説明

プロゲステロンレセプターアンタゴニスト

本発明は、一般式Iのプロゲステロンレセプターアンタゴニストに関する: 式中R1は水素原子であり、そしてR2はヒドロキシル基であるか、あるいはR1およびR2は一緒になってオキソ基であることができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式I:
【化1】

【0002】
(式中、R1は水素原子であり、そしてR2はヒドロキシル基であるか、あるいはR1およびR2は一緒になってオキソ基であることができる)
のプロゲステロンレセプターアンタゴニスト、それらを含有する薬物 (医薬組成物) および薬物の製造におけるそれらの使用に関する。
【0003】
本発明は、特に
プロゲステロンレセプターアンタゴニスト:
- 11β-[4-(1,2-ジヒドロキシエチル)フェニル]-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オン
およびその個々のエピマー:
- 11β-[4-[(1R)-1,2-ジヒドロキシエチル]フェニル]-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オン、および
- 11β-[4-[(1S)-1,2-ジヒドロキシエチル]フェニル]-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オン、
および
- 20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-11β-[4-(ヒドロキシアセチル)フェニル]-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オン、
並びにそれらを含有する薬物 (医薬組成物) および薬物の製造におけるそれらの使用に関する。
【0004】
本発明の好ましい化合物は、20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-11β-[4-(ヒドロキシアセチル)フェニル]-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンである。
【背景技術】
【0005】
抗ゲスターゲン活性をもつ化合物 (競合プロゲステロンレセプターアンタゴニスト) は1982年に最初に知られ (RU 486; EP 57115) 、それ以来非常によく記載されてきている。本発明による物質と異なり、フッ素化17α側鎖を有する、抗ゲスターゲン活性をもつステロイドは、WO 98/34947およびFuhrmann 他、J. Med. Chem. 43、5010-5016 (2000) に発表された。WO 98/34947に開示されている化合物のクラスはステロイド核の位置11において多種多様な置換を可能とするが、二置換アルキルフェニル基に拡張しなかった。EP 57115はステロイド核の位置11においてある範囲の置換を可能とするが、このような置換が窒素原子、リン原子またはケイ素原子を含有することを必要とした。したがって、ステロイド核の位置17にフッ素含有置換基および位置11に二置換アルキルフェニル置換基を含有するステロイドが、必要な性質をもつことができるであろうという示唆は存在しない。
【0006】
ここで特許請求されている物質は、WO 98/34947において特許請求されている物質の少なくとも部分的代謝産物である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、新規な競合プロゲステロンレセプターアンタゴニストおよびそれらを含有する薬物を提供し、それゆえ婦人科学的疾患を治療する代わりの方法をつくることである。
【0008】
この目的は、11β-[4-(1,2-ジヒドロキシエチル)フェニル]-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オン、および20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-11β-[4-(ヒドロキシアセチル)フェニル]-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンを合成することによって達成された。11β-[4-(1,2-ジヒドロキシエチル)フェニル]-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンのエピマーは、移動相としてヘキサン/エタノール 90:10 (v/v) を使用するキラセル (Chiracel) OD-Hカラム上のクロマトグラフィー分離により、またはキラル構造的実在物、例えば、(R)-または (S)-1-(4-ブロモフェニル)-1,2-エタンジオールから出発することによって、特別に製造できる。
【発明の効果】
【0009】
したがって、本発明の化合物は化学的プロセスにより製造されてきている好適な化合物である。
