説明

プレポリマー組成物及びそれから製造されるシーラント

1成分の、湿分で硬化するシーラント、接着剤又はコーティングを製造するプレポリマー組成物と、そのようなプレポリマー組成物を製造する方法を提供する。プレポリマー組成物は、シラン基により、もしくはシラン基とアルコール及び2000より少ない分子量を有するある量の(以下「過剰」と言う)未反応の芳香族アルコールからなるエンドキャップ基との組み合わせによりエンドキャップされるポリウレタンプレポリマーを含む。組成物における未反応の芳香族アルコールの過剰分は、プレポリマー内の元のNCO基の個数の0mol%より多く約15mol%までである。元のNCO基の50%〜100%はシラン基によりエンドキャップされ、元のNCO基の0%〜50%は芳香族アルコール、脂肪族アルコール、或いはその両方からなるエンドキャップ基によりエンドキャップされる。本発明のプレポリマー組成物を含むシーラント組成物及びコーティング組成物についてもまた提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレポリマー組成物と、本発明のプレポリマー組成物を含むシーラント組成物及びコーティング組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シーラントは様々な用途において、液体及び気体のバリアに供するため使用される。それらの用途には異なる材料の結合、伸縮継手のシーリング、カーテンウォール及びサイドウォールの組立、耐候工事、屋根の構築、ドア、窓、及び他の建物要素の周囲のシーリング(即ち、周辺シール)が含まれる。
【0003】
シーラントの組成物は、1成分あるいは2成分のものがある。湿分で硬化可能な、1成分のシーラントの組成物は一般的にエンドキャップされたポリウレタンプレポリマーと、通常はシーラントの組成物が大気中の湿分に付される際にプレポリマー間の架橋反応を促進する硬化触媒を含む。通常の気温及び湿分状態で使用すると、1成分のシーラント組成物は反応し、丈夫で柔軟なゴム状シールを形成する。
【0004】
シーラント及びコーティング組成物は、特にそれらが意図する利用に最適となるような特性の組み合わせであることが望ましい。そのような組成物は密封された容器又はカートリッジに収められ、好ましくない「ゲル化」又は(架橋反応の結果としての)硬化を生ずることなく比較的長期間保存が可能である。コーキングシーラント又はコーティング組成物として利用する場合、それらは利用して大気中の湿分に付された後すばやく比較的粘着性のない表面を形成し、許容時間内に気泡を作ることなく硬化しなければならない。それらは硬化状態でガラス、アルミニウム、コンクリート、大理石、鋼鉄等の種々の表面にしっかりと付着しなければならない。硬化状態のシーラント又はコーティングは、気候の変化から生じる温度変化によりパネル等の膨張及び収縮、及びパネルにたわみ又はねじれを生じさせる風力に耐え得る十分な弾性及び柔軟性を有する必要がある。
【0005】
ポリウレタンのシーラント及びコーティング組成物は一般的にイソシアネート末端のプレポリマーに基づく。いくつかの場合には、それらのプレポリマーは一部又は全部がシラン基によりエンドキャップされている。一般的に、シラン基により100%エンドキャップされたプレポリマーで作られたシーラントは大きな屈曲運動に耐えるための柔軟性が不十分である。従って、シラン基と他基、特に脂肪族アルコール基との組み合わせによりエンドキャップされたプレポリマーが開発されてきた。シラン基と脂肪族アルコール基との組み合わせでエンドキャップされたプレポリマーにより製造されたシーラントは柔軟性が高いものの、高温、高湿、及び長時間紫外線に晒されるなどの厳しい気候条件に付されると白色化、ひび割れ、黄色化が起こる。それらのシーラントはまた、上記の気候条件に晒されると強度を失う。これらの望ましくない変化の多くは硬化したシーラントに含まれるポリマーの鎖の改変又は分解に起因する。
【0006】
脂肪族アルコールで部分的にエンドキャップされたポリウレタンプレポリマーのポリマーの鎖は保存の間、特に高温に付されると分解する恐れがある。分解の結果、これらのプレポリマーで作ったシーラント組成物は機械的強度が弱くなり、望ましくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、ゴム状シールに耐候性を与える新たなシーラント組成物を得ることが望まれる。また、高温及び保存に更に耐えうる新たなプレポリマー組成物を得ることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は1成分の、湿分で硬化するシーラント、接着剤又はコーティング剤を製造するプレポリマー組成物と、そのようなプレポリマー組成物を製造する方法を提供する。
【0009】
