説明

プレセニリン1特異的阻害剤及びそれらの使用

本発明は、薬剤がプレセニリン2含有γ−セクレターゼに対してプレセニリン1含有γ−セクレターゼを優先的に阻害するかどうかを確定する方法を提供する。本発明はまた、プレセニリン2含有γ−セクレターゼに対してプレセニリン1含有γ−セクレターゼを優先的に阻害する薬剤、このような化合物を含む医薬組成物、このような化合物を使用するアルツハイマー病の治療方法を提供する。本発明は更に、プレセニリン1及びプレセニリン2のN末端ドメインがPS1含有γ−セクレターゼ及びPS2含有γ−セクレターゼによるAβの産生における差を確定することを開示する。この発見により、PS1含有γ−セクレターゼ及びPS2含有γ−セクレターゼによるAβの産生において観察された差に関する構造的決定要因が特定された。このような構造決定要因は、以前は特定されていなかった。本発明はまた、薬剤がPS1のN末端に特異的に結合するかどうかの確定方法を提供する。本発明は更に、PS1に特異的に結合し、その結果PS1の活性を阻害する薬剤の有効量を投与することによる、アルツハイマー病の治療方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年2月6日に提出された米国仮出願第60/771,117号及び2006年4月21日に提出された米国特許出願第60/745,344号の利益を主張し、これらの各開示の全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、プレセニリン2含有γ−セクレターゼに対してプレセニリン1含有γ−セクレターゼを優先的に阻害する化合物を特定する方法に関する。本発明はまた、プレセニリン2含有γ−セクレターゼに対してプレセニリン1含有γ−セクレターゼを優先的に阻害する薬剤、このような化合物を含む医薬組成物並びにこのような化合物及び医薬組成物を使用してアルツハイマー病を治療する方法に関する。
【0003】
本発明は更に、PS1のN末端部分に特異的に相互に作用し、その結果PS2に対してPS1を優先的に阻害する薬剤に関する。本発明はまた、このような薬剤を含む医薬組成物、細胞内でPS2に対してPS1を優先的に阻害する方法並びにこのような薬剤及び医薬組成物を使用してアルツハイマー病を治療する方法に関する。
【0004】
本発明は更に、プレセニリン2含有γ−セクレターゼに対してPS1含有γ−セクレターゼ活性を特異的に阻害するいくつかの化合物による、PS1の選択的阻害に関する構造決定要因の特定に関する。
【背景技術】
【0005】
アルツハイマー病(AD)は、認知症の最も一般的な形態の1つであり、米国における主な死因の1つである。全85歳の30%近くがADを有しており(Brunkan A.L.& Goate A.M.、J.Neurochem.(2005)93:769〜792)、ADは、脳における神経細胞の損失及び神経原線維変化及び老人斑の蓄積によって特徴付けられる。
【0006】
老人斑の主原因はアミロイドβペプチド(Aβ)であり、Aβはアミロイド前駆体タンパク質(APP)のタンパク質分解性プロセッシングによって産生される。APPは、普遍的に発現される内在性膜タンパク質であり、多様な経路で、セクレターゼによってタンパク質分解的にプロセッシングされる。α部位におけるAPPの切断は良性である。しかし、β部位及びγ部位における切断は、Aβペプチドの形成をもたらし、Aβの長さは40、42又は43残基であり得る。
【0007】
プレセニリン(PS)は、Aβペプチドを産生するγ−セクレターゼ複合体の触媒サブユニットを形成することが示されている。APP及びPSにおける大部分の突然変異体は、Aβの42残基形態(Aβ42)の40残基のAβ(Aβ40)に対する比率が増加し、したがってAPP、PS1及びPS2の突然変異体により生じる、共通のAD表現型が規定される(Scheuner Dら、Nat.Med.2:864〜870)。42又は43残基で終了するAβペプチド(末端が長いAβ)は、40残基で終了するAβより、線維形成性であり、神経毒性であると思われ、これはβAPPが正常に代謝される際に産生される主なアイソフォームである(St.George−Hyslop,P.H.,& Petit,A.、C.R.Biologies(2004)328:119〜130)。Aβ42ペプチドは、神経毒事象の病理学的系統であるアミロイドカスケードを開始すると考えられており、これは最終的にはアルツハイマー病において神経変性を引き起こす(Selkoe,D.J.、J Clin Invest(2002)110:1375〜1381)。Aβは、直接的又は間接的のいずれかで酸化的ストレスを促進する(Kanski Jら、Neurotoxicity Research(2002)4:219〜223)。
【0008】
プレセニリンは、β−カテニン安定性の制御、膜タンパク質の輸送及びγ−セクレターゼによるAPP及び他の基質の切断に関与することが公知である。ADに随伴する全てのPS1変異体は、γ−セクレターゼによるβAPPの切断を増加させ、残基42で終了する末端の長いAβペプチドの産生を優先的に増やす。しかしPS2変異体もまた、Aβペプチドを含む多様な因子により誘導されるアポトーシスに対して細胞感受性を調節することによって、神経変性を起こしうると信じる人もいる(Martins R.N.ら、(1995)「S182(Glu246)家族性アルツハイマー細胞由来の高濃度のアミロイドβタンパク質(High levels of amyloid beta−protein from S182(Glu246)familial Alzheimer’s cells)」、NeuroReport 7、217〜220、Duff K.ら、(1996)「突然変異体プレセニリン1を発現するマウスの脳におけるアミロイドβタンパク質42(43)の増加(Increased amyloid beta protein 42(43)in brains of mice expressing mutant presenilin 1)」Nature 383:710〜713、Citron M.ら、(1997)「アルツハイマー病の突然変異体プレセニリンは、形質移入細胞及びトランスジェニックマウスの両方において、42残基のアミロイドβタンパク質の産生を増加する(Mutant presenilins of Alzheimer’s Diease incrase production of 42 residue amyloid beta piotein in both transfected cells and transgenic mice)」Nat Med.3:67〜72、Rogaev E.I.ら、(1995)「染色体1上の新規の遺伝子においてミスセンス変異がある、親族における家族性アルツハイマー病は、アルツハイマー病3型遺伝子に関連していた(Familial Alzheimer’s disease in kindreds with missense mutations in a novel gene on chromosome 1 related to the Alzheimer’s Disease type 3 gene.)」Nature 376:775〜778)。γ−セクレターゼがAPP及びノッチ(Notch)の両方を切断するアスパルチルプロテアーゼのようである。
【0009】
大部分の細胞は、PS1含有γ−セクレターゼ及びPS2含有γ−セクレターゼを発現し、PS1含有γ−セクレターゼはAβの産生及びおそらく更にノッチ(Notch)シグナル伝達の主な原因である(Shenら(1997)「プレセニリン1−欠損マウスにおける骨格及びCNSの欠陥(Skeletal and CNS defects in Presenilin−1−deficient mice.)」Cell 89:629〜39;Wongら(1997)。プレセニリン1は、沿軸中胚葉においてノッチ1及びDII1の発現に必要である。Nature 387:288〜92;De Strooperら(1998)「プレセニリン1の欠損によりアミロイド前駆体タンパク質の正常な切断が阻害される(Deficiency of presenilin−1 inhibits the normal cleavage of amyloid precursor protein)」Nature 391:387〜90)。ノッチタンパク質は、発生において細胞運命決定の複合体を仲介する、高分子量の細胞表面膜受容体である(Chen Q.、Schubert D.、(2002)「プレセニリン相互作用タンパク質(Presenilin−interacting proteins)」Expert Rev Mol Med 2002:1〜18)。γ−セクレターゼはまた、上皮型カドヘリン(Ca2+依存性細胞間接着及び細胞間認識を仲介する1回膜貫通型タンパク質)、ErbB−4(細胞の増殖及び分化を調節する表皮成長因子である)及びCD44(細胞接着を仲介する別の受容体)を切断すると考えられる(Kimberly W.T.、Wolfe M.S.、(2003)「γセクレターゼの特定及び機能(Identity and Function of γ−secretase)」J.Neuroscience Res 74:353〜260)。したがって、AD治療のための治療法の開発における大きな挑戦は、ノッチなどの他のγ−セクレターゼの基質の切断に有意に作用することなく、APPからアミロイドペプチドの産生を減少させるγ−セクレターゼの阻害剤を特定することである。
【0010】
しかし、培養細胞系におけるPS1及びPS2の活性の最近の研究は、低濃度のγ−セクレターゼ活性でもAPP以外のγ−セクレターゼの基質の適切な機能、例えばノッチシグナル伝達を支持するためには十分であり得ることを示している。これらの研究は、PS1含有γ−セクレターゼの選択的阻害がAβの産生を有意に減少させ、残りのPS2含有γ−セクレターゼのγ−セクレターゼ活性がノッチなどの他の本質的なγ−セクレターゼの基質の切断を支持するために十分であろうことを示唆する。実際に、脳におけるPS1遺伝子の発現が削除されている、条件付きノックアウトマウスを使用した実験は、このようなマウスが、解剖学的、生理学的及び行動的レベルにおいて正常な特性を際立って示すことを示す。これらの実験は、成人期におけるPS1含有γ−セクレターゼの選択的阻害が、副作用をほとんど起こさないと思われることを示唆している。
【0011】
当分野において、他のγ−セクレターゼの基質及び経路に有意に作用せずに、Aβの産生を減少できる方法及び薬剤の必要性がある。この必要性と取り組む1つの方法は、PS1と特異的に結合することによって、PS2に対してPS1を優先的に阻害するγ−セクレターゼの阻害剤を特定することである。具体的には、当分野において、PS1の活性領域を特異的に標的にし、構造的にPS2とは異なる薬剤の特定及び/又は設計のために、PS1の活性領域を特定する必要性がある。このような領域を標的とする阻害剤は、PS1含有γ−セクレターゼ活性を特異的に阻害できるが、PS2含有γ−セクレターゼ活性は阻害しない。したがって、PS1活性領域及びこれらの阻害剤の特定は、副作用のプロフィールを減少させる又は最小にする、AD治療における使用のための治療用候補化合物を提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、他のγ−セクレターゼの基質に有意に作用せずに、Aβの産生を減少できる1つの方法は、プレセニリン2含有γ−セクレターゼに対してプレセニリン1含有γ−セクレターゼを優先的に阻害するγ−セクレターゼの阻害剤の特定である。このような阻害剤の特定は、AD治療における使用のための、許容される副作用を有する追加の治療用候補を提供するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、プレセニリン2含有γ−セクレターゼに対してプレセニリン1含有γ−セクレターゼを優先的に阻害する化合物の特定方法を提供する。該方法は、プレセニリン1を発現するがプレセニリン2を発現しない第1細胞型及びプレセニリン2を発現するが、プレセニリン1を発現しない第2細胞型を、該化合物と共に個別にインキュベートするステップと、Aβ40/42を含むAβ1−xの量を、各細胞型において測定するステップと、各細胞型におけるAβ1−xに関するEC50値を算出するステップと、第1細胞型に関して算出されたEC50値が、第2細胞型に関して算出されたEC50値より小さい場合、該化合物がプレセニリン2含有γ−セクレターゼに対してプレセニリン1含有γ−セクレターゼを優先的に阻害することを確定するステップを含む。
【0014】
本発明は、プレセニリン2含有γ−セクレターゼに対してプレセニリン1含有γ−セクレターゼを優先的に阻害する化合物、非毒性治療有効量の、プレセニリン2含有γ−セクレターゼに対してプレセニリン1含有γ−セクレターゼを優先的に阻害する化合物及び医薬として許容される担体を含むアルツハイマー病治療用医薬組成物、並びに治療を必要とする患者に、非毒性治療有効量の、プレセニリン2含有γ−セクレターゼに対してプレセニリン1含有γ−セクレターゼを優先的に阻害する化合物及び医薬として許容される担体を含む医薬組成物を投与することを含むアルツハイマー病の治療法を更に提供する。
【0015】
一態様において、本発明はPS1の生物活性を調節できる、プレセニリン1含有γ−セクレターゼ(PS1)特異的結合剤を提供する。
【0016】
一態様において、本発明はPS1特異的結合剤及び医薬として許容されるこれらの塩を含む組成物に関する。
【0017】
