説明

プレス用クッション材

【課題】表面平滑性に優れ、プレス斑のない平滑なプレス成形品が得られるプレス用クッション材を提供する。
【解決手段】布帛にウエブを積層させ、該布帛を構成する繊維と該ウエブを構成する繊維とを水流交絡処理により交絡させたプレス用クッション材とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧板、プリント基板などをホットプレス機により製造する際に使用するプレス用クッション材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、ホットプレス機によってプレス成形する際には、熱板と熱板との間にクッション材を挿入して、熱板の歪みを修正すると共に、プレスをする化粧版、プリント基板などに板面に圧力や熱が均一に加わるようにしている。
【0003】
従来、このようなクッション材としてはクラフト紙、フェルト材などが使用されている。しかしながら、クラフト紙は、通常10〜20枚重ねて使用するため、1回ごとに重ね合わせや破損紙の交換が必要であり作業性が悪いだけでなく、クラフト紙に皺が発生したり、重ね合わせが均一でなかったりするとプレス斑が発生し、プレス成形品の表面平滑性が悪くなることがある。また、フェルト材は、密度分布に斑が多く、やはりプレス斑が生じ、プレス成形品の表面平滑性が悪いという問題がある。
【0004】
一方、これに対して多重織物からなるプレスクッション材が提案されているが(特許文献1)、こうした織物、特に多重織物は表面の凹凸が大きく、これをプレスクッション材として用いた場合、表面平滑性の乏しいプレス成形品しか得られない。
【特許文献1】特公平8−17880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の欠点を解消するためになされたものであって、その目的は、表面平滑性に優れ、プレス斑のない平滑なプレス成形品が得られるプレス用クッション材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため検討したところ、織編物、特に多重織物などの繊維構造体にウエブを積層させ、これらを特定の方法で交絡させたものは織物などの表面の凹凸をなくし、プレス斑を生じない平滑な表面を実現できることがわかった。
【0007】
かくして、本発明によれば、布帛にウエブが積層してなり、該布帛を構成する繊維と該ウエブを構成する繊維とが水流交絡処理により交絡しているプレス用クッション材が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、表面平滑性に優れたプレス用クッション材を提供することができ、さらに該クッション材を用いることにより、プレス斑のない平滑な高品質のプレス成形品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のプレス用クッション材は、布帛とウエブからなるクッション材である。そして、本発明においては、布帛にウエブが積層しており、該布帛を構成する繊維と該ウエブを構成する繊維とが水流交絡処理によって交絡していることが肝要である。すなわち、本発明はかかる構造とすることにより、布帛表面の凹凸がウエブによって平坦化され、表面平滑性に優れたプレス用クッション材となり、該クッション材を用いてプレス成形したとき、プレス斑の無い平滑な成形品が得られることを見出しなされたものである。
【0010】
本発明に用いる布帛は、織物または編物、不織布などであるが、なかでも織物、特に多重織物がクッション性や耐久性などの点から好ましい。また、上記布帛は、あまり厚みが大き過ぎたり密度が高くなり過ぎたりすると、ウエブを積層して水流交絡処理させる際、水流が十分に通過せず、布帛を構成する繊維とウエブを構成する繊維とを十分に交絡させるのが難しくなる傾向にあるため、該布帛の通気性が、15cc/cm/sec以上であることが好ましく、20cc/cm/sec以上であることがより好ましい。なお、多重織物を採用する場合は、上記のクッション性と通気性を両立させる観点から3〜6重織物が好ましい。
【0011】
また、上記布帛は、耐熱性繊維からなる布帛であることが好ましく、アラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維のうちいずれかを、ウエブ重量に対して、好ましくは40%重量以上、より好ましく70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上含んでなる布帛であることが好ましい。上記繊維の繊度は、0.5〜10dtexが好ましく、1〜5dtexがより好ましい。
【0012】
さらに、上記布帛が織物または編物である場合は、上記繊維はマルチフィラメント糸であっても、紡績糸であってもよいが、ウエブとの交絡性からは紡績糸であることが好ましい。
【0013】
一方、本発明に用いるウエブも耐熱性繊維からなるウエブであることが好ましく、アラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維のうちいずれかを、ウエブ重量に対して、好ましくは40%重量以上、より好ましく70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上含んでなるウエブであることが好ましい。なお、上記のウエブに用いる繊維は、前述した布帛を構成する繊維と同じ種類の繊維であって、別の種類の繊維であってもかまわない。
【0014】
