説明

プレス装置

【課題】比較的低出力のヒータにて、高い温度上昇速度で熱盤を加熱可能なプレス装置を提供する。
【解決手段】プレス装置が、複数の温調部のいずれか一つを熱盤内管路に接続することによって熱媒の主循環経路内を形成するものと、複数の温調部のいずれか一つを熱盤内管路に選択的に接続する切換手段と、熱盤内管路に接続すべき温調部を選択する選択手段とを有し、複数の温調部の夫々は、熱盤内管路の出入口と接続可能な熱盤外管路と、熱盤外管路内に配置され熱媒を加熱するヒータと、熱盤外管路内に配置され熱媒を輸送するポンプを有し、各温調部の熱盤外管路内の熱媒が夫々異なる設定温度に維持されるよう制御されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を加熱プレスして樹脂成形製品を製造するプレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路基板やICプラスチックカード等の板状の樹脂成形製品を製造するために、特許文献1に記載されているもののようなプレス装置が使用される。プレス装置は、温度調整された少なくとも2枚の熱盤を有し、この熱盤間で、樹脂シートや銅箔などを積層した被加工物を加熱プレスして樹脂成形製品を製造する。
【0003】
熱盤の温度を調整する方法としては、熱盤内に管路を形成し、この管路を含む循環経路内に温度調整された熱媒を循環させる方法等がある。熱媒の加熱は、循環経路内に設けられたヒータに熱媒を通すことによって行われる。加熱時の熱盤の温度調整は、ヒータの出力を調整することによって行われる。熱盤の冷却は、循環経路内を循環する熱媒の一部をクーラに通すことによって行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−197044号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来のプレス装置においては、熱盤の温度を調整する際は、熱盤自身に加えて、循環経路内を流れる全ての熱媒、ヒータ及び熱媒を循環させるポンプの温度を変化させることになる。すなわち、熱盤を加熱する際は、熱盤自身を加熱させるためのエネルギに加え、熱媒、ヒータ及びポンプを加熱するためのエネルギを必要とする。
【0006】
このように、従来のプレス装置においては、ヒータが生成する熱エネルギの一部が、熱媒、ヒータ及びポンプを加熱するために使用されてしまうため、高い加熱速度で熱盤を加熱しようとする場合は、熱盤の熱容量に対して十分に出力の高いヒータを必要とする。
【0007】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものである。すなわち、本発明は比較的低出力のヒータにて、高い温度上昇速度で熱盤を加熱可能なプレス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明のプレス装置は、複数の温調部であってそのいずれか1つを熱盤内管路に接続することによって熱媒の主循環経路内を形成するものと、複数の温調部のいずれか1つを熱盤内管路に選択的に接続する切換手段と、熱盤内管路に接続すべき温調部を選択する選択手段とを有し、複数の温調部の夫々は、熱盤内管路の出入口と接続可能な熱盤外管路と、熱盤外管路内に配置され熱媒を加熱するヒータと、熱盤外管路内に配置され熱媒を輸送するポンプを有し、各温調部の熱盤外管路内の熱媒が夫々異なる設定温度に維持されるよう制御されている。
【0009】
好ましくは、温調部が前記設定温度が夫々第1の温度及び第1の温度よりも高い第2の温度に設定されている第1及び第2の温調部を有し、選択手段は、第1の温調部が前記熱盤内回路に接続されて所定時間が経過した後に、第2の温調部を前記接続すべき温調部として選択する。
【0010】
さらに好ましくは、温調部が少なくとも3つの温調部を有し、第1及び第2の温調部以外の温調部の設定温度が、1の温度よりも低いか第2の温度よりも高い温度に設定されている。
【0011】
また、温調部が、熱盤外管路のヒータ及びポンプの上流側と下流側をバイパスするバイパス管を有し、選択手段によって選択されていない温調部内の熱媒は、熱盤外管路と前記バイパス管とによって形成される副循環経路内を循環するよう構成することが好ましい。
【0012】
より好ましくは、バイパス管の中途には開閉弁が設けられており、選択手段は、開閉弁を制御して、選択された温調部のバイパス管に熱媒が流れないようにする構成とする。
【0013】
また、複数の温調部のうち設定温度が最も低いものは、その熱盤外管路を流れる熱媒を冷却するためのクーラを有する構成とすることが好ましい。