プレポリマー組成物は、シラン基又はシラン基とアルコールから派生するエンドキャップ基との組み合わせによってエンドキャップされたポリウレタンプレポリマーと、ある量の(以下「過剰」と言う)芳香族アルコールからなる。好ましくは、芳香族アルコールは2000より少ない分子量を有する。シランでエンドキャップされたプレポリマーは、ヒドロキシ末端のポリマー材料と芳香族、又は好ましくは脂肪族イソシアネートを反応させることにより形成され、末端がNCO基である(以下、「元の」NCO基と言う)プレポリマーが得られる。得られたポリウレタンプレポリマーは、十分な量のシランエンドキャッパーと反応させることにより全部又は一部が封止又はエンドキャップされ、元のNCO基の50〜100%がシラン基で塞がれたプレポリマーが得られる。
【0010】
プレポリマーがシラン基で100%エンドキャップされている場合、プレポリマーは十分な量の芳香族のアルコールと結合し、過剰な未反応の芳香族のアルコール及びプレポリマーを含む組成物となる。プレポリマーがシラン基で部分的にエンドキャップされている場合、プレポリマーは芳香族アルコールと反応して、過剰な芳香族アルコール及びシラン基と芳香族アルコール基で完全にエンドキャップされたプレポリマーから成る組成物が得られる。あるいはシラン基で部分的にエンドキャップされたプレポリマーは芳香族アルコールの存在下で脂肪族のアルコールと反応し、過剰の芳香族アルコールと、シラン基、脂肪族および芳香族アルコール基でエンドキャップされたプレポリマーとを含む組成物が得られる。あるいは、シラン基で部分的にエンドキャップされたポリプレマーは芳香族アルコールなしで脂肪族アルコールと反応してシラン基、及び脂肪族アルコール基によりエンドキャップされたポレプリマーが得られ、その後芳香族アルコールと組み合わされ過剰の芳香族アルコール及びエンドキャップされたポリウレタンプレポリマーから成る組成物が得られる。
【0011】
シラン基でエンドキャップされたNCO基の割合により、シランでエンドキャップされたポリウレタンプレポリマーと結合する芳香族アルコールの割合は、プレポリマー内の元のNCO基の個数の0mol%より多く約65mol%までとなる。よって、芳香族アルコールはシラン基でエンドキャップされていないNCO基と反応してシラン基及び芳香族アルコール基の両方によりエンドキャップされたポリウレタンプレポリマーが得られるため、組成物の芳香族アルコールの過剰は、プレポリマーの元のNCO基の個数の0mol%より多く約15mol%までとなる。
【0012】
本発明はまた、本発明のプレポリマー組成物で作られたシーラント組成物及びコーティング組成物も提供する。シーラント組成物及びコーティング組成物は本発明のプレポリマー組成物と、シーラント組成物又はコーティング組成物の硬化速度を早める触媒とを含む。好ましくは、シーラント組成物は補強材を含む。選択的に、シーラント組成物は一つ又は複数の接着促進剤、粘度調整剤、湿分除去剤、紫外線安定剤を含む。
【0013】
本発明のプレポリマー組成物、シーラント組成物、コーティング組成物は過剰な芳香族アルコールを含まない組成物に比べ耐候、耐熱、耐紫外線効果が高められる。本発明のシーラント組成物を湿分硬化して形成されるシーラントは高い伸張性、低い弾性、高い接着性等の優れた機械的特性を有する。それらは溶媒が不要なので、本発明のプレポリマー及びシーラント組成物は環境にも優しい。
【0014】
一つの局面において、本発明は保存能力に優れたプレポリマー組成物を提供する。そのようなプレポリマー組成物は、一定の量(ここでは過剰ということにする)の未反応の芳香族アルコールと、末端がシラン基、もしくはシラン基と一つ又は複数の芳香族アルコールか、一つ又は複数の脂肪族アルコールか、一つ又は複数の芳香族アルコールと一つ又は複数の脂肪族アルコールとの組み合わせからなるエンドキャップ基の何れかに完全にエンドキャップされたポリウレタンプレポリマーとを含む。プレポリマーはヒドロキシ末端のポリマー材料をイソシアネートに反応することにより製造され、端部にNCO基を有するプレポリマーが得られる。得られたポリウレタンプレポリマーはその後十分な量のシランのエンドキャッパーと反応し、50〜100%、好ましくは70〜100%、より好ましくは85〜100%のNCO基が封止又はシラン基でエンドキャップされたポリウレタンプレポリマーが得られる。
【0015】
本発明のシランでエンドキャップしたポリウレタンプレポリマーを製造するのに適したヒドロキシ末端のポリマー材料は、これに限らないが、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオールを含む2、3、4官能基を有するポリオール、及び2又は3以上のヒドロキシ基と直線の或いは分岐した鎖の炭化水素とを有するポリオールを含む。
【0016】
適しているポリエーテルジオール及びトリオールは、ポリエチレンエーテルジオール又はトリオール、ポリプロピレンエーテルジオール又はトリオール、ポリブチレンエーテルジオール又はトリオール、ポリテトラメチレンエーテルジオール又はトリオール、及びそのようなジオール及びトリオールのブロック共重合体を含む。
