Bの端部4Aa、4Ba同士を接合継手5により接合するようになっている。これらキャストコンクリート板2は、予め本体3から鉄筋4A、4Bが露出する部位を内側に凹陥させて成型される(第1のステップS1)。隣り合って配置されたプレキャストコンクリート板2、2は、向かい合う鉄筋4A、4B同士が接合継手5により接合されると、これらプレキャストコンクリート板2、2間にコンクリートを打設して築造されるようになっている。
【0034】
接合継手5は、図2の(A)ないし(D)に示すように、内部に2本の鉄筋を重ねて収容する断面楕円状の縦長の空間8が確保されたスリーブ状の本体7を備えている。このスリーブ状本体7には、両側壁のほぼ中心を左右に貫通する楔孔9が穿設される。この接合継手5は、スリーブ状の接合継手本体7の鉄筋収容部8に鉄筋4を重ねて2本差し入れ、接合継手本体7の一方の側壁の楔孔9に先端側が徐々に縮径された楔材10を圧入してこの楔材10を重ねられて収容された2本の鉄筋4、4間に打ち込むと、スリーブ状接合継手本体7と鉄筋4、4とを接合するようになっている。接合継手本体7の鉄筋収容部8は、同一径を有する鉄筋4、4A、4Bがほぼ隙間なく2本重なって収容されるようになっている。このため、径の異なる鉄筋に用いる際は、鉄筋の径に応じて収容部の大きさも接合継手本体自体の大きさも変わるようになっている。
【0035】
第1のステップS1で成型されるプレキャストコンクリート板2は、築造現場で本体3が隣り合って配置された場合、本体3から延長され互いに向き合う鉄筋4A、4Bの端部4Aa、4Ba間の間隙S1が、接合継手本体7の鉄筋収容部8の延長方向(図2(B)の左右方向参照)の寸法M1より小さくなる場合と、大きくなる場合とがある。図1の(A)ないし(D)は、鉄筋4A、4Bの端部4Aa、4Ba間の間隙S1が、接合継手本体7の延長方向寸法(長手方向寸法)M1より小さくなるようプレキャストコンクリート板2が成型された場合を示すもので、この場合、接合継手本体7は、隣り合うプレキャストコンクリート板2が築造現場に両者とも配置される前か、またはいずれか一方が配置された後、向かい合うことになる鉄筋4A、4Bにそれぞれ嵌め入れられ(図1の(A)参照)、少なくともいずれか一方の接合継手本体7をプレキャストコンクリート板本体3の凹陥部6側に移動させる(図1の(B)参照、第2のステップS2)。ここで、接合継手本体7の延長方向寸法M1は、鉄筋収容部8の延長方向寸法が鉄筋4A、4Bの一端部の接合性能を満たすのに十分な長さを有するようになっている。
【0036】
なお、鉄筋4A、4Bの端部4Aa、4Ba間の間隙S1が、接合継手本体7の延長方向寸法M1より大きくなるようプレキャストコンクリート板2が成型された場合には、接合継手本体7を鉄筋4A、4Bに嵌め入れるタイミングを、プレキャストコンクリート板2の配置後としてもよく、嵌め入れ後、プレキャストコンクリート板本体3の凹陥部6側に移動させればよい。
【0037】
隣り合うプレキャストコンクリート板2が設計プランに応じて築造現場に配置され、接合継手本体7A、7Bが鉄筋4A、4Bの凹陥部6側に配されると、次に、鉄筋4A、4Bにそれぞれぶら下がった接合継手本体7のうち少なくともいずれか一方(本実施例では、接合継手本体7A)に棒状の接合用鉄筋材4Cを挿入し、挿入した接合用鉄筋材4Cとともに接合継手本体7Aを、鉄筋4Aの端部4Aa側に配置されるように移動させる(図1の(C)参照)。このとき、接合継手本体7Aを、鉄筋4Aの端部4Aa側に配置されるよう移動させた後、棒状接合用鉄筋材4Cを挿入してもよい。接合用鉄筋材4Cは、鉄筋4A、4Bとほぼ同径の鉄筋を所定寸法S2でカットしたもので、その長さS2は、接合継手本体7の長手方向寸法M1の2倍と鉄筋4A、4Bの端部4Aa、4Ba間の間隔S1とを加えた寸法より長く、隣り合うプレキャストコンクリート板2、2の向かい合う端面3A、3A間の距離Spより短く設定される[((M1×2+S1)<S2<Sp)]。一方の接合継手本体7Aに接合用鉄筋材4Cの一端が挿入されると、他方の接合継手本体7Bを引き上げ、この他方の接合用継手本体7Bを他方の鉄筋4Bに沿って端部4Ba側に移動させ、鉄筋4Bと重なった接合用鉄筋材4Cの他端に嵌め入れる(図1の(D)参照、第3のステップS3)。