【0014】
また、選択手段は、熱盤を冷却するときは、設定温度が最も低い温調部を前記熱盤内管路に接続すべき温調部として選択する構成とすることがより好ましい。
【0015】
さらに好ましくは、前記選択手段は、熱盤を冷却するときは、選択された温調部のヒータを停止する。
【発明の効果】
【0016】
上記のように、本発明のプレス装置は、熱媒を加熱しながら循環させるための温調部を複数有する。そして、検出された熱盤の温度に基づいて、温調部の温度変化が小さくなるよう熱盤の熱盤内管路と接続する温調部を選択することにより、温調部自身を加熱するために消費される熱エネルギの量を低く抑えることが可能となる。このため、ヒータから出力される熱エネルギの多くは熱盤の加熱の為に使用されることになり、比較的低出力のヒータであっても高い温度上昇速度で熱盤を加熱することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施の形態のプレス装置の回路図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態のプレス装置を用いて被加工物の加熱プレスを行う手順を示したフロー図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態のプレス装置において、熱盤を低い温度に加熱する際の状態を示す回路図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態のプレス装置において、熱盤を中程度の温度に加熱する際の状態を示す回路図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態のプレス装置において、熱盤を高い温度に加熱する際の状態を示す回路図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態のプレス装置において、熱盤を冷却する際の状態を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態のプレス装置の回路図である。本実施形態のプレス装置1は、テーブル定盤61とクラウン定盤62の間に複数の熱盤63、64及び65が配置されたものであり、各熱盤の間に被加工物を差し込み、テーブル定盤61を図示しない駆動機構(油圧シリンダ機構など)によって上昇させて熱盤同士を近接させて、熱盤間で被加工物を加熱プレスする装置である。本実施形態のプレス装置1は、テーブル定盤61上に固定された下部熱盤63と、クラウン定盤62の下に固定された上部熱盤64と、下部熱盤63と上部熱盤64との間に配置された中間熱盤65を有する、いわゆる多段プレス装置であり、一度に複数組の被加工物を加熱プレスすることができるようになっている。なお、図1においては、中間熱盤65は1枚しか示されていないが、上部熱盤64と下部熱盤63の間に複数枚の中間熱盤65を上下に並べて配置することも可能である。
【0019】
熱盤63〜65の内部には、蛇行する熱盤内管路63a〜65aが設けられている。熱盤内管路63a〜65aの入口は、熱盤の外側に配置されている熱媒分岐部43と接続されている。同様に、熱盤内管路63a〜65aの出口は、熱盤の外側に配置されている熱媒合流部44と接続されている。
【0020】
図1に示されるように、熱媒分岐部43及び熱媒合流部44は、高温温調部10、中温温調部20、及び低温温調部30と接続されている。
【0021】
高温温調部10は、ポンプ11及び外部ヒータシステム12を有している。ポンプ11は、熱媒合流部44に接続されている上流側管路14から、熱媒分岐部43に接続されている下流側管路13へ熱媒を輸送することできるようになっている。外部ヒータシステム12は、ポンプ11の上流側に配置されており、プレス装置1のコントローラ51は、上流側管路14から下流側管路13に向かって流れる熱媒の温度(設定温度)が、300から400℃の間に定められる高温設定温度に維持されるよう、外部ヒータシステム12の出力を制御している。なお、高温設定温度の高さは、被加工物の材質や形状等から決まる成形プロファイルに応じて、適宜設定変更可能となっている。
【0022】
下流側管路13及び上流側管路14の中途には、夫々下流側開閉弁SV11及び上流側開閉弁SV13が設けられている。下流側開閉弁SV11及び上流側開閉弁SV13が開いている状態では、外部ヒータシステム12によって温度調整された熱媒は、下流側管路13及び熱媒分岐部43を介して熱盤内管路63a〜65aに輸送されて熱盤を加熱した後、熱媒合流部44及び上流側管路14を介して外部ヒータシステム12に戻る。すなわち、下流側開閉弁SV11及び上流側開閉弁SV13が開いて熱盤内管路63a〜65aに高温温調部10が接続された状態では、熱盤内管路63a〜65a及び高温温調部10によって形成される主循環経路内を、外部ヒータシステム12によって温度調整された熱媒が循環し、熱盤の加熱が行われる。