【0017】
適しているヒドロキシ末端のポリエステルは多塩基酸又は無水物(例えば、アジピン酸及び無水フタル酸)及びポリエステルプレポリマーのヒドロキシル官能価が2より大きく、好ましくは2.3より大きいポリオールから製造された如何なるヒドロキシ末端のポリエステルをも含む。ヒドロキシル基を含むポリラクトンもまた、プレポリマー、特にポリカプロラクトンジオール及びトリオールを製造するのに適している。
【0018】
適したアクリルポリオールはヒドロキシ末端のポリアクリル酸塩を含む。アクリレートは、これらに限らないが、アクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、2−エチルヘキシルアクリレート、又は上記の混合物を含む。適したポリオールは2又は3以上のヒドロキシル基、及び直線の或いは分岐した炭化水素の鎖からなり、ヒドロキシル官能化されたポリブタジエンを含む。他の適しているポリオールはヒドロキシル基を有するポリカーボネートを含む。
【0019】
好ましくは、ポリオールは500〜18,000の平均分子量を有する。シーラント組成物の製造に使用されるプレポリマーにおいては、ポリオールは2,000〜8,000の平均分子量を有するのが好ましい。コーティング組成物を製造するのに使用されるプレポリマーにおいては、ポリオールは500〜4,000の平均分子量を有するのが好ましい。
【0020】
ヒドロキシ末端のポリマー骨格と反応するイソシアネートは2又は3以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネート又はそのような有機イソシアネートの混合物である。イソシアネートは芳香族、又は好ましくは脂肪族のイソシアネートである。適している芳香族のジイソシアネート又はトリイソシアネートは例としてp、p’、p”−トリイソシアネートトリフェニルメタン、p、p’−ジイソシアネートジフェニルメタン、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、及びそれらの混合物を含む。好ましい脂肪族のイソシアネートは、例としてイソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート及びそれらの混合物を含む。
【0021】
ポリウレタンプレポリマーは、ヒドロキシ末端のポリマーと有機イソシアネートを環境温度及び環境圧力下で一緒に混合することにより製造されるが、反応した混合物が高温、例えば60〜100℃まで高くなると、反応速度は非常に速くなる。科学量論的にイソシアネートを過剰にすることは、ポリウレタンプレポリマーがNCO末端基を有することを確実にする目的で使用される。
【0022】
得られたNCO末端基を有するプレポリマーはその後シランのキャップ剤と反応し、50〜100mol%、好ましくは70〜100mol%、より好ましくは85〜100mol%の元のNCO末端基が封止又はシラン基でエンドキャップされる。適したシランのキャップ剤の例は、これに限らないが、下式Iに対応するシランが含まれる。
H-NR1-R2-Si(OR3)2(R4) I
上記において、Rは水素、置換した脂肪族、脂環式及び/または芳香族の炭化水素ラジカルであり、それは1から10の炭素原子、又は第2の-R2-Si(OR3)2(R4)、又は-CHR5-CHR6COOR7を含み、R5とR6はH又はC1-6の有機部分であり、R7はC1-10の有機部分である。
R2は1から8の炭素原子を含む直線又は分岐したアルキレンラジカルを表す。
R3はC1-6のアルキル基を表す。
R4は-CH3、-CH2CH3、又は OR3である。
【0023】
上式Iに対応する適したアミノシランの例として、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、ガンマ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ガンマ−アミノプロピルトリエトキシシラン、及びアミノシラン(例えば、ガンマ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ガンマ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ガンマ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン)とアクリルモノマー(例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、グリシジルアクリレートの反応物が含まれる。
【0024】
適したシランの例として、メルカプトシラン、メルカプロシランとモノエポキシドの反応物、エポキシシランと第2級アミンの反応物が含まれる。
【0025】
