説明

プレス加工品の外観検査方法とそれに用いる外観検査装置

【課題】材料の表面粗さ、色相などにより生じる縞模様や加工後のバリを外観不良として誤検出しない生産性の高い外観検査方法を提供する。
【解決手段】予め登録しておいた基準画像(s−1)と、n回目の検査対象物2の検査画像(n)との差異を比較して良否の判定を行う電子部品の外観検査方法であって、良品と判定された前記検査画像(n)のみを新たに基準画像(s)として順次更新登録するプレス加工品2の外観検査方法であり、良品の検査画像(n)を常に最新の基準画像(s)として次の検査画像(n+1)とを比較判定を行うため、同一ロット内で生じる経時的な緩やかな揺らぎを外観不良として誤検出しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス加工品の外観検査方法とそれに用いる外観検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プレス加工品や鋳造加工品などの外観検査を自動で行う方法として、従来はカメラなどを用いて検査対象品の画像を撮影し、その画像情報を二値化などの演算処理を施した後に、予め登録しておいた基準画像と比較することで良否の判定を行っていた。
【0003】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2001−337044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来方法では、予め登録しておいた基準画像と常に比較を行うため、原材料のロットにより生じる、例えば表面粗さに起因する検査対象物に生じる縞模様のばらつき、照明に起因する凹凸による陰影のばらつき、微小なバリなど、本来不良とは見なさない揺らぎを不良と判定しやすく、場合により熟練者が目視で再検査を行う必要があるなど、検査精度が低いという課題があった。
【0005】
そこで検査対象物にショットブラスト処理を行ってバリを除去し、さらに金型や材料ロット変更毎に基準画像を補正することで検査精度を高める方法が開発された。
【0006】
しかしながら、上記従来方法では、ロット内に生じる縞模様のばらつきや陰影のばらつきは補正することができない。さらに、同一の材料ロットにおける表面粗さや、照明の照度などは経時的に変化するため、一旦不良と判定されると以降の検査対象物は全て不良と判定されることとなり、その結果、検査精度が低くなるという課題があった。
【0007】
そこで本発明は検査精度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明に記載の発明は、予め登録しておいた基準画像と、検査対象物の検査画像との差異を比較して良否の判定を行う電子部品の外観検査方法であって、良品と判定された前記検査画像のみを新たな基準画像として順次更新登録するプレス加工品の外観検査方法であり、同一ロット内の検査画像に生じる縞模様や陰影のばらつきなどの経時的な緩やかな揺らぎを外観不良と判定することがないため、検査精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の外観検査方法は、基準画像と検査対象物の検査画像の比較処理を行い良品と判定した検査画像のみを、新たな基準画像として順次更新登録を繰り返し行うことで、常に最新の良品検査画像を基準画像として用いることができる。そのため、同一ロット内で生じる縞模様や色相などのばらつき、照明の経時変化に起因する陰影のばらつきなどの経時的な緩やかな揺らぎを外観不良として誤検出することがないため、その結果、検査精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明の一実施の形態におけるプレス加工品の外観検査方法とそれに用いる外観検査装置について説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施の形態における外観検査装置の構成図である。検査台1に載置された検査対象物2は、電源3に接続された蛍光灯やLEDからなる照明手段4により照明され、対物レンズ5を介して撮像手段6により撮像される。撮像手段6により撮像された検査対象物2の画像は、半導体メモリーやHDDなどの記録手段7に一旦保存される。記録手段7に保存された検査画像は、マイコンやDSPなどから構成される判定手段8で、所定の数の小領域に分割され、n回目の検査画像(n)を作成する。さらに判定手段8では、内部メモリー、あるいは記録手段7に予め良品画像として保存登録済みの最新の基準画像(s−1)を読み出し、前記のn回目の検査画像(n)と比較する。比較の方法としては、例えば所定の数の小領域に分割した後、各小領域毎にコントラストやブライトネスの平均値や最大値などを求め、基準画像(s−1)と検査画像(n)との間で相当する小領域の数値どうしを比較する。この数値が所定の閾値以下であれば良品、閾値を超えていれば不良品と判定する。外観検査の精度や検査対象物の大きさ、判定手段の処理能力を考慮し、小領域の分割数や、判定方法を随時変更する。検査画像(n)が良品の場合、この検査画像(n)を新たな基準画像(s)として更新登録し、次の検査画像(n+1)との良否判定を行う。検査画像が良品と判定される度に、上記のように検査画像を次の検査画像の良品判定を行う基準画像として更新するものである。
【0012】
