説明

プレストレストコンクリート構造物

【課題】屋根の構造に簡易な改良を加えることで、その内部から作用する高いガス圧によっても高耐久な屋根を実現でき、もって、その全体が高耐久で大容量貯蔵が可能な圧力容器を形成し得る、プレストレストコンクリート構造物を提供すること。
【解決手段】底版2と、円筒状もしくは略円筒状の側壁1と、該側壁1に剛結合される屋根3と、から少なくとも構成され、これらの構成部材の全てがプレストレストコンクリートからなるプレストレストコンクリート構造物である圧力容器10において、この屋根3は、底版2側に突の湾曲状を成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレストレストコンクリート構造物に係り、特に、液化ガスや高圧常温ガスなどを収用可能で、かつ大規模容量を実現可能な圧力容器に供されるプレストレストコンクリート構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、地球温暖化が世界的に共通の問題としてその解決を模索する世界会議や各種産業界の取り組みが活発化しており、2009年に開催された国連気候変動サミットにおいては、我が国首相が2020年までに温室効果ガス排出量を1990年比で25%削減するとの目標を掲げ、これが世界的に高い評価を得ている。ここで、「温室効果ガス」とは、二酸化炭素やメタン、一酸化二窒素、代替フロン等のことである。
【0003】
上記する温室効果ガス排出量の削減には、実際に温室効果ガスの排出量自体を低減することは勿論のこと、発生した温室効果ガスが大気放出されないことで地球温暖化の抑止に繋がることから、産業活動、家庭活動等で発生した温室効果ガスを大気中に放出しないことも上記する削減の概念に含まれている。
【0004】
温室効果ガスを大気中に放出しないための具体的な方策として、COを陸域や海域における地中貯留層に超臨界状態として注入する地中貯留方式や、水深1000m以上の海中へCO等を放出し、溶解希釈する海洋貯留方式などがその代表である。
【0005】
COを回収地から貯留地へ輸送する手段に関し、輸送する距離が短い場合は気体状態のままでパイプラインを用いて輸送する方式が適用でき、輸送距離が長い場合は液化COに変化させてタンカー輸送する方式が適用できる。そして、輸送されたCOは貯留地付近において超臨界流体へと変化され、陸域や海域の地中耐水層へ送り込まれてここで貯留されることになる。
【0006】
温室効果ガスの地中貯留への需要の高まりに応じて、上記する液化ガスを貯蔵するための大容量の圧力容器の需要も高まっている。なお、この「大容量」とは、10,000m程度もしくはこれ以上の容量規模を意味するものである。また、「圧力容器」とはたとえば、最大使用圧力が0.05Mpa以上の容器を意味するものである。
【0007】
この圧力容器に関し、これまで建設されてきた圧力容器はそのほとんどが鋼製であり、したがって、製造上および法規上の問題から貯蔵量の大容量化には自ずと限界があった(その理由は後述する)。一方、コンクリート製の圧力容器はほとんど存在していないものの、数少ない実績のすべてはLNGの地下タンクであり、このLNGの地下タンクの運転圧力は0.02〜0.03MPaであってそれほど大きな内圧を受けるものではない。
【0008】
これまでコンクリート製の圧力容器が建設されてこなかった原因の一つとして、特に高い内圧を受けるコンクリート製の圧力容器を設計しようとした際に、その構成要素である側壁や底版は従来のPCタンク(プレストレストコンクリート製タンク)と同様の構造を適用できるものの、高い上向きの圧力を受ける屋根の設計が難しいことである。
【0009】
このPCタンクに関する従来の公開技術は多岐に亘り、たとえばその代表として特許文献1,2に開示のプレストレストコンクリート構造物を挙げることができるが、これらに代表されるように、従来のプレストレストコンクリート構造物の屋根は、屋根自重に対して有利な構造である等の理由からそのすべてがドーム状であると言っても過言ではない。そして、このドーム状の屋根の下方から高いガス圧が作用すると、屋根には過度の引張力が卓越してしまい、コンクリート部材の場合では屋根自体の耐荷性能が著しく低下すること、また、構成部材の場合では屋根と側壁の接合部の耐荷性能が十分に担保できないなど、その耐荷性能や剛性を満足させるための設計は困難を極めるものであった。
【0010】
一方、鋼製部材によるCO貯蔵タンクの実績は1000m以下のものがほとんどであり、1000mを越えるものは少ない。そして、仮に鋼製CO貯蔵タンクの大容量を試みようとした場合には、厚肉鋼板の製造困難性や現場施工困難性といった問題、さらには国内規定などからその最大容量に一定の制限が課せられ得るといった問題が生じる。