ポリウレタンプレポリマーとシリル化したポリウレタンプレポリマーの製造方法は、業界において公知である。米国特許第3,627,722号、第3,632,557号、第3,979,344号及び第4,222,925号を参照のこと。これらの文献は本明細書に援用されている。
【0026】
得られたシリル化したポリウレタンプレポリマーはその後十分な量のアルコールと結合され、未反応の、即ちシリル化していないNCO基を封止又はエンドキャップする。アルコールは脂肪族アルコール、又は好ましくは芳香族アルコール、或いは1又は2以上の芳香族アルコール及び1又は2以上の脂肪族アルコールの組み合わせでもよい。完全に封止されたポリウレタンプレポリマー、即ちそのNCO基がシラン基又はシラン基とアルコール基との組み合わせの何れかで100%封止されているプレポリマーは、十分な量の芳香族アルコールと組み合わされ、エンドキャップされたポリウレタンプレポリマーと未反応の芳香族アルコールとを有するプレポリマー組成物が得られる。副次的に、その組成物はまた少量の、即ち元のNCO基の個数の5mol%未満の未反応の脂肪族アルコールを有する。シリル化したプレポリマーは、一定のレベルのアルコール、好ましくは芳香族アルコールと反応し、未反応のNCO基のレベルに従い、その割合はポリウレタンプレポリマー内の元のNCO基の個数の0mol%より多く65mol%までとなる。よって、得られた組成物の未反応の又は過剰な芳香族アルコールの量は、ポリウレタンプレポリマー内の元のNCO基の個数の0mol%より多く15mol%までの量である。好ましくは、製造された組成物の未反応の又は過剰な芳香族アルコールの量は、ポリウレタンプレポリマー内の元のNCO基の個数の2mol%より多い量である。
【0027】
好ましくは、芳香族アルコールは2000より少ない分子量を有する。適した芳香族アルコールの例として、フェノール、3−メトキシフェノール、4−メトキシフェノール、ノニルフェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、4−クロロフェノール、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、ヒドロキノン、1−ヒドロキシ−2−プロパノン、3−ヒドロキシアセトフェノン、4−ヒドロキシアセトフェノンが挙げられる。
【0028】
シラン基で部分的にエンドキャップされたポリウレタンプレポリマーを80℃の芳香族アルコールで90分間反応させ、シランと芳香族アルコールでエンドキャップされたポリウレタンプレポリマー及び過剰な芳香族アルコールを含む組成物が得られる。或いは、シラン基で部分的にエンドキャップされたポリウレタンプレポリマーを、脂肪族アルコール、又は脂肪族アルコール及び芳香族アルコールとの組み合わせと共に80℃で90分間反応させ、シラン基とアルコール基との組み合わせで完全にエンドキャップされたポリウレタン組成物を含む組成物が得られる。プレポリマーがシラン基又はシラン基とアルコールエンドキャップ基の組み合わせにより100%エンドキャップされた場合、ポリマーは加熱を必要とすることなく過剰の芳香族アルコールと結合する。
【0029】
選択的に、組成物は反応後に加えられる湿分除去剤を含む。プレポリマー組成物に混合される湿分除去剤の例として、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシザラン、p−トルエンスルホニルイソシアネート(PTSI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、及びポリマーMDIが挙げられる。プレポリマーの湿分含有量は好ましくは0.1〜10%、より好ましくは0.2〜3%である。
【0030】
他の局面において、本発明は本願のプレポリマー組成物及び硬化触媒を含むシーラント組成物又はコーティング組成物を提供する。適した硬化触媒として、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ビス(アセチルアセトネート)が挙げられる。
【0031】
好ましくは、シーラント組成物又はコーティング組成物は補強材を含む。適した補強材の例として、これらには限らないが、炭酸カルシウム、フュームシリカ、粘土、タルクが挙げられる。好ましくは、シーラント組成物はまた接着促進剤を含む。適した接着促進剤の例として、これらに限らないが、アミノシランやエポキシシランが挙げられる。選択的に、シーラント組成物は一つ又は2以上の粘度調整剤、湿分除去剤、紫外線安定剤を含む。シーラント組成物の適した湿分除去剤の例として、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、及びポリマーMDI、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシザラン、p−トルエンスルホニルイソシアネートが挙げられる。
【0032】