【0023】
また、下流側管路13において下流側開閉弁SV11とポンプ11の間と、上流側管路14において上流側開閉弁SV13と外部ヒータシステム12との間には、バイパス管15が設けられている。また、バイパス管15の中途には、バイパス用開閉弁SV12が設けられている。下流側開閉弁SV11及び上流側開閉弁SV13が閉じ、且つバイパス用開閉弁SV12が開いている状態では、ポンプ11によって輸送される熱媒は、熱媒内管路63a〜65aには向かわず、バイパス管15を通って外部ヒータシステム12に戻る。すなわち、この状態では、熱媒はバイパス管15を含む副循環経路内を循環することになる。この状態では、循環する熱媒から装置外部へ移動する熱の量は小さく、熱媒の温度を高温に維持するために必要な外部ヒータシステム12の出力は低く抑えられる。
【0024】
中温温調部20は、ポンプ21及び外部ヒータシステム22を有している。ポンプ21は、熱媒合流部44に接続されている上流側管路24から、熱媒分岐部43に接続されている下流側管路23へ熱媒を輸送することできるようになっている。外部ヒータシステム22は、ポンプ21の上流側に配置されており、コントローラ51は、上流側管路24から下流側管路23に向かって流れる熱媒の温度(設定温度)が、100〜200℃の間に定められる中温設定温度に維持されるよう、外部ヒータシステム22を制御している。なお、中温設定温度の高さは、被加工物の材質や形状等から決まる成形プロファイルに応じて、適宜設定変更可能となっている。
【0025】
下流側管路23及び上流側管路24の中途には、夫々下流側開閉弁SV21及び上流側開閉弁SV23が設けられている。下流側開閉弁SV21及び上流側開閉弁SV23が開いている状態では、外部ヒータシステム22によって温度調整された熱媒は、下流側管路23及び熱媒分岐部43を介して熱盤内管路63a〜65aに輸送されて熱盤を加熱した後、熱媒合流部44及び上流側管路24を介して外部ヒータシステム22に戻る。すなわち、下流側開閉弁SV21及び上流側開閉弁SV23が開いて熱盤内管路63a〜65aに中温温調部20が接続された状態では、熱盤内管路63a〜65a及び中温温調部20によって形成される主循環経路内を、外部ヒータシステム22によって温度調整された熱媒が循環し、熱盤の加熱が行われる。
【0026】
また、下流側管路23において下流側開閉弁SV21とポンプ21の間と、上流側管路24において上流側開閉弁SV23と外部ヒータシステム22との間には、バイパス管25が設けられている。また、バイパス管25の中途には、バイパス用開閉弁SV22が設けられている。下流側開閉弁SV21及び上流側開閉弁SV23が閉じ、且つバイパス用開閉弁SV22が開いている状態では、ポンプ21によって輸送される熱媒は、熱媒内管路63a〜65aには向かわず、バイパス管25を通って外部ヒータシステム22に戻る。すなわち、この状態では、熱媒はバイパス管25を含む副循環経路内を循環することになる。この状態では、循環する熱媒から装置外部へ移動する熱の量は小さく、熱媒の温度を注程度の温度に維持するために必要な外部ヒータシステム22の出力は低く抑えられる。
【0027】
低温温調部30は、ポンプ31及び外部ヒータシステム32を有している。ポンプ31は、熱媒合流部44に接続されている上流側管路34から、熱媒分岐部43に接続されている下流側管路33へ熱媒を輸送することができるようになっている。外部ヒータシステム32は、ポンプ31の上流側に配置されており、プレス装置1のコントローラ51は、上流側管路34から下流側管路33に向かって流れる熱媒の温度(設定温度)が、50〜100℃の間に定められる低温設定温度に維持されるよう、外部ヒータシステム32の出力を制御している。なお、低温設定温度の高さは、被加工物の材質や形状等から決まる成形プロファイルに応じて、適宜設定変更可能となっている。
【0028】
下流側管路33及び上流側管路34の中途には、夫々下流側開閉弁SV31及び上流側開閉弁SV33が設けられている。下流側開閉弁SV31及び上流側開閉弁SV33が開いている状態では、外部ヒータシステム32によって温度調整された熱媒は、下流側管路33及び熱媒分岐部43を介して熱盤内管路63a〜65aに輸送されて熱盤を加熱した後、熱媒合流部44及び上流側管路34を介して外部ヒータシステム32に戻る。すなわち、下流側開閉弁SV31及び上流側開閉弁SV33が開いて熱盤内管路63a〜65aに低温温調部30が接続された状態では、熱盤内管路63a〜65a及び低温温調部30によって形成される主循環経路内を、外部ヒータシステム32によって温度調整された熱媒が循環し、熱盤の加熱が行われる。