別の態様において、本発明は、PS1を、PS1のN末端の1/3(アミノ酸残基1〜127;配列番号8)に結合するPS1特異的結合剤と、特異的な阻害のための有効量で接触させることを含む、PS1の特異的阻害方法を提供する。
【0018】
別の態様において、本発明は、PS1−γセクレターゼの低分子阻害剤による、PS1の選択的阻害に関する構造決定要因を提供する。より具体的には、本発明は低分子阻害剤によるPS1−γセクレターゼ活性の分化阻害に関与する、PS1に関する構造決定要因を提供する。本発明は、PS1選択的阻害剤が、PS1の中間の1/3部分(残基128〜298)(配列番号9)、より具体的には、残基L172、T281及びT282と相互に作用することを更に実証する。
【0019】
別の態様において、本発明は、PS1特異的結合剤又はその医薬として許容される塩を、アルツハイマー病(AD)の治療又は予防に有効な量で対象に投与することを含む、対象におけるADの治療又は予防の方法を提供する。
【0020】
更なる態様において、本発明は、細胞を、PS1γ−セクレターゼ活性を阻害するが、PS2γ−セクレターゼ活性を阻害しない有効量のPS1特異的結合剤と接触させることを含む、細胞においてA−ベータ(Aβ)の産生を阻害する方法に関する。
【0021】
更に別の態様において、本発明は、PS1の末端の1/3の、N末端127アミノ酸(配列番号8)を含む、単離ポリペプチドを提供する。
【0022】
本発明の具体的実施形態は、以下の発明の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲により明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
項の表題は、本明細書中では構成の目的のためだけに使用し、記載の題材を多少なりとも限定すると解釈されるべきではない。本明細書中の全引用参考文献をその全体を参照により組み込む。
【0024】
標準的な技術を、組換えDNA分子、タンパク質、及び抗体産生並びに組織培養及び細胞の形質転換のために使用できる。例えば、Sambrookら(下記)又は「分子生物学における最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」(Ausubelら編、Green Publishers Inc and Wiley and Sons 1994)を参照されたし。酵素反応及び精製技術は製造業者の指示書に従って、又はSambrookら(「分子クローニング(Molecular Cloning)」:A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY(1989))で説明される手順、又は本明細書中に記載されるような手順などの従来の手順を使用して、当分野において一般に達成するように通常実施する。具体的な定義が提供されない限り、本明細書中に記載の、関連して使用する命名法、並びに分析化学、合成有機化学並びに医薬及び薬剤の化学の実験手順及び技術は、当分野において周知であり、一般的に使用される。化学合成、化学分析、薬剤の調製、形成及び送達並びに患者の治療のために、標準的技術が使用できる。
【0025】
一態様において、本発明はプレセニリン2含有γ−セクレターゼに対してプレセニリン1含有γ−セクレターゼを優先的に阻害する化合物を特定する方法を提供する。該方法は(a)化合物と共に第1細胞型及び第2細胞型を個別にインキュベートし、ここで第1細胞型はプレセニリン1を発現するがプレセニリン2を発現せず、第2細胞型はプレセニリン2を発現するが、プレセニリン1を発現しないインキュベートステップと、(b)Aβ40及び42を含むAβ1−xの量を、各細胞型において測定するステップと、(c)各細胞型におけるAβ1−xに関するEC50値を算出するステップと、(d)第1細胞型に関して算出されたEC50値が、第2細胞型に関して算出されたEC50値より小さい場合、該化合物がプレセニリン2含有γ−セクレターゼに対してプレセニリン1含有γ−セクレターゼを優先的に阻害することを確定するステップを含む。
【0026】
この態様のある実施形態において、プレセニリン2含有γ−セクレターゼを含む細胞に関するEC50値とプレセニリン1含有γ−セクレターゼを含む細胞に関するEC50値との比が1より大きい場合、化合物はプレセニリン2−含有γ−セクレターゼに対してプレセニリン1含有γ−セクレターゼを「優先的に」阻害する。好ましい実施形態において、EC50値の比は約3〜5、より好ましくは約5〜10、更により好ましくは約10〜15、更により好ましくは約15〜20及び最も好ましくは約20を超える。
【0027】
A.定義
本明細書中で使用する場合、「特異的結合剤」の用語は、本明細書中に記載のように、PS1の認識及びPS1との結合に関する特異性を有する分子(molecule又はmolecules)を指す。適切な特異的結合剤は、限定するものではないが、抗体及びこれらの誘導体、ポリペプチド(抗体など)、化合物(化学化合物など)並びに低分子を含む。適切な特異的結合剤は、当分野において公知の方法を使用して、及び本明細書中に記載したように調製できる。本発明のPS1特異的結合剤は、PS1の特定部分と結合でき、好ましくはPS1の活性又は機能を調節できる。本発明の典型的なPS1特異的結合剤は、PS2に対してPS1の特定部分と優先的に結合でき、PS1の活性又は機能を調節できるが、PS2の活性又は機能は調節できないことが好ましい。
【0028】
本明細書で使用する場合、「低分子」という用語は約1500g/モル未満の分子量を有する分子を指す。例えば低分子は、有機低分子、ペプチド又はペプチド様分子であってよい。
【0029】
本明細書中で使用する場合、「抗体」という用語は、抗原に特異的に結合でき、抗原の生物活性を阻害又は調節できると思われる、1種又は複数種のポリペプチド鎖を含む、単量体又は多量体のタンパク質を指す。したがって、本明細書中で使用する場合、該用語は無傷の免疫グロブリンの任意のアイソタイプ又は標的抗原に対して特異的に結合する無傷の抗体と競合できるその断片を含み、例えば、キメラ、ヒト化、完全ヒト型及び二重特異性の抗体を含む。無傷の抗体は一般的に少なくとも2本の完全長重鎖及び2本の完全長軽鎖を含むが、時にはラクダ科の動物において天然発生的に生じる、重鎖のみを含むことのできる抗体のように、より少数の鎖も含み得る。抗体は、単一源から単独で誘導されてもよく、又は「キメラ」であってもよい、即ち、抗体の異なる部分が2種の異なる抗体から誘導されてもよい。例えば、CDR領域がラット又はネズミ源から誘導されてもよく、一方V領域のフレームワーク領域がヒトなどの異なる動物源から誘導されてもよい。本明細書中に記載したような、抗体又は結合断片は、組換えDNA技術により、或いは無傷の抗体の酵素的又は化学的切断により、ハイブリドーマにおいて産生できる。特に明記しない限り、「抗体」という用語は、2本の完全長重鎖及び2本の完全長軽鎖を含む抗体に加えて、これらの誘導体、変異体、断片及び突然変異タンパク質を含み、これらの例は以下に記載する。したがって、該用語は、抗原(例えば、グルカゴン)に特異的に結合できる軽鎖及び/又は重鎖の可変領域の全て又は一部を含むポリペプチドを含む。したがって、抗体という用語は、免疫学的に機能的な断片を含み、例えばF(ab)、F(ab’)、F(ab’)、Fv及び一本鎖Fv断片を含む。
【0030】
「抗原」という用語は、選択的結合剤、例えば抗体が結合でき、更に動物において使用し、その抗原のエピトープに結合できる抗体を産生できる分子又は分子の一部を指す。抗原は、1種又は複数種のエピトープを有することができる。好ましくは、本明細書中で使用する抗原はPS1のN末端の127アミノ酸、又は動物において抗体を産生できる、これらの任意の適切な部分を含む。ある実施形態において、抗原は、PS1のアミノ末端の少なくとも一部分(アミノ酸1〜127)に含まれる、少なくとも5個の連続したアミノ酸、例えばアミノ酸1〜5、2〜6、3〜7、4〜8、5〜9、6〜10、7〜11、8〜12、9〜13、10〜14、11〜15、12〜16、13〜17、14〜18、15〜19、16〜20、17〜21、18〜22、19〜23、20〜24、21〜25、22〜26、23〜27、24〜28、25〜29、26〜30、27〜31、28〜32、29〜33、30〜34、31〜35、32〜36、33〜37、34〜38、35〜39、36〜40、37〜41、38〜42、39〜43、40〜44、41〜45、42〜46、43〜47、44〜48、45〜49、46〜50、47〜51、48〜52、49〜53、50〜54、51〜55、52〜56、53〜57、54〜58、55〜59、56〜60、57〜61、58〜62、59〜63、60〜64、61〜65、62〜66、63〜67、64〜68、65〜69、66〜70、67〜71、68〜72、69〜73、70〜74、71〜75、72〜76、73〜77、74〜78、75〜79、76〜80、77〜81、78〜82、79〜83、80〜84、81〜85、82〜86、83〜87、84〜88、85〜89、86〜90、87〜91、88〜92、89〜93、90〜94、91〜95、92〜96、93〜97、94〜98、95〜99、96〜100、97〜101、98〜102、99〜103、100〜104、101〜105、101〜105、102〜106、103〜107、104〜108、105〜109、106〜110、107〜111、108〜112、109〜113、110〜114、111〜115、112〜116、113〜117、114〜118、115〜119、116〜120、117〜121、118〜122、119〜123、120〜124、121〜125、122〜126、123〜127、124〜128、125〜129、126〜130、又は127〜131を含む。
【0031】
本明細書で使用する場合、「特異的結合」は表面上又はくぼみ内に特異的に結合する範囲を有する、2つの異なる分子間の相互作用に関し、その結果、他の分子の特有の空間的及び物理的構成と相補的であると定義される。特異的結合を示す分子の型は、リガンド及び受容体(抗リガンド)と称することができる。このような分子は、抗原−抗体のような免疫学的ペアのメンバーであり得るが、特異的結合は他の分子との間にも起こり得る。「特異的結合」それ自体は、2つ(又は複数)の分子の結合一定性により特定できる。
【0032】
B.特異的結合剤
ある実施形態において、本発明はPS1の生物活性を調節できる、プレセニリン1含有γ−セクレターゼ(PS1)特異的結合剤を提供する。特定の実施形態において、特異的結合剤はPS1のN末端部分に結合する。この実施形態の一態様において、特異的結合はPS1のN末端部分にであり、プレセニリン2含有γ−セクレターゼ(PS2)のN末端部分にではない。
【0033】
別の実施形態において、特異的結合剤は、PS1に対する特異的結合活性を有する少なくとも1種のペプチド又はその断片を含む。好ましい実施形態において、特異的結合剤は、配列番号2に対する特異的結合活性を有する少なくとも1種のペプチド又はその断片を含む。好ましい一実施形態において、特異的結合剤は抗体である。この実施形態の好ましい抗体は、PS1のN末端部分を認識すると思われる。より好ましくは、抗体は配列番号8のアミノ酸配列、即ちPS1の初めの127アミノ酸(図1を参照されたし)認識し、結合すると思われる。好ましい抗体は、PS1(配列番号8)のアミノ末端の少なくとも一部分(アミノ酸1〜127)に含まれる、少なくとも5個の連続したアミノ酸のエピトープを認識すると思われる。本発明の好ましい実施形態において、抗体は、少なくともアミノ酸1〜5、2〜6、3〜7、4〜8、5〜9、6〜10、7〜11、8〜12、9〜13、10〜14、11〜15、12〜16、13〜17、14〜18、15〜19、16〜20、17〜21、18〜22、19〜23、20〜24、21〜25、22〜26、23〜27、24〜28、25〜29、26〜30、27〜31、28〜32、29〜33、30〜34、31〜35、32〜36、33〜37、34〜38、35〜39、36〜40、37〜41、38〜42、39〜43、40〜44、41〜45、42〜46、43〜47、44〜48、45〜49、46〜50、47〜51、48〜52、49〜53、50〜54、51〜55、52〜56、53〜57、54〜58、55〜59、56〜60、57〜61、58〜62、59〜63、60〜64、61〜65、62〜66、63〜67、64〜68、65〜69、66〜70、67〜71、68〜72、69〜73、70〜74、71〜75、72〜76、73〜77、74〜78、75〜79、76〜80、77〜81、78〜82、79〜83、80〜84、81〜85、82〜86、83〜87、84〜88、85〜89、86〜90、87〜91、88〜92、89〜93、90〜94、91〜95、92〜96、93〜97、94〜98、95〜99、96〜100、97〜101、98〜102、99〜103、100〜104、101〜105、101〜105、102〜106、103〜107、104〜108、105〜109、106〜110、107〜111、108〜112、109〜113、110〜114、111〜115、112〜116、113〜117、114〜118、115〜119、116〜120、117〜121、118〜122、119〜123、120〜124、121〜125、122〜126、123〜127、124〜128、125〜129、126〜130、又は127〜131を認識する。
【0034】
別の実施形態において、特異的結合剤はPS1に対する特異的結合活性を有する低分子を含む。好ましい実施形態において、該低分子はPS2のN末端部分に対してPS1のN末端部分に特異的に結合する。