本願発明の組成物はプレポリマー組成物と補強材とを、均質の混合物が得られるまで混合することにより製造される。混合は混合物の湿分のレベルを低下させる状態において行われる。混合の後、触媒および他の望ましい成分、例えば接着促進剤等を混合物に加える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
シーラント組成物はビルディング、幹線道路、橋、トラック、トレーラー、バス、RV車、一般車両、公共施設、窓の設置等におけるシールや接着に使用可能である。本発明のシーラント組成物でシール又は接着される物質は様々であり、例えば、セメント含有製品、金属類、プラスチック類、ガラス類、外断熱仕上げシステム材、ビニール製品類、塗装金属、塗装ガラス、カイナー(フッ化ビニリデン)、大理石、花崗岩、れんがが含まれる。シーラント組成物はコーキングガン又はポンプ等の標準的器具を使って使用され得る。
コーティング組成物は表面にスプレー或いは広げ、その表面をローラーや他の同様な器具で延ばすことにより利用され得る。
【0034】
以下の実施例は例示のみの目的であり、本明細書に添付した請求項に規定する発明の範囲を制限するものではない。
【実施例1】
【0035】
(プレポリマー組成物)
平均の重量平均分子量が4000であるポリプロピレングリコールジオール782グラム、フタル酸ジイソデシル(DIDP)118グラム、トルエンジイソシアネート(TDI)51グラムを攪拌し、0.04グラムのジブチル錫ジラウレート(dibutyltindilaurate)を含む窒素の下で75〜80℃の温度で反応させた。NCOの含有量が理論上約0.7%に達した後、43グラムのアミノシラン(アミノプロピルトリメトキシシラン及びアクリル酸エチルの反応物)を反応装置に加えた。反応は遊離型のNCO含有量が0.05%より低くなるまで続いた。その後3グラムのノニルフェノールを、0.02グラムのジブチル錫ジラウレートと共に反応混合物に加えた。反応は75℃で、NCOの含有%が0になるまで続き、反応の最後に3.3グラムのビニルトリメトキシシラン(湿分除去剤)を加えた。このように製造したプレポリマー組成物は25℃で30,000cpsのブルックフィールド粘度を有していた。このプレポリマー組成物を一年間放置した後のブルックフィールド粘度は、40,000cpsより低かった。
【実施例2】
【0036】
(プレポリマー組成物)
平均の重量平均分子量が4000であるポリプロピレングリコールジオール868グラムとイソホロンジイソシアネート74.4グラムとを、0.06グラムのジブチル錫ジラウレートを含む窒素の下で85℃の温度で反応させた。NCOの含有量が理論上約0.85%に達した後、43グラムのアミノシラン(アミノプロピルトリメトキシシラン及びアクリル酸エチルの反応物)を反応装置に加えた。反応は遊離型のNCO含有量が0.2%より低くなるまで続いた。その後11グラムのノニルフェノールを反応混合物に加えた。反応は85℃で、NCOの含有%が0になるまで続き、反応の最後に4グラムのビニルトリメトキシシラン(湿分除去剤)を加えた。このように製造したプレポリマー組成物は25℃で32,000cpsのブルックフィールド粘度を有していた。このプレポリマー組成物を一年間放置した後のブルックフィールド粘度は、40,000cpsより低かった。
【実施例3】
【0037】
(プレポリマー組成物)
平均の重量平均分子量が4000であるポリプロピレングリコールジオール876グラムとイソホロンジイソシアネート75.4グラムとを、0.06グラムのジブチル錫ジラウレートを含む窒素の下で85℃の温度で反応させた。NCOの含有量が理論上約0.85%に達した後、34グラムのN−エチルアミノイソブチルトリメトキシシランを反応装置に加えた。反応は遊離型のNCO含有量が0.2%より低くなるまで続いた。その後11グラムのノニルフェノールを反応混合物に加えた。反応は85℃で、NCOの含有%が0になるまで続き、反応の最後に4グラムのビニルトリメトキシシラン(湿分除去剤)を加えた。このように製造したプレポリマー組成物は25℃で38,000cpsのブルックフィールド粘度を有していた。このプレポリマー組成物を一年間放置した後のブルックフィールド粘度は、45,000cpsより低かった。
【実施例4】
【0038】
(シーラント組成物)
シーラント組成物は以下の方式に基づき製造される。
材料 重量%
シラン及びエンドキャップされたノニフェノール 27.04
ポリウレタンプレポリマー(実施例1、2、又は3)
可塑剤 17
(サンティサイザー(Santicizer)160)
被覆沈降炭酸カルシウム 40
(ハクエンカ(Hakuennka) CCR)
被覆研磨炭酸カルシウム 10
(ハイ−ピーフレックス(Hi‐Pflex) 100)
着色料 4.3
ビニルトリメトキシシラン(A−171) 1
アミノプロピルトリメトキシシラン 0.08
N−エチルアミノプロピルイソブチルトリメトキシシラン 0.5
ジブチル錫ジアセテート 0.08
【0039】
