説明

プロアントシアニジン含有食品及びその製造法

【課題】 渋味・収斂味が低減されたプロアントシアニジン含有飲食品及びその製造法を提供すること。
【解決手段】 プロアントシアニジンを含有する飲食品に、レバウジオシドA及びステビオシドの2種の甘味料を好適な濃度で組み合わせて添加することにより、プロアントシアニジン由来の渋味・収斂味を顕著に低減させることができる。錠剤やカプセル剤の形態での摂取が困難な小児や高齢者であっても容易にプロアントシアニジンが摂取でき、また渋味が低減化されたプロアントシアニジン組成物を広く市場に提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプロアントシアニジンを含有する飲食品及びその製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブドウの種子、皮、搾汁粕あるいは樹皮や豆類等の植物体より抽出して得られるプロアントシアニジンは強い抗酸化作用を有しており飲食品等の抗酸化剤として利用されている。また、種々の生理活性も有することから、最近では機能性食品素材として利用されている。プロアントシアニジンは、ポリフェノールの1種で次式で表される、フラバン−3−オール又はフラバン−3,4−ジオールを構成単位として、4−6位又は4−8位で縮合若しくは重合により結合した化合物群であり、各種植物体中に存在する縮合型タンニンである。
【0003】
【化1】

【0004】
(式中Rは水素原子又は水酸基、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、水酸基又はメトキシ基、R、R、R、Rはそれぞれ独立に水酸基又はメトキシ基、R,Rはガロイル基又はグルコピラノシル基を示す)
なお上記の式は、理解を助けるために4−8位で縮合した場合だけを示している。これらは酸処理によりシアニジン、デルフィニジン、ペラルゴニジン等のアントシアニジンを生成するところから、この名称が与えられているものである。そして上記構成単位の2量体、3量体、4量体さらに10〜30量体以上の高分子のプロシアニジン、プロデルフィニジン、プロペラルゴニジン等のプロアントシアニジン及びそれらの立体異性体等を含むものである。
【0005】
プロアントシアニジンはその抗酸化作用のみならず抗動脈硬化作用(非特許文献1参照)、抗アレルギー作用(特許文献1参照)、抗糖尿作用(特許文献2参照)等が知られている。これらの効果を期待して人がプロアントシアニジンを摂取する場合、静脈瘤改善作用(150〜300mg/日)、網膜症改善作用(100〜150mg/日)、毛細血管抵抗性改善作用(100mg/日)、視力の光抵抗性改善作用(200mg/日)等に関する記述(非特許文献2参照)から、1日にプロアントシアニジンを100mg〜300mg摂取することが望ましい。従ってプロアントシアニジンの1日推奨量を例えば飲料に配合した場合、100〜300mgを例えば350mlに配合する必要があるといわれている。
【0006】
しかし、プロアントシアニジンには独特の強い渋味があるため、これを飲食品に添加する場合、自ずとその量が制限され、あるいは機能性食品としてこれを食する場合、口腔内にひどいしびれを伴う不快感を生ずるため、大量のプロアントシアニジンをそのまま摂取することは、極めて困難である。このようなことからプロアントシアニジンを主成分とする機能性食品分野においては錠剤(糖衣錠も含む)あるいはカプセルの形態が多く用いられ、高濃度の粉剤や顆粒剤タイプの製品や食品、飲料等は見当たらないのが現状である。
一方、タンニン系の「渋味食品」の代表格は柿渋タンニンであるが、古くより柿渋の脱渋方法として「焼酎・アルコール抜き」「湯抜き」「ドライアイス・炭酸ガス抜き」「灰汁抜き」などが知られている。
しかし、これらは柿果実の細胞に嫌気的呼吸をさせてアセトアルデヒドを発生させ、これが柿渋タンニンを重合させ、その結果タンニンが不溶性化することによる渋抜きであって、あらかじめ抽出した高濃度のプロアントシアニジンの渋味をこの方法により低減することは不可能である。
【0007】