【0035】
様々な実施形態において、本発明は、PS2含有γ−セクレターゼに対してPS1含有γ−セクレターゼを優先的に阻害する特異的結合剤の特定及び/又は公知の特異的結合剤の新規な使用(即ち、PS2含有γ−セクレターゼに対するPS1含有γ−セクレターゼの優先的阻害)の特定のための方法を提供する。本発明の方法で特定された化合物は、当業者には公知である標準的な有機合成技術を使用して製造できる。
【0036】
本発明は、本発明の結合剤を含む医薬組成物、このような結合剤を使用してアルツハイマー病を治療する方法、このような結合剤を使用してPS2含有γ−セクレターゼに対してPS1含有γ−セクレターゼを選択的に阻害する方法を、更に提供する。
【0037】
一態様において、本発明はプレセニリン2含有γ−セクレターゼに対してプレセニリン1含有γ−セクレターゼを優先的に阻害する化合物を提供する。一実施形態において、本発明は、PS1に特異的に結合することによって、プレセニリン2含有γ−セクレターゼに対してプレセニリン1含有γ−セクレターゼを優先的に阻害する化合物を含む。該化合物がPS1のN末端部分に結合することが好ましく、PS1のN末端の1〜127アミノ酸の少なくとも一部分に結合することが最も好ましい。
【0038】
ある実施形態において、本発明は、PS1を優先的に阻害できる化合物を特定する方法を提供する。一実施形態において、該方法は、試験化合物を、プレセニリン1を発現するがプレセニリン2を発現しない第1の形質移入ダブルノックアウト細胞(以後「第1細胞型」)及びプレセニリン2を発現するが、プレセニリン1を発現しない第2の形質移入ダブルノックアウト細胞(以後「第2細胞型」)と共に個別にインキュベートするステップと、Aβ1−x(Aβ1−xは、Aβ1−23より長い、Aβ38、Aβ40及びAβ42を含む任意のAβペプチドを表す)の量を各細胞系において測定するステップと、各細胞系におけるAβ1−xの量を使用してEC50を算出するステップと、プレセニリン2含有γ−セクレターゼに対してプレセニリン1含有γ−セクレターゼを優先的に阻害する化合物を特定するステップとを含む。本発明の化合物は、第1細胞型に関して算出されたEC50値が、第2細胞型に関して算出されたEC50値より小さい場合、プレセニリン2含有γ−セクレターゼに対してプレセニリン1含有γ−セクレターゼを優先的に阻害する。本発明の化合物は、PS2に対してPS1を、少なくとも3〜5倍阻害することが好ましい。更により好ましくは、該化合物はPS2に対してPS1を5〜10倍阻害する。更により好ましくは、該化合物はPS2に対してPS1を10〜15倍、更により好ましくは15〜20倍阻害する。更になお一層より好ましくは、該化合物はPS2に対してPS1を、20倍を超えて阻害する。該方法を同じ様式で使用して、PS2活性に対してPS1活性を優先的に阻害する本発明の抗体を更に特定でき、試験する抗体を試験化合物の代わりに使用する。
【0039】
他の実施形態において、PS1を阻害する化合物及び抗体は、以下の実施例において記載したようにプレセニリンのキメラを使用して特定できる。特定の実施形態において該方法は、PS1のN末端部分に構築されたプレセニリンのキメラと、試験化合物又は抗体とを接触させるステップと、前記キメラの相対活性を測定するステップとを含む。本方法の限定されない実施例を、以下の実施例1〜3に記載する。PS1のN末端部分は、配列番号7(PS1のアミノ酸1〜70)、配列番号8(PS1のアミノ酸1〜127)に示したアミノ酸配列、或いは配列番号7又は配列番号8の任意の一部分であってよい。
【0040】
C.PS1特異的結合剤の特定方法
細胞におけるAβ40及び/又はAβ42の量を測定できる、当分野で公知の任意の型の試験を、化合物がPS2に対してPS1(特に、PS1のN末端)と特に結合するかどうかを確定するために使用できる。一実施形態において、該試験は任意の型の結合試験であり、好ましくは免疫結合試験である。このような免疫結合試験は当分野では公知である(例えば、Asai編、Methods in Cell Biology、VoL37、「細胞生物学における抗体(Antibodies in Cell Biology)」、Academic Press,Inc.、New York(1993)を参照されたし)。免疫結合試験は通常捕捉剤を使用し、検体である標的抗原に特異的に結合し、多くの場合固定化する。捕捉剤は、検体に特異的に結合する成分である。本発明の一実施形態において、捕捉剤は、Aβに特異的に結合する抗体又はその断片である。捕捉剤は、Aβの40個のアミノ酸残基中に位置するエピトープに特異的に結合する、抗体又はその断片である。好ましい実施形態において、捕捉剤は、Aβの初めの23個のアミノ酸残基(即ち、Aβ1〜23)中に位置するエピトープに特異的に結合する、抗体又はその断片である。
【0041】
免疫結合試験はしばしば、捕捉剤及び抗原により形成される結合複合体の存在をシグナル伝達する、標識剤を使用する。標識剤は、結合複合体を含む分子の1つであってよい、即ち、標識された特異的結合剤又は標識された抗特異的結合剤抗体であってよい。或いは標識剤は、結合複合体に結合する第3の分子、一般には別の抗体であってよい。標識剤は、例えば標識を有する抗特異的結合剤抗体であってよい。結合複合体に特異的な第2の抗体は、標識を持たないこともあるが、第2の抗体をメンバーとする抗体種に特異的な、第4の分子と結合できる。例えば第2の抗体は、ビオチンなどの検出可能な成分により修飾でき、これをその後酵素で標識されたストレプトアビジンなどの、第4の分子と結合できる。タンパク質A又はタンパク質Gなどの、免疫グロブリン不変領域と特異的に結合できる他のタンパク質もまた、標識剤として使用できる。これらの結合タンパク質は、連鎖球菌の細胞壁の普通の構成要素であり、様々な種由来の免疫グロブリン不変領域に対して強い非免疫原性反応性を示す(例えば、Akerstrom、J Immunol、135:2589〜2542(1985)及びChaubert、Mod Pathol、10:585〜591(1997)を参照されたし)。本発明の一実施形態において、標識剤はAβの初めの23個のアミノ酸残基(Aβ1〜23)と特異的に結合する抗体又はその断片を含む。好ましい実施形態において、標識剤はAβの初めの3個のアミノ酸残基(即ち、Aβ1〜3)中に位置するエピトープと特異的に結合する抗体又はその断片を含む。本発明の一実施形態において、標識剤はAβの初めの23個のアミノ酸残基(Aβ1〜23)と特異的に結合する抗体又はその断片を含む。好ましい実施形態において、標識剤はAβの初めの3個のアミノ酸残基(即ち、Aβ1〜3)中に位置するエピトープと特異的に結合する抗体又はその断片を含む。
【0042】
試験の間を通して、薬剤を組み合わせるごとに、その後インキュベートする及び/又は洗浄するステップが必要と思われる。インキュベートするステップは、約5秒〜数時間まで変更可能であり、約5分〜約24時間までが好ましい。しかし、インキュベートする時間は、試験のフォーマット、検体、溶液の容量、濃度などに依存するであろう。普通、試験は周囲温度において実施するが、ある範囲の温度にわたって実施可能である。
【0043】
γ−セクレターゼの仲介によるAPPの切断の阻害を実証する試験は、限定されない例であるKangら、1987、Nature 325:733〜6により述べられた695アミノ酸の「正常」なアイソタイプ、Kitaguchiら、1981、Nature 331:530〜532により述べられた770アミノ酸アイソタイプ並びにスウェーデン変異(KM670−1NL)(APPswe)、ロンドン変異(V7176F)などの変異体を含む、APPの公知の形態のいずれかを使用できる。例えば、米国特許第5,766,846号及びHardy、1992、Nature Genet.1:233〜234を、公知の突然変異体の再検討に関して参照されたし。更なる有用な基質は、二塩基性アミノ酸改変体、例えば国際公開番号WO00/17369に開示されたAPP−KK、APPの断片及びγ−セクレターゼ切断部位を含む合成ペプチド、例えば米国特許第5,441,870号、5,605,811号、5,721,130号、6,018,024号、5,604,102号、5,612,486号、5,850,003号及び6,245,964号に記載のような、野生型(WT)又は突然変異体、例えばAPPsweを含む。
【0044】
ある実施形態において、APPの形態をコードするcDNAを、プレセニリン1及び/又はプレセニリン2ノックアウト線維芽細胞を作製するための、本明細書中に開示の高効率形質移入法によって、細胞系に形質移入できる。簡潔に言うと、プレセニリン1/プレセニリン2ノックアウト線維芽細胞の高効率形質移入は、APPsweのcDNA(例えば、図4における配列番号6のタンパク質をコードするcDNA)及びプレセニリン1のcDNA又はプレセニリン2のcDNAのどちらかを、エレクトロポレーション(Amaxa,Inc.、Gaithersburg、MD)により、又はGenePorter2(Gene Therapy Systems,Inc.、San Diego、CA)を使用することにより、同時に又は連続してのどちらかで導入することにより達成できる。プレセニリン1又はプレセニリン−2のどちらかを発現する、プレセニリン1/プレセニリン2ノックアウト線維芽細胞を、その後プレセニリン2含有γ−セクレターゼに対してプレセニリン1含有γ−セクレターゼを優先的に阻害する化合物の特定に使用できる。APPsweの配列を開示し、参照としてその全体を本明細書に組み込む、Mullanら、Nature Genetics(1992);1:345〜347もまた参照されたし。
【0045】
1.非競合的結合試験
免疫結合試験は、非競合型であってよい。これらの試験は、直接測定される、一定量の捕捉検体を有する。例えば、1つの好ましい「サンドウィッチ」試験において、捕捉剤(抗体)は、固定先である固体基質に直接結合できる。これらの固定化抗体は、その後試験試料中に存在する抗原を捕捉(と結合)する。このように固定化されたタンパク質は、その後標識剤、標識を有する第2の抗体などと結合する。別の企図される「サンドウィッチ」試験において、第2の抗体は標識を欠いているが、第2の抗体が由来する種の抗体に特異的な標識抗体と結合できる。第2の抗体はまたビオチンなどの検出可能な成分を用いて修飾でき、この成分がストレプトアビジンなどの第3の標識分子に特異的に結合できる。(参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、Harlow及びLane、「抗体、実験室マニュアル(Antibodies、A Laboratory Manual)、Ch 14、Cold Spring Harbor Laboratory、NY(1988)を参照されたし)。
【0046】
2.競合的結合試験
免疫結合試験は競合型であってよい。試料中に存在する検体の量を、試料中に存在する検体と置き換えられた、試料中に存在する検体と競合し、捕捉剤から離れた加えられた検体の量を測定することによって、間接的に測定する。1つの好ましい競合結合試験において、既知量の検体(普通は標識してある)を試料に加え、その後試料を抗体(捕捉剤)に接触させる。抗体に結合した標識検体の量は、試料中に存在する検体の濃度に反比例する。(Harlow及びLane、「抗体、実験室マニュアル(Antibodies、A Laboratory Manual)」、Ch 14、pp.579〜583、上記を参照されたし)。
【0047】
別の企図された競合結合試験において、抗体は固体基質に固定化する。抗体に結合したタンパク質の量は、タンパク質/抗体複合体に存在するタンパク質の量を測定すること、又は複合体を形成しない残りのタンパク質の量を測定することのどちらかによって測定できる。タンパク質の量は、標識タンパク質を提供することによって検出できる。(Harlow及びLane、「抗体、実験室マニュアル(Antibodies、A Laboratory Manual)」、Ch 14、pp.579〜583、上記を参照されたし)。
【0048】
更に別の企図された競合結合試験において、ハプテン阻害を利用する。ここで、公知の検体を固体基質に固定化する。既知量の抗体を試料に加え、試料を固定化された検体に接触させる。固定化検体に結合した抗体の量は、試料中に存在する検体の量に反比例する。固定化抗体の量は、抗体の固定化画分又は溶液中に残存する画分のどちらかを検出することによって検出できる。上記のように、抗体が標識されている場合は直接検出でき、又は抗体に特異的に結合する標識成分を、後から加えることによって間接的に検出できる。
【0049】
3.競合結合試験の利用
競合結合試験は、交差反応の確定に使用でき、当業者に、本発明の特異的結合剤により認識されるタンパク質又は酵素の複合体が所望のタンパク質であり、交差反応をしない分子であるかの確定、又は抗体が抗原に特異的であり、関連のない抗原と結合しないかどうかの確定を可能にする。この型の試験において、抗原は固体の支持体に固定化でき、特異的結合剤の固定化タンパク質に対する結合と競合すると思われる、未知のタンパク質混合物を試験に加える。競合分子もまた、該抗原とは関連のない1種又は複数種の抗原と結合する。固定化抗原に対する特異的結合剤/抗体の結合と競合するタンパク質の能力を、固体支持体に固定化された同じタンパク質による結合と比較し、タンパク質混合物の交差反応性を確定する。
【0050】
4.他の結合試験