【0038】
次に、接合用鉄筋材4Cと鉄筋4A、4Bとが重なって収容された接合継手本体7A、7Bの楔孔9に楔材10を圧入し、接合用鉄筋材4Cと鉄筋4A、4Bとを接合継手本体7A、7Bを介して接合する(第4のステップS4)。楔孔9に楔材10を圧入するには、図示しない圧入用の工具が用いられる。こうして隣り合うプレキャストコンクリート板2、2の鉄筋4A、4Bの接合が完了すると、これらプレキャストコンクリート板2、2間にコンクリートを打設するようになっている。
【0039】
次に上記第1の実施例に係るプレキャストコンクリート板の接合方法の作用について説明する。上記第1の実施例に係るプレキャストコンクリート板の接合方法では、プレキャストコンクリート板2を、プレキャストコンクリート板本体3から鉄筋4A、4Bが露出する部位を内側に凹陥させて成型しているので、向かい合う鉄筋4A、4Bの端部4Aa、4Ba間の間隙S1に応じて、プレキャストコンクリート板2の配置前または配置後に、接合継手本体7を鉄筋4A、4Bに装着すると、これら接合継手本体7のうち少なくともいずれか一方を、その後外部から持ち込まれる接合用鉄筋材4Cと干渉しない位置に、すなわち、プレキャストコンクリート板本体3の凹陥部6側に移動させておくことができる。このため、隣り合うプレキャストコンクリート板2、2間の距離が狭い場所であっても、また、向き合う鉄筋4A、4Bの端部4Aa、4Ba間の間隙が狭い場所でも、確実かつ容易に鉄筋4A、4Bの接合作業を行うことができる。また、接合継手本体7との干渉を避けることができるので、外部から接合用鉄筋材4Cを本体3間に差し入れやすく、作業性が向上する。さらに、接合継手本体7の鉄筋収容部8の延長方向寸法M1を短寸に形成することができるので、接合継手本体を小型化してコストダウンを図ることができる。また、接合用鉄筋材4Cの長さ寸法S2に多少長短のばらつきがあっても、接合継手本体7と干渉することなく、接合作業を行うことができ、カットされた接合用鉄筋材4Cを無駄なく利用することができる。
【実施例2】
【0040】
次に、本発明の第2の実施例に係るプレキャストコンクリート板の接合方法について説明する。本発明の第2の実施例に係るプレキャストコンクリート板の接合方法では、上記第1の実施例に係るプレキャストコンクリート板の接合方法が、接合継手5の接合継手本体7を、向かい合う両方の鉄筋4A、4Bのうち一方の端部4Aaまたは4Baを収容する収容部延長方向寸法M1を有するように構成するとともに接合継手本体7のほぼ中心に楔孔9を形成し、接合時、向かい合う鉄筋4A、4Bの各端部4Aa、4Baにそれぞれ配置して楔材10を圧入するのに対して、図3に示すように、接合継手25は、その接合継手本体27を、長手方向を長寸に形成し向かい合う鉄筋4A、4Bの両端部4Aa、4Baを跨いで収容する鉄筋収容部28を有して構成される点および楔孔29A、29Bを接合継手本体27の長手方向両側に形成した点が異なる外は、上記第1の実施例とほぼ同一の構成を備えている。
【0041】
すなわち、第2の実施例に係るプレキャストコンクリート板の接合方法では、接合継手本体27は単体で構成されるとともに、その長手方向寸法M2は第1の実施例の接合継手本体7の長手方向寸法M1の2倍と鉄筋4A、4Bの端部4Aa、4Ba間の間隔S1とを加えた寸法より長く、隣り合うプレキャストコンクリート板2、2の向かい合う端面3A、3A間の距離Spより短く設定される[((M1×2+S1)<M2<Sp)]。接合継手本体27の長手方向寸法M2は、鉄筋収容部28に向かい合う鉄筋4A、4Bが両端部を跨いで収容されると、これら両端部4A、4Bの接合性能を満たす長さとなっている。そして、鉄筋をカットして形成される接合用鉄筋材4Dの寸法S3は、接合継手本体27の長手方向寸法M2より若干長くなっている(S3>M2)。