その他のタンニン系渋味を含有する食品の渋味低減方法としては、紅茶にアルカリ処理ゼラチンを添加してゼリー化する方法(特許文献3参照)、タンニン等の渋味成分を含む食品にプロタミンを添加する方法(特許文献4、5参照)、酵素で渋味成分をグリコシル化する方法(特許文献6、7参照)、樹脂や活性炭で渋味成分を吸着除去する方法(特許文献8、9、10参照)、サイクロデキストリンを用いたマスキング法(特許文献7、11、12参照)などが提案されている。しかし、これらはいずれもごく少量含まれているタンニンの渋味をマスクする方法やタンニン自体を除去してしまう方法であり、高濃度にプロアントシアニジンを含有させた食品等には適さない方法である。例えばプロアントシアニジンのアミラーゼやリパーゼ阻害活性(非特許文献3参照)を期待してプロアントシアニジンを含有する食品又は飲料等を調製する場合、重合度を高めて不溶化したり、ゼラチンや蛋白等を用いてあらかじめプロアントシアニジンと結合させることにより渋味の低減化を図ると、アミラーゼやリパーゼ等の消化酵素(蛋白質)とプロアントシアニジンが結合しなくなり、プロアントシアニジンが有する本来の効果を期待できなくなる問題点を有している。
【0008】
また、タンニンとは異なるがプロピレングリコールの渋味をマスクする方法としてステビオシドを0.005〜1.0%添加する方法(特許文献14参照)及び渋味・風味を改善する目的でグアバ茶葉にステビオシドを1,000〜30,000ppmになるように添加する方法(特許文献15参照)が知られている。ステビアによるマスキング技術としては、甘味の閾値以下の量を用いる方法、アスパルテームなどとの併用などの技術が知られている(特許文献16、17参照)。甘味が後に残るステビア抽出物が、内服液組成物の服用後に遅く発現する渋味、エグ味を抑えることで呈味が改善することも知られている(特許文献18参照)。また、酵素処理ステビアを10〜500ppm配合して、高濃度のカテキンを含有しつつ渋味、甘味が低減された容器詰非茶飲料も知られている(特許文献19参照)。
【0009】
しかし、これらの方法をプロアントシアニジンに適応させるとステビオシドの甘味の発現時間がプロアントシアニジンの渋味及び収斂味の発現時間より遅いため、ステビオシドの添加量が少ないとプロアントシアニジンの渋味・収斂味が十分にマスクされない。そのため、渋味・収斂味が強く食品には向かない風味となってしまう問題点を有していた。
また、ステビオシドの添加量を多くして、プロアントシアニジンの渋味・収斂味をマスクしようとすると、ステビオシド由来の甘味の発現時間とプロアントシアニジン由来の渋味・収斂味の発現時間とが一致しないため、渋味・収斂味を十分にマスクすることができないばかりか甘味を感じる閾値を大きく越えてしまう。そのため、渋味・収斂味及び強い甘味を共に有してしまい、食品には向かない風味となってしまう問題点を有していた。
同様にプロアントシアニジンの渋味・収斂味をマスキングする目的で例えば砂糖を添加すると、砂糖の甘味の発現時間はプロアントシアニジンより早いため、甘味及び渋味・収斂味の両方が感じられてしまい食品には向かない風味となってしまう。
従って、プロアントシアニジンの量的な損失を伴わず、安価で効率よく、しかも安全な方法で渋味を低減する方法が求められている。
【0010】
【特許文献1】特開2001−278792号公報
【特許文献2】特開2000−44472号公報
【特許文献3】特開平4−49984号公報
【特許文献4】特開平5−328935号公報
【特許文献5】特開平6−153875号公報
【特許文献6】特開平7−327602号公報、
【特許文献7】特公平6−88908号公報
【特許文献8】特開平8−173084号公報
【特許文献9】特開平9−220055号公報
【特許文献10】特開平11−103817号公報
【特許文献11】特開平9−309902号公報
【特許文献12】特開平10−4919号公報
【特許文献13】特開平8−283257号公報
【特許文献14】特開昭55−50866号公報
【特許文献15】特開昭57−83265号公報
【特許文献16】特開平10−248501号公報
【特許文献17】特開平10−262600号公報
【特許文献18】特開2003−231647号公報
【特許文献19】特開2005−176666号公報