Aβ特異的抗体の使用を必要としない、Aβ及びAβの断片を検出する他の非免疫技術もまた用いることができる。例えば、二次元ゲル電気泳動を用いて、液体試料中に存在する密接に関係がある可溶性タンパク質を分離できる。Aβを含む、APPの多くの断片と交差反応性の抗体を、その後ゲルの探索に使用でき、Aβのゲル上の正確な位置に基づきその存在を特定できる。培養細胞の場合、細胞タンパク質を代謝的に標識し、場合により最初の分離ステップとして免疫沈降を用いて、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離できる。
【0051】
本発明はまた、試料中のAβの存在を検出又は定量化するためのウェスタンブロット法を提供する。該技術は、分子量に基づきゲル電気泳動により試料タンパク質を分離するステップと、タンパク質をニトロセルロースフィルター、ナイロンフィルター又は誘導体化ナイロンフィルターなどの適切な固体支持体に転写するステップとを、一般的に含む。試料を、Aβと特異的に結合する抗体又はその断片と共にインキュベートし、得られた複合体を検出する。これらの抗体は直接標識でき、又は抗体に特異的に結合する標識抗体を使用して、後で検出できる。
【0052】
D.PS1特異的結合剤の有効性の確定試験
一実施形態において、本発明の方法はAβに対する特異的結合剤を含む。好ましい実施形態において、該方法はAβに対する少なくとも1種の抗体、より好ましくはAβに対する少なくとも2種の抗体を含む。該方法がAβに対する少なくとも2種の抗体を含む場合、1種の抗体は「捕捉」分子として作用し、一方他の抗体は検出分子又は「標識された」分子として作用することが好ましい。ある実施形態において、捕捉抗体は、アミノ酸配列のN末端部分に位置する、Aβのエピトープを認識できる(図3を参照されたし)。より詳細には、捕捉抗体がAβのアミノ酸1〜23内のエピトープを認識することが好ましい。
【0053】
APPの切断による特徴的産物を、例えばPirttilaら、1999、Neuro Lett.249:21〜4、及び米国特許第5,612,486号(両方とも参照によりその全体を組みこむ)に記載の抗体などの、多様な抗体を使用した免疫試験により測定できる。Aβの検出に有用な抗体には、例えばAβペプチドのアミノ酸1〜16上のエピトープを特異的に認識する、モノクロナール抗体6E10(Senetek、St Louis、MO);それぞれヒトAβ1−40及び1−42に特異的である、抗体162及び164(New York State Institute for Basic Research、Staten Island、NY);及び米国特許第5,593,846号に記載の、残基16から17の部位である、β−アミロイドペプチドの結合領域を認識する抗体が挙げられる。APPの残基591〜596の合成ペプチドに対して産生された抗体及びスウェーデン変異体の590〜596に対して産生されたSW192抗体は、米国特許第5,604,102号及び5,721,130号に記載のように、APP及びその切断産物の免疫試験においてもまた有用である。
【0054】
E.抗体の調製
ある実施形態において、本発明はPS1のN末端部分に結合する抗体を提供する。本発明の抗体は、本明細書中に記載の従来の技術を使用して作製可能である。本発明の抗体の作製に適切な抗原(本明細書中では「免疫原」とも称する)は、上に記載する。
【0055】
Aβに特異的な抗体は、アミノ酸残基13〜28からなる結合領域、約アミノ酸残基29〜42又は43からなるC末端及びアミノ酸残基1〜16からなるアミノ末端などの所望の標的エピトープを含む、適切な抗原又はハプテンに対して調製できる。
【0056】
都合の良いことに、抗体調製用の合成ペプチドは、適切な免疫原に結合した従来の固相技術によって調製でき、従来技術による抗血清又はモノクロナール抗体の調製に使用できる。適切なペプチドハプテンはAβ内に通常少なくとも5個の連続した残基を含むと思われ、6残基より多くを含み得る。
【0057】
合成ポリペプチドハプテンは、アミノ酸を成長鎖に連続的に加える、周知のメリーフィールド(Merrifield)の固相合成技術によって作製できる(Merrifield(1963)J.Am.Chem.Soc.85:2149〜2156)。アミノ酸配列は、上で説明したβAPの配列に基づいてよい。
【0058】
十分量のポリペプチドハプテンが一度得られたら、それを、血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニンなどの適切な免疫原性担体又は、その開示を参照により本明細書に組み込む、Hudson and Hay、「実践免疫学(Practical Immunology)」、Blackwell Scientific Publications、Oxford、Chapter 1.3、1980に一般的に記載されたような他の適切なタンパク質担体に接合できる。有用である例示的免疫原担体はαCD3κ抗体である(Boehringer−Mannheim、Clone No.145−2C11)。
【0059】
十分量の免疫原が一度得られたら、所望のエピトープに特異的な抗体をインビトロ又はインビボの技術により作製できる。インビトロ技術は、リンパ球の免疫原への暴露を含み、一方インビボ技術は適切な脊椎動物宿主に免疫原を注射することが必要である。適切な脊椎動物宿主は、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ヤギなどを含む、非ヒトである。免疫原を、所定のスケジュールに従って動物に注射し、動物を定期的に出血させ、連続した出血により力価及び特異性が改善される。注射は、筋肉、腹腔内、皮下などに実施でき、フロインドの不完全アジュバント(incomplete Freund’s adjuvant)などのアジュバントを用いることができる。
【0060】
所望により、所望の特異性を有する抗体を産生できる固定化細胞系を調製することによって、モノクロナール抗体を得ることができる。このような固定化細胞系は、様々な方法で作製できる。都合の良いことに、マウスなどの小型脊椎動物は、今記載した方法により所望の免疫原を用いて高度に免疫化される。その後、脊椎動物を殺し(普通は最終免疫化の数日後)、脾臓細胞を取り外し、脾臓細胞を固定化する。固定化の方法は重要ではない。本発明において有用なモノクロナール抗体は、Kohlerら、Nature 256:495(1975);ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kosborら、Immunol Today 4:72(1983);Coteら、Proc Natl Acad Sci(USA)80:2026〜2030(1983);Brodeurら、「モノクロナール抗体作製技術及び適用(Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications)」、pp 51〜63、Marcel Dekkcer,Inc.、New York、(1987))及びEBV−ハイブリドーマ技術(EBV−hybridoma technique)(Cole ら、「モノクロナール抗体及び癌治療(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy)」、Alan R Liss Inc、New York N.Y.、pp 77〜96、(1985))に記載されたようなハイブリドーマ法により作製できる。
【0061】
ハイブリドーマ技術を用いる場合、骨髄腫細胞系が使用できる。ハイブリドーマ作製融合手順における使用に適したこのような細胞系は、非抗体産生であり、高融合効率を有し、所望の融合細胞(ハイブリドーマ)のみの成長を支持する特定の選択培地において、それらを成長できない状態にする酵素を欠いていることが好ましい。例えば、マウスの融合に使用した細胞系はSp−20、P3−X63/Ag8、P3−X63−Ag8.653、NS1/1.Ag41、Sp210−Ag14、FO、NSO/U、MPC−11、MPC11−X45−GTG1.7及びS194/5XX0Bul;ラットの融合に使用した細胞系はR210.RCY3、Y3−Ag1.2.3、IR983F及び4B210である。細胞融合に有用な他の細胞系は、U−266、GM1500−GRG2、LICR−LON−HMy2及びUC729−6である。モノクロナール抗体を産生するハイブリドーマ及び他の細胞系は、本発明の新規な組成物であることを企図される。
【0062】
ファージディスプレイ法もまた、モノクロナール抗体を任意の種から作製するために使用できる。この技術を、一本鎖Fab又はFv抗体断片をコードするポリヌクレオチドがファージ粒子の表面上で発現する、完全ヒトモノクロナール抗体の作製に使用することが好ましい(Hoogenboomら、J Mol Biol 227:381(1991);Marksら、J Mol Biol 222:581(1991);米国特許第5,885,793号もまた参照されたし)。各ファージを本明細書中に記載した結合試験を使用して「スクリーニング」し、Aβに親和性を有するそれらの抗体断片を特定できる。したがって、これらの方法は、線維状バクテリオファージの表面上の抗体断片レパートリーの提示を介した免疫選択及び続いてそれらがAβに結合することによるファージの選択を模倣する。このような手順の1つが、Adamsらの名前で提出されたPCT国際出願番号PCT/US98/17364に記載されており、この出願は、このような手法を使用する、高親和性で機能的な、MPL−及びmsk−受容体に対するアゴニスト抗体断片の単離を記載している。このアプローチにおいて、ヒト抗体遺伝子の完全レパートリーを、先に述べたように末梢血リンパ球から天然に再構成されたヒトV遺伝子のクローン化により作成できる(Mullinaxら、Proc Natl Acad Sci(USA)87:8095〜8099(1990))。モノクロナール抗体を調製する具体的な技術は、「抗体:実験室マニュアル(Antibodies:A Laboratory Manual)」、Harlow及びLane編、Cold Spring Harbor Laboratory、1988、に記載されており、その全開示を参照により本明細書に組み込む。
【0063】
モノクロナール抗体及びポリクロナール抗体(抗血清)に加えて、本発明の検出技術は、F(ab)、Fv、V、Vなどの抗体断片及び他の断片も使用できるであろう。しかし、ポリクロナール抗体の使用において、単一特異的抗体群を作製するために、標的エピトープに対する抗血清を吸着する必要があると思われる。現在特許文献及び科学文献によく記載されているように、組み換え的に作製された抗体(免疫グロブリン)及びこれらの変異体を用いることも可能であると思われる。例えば、欧州出願番号EPO8430268.0、EPO85102665.8、EPO85305604.2、国際出願番号PCT/GB85/00392、欧州出願番号EPO85115311.4、国際出願番号PCT/US86/002269及び日本出願番号85239543を参照されたし。これらの開示を、参照により本明細書に組み込む。今記載したように調製した抗体の結合特異性を模倣するであろう、他の組換えタンパク質の調製も可能であろう。
【0064】
F.ノックアウト細胞の作製
本発明に使用できる細胞型は、天然発生的又は人工的のどちらかで構築された、プレセニリン1を発現するがプレセニリン2は発現しない、又はプレセニリン−2を発現するがプレセニリン1は発現しない任意の細胞型を含む。一実施形態において細胞型は、プレセニリン1及びプレセニリン2のダブルノックアウト遺伝型を含む細胞から構築する。公知の方法又は本明細書に開示した方法を使用して、当業者はこのようなダブルノックアウト細胞に、プレセニリン1又はプレセニリン2のどちらかをコードするcDNAを形質転換/形質移入でき、プレセニリン1を発現するがプレセニリン2は発現しない、又はプレセニリン2を発現するがプレセニリン1は発現しない細胞型、並びにγ−セクレターゼ基質をコードするcDNAを、連続して又は同時のどちらかで構築できる。組換え核酸技術、遺伝子操作(即ち、ノックアウト株の作製)及び細胞形質転換/形質移入の任意の公知の方法を使用でき、並びに本明細書に詳細に記載した方法も使用できる。
【0065】
本発明のある実施形態において、PS1/PS2ノックアウト細胞を、An Herremanら、「プレセニリン欠損胚幹細胞におけるγ−セクレターゼ活性の全不活性化(Total inactivation of gamma−secretase activity in presenilin−deficient embryonic stem cells)」Nature Cell Biology 2、461〜462(2000)(参照によりその全体を本明細書に組み込む)に記載のように作製する。マウスの線維芽細胞は、An Herremanら、「プレセニリン2の欠損は軽い肺表現型を引き起こし、アミロイド前駆体タンパク質のプロセッシングに変化はないが、プレセニリン1欠損の胚致死表現型を増強する(Presenilin 2 deficiency causes a mild pulmonary phenotype and no changes in amyloid precursor protein processing but enhances the embryonic lethal phenotype of presenilin 1 deficiency)」、PNAS 1999;96:11872〜11877(参照によりその全体を本明細書に組み込む)に記載のようなノックアウト細胞系に由来する。ノックアウト細胞系の作製は当業者には公知であり、例えば米国特許出願第10/082,804号(参照によりその全体を本明細書に組み込む)に記載されている。本発明の好ましい実施形態において、第1細胞型は、プレセニリン1cDNAを含むベクターを形質移入したプレセニリン1/プレセニリン2ダブルノックアウト細胞系であり、第2細胞型は、プレセニリン2を含むベクターを形質移入したプレセニリン1/プレセニリン2ダブルノックアウト細胞系である。1種の適切なベクター及び実施例において詳しく述べる例示的実施形態のために選択されたベクターはpCFであり、これを、アデノウィルス三分節系リーダー配列を、pcDNA3(Invitiogen、CA、USA)を用いてCMVプロモーターとEcoR1部位との間に挿入することによって、修飾した(Berkner,K Lら、J Virol(1987)61:1213〜1220を参照されたし)。