【0029】
また、下流側管路33において下流側開閉弁SV31とポンプ31の間と、上流側管路34において上流側開閉弁SV33と外部ヒータシステム32との間には、バイパス管35が設けられている。また、バイパス管35の中途には、バイパス用開閉弁SV32が設けられている。下流側開閉弁SV31及び上流側開閉弁SV33が閉じ、且つバイパス用開閉弁SV32が開いている状態では、ポンプ31によって輸送される熱媒は、熱媒内管路63a〜65aには向かわず、バイパス管35を通って外部ヒータシステム32に戻る。すなわち、この状態では、熱媒はバイパス管35を含む副循環経路内を循環することになる。この状態では、循環する熱媒から装置外部へ移動する熱の量は小さく、熱媒の温度を低温に維持するために必要な外部ヒータシステム32の出力は低く抑えられる。
【0030】
また、上流側管路34において外部ヒータシステム32と上流側開閉弁SC33との間には分岐管38が設けられている。同様に、ポンプ31と外部ヒータシステム32との間の配管にも、分岐管37が設けられている。分岐管38は、クーラ39の入口に接続され、分岐管37は、クーラ39の出口に接続されている。また、分岐管38が上流側管路34から分岐する部分には、三方切換弁SV34が設けられている。三方切換弁SV34は、上流側管路34を流れる熱媒を外部ヒータシステム32とクーラ39のどちらに送るのかを切り換えるための弁である。熱媒が外部ヒータシステム32に送られているときは、熱媒はその温度が低温に維持されるよう加熱される一方、熱媒がクーラ39に送られているときは、熱媒は冷却される。
【0031】
以上説明した温調部10、20及び30の開閉弁SV11〜13、SV21〜23、SV31〜33、並びに温調部30の三方切換弁SV34は、コントローラ51によって制御されるようになっている。コントローラ51は、被加工物の加熱プレスを行う際に、プレス装置1の熱盤に設けられた温度センサの計測結果に基づいてこれらの弁を制御し、熱盤が所望の温度変化をするよう調整する。以下、その方法について説明する。
【0032】
図2は、本実施形態のプレス装置1によって被加工物の加熱プレスを行い、樹脂成形製品を成形するための手順を示したフロー図である。以下、このフロー図に基づいて加熱プレスの手順を説明する。なお、以下の例においては、被加工物を構成する樹脂材料は、約150℃で軟化開始し、約300℃で硬化開始するものであるため、中温設定温度を170℃、高温設定温度を320℃としている。また、低温設定温度は、プレス装置1の雰囲気温度(約30℃)と中温設定温度の略中間の100℃に設定されている。
【0033】
最初に、熱盤63、64及び65の間に被加工物を搬入する(ステップS1)。次に、テーブル定盤61を上昇させ、熱盤間に被加工物が挟み込まれるようにする(ステップS2)。この時、被加工物に加えられる圧力は、熱盤と被加工物とが軽く接触する程度とし、過度の圧力で軟化する前の被加工物に過度の圧力が加わって破損しないようにする。
【0034】
次いで、熱盤内回路63a〜65aに低温温調部30を接続する(ステップS3)。この時、低温温調部10の三方切換弁SV4は、上流側管路34を流れる熱媒が外部ヒータシステム32を通過するように切り換えられている。すると、図3に示されるように、低温温調部30の外部ヒータシステム32によって加熱された熱媒が、低温温調部30を含む主循環経路MR1(太線部)を循環し、この熱媒によって熱盤は低温設定温度まで加熱される。
【0035】
なお、この時、高温温調部10の開閉弁SV11及びSV13は閉じ、且つSV12は開いており、ポンプ11によって輸送される熱媒は副循環経路SR1(太線部)を循環している。同様に、中温温調部20の開閉弁SV21及びSV23は閉じ、且つSV22は開いており、ポンプ21によって輸送される熱媒は副循環経路SR2(太線部)を循環している。
【0036】