【非特許文献1】アテロスクレローシス(Atherosclerosis), 142, 139−149, l999
【非特許文献2】食品と開発 35巻 11−14
【非特許文献3】ブリティシュ ジャーナル オブ ニュートリション(British Journal of Nutrition) 1998, 60, 275−285
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、渋味・収斂味が低減されたプロアントシアニジン含有飲食品及びその製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、プロアントシアニジンを含有する飲食品に、プロアントシアニジンの渋味・収斂味の発現時間より甘味の発現時間が早いレバウジオシドA、及び、プロアントシアニジンの渋味・収斂味の発現開始時間より遅く甘味を発現するステビオシドの2種の甘味料を添加することにより、プロアントシアニジン本来の活性を失うことなく渋味・収斂味を顕著に低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は以下に関する。
(1)プロアントシアニジン、レバウジオシドA及びステビオシドを含有し、レバウジオシドAとステビオシドとの重量比が
レバウジオシドA/ステビオシド=0.11〜0.21
の組成である飲食品。
(2)(レバウジオシドA重量+ステビオシド重量)/プロアントシアニジン重量=0.001〜0.1
の組成である(1)記載の飲食品。
(3)プロアントシアニジン濃度が200〜1,700ppmである(1)又は(2)記載の飲食品。
(4)少なくとも2種の甘味料(A)レバウジオシドA及び(B)ステビオシドを含有する茶飲料であって、甘味料の組成が、
(イ)(A)+(B)=1〜30ppm
(ロ)(A)=0.11〜6.3ppm
(ハ)(A)/(B)=0.11〜0.21
である(1)〜(3)記載の茶飲料。
(5)プロアントシアニジン、レバウジオシドA及びステビオシドを添加する飲食品の製造法であって、添加されるレバウジオシドAとステビオシドとの重量比が、
レバウジオシドA/ステビオシド=0.11〜0.21
の組成である飲食品の製造法。
(6)プロアントシアニジン、レバウジオシドA及びステビオシドが、
(レバウジオシドA重量+ステビオシド重量)/プロアントシアニジン重量=0.001〜0.1
の組成である(5)記載の飲食品の製造法。
(7)濃度が200〜1,700ppmとなるようにプロアントシアニジンを添加する、(5)又は(6)記載の飲食品の製造法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、プロアントシアニジン含有飲食品の渋味・収斂味を低減することができる。その結果、飲料や粉末タイプであっても渋味が軽度であり、錠剤やカプセル剤の形態での摂取が困難な小児や高齢者であっても容易にプロアントシアニジンが摂取でき、また渋味が低減化されたプロアントシアニジン組成物を広く市場に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下本発明を詳細に説明する。
1.本発明の飲食品
本発明の飲食品は、プロアントシアニジン、レバウジオシドA及びステビオシドを含有し、レバウジオシドAとステビオシドとの重量比が、レバウジオシドA/ステビオシド=0.11〜0.21の組成であることを特徴とする。
【0015】
本発明が適用される飲食品は特に限定されず、例えば、飲料、各種形状の固形食品(菓子、パン、惣菜等)が挙げられる。摂食の容易さから飲料は好適であり、例えば、水、牛乳、茶飲料(緑茶、紅茶、烏龍茶等)、酒類(日本酒、ワイン、ウイスキー、ブランデー、ウオッカ、焼酎)が挙げられる。固形食品の場合は、ゼリーなどのゲル状、粉体・顆粒状やカプセル・錠剤状などの任意の形状にすることができる。
【0016】