また、上記繊維は、水流交絡処理して布帛を構成する繊維と交絡させることを考慮し、繊度が、0.5〜5dtexであることが好ましく、1〜3dtexであることがより好ましく、繊維長が、5〜80mmであることが好ましく、10〜60mmであることがより好ましい。
【0015】
さらに、ウエブは、布帛の凹凸を無くし平滑性を付与するための薄いウエブでよいが、あまり薄すぎても水流交絡処理によってウエブの乱れが生じ、布帛全体を覆う均一なウエブの積層が困難となる。このため、ウエブの目付は好ましくは15〜50g/m、より好ましくは15〜30g/mであれば十分である。
【0016】
本発明のプレス用クッション材は、以上に説明した布帛とウエブとが積層し、該布帛を構成する繊維と該ウエブを構成する繊維とが水流交絡処理によって交絡してなるもの(以下、積層体と称することがある)であるが、かかる水流交絡処理により、前述した薄いウエブを布帛上に積層させた状態で、ウエブを構成する繊維を布帛表面の凹凸に入り込ませ、同時に該繊維と布帛と構成する繊維を十分に交絡させることができる。
【0017】
なお、本発明のプレス用クッション材は、上記積層体に樹脂が含浸またはコーティングされたものであってもよく、これにより該クッション材からの発塵を極めて少なくすることができる。
【0018】
上記樹脂としては、プレス用クッション材として用いることができる高圧に耐え得るものが好ましく、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニルスルホン樹脂、メラミン樹脂、シリコンアクリル樹脂、エポキシ樹脂などを好ましく採用することができる。
【0019】
以上に説明した本発明のプレス用クッション材は、前述したように布帛とウエブを水流交絡処理することによって製造することができる。この際、水流処理の水圧は、十分に布帛とウエブをそれぞれ構成する繊維を交絡させ、かつ水流筋が現われない程度の水圧とするのがよく、30〜90kg/cmが好ましい。
【0020】
また、得られた布帛とウエブとの積層体に樹脂を含浸またはコーティングする方法は、該積層体に樹脂をディップしたりスプレーしたりするなど公知の方法を採用することができる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。なお、本実施例で用いた試験方法を以下に示す。
(1)表面平滑性
KES−4法に準拠して測定し、「良好」、「不良」の2段階で評価した。
(2)通気性
JIS L1096法に準拠して測定した。
【0022】
[実施例1]
経糸にメタ型アラミド繊維(帝人テクノプロダクツ(株)製 コーネックス)の紡績糸10番手を2本合糸したものを、緯糸にメタ型アラミド繊維(帝人テクノプロダクツ(株)製 コーネックス)の紡績糸10番手を3本合糸したものをそれぞれ用い900g/mの3重織物を製織した。この3重織物の通気性は40.6cc/cm/secであった。
【0023】
この3重織物の上に、メタ型アラミド繊維(帝人テクノプロダクツ(株)製 コーネックス)の短繊維(繊度1.7dtex、繊維長51mm)からなる目付15g/mのカードウエブを積層した積層体をステンレスコンベア(100メッシュ)にのせ、該コンベアの速度3.3m/分として、高圧柱状水流処理装置(ノズル径0.13mm、ノズルピッチ1.0mm)を通過させ、水流圧50kg/cmで水流交絡処理し、積層体を得た。得られた積層体は、ウエブと3重織物をそれぞれ構成する繊維が十分に交絡しており、かつウエブを積層された面の表面平滑性は「良好」であった。
【0024】
上記積層体をプレス用クッション材として、ホットプレス機によるプリント回路基板の成形に用いた。この際、上記プレス用クッション材をプリント回路基板の上下にウエブを積層した面が該基板に接する側になるように設置して、プレス温度180℃、圧力9.8MPaとして10回(基板10枚)の成形を行った。得られたプリント回路基板はいずれも平滑な表面を有していた。また、目視による検査では、プレス用クッション材に若干の発塵はあったものの成形には問題のない範囲であった。
【0025】
[実施例2]
実施例1で得られた積層体に、エポキシ系樹脂(ナガセ化成(株)製 XNR7460)をディップ法により含浸し、120℃、1時間で熱硬化させ、これをプレス用クッション材とした。樹脂の付着量は、積層体100重量部に対して20重量部であった。得られた樹脂が含浸された積層体は、ウエブが積層された面の表面平滑性は「良好」であった。
【0026】
さらに実施例1と同様にしてプリント回路基板を成形したが、平滑な表面を有する基板が得られた。また、目視による検査では、樹脂が含浸されていることによりプレス用クッション材に発塵が全く認められなかった。
【0027】
[実施例3]
経糸にメタ型アラミド繊維(帝人テクノプロダクツ(株)製 コーネックス)の紡績糸10番手を2本合糸したものを、緯糸にメタ型アラミド繊維(帝人テクノプロダクツ(株)製 コーネックス)の紡績糸10番手を3本合糸したものをそれぞれ用い、目付100g/mの3重織物を製織した。この3重織物の通気性は25.2cc/cm/secであった。
【0028】
3重織物に代えて、上記の6重織物を用いた以外は実施例1と同様にして、積層体からなるプレス用クッション材を得た。得られた積層体は、ウエブと6重織物をそれぞれ構成する繊維が十分に交絡しており、かつウエブを積層された面の表面平滑性は「良好」であった。
【0029】
さらに実施例1と同様にしてプリント回路基板を成形したが、平滑な表面を有する基板が得られた。また、目視による検査では、プレス用クッション材に若干の発塵はあったものの成形には問題のない範囲であった。
【0030】