上記する種々の制約、容量限界等を総合勘案し、上記する目標貯蔵容量である10,000m程度の大容量貯蔵を実現するために、本発明者等は、この容量規模を実現可能なコンクリート製タンクに再度注目し、従来構造ではその耐久や設計に困難を極めた屋根の構造に改良を加え、当該10,000m級の大容量のコンクリート製容器の設計および施工を実現可能な本発明のプレストレストコンクリート構造物に想到したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−148380号公報
【特許文献2】特開2001−324586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明のプレストレストコンクリート構造物は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、屋根の構造に簡易な改良を加えることで、その内部から作用する高いガス圧に対する耐荷性能を有する屋根を実現でき、もって、その全体が耐荷性能を有するとともに大容量貯蔵が可能な圧力容器を形成し得る、プレストレストコンクリート構造物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成すべく、本発明によるプレストレストコンクリート構造物は、底版と、円筒状もしくは略円筒状の側壁と、該側壁に剛結合される屋根と、から少なくとも構成され、これらの構成部材の全てがプレストレストコンクリートからなるプレストレストコンクリート構造物において、前記屋根は、底版側に突の湾曲状を成しているものである。
【0014】
本発明のプレストレストコンクリート構造物は、少なくとも、底版と、円筒状もしくは略円筒状の側壁と、該側壁の上端に剛結合される屋根(天井)から構成される圧力容器(圧力タンク)であり、これらの構成部材の全てがプレストレストコンクリートから形成されるものである。なお、底版は地盤上に直接支持される直接基礎形式であっても、杭などに支持される杭基礎形式であってもよい。さらに、側壁と屋根のみならず、底版と側壁も剛結合されるものであってよい。
【0015】
このプレストレストコンクリート構造物が収容対象とする内容物は、容器内で気液平衡状態を維持しながら、その一部は気化して液面と容器の屋根や側壁との間に充満する液化ガスや高圧常温気体ガスの全般であり、たとえば、液化COガスをはじめとする液化された各種の温室効果ガス、液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG)、液化窒素、高圧常温天然ガスなどを挙げることができる。なお、タンク内でその一部が気化しない水等の液体の収容に供されてもよいことは勿論のことである。
【0016】
屋根をプレストレストコンクリート製として側壁と剛結合させ、しかも、屋根の形状を底版側に突の湾曲状、すなわち従来構造のものとは反対の逆ドーム状としたことにより、屋根の下方から作用するガス圧に対して高剛性かつ高耐荷性能を有する屋根を実現することができる。
【0017】
すなわち、屋根下方からのガス圧の作用方向に対して屋根が突形状であることから、ガス圧による押し込まれと、その湾曲形状によるアーチ効果によって屋根には圧縮力が卓越し、圧縮性能に優れているというコンクリートの性能を効果的に活用することができるとともに、この圧縮作用によって屋根の曲げ耐力も向上する。なお、補足的に記載するに、従来構造のドーム状の屋根の場合には、上方に突形状の屋根の下方からガス圧が作用することで、屋根には引張力が卓越してしまい、これに起因して曲げ耐力が低下するものであった。さらには、この卓越した引張力に対して緊張材や鉄筋で抗しようとした際に、これらの部材を往々にして過密に配筋せざるを得ず、これが設計困難性の一つの要因となっていた。
【0018】
本発明のプレストレストコンクリート構造物が適用する屋根構造によれば、作用するガス圧によって屋根内に圧縮力を卓越させ、湾曲状であることからいわゆるアーチ効果に基づいて過度の曲げモーメントも生じ難いことより、緊張材や鉄筋等の配筋量も従来構造の屋根に比して格段に低減しながら、その高剛性と高耐荷性能が保証されるものである。
【0019】
また、プレストレストコンクリート製の屋根と側壁上端が剛結合であることより、屋根下方からのガス圧によるアップリフトに対する屋根の浮き上がりが抑止される。したがって、上記するようにガス圧に対して屋根自体に過度の断面力(特に曲げモーメント)が生じないこと、これに起因して屋根と側壁の接合部にも同様に過度の断面力が生じ得ないことに加えて、アップリフトに対する十分な剛性もしくは耐荷性能も保証される。