本発明でいうプロアントシアニジンには、単離精製されたプロアントシアニジン及びプロアントシアニジンを含有する植物抽出物が含まれる。植物抽出物とは、ブドウ、カキ、リンゴ、マツ、落花生、アズキ、クランベリーなど植物体を水や有機溶媒で抽出して得られる抽出物であり、その主成分をプロアントシアニジンとする抽出物である。中でもプロアントシアニジンの含有量が多く、糖類などの夾雑物の含量も少なく、高純度のプロアントシアニジンが抽出によって容易に得られることから、ブドウ種子抽出物が好適である。
【0017】
以上のようにして得られたプロアントシアニジンを主体とする植物抽出物は、液状若しくは半固形状の形態で得られるが、この植物抽出物から抽出溶媒を減圧留去、スプレードライ、凍結乾燥などの公知の方法によって除去して使用することができるが、本発明に用いるプロアントシアニジンとしては純度15%以上の抽出エキスが好適である。特開平11−80148号の実施例に示すように、最適の原料と抽出条件を用いれば、90%以上の高い純度でプロアントシアニジンを含有する植物抽出物を、簡単に得ることもできる。プロアントシアニジンは「第3版既存添加物自主規格」(日本添加物協会242−243頁、平成14年11月)記載の方法で定量することができる。
本発明の飲食品におけるプロアントシアニジン濃度は、当該飲食品の摂食の目的に応じて適宜設定すればよいが、例えば、200〜1,700ppm(プロアントシアニジン純品換算)である。
【0018】
レバウジオシドA(Registry number 58543−16−1)及びステビオシド(Registry number 57817−89−7)は、プロアントシアニジンの渋味・収斂味を低減させるために添加する甘味料である。
これら2種の甘味料は、南米原産のキク科植物ステビアに含まれており、これらはいかなる方法で得てもかまわないが、例えば和光純薬工業株式会社から購入することができる。
レバウジオシドAとステビオシドの甘味の発現時間は異なっているので、これら2種の甘味料を併用して、プロアントシアニジンの渋味・収斂味の発現時間と、甘味の発現時間をできるだけ一致させることができる。このため、プロアントシアニジンの渋味・収斂味の低減(以下「マスク」ともいう)が可能となる。
レバウジオシドAとステビオシドとの重量比が、ステビオシド1に対するレバウジオシドAの添加量比を0.11〜0.21、好ましくは0.13〜0.18の範囲になるように添加することより、プロアントシアニジンの渋味・収斂味発現時間とレバウジオシドA及びステビオシドの甘味発現時間を一致させることができ、効果的に渋味・収斂味を抑制することができる。
【0019】
ステビオシド1に対するレバウジオシドAの添加量比を0.21より大きくすると、甘味の発現時間が渋味・収斂味の発現時間より早くなるために、渋味・収斂味のマスクが充分にされず、甘味が強くなるだけで渋味・収斂味のマスクは充分にされない。また、添加量比が0.21から大きくずれると甘味発現時間と渋味・収斂味の発現時間が大きくずれるため、添加量が同じであれば全く渋味・収斂味がマスクされず、配合量を多くすると甘味が強くなり、渋味・収斂味もマスクされず、食用には向かない風味となってしまう。
同様に、レバウジオシドAとステビオシドとの重量比において、ステビオシド1に対するレバウジオシドAの添加量比を0.11未満にすると、今度は甘味の発現時間が渋味・収斂味の発現時間より遅くなるために、前述と同様になる。従って、レバウジオシドA及びステビオシドの添加量比を0.11〜0.21の範囲になるように調製する必要がある。
【0020】
また、プロアントシアニジンを配合した製品形態が例えば、アイスクリーム、甘味を有する飲料(ジュース等)等の場合は、レバウジオシドAとステビオシドとの重量比においてステビオシド1に対するレバウジオシドAの添加量比を0.11〜0.21の範囲にし、トータルの配合量を30ppm以上にすることにより、プロアントシアニジンの渋味・収斂味を低減させかつ適度な甘味を有する製品を製造することが可能である。