本実施例に係るプレキャストコンクリート板の接合方法では、接合継手本体27は、隣り合うプレキャストコンクリート板2が築造現場に両者とも配置される前か、またはいずれか一方が配置された後、向かい合うことになる鉄筋4A、4Bのいずれか一方に接合継手本体27を嵌め入れて、この接合継手本体27をプレキャストコンクリート板本体3の凹陥部6側に移動させる。次に、プレキャストコンクリート板2の配置後、接合継手本体27の鉄筋収容部28に棒状の接合用鉄筋材4Dを挿入し、接合継手本体27を、向かい合う鉄筋4A、4Bの端部4Aa、4Ba側に引き戻して、端部4Aa、4Ba間の間隙S1が接合継手本体27の鉄筋収容部28のほぼ中央に位置させる。すなわち、接合継手本体27を、楔孔29A、29Bがそれぞれ鉄筋4A、4Bの端部4Aa、4Ba側に配されるように両端部4Aa、4Baを跨ぐように位置決めする。次に、楔孔29A、29Bに楔材10、10を圧入して鉄筋4A、4Bを接合するようになっている。このように、第2の実施例に係るプレキャストコンクリート板の接合方法では、接合継手本体27を単体で接合させることができるので、作業効率が向上する。
【実施例3】
【0042】
次に、本発明の第3の実施例に係るプレキャストコンクリート板の接合方法について説明する。本発明の第3の実施例に係るプレキャストコンクリート板の接合方法では、上記第1の実施例に係るプレキャストコンクリート板の接合方法が、プレキャストコンクリート板2を成型するにあたり、本体3から鉄筋4A、4Bが露出する部位を内側に凹陥させて成型しているのに対し、図4の(A)ないし(D)に示すように、プレキャストコンクリート板32A、32Bには凹陥部を形成することなく、本体33の端面33Aが平坦に形成されている点、プレキャストコンクリート板32A、32Bが隣り合って配置された際、向かい合う鉄筋34A、34Bの端部34Aa、34Ba側が重複し、近接して平行に並ぶように鉄筋34A、34Bをプレキャストコンクリート板本体33の端面34Aから位置をずらせて延長させている点、接合用鉄筋材を使用しない点を除いて、上記第1の実施例とほぼ同一の構成を備えている。
【0043】
すなわち、第3の実施例に係るプレキャストコンクリート板の接合方法は、まず、プレキャストコンクリート板32A、32Bを隣り合って配置した際、向かい合う鉄筋34A、34Bの端部34Aa、34Ba側が重複するように向き合う鉄筋34A、34Bをプレキャストコンクリート板本体33の端面33Aから位置をずらせて延長させるよう成型する(第1のステップS31)。次に、隣り合うプレキャストコンクリート板32A、32Bの鉄筋34A、34Bのうち少なくともいずれか一方を端部を上方に向けて予め折り曲げておく(図4の(A)参照、第2のステップS32)。次に、プレキャストコンクリート板32A、32Bを設計プランに応じて築造現場に配置する(第3のステップS33)。次に、折り曲げにより端部34Aa、34Ba同士が離れた鉄筋34A、34Bに、これら端部34Aa、34Baから接合継手本体7を嵌め入れプレキャストコンクリート板本体33側に移動させる(図4の(B)参照)、折り曲げられた鉄筋34A、34Bを元の延長方向に曲げ戻し、端部34Aa、34Ba側が再び重複するように平行に向き合わせる(図4の(C)参照、第4のステップS34)。このとき、接合継手本体7、7はそれぞれ、鉄筋34A、34Bの本体33側にぶら下がった状態となっている。次に、接合継手本体7、7を、曲げ戻されて重複する鉄筋34A、34Bの本体33、33側から端部34Aa、34Ba側に引き戻し、接合継手本体7を重なった鉄筋34A、34Bに嵌め入れる。そして、接合継手本体7、7を鉄筋34A、34Bの重複部分両側に配し、接合継手本体7、7の楔孔9に楔材10を圧入し重なり合う鉄筋34A、34Bと接合継手本体7とを接合するようにしている(図4の(D)参照、第5のステップS35)。このように、本実施例に係るプレキャストコンクリート板の接合方法では、プレキャストコンクリート板32A、32Bの配置前に、鉄筋34A、34Bを予め上方に折り曲げておき、配置後、接合継手本体7、7を鉄筋34A、34Bに嵌め入れ、その後、鉄筋34A、34Bを曲げ戻して、鉄筋34A、34Bを向かい合わせると、これら並んで重なる鉄筋34A、34Bに接合継手本体7、7を嵌め入れるようにしている。このため、向かい合う鉄筋が重複するプレキャストコンクリート板であっても接合継手本体を用いて接合することができる。また、鉄筋を予め折り曲げているので、プレキャストコンクリート板の配置後であっても、接合継手本体を鉄筋に嵌め入れることができる。
