説明

プレパック用組成物およびパック方法、並びにパック用化粧料セット

【課題】塗布時の延びがよく、浸透感に優れるとともに、パック中の密着感に優れ、パック後はベタつき感がなく、持続性に優れた潤い感を与えて水々しい柔らかな肌状態へと導くプレパック用組成物の提供。
【解決手段】パックを施す前に用いられる組成物であって、(A)α−オレフィンオリゴマー、(B)植物油および/又はこれらの水素添加物、(C)非イオン性界面活性剤、(D)リン脂質、並びに(E)アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、寒天およびキサンタンガムの群から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とするプレパック用組成物とする。所望により、(F)シリコーン油を含有させることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレパック用組成物およびパック方法、並びにパック用化粧料セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、パックによって潤いを与える試みとしては、肌表面に皮膜を形成させて潤いを補充する手段、所謂、ピールオフタイプのパック(例えば、特許文献1を参照)や、シートを肌に貼着させて潤いを補充する手段、所謂、シートパック(例えば、特許文献2を参照)などある。ピールオフタイプのパック場合、パック剤を肌へ塗布するのに手間がかかるといった問題がある。また、乾燥後、肌からの剥離が容易ではなく、剥離時に痛みを伴うといった問題もある。そのため、貼着させるだけで手軽にパックを行えるシートパックが汎用されている。
【0003】
しかしながら、シートパックの場合、マスク材に保湿液を含浸させなければならないことから、多価アルコールなどの水溶性の保湿成分を主成分として含浸液を構成しなければならない。そのため、炭化水素油、高級アルコール、エステル油などの高保湿能を有する油溶性成分を多量に配合できず、持続性のある十分な潤い感が得られ難いといった問題がある。また、パック中にマスク材から水分が蒸散し、マスク材の肌への密着感に劣ることから、保湿成分や水分が肌へ浸透し難いといった問題もある。更には、十分な潤い感を付与するためには、パック後に改めて油溶性成分を多量に含む化粧料で潤いを補充しなければならないといった問題もあり手間があった。
【0004】
上記問題点を解決するために、シート状マスク材上又はシート状マスク材中に、高保湿能を有する油溶性成分を含む乳化物やゲルを保持させ、潤い感を高める試みがなされている(例えば、特許文献3〜5を参照)。
【0005】
これら試みに拠って、ある程度潤い感を高めることはできるものの、シート状マスク材上又はシート状マスク材中に保持させることから、乳化物やゲルの量に制限があるばかりでなく、塗布時の浸透感に劣り、持続性に優れた潤い感を十分に与えることができないといった問題がある。また、これら手段を用いてもマスク材からの水分蒸散を抑えることができず、肌への密着感に劣るといった問題もある。
【0006】
このように従来のパック技術では、ある程度肌に対して潤い感を付与することはできるものの、潤い感の持続に劣り、水々しい柔らかな肌状態へと導くことに劣るといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−254437号公報
【特許文献2】特開2009−84239号公報
【特許文献3】特開2005−97124号公報
【特許文献4】特開2006−206540号公報
【特許文献5】特開2009−84240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、塗布時の延びがよく、浸透感に優れるとともに、パック中の密着感に優れ、パック後はベタつき感がなく、持続性に優れた潤い感を与えて水々しい柔らかな肌状態へと導くプレパック用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明は、
〔1〕パックを施す前に用いられる組成物であって、下記(A)成分〜(E)成分を含有することを特徴とするプレパック用組成物、
(A)α−オレフィンオリゴマー
(B)植物油および/又はこれらの水素添加物
(C)非イオン性界面活性剤
(D)リン脂質
(E)アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、寒天およびキサンタンガムの群から選ばれる少なくとも1種
〔2〕(B)成分が、マカデミアンナッツ油、シアバター、ホホバ油および水素添加パーム油の群から選ばれる少なくとも1種である前記〔1〕に記載のプレパック用組成物、
〔3〕(D)成分が、天然リン脂質および/又は水素添加リン脂質である前記〔1〕又は〔2〕に記載のプレパック用組成物、
〔4〕更に、(F)シリコーン油を含有してなる前記〔1〕〜〔3〕の何れかに記載のプレパック用組成物、
〔5〕前記〔1〕〜〔4〕の何れかに記載のプレパック用組成物を、パックを施す部位に塗布した後、シート状マスクを貼着することを特徴とするパック方法、
〔6〕前記シート状マスクが、少なくとも水性媒体を含浸した不織布であることを特徴とする前記〔5〕に記載のパック方法、並びに
