説明

プレキャストコンクリート部材の製造方法

プレキャストコンクリート部材、特にタワーのセグメントの製造方法が提案される。コンクリートを、平面状の下面を形成するために、平面状の底面を有する成形型に流し込む。コンクリートが所定の最低強度に達した後、プレキャストコンクリート部材(100)の下面に対して反対側の継ぎ目面(110)上に、補正層を塗着する。その補正層が所定の最低強度に達するとすぐに、そのプレキャストコンクリート部材(100)を、正確に水平にセットされた面の上に置いて、上面上の補正層を平面平行に切削除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストコンクリート部材の製造方法と、プレキャストコンクリート部材と、風力発電設備とに関する。
【背景技術】
【0002】
セグメントプレキャスト部材またはプレキャストコンクリート部材に基づいて高いタワーを建設する場合は、製作公差のために、順次搭載していくべきプレキャストコンクリート部材が、相互に最適に適合していないという状況が生じる可能性がある。
【0003】
この問題を回避するため、通常、補正層、例えばモルタルを、建設現場においてプレキャストコンクリート部材の継ぎ目面またはフランジ上に塗着するが、この場合、この補正層はその建設現場において硬化させなければならない、すなわち、所定の最低強度に到達させなければならない。このため、特に、気象上の最低要件が継続する必要があり、この気象上の最低要件は補正層の材料によって定まる。この最低要件が維持されないと、あるいは、補正層が不適切にまたはずさんに塗着されていると、欠陥個所となるリスクまたは硬化が不十分になるリスクなどが生じる。
特許文献1は精密なプレキャストコンクリート部材の製造方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第10133607号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、プレキャストコンクリート部材からなるタワーの簡単かつ速やかな建設を、一定の高い品質において可能にするプレキャストコンクリート部材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は請求項1による方法によって達成される。
【0007】
すなわち、プレキャストコンクリート部材の製造方法が提案される。コンクリートは、平面状の下面を形成するために、平面状の底面を有する成形型に流し込まれる。コンクリートが所定の最低強度に達して、所定の最低強度を備えたプレキャストコンクリート部材が得られると、すぐに、硬化したプレキャストコンクリート部材の下面に対して反対側の継ぎ目面上に、補正層を塗着する。所定の最低強度を備えたプレキャストコンクリート部材を水平の平面の上に置いて、補正層を平面平行に切削除去する。
【0008】
このプレキャストコンクリート部材は、タワーのセグメントまたはタワーのセグメントの一部とすることができる。
【0009】
本発明の一実施態様によれば、補正層が合成樹脂である。
【0010】
本発明の別の一実施態様によれば、補正層の切削除去を、フライスユニットをX方向、Y方向およびZ方向に動かす移動装置を備えたフライスユニットによって行う。
【0011】
本発明のさらに別の一実施態様によれば、硬化したまたは最低強度を有する複数のプレキャストコンクリート部材であって、そのそれぞれの下面に対して反対側の継ぎ目面上に補正層を有する複数のプレキャストコンクリート部材を、水平の平面上に配列して、その補正層をフライスユニットによって平面平行に加工する。
【0012】
本発明は、同様に、上記の方式で製造されたプレキャストコンクリート部材に関し、さらに、同様に、複数の上記のプレキャストコンクリート部材を用いて建設されたタワー、特に風力発電設備のタワーに関する。
【0013】
本発明は、さらに、上記のタワーを備えた風力発電設備にも関する。
【0014】
本発明は、工場において前以て完成させたプレキャストコンクリート部材を想定するという考え方に基づいている。この場合、プレキャストコンクリート部材は工場内で平面平行に製造される。このため、プレキャストコンクリート部材の成形型は(正確に)水平に配置される。この場合、成形型の底面は(正確に)平坦に加工されているので、例えば、コンクリートを成形型の中に充填して、それが所定の最低強度に達するまでその型内に滞留させる流し込み操作において、正確に平坦なプレキャスト部材の下面が生成される。
【0015】
引き続いて、例えば合成樹脂の形態の補正層を、プレキャストコンクリート部材の平坦な下面に対して反対側の面に塗着する。この補正層が所定の最低強度に達すると、すぐに、この補正層を平面平行に切削除去する。その結果、プレキャストコンクリート部材のこの面は、プレキャスト部材の平坦な下面に平面平行になる。続いて、このプレキャストコンクリート部材を建設現場に輸送できる。
【発明の効果】
【0016】