【0020】
なお、逆ドーム状の屋根を適用したことで該屋根には圧縮力が卓越することとなり、コンクリートの仕様(特に圧縮性能)を高めることによって、屋根の厚みを薄くすることも可能となる。また、上記するように従来構造の屋根に比してその緊張材量や鉄筋量を低減できることから、工費の大幅な削減を図ることも可能となる。
【0021】
ここで、「底版側に突の湾曲状」のより具体的な実施の形態として、以下の複数種を挙げることができる。
【0022】
その一つの形態は、この湾曲状が楕円体の一部を呈している形態であり、他の一つの形態は、この湾曲状が球面の一部(半球面を含む)を呈している形態である。
【0023】
ここで、「楕円体の一部」とは、屋根を縦断面で見た際に楕円の一部であることのほかに、平面で見た際に楕円であること、さらには、縦断面的に楕円の一部であると同時に平面的に楕円であること、のすべてを意味している。
【0024】
また、「球面の一部」とは、球体をその中心点を通る平面で切断した場合には半球面が形成されるが、球体をその中心角を通らない平面で切断した際にできる小さい方の切断球の曲面形状のことを意味している。
【0025】
また、側壁と屋根の接合部の強度を高めるべく、前記側壁の上端に円筒状もしくは略円筒状に延びる梁材、すなわちリング状の梁材が形成されており、該梁材と前記屋根が剛結合している形態であるのが好ましい。
【0026】
さらに、前記梁材には円筒状もしくは略円筒状に延びる緊張材が配されており、前記屋根には、その一端が該梁材に固定され、屋根の断面を斜めに貫通し、その他端が該屋根の下面で固定される緊張材が屋根の周方向に間隔を置いて配されている形態を適用できる。
【0027】
この屋根に配された緊張材により、特に屋根が側壁(の梁材)と接合する屋根端部における曲げモーメント(縦断面的に見た際に屋根端部で生じる曲げモーメント)や、屋根端部における周方向の引張力に抗し得る屋根端部構造が実現できる。
【発明の効果】
【0028】
以上の説明から理解できるように、本発明のプレストレストコンクリート構造物によれば、従来構造のものが採用していた、いわゆるドーム状屋根を上下反転させて、いわゆる逆ドーム状の屋根とした簡易な構造改良により、従来はその設計が困難であったプレストレストコンクリート製の屋根の設計を可能とし、もって、10,000m級もしくはこれ以上の規模の大容量な圧力容器の設計や施工を実現するものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のプレストレストコンクリート構造物にかかる圧力容器の一実施の形態を示した縦断面図である。
【図2】屋根の端部、側壁、底版内の緊張材の配設形態を示した縦断面図である。
【図3】液化COの性状図である。
【図4】屋根に作用するガス圧によって圧力容器の屋根および側壁に生じる曲げモーメントを示した図である。
【図5】(a)、(b)はそれぞれ、屋根の形状の実施の形態を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、図示するプレストレストコンクリート構造物において、側壁の下端には、側壁外側へテーパー状、もしくは多段状に張り出した部材厚が大きくなる部分が形成されたものであってもよい。また、図示する圧力容器内に収容される内容物は温室効果ガスの一種である液化COガスであるが、圧力容器内に収容された状態において、外部からの入熱等によってその一部が気化して気化ガスを発生させるその他の温室効果ガスの液化ガスや、液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG)、液化窒素、高圧常温気体ガスなどであってもよいことは勿論のことである。また、図面を明りょうとするべく、各構成部材内に配筋された鉄筋の図示は省略している。
【0031】
図1は、本発明のプレストレストコンクリート構造物にかかる圧力容器の一実施の形態を示した縦断面図であり、図2は、屋根の端部、側壁、底版内の緊張材の配設形態を示した縦断面図である。
【0032】
図示する圧力容器10は、地盤上に構築された底版2と、該底版2と剛結合される円筒状の一般部11とその上端に形成されたリング状の梁材12とから構成される側壁1と、この梁材12に剛結合される屋根3とから大略構成されており、これらの構成部材のすべてがプレストレストコンクリート製部材である。
【0033】