〔7〕前記〔1〕〜〔4〕の何れかに記載のプレパック用組成物と、シート状マスクとからなるパック用化粧料セット
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のパックを施す前に使用するプレパック用組成物は、塗布時の延びがよく、浸透感に優れるといった効果を奏する。また、パック中は密着感に優れるとともに、パック後はベタつき感がなく、持続性に優れた潤い感を付与するといった効果を奏する。
【0011】
このように、本発明のプレパック用組成物を塗布した後、シート状マスクを貼着させるというパック方法によりパックを施すことで、肌に対して持続性に優れた潤いを十分に与えることができることから、水々しい柔らかな肌状態へと導くことができるとともに、その柔らかな肌状態が持続するといった効果を奏する。
【0012】
更に、本発明のプレパック用組成物とシート状マスクとからなるパック用化粧料セットは、上記効果を十分に発揮させるのに有用なものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のプレパック用組成物は、(A)α−オレフィンオリゴマー、(B)植物油および/又はこれらの水素添加物、(C)非イオン性界面活性剤、(D)リン脂質、並びに(E)アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、寒天、キサンタンガムの群から選ばれる少なくとも1種を含有し、パックを施す前に用いられることを特徴とする。
【0014】
(A)成分のα−オレフィンオリゴマーは、炭素数4〜12程度の直鎖脂肪族α−オレフィンを重合した後、水素添加して得られる側鎖を有する重合度が3〜6程度の炭化水素である。このようなα−オレフィンオリゴマーは、市販品として入手することができ、そのまま用いることができる。用い得る市販品としては、例えば、ノムコートHP−30(商品名,日清オイリオグループ社製)、シンセラン4SP(商品名,日光ケミカルズ社製)などを例示することができる。
【0015】
(A)成分の含有量は、所望の効果が十分に付与されるのであれば特に限定されないが、通常、塗布時の延びがよく、浸透感に優れるとともに、柔らかな肌状態とする観点から、組成物中、0.5質量%以上が好ましく、より好ましくは1質量%以上である。また、ベタつきの観点から、35質量%以下が好ましく、より好ましくは25質量%以下である。これらの観点から、(A)成分の含有量は、好ましくは0.5〜35質量%、より好ましくは1〜25質量%である。
【0016】
(B)成分の植物油の具体例としては、例えば、マカデミアンナッツ油、ユーカリ油、ヤシ油、アボガド油、サフラワー油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、ククイナッツ油、シアバター、アーモンド油、ヒマワリ油、ローズヒップ油、オリーブスクワラン、カメリアオイル、キウイフルーツシード油、ツバキ油、杏仁油、ゴマ油、大豆油、ホホバ油、ヒマシ油、ヘーゼルナッツ油、メドホーム油、ハッカ油、カロットオイルなどを例示することができる。また、上記した植物油の水素添加物の具体的としては、例えば、水素添加ヒマシ油、水素添加ホホバ油、水素添加パーム油、水素添加アボガド油、水素添加大豆油などを例示することができる。これら(B)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。好適な(B)成分としては、持続性に優れた潤い感を付与して柔らかな肌状態とする観点から、マカデミアンナッツ油、シアバター、ホホバ油、水素添加パーム油を用いることが好ましい。
【0017】
尚、(B)成分は、市販品として入手することができ、そのまま用いることもできる。マカデミアンナッツ油の市販品としては、例えば、クロピュア マカダミア(商品名,クローダジャパン社製)、スーパーMCオイル(商品名,日興リカ社製)、NIKKOL マカデミアンナッツ油(商品名,日光ケミカルズ社製)、精製マカデミア油(商品名,日油社製)などを例示することができる。シアバターの市販品としては、例えば、クロピュア SB,クロピュア リキッド ベジラン(商品名,何れもクローダジャパン社製)、シアバター RF(商品名,高級アルコール工業社製)などを例示することができる。ホホバ油の市販品としては、例えば、エコオイル RS(商品名,高級アルコール工業社製)、クロピュア ホホバ(商品名,クローダジャパン社製)などを例示することができる。水素添加パーム油の市販品としては、例えば、パーム硬化油(商品名,高級アルコール工業社製)、NIKKOL Trifat P−52(商品名,日光ケミカルズ社製)、ノムコート PHS(商品名,日清オイリオグループ社製)などを例示することができる。
【0018】
(B)成分の含有量は、所望の効果が十分に付与されるのであれば特に限定されないが、通常、持続に優れた潤い感を付与する観点から、組成物中、1質量%以上が好ましく、より好ましくは2質量%以上である。また、ベタつきの観点から、20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下である。これらの観点から、(B)成分の含有量は、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは2〜15質量%である。