【0044】
なお、プレキャストコンクリート板は、第1の実施例に示すように、端面33Aから鉄筋34A、34Bが露出する部位を内側に凹陥させて成型するようにしてもよい。このようにすることにより鉄筋34A、34Bの曲げ戻し作業がし易くなる。また、接合継手として、上記第1の実施例に係る接合継手5の接合継手本体7を用いるようにしているがこれに限られるものではなく、上記第2の実施例に係る接合継手25を用いるようにしてもよい。さらに、築造現場で鉄筋34A、34Bの曲げ戻し作業の空間が限られている場合、重複して向かい合う鉄筋34A、34Bを折り曲げないで、プレキャストコンクリート板32A、32Bの配置前に築造現場で鉄筋34A、34Bにそれぞれ接合継手本体7、27を嵌め入れるようにしてもよい。
【実施例4】
【0045】
次に、本発明の第4の実施例に係る鉄筋の接合構造について説明する。この第4の実施例に係る接合構造は、上記第1の実施例に係るプレキャストコンクリート板の接合方法における接合構造が鉄筋4A、4B、接合用鉄筋材4C、接合継手本体7および楔材10とにより構成され、接合用鉄筋材4Cが所定寸法でカットされた1本の棒状鉄筋であるのに対し、接合用鉄筋材40の構成が異なる点を除いて上記第1の実施例とほぼ同一の構成を備えている。すなわち、本実施例に係る接合構造は、図5の(A)ないし(C)に示すように、プレキャストコンクリート板42A〜42Cの本体から延長され、端部44Aa、44Ba、44Caが空隙を隔てて配置された鉄筋44A、44B、44Cに、接合用鉄筋材40を重ね合わせ、楔孔9を有するスリーブ状の接合継手本体7をこれら重ね合わされた鉄筋44A、44B、44Cと接合用鉄筋材40とに嵌め入れて収容し、楔孔9から楔材10を圧入し、接合用鉄筋材40を介してこれら鉄筋44A、44B、44Cを接合する鉄筋の接合構造である。
【0046】
この接合構造に用いられる接合用鉄筋材40は、寸法の異なる棒状鉄筋片の一端をそれぞれ折曲し、長寸の折曲部45Aと下肢部45Bとを備えた折曲鉄筋材45と、短寸の折曲部46Aと下肢部46Bとを備えた折曲鉄筋材46とを形成し、これら折曲鉄筋材45、46の折曲部45A、46Aの一部を溶接して形成される。接合用鉄筋材40は、下肢部46A、46Bと一方の折曲部45Aを、上記鉄筋44A、44B、44Cの端部44Aa、44Ba、44Caの配置に沿って延びるように形成される。この接合用鉄筋材40は、下肢部46A、46Bと一方の折曲部45Aが接合継手本体7に接合される接合用延長端となっている。このため、接合用鉄筋材40は、例えば、図5の(C)に示すように、隣り合うプレキャストコンクリート板42A、42B、42Cの端面から延長される鉄筋44A、44B、44Cが三方向から臨んで配置されていても単体の接合用鉄筋材40を用いて接合継手本体7により接合することができるようになっている。
【0047】
接合の方法は、三方から臨む鉄筋44A、44B、44Cの端部44Aa、44Ba、44Ca間の間隙が狭く、接合継手本体7を嵌め入れることができない場合、上記第1の実施例と同様にプレキャストコンクリート板42A〜42Cの配置前に、鉄筋44A、44B、44Cに接合継手本体7を嵌め入れ、その後、接合用鉄筋材40を端部44Aa、44Ba、44Caに配し、鉄筋が重なる部分に接合継手本体7を嵌め入れ楔材10を圧入して接合するようになっている。また、端部44Aa、44Ba、44Ca間の間隙が広く、接合継手本体7を嵌め入れることができる場合、プレキャストコンクリート板42A〜42Cの配置後、各鉄筋44A、44B、44Cに接合継手本体7を嵌め入れ、接合用鉄筋材40を端部44Aa、44Ba、44Caに配し、鉄筋が重なる部分に接合継手本体7を嵌め入れ楔材10を圧入して接合するようになっている。