図示する圧力容器10において、その屋根3の形状は、縦断面で見て底版2側に突の湾曲状を呈しており、より詳細には、球面の一部の形状を呈していて、従来構造のいわゆるドーム状の屋根に対して、逆ドーム状の屋根と称することができるものである。
【0034】
側壁11の上端にリング状の梁材12を形成したことで、図示のごとき湾曲した逆ドーム状の屋根3とこの梁材12とを剛結合させることが容易となり、側壁1と屋根3の接続部の強度を確保することができる。なお、図示のごときリング状の梁材12を具備せず、側壁の一般部11の上端と屋根3が直接的に剛結合する構造であってもよいことは勿論のことである。
【0035】
また、図示例においては、屋根3の厚みをその中央部(厚み:t1)とその端部(厚み:t2)で変化させ、相対的に大きな断面力(曲げモーメント、せん断力)が生じ得る端部の厚みを厚くしている。
【0036】
さらに、図1にて一点鎖線で示すように、構造部材である屋根3の上方に、非構造部材であって屋根3に雨水が溜まるのを防止するための水溜まり防止屋根4が設けられてもよい。
【0037】
側壁1には、一般部11を貫通し、その一端が底版2内に定着され、その他端が梁材12の上端にて定着された鉛直方向の緊張材51(PC鋼棒、PC鋼線、PC鋼より線など)が配され、その外周には円周方向に延びる緊張材52が配され、これらにプレストレスが導入されて所望の圧縮力が側壁1に付与されている。なお、底版2にも、放射状もしくは井桁状の上下二段の緊張材54が配され、これらにプレストレスが導入されている。
【0038】
一方、リング状の梁材12にも、そのリング方向、すなわち円周方向に延設する緊張材53が配され、これにプレストレスが導入されている。
【0039】
また、屋根3には、その一端が梁材12に定着され、屋根3の断面を斜めに貫通するとともに、その他端が該屋根3の下面で定着される緊張材55(屋根端部の緊張材)が、屋根3の周方向に間隔を置いて配されており、これにプレストレスが導入されることで、特に屋根3の端部領域に所望の圧縮力が付与されている。なお、図示する緊張材55は、その他端が屋根3の下方内部に定着され、屋根3を斜めに貫通してその一端が片引きされ(X方向)、梁材12の表面にて定着されている。
【0040】
この圧力容器10内には、各種製造工場や家屋等から排気されたCOガスが圧縮されて液化し、体積が減じられた液化COLが収容され、この液面の上方には、その一部が気化してなるCOガスGが充満している。
【0041】
ここで、容器内に収容された液化COに関し、その温度と圧力によって変化する性状図を図3に示している。同図で示すように、一般に、COはその三重点B(およそ−50℃、およそ0.7MPa)以上の温度と圧力条件下で液化して液化COとなり、その臨界点A(およそ30℃、およそ7MPa)を超えると超臨界状態となって気体および液体双方の特徴を有することになる。
【0042】
圧力容器10内の最高使用圧力は、0.05MPa以上とする。より具体的には、液化COの貯留条件として、0.7±0.1MPa、−50℃、比重を1.138〜1.154程度の範囲となるように性状の調整が図られている。また、圧力容器10の内壁面には不図示の保冷材が配されているが、少なからず進入する外部からの入熱等によって液化COの一部が気化し、その液面上方ではCOガスが充満することになる。このガス圧(図1、図4の圧力P)が屋根3に内圧として作用すると同時に、側壁1や底版2へは液圧に付加される上載荷重として作用することになる。
【0043】
ここで、図4には、圧力容器10にCOガスによる内圧が作用した際に、屋根3と他の構成部材の特に側壁1に生じる軸線方向の曲げモーメントを示している。なお、理解を容易とするために、屋根3の軸線をL1、側壁1の軸線をL2、底版2の軸線をL3としている。
【0044】
図示する圧力容器10は、屋根3と側壁1、側壁1と底版2がともに剛結合にて接続していることから、屋根3の端部近傍には上引張の曲げモーメント(図中の正の曲げモーメント)が生じ、これが反転してその端部では下引張の曲げモーメント(図中の負の曲げモーメント)が生じ、側壁1の上端では、内側引張の曲げモーメント(図中の負の曲げモーメント)が生じ、側壁途中で反転を繰り返して、その下端では同様に内側引張の曲げモーメントが生じ得る。
【0045】
したがって、屋根3には、その端部で生じ得る比較例大きな正の曲げモーメントに抗するべく、該端部にて緊張材55が屋根断面の上方に配設される図示のような斜め方向の配設形態が適用される。
【0046】