【0019】
(C)成分の非イオン性界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物などの脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤の他、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリンなどが挙げられる。これら(C)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。
【0020】
グリセリン肪酸エステルとしては、本発明においては、グリセリン脂肪酸エステルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルのいずれをも意味し、具体的には、モノカプリル酸グリセリル、モノカプリン酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル、モノベヘン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノエルカ酸グリセリル、セスキオレイン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリル、ジアラキン酸グリセリルなどのグリセリン脂肪酸エステル;モノカプリル酸ジグリセリル、モノカプリル酸デカグリセリル、モノカプリン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸テトラグリセリル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノラウリン酸ポリ(4〜10)グリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸ポリ(2〜10)グリセリル、モノオレイン酸ジグリセリル、モノオレイン酸ヘキサグリセリル、セスキオレイン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸ポリ(2〜10)グリセリル、ジステアリン酸ポリ(6〜10)グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリステアリン酸ポリ(10)グリセリルなどの上記したグリセリン脂肪酸エステルの重合度2〜10のポリグリセリン脂肪酸エステルを例示することができる。また、グリセリン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物としては、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、モノオレイン酸ポリオキシエチレングリセリルなどを例示することができる。
【0021】
ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルの具体例としては、例えば、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノイソステアリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、ジラウリン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコールなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステル;モノステアリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコールなどのプロピレングリコール脂肪酸エステルなどを例示することができる。
【0022】
ソルビタン脂肪酸エステルの具体例としては、例えば、モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノイソステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、ヤシ油脂肪酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステルを例示することができる。また、ソルビタン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物としては、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノイソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノヤシ油脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどを例示することができる。
【0023】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシプロピレンイソセチルエーテル、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、ポリオキシプロピレンオレイルエーテルなどを例示することができる。
【0024】