プレキャストコンクリート部材が、すでに平面平行の継ぎ目面を有する状態で工場から出荷されるので、建設現場においてプレキャストコンクリート部材を再加工する必要はない。従って、プレキャストコンクリート部材を遅滞なくタワーに組み込むことが可能である。特に、補正材を装着するステップが省略されるので、欠陥源を生じる可能性が排除されると共に、建設現場における作業の進行も迅速になり、かつ、その作業の進行があまり天候に依存しない状況が作り出される。さらに、本発明による方法によって、プレキャストコンクリート部材の均等な品質を確保できる。全工程を含む生産が、品質保証を伴う管理された条件の下で工場内において行われるからである。さらにまた、建設現場における補正層の再加工または塗着が必要でなくなるので、プレキャストコンクリート部材のタワーへの組み立てをより速やかに実施できる。
【0017】
本発明のさらに別の実施態様が従属請求項の対象である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態によるプレキャストコンクリート部材と切削除去ユニットとの概略的な斜視図を示す。
【図2】第1実施形態によるプレキャストコンクリート部材と切削除去ユニットとの斜視図を示す。
【図3】図2の詳細斜視図を示す。
【図4】第1実施形態による複数のプレキャストコンクリート部材と切削除去ユニットとの別の斜視図を示す。
【図5】図4の詳細部分の斜視図を示す。
【図6】第2実施形態による建設段階におけるタワーの斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態および利点を、図面を参照して詳しく説明する。
【0020】
図1は、第1実施形態によるプレキャストコンクリート部材と切削除去ユニットとの斜視図を示す。プレキャストコンクリート部材100は継ぎ目面またはフランジ110を有しており、その上に補正層500が塗着されている。切削除去ユニット200は、第1実施形態に従って、フライスヘッド210および移動装置220を備えたフライスユニットとして構成されている。移動装置220は、Z方向に動かすためのZ移動装置221と、X方向に動かすためのX移動装置222と、Y方向に動かすためのY移動装置223とを有する。X、YおよびZ移動装置によってフライスヘッド210を正確に制御することができ、それによって、フライスヘッド210は、補正層が機械加工に必要な最低強度に達するとすぐに、プレキャストコンクリート部材100の継ぎ目面またはフランジ110上の補正層500を、継ぎ目面またはフランジ110が(正確に)平面平行になるように切削除去できる。
【0021】
補正層は、例えばエポキシ樹脂のような合成樹脂とするのが望ましく、プレキャストコンクリート部材100の継ぎ目面110上に塗着する。補正層が所定の最低強度に達した後、これを、フライスユニット200によって平面平行に切削除去する。この加工作業ステップは、正確に規定された条件の下で工場において実施することが望ましい。これによって、所望の品質の正確な再現可能性を保証できる。
【0022】
切削除去工程が完了した後、補正層は1〜5mmの層厚を有することができる。
【0023】
図2は、第1実施形態によるプレキャストコンクリート部材と切削除去ユニットとの斜視図を示す。この場合、プレキャストコンクリート部材100は、正確に水平にセットされた底面300の上に置かれる。切削除去ユニットまたはフライスユニット200は、X移動装置222とY移動装置223とZ移動装置221とを有する。Y移動装置223は2本の軌条を有しており、その軌条に沿って、フライスユニット200のキャリッジが動くことができる。X移動装置222は、Y移動装置223の軌条の間に横方向に延びる1本の軌条を有しており、フライスヘッド210がこの軌条に沿って動くことができる。フライスヘッド210はZ移動装置221に連結されており、この移動装置によって、フライスを、Z方向に、すなわち垂直に調整できる。
【0024】
図3は図2の詳細部分の斜視図を示す。図3においては、X移動装置222とZ移動装置221とフライスヘッド210とが表現されている。この場合、フライスヘッド210は、補正層500を所定限度まで切削除去する。プレキャスト部材のセグメントは平面状の底面上に置かれているので、底面に対して一定の間隔を維持するようにZ調整しながら補正材をフライスヘッド210で切削除去することによって、プレキャストコンクリート部材100の上面110上にある平面平行のフランジまたは平面平行の継ぎ目面が形成される。
【0025】
図4は、複数のプレキャストコンクリート部材と1つの切削除去ユニットとの別の斜視図を示す。図4においては、一部互いに嵌め込まれた複数のプレキャストコンクリート部材を見ることができる。これによって、合理的かつ速やかな切削除去工程が可能になる。プレキャストコンクリート部材は完全セグメントまたは部分セグメントとすることができる。(正確に)水平にセットされた平面300によって、すべてのプレキャスト部材が同時に平面平行に加工される。
【0026】
図5は図4の詳細斜視図を示す。
【0027】
本発明の第1実施形態によれば、補正層の平面平行の切削除去がすでに工場において行われる。例えばコンクリートを流し込む成形型によって、下面が正確に平面に形成されることを保証できる。これは、反対側の継ぎ目面または反対側のフランジを平面平行に加工するための基本的な前提条件である。