なお、図示を省略するが、実際には、液化COによる静水圧やその上載荷重であるCOガス圧が側壁1に作用し、液化COによるヘッド圧やその上載荷重であるCOガス圧が底版2に作用し、これらの作用力と上記屋根3に作用するガス圧が考慮されて各構成部材に生じる曲げモーメント等が算定され、これに抗し得る断面設計、緊張材の設計がおこなわれることになる。
【0047】
いずれにせよ、圧力容器10を構成する屋根3が底版2側に突の湾曲状を呈していることにより、いわゆるアーチ効果によってこの屋根3には圧縮力が卓越し、これに起因して屋根3の曲げ耐力が向上する。
【0048】
この屋根の湾曲形状に関し、図5a、bには、図1で示す屋根3以外の実施の形態を示している。
【0049】
図5aで示す屋根3Aは、縦断面で見て横長の楕円状の一部の形状を呈するものである。この屋根3Aは、その平面視が円形であってもよいし、縦断面と同様に横長楕円状であってもよい。
【0050】
一方、図5bで示す屋根3Bは、縦断面で見て半球面形状を呈するものであり、図1で示す球面の一部よりもその湾曲の度合いの大きな屋根形状である。
【0051】
図示する本発明の圧力容器10では、その屋根の形状にバリエーションがあっても、いずれもその共通構成として、底版側に突の湾曲状を成しているものであり、その共通する作用効果としてアーチ効果が期待でき、下方から作用するガス圧によってその内部に圧縮力が卓越し、この圧縮力によってその曲げ耐力が向上するものである。
【0052】
そして、その構成は、従来のいわゆるドーム状を上下反転させただけの極めて簡易な構造改良によるものであり、この屋根の施工に際して施工コストが上昇することもなく、むしろ、屋根内部の圧縮力の卓越によってその内部に配設されるべき緊張材量や鉄筋量を低減させることも可能である。
【0053】
このように、工費を低減可能としながら、内部のガス圧に対して高い曲げ耐力を有するプレストレストコンクリート製の屋根を具備することで、この容器は10,000m級以上の容量規模の圧力容器となり得、その需要が高まっている温室効果ガス貯蔵用の大容量圧力容器として好適となる。
【0054】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0055】
1…側壁、11…一般部、12…梁材、2…底版、3,3A,3B…屋根、51,52,53,54…緊張材、55…屋根端部の緊張材、10…プレストレストコンクリート構造物(圧力容器)、L…液化CO、G…COガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底版と、円筒状もしくは略円筒状の側壁と、該側壁に剛結合される屋根と、から少なくとも構成され、これらの構成部材の全てがプレストレストコンクリートからなるプレストレストコンクリート構造物において、
前記屋根は、底版側に突の湾曲状を成している、プレストレストコンクリート構造物。
【請求項2】
前記湾曲状が楕円体の一部である、請求項1に記載のプレストレストコンクリート構造物。
【請求項3】
前記湾曲状が球面の一部である、請求項1に記載のプレストレストコンクリート構造物。
【請求項4】
前記湾曲状が半球面である、請求項3に記載のプレストレストコンクリート構造物。
【請求項5】
前記側壁の上端に円筒状もしくは略円筒状に延びる梁材が形成されており、該梁材と前記屋根が剛結合している、請求項1〜4のいずれかに記載のプレストレストコンクリート構造物。
【請求項6】
前記梁材には円筒状もしくは略円筒状に延びる緊張材が配され、
前記屋根には、その一端が該梁材に固定され、屋根の断面を斜めに貫通し、その他端が該屋根の下面で固定される緊張材が屋根の周方向に間隔を置いて配されている、請求項5に記載のプレストレストコンクリート構造物。
【請求項7】
前記プレストレストコンクリート構造物は液化ガスの収容に供され、該液化ガスは、その収容された状態においてその一部が気化してなる気化ガスによって屋根に上向きの内圧を作用させるものである、請求項1〜6のいずれかに記載のプレストレストコンクリート構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−251741(P2011−251741A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126707(P2010−126707)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000110011)トーヨーカネツ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】