【0066】
他の態様において、本発明はプレセニリン2含有γ−セクレターゼに対してプレセニリン1含有γ−セクレターゼを優先的に阻害する化合物、このような化合物を含む医薬組成物、このような化合物を使用してアルツハイマー病を治療する方法及びこのような化合物を使用してPS2含有γ−セクレターゼに対してPS1含有γ−セクレターゼを選択的に阻害する方法を提供する。
【0067】
したがって、一態様において、本発明はプレセニリン2含有−γ−セクレターゼに対してプレセニリン1含有γ−セクレターゼを優先的に阻害する化合物に関する。一実施形態において、プレセニリン2含有−γ−セクレターゼに対してプレセニリン1含有γ−セクレターゼを優先的に阻害する化合物は、本発明の試験方法、例えば化合物と共に、プレセニリン1を発現するがプレセニリン2は発現しない、第1の形質移入ダブルノックアウト細胞(以降「第1細胞型」)及びプレセニリン2を発現するがプレセニリン1は発現しない第2の形質移入ダブルノックアウト細胞(以降「第2細胞型」)を別々にインキュベートするステップと、各細胞系におけるAβ1−xの量を測定するステップと、各細胞系におけるAβ1−xの量を使用してEC50を算出するステップと、プレセニリン2含有γ−セクレターゼに対してプレセニリン1含有γ−セクレターゼを優先的に阻害する化合物を特定するステップとにより、特定される。一実施形態において、第1細胞型に関して算出されたEC50値が、第2細胞型に関して算出されたEC50値より小さい場合、本発明の化合物はプレセニリン2含有γ−セクレターゼに対してプレセニリン1含有−γ−セクレターゼを優先的に阻害する。本発明の化合物が、PS2に対してPS1を、少なくとも3〜5倍阻害することが好ましい。更により好ましくは、該化合物はPS2に対してPS1を5〜10倍阻害する。更により好ましくは、該化合物はPS2に対してPS1を10〜15倍、更により好ましくは15〜20倍阻害する。更になお一層より好ましくは、該化合物はPS2に対してPS1を、20倍を超えて阻害する。
【0068】
別の実施形態において、本発明の化合物はスルホンアミド官能基を含む。好ましい実施形態において、本発明の化合物は、スルホンアミド系のγ−セクレターゼ阻害剤から選択される。したがって、様々な実施形態において本発明は、PS2含有γ−セクレターゼに対してPS1含有γ−セクレターゼを優先的に阻害する新規な化合物の特定及び/又は新規な使用(即ち、PS2含有γ−セクレターゼに対するPS1含有γ−セクレターゼの優先的阻害)のための公知の化合物の特定を提供する。このような任意の化合物は、商業的供給源から購入しても、及び/又は当業者に公知の標準的有機合成技術を使用して作製しても、どちらでもよい。
【0069】
G.治療方法
ある実施形態において、本発明は上記の特異的結合剤を、医薬として許容される塩、媒体、担体、希釈剤及び/又はアジュバントと組み合わせて含む組成物を提供する。
【0070】
本発明の組成物は、経口、経腸、非経口(IV、IM、デポーIM、SQ及びデポーSQ)、舌下、鼻空内(吸入)、髄腔内、局所的又は直腸内に投与できる。当業者に公知の剤形が、本発明の特異的結合剤の送達に適切である。
【0071】
本発明の特異的結合剤の治療有効量を含む組成物を提供する。特異的結合剤は、経口投与用の錠剤、カプセル又はエリキシル剤、或いは非経口投与用の殺菌した溶液又は懸濁液などの適切な医薬調製品に処方することが好ましい。通常、上記の特異的結合剤は、当分野で周知の技術及び手順を使用して、医薬組成物に処方する。
【0072】
約1〜500mgの、本発明の特異的結合剤の化合物又は混合物或いは生理学的に許容される塩又はエステルを、生理学的に許容される媒体、担体、賦形剤、結合剤、保存料、安定剤、香味料などと、許容された医薬の実践により必要とされる単位剤形中に組み合わせる。それらの組成物又は調製品中の活性物質の量は、表示した範囲の適切な用量が得られるほどである。組成物は好ましくは単位剤形中に処方され、各用量は約2〜約100mg、より好ましくは約10〜約30mgの活性成分を含む。「単位剤形」という用語は、ヒト対象及び他の哺乳動物の単位用量として適切な、物理的に分離した単位を指し、各単位は所望の治療効果を生み出すために算出された、所定量の活性材料を、適切な医薬賦形剤と併せて含む。
【0073】
組成物の調製のために、1種又は複数種の本発明の特異的結合剤を適切な医薬として許容される担体と混合する。化合物の混合又は添加に際して、得られた混合物は溶液、懸濁液、乳剤などであってよい。リポソーム懸濁液もまた医薬として許容される担体として適切であると思われる。これらは当業者に公知の方法に従って調製できる。得られた混合物の形態は、意図する投与様式及び選択した担体又は媒体における化合物の溶解度を含む、多くの要因に依存する。有効濃度は、治療される疾患、障害又は病態の少なくとも1つの症状を軽減させる又は改善するために十分であり、実験的に確定できる。
【0074】
本明細書で提供される特異的結合剤の投与に適切な医薬担体又は媒体は特定の投与様式に適切であり、当業者に公知の任意のこのような担体を含む。更に、活性材料もまた、所望の作用を損なわない他の活性材料、或いは所望の作用を補足する又は別の作用を有する材料と混合できる。特異的結合剤は、組成物中の単一の医薬活性成分として処方でき、又は他の活性成分と併用もできる。
【0075】
特異的結合剤の溶解度が不十分である場合、可溶化する方法を使用できる。このような方法は公知であり、限定するものではないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)のような共溶媒の使用、Tween(登録商標)のような界面活性剤の使用、及び重炭酸ナトリウム水溶液への溶解を含む。塩又はプロドラッグなどの特異的結合剤の誘導体はまた、有効な医薬組成物の処方に使用できる。
【0076】
化合物の濃度は、化合物を投与する目的である障害の、少なくとも1つの症状を軽減させる又は改善する投与量の送達に有効である。通常、組成物は単回投与用に処方する。
【0077】
本発明の特異的結合剤は、それらが体から迅速に放出されることを防止する担体、例えば持続放出型製剤又はコーティングなどと共に調製できる。このような担体は、放出制御製剤、例えば限定するものではないが、マイクロカプセル化送達系を含む。治療対象に望ましくない副作用を起こさずに、治療的に有用な効果を発揮するために十分な量の活性化合物を、医薬として許容される担体に包含させる。治療的有効濃度は、公知のインビボ及びインビトロのモデル系において、治療する障害に関して特異的結合剤を試験することによって実験的に確定できる。
【0078】
本発明の特異的結合剤及び組成物は、複数回投与又は単回投与用の容器に封入できる。封入した特異的結合剤及び組成物は、例えば組み立てて使用できる部品を含むキットで提供できる。例えば、凍結乾燥形態の化合物阻害剤と、適切な希釈剤とを、使用前に組み合わせるための分離した成分として提供できる。キットは、化合物阻害剤及び共投与用の第2の治療薬を含み得る。阻害剤及び第2の治療薬は、分離した成分として提供できる。キットは、複数の容器を含むことができ、各容器は本発明の化合物の1つ又は複数の単位用量を保持する。容器は、所望の投与様式に合わせることが好ましく、限定するものではないが、経口投与用には錠剤、ゲルカプセル、持続放出カプセルなど、非経口投与用には、デポー製剤、プレフィルドシリンジ、アンプル、バイアルなど、局所投与用にはパッチ、メディパッド、クリームなどを含む。
【0079】
薬剤組成物中の活性化合物の濃度は、活性化合物の吸着、不活性化及び排出の比率、投与計画及び投与量並びに当業者に公知の他の要因に依存するであろう。
【0080】
活性成分は、一回で投与してもよく、又は時間の間隔をあけて投与すべき多数の少用量に分割してもよい。正確な容量及び治療期間は治療する疾患の関数であり、公知の試験プロトコルを使用して実験的に、或いはインビボ又はインビトロの試験データから補外法によって確定できると理解するべきである。濃度及び用量の値は、軽減されるべき病態の重篤性によってもまた変更可能であることに留意されるべきである。任意の特定の対象に関して、特定の用法用量は個人の必要性及び投与する、又は組成物の投与を管理する人の専門的な判断に従って、時間と共に調整すべきであること、並びに本明細書中に説明した濃度範囲は単なる例示であり、特許請求する組成物の範囲又は実践を限定するつもりではないことを更に理解すべきである。
【0081】
経口投与を望む場合、化合物は、胃の酸性環境から化合物が保護されるような組成物中に提供されるべきである。例えば、組成物はその完全性を胃の中で維持し、活性化合物を腸内で放出する腸溶性コーティングで処方できる。組成物はまた、制酸剤又は他のこのような成分と併用して処方できる。
【0082】
経口組成物は、一般に不活性な希釈剤又は食用の担体を含み、錠剤に固めたり、又はゼラチンカプセルに封入したりできる。経口投与治療の目的で、活性特異的結合剤(specific binding agent又はspecific binding agents)は、賦形剤に組み込むことができ、錠剤、カプセル又はトローチの形態で使用できる。医薬として混合可能な結合剤及びアジュバント材料も、組成物の一部として含み得る。
【0083】
錠剤、ピル、カプセル、トローチなどは、任意の以下の成分又は性質の似通った特異的結合剤を含むことができる:限定するものではないが、トラガカントガム、アカシア、コーンスターチ又はゼラチンなどの結合剤、微結晶セルロース、デンプン又は乳糖などの賦形剤、限定するものではないが、アルギン酸及びコーンスターチなどの崩壊剤、限定するものではないが、ステアリン酸マグネシウムなどの滑剤、限定するものではないが、コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤、ショ糖又はサッカリンなどの甘味料並びにペパーミント、サリチル酸メチル又はフルーツの香りなどの香味料。
【0084】
単位剤形がカプセルの場合、上記の型の材料に加えて、油脂などの流動担体を含むことができる。更に、単位剤形は、単位剤形の物理的形態を修正する様々な他の材料、例えば糖衣及び他の腸溶剤を含むことができる。特異的結合剤はまた、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、オブラート、チューイングガムなどの成分として投与できる。シロップは、活性特異的結合剤に加えて、甘味料としてショ糖及び特定の保存料、染料及び着色料並びに香味料を含むことができる。
【0085】
活性材料はまた、所望の作用を損なわない他の活性材料又は所望の作用を補足する材料と混合できる。
【0086】
非経口、皮内、皮下又は局所適用に使用する溶液又は懸濁液は、任意の以下の成分を含むことができる:注射用の水、生理食塩水、固定油、ゴマ油、ココナッツ油、ピーナッツ油、綿実油、などの天然植物油、又はオレイン酸エチルなどの合成脂質媒体、ポリエチレングリコール、グリセリンプロピレングリコール又は他の合成溶媒などの殺菌した希釈剤;ベンジルアルコール及びメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸及び亜硫酸水素ナトリウムなどの酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)なとのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩及びリン酸塩などのバッファー;並びに塩化ナトリウム及びデキストロースなどの張性を修正する薬剤。非経口の製剤は、アンプル、使い捨て注射器又は複数回投与の、ガラス製、プラスチック製又は他の適切な材料で作られたバイアルに封入できる。バッファー、保存料、酸化防止剤などは必要に応じて組み込むことができる。
【0087】
静脈内投与する場合、適切な担体には生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)及びグルコース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びこれらの混合物などの増粘剤及び可溶化剤を含む溶液が挙げられる。組織標的リポソームを含むリポソーム懸濁液もまた、医薬として許容される担体として適切である。これらは、例えば米国特許第4,522,811号に記載の公知の方法に従って調製できる。
【0088】
活性特異的結合剤は、化合物が体から迅速に放出されることを防止する担体、例えば持続放出型製剤又はコーティングなどと共に調製できる。このような担体は、放出制御製剤、例えば限定するものではないが、インプラント及びマイクロカプセル化送達系並びに生分解性、生体適合性のポリマー、例えばコラーゲン、エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、ポリオルトエステル、ポリ乳酸などを含む。このような製剤の調製方法は、当業者には公知である。