シーラント組成物は、システム内の湿度レベルを下げるため、最初に実施例1、2、或いは3のポリウレタンプレポリマー組成物を75℃の真空下で約60分間、可塑剤、炭酸カルシウム及び着色料と混合して製造した。全てのシランと触媒を混合物に加え、真空下の混合を10分間継続した。
【0040】
上記のように製造した3つのシーラントの各々は、大気状態で密封容器に1年以上保管しても優れた安定性を示した。硬化したシーラントは、湿度50%及び温度25℃の状態に3週間付した後、ショア硬度(Aスケール)20を示した。ひび割れや白色化、あるいはポリマー接着の劣化などの他の品質の低下は、キセノンウェザーメーターで4000時間以上紫外線に晒したシーラントには見られなかった。紫外線に4000時間晒した後も、ショア硬度(Aスケール)は約20に維持されていた。更に、実施例2及び3のプレポリマーで製造したシーラントは紫外線に晒した後でも優れた色彩安定性を示した。
【0041】
全てのシーラントはまた、優れた物理的特性を備えていた。全てのシーラントの表皮形成時間はおよそ60分であった。シーラントの押し出し速度は20グラムの材料を60psiで行った場合約20秒であった。引っ張り強さは約150psi、破断点伸びは500%より大きく、引裂き強度は約40pliであった。全てのシーラントはアルミニウム、ガラス、コンクリート、ビニール、鋼鉄、及びれんが等の様々な基板に対し優れた接着性を示した。
【0042】
従って、本発明のシーラント又はコーティング組成物は品質保持に優れており、吹き付けが容易となるよう優れた流動性を有し、接合作業に耐えられるよう優れた柔軟性を有し、硬化する際の収縮やガス抜けもなく、紫外線に晒しても耐候性に優れ、大気の湿分に付した後はすばやく表皮形成を行う。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーラント及びコーティング組成物を製造するためのプレポリマー組成物であって、
a) シラン基又はシラン基及びアルコール基でエンドキャップされたNCO末端基を含むプレポリマーと、
b) 過剰な未反応の芳香族アルコール
とを含むことを特徴とするプレポリマー組成物。
【請求項2】
前記未反応のアルコールは2000より少ない分子量を有することを特徴とする請求項1記載のプレポリマー組成物。
【請求項3】
前記組成物における前記未反応の芳香族アルコールの過剰分は、プレポリマー内のエンドキャップされたNCO基の個数の0mol%より大きく15mol%までの量であることを特徴とする請求項1記載のプレポリマー組成物。
【請求項4】
前記組成物における前記未反応の芳香族アルコールの過剰分は、プレポリマー内のエンドキャップされたNCO基の個数の2mol%より大きいことを特徴とする請求項3記載のプレポリマー組成物。
【請求項5】
前記組成物はさらに過剰の未反応の脂肪族アルコールを含み、
前記組成物における未反応の脂肪族アルコールの過剰分は組成物における芳香族アルコールの過剰分より少なく、
前記組成物における未反応の脂肪族アルコールの過剰分は、プレポリマー内のエンドキャップされたNCO基の個数の5mol%より少ないことを特徴とする請求項1記載のプレポリマー組成物。
【請求項6】
前記NCO基の50%〜100%はシランのエンドキャップ基でエンドキャップしたものであり、前記プレポリマーのNCO基の0%〜50%は芳香族アルコールのエンドキャップ基、又は脂肪族アルコールのエンドキャップ基、又は芳香族及び脂肪族のエンドキャップ基の組み合わせでエンドキャップしたものであることを特徴とする請求項1記載のプレポリマー組成物。
【請求項7】
前記プレポリマーのNCO基の70%〜100%はシランのエンドキャップ基でエンドキャップしたものであり、前記プレポリマーのNCO基の0%〜30%は芳香族アルコールのエンドキャップ基、又は脂肪族アルコールのエンドキャップ基、又は芳香族及び脂肪族のエンドキャップ基の組み合わせでエンドキャップしたものであることを特徴とする請求項1記載のプレポリマー組成物。
【請求項8】
前記プレポリマーのNCO基の80%〜100%はシランのエンドキャップ基でエンドキャップしたものであり、前記プレポリマーのNCO基の0%〜20%は芳香族アルコールのエンドキャップ基、又は脂肪族アルコールのエンドキャップ基、又は芳香族及び脂肪族のエンドキャップ基の組み合わせでエンドキャップしたものであることを特徴とする請求項1記載のプレポリマー組成物。
【請求項9】
前記組成物は更に湿分除去剤を含むことを特徴とする請求項1に記載のプレポリマー組成物。
【請求項10】
前記湿分除去剤はビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシザラン、p−トルエンスルホニルイソシアネート(PTSI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、及びポリマーMDIからなるグループより選択されることを特徴とする請求項9記載のプレポリマー組成物。