レバウジオシドA及びステビオシドを上記の添加量でプロアントシアニジンを含有する抽出物又はプロアントシアニジンを含有させた又は含有する食品又は飲料に添加することにより効果的にプロアントシアニジン特有の渋味・収斂味を低減させることができるが、必要により砂糖、スクラロース、アセスルファカリウム、アスパルテーム、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アリテーム、サッカリン、チクロ、ズルチン、異性化糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、麦芽糖、キシロース、異性化乳糖、フラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、カップリングシュガー、パラチノース、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、還元パラチノース等の他の甘味料と組み合わせてさらに製品に甘味を持たせたり、味を調えることができる。
【0021】
2.本発明の茶飲料
本発明の茶飲料は、プロアントシアニジン濃度が200〜1,700ppm(プロアントシアニジン純品換算)であり、かつ2種の甘味料(A)レバウジオシドA及び(B)ステビオシドを含有する茶飲料であって、甘味料の組成が、
(イ)(A)+(B)=1〜30ppm
(ロ)(A)=0.11〜6.3ppm
(ハ)(A)/(B)=0.11〜0.21
であることを特徴とする。
ここでいう茶飲料とは、特に限定されないが、例えば、緑茶、紅茶、烏龍茶、ほうじ茶及び麦茶等の茶飲料、並びにこれらの茶飲料が配合された酒類等である。
【0022】
プロアントシアニジンの以下の効果を期待して人が摂取する場合、すなわち静脈瘤改善作用(150〜300mg/日)、網膜症改善作用(100〜150mg/日)、毛細血管抵抗性改善作用(100mg/日)、視力の光抵抗性改善作用(200mg/日)を期待して、1日にプロアントシアニジンを100mg〜300mg摂取することが推奨されている。従ってプロアントシアニジンの1日推奨量を例えば飲料に配合した場合、100〜300mgを例えば350mlに配合する必要がある。
【0023】
しかし、上記の量を例えば、茶飲料に配合すると非常に強い渋味・収斂味を有した製品となってしまい、飲用に耐えない。
そこで、レバウジオシドAとステビオシドとの重量比においてステビオシド1に対するレバウジオシドAの添加量比を0.11〜0.21の範囲になるように配合することにより渋味・収斂味を低減させることができるが、緑茶、烏龍茶等、甘味を有さない風味が好まれる飲料の場合はレバウジオシドA及びステビオシドのトータルの配合量を、1〜30ppm(0.35〜10.5mg/350ml)好ましくは5〜20ppm(1.75〜7.0mg/350ml)にすることにより渋味・収斂味を大きく低減させ、かつ甘味を有さない、若しくは強くなりすぎない飲料を調製することが可能である。
【0024】
3.飲食品の製造法
また本発明は、プロアントシアニジン、レバウジオシドA及びステビオシドを添加する飲食品の製造法であって、添加されるレバウジオシドAとステビオシドとの重量比が、
レバウジオシドA/ステビオシド=0.11〜0.21
の組成である飲食品の製造法に関する。
プロアントシアニジンは、その濃度が200〜1,700ppmとなるように添加することが好ましい。また、甘味料とプロアントシアニジンの組成は以下であることが好ましい。
(レバウジオシドA重量+ステビオシド重量)/プロアントシアニジン重量=0.001〜0.1
プロアントシアニジン、レバウジオシドA及びステビオシドの飲食品への添加方法には制限がないが、例えば、1〜10%濃度のプロアントシアニジン水溶液へ、必要量のレバウジオシドA及びステビオシドを混合し、この混合液を飲食品に添加すればよい。
【0025】
また、粉状のプロアントシアニジンにレバウジオシドA及びステビオシドを添加しても良いし、適度な濃度で水に溶解又は分散させてから加えても良い。プロアントシアニジンを含有させた食品又は飲料に添加する場合はあらかじめプロアントシアニジンにレバウジオシドA及びステビオシドを添加しておいたプロアントシアニジン組成物を飲食品に添加してもよい。
【実施例1】
【0026】
実施例1により、本発明の効果を示す。
<渋味及びの尺度の設定>
本発明において、渋味の尺度は以下のようにして定めた。
渋味の強さを表す単位、尺度あるいは標準品が存在しないため、レバウジオシドA及びステビオシドを添加したプロアントシアニジン、並びにプロアントシアニジン、レバウジオシドA、及びステビオシドを添加した飲料を10人のパネラーを使って、官能評価し、渋味評価点を次の様に定めた。