コントローラ51は、熱盤内回路63a〜65aに低温温調部30を接続後の経過時間を内蔵されたタイマによって計測している。そして、コントローラ51は、タイマによって計測された時間が熱盤の熱容量及び被加工物の特性によって決まる第1の時間に達した後、被加工物全体が低温設定温度まで加熱されたものと判断し、低温温調部30の開閉弁SV31及びSV33を閉じ、また、開閉弁SV32を開け、低温温調部30を熱盤内回路63a〜65aから遮断する。そして、中音温調部20を熱盤内回路63a〜65aに接続する(ステップS4)。すると、図4に示されるように、中温温調部20の外部ヒータシステム22によって加熱された熱媒が、中温温調部20を含む主循環経路MR2(太線部)を循環し、この熱媒によって熱盤は中温設定温度まで加熱される。そして、熱盤によって中温設定温度に加熱された被加工物は軟化する。
【0037】
なお、この時、高温温調部10の開閉弁SV11及びSV13は閉じ、且つSV12は開いているため、ポンプ11によって輸送される熱媒は副循環経路SR1を循環している。同様に、低温温調部20の開閉弁SV31及びSV33は閉じ、且つSV32は開いているため、ポンプ31によって輸送される熱媒は副循環経路SR3(太線部)を循環している。
【0038】
コントローラ51は、熱盤内回路63a〜65aに中温温調部20を接続後の経過時間を内蔵されたタイマによって計測している。そして、コントローラ51は、タイマによって計測された時間が熱盤の熱容量及び被加工物の特性によって決まる第2の時間に達した後、被加工物全体が中温設定温度に達して十分に軟化したものと判断し、コントローラ51は、テーブル定盤61を駆動し、被加工物のプレスを開始する(ステップS5)。このプレスを行っている最中は、被加工物に加わる圧力が所定のプレス圧に維持されるよう、コントローラ51はテーブル定盤61の駆動機構を制御する。
【0039】
次に、コントローラ51は、中温温調部20の開閉弁SV21及びSV23を閉じ、また、開閉弁SV22を開け、中温温調部20を熱盤内回路63a〜65aから遮断する。そして、高温温調部10を熱盤内回路63a〜65aに接続する(ステップS6)。すると、図5に示されるように、高温温調部10の外部ヒータシステム12によって加熱された熱媒が、高温温調部10を含む主循環経路MR3(太線部)を循環し、この熱媒によって熱盤は高温設定温度まで加熱される。この結果、被加工物は加熱プレスされ、樹脂成形製品が成形される。
【0040】
次に、コントローラ51は、高温温調部10の開閉弁SV11及びSV13を閉じ、また、開閉弁SV12を開け、高温温調部10を熱盤内回路63a〜65aから遮断する。そして、低温温調部30を熱盤内回路63a〜65aに接続する。さらに、低温温調部30の上流側管路34を流れる熱媒がクーラ39に向かうように、三方切換弁SV34を切り換える。すると、図6に示されるように、低温温調部30を含む主循環経路MR1(太線部)を循環する熱媒は、クーラ39によって冷却され、この熱媒によって熱盤は常温まで冷却される(ステップS7)。このように、加熱プレスを行った後に、熱盤及び樹脂成形製品を冷却しながらプレスを行うことにより、冷却時に発生しうる樹脂成形製品の反りや変形の無い樹脂成形製品を得ることができる。
【0041】
コントローラ51は熱盤の温度を計測する温度センサ52の検出結果をモニタしており、この検出結果に基づいて、熱盤及び熱盤に挟み込まれている樹脂成形製品が十分に冷却したかどうかを判断している。熱盤及び樹脂成形製品が十分に冷却したものとコントローラ51が判断すると、コントローラ51は、テーブル定盤61を降下させて熱盤同士の間隔を広げる(ステップS8)。また、この時点で、低温温調部30に流れる熱媒の温度は常温まで低下しているため、開閉弁SV32を開け、開閉弁SV31及びSV33を閉じて低温温調部30を熱盤内回路63a〜65aから遮断し、さらに、低温温調部30の上流側管路34を流れる熱媒が外部ヒータシステム32に向かうように三方切換弁SV34を切り換えて熱媒の温度を50〜100℃程度の低温まで上昇させる。
【0042】
そして、常温まで冷却された樹脂成形製品を熱盤から取り出す(ステップS9)。以上、S1〜S9のステップを実行することにより、被加工物の加熱プレスが行われ、樹脂成形製品が得られる。
【0043】
本実施形態のプレス装置1においては、上記のように、被加工物のプレス成形を行うときは、夫々設定温度の異なる3種類の温調部10〜30の中から、設定温度の低いものから順に熱盤の加熱に使用する温調部として使用する。このため、熱盤を加熱する際の温調部自身の温度変化が比較的小さくなり、温調部自身を加熱するために消費される熱エネルギの量を低く抑えることが可能となる。このため、外部ヒータシステムから出力される熱エネルギの多くは熱盤の加熱の為に使用されることになり、比較的低出力の外部ヒータシステムであっても高い温度上昇速度で熱盤を加熱することができるようになる。また、使用されない温調部内の熱媒は副巡回経路内を循環しているため、熱媒から装置外部に放出される熱の量は低く抑えられるため、この時は、温調部の外部ヒータシステムの出力は低くなる。このように、本実施形態のプレス装置1においては、装置外部に放出される熱は比較的小さくなり、一回の加熱プレス毎に外部ヒータシステムが消費するエネルギ量は小さく抑えられる。また、加熱複数の温調部を順次切り換える構成となっているため、熱媒や外部ヒータシステム自身を加熱するためのエネルギロスが抑えられ、小出力の外部ヒータシステムであっても素早く熱盤を加熱することができる。