(C)成分の含有量は、所望の効果が十分に付与されるのであれば特に限定されないが、通常、塗布時の浸透感の観点から、組成物中、0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは0.2質量%以上である。また、ベタつきの観点から、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下である。これらの観点から、(C)成分の含有量は、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.2〜5質量%である。
【0025】
(D)成分のリン脂質とは、リン酸残基を含む複合脂質であって、天然リン脂質、合成リン脂質、天然由来のリン脂質の不飽和炭素鎖を水素により飽和とした水素添加リン脂質などが挙げられる。具体的なリン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、卵黄レシチン、大豆レシチンなどの天然リン脂質;ジラウロイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、パルミトイル・オレオイルホスファチジルコリンなどの合成リン脂質;水素添加大豆レシチン、水素添加卵黄レシチン、水素添加ホスファチジルコリン、水素添加ホスファチジルセリンなどの水素添加リン脂質などを例示することができる。これら(D)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。好適な(D)成分としては、水々しい柔らかな肌状態へと導き、その状態を持続させる観点から、天然リン脂質、水素添加リン脂質を用いることが好ましく、中でも、水素添加リン脂質を用いることがより好ましい。尚、本発明においては、(D)成分が界面活性剤、高級アルコール、脂肪酸などの原料と混合された形態のものを用いてもよい。
【0026】
尚、(D)成分は、市販品として入手することができ、そのまま用いることもできる。大豆レシチンの市販品としては、例えば、NIKKOL ニコリピッド 81S(商品名,日本ケミカルズ社製)などを例示することができる。水素添加大豆レシチンの市販品としては、例えば、COATSOME NC−61(商品名,日油社製)、NIKKOL レシノール S−10,S−10E,S−10M,S−10EX,S−PIE(商品名,何れも日本ケミカルズ社製)、ベイシス LS−60HR(商品名,日清オイリオグループ社製)などを例示することができる。水素添加卵黄レシチンの市販品としては、例えば、卵黄レシチン PL−100P(商品名,キューピー社製)などを例示することができる。
【0027】
(D)成分の含有量は、所望の効果が十分に付与されるのであれば特に限定されないが、通常、水々しい柔らかな肌状態へと導く観点から、組成物中、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上である。また、浸透感の観点から、5質量%以下が好ましく、より好ましくは3質量%以下である。これらの観点から、(D)成分の含有量は、好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.05〜3質量%である。
【0028】
(E)成分のアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体とは、アクリル酸、メタクリル酸又はこれらの単純エステルからなるモノマー1種以上と、アクリル酸アルキルの共重合体である。寒天とは、マクサ(テングサ,Gelidium amansii)、その他同属植物(Gelidiaceae)又は諸種紅そう類(Rhodophyta)などから抽出して得られるものである。キサンタンガムとは、グルコース2分子、マンノース2分子、グルクロン酸の繰り返し単位からなる鎖状多糖類である。本発明においては、上記した成分の少なくとも1種を用いることで、パック時のシート状マスクとの密着感を高めることができる。
【0029】
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を用いる場合は、通常、塩基性物質で中和される。用いられる塩基性物質としては、例えば、トリエタノールアミン、モノエタノールアミンなどのアルカノールアミン類、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基、アルギニンなどの塩基性アミノ酸などが例示される。また、塩基性物質の添加量は、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を中和するのに十分な量であり、これら成分の種類や使用量に応じて適宜配合すればよい。
【0030】
尚、(E)成分は、市販品として入手することができ、そのまま用いることもできる。アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体の市販品としては、例えば、カーボポール1342,1382,ETD2020、PEMULEN TR−1,TR−2(商品名,何れもBF Goodrich社製);カーボポールUltrez20,Ultrez21(商品名,何れもノベオン社製)などを例示することができる。寒天の市販品としては、例えば、伊那寒天S−9、M−9、UM−11KS(商品名,いずれも伊那食品工業社製)などを例示することができる。キサンタンガムの市販品としては、例えば、エコーガムT(商品名,大日本住友製薬社製)などを例示することができる。