【0089】
本発明の組成物は、経口、非経口(IV、IM、デポーIM、SQ及びデポーSQ)、舌下、鼻空内(吸入)、髄腔内、局所的又は直腸内に投与できる。当業者に公知の剤形が、本発明の化合物の送達に適切である。
【0090】
本発明の化合物は、経腸的に又は非経口で投与できる。経口投与する場合、本発明の特異的結合剤は、当業者に周知の経口投与用の普通の剤形で投与できる。これらの剤形は、錠剤及びカプセルの普通の固体単位剤形並びに溶液、懸濁液及びエリキシル剤などの液体剤形を含む。固体剤形を使用する場合、本発明の特異的結合剤を1日に1回又は2回のみ投与する必要があるように、持続放出型であることが好ましい。
【0091】
経口剤形は1日に1、2、3又は4回、対象に投与することができる。本発明の特異的結合剤は、1日に3回又はそれより少ない回数のどれかで投与することが好ましく、1日に1回又は2回がより好ましい。したがって、本発明の特異的結合剤は経口剤形で投与することが好ましい。経口剤形を使用するならどれであっても、本発明の特異的結合剤を胃の酸性環境から保護するように設計することが好ましい。腸溶性コーティング錠剤は当業者に周知である。更に、酸性の胃から保護するために、それぞれがコーティングされた小球を詰めたカプセルもまた当業者に周知である。
【0092】
上で述べたように、不斉炭素原子が存在するかどうかに依存して、本発明の特異的結合剤は、異性体の混合物として、ラセミ化合物として、又は純粋な異性体の形態で存在できる。
【0093】
特異的結合剤の塩は、好ましくは医薬として許容される又は非毒性の塩である。合成目的又は精製目的では、医薬として許容されない塩もまた使用可能である。
【0094】
ある実施形態において、組成物は当業者に公知の、アルツハイマー病の治療に有効な追加の薬剤を含むことができる。
【0095】
一態様において、本発明は、本発明の試験方法により特定される有効量の化合物又はこれらの塩を対象に投与するステップを含む、このような治療を必要とする対象におけるアルツハイマー病の治療及び/又は予防方法を提供する。一態様において、対象がアルツハイマー病と診断された場合に、この治療方法が使用できる。別の態様において、この治療方法はアルツハイマー病の発症を防ぐ又は遅らせるのに役立ち得る。別の態様において、この治療方法は、アルツハイマー病の進行を遅くするのに役立ち得る。別の態様において、この治療方法は上記疾患が発現する又は進行することを予防し得る。
【0096】
この態様の実施形態において、本発明の試験方法により発見された化合物の有効量は、医薬として許容される塩、担体、媒体、アジュバント又は希釈剤を含む組成物中に含まれる。
【0097】
本発明の方法の好ましい態様において、対象はヒトである。
【0098】
治療方法は、治療有効量:経口投与用では約0.1mg/日〜約1000mg/日;非経口、舌下、経鼻的、髄腔内投与では約0.5〜約100mg/日;デポー投与及びインプラントでは約0.5mg/日〜約50mg/日;局所投与では0.5mg/日〜約200mg/日;直腸投与では約0.5mg〜約500mgを用いる。好ましい態様において、経口投与のための治療有効量は約1mg/日〜約100mg/日であり、非経口投与では約5〜約50mg/日である。より好ましい態様において、経口投与のための治療有効量は約5mg/日〜約50mg/日である。
【0099】
別の実施形態において、本発明は、細胞を、プレセニリン2含有γ−セクレターゼに対してプレセニリン1含有γ−セクレターゼを選択的に阻害するために有効であると本発明の試験により特定された化合物に接触させるステップを含む、細胞内でプレセニリン2含有γ−セクレターゼに対してプレセニリン1含有γ−セクレターゼを選択的に阻害する方法を提供する。一実施形態において、該方法はプレセニリン2含有γ−セクレターゼに対してプレセニリン1含有γ−セクレターゼを約3〜5倍阻害する。更により好ましくは、該方法はPS2に対してPS1を約5倍〜約10倍、更に好ましくは約10倍〜15倍、更により好ましくは約15倍〜約20倍阻害する。更になおより好ましくは、該方法はPS2に対してPS1を、約20倍を超えて阻害する。
【0100】
一実施形態において、細胞は哺乳動物細胞である。好ましい実施形態において、細胞はヒト細胞である。他の実施形態において、細胞は単離哺乳動物細胞であり、好ましくは単離ヒト細胞である。
【0101】
一実施形態において、このプレセニリン2含有γ−セクレターゼに対してプレセニリン1含有γ−セクレターゼを選択的に阻害する方法は、プレセニリン1含有γ−セクレターゼの活性に関連のある疾患又は障害を有する対象の治療に使用できる。一実施形態において、対象はプレセニリン1含有γ−セクレターゼに関連する疾患又は障害の臨床的兆候をはっきり示す。別の実施形態において、対象はプレセニリン1含有γ−セクレターゼに関連する疾患又は障害と診断される。好ましい実施形態において、疾患及び障害はプレセニリン1含有γ−セクレターゼに関連するが、プレセニリン2含有γ−セクレターゼには関連しない。この方法において有用な特異的結合剤が、本発明の試験によって、このプレセニリン2含有γ−セクレターゼに対するプレセニリン1含有γ−セクレターゼの選択的阻害剤として特定された場合、プレセニリン1含有γ−セクレターゼに関連する疾患及び障害の治療法は、プレセニリン2含有γ−セクレターゼの活性(例えば、ノッチシグナル伝達)に悪影響を与えずに治療できる。
【0102】
以下の実施例は、本発明の具体的な実施形態の単なる例示であり、添付の特許請求の範囲により規定される発明を限定すると解釈するべきではない。
【実施例】
【0103】
(実施例1)
PS1及びPS2により産生されるAβの違いに関与する構造的要素の特定
本発明者らは、PS1形質移入ダブルKO細胞は、PS2形質移入細胞より数倍多くの全Aβ(Aβ40+Aβ42)を産生することを見出した。PS1及びPS2単独ノックアウト細胞と比較した場合、38倍差までが他者により報告された。Laiら、J.Biol.Chem.、Jun 2003;278:22475〜22481を参照されたし。Aβの産生におけるこの違いに関する根拠を理解するために、本発明者らは、それぞれにおいてAβ産生活性を与える、PS1及びPS2における具体的な構造要素を特定した。
【0104】
全Aβ濃度を確定する構造要素を探すために、本発明者らは、PS1及びPS2の部分に由来する様々なキメラプレセニリン分子を調製し、それらをpCFベクターにサブクローン化した。様々なキメラ分子を、図5に例示し、PS1又はPS2部分の配列起源もまた図5に示した。
【0105】
PS1/PS2ダブルノックアウト細胞と、APPswに加えてPS1又はPS2のどちらか或いはキメラ分子についての、一過性形質移入をその後実施した(図5に示した)。Aβ1−xの濃度を、条件培地においてそれぞれの形質移入細胞から測定した。PS1及びPS2ノックアウト細胞型の作製方法並びにPS1、PS2又はキメラの形質移入方法は、上に記載している。
【0106】
キメラの分子クローン化及び構築
ヒトPS1、PS2及びAPPsw cDNAインサートを、pcDNA3(Invitiogen、CA、USA)を用いて、アデノウィルス三分節系リーダー配列(Berknerら、(1987)J.Virol.Apr;61(4):1213〜20、「アデノウィルス組換え体における、ポリオーマウィルス中型T抗原及びジヒドロ葉酸還元酵素の豊富な発現(Abundant expression of polyomavirus middle T antigen and dihydrofolate reductase in an adenovirus recombinant)」)を、ATG開始コドンの38bp上流の、CMVプロモーターとEcoR1部位との間に挿入することによって修飾された、pCFベクターにサブクローン化した。プレセニリンキメラの構築は、PCRに基づいた。PS1骨格とPS2断片を含むキメラの作製のために、本発明者らは、全pCFベクターに加えて保持されるべき全PS1配列と、最終キメラにおいて使用されるPS2断片のみを含む小型PCR断片とを含む、大型PCR断片をまず作製した。2つのPCR断片を、平滑末端法において、ラピッドDNAライゲーションキット(Rapid DNA ligation kit)(Roche、IN、USA)によってその後連結した。本発明者らは、全てのPCR反応に関してpfu Turbo DNA ポリメラーゼキット(pfu Turbo DNA polymerase kit)(Strategene、CA、USA)を使用した。PCRにより導入される突然変異体の可能性を避けるために、本発明者らはまず両方の鎖において全インサートを配列決定した。本発明者らは、その後PCR作製ベクターから配列確認インサートを取り出し、それをPCRを介さなかった別のpCFベクターにサブクローン化した。PS2骨格とPS1断片を含むキメラの作製のために、本発明者らは、全pCFベクターに加えて保持されるべき全PS2配列と、最終キメラにおいて使用されるPS1断片のみを含む小型PCR断片とを含む、大型PCR断片をまず作製した。他の全てのクローン化手順は、上記と同じであった。
【0107】
(実施例2)
標準曲線の作製
Aβ濃度の差は、プレセニリン活性又はプレセニリン発現濃度における差のどちらかによると思われるので、本発明者らは異なるプレセニリン分子の相対発現濃度を解明し、その後相対タンパク質濃度によりAβ濃度を標準化する必要があった。標準化Aβ濃度は、異なるプレセニリン構築体の相対活性又は酵素回転率を反映するはずである。
【0108】
しかし、主に単独のPS1又はPS2抗体はPS1及びPS2の両方並びに全キメラを検出できないため、異なるキメラの相対発現濃度の測定は容易な課題ではなかった。例えば、Mab1563(Chemicon、Temecula、CA、USA)により製造されたウェスタンブロット上の、PS1N末端に関するシグナルと、PC235T(Oncogene、San Diego、CA、USA)によるPS2 C末端に関するシグナルとは、容易に検出できるが、2種の抗体からのシグナルは、抗体特性、例えば親和性における固有の差のため、PS1及びPS2タンパク質の相対発現濃度を測定するための比較はできない。これにより、PS1及びPS2抗体による、それらそれぞれの抗原に対して産生されるシグナル間の相関関係の確定における問題が例示された。
【0109】
この問題はPS12B(N末端がPS1由来であり、C末端がPS2由来であるプレセニリンキメラ分子)に焦点を合わせることにより解決した。PS12Bは、最初に一本鎖ポリペプチドとして合成し、続けてMab1563により認識される成熟PS1N末端、及びPC235Tにより認識される成熟PS2C末端に切断する。NTF(N末端断片、PS1エピトープ)及びCTF(C末端断片、PS2エピトープ)の両方が同じポリペプチド鎖に由来するため、2つの断片の間には一定の比率があるはずである。NTF及びCTFが細胞内で同じ安定性を有すると仮定すると、比率は1:1であると思われ、それは、NTF及びCTFは細胞内で等モル濃度で存在することを暗示する。したがって、ウェスタン上の両方のMab1563及びPC235Tの検出バンドが似たような強度である場合、2種の抗体は特定の実験条件の下で、2種の異なる抗原に対して類似の感受性を有し、シグナルを比較できるという結論を出せる。
【0110】
ウェスタンブロットでPS1及びPS2抗体に関する同一のシグナルが得られることは必ずしも実践的ではないので、実際にはゲルに異なる量のPS12Bを載せて、Mab1563及びPC235T両方のシグナルを同じブロットで検出した。PS12Bからのウェスタンシグナルは、他のキメラ或いはPS1又はpS2の相対量に由来する標準曲線の確立に使用できる。
【0111】
(実施例3)
発現濃度の比較
標準曲線を用いて試料を同じウェスタンゲル上に載せて、PS12Bを標準として、異なるキメラの相対発現濃度が比較できる。図6は、異なるキメラに関する相対タンパク質発現濃度をどのように測定するかの例を示す。実験において、各プレセニリンcDNA構築体を、APPswを用いてダブルKO細胞に同時形質移入した。一晩インキュベートした後で、細胞を溶解し、それぞれの形質移入細胞からタンパク質を抽出した。ウェスタン分析のために、5μgのタンパク質調製品を載せ、プレセニリンのNTF及びCTFを、MAB1563及びPC235Tを用いて、同じブロット上で検出した(標準として、様々な量のPS12Bを同じゲルに載せたが、表示を明瞭にするためにここには示していない)。ウェスタンシグナルをまずフィルム(A)をスキャンすることにより定量し、その後シグナルを各抗体に関して標準曲線と比較し、ウェスタンにおいて同じ量のシグナルを発生するであろう、PS12B形質移入細胞から等量のタンパク質調製品として発現させた。
【0112】
以下の実施例2〜4に記載の方法を使用して、キメラ構築体の相対活性(Aβ産生として測定)を測定した。表1は、図6に示した様々なプレセニリンキメラ構築体の相対活性の測定を例示する。基本的には、図(6B)において測定したタンパク質濃度を、PS2の濃度を1に適宜割り当てることによって標準化し、値は表1の3番目の列に示した。最後に、まずAβ濃度(表1の2列目)を相対タンパク質量(表1の3列目)で割ることによって相対活性を得、PS2の相対活性を1に割り当てることによって、再度標準化した。
【0113】