【0044】
本実施形態においては、温調部の数を3としているが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、温調部が高温用と低温用の2つ、或いは4つ以上の温調部を備える構成としてもよい。また、被加工物の種類によっては、全ての温調部を使用しない場合もある。例えば、軟化温度が100℃未満であり、成形温度が200℃未満であるような被加工物を成形する場合は、低温温調部と中温温調部のみが使用される。
【符号の説明】
【0045】
1 プレス装置
10 高温温調部
20 中温温調部
30 低温温調部
51 コントローラ
52 温度センサ
63 下部熱盤
64 上部熱盤
65 中間熱盤
63a、64a、65a 熱盤内管路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を熱盤間で加熱プレスするプレス装置であって、熱盤内に形成されており熱媒が通されるようになっている熱盤内管路と、複数の温調部であって、そのいずれか1つを前記熱盤内管路に接続することによって前記熱媒の主循環経路を形成するものと、前記複数の温調部のいずれか1つを前記熱盤内管路に選択的に接続する切換手段と、前記熱盤内管路に接続すべき温調部を選択する選択手段と、を有し、前記複数の温調部の夫々は、前記熱盤内管路の出入口と接続可能な熱盤外管路と、該熱盤外管路内に配置され前記熱媒を加熱するヒータと、該熱盤外管路内に配置され該熱媒を輸送するポンプとを有し、各温調部の熱盤外管路内の熱媒が夫々異なる設定温度に維持されるよう制御されていることを特徴とするもの。
【請求項2】
前記温調部は、前記設定温度が夫々第1の温度及び該第1の温度よりも高い第2の温度に設定されている第1及び第2の温調部を有し、前記選択手段は、前記第1の温調部が前記熱盤内回路に接続されて所定時間が経過した後に、前記第2の温調部を前記接続すべき温調部として選択することを特徴とする請求項1に記載のプレス装置。
【請求項3】
前記温調部は、少なくとも3つの温調部を有し、前記第1及び第2の温調部以外の温調部の設定温度は、前記第1の温度よりも低いか、前記第2の温度よりも高い温度に設定されていることを特徴とする請求項2に記載のプレス装置。
【請求項4】
前記温調部は、前記熱盤外管路の前記ヒータ及びポンプの上流側と下流側をバイパスするバイパス管を有し、前記選択手段によって選択されていない温調部内の熱媒は、前記熱盤外管路と前記バイパス管とによって形成される副循環経路内を循環することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のプレス装置。
【請求項5】
前記バイパス管の中途には開閉弁が設けられており、前記選択手段は、前記開閉弁を制御して、選択された温調部のバイパス管に熱媒が流れないようにすることを特徴とする請求項4に記載のプレス装置。
【請求項6】
前記複数の温調部のうち前記設定温度が最も低いものは、その熱盤外管路を流れる熱媒を冷却するためのクーラを有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のプレス装置。
【請求項7】
前記選択手段は、前記熱盤を冷却するときは、前記設定温度が最も低い温調部を前記熱盤内管路に接続すべき温調部として選択することを特徴とする請求項6に記載のプレス装置。
【請求項8】
前記選択手段は、前記熱盤を冷却するときは、前記選択された温調部のヒータを停止することを特徴とする請求項7に記載のプレス装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−264477(P2010−264477A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117626(P2009−117626)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(000242242)北川精機株式会社 (26)
【Fターム(参考)】