【0048】
なお、上記接合用鉄筋材40は寸法の異なる棒状鉄筋片をそれぞれ折曲して溶接し、接合用延長端をT字状に三方に延長させているがこれに限られものではなく、溶接される折曲部を中心に接合用延長端を直線状にしてもよいし、多方向に延長してもよい。また、3次元空間に拡がるように延長してもよい。さらに、上記実施例では、寸法の異なる棒状鉄筋片をそれぞれ折曲して溶接するようにしているが、これに限られるものではなく、図6および図7に示すように、棒状鉄筋片51と棒状鉄筋片を折曲して形成した折曲鉄筋片52とを溶接し、接合用延長端50A、40B、50Cを三方に延長させ、鉄筋44A、44B、44Cと接合継手本体7を介して接合するようにしてもよい。
【0049】
図8の(A)、(B)および図9の(A)〜(C)はそれぞれ、上記接合用鉄筋材40の変形例を示すもので、図8の(A)、(B)の示す接合用鉄筋材60は、端部側が直角に臨む鉄筋64A、64Bに沿って配置されるように、折曲部65A、66Aと下肢部65B、66Bとを有する一対の折曲鉄筋材65、66を、両下肢部65B、66Bが直角となるように折曲部65A、66Aを溶接している。直角に延びる両下肢部65B、66Bが鉄筋64A、64Bと接合される接合用延長端となっている。図9の(A)〜(C)に示す接合用鉄筋材70は、端部側が平行に延びる鉄筋74A、74Bに沿って配置されるように、端部が弧状に曲げられて上方に折曲された折曲部75A、76Aと下肢部75B、76Bとを有する一対の折曲鉄筋材75、76を、両下肢部75B、76Bが平行となるように折曲部75A、76Aを溶接している。平行に延びる両下肢部75B、76Bが鉄筋74A、74Bと接合される接合用延長端となっている。
【実施例5】
【0050】
次に、本発明の第5の実施例に係るプレキャストコンクリート板の接合方法について説明する。本発明の第5の実施例に係るプレキャストコンクリート板の接合方法は、上記第1の実施例に係るプレキャストコンクリート板の接合方法が、延長方向が同一の隣り合うプレキャストコンクリート板2、2について接合するのに対し、図10の(A)、(B)に示すように、隣り合って配置された第1のプレキャストコンクリート板82A、82Bの間に、第2のプレキャストコンクリート板82Cが配置される点を除いて上記第1の実施例とほぼ同一の構成を有している。この第2のプレキャストコンクリート板82Cは、U字状筋90が突出して成型され、このU字状筋90の内側には、第1のプレキャストコンクリート板82A、82Bの互いに向き合う鉄筋84A−84B、85A−85B間を結ぶ線が配されるようになっている。すなわち、第2のプレキャストコンクリート板82Cの端面から延びるU字状筋90は、第1第2のプレキャストコンクリート板82A〜82Cが築造現場に配置された際、第1のプレキャストコンクリート板82A、82Bの互いに向き合う鉄筋84A−84B、85A−85Bの延長方向に直交して突出するようになっている。
【0051】
このように、本実施例に係るプレキャストコンクリート板の接合方法では、第1のプレキャストコンクリート板82A、82Bを、プレキャストコンクリート板82A、82Bが隣り合って配置された際、端部84Aa−84Ba、85Aa−85Ba同士が向かい合うように鉄筋84A−84B、85A−85Bを第1のプレキャストコンクリート板本体から延長させて成型するとともに(第1のステップS41)、第2のプレキャストコンクリート板82Cを、第1のプレキャストコンクリート板82A、82Bが隣り合って配置された際、隣り合う第1のプレキャストコンクリート板82A、82Bの鉄筋84A−84B、85A−85Bの延長方向に直交し鉄筋84A−84B、85A−85B間を結ぶ線が内側に配されるU字状筋90を第2のプレキャストコンクリート板本体から突出させて成型するようにしている(第2のステップS42)。U字状筋90は第2のプレキャストコンクリート板82Cの端面に沿って上下に多数設けられる。