【0031】
(E)成分の含有量は、所望の効果が十分に付与されるのであれば特に限定されないが、通常、密着感の観点から、組成物中、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.03質量%以上である。また、浸透感の観点から、0.5質量%以下が好ましく、より好ましくは0.4質量%以下である。これらの観点から、(E)成分の含有量は、好ましくは0.01〜0.5質量%、より好ましくは0.03〜0.4質量%である。
【0032】
また、本発明のプレパック用組成物には、塗布時の延びを高める観点およびパック後のベタつき感を低減する観点から、(F)シリコーン油を含有させることができる。(F)成分の具体例としては、例えば、メチルポリシロキサン、平均重合度が650〜7000である高重合メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチコノールなどの鎖状シリコーン;メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンなどの環状シリコーン;アミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体などのアミノ変性シリコーン;カルボキシ変性シリコーン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、脂肪族アルコール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アルキル変性シリコーンなどの変性シリコーンなどを例示することができる。これら(F)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。好適な(F)成分としては、鎖状シリコーンを用いることが好ましく、中でも、メチルポリシロキサンを用いることがより好ましい。
【0033】
(F)成分の含有量は、所望の効果が十分に付与されるのであれば特に限定されないが、通常、塗布時の延びの観点から、組成物中、0.05質量%以上が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上である。また、使用感の観点から、10質量%以下が好ましく、より好ましくは8質量%以下である。これらの観点から、(F)成分の含有量は、好ましくは0.05〜10質量%、より好ましくは0.1〜8質量%である。
【0034】
本発明のプレパック用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記した成分の他に通常化粧品に用いられる成分、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ベヘニルアルコールなどの高級アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−デカンジオール、グリセリン、濃グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンなどの多価アルコール;エステル油、酸化防止材、金属封鎖剤、防腐剤、植物抽出エキス、香料、pH調整剤などを目的に応じて適宜配合することができる。
【0035】
また、本発明のプレパック用組成物は、ローション、ジェル;乳液、クリームなどの乳化物など、何れの形態であっても所望の効果が十分に付与されるのであれば特に限定されないが、肌への新和性を高め、優れた浸透感を得る観点から、乳化物の形態として調製されることが好ましい。尚、乳化物とするには、前記各構成成分を混合し、公知の方法、例えばホモミキサーを用い、攪拌することにより製造することができる。
【0036】
このように調製されたプレパック用組成物は、後述するシート状マスクと組合せてパックを施すことにより、夫々の単独使用と比較して、持続性に優れた潤い感を付与することができるようになる。
【0037】
本発明のプレパック用組成物と組合せて用いるシート状マスクの材質は、優れた潤い感を付与することができれば特に限定されないが、例えば、紙、織布又は不織布などを用いることができる。具体的には、針葉樹、広葉樹などの木材繊維やケナフ(アオイ科の一年草)、サトウキビ、竹などの植物繊維や古紙繊維を原料とする紙;アクリル、レーヨン、ポリエステル、セルロース、アセテートなどの合成繊維やコットンなどの天然繊維およびこれらの混綿による織布又は不織布などを例示することができる。これらシート状マスク材の中でも、加工がし易く、且つ、皮膚に対する使用感が優れている観点から、不織布を用いることが好ましい。また、これらシート状マスクの表面には、エンボス加工が施されていてもよい。
【0038】
尚、本発明に好適に用い得るシート状マスクの市販品の具体例としては、例えば、コットエース(商品名,ユニチカ社製)、サンモアK(商品名,三和製紙社製)、KP9380,KP9580,KP9560,KP9350,KP9340(商品名,何れも三昭紙業社製)、ベンリーゼ(商品名,旭化成社製)などを例示することができる。
【0039】