【請求項11】
シーラント及びコーティング組成物を製造するプレポリマー組成物であって、
a)シラン基又はシラン基と芳香族アルコール基との組み合わせによりエンドキャップされたNCO末端基を含むプレポリマーと、
b)重量平均分子量が2000より少ない過剰な芳香族アルコール
とを含み、
前記プレポリマーのNCO基の50%〜100%はシランのエンドキャップ基でエンドキャップしたものであり、前記プレポリマーのNCO基の0%〜50%は芳香族アルコールのエンドキャップ基でエンドキャップしたものであり、
前記組成物における前記芳香族アルコールの過剰分は、プレポリマー内のエンドキャップされたNCO基の個数の0mol%より大きく15mol%までの量であることを特徴とするプレポリマー組成物。
【請求項12】
プレポリマー組成物を製造する方法であって、
a)ヒドロキシ末端のポリマーを、2又は3以上のイソシアネート基を有する有機的イソシアネートと反応させ、NCO末端基を有するプレポリマーを製造する工程と、
b)前記工程a)で得られたプレポリマーをシランのキャップ剤と反応させ、前記プレポリマーの50〜100%のNCO基がシラン基でエンドキャップされたプレポリマーを製造する工程と、
c)前記工程b)で得られた部分的にシラン基でエンドキャップされたプレポリマーを選択的に芳香族アルコール、脂肪族アルコール、或いは芳香族及び脂肪族アルコールの組み合わせと反応させ、一部がシラン基でエンドキャップされ、一部がアルコール基でエンドキャップされたポリウレタンプレポリマーを製造する工程と、
d)前記工程b)又は工程c)から得られたプレポリマーを、十分な量の芳香族アルコールと反応させ、完全にエンドキャップされたNCO基と過剰な芳香族アルコールを有するプレポリマー組成物を製造する工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記工程d)はシラン基で部分的又は完全にエンドキャップされたプレポリマーを一定のレベルのアルコールと反応させる工程を含み、前記レベルはプレポリマー内の元のNCO基の個数の0mol%より大きく65mol%までであることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
シランのキャップ剤が、下式Iで示されることを特徴とする請求項12記載の方法。
H-NR1-R2-Si(OR3)2(R4) I
(上記において、Rは水素、置換した脂肪族、脂環式及び/または芳香族の炭化水素ラジカルであり、それは1から10の炭素原子、又は第2の-R2-Si(OR3)2(R4)、又は-CHR5-CHR6COOR7 を含み、R5とR6はH又はC1-6の有機部分であり、R7はC1-10の有機部分である。
R2は1から8の炭素原子を含む直線又は分岐したアルキレンラジカルを表す。
R3はC1-6のアルキル基を表す。
R4は-CH3、 -CH2CH3、又は OR3である。)
【請求項15】
前記シランのキャップ剤は、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、ガンマ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ガンマ−アミノプロピルトリエトキシシラン、及びアミノシランとアクリルモノマーの反応物、メルカプトシラン、メルカプロシランとモノエポキシドの反応物、エポキシシランと第2級アミンの反応物からなるグループより選択されることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項16】
前記ヒドロキシ末端のポリマーは500〜18000の重量平均分子量を有することを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項17】
前記芳香族アルコールは2000より少ない分子量を有することを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項18】
前記芳香族アルコールは、フェノール、3−メトキシフェノール、4−メトキシフェノール、ノニルフェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、4−クロロフェノール、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、ヒドロキノン、1−ヒドロキシ−2−プロパノン、2−ヒドロキシアセトフェノン、4−ヒドロキシアセトフェノンからなるグループより選択されることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項19】
シランでエンドキャップされた前記プレポリマーと反応する芳香族のアルコールの量は、前記プレポリマー内の元のNCO基の個数の0mol%より多く65mol%までであることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項20】