適切には、本発明は、その異性体を実質的に含まない、すなわち、対応する異性体の少なくとも90%、より適切には少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは100%を実質的に含まないジヒドロキシ化合物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、(R)-4-(4-ブロモフェニル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソランのCDスペクトルを示す。
【図2】図2は、11β-[4-(1R)-(1,2-ジヒドロキシエチル)フェニル]-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンのCDスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の化合物は医薬組成物において使用すべき化合物であるので、単離された形態、例えば、固体として、適切には実質的に純粋な固体、例えば、他のステロイド化合物または他の生物学的に活性な物質を実質的に含まない固体として提供することが好ましい。
【0012】
一般式Iの物質は価値のある薬学的活性成分である。それらはなかでも筋腫または子宮内膜炎の治療、女性の避妊、性交後の調節、月経の発生、分娩の誘導、ホルモン置換療法、月経困難症に関連する症候の治療、ホルモン異常の治療およびホルモン依存性腫瘍、例えば、乳房のプロゲステロンレセプター陽性癌腫の治療の医薬製剤の製造に使用できる。プロゲステロンレセプターアンタゴニストとしてのそれらの効能は、ラットにおける流産試験およびウサギにおけるマクファイル (McPhail) インデックスの測定により同定された。
【0013】
一般式Iの物質は、WO 98/34947に開示されているプロゲステロンレセプターアンタゴニスト11β-(4-アセチルフェニル)-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンよりもヒト肝ミクロソーム (HLM) においてより高い代謝安定性を示す。これは本発明の化合物の経口生物学的利用率の増大を示すので、それらは経口投与のために適合した医薬組成物において使用できる。
【0014】
本発明による薬物 (医薬組成物) は、全身的または局所的投与に適合させることができる。一般に、薬物を全身的投与に、例えば、注射または経口投与に適合させることが好ましい。注射可能な形態を考える場合、これらはステロイドの配合のためにこの分野において知られている慣用法により製造できる。経口投与可能な形態を考える場合、また、これらはステロイドの配合のためにこの分野において知られている慣用法により製造できる。
【0015】
薬物の好ましい形態は、式Iの化合物とそのための薬学上許容される担体とを含んでなるであろう。
【0016】
本発明の医薬組成物は全身的または局所的投与に適当な形態で提供することができ、それらのうちで全身的に投与可能な形態は一般に最も適切である。全身的に投与可能な形態は注射による投与に適合し、例えば、無菌形態、例えば、乳濁液として適合する。全身的に投与可能な形態は経口投与に適合し、このような形態は一般に最も適当である。このような形態は一般に前もって決定した量の本発明の化合物を含有する単位投与形態であろう。適当な形態は、錠剤、カプセル剤、粉剤、粒体およびその他を包含し、それらのうちで錠剤は一般に好ましい。このような投与形態は慣用法で製造することができ、薬学上許容される担体は任意の適当な担体、ことにステロイド薬物の配合に使用することが知られている担体であることができる。
単位投与形態は0.01〜100 mgの特許請求されている物質を含有することができる。
【実施例】
【0017】
下記の実施例により、本発明を例示するが、これらの実施例はいかなる方法においても本発明を限定しない。
【0018】
実施例111β-[4-(1,2-ジヒドロキシエチル)フェニル]-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンの合成
a) 11β-(4-エテニルフェニル)-5-ヒドロキシ-5α-エステル-9-エン-3,17-ジオン3-(2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジイル)ケタール
3.3 gのマグネシウム削りくずを不活性気体下に14 mlの無水テトラヒドロフラン中に入れ、1滴の1,2-ジブロモエタンを添加する。反応が開始した後、内部温度が40〜45℃の範囲に留まるように、137 mlの無水テトラヒドロフラン中の25 gの4-ブロモスチレンの溶液をゆっくり滴下する。マグネシウムが完全に反応してしまうまで、反応混合物を引き続いて1時間攪拌する。次いで2.26 gの塩化銅 (I) を混合物に添加する。
【0019】