シート状マスクの形状については、肌に貼着させる部位に応じて成型されれば特に限定されないが、例えば、正方形、長方形、台形、菱形、円形、楕円形、半円形、三日月形、樽形、鼓形などの形状を例示することができる。更には、前記形状を有するシートに切れ込み部、くり抜き部、凹凸部などの成型を施してもよい。
【0040】
また、シート状マスクは、パック時の水分の蒸散を防ぐとともに、肌への密着感を高め、持続性に優れる潤い感を付与する観点から、少なくとも水や多価アルコールなどの水性媒体が含まれていることが好ましい。用いられる水は、通常化粧品に用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、精製水、イオン交換水などを例示することができる。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−デカンジオール、グリセリン、濃グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンなどを例示することができる。
【0041】
含浸させる水性媒体の量は、所望の効果が十分に付与されるのであれば特に限定されないが、シート状マスク1重量部に対して、5〜20重量部が好ましく、より好ましくは6〜15重量部である。
【0042】
本発明のプレパック用組成物を用いたパック方法としては、シート状マスクを用いてパックを施す前に、プレパック用組成物を塗布する方法が挙げられる。より具体的には、プレパック用組成物を適用部位に塗布し、十分に肌に馴染ませた後、該組成物を洗い流さずに、少なくとも水性媒体を含浸させたシート状マスクを適用部位に空気が入らないように貼着させてパックを行い、一定時間放置後、シート状マスクを剥がす方法を例示することができる。このようにプレパック用組成物を塗布後にシート状マスクを貼着させてパックを施すことで、従来の保湿付与手段では得られなかった持続性に優れた潤い感を与え、水々しい柔らかな肌状態へと導くことができる。
【0043】
また、パックを施す時間については、持続性に優れる潤い感を付与する観点から、5〜20分程度放置するとよい。更に、シート状マスクを剥がした後、肌上に残ったプレパック用組成物を手の平や指先などを用い、再度、肌に馴染ませることで本発明の効果をより優れたものとすることができる。
【0044】
本発明においては、上記したシート状マスクを用いてパックを施しても、一般流通している市販品のシート状マスクを用いてパックを施しても、所望の効果が十分に付与されるのであれば特に限定されない。市販品のシート状マスクを用いてパックを施すのであれば、本発明の効果をより優れたものにする観点から、例えば、バリアリペアマスク(商品名,マンダム社製)を好適に用いることができる。
【0045】
本発明のプレパック用組成物は、一般流通している市販品のシート状マスクと組合せて使用することができるように、単独形態での販売を行っても、また、予めプレパック用組成物とシート状マスクを組合せてパック用化粧料セットの形態での販売を行ってもよく、何れの販売形態であっても特に限定されない。
【0046】
本発明のプレパック用組成物は、シート状マスクを貼着させる前に肌へ塗布するパック方法を用いてパックを施すことにより、持続性に優れた潤い感を与え、水々しい柔らかな肌状態へと導くことから、額、目元、目じり、頬、口元などの顔面、肘、指先、膝、かかとなど、特に肌の乾燥による潤いの損失が多い部位に好適に用いることができる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。尚、配合量は、特記しない限り「質量%」を表す。また、評価はすべて、23℃、湿度60%の恒温恒湿の一定条件下で実施した。
【0048】
(試料の調製1)
表1および表2に記した組成に従い、処方例1〜8の各プレパック用組成物を常法に準じて調製し、下記評価に供した。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
(試験例1:塗布時およびパック中の評価)
化粧を施していない女性専門パネル20名により、処方例1〜8で得られたプレパック用組成物1.5gを顔面に塗布後、シート状マスクを貼着し、15分間パックを施してもらい、塗布時の「延び」および「浸透感」;パック中の「密着感」について以下の評価基準に従って官能評価した。結果を表3に記する。
【0052】
尚、パックに用いるシート状マスクは、半径20cmの円形の不織布(KP9560,三昭紙業社製)に、不織布1gに対して精製水6gを含浸させたものを用いた。
【0053】
<延びの評価基準>
○:20名中15名以上が肌上での延びに優れると回答
△:20名中8〜14名が肌上での延びに優れると回答
×:20名中7名以下が肌上での延びに優れると回答
【0054】
<浸透感の評価基準>
○:20名中15名以上が肌への浸透感に優れると回答
△:20名中8〜14名が肌への浸透感に優れると回答
×:20名中7名以下が肌への浸透感に優れると回答
【0055】
<密着感の評価基準>
○:20名中15名以上が密着感に優れると回答
△:20名中8〜14名が密着感に優れると回答
×:20名中7名以下が密着感に優れると回答
【0056】
(試験例2:パック後の評価)