表1は、Aβ濃度を相対タンパク質量で割り、PS2の相対活性を1に適宜割り当てることによる、様々なプレセニリン構築体の相対活性の測定を、具体的に説明するための例を提供する。
【0114】
【表1】

【0115】
上に例示した相対活性の導き方を、他の実験において追加のキメラに適用し、他のいくつかの反復実験による全関連データを図7に要約した。
【0116】
図7より、キメラPS12A、C及びEの全てがPS1と同様の相対活性を有し、PS12BはPS1よりわずかに低いが、PS2よりはるかに高い相対活性を有することが明らかである。
【0117】
図7は、PS12A、PS12B及びPS12CがPS1と同様の活性を有し、一方PS21A及びPS21CはPS2と同様の活性を有し、PS12D及びPS21DはPS1とPS2との中間であることを示し、したがって、PS1のN末端の1/3は高い相対活性を授かり、この領域の前半(PS1のアミノ酸残基1〜70)は、後半(PS1のアミノ酸残基71〜127)よりわずかに重要であるという結論を引き出す。PS21Fについてのデータは、N末端の1/6はN末端の1/3による活性の全ての貢献を占めることを示唆できるが、PS12D及びPS21Dについてのデータは、この観察と矛盾する。したがって全体では、高いAβ又は低いAβγ−セクレターゼ活性を授かるように思われるのは、N末端の1/3(PS1のアミノ酸残基1〜127)である。
【0118】
(実施例4)
Aβ1−xに関するELISA試験
Aβ1−xは、捕捉用に専売抗体mAb266及び検出用に専売抗体mAb3D6を使用するELISA試験により、操作的に定義されるので、Aβ1−xは、Aβ38、Aβ40及びAβ42を含む、Aβ1−23より長い、任意のAβペプチドを表す。mAb266に関するエピトープはAβ16−23であり、mAb3D6に関するエピトープはAβ1−5である。Aβのペプチド配列は、図3に見出すことができる。Aβ40のELISAには、捕捉用に抗体mAb266及び検出用に2G3(Aβ40に特異的)をそれぞれ用いた。更に、Aβ42のELISAには、捕捉用に抗体mAb266及び検出用に抗体21F12をそれぞれ用いた。Aβ16−23に対する抗体を産生するハイブリドーマを、参照によりその全体を本明細書に組み込む、Kohler and Milstein(Nature 256:495 1975)及び米国特許第4,666,829号に述べられた、標準的ネズミ融合手順により作製した。本明細書中の「発明を実施するための最良の形態」も参照されたい。簡潔には、Aβ13−28を用いて免疫化し、2C−11(T細胞受容体モノクロナール抗体)に接合した2匹のBALB/cマウスを犠牲にし、脾臓を取り出した。30メッシュのステンレス製の篩に脾臓を押圧して通すことにより、混合した脾細胞を得た。これらをP3X63Ag8ネズミ骨髄腫細胞(アミノプテリン感受性)と、35%ポリエチレングリコールにおいて融合比10:1で融合した。これらの細胞を、2×10胸腺細胞/mlの存在下で、96ウェル組織培養プレートに播種した。アミノプテリンの存在で毒を加え、ヒポキサンチン、チミン及び10%ウシ胎児血清を用いて増強したダルベッコ変法イーグル培地における細胞の成長により、ハイブリドーマを選択した。ハイブリドーマを、ELISAを介したAβ13−28及びAPPタンパク質に対する反応性に関してスクリーニングした。陽性クローンを、2回サブクローン化した。クローンのアリコートを凍結し、液体窒素中で保存した。陽性クローンの上清を、モノクロナール抗体の更なる精製のために多量に作製した。同様の方法を、Aβ1−3に対するモノクロナール抗体の作製のために使用し、ここではマウスを初めはAβ1−5を用いて免疫化し、ポリクロナール羊抗マウス抗体に接合した。
【0119】
ELISA試験のために、96ウェルELISAプレートの各ウェルを、ウェルコーティングバッファー(pH8.5)中に10μg/mlの266の100μlを用いて4℃で一晩コーティングし、0.25%ヒトBSA溶液を用いて25℃で120分間ブロッキングした。ブロッキング溶液を除去した後、プレートは洗浄せずにそのまま使用できる。
【0120】
ELISA試験を室温で実施した。γ−セクレターゼ阻害剤と共に又はなしで一晩培養した形質移入細胞の条件培地50μlを、ELISAプレートの各ウェルに加え、1時間インキュベートした。プレートを、0.05%Tween−20を加えたTris緩衝生理食塩水(TBS)を用いて洗浄した後で、50μlのビオチン化3D6抗体(0.5μg/ml)を各ウェルに加えて45分間インキュベートした。その後プレートを、0.05%Tween−20を加えたTris緩衝生理食塩水(TBS)を用いて洗浄し、50μlのストレプトアビジン−HRPコンジュゲート(streptavidin−HRP conjugate)(1:5000希釈、Amersham、Piscataway、NJ、USA、catalogue number:RPN4401)を各ウェルに加え、30分間インキュベートした。次にプレートを、0.05%Tween−20を加えたTris緩衝生理食塩水(TBS)を用いて洗浄し、50μlの基質(1ステップスローTMB−Elisa(1−step slow TMB−Elisa)Pierce、Woburn、MA、USA、catalogue number:34024)を各ウェルに加え、15分間インキュベートした。最後に、基質反応を、各ウェルに15μl、2NのHSOを加えることによって終了し、SpectraMax Plus(Molecular Devices、Sunnyvale、CA、USA)でODの測定値を得た。その後試料のOD測定値と標準の測定値を比較することによって、試料のAβ濃度を得た。
【0121】
様々な濃度のγ−セクレターゼ阻害剤で処理した試料に関して、XLフィットソフトウェアプログラム(XLfit software program)(IDBS、Alameda、CA、USA)を用いて、EC50値を、Aβ1−xの濃度に適合した曲線より導いた。試験化合物に暴露した、プレセニリン1形質移入細胞及びプレセニリン2形質移入細胞に関して得られたEC50値の差は、阻害の差の指標として機能した。
【0122】
(実施例5)
プレセニリン2含有γ−セクレターゼに対してプレセニリン1含有γ−セクレターゼを優先的に阻害する化合物の特定
プレセニリン2含有γ−セクレターゼに対してプレセニリン1含有γ−セクレターゼを優先的に阻害する化合物を特定するために、公知のγ−セクレターゼ阻害化合物を、プレセニリン1形質移入細胞及びプレセニリン2形質移入細胞の両方と共に、様々な濃度で一晩インキュベートした。PS1/PS2ダブルノックアウト細胞に由来する、形質移入マウスの線維芽細胞を37℃、10%COにおいて、2〜10%のウシ胎児血清(FBS)と、100μg/mlのペニシリン/ストレプトマイシン(Pen/Strp)(Invitrogen Corporation、Carlsbad、CA、USA)を含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)において成長させる。
【0123】
細胞培養培地を、形質移入細胞系からその後除去し、実施例1に記載したように、ELISA試験によりAβ1−xの濃度に関して分析した。Aβペプチドを補足するためにmAb266でコーティングしたELISAプレートを使用し、その後ビオチン化mAb3D6を用いてAβペプチドを検出することにより、ELISA試験を実施する。EC50値を、全ての試験化合物に関して得た。試験化合物に暴露した、プレセニリン1形質移入細胞及びプレセニリン2形質移入細胞に関して得られたEC50値の差は、阻害の差の指標として機能する。
【0124】
(実施例6)
GenePorter2を用いた形質移入
約30000個の細胞を96ウェルプレートの各ウェルに入れた。20時間後、培養培地を、各ウェルにおいて60μlのOptimem medium(Invitrogen Corporation、Carlsbad、CA、USA)に交換した。それと同時に、以下の2の混合物を調製した。混合物A:18μlのGenePorter2に81μlのOptimemを加える;混合物B:2μgのプラスミドDNAに100μlの希釈剤B(Gene Therapy Systems、San Diego、CA)を加える。その後、33μlの混合物Aを66μlの混合物Bに加え、5〜15分間インキュベートすることによってマスター混合物を調製した。最終的に、14μlのマスター混合物を各ウェルの細胞に加えた。
【0125】
5時間後、各ウェルの培地と形質転換混合物を、2%FBSを加えた、Pen/StrpのないDMEMと交換した。γ−セクレターゼ阻害剤を、阻害の研究のために細胞にもまた加えた。
【0126】
(実施例7)
ヌクレオフェクター(Nucleofector)IIを用いた形質移入
約500〜1000万個(又は100〜1000万)の細胞をT−150プレートから収穫し、200×gで7分間遠心分離にかけることによって回収した。その後、細胞ペレットを10mlの温RPMI培地ですすぎ、200×gで5分間再度遠心分離にかけた。次に、細胞ペレットを100μlの溶液Rに再懸濁した。この細胞懸濁液に、1〜2μgのDNAを加え、細胞−DNA混合物を、Amaxaエレクトロポレーション装置(Amaxa Inc.、Gathersberg、MD、USA)にあらかじめセットしたプログラムT−20を用いて、直ちにエレクトロポレーションにかけた。1度エレクトロポレーションを行ったら、1mlの室温のRPMIを、エレクトロポレーションを行った細胞に加えた。RPMI添加の2〜5分後、混合物を5〜10mlの10%FBS含有DMEMに移し、96ウェルプレートに播種した。1〜3時間後、γ−セクレターゼ阻害剤を、阻害の研究のために細胞に加えた。
【0127】
表1は、多数の公知のγ−セクレターゼ阻害化合物を使用して得た結果を要約する。例えば、いくつかの試験済み化合物はスルホンアミド化合物であり、一方いくつかは非スルホンアミド化合物である。プレセニリン2形質移入細胞及びプレセニリン1形質移入細胞に関して得られたEC50値(表1の最後の列に示した)の比は、試験化合物がプレセニリン1を優先的に阻害できる度合いを示す。例えば、表1は、試験したスルホンアミド化合物は、プレセニリン2含有γ−セクレターゼに対するプレセニリン1含有γ−セクレターゼの阻害において、1.5〜61倍強力であり、試験した非スルホンアミド化合物は、わずか1.5〜2倍強力であったことを示している。表2において、A、B及びCの列に示した値はEC50値(nM)である。阻害が非常に低かった場合、EC50値はプログラムにより発生されなかった。したがって、EC50値は提供されない。むしろ、阻害の割合は、プログラムによって作り出された阻害曲線に基づいて確立された。割合は、化合物の濃度が10μMにおける阻害の割合を表す。
【0128】
(実施例8)
低分子阻害剤のPS1選択性に関する構造的基礎の特定
上で述べたように、特定の低分子阻害剤、具体的にはスルホンアミドはPS1含有γ−セクレターゼの優先的阻害を示し、一方非スルホンアミド阻害剤は、PS1対PS2γ−セクレターゼに関して少量の選択性を有するだけである。代表的実験からの用量反応曲線及びEC50値を図9に示す。阻害剤のPS1/PS2選択性についての2つの独立した実験からの平均値を図11に示す。COMPOUND S−1は、PS1に関して約51倍選択的であり、BMS299897はPS1に関して約35倍選択的であり、一方L−685,458はPS1に関してわずか約3倍選択的であり、DAPTは実質的にはPS2に関して2倍選択的である。Compound S−1で表される型の更なるスルホンアミド阻害剤もまた、優先的PS1選択性を示す(データ非掲載)。主にスルホンアミド系の阻害剤による、PS2とPS1との阻害の差の観察を基に、本発明者らは、この阻害の差に関する構造的基礎の調査をすすめた。本発明者らは、キメラPS1/PS2分子(図10に例示)を用い、阻害剤の有効性における差に関連するPS1のドメインをマッピングした。初めの一組のキメラプレセニリン分子を評価することにより、PS1の中間の1/3(残基128〜298)が、Compound S−1及びBMS299897による高い阻害能に関して必要且つ十分であることが明らかになった(図11)。Compound S−1及びBMS299897の両方に関して、PS1/2BのEC50値はPS1のEC50値と同様であり、一方PS1/2A及びPS1/2CのEC50値はPS2のEC50値と同様である。更に言えば、Compound S−1及びBMS299897による阻害の点から見ると、この構築体の大部分がPS2配列に含まれるという事実にもかかわらず、PS2/1Cに対する阻害剤の有効性は、まさにPS1のように作用した。前記のように(図9)、DAPT及びL−685,458などの非スルホンアミド阻害剤は、PS1に対しても、PS2に対しても、3倍を超える選択性を示さず、キメラはこの選択性の低さに関する一貫したいかなる根拠も明らかにしなかった。更に、詳細な分析(キメラ構築体及び点突然変異を用いた技術を使用)により、PS1のアミノ酸残基L172、T281及びL282を、Compound S−1によるPS1の選択的阻害のために必要且つ十分であると特定した。これらの残基はまた、BMS299897によるPS1の選択的阻害にも一部貢献している。
【0129】
前述の開示は、本発明のある具体的な実施形態を強調するものであり、これらと同等の全ての改善又は改変は、添付の特許請求の範囲において説明したように、本発明の精神及び範囲内であると理解すべきである。
【0130】
【表2−1】


【表2−2】