良否判定後、判定手段8に接続されたPCなどのモニター9に判定結果は表示される。その後、検査対象物2はインデックス機能付のターンテーブル10で送り出され、新たな検査対象物2を検査位置へ移動させる。
【0013】
次に図2を用いて本発明の一実施の形態における外観検査方法を説明する。
【0014】
図2は処理フローの一例を示している。まず初めに外観検査を開始し(11)、プレス加工を行う材料を金型部へ供給する(12)。今回の供給がn回目のプレス加工とする。金型部へ供給された材料は圧延、絞り、打ち抜きなどのプレス加工が行われ、検査対象物であるプレス加工品2が製造される(13)。製造されたプレス加工品2は、図1に示した外観検査装置に搬送され、外観検査を行う所定の部位を撮像手段6により撮影し、その画像データは記録手段7へ出力され保存される(14)。そして記録手段7に保存された画像データは、所定の大きさおよび数量の小領域に分割され、n回目の検査画像(n)が作成される(15)。このとき、小領域の数量や大きさは検出すべき外観不良の内容や大きさ、判定手段8の処理能力を考慮して適宜決定する。
【0015】
次に判定手段8あるいは記録手段7などに予め登録保存された基準画像データライブラリ(25)から最新の基準画像(s−1)を判定手段8へ読み込む(16)。このとき、直前の外観検査、すなわち(n−1)回目の検査画像が良品だった場合、この(n−1)回目の検査画像が最新の基準画像(s−1)となる。次に(15)で作成したn回目の検査画像(n)と最新の基準画像(s−1)とを比較処理する(17)。そして、この比較処理にて基準画像(s−1)とn回目の検査画像(n)との差分を演算し、所定の閾値aを超えているかどうかを判定する(18)。閾値aを超えていない場合、判定手段8に備え付けたPCなどのモニター9の画面に良品表示を行う(19)。
【0016】
良品と判定されたn回目の検査画像(n)は、最新の基準画像(s)として基準画像データライブラリ(25)に登録される。このとき、基準画像データライブラリ(25)にハードディスクドライブやフラッシュメモリーなど大記憶容量のデバイスを用いた場合、前回登録の基準画像は消去せず、逐次最新の基準画像として追加登録していく。内部メモリーやシステム上記憶容量の小さいデバイスを用いた場合、前回登録の基準画像(s−1)を消去あるいは上書きして最新の良品判定された検査画像(n)に更新登録され、最新の基準画像(s)となる(20)。
【0017】
(18)の判定において、閾値aを超えている場合、検査画像(n)の小領域で不良箇所の抽出を行い(22)、不良の小領域を赤色などで表示する(23)。さらに、この検査画像(n)は不良であるため、画像のデータは消去し(24)、次の(n+1)回目の外観検査には、今回同様に基準画像(s−1)を用いて比較処理を行い良否判定する。この閾値aを、連続する検出画像に表れる経時的な緩やかな変化を不良と判定しない値に設定することで、突発的に発生する大きな不良のみを検出することが可能となる。
【0018】
上記のように、常に最新の良品検査画像を新たな基準画像として更新登録し、次の外観検査を行うことにより、同一ロット内の表面粗さ、色相、プレス位置などのばらつきによる経時的な緩やかな揺らぎを外観不良と判定しないため、検査精度を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の外観検査方法は、基準画像と検査対象物の検査画像の比較処理を行い良品と判定した検査画像のみを、新たな基準画像として順次更新登録を繰り返し行うことで、常に最新の良品検査画像を基準画像として用いることができる。そのため、同一ロット内で生じる縞模様や色相などのばらつき、照明の経時変化に起因する陰影のばらつきなどの経時的な緩やかな揺らぎを外観不良として誤検出することがないため、その結果、検査精度を高めることができるので、プレス加工品の外観検査等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態における外観検査装置の構成図
【図2】本発明の一実施の形態における外観検査方法の処理フロー図
【符号の説明】
【0021】
2 検査対象物
4 照明手段
6 撮像手段
7 記録手段
8 判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め登録しておいた基準画像と、検査対象物の検査画像との差異を比較して良否の判定を行う電子部品の外観検査方法であって、良品と判定された前記検査画像のみを新たな基準画像として順次更新登録するプレス加工品の外観検査方法。
【請求項2】
予め登録しておいた基準画像と、検査対象物の検査画像との差異を比較して良否の判定を行う電子部品の外観検査装置であって、前記検査対象物の検査対象面を照明する照明手段と、前記検査対象面を撮像し検査画像を出力する撮像手段と、前記検査画像を記録する記録手段と、前記検査画像と前記基準画像とを比較してその差異から良否を判定する判定手段を備え、良品と判定された前記検査画像のみを新たな基準画像として順次更新登録を繰り返す請求項1に記載のプレス加工品の外観検査装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−309729(P2007−309729A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−137543(P2006−137543)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】