{0点;渋味を感じない、1点;わずかに渋い、2点;渋い、3点;かなり渋い。}
同様に甘味の評価点を次の様に定めた。
{0点;甘味を感じない、1点;わずかに甘い、2点;甘い、3点;かなり甘い。}
プロアントシアニジンはブドウ種子抽出物(キッコーマン社製、「グラヴィノール−S」、プロアントシアニジン純度90%)を使用した。
【0027】
官能評価試験は25℃、室内、昼食後1〜3時間後に実施。各濃度のサンプル20mlを、濃度の薄い方から順番に口腔内に5−10秒間含んだ後、嚥下して官能評価を行った。各サンプルの官能評価終了後直ちに、水で口腔うがいを実施し、2分間以上間隔を開けてから次のサンプルの官能評価を実施した。
【0028】
<官能試験1>ブドウ種子抽出物入り烏龍茶の渋味・収斂味低減効果(配合比の検討)
市販キッコーマン社製烏龍茶にブドウ種子抽出物を350mlあたり333.3mg(プロアントシアニジン300mg/350ml)添加し、さらに種々の濃度比になるように調整したレバウジオシドA及びステビオシドの混合物を合計15ppm(3.5mg)の一定量を添加し、10人のパネラーを使って、渋味・収斂味及び甘味を官能評価した。評価試験の結果を図1に示す。
官能試験1の結果より、レバウジオシドAとステビオシドとの重量比においてステビオシド1に対するレバウジオシドAの配合比が0.11以上0.21以下のときに効果的に渋味・収斂味の発現が抑制され、かつ、添加した甘味料由来の甘味が抑制され甘味の官能評価に優れていることがわかる。また、配合比が0.11未満の場合若しくは0.21を超える場合には、渋味・収斂味の抑制効果は弱くなり、かつ、甘味が強く感じられ甘味の官能評価が劣っていることがわかる。このことから、レバウジオシドAとステビオシドとの重量比においてステビオシド1に対するレバウジオシドAの配合比が0.11未満の場合若しくは0.21を超える場合には烏龍茶、緑茶等の茶飲料には適さないことがわかる。
【0029】
<官能試験2>ブドウ種子抽出物入り烏龍茶の渋味・収斂味低減効果(添加量比)
市販キッコーマン社製烏龍茶にブドウ種子抽出物を350mlあたり333mg(プロアントシアニジン300mg/350ml)添加し、さらにレバウジオシドA/ステビオシドの配合比が0.15であるレバウジオシドA及びステビオシドを飲料中で種々の濃度になるように(0〜45ppm、0〜15.8mg)添加し、10人のパネラーを使って渋味・収斂味及び甘味を官能評価した。評価試験の結果を図2に示す。
官能試験2の結果よりレバウジオシドA・ステビオシドの合計の配合量がおよそ1ppm以上のときに渋味・収斂味の発現を低減し、5以上で効果的低減していることがわかる。また、レバウジオシドAとステビオシドの合計配合量が30ppm(10.5mg/350ml)を超えると甘味が強くなりすぎる事がわかる。また、例えば、烏龍茶、緑茶等甘味が強すぎることが好まれない茶飲料に添加する場合には、甘味料由来の甘味が感じられにくい20ppm(7mg/350ml)以下でかつ渋味・収斂味を効果的に低減する5ppm以上のレバウジオシドAとステビオシド(1.75mg/350ml)の添加が好ましいことがわかる。また、甘味を有する風味が好まれるジュース等の飲料の場合、20ppm以上の添加が好ましい事がわかる。
【0030】
<官能試験3>ブドウ種子抽出物の渋味・収斂味低減効果(配合比の検討)
市販キッコーマン社製ブドウ種子抽出物1.0gを水10mlに溶解し、そこにレバウジオシドA/ステビオシドの配合比が0.15であるレバウジオシドA及びステビオシドをプロアントシアニジンに対して種々の濃度比になるように(0〜0.14g)添加した。次に混合液を凍結乾燥に付し、得られた粉末を10人のパネラーを使って、渋味・収斂味及び甘味を官能評価した。評価試験の結果を図3に示す。
官能試験3の結果より、レバウジオシドA/ステビオシドの配合比が0.15で、プロアントシアニジンに対するレバウジオシドAとステビオシドの合計添加量の比((レバウジオシドA+ステビオシド)/プロアントシアニジン)が0.001以上のときに渋味・収斂味の発現が低減し、0.1以上では甘味の発現が強くなることがわかる。