【0028】
図6は、第2実施形態による、セグメントから構成されるタワーの建設を示す斜視図である。図6においては、クレーン400を見ることができる。このクレーン400は、複数のプレキャストコンクリート部材100から構成されるタワーセクションを、すでに組み立てられた設置済みの2つのタワーセクションの上に載せようとしている。この場合、第2実施形態によるプレキャストコンクリート部材100は、第1実施形態によるプレキャストコンクリート部材に相当する。
【0029】
従って、プレキャストコンクリート部材の均等に高い品質が得られることを保証できる。その場合、プレキャストコンクリート部材の底面と、その継ぎ目面またはフランジとは互いに平面平行であるので、建設現場において2つのプレキャストコンクリート部材間に別の補正層を設ける必要はなく、部材を、上下に互いに正確に適合した状態で搭載することが可能になる。
【0030】
本発明のさらに別の実施形態によれば、プレキャスト部材を地下に沈めることが可能である。このためには、例えば、沈下可能な、または地下に沈めることができる昇降プラットホームを設けることができる。これは、このようにした場合に、複雑かつ高価なX、YおよびZ移動装置を設ける必要がないので特に有利である。従って、移動装置およびフライスユニットを小型に構成できる。場合によっては、切削するべきまたは切削されたプレキャスト部材を昇降プラットホームに載せる、あるいはそれから取り外し得るように、移動装置およびフライスユニットを動かすことができるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0031】
100 プレキャストコンクリート部材
110 継ぎ目面またはフランジ
200 切削除去ユニット
210 フライスヘッド
220 移動装置
221 Z移動装置
222 X移動装置
223 Y移動装置
300 底面
400 クレーン
500 補正層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレキャストコンクリート部材、特にタワーのセグメントの製造方法であって、次のステップ、すなわち、
平面状の下面を形成するために、平面状の底面を有する成形型にコンクリートを流し込み、所定の最低強度を備えたプレキャストコンクリート部材を得るために、そのコンクリートを所定の最低強度まで硬化させるステップと、
前記所定の最低強度を備えたプレキャストコンクリート部材(100)の前記下面に対して反対側の継ぎ目面(110)上に、補正層を塗着するステップと、
前記所定の最低強度を備えたプレキャストコンクリート部材(100)を水平の平面の上に置くステップと、
前記補正層を平面平行に切削除去するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記補正層が合成樹脂を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記補正層を切削除去するステップを、フライスユニットをX方向、Y方向およびZ方向に動かす移動装置(220)を備えたフライスユニット(200)によって行う、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
所定の最低強度を有する複数のプレキャストコンクリート部材(100)であって、そのそれぞれの下面に対して反対側の継ぎ目面(110)上に補正層を有する複数のプレキャストコンクリート部材(100)を、水平の平面(300)上に配列して、前記補正層を前記フライスユニットによって平面平行に加工する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法によって製造されたプレキャストコンクリート部材。
【請求項6】
請求項5に記載のプレキャストコンクリート部材を複数個用いて建設されたタワー、特に風力発電設備のタワー。
【請求項7】
平面平行に切削除去された補正層を有するタワー用プレキャストコンクリート部材、特にタワーのセグメント用プレキャスト部材。
【請求項8】
請求項6に記載のタワーを備えた風力発電設備。
【請求項9】
請求項7に記載の複数のタワー用プレキャストコンクリート部材からなるタワーを備えた風力発電設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−522713(P2011−522713A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502288(P2011−502288)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【国際出願番号】PCT/EP2009/002374
【国際公開番号】WO2009/121581
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(500017944)アロイス・ヴォベン (107)
【Fターム(参考)】