そして、これら第1第2のプレキャストコンクリート板82A〜82Cを設計プランに応じて築造現場に配置し、隣り合う第1のプレキャストコンクリート板82A、82Bの向かい合う鉄筋84A−84B、85A−85Bにそれぞれ接合継手本体7を嵌め入れる(第3のステップS43)。次に、接合継手本体7に棒状接合用鉄筋材86を挿入し、接合用鉄筋材86と鉄筋84A−84B、85A−85Bとが重なって収容された接合継手本体7の楔孔9に楔材10を圧入し接合用鉄筋材86と向かい合う鉄筋84A−84B、85A−85Bとを接合し、接合された鉄筋84A−84B、85A−85Bを第2のプレキャストコンクリート板82CのU字状筋90の内側に配置するようになっている(第4のステップS44)。このように、本実施例では、第2のプレキャストコンクリート板82CのU字状筋90の内側に、接合された鉄筋を配置した状態でプレキャストコンクリート板間にコンクリートを打設して接続することができる。
【0052】
なお、上記実施例では第2のプレキャストコンクリート板82CにU字状筋90を設けているが、U字状筋90に代えてループ状筋としてもよい。
【符号の説明】
【0053】
2 プレキャストコンクリート板
3 プレキャストコンクリート板本体
4A、4B 鉄筋
4Aa、4Ba 鉄筋の端部
4C 接合用鉄筋材
5 接合継手
7 接合継手本体
9 楔孔
10 楔材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合うプレキャストコンクリート板の本体から露出した鉄筋同士を接合継手により接合するプレキャストコンクリート板の接合方法であって、
接合継手を、内部に2本の鉄筋を重ねて収容するスリーブ状の本体と、このスリーブ状本体に形成された楔孔から重ねられた鉄筋間に圧入されてスリーブ状本体と鉄筋とを接合する楔材とを備えて構成し、
プレキャストコンクリート板を、プレキャストコンクリート板本体から鉄筋が露出する部位を内側に凹陥させて成型する第1のステップと、
隣り合うプレキャストコンクリート板の向かい合う鉄筋のうち少なくともいずれか一方に、接合継手本体を嵌め入れ凹陥部側に移動させる第2のステップと、
これら隣り合うプレキャストコンクリート板を設計プランに応じて配置して鉄筋の端部同士を向かい合わせ、接合継手本体に棒状接合用鉄筋材を挿入し、挿入された接合用鉄筋材とともに接合継手本体を向かい合う鉄筋の端部側に移動させる第3のステップと、
接合用鉄筋材と鉄筋とが重なって収容された接合継手本体の楔孔に楔材を圧入して接合する第4のステップとを有することを特徴とするプレキャストコンクリート板の接合方法。
【請求項2】
成型されたプレキャストコンクリート板配置時に、向かい合う鉄筋の端部間に接合継手本体が差し入れ可能なスペースがある場合、プレキャストコンクリート板の配置後に接合継手本体を鉄筋に嵌め入れることを特徴とする請求項1に記載のプレキャストコンクリート板の接合方法。
【請求項3】
接合継手本体は、鉄筋収容部の延長方向寸法が鉄筋一端部の接合性能を満たす長さを有して構成されるとともに、接合継手本体のほぼ中心に楔孔を形成し、接合時、向かい合う鉄筋の各端部にそれぞれ配置されることを特徴とする請求項1または2に記載のプレキャストコンクリート板の接合方法。
【請求項4】
接合継手本体は、鉄筋収容部が向かい合う鉄筋の両端部を跨いで収容しその延長方向寸法がこれら両端部の接合性能を満たす長さを有して構成されるとともに、接合継手本体の延長方向両側に楔孔を形成し、接合時、向かい合う鉄筋の両端部を跨いで配置されることを特徴とする請求項1または2に記載のプレキャストコンクリート板の接合方法。
【請求項5】
隣り合うプレキャストコンクリート板の本体から露出した鉄筋同士を接合継手により接合するプレキャストコンクリート板の接合方法であって、
接合継手を、内部に2本の鉄筋を重ねて収容するスリーブ状の本体と、このスリーブ状本体に形成された楔孔から重ねられた鉄筋間に圧入されてスリーブ状本体と鉄筋とを接合する楔材とを備えて構成し、