【表2−3】


【表2−4】


【表2−5】


【表2−6】


【表2−7】


【表2−8】


【表2−9】

【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1A】プレセニリン1(PS1)アミノ酸配列(配列番号2)及びPS1アミノ酸配列をコードする核酸配列(配列番号1)を表す図である。
【図1B】プレセニリン1(PS1)アミノ酸配列(配列番号2)及びPS1アミノ酸配列をコードする核酸配列(配列番号1)を表す図である。
【図1C】プレセニリン1(PS1)アミノ酸配列(配列番号2)及びPS1アミノ酸配列をコードする核酸配列(配列番号1)を表す図である。
【図2A】プレセニリン2(PS2)アミノ酸配列(配列番号4)及びPS2アミノ酸配列をコードする核酸配列(配列番号3)を表す図である。
【図2B】プレセニリン2(PS2)アミノ酸配列(配列番号4)及びPS2アミノ酸配列をコードする核酸配列(配列番号3)を表す図である。
【図2C】プレセニリン2(PS2)アミノ酸配列(配列番号4)及びPS2アミノ酸配列をコードする核酸配列(配列番号3)を表す図である。
【図3】Aβ43(Aβ43)アミノ酸配列(配列番号5)を表す図である。
【図4】スウェーデン変異アミロイド前駆体タンパク質(Swedish Mutation Amyloid Piecursor Protein)(APPswe)(配列番号6)に関するアミノ酸配列を表す図である。
【図5】PS1/PS2キメラの配列起源を示し、異なるキメラの相対タンパク質発現濃度の測定を表す図である。
【図6】図5において例示した様々なプレセニリン構築体の相対活性の測定を示す図である。
【図7】PS1及びPS2のどちらのセグメントがAβの産生に大きく関与するかの測定に使用したPS1/PS2のキメラ分子を表す図である。これにより、PS12A、PS12B及びPS12CがPS1と同様の活性を有し、一方PS21A及びPS21CはPS2と同様の活性を有し、PS12D及びPS21Dは、PS1及びPS2の中間であることが実証され、したがってPS1のN末端の1/3が高い相対活性を与え、この領域の前半(PS1におけるアミノ酸残基1〜70)が後半(PS1におけるアミノ酸残基71〜127)と比べてわずかに重要であるという結論が引き出された。PS21Fについてのデータにより、N末端からの1/6がN末端からの1/3による活性に対する全貢献を占めることが示唆され得るが、PS12D及びPS21Dのキメラからのデータはこの観察と矛盾する。したがって全体としては、γ−セクレターゼ活性を刺激するほぼ全ての能力を有すると思われるのは、N末端からの1/3(PS1におけるアミノ酸残基1〜127)である。
【図8】PS1の中間の1/3部分をコードするプレセニリン1(PS1)アミノ酸配列(配列番号9)を表す図である。
【図9】PS1γ−セクレターゼの阻害に関する、異なる化合物の実験による用量反応曲線及びEC50値の図である。
【図10】キメラPS1/PS2分子のマッピングの図である。
【図11】様々な阻害剤のPS1/PS2選択性についての2つの独立した実験の平均値を示す表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物がプレセニリン2含有γ−セクレターゼに対してプレセニリン1含有γ−セクレターゼを優先的に阻害するかどうかを確定する方法であって、
(a)プレセニリン1を発現するがプレセニリン2を発現しない第1細胞型及びプレセニリン2を発現するが、プレセニリン1を発現しない第2細胞型を、前記化合物と共に個別にインキュベートするステップと、
(b)Aβ40/42の量を、各細胞系において測定するステップと、
(c)各細胞系におけるAβ40/42に関するEC50値を算出するステップと、
(d)第1細胞型に関して算出されたEC50値が、第2細胞型に関して算出されたEC50値より小さい場合、前記化合物がプレセニリン2含有γ−セクレターゼに対してプレセニリン1含有γ−セクレターゼを優先的に阻害することを確定するステップと
を含む方法。
【請求項2】
第1細胞型が、プレセニリン1cDNAを含むベクターを形質移入したプレセニリン1/プレセニリン2ダブルノックアウト細胞系であり、第2細胞型が、プレセニリン2を含むベクターを形質移入したプレセニリン1/プレセニリン2ダブルノックアウト細胞系である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法により特定される化合物。
【請求項4】
非毒性治療有効量の請求項3に記載の化合物と、医薬として許容される担体とを含む、アルツハイマー病治療用医薬組成物。
【請求項5】
治療を必要とする患者に、請求項4に記載の医薬組成物を投与することを含む、アルツハイマー病の治療方法。
【請求項6】
スルホンアミド化合物が、プレセニリン2含有γ−セクレターゼに対してプレセニリン1含有γ−セクレターゼを優先的に阻害するかどうかを確定する方法であって、
(a)プレセニリン1を発現するがプレセニリン2を発現しない第1細胞型及びプレセニリン2を発現するが、プレセニリン1を発現しない第2細胞型を、前記化合物と共に個別にインキュベートするステップと、
(b)Aβ40/42の量を、各細胞系において測定するステップと、
(c)各細胞系におけるAβ40/42に関するEC50値を算出するステップと、
(d)第1細胞型に関して算出されたEC50値が、第2細胞型に関して算出されたEC50値より小さい場合、前記化合物がプレセニリン2含有γ−セクレターゼに対してプレセニリン1含有γ−セクレターゼを優先的に阻害することを確定するステップと
を含む方法。
【請求項7】
第1細胞型が、プレセニリン1cDNAを含むベクターを形質移入したプレセニリン1/プレセニリン2ダブルノックアウト細胞系であり、第2細胞型が、プレセニリン2を含むベクターを形質移入したプレセニリン1/プレセニリン2ダブルノックアウト細胞系である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法により特定される化合物。
【請求項9】
非毒性治療有効量の請求項8に記載の化合物と、医薬として許容される担体とを含む、アルツハイマー病治療用医薬組成物。
【請求項10】
治療を必要とする患者に、請求項9に記載の医薬組成物を投与することを含む、アルツハイマー病の治療方法。
【請求項11】
請求項9に記載の医薬組成物を投与することを含む、細胞においてPS2に対してPS1を選択的に阻害する方法。
【請求項12】
PS1に特異的に結合する単離抗体であって、前記特異的結合によりプレセニリン1含有γ−セクレターゼ(PS1)の活性を調節する抗体。
【請求項13】
PS1のN末端部分に結合する、請求項12に記載の抗体。
【請求項14】
PS1のN末端の半分に結合する、請求項12に記載の抗体。
【請求項15】
プレセニリン2に結合しない、請求項12に記載の抗体。
【請求項16】
PS1のN末端の1/6に結合する、請求項12に記載の抗体。
【請求項17】
前記特異的結合がAβの産生を減少させる、請求項12に記載の抗体。
【請求項18】
プレセニリン1(PS1)又はその断片に対する特異的結合活性を有し、プレセニリン2には結合しない、単離抗体。
【請求項19】
前記単離抗体が配列番号8又はその断片に対する特異的結合活性を有する、請求項18に記載の特異的結合剤。
【請求項20】
PS1の断片が、PS1の少なくとも5個の連続したアミノ酸を含む、請求項18に記載の特異的結合剤。
【請求項21】
PS1の少なくとも5個の連続したアミノ酸の一部が、PS1のN末端の半分内に位置する、請求項20に記載の特異的結合剤。
【請求項22】
PS1の少なくとも5個の連続したアミノ酸の一部が、配列番号8のアミノ酸配列内に位置する、請求項21に記載の特異的結合剤。
【請求項23】
配列番号8からなる単離ポリペプチド。
【請求項24】
PS1を、PS1のN末端の半分に結合する化合物と、特異的阻害に関する有効量で接触させることを含む、PS1の特異的阻害方法。
【請求項25】
前記化合物が、PS1のN末端の1/3に結合する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記化合物が、PS1のN末端の1/6に結合する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記接触を細胞内で実施する、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記細胞がインビトロである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記細胞が培養細胞である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記化合物がプレセニリン2含有γ−セクレターゼの活性を阻害しない、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記接触によりAの産生が減少する、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
PS1に対する特異的結合活性を有する特異的結合剤又はその医薬として許容される塩を、アルツハイマー病(AD)の治療又は予防に有効な量で対象に投与することを含む、対象におけるADの治療又は予防の方法。
【請求項33】
PS1に対する特異的結合活性を有する特異的結合剤を、医薬として許容される塩、担体、希釈剤又はアジュバントと組み合わせて含む組成物。
【請求項34】
請求項33に記載の組成物をアルツハイマー病(AD)の治療又は予防に有効な量で対象に投与することを含む、対象におけるADの治療又は予防の方法。
【請求項35】
前記対象が哺乳動物である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記哺乳動物がヒトである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
配列番号7からなる単離ポリペプチド。
【請求項38】
PS1及びPS2を含む細胞を、PS1に対する特異的結合活性を有する特異的結合剤と、PS1γ−セクレターゼ活性を阻害するが、PS2γ−セクレターゼ活性は阻害しない有効量で接触させることを含む、Aβの産生の阻害方法。
【請求項39】
前記接触がインビトロである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記接触が培養細胞においてである、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記接触がインビボである、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
PS1のN末端部分に構築したプレセニリンのキメラを、前記化合物と接触させるステップと、前記キメラの相対活性を測定するステップとを含む、PS1活性を阻害する化合物を特定する方法。
【請求項43】
前記プレセニリンキメラが配列番号8のアミノ酸配列を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記プレセニリンキメラが配列番号7のアミノ酸配列を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
PS2に対してPS1活性を優先的に阻害する化合物の特定方法であって、
a)PS1を発現するがPS2を発現しない第1細胞型を提供するステップと、
b)PS2を発現するがPS1を発現しない第2細胞型を提供するステップと、
c)第1細胞型を試験化合物に接触させるステップと、
d)第2細胞型を同じ試験化合物に接触させるステップと、
e)第1及び第2の細胞型におけるAβペプチドの量を測定するステップと、
f)各細胞型におけるAβペプチドの量に基づいて、各細胞型に関するEC50を算出するステップと、
g)第1細胞型に関するEC50が第2細胞型に関するEC50より小さい場合、試験化合物をPS1活性を優先的に阻害する化合物として特定するステップと
を含む方法。
【請求項46】
前記AβペプチドがAβ38である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記AβペプチドがAβ40である、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記AβペプチドがAβ42である、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
配列番号9からなる単離ポリペプチド。
【請求項50】
前記単離抗体が配列番号9又はその断片に対する特異的結合活性を有する、請求項18に記載の特異的結合剤。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2009−533016(P2009−533016A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553546(P2008−553546)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/061714
【国際公開番号】WO2007/092861
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(503007313)イーラン ファーマスーティカルズ、インコーポレイテッド (22)
【Fターム(参考)】