試験例1のパック後、シート状マスクを剥がしてもらい、5分後の「ベタつき感」および12時間後の「潤い感の持続」について、以下の評価基準に従って官能評価した。結果を表3に記する。
【0057】
<ベタつき感の評価基準>
○:20名中15名以上がベタつき感はないと回答
△:20名中8〜14名がベタつき感はないと回答
×:20名中7名以下がベタつき感はないと回答
【0058】
<潤い感の持続の評価基準>
○:20名中15名以上が潤い感が持続していると回答
△:20名中8〜14名が潤い感が持続していると回答
×:20名中7名以下が潤い感が持続していると回答
【0059】
(試験例3:実使用の評価)
処方例1〜8で得られたプレパック用組成物を、カサつき肌に悩む女性被験者40名に4週間連続して使用してもらい、4週間後の「肌状態」を下記の評価基準に従って官能評価した。結果を表3に記する。
【0060】
<実使用の評価基準>
○:水々しい柔らかな肌状態となり、その肌状態が持続している
△:柔らかな肌状態となったが、水々しさにやや劣る
×:肌状態に変化は認められない
【0061】
【表3】

【0062】
表3に示された結果から、処方例1〜4のプレパック用組成物を塗布した実施例1〜4は、処方例5〜8のプレパック用組成物を塗布した比較例1〜4と対比して、塗布時の延びがよく、浸透感に優れていることが分かる。そして、パック中はシート状マスクの密着感に優れ、パック後はベタつき感がなく、優れた潤い感が持続していることが分かる。
【0063】
(試験例4:施術方法相違による評価)
試験例1に記載の同女性専門パネル20名により、先にシート状マスクを貼着し、15分間パックを施してもらい、次いで、処方例1〜8で得られたプレパック用組成物1.5gを顔面に塗布してもらい、プレパック用組成物の塗布時の「延び」および「浸透感」;塗布5後の「ベタつき感」および塗布12時間後の「潤い感の持続」について、試験例1および試験例2と同じ評価基準に従って官能評価した。結果を表4に記する。
【0064】
尚、パックに用いるシート状マスクは、半径20cmの円形の不織布(KP9560,三省紙業社製)に、不織布1gに対して精製水6gを含浸させたものを用いた。
【0065】
【表4】

【0066】
表4に示された結果から、先にシート状マスクによりパックを施した場合、ある程度の潤いが肌に付与されていることから、プレパック用組成物を後塗布したとしても十分な浸透感は得られないことが分かる。また、後塗布することで、ベタつき感が際立つとともに、十分な潤い感が付与できていないことが分かる。
【0067】
(試験例5:塗布方法相違による評価)
試験例1および試験例4に記載の同女性専門パネル20名により、処方例1〜8で得られたプレパック用組成物1.5gをシート状マスク上に塗付又はシート状マスクに含浸させたものを用いて5分間パックを施してもらった。シート状マスクを剥がした5分後の「ベタつき感」および12時間後の「潤い感の持続」について、試験例2と同じ評価基準に従って官能評価した。結果を表5に記する。
【0068】
【表5】

【0069】
表5に示された結果から、シート状マスク上に塗付又はシート状マスクに含浸させた形態でパックを施した場合、パック中に水分が蒸散することから、剥離後のベタつき感が際立つとともに、十分な潤い感が付与できていないことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パックを施す前に用いられる組成物であって、下記(A)成分〜(E)成分を含有することを特徴とするプレパック用組成物。
(A)α−オレフィンオリゴマー
(B)植物油および/又はこれらの水素添加物
(C)非イオン性界面活性剤
(D)リン脂質
(E)アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、寒天およびキサンタンガムの群から選ばれる少なくとも1種
【請求項2】
(B)成分が、マカデミアンナッツ油、シアバター、ホホバ油および水素添加パーム油の群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のプレパック用組成物。
【請求項3】
(D)成分が、天然リン脂質および/又は水素添加リン脂質である請求項1又は2に記載のプレパック用組成物。
【請求項4】
更に、(F)シリコーン油を含有してなる請求項1〜3の何れかに記載のプレパック用組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載のプレパック用組成物を、パックを施す部位に塗布した後、シート状マスクを貼着することを特徴とするパック方法。
【請求項6】
前記シート状マスクが、少なくとも水性媒体を含浸した不織布であることを特徴とする請求項5に記載のパック方法。
【請求項7】
請求項1〜4の何れかに記載のプレパック用組成物と、シート状マスクとからなるパック用化粧料セット。

【公開番号】特開2011−32175(P2011−32175A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177180(P2009−177180)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(390011442)株式会社マンダム (305)
【Fターム(参考)】