前記プレポリマーのNCO基の85%〜100%はシラン基でエンドキャップされ、
シランでエンドキャップされたポリウレタンプレポリマーと反応する芳香族のアルコールの量は、前記プレポリマー内の元のNCO基の個数の0mol%より多く30mol%までであることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項21】
ヒドロキシ末端のポリマーは脂肪族イソシアネートと反応することを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項22】
前記脂肪族イソシアネートは、イソホロンジイソシアネート又はジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、或いはそれらの混合物であることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項23】
前記ヒドロキシ末端のポリマーは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、2又は3以上のヒドロキシ基を含む炭化水素の鎖からなるグループより選択されることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項24】
シーラント組成物であって、
a)下記i)、ii)を含むプレポリマー組成物と、
i)シラン基又はシラン基とアルコールからなるエンドキャップ基との組み合わせによりエンドキャップされたNCO末端基を有し、重量平均分子量が5000〜60000であるプレポリマー
ii)過剰な芳香族アルコール
b)前記シーラント組成物が大気中の湿分に付される際プレポリマー間の架橋結合を促進する触媒と、
を含むことを特徴とするシーラント組成物。
【請求項25】
前記組成物における前記未反応の芳香族アルコールの過剰分は、前記プレポリマー内のエンドキャップされたNCO基の個数の0mol%より大きく15mol%までの量であることを特徴とする請求項24記載のシーラント組成物。
【請求項26】
前記プレポリマーのNCO基の50%〜100%はシランのエンドキャップ基でエンドキャップしたものであり、前記プレポリマーのNCO基の0%〜50%は芳香族アルコールのエンドキャップ基、脂肪族アルコールのエンドキャップ基、又は芳香族及び脂肪族アルコールのエンドキャップ基の組み合わせでエンドキャップしたものであることを特徴とする請求項24記載のシーラント組成物。
【請求項27】
前記プレポリマーのNCO基の70%〜100%はシランのエンドキャップ基でエンドキャップしたものであり、前記プレポリマーのNCO基の0%〜30%は芳香族アルコールのエンドキャップ基、脂肪族アルコールのエンドキャップ基、又は芳香族及び脂肪族アルコールのエンドキャップ基の組み合わせでエンドキャップしたものであることを特徴とする請求項24記載のシーラント組成物。
【請求項28】
前記プレポリマーのNCO基の80%〜100%は、シランのエンドキャップ基でエンドキャップしたものであり、前記プレポリマーのNCO基の0%〜20%は芳香族アルコールのエンドキャップ基、脂肪族アルコールのエンドキャップ基、又は芳香族及び脂肪族アルコールのエンドキャップ基の組み合わせでエンドキャップしたものであることを特徴とする請求項24記載のシーラント組成物。
【請求項29】
さらに補強材を含むことを特徴とする請求項24記載のシーラント組成物。
【請求項30】
さらに湿分除去剤を含むことを特徴とする請求項24記載のシーラント組成物。
【請求項31】
さらに接着促進剤を含むことを特徴とする請求項24記載のシーラント組成物。
【請求項32】
コーティング組成物であって、
a)下記i)、ii)を含むプレポリマー組成物と、
i)シラン基又はシラン基とアルコールからなるエンドキャップ基との組み合わせによりエンドキャップされたNCO末端基を有し、重量平均分子量が1000〜20000であるプレポリマー
ii)過剰な芳香族アルコール
b)前記コーティング組成物が大気中の湿分に付される際プレポリマー間の架橋結合を促進する触媒と、
を含むことを特徴とするコーティング組成物。

【公表番号】特表2007−508417(P2007−508417A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533971(P2006−533971)
【出願日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/031108
【国際公開番号】WO2005/035616
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(506113152)トレムコ インコーポレイティド (1)
【Fターム(参考)】