[実施例4]
実施例3で得られた積層体に、エポキシ系樹脂(ナガセ化成(株)製XNR7460)をディップ法により含浸し、120℃、1時間で熱硬化させ、これをプレス用クッション材とした。樹脂の付着量は、積層体100重量部に対して15重量部であった。得られた樹脂が含浸された積層体は、ウエブが積層された面の表面平滑性は「良好」であった。
【0031】
さらに実施例1と同様にしてプリント回路基板を成形したが、平滑な表面を有する基板が得られた。また、目視による検査では、樹脂が含浸されていることによりプレス用クッション材に発塵が全く認められなかった。
【0032】
[実施例5]
ウエブの目付を15g/mから50g/mに変更した以外は実施例1と同様にして、積層体からなるプレス用クッション材を得た。得られた積層体は、ウエブと6重織物をそれぞれ構成する繊維が十分に交絡しており、かつウエブを積層された面の表面平滑性は「良好」であった。
【0033】
さらに実施例1と同様にしてプリント回路基板を成形したが、平滑な表面を有する基板が得られた。また、目視による検査では、プレス用クッション材に若干の発塵はあったものの成形には問題のない範囲であった。
【0034】
[比較例1]
プレス用クッション材として、ウエブが積層されていない、目付が900g/cm、通気性が25.2cc/cm/secである3重織物のみを用いた。このクッション材は表面の凹凸が大きく、表面平滑性は「不良」であった。
【0035】
さらに実施例1と同様にしてプリント回路基板を成形したが、平滑な表面を有する基板が得られなかった。また、目視による検査では、プレス用クッション材に若干の発塵が認められた。
【0036】
[比較例2]
比較例1で用いた3重織物に、エポキシ系樹脂(ナガセ化成(株)製 XNR7260)をディップ法により含浸し、120℃、1時間で熱硬化させ、これをプレス用クッション材とした。樹脂の付着量は、積層体100重量部に対して20重量部であった。このクッション材の表面平滑性は「良好」であった。
【0037】
さらに実施例1と同様にしてプリント回路基板を成形したが、平滑な表面を有する基板は得られなかった。また、目視による検査では、樹脂が含浸されていることによりプレス用クッション材に発塵が全く認められなかった。
【0038】
[比較例3]
プレス用クッション材として、目付が950g/cm、通気性が10.2cc/cm/secである、メタ型アラミド繊維(帝人テクノプロダクツ(株)製 コーネックス)の短繊維(繊度1.7dtex、繊維長51mm)からなるフェルトを用いた。このクッション材の表面平滑性は「不良」であった。
【0039】
さらに実施例1と同様にしてプリント回路基板を成形したが、平滑な表面を有する基板が得られなかった。また、目視による検査では、プレス用クッション材に発塵が認められた。
【0040】
[比較例4]
経糸にメタ型アラミド繊維(帝人テクノプロダクツ(株)製 コーネックス)の紡績糸10番手を2本合糸したものを、緯糸にメタ型アラミド繊維(帝人テクノプロダクツ(株)製 コーネックス)の紡績糸10番手を3本合糸したものをそれぞれ用い、目付100g/mの8重織物を製織した。この3重織物の通気性は13.3cc/cm/secであった。
【0041】
3重織物に代えて上記の8重織物を用い、実施例1と同様にして、これにウエブを積層し高圧柱状水流処理装置を用いて水流交絡処理して積層体を成形しようとしたが、ウエブと8重織物をそれぞれ構成する繊維を十分に交絡させることができず、積層体を得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、本発明によれば、表面平滑性に優れたプレス用クッション材を提供することができ、さらに該クッション材を用いることにより、プレス斑のない平滑な高品質のプレス成形品を得ることができる。このため、その産業上の利用価値が極めて高いものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛にウエブが積層し、該布帛を構成する繊維と該ウエブを構成する繊維とが水流交絡処理によって交絡しているプレス用クッション材。
【請求項2】
布帛が織物である請求項1に記載のプレス用クッション材。
【請求項3】
織物が多重織物である請求項2に記載のプレス用クッション材。
【請求項4】
ウエブが、アラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維のうちいずれかをウエブ重量に対して40重量%以上含んでなるウエブである請求項1〜3のいずれかに記載のプレス用クッション材。
【請求項5】
布帛が、アラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維のうちいずれかを繊維構造体重量に対して40重量%以上含んでなる布帛である請求項1〜4のいずれかに記載のプレス用クッション材。
【請求項6】
ウエブの目付が15〜80g/mである請求項1〜5のいずれかに記載のプレス用クッション材。
【請求項7】
布帛の通気性が15cc/cm/sec以上である請求項1〜6のいずれかに記載のプレス用クッション材。

【公開番号】特開2007−203313(P2007−203313A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−22363(P2006−22363)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(303013268)帝人テクノプロダクツ株式会社 (504)
【Fターム(参考)】