137 mlの無水テトラヒドロフラン中の8.5 gの5,10-エポキシ-5α,10α-エステル-9(11)-エン-3,17-ジオン3-(2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジイル)ケタール (製造については下記の文献を参照のこと: Tetrahedron Lett. 26、2069-2072 (1985)) の溶液をゆっくり滴下する。反応混合物を室温において1時間攪拌し、次いで飽和塩化アンモニウム水溶液中に注ぐ。水性相を酢酸エチルで抽出し、有機相を一緒にし、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥する。生成物を濾過し、真空濃縮する。シリカゲルのカラムクロマトグラフィーにかけ、ヘキサン/酢酸エチル混合物を使用すると、6.76 gの標題化合物が無色泡状物として得られる。
【0020】
1H-NMR (300 MHz、CDCl3): δ= 7.30 d (J=9 Hz、2H、アリール); 7.18 d (J=9 Hz、2H、アリール); 6.66 dd (J=17 Hz + 11 Hz、1H、ビニル); 5.70 dbr (J=17 Hz、1H、ビニル); 5.20 dbr (J=11 Hz、1H、ビニル); 4.44 s (1H、5-OH); 4.29 dbr (J=6.5 Hz、1H、H-11); 3.53 m (2H、3-ケタール); 3.51 m (J=11.4 Hz、1H、3-ケタール); 3.42 m (J=11.4 Hz、1H、3-ケタール); 1.05 s (3H、3-ケタール); 0.85 s (3H、3-ケタール); 0.49 s (3H、H-18)。
【0021】
b) 11β-(4-エテニルフェニル)-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-5,17-ジヒドロキシ-19-ノル-5α,17α-プレグン-9-エン-3-オン2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジイルケタール
140 mlの無水トルエン中の6.76 gのa) において製造した化合物の溶液を-78℃において、140 mlの無水トルエン中の27.9 gの凝縮ペンタフルオロヨードエタンに添加する。ジエチルエーテル中のメチルリチウム/臭化リチウム錯体の1.5モル溶液の66.3 mlを、この温度において添加する。引き続いて反応混合物を0℃において1時間攪拌する。次いでそれを飽和塩化アンモニウム水溶液中に注ぐ。生成物を酢酸エチルで抽出し、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空濃縮する。生ずる粗生成物をシリカゲルのクロマトグラフィーにかけ、ヘキサン/酢酸エチル混合物を使用すると、3.73 mgの標題化合物が白色泡状物として得られる。
【0022】
1H-NMR (300 MHz、CDCl3): δ= 7.30 d (J=9 Hz、2H、アリール); 7.17 d (J=9 Hz、2H、アリール); 6.67 dd (J=17 Hz + 11 Hz、1H、ビニル); 5.71 dbr (J=17 Hz、1H、ビニル); 5.20 dbr (J=11 Hz、1H、ビニル); 4.45 s (1H、5-OH); 4.31 dbr (J=6.5 Hz、1H、H-11); 3.53 m (2H、3-ケタール); 3.51 m (J=11.4 Hz、1H、3-ケタール); 3.42 m (J=11.4 Hz、1H、3-ケタール); 1.05 s (3H、3-ケタール); 0.85 s (3H、3-ケタール); 0.54 s (3H、H-18)。
【0023】
c) 11β-[4-(1,2-ジヒドロキシエチル)フェニル]-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-5,17-ジヒドロキシ-19-ノル-5α,17α-プレグン-9-エン-3-オン2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジイルケタール
1.68 mlのリン酸二水素カリウムおよびリン酸水素二カリウムのpH 7.00の水性緩衝剤溶液および206 mgのトリメチルアミンN-オキシドを、8.4 mlのテトラヒドロフラン中の1 gの実施例1 b) に従い製造した化合物の溶液に添加する。
【0024】
50 mlのブタノール中の250 mgの四酸化オスミウムの溶液の4.3 mlを0℃において滴下する。反応混合物を室温において3時間攪拌し、次いで飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液中に注ぐ。生成物を酢酸エチルで抽出し、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空濃縮する。生ずる粗生成物をシリカゲルのクロマトグラフィーにかけ、ヘキサン/酢酸エチル混合物を使用すると、860 mgの標題化合物が白色泡状物として得られる。ベンジルカルビノールにおけるエピマーの混合物が得られる。
【0025】