プレキャストコンクリート板を、プレキャストコンクリート板が隣り合って配置された際、向かい合う鉄筋の端部側が重複するように鉄筋をプレキャストコンクリート板本体から延長させて成型する第1のステップと、
隣り合うプレキャストコンクリート板の重複する鉄筋のうち少なくともいずれか一方を折り曲げる第2のステップと、
隣り合うプレキャストコンクリート板を設計プランに応じて配置する第3のステップと、
折り曲げにより端部同士が離れた鉄筋の端部から接合継手本体を嵌め入れてプレキャストコンクリート板本体側に移動させ、折り曲げられた鉄筋を元の延長方向に曲げ戻す第4のステップと、
接合継手本体を、プレキャストコンクリート板本体側から曲げ戻された鉄筋の端部側に引き戻して重なった鉄筋を収容し、両鉄筋が重なって収容された接合継手本体の楔孔に楔材を圧入して接合する第5のステップとを有することを特徴とするプレキャストコンクリート板の接合方法。
【請求項6】
プレキャストコンクリート板は、プレキャストコンクリート板本体から鉄筋が露出する部位を内側に凹陥させて成型されることを特徴とする請求項5に記載のプレキャストコンクリート板の接合方法。
【請求項7】
隣り合って配置されたプレキャストコンクリート板の本体から露出し端部間に空隙を有して向き合う鉄筋に、接合用鉄筋材を重ね合わせ、楔孔を有するスリーブ状接合継手本体をこれら重ね合わされた鉄筋と接合用鉄筋材とに嵌め入れて収容し、楔孔から楔材を圧入し、接合用鉄筋材を介してこれら鉄筋を接合する鉄筋の接合構造であって、
接合用鉄筋材を、棒状鉄筋片の一端を折曲した折曲鉄筋材を形成し、これら折曲鉄筋材同士または折曲鉄筋材と棒状鉄筋片とを溶接し、溶接部から単独で延びる接合用延長端部を上記鉄筋の端部の配置に沿うように構成したことを特徴とする鉄筋の接合構造。
【請求項8】
接合用鉄筋材は、2以上の鉄筋の端部に応じて接合用延長端部が形成されることを特徴とする請求項7に記載の鉄筋の接合構造。
【請求項9】
請求項7または8に記載の接合用鉄筋材を用いたことを特徴とする請求項1に記載のプレキャストコンクリート板の接合方法。
【請求項10】
隣り合うプレキャストコンクリート板の本体から露出した鉄筋同士を接合継手により接合するプレキャストコンクリート板の接合方法であって、
接合継手を、内部に2本の鉄筋を重ねて収容するスリーブ状の本体と、このスリーブ状本体に形成された楔孔から重ねられた鉄筋間に圧入されてスリーブ状本体と鉄筋とを接合する楔材とを備えて構成し、
第1のプレキャストコンクリート板を、プレキャストコンクリート板が隣り合って配置された際、端部同士が向かい合うように鉄筋をプレキャストコンクリート板本体から延長させて成型する第1のステップと、
第2のプレキャストコンクリート板を、第1のプレキャストコンクリート板が隣り合って配置された際、隣り合う第1のプレキャストコンクリート板の鉄筋の延長方向に直交し鉄筋間を結ぶ線が内側に配されるU字状筋またはループ状筋をプレキャストコンクリート板本体から突出させて成型する第2のステップと、
第1第2のプレキャストコンクリート板を設計プランに応じて配置し、隣り合う第1のプレキャストコンクリート板の向かい合う鉄筋のうち少なくともいずれか一方に、接合継手本体を嵌め入れる第3のステップと、
接合継手本体に棒状接合用鉄筋材を挿入し、接合用鉄筋材と鉄筋とが重なって収容された接合継手本体の楔孔に楔材を圧入し接合用鉄筋材と向かい合う鉄筋とを接合し、接合された鉄筋を第2のプレキャストコンクリート板のU字状筋またはループ状筋の内側に配置する第4のステップとを有することを特徴とするプレキャストコンクリート板の接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−196437(P2010−196437A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45781(P2009−45781)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(390022323)大成ユーレック株式会社 (5)
【Fターム(参考)】