【実施例2】
【0031】
以下に本発明の飲食品の製造例を具体的に説明する。
(プロアントシアニジン入り烏龍茶)
90℃の熱水1Lに烏龍茶葉10gを添加し、5分間抽出を行い、得られた烏龍茶350mlあたりブドウ種子抽出物(キッコーマン社製:グラヴィノールS)333.3mg(プロアントシアニジン量300mg)、レバウジオシドA0.42mg、及びステビオシド2.8mgを添加し、さらに135℃で1分加熱する超高温殺菌を行い、PETボトルに充填することにより、渋味を低減させたプロアントシアニジン入り烏龍茶を得た。
【0032】
(プロアントシアニジン入り録茶)
50℃の温水1Lに緑茶10gを添加し、5分間抽出を行い、得られた緑茶エキス350mlあたりブドウ種子抽出物(キッコーマン社製:グラヴィノールS)167mg(プロアントシアニジン量150mg)、レバウジオシドA0.42mg、及びステビオシド2.8mgを添加し、さらに135℃で1分加熱する超高温殺菌を行い、PETボトルに充填することにより、渋味を低減させたプロアントシアニジン入り緑茶を得た。
(経口用錠剤)
以下の配合で通常の方法で錠剤状の食品を製造した。
配合原料:
(1)ブドウ種子抽出物(プロアントシアニジン含量95%) 125.0mg
(2)水飴 100.0mg
(3)セルロース 12.5mg
(3)デキストリン 5.25mg
(4)グリセリン脂肪酸エステル 6.0mg
(5)レバウジオシドA 0.17mg
(6)ステビオシド 1.08mg
合計250.0mg
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】官能試験1において、渋味・収斂味及び甘味を官能評価したときの値を示した図である。
【図2】官能試験2において、渋味・収斂味及び甘味を官能評価したときの値を示した図である。
【図3】官能試験3において、渋味・収斂味及び甘味を官能評価したときの値を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロアントシアニジン、レバウジオシドA及びステビオシドを含有し、レバウジオシドAとステビオシドとの重量比が
レバウジオシドA/ステビオシド=0.11〜0.21
の組成である飲食品。
【請求項2】
(レバウジオシドA重量+ステビオシド重量)/プロアントシアニジン重量=0.001〜0.1
の組成である請求項1記載の飲食品。
【請求項3】
プロアントシアニジン濃度が200〜1,700ppmである請求項1又は2記載の飲食品。
【請求項4】
少なくとも2種の甘味料(A)レバウジオシドA及び(B)ステビオシドを含有する茶飲料であって、甘味料の組成が、
(イ)(A)+(B)=1〜30ppm
(ロ)(A)=0.11〜6.3ppm
(ハ)(A)/(B)=0.11〜0.21
である請求項1〜3記載の茶飲料。
【請求項5】
プロアントシアニジン、レバウジオシドA及びステビオシドを添加する飲食品の製造法であって、添加されるレバウジオシドAとステビオシドとの重量比が、
レバウジオシドA/ステビオシド=0.11〜0.21
の組成である飲食品の製造法。
【請求項6】
プロアントシアニジン、レバウジオシドA及びステビオシドが、
(レバウジオシドA重量+ステビオシド重量)/プロアントシアニジン重量=0.001〜0.1
の組成である請求項5記載の飲食品の製造法。
【請求項7】
濃度が200〜1,700ppmとなるようにプロアントシアニジンを添加する、請求項5又は6記載の飲食品の製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−82482(P2007−82482A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−276514(P2005−276514)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000004477)キッコーマン株式会社 (212)
【出願人】(000104559)日本デルモンテ株式会社 (44)
【Fターム(参考)】