1H-NMR (300 MHz、CDCl3): δ= 7.25 d (J=9 Hz、2H、アリール); 7.20 d (J=9 Hz、2H、アリール); 4.78 m (1H、CHOH); 4.44 s (1H、5-OH); 4.32 dbr (J=6.5 Hz、1H、H-11); 3.73 m (1H、CH2OH); 3.65 m (1H、CH2OH); 3.54 m (2H、3-ケタール); 3.52 m (J=11.0 Hz、1H、3-ケタール); 3.44 m (J=11.0 Hz、1H、3-ケタール); 1.04 s (3H、3-ケタール); 0.87 s (3H、3-ケタール); 0.51 s (3H、H-18)。
【0026】
d) 11β-[4-(1,2-ジヒドロキシエチル)フェニル]-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オン
200 mgの実施例1 c) に記載する化合物を3 mlのメタノール中で、141 μlの半濃水性硫酸とともに室温において1時間攪拌する。次いでこの混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液中に注ぎ、酢酸エチルで抽出する。有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空濃縮する。シリカゲルのカラムクロマトグラフィーにかけ、ヘキサン/酢酸エチル混合物を使用すると、78 mgの標題化合物が無色泡状物として得られる。ベンジルカルビノールにおけるエピマーの混合物が得られる。
【0027】
1H-NMR (300 MHz、CDCl3): δ= 7.25 d (J=9 Hz、2H、アリール); 7.15 d (J=9 Hz、2H、アリール); 5.77 s (1H、H-4); 4.74 m (1H、CHOH); 4.42 dbr (J=7 Hz、1H、H-11); 3.69 m (1H、CH2OH); 3.59 m (1H、CH2OH); 0.56 s (3H、H-18)。
【0028】
実施例211β-[4-[(1R)-1,2-ジヒドロキシエチル]フェニル]-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンの合成
a) (R)-1-(4-ブロモフェニル)-1,2-エタンジオール
【化2】

【0029】
17.0 gの炭酸カリウムおよび40.4 gのカリウムヘキサシアノフェレート (III) を、190 mlのn-ブタノールと190 mlの水との混合物中に溶解する。次いで30 mgのカリウムオスメートおよび300 mgの (DHQD)2PHALを添加し、その溶液を0℃に冷却する。7.5 gの4-ブロモスチレンを0℃において添加し、この混合物を一夜攪拌する。それを30 gの硫酸ナトリウムの添加により仕上げる。この反応溶液を300 mlの酢酸エチルで抽出する。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮すると、7.3 gの白色固体が得られる。
収量: 7.3 g = 理論値の82.1%
【0030】
1H-NMR (300 MHz、CDCl3): δ= 7.50 d (J=9 Hz、2H、アリール); 7.25 d (J=9 Hz、2H、アリール); 4.80 dd (J=4.4 Hz + 3.6 Hz、1H); 3.70 m (2H); 2.50 sbr (2H、OH)。
生成物のNMRデータは文献に記載されているNMRデータと一致する (T. Barlow、A. Dipple、Chem. Res. Toxicol. 1988、11、44-53)。
【0031】
b) (R)-4-(4-ブロモフェニル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン
【化3】

【0032】
3.5 gの実施例2 a) に記載するジオールを100 mlのアセトン中に懸濁させる。30 mlの2,2-ジメトキシプロパンおよび0.3 mlの濃硫酸を添加する。2時間後、100 mlの飽和重炭酸ナトリウム溶液をこの反応混合物に添加し、生成物を50 mlの酢酸エチルで3回抽出する。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下に濃縮すると、3.7 gの白色固体が得られる。(R)-4-(4-ブロモフェニル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソランのCDスペクトルを図1に示す。
収量: 3.7 g = 理論値の58.8%
【0033】
1H-NMR (400 MHz、CDCl3): δ= 7.48 d (J=9 Hz、2H、アリール); 7.25 d (J=9 Hz、2H、アリール); 5.04 dd (J=9 Hz + 8.2 Hz、1H); 4.30 dd (J=9 Hz + 8.2 Hz、1H); 3.16 dd (J=9 Hz + 9 Hz、1H); 1.53 s (3H); 1.48 s (3H)。
【0034】
c) 20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-5,10α-エポキシ-19-ノル-5α,17α-プレグン-9(11)-エン-3-オン2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジイルケタール
【化4】

【0035】
50 gの5,10-エポキシ-5α,10α-エステル-9(11)-エン-3,17-ジオン3-(2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジイル)ケタール (製造については下記の文献を参照のこと: Tetrahedron Lett. 26、2069-2072 (1985)) を-70℃において、500 mlの無水トルエン中の116 gの凝縮ペンタフルオロヨードエタンに添加する。ジエチルエーテル中のメチルリチウム/臭化リチウム錯体の1.5モル溶液の290 mlを同一温度において添加する。引き続いて反応混合物を0℃において1時間攪拌する。次いでそれを飽和塩化アンモニウム水溶液に添加し、酢酸エチルで抽出する。有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空濃縮する。粗生成物を200 mlのアセトン中に溶解し、450 mlの水を添加する。沈殿する生成物を濾過し、真空乾燥する。
収量: 61.6 g = 理論値の93%
【0036】
1H-NMR (500 MHz、CDCl3): δ= 6.04 brd (J=2.5 Hz、1H、ビニル); 3.60 d (J=11.3 1H); 3.46 d (J=11.3 Hz); 3.39 dd (J=11.3 Hz + 9.5 Hz、1H); 2.51 dbr (J=10.6 Hz、1H); 1.06 s (3H); 0.93 s (3H); 0.85 s (3H)。
【0037】
d) 11β-{4-[(4R)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル]フェニル}-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-5,17-ジヒドロキシ-19-ノル-5α,17α-プレグン-9-エン-3-オン2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジイルケタール
【化5】

【0038】
387 mgのマグネシウム削りくずを3 mlのTHF中に懸濁させ、50 μlのジブロモエタンを攪拌しながら添加する。16 mlのTHF中の4.35 gの実施例2 b) に記載するケタールの溶液を65℃において、この懸濁液にゆっくり添加する。生ずる溶液を0℃に冷却する。21.5 mgのCuClおよび11 mlのTHF中の2.75 gの実施例2 c) において製造した化合物を添加する。反応混合物を20℃において2時間攪拌し、次いで28 mlの10% NH4Cl溶液を添加する。反応混合物を20 mlのMTBエーテルで抽出する。有機相を濃縮し、生ずる固体 (5.9 g) を120 gのシリカゲルのクロマトグラフィーにより精製し、移動相としてヘキサン/酢酸エチルを使用すると、3.2 gの生成物が白色固体として得られる。
収量: 3.2 g = 理論値の85%
【0039】
1H-NMR (600 MHz、CDCl3): δ= 7.23 d (J=9 Hz、2H、アリール); 7.20 d (J=9 Hz、2H、アリール); 5.03 dd (J=9 Hz + 8.4 Hz、1H); 4.46 s (1H、OH); 4.33 dbr (J=6.5 Hz、1H); 4.27 dd (J=9 Hz + 8.4 Hz、1H); 3.68 dd (J=9 Hz + 9 Hz、1H); 1.56 s (3H); 1.49 s (3H); 1.07 s (3H); 0.86 s (3H); 0.50 s (3H)。
【0040】
e) 11β-[4-[(1R)-1,2-ジヒドロキシエチル]フェニル]-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オン
【化6】

【0041】
2.5 gの実施例2 d) に記載する化合物を20 mlのTHF中に溶解し、2.5 mlの半濃水性硫酸を添加し、反応混合物を20℃において3時間攪拌する。次いでそれを60 mlの飽和炭酸水素ナトリウム水溶液中に注ぎ、酢酸エチルで抽出する。シリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製し、ジクロロメタン/酢酸エチル混合物を使用すると、1.2 gの標題化合物が無色泡状物として得られる。11β-[4-(1R)-(1,2-ジヒドロキシエチル)フェニル]-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンのCDスペクトルを図2に示す。
収量: 1.2 g = 理論値の61.2%
【0042】
1H-NMR (300 MHz、CDCl3): δ= 7.25 d (J=9 Hz、2H、アリール); 7.15 d (J=9 Hz、2H、アリール); 5.77 s (1H、H-4); 4.74 m (1H、CHOH); 4.42 dbr (J=7 Hz、1H、H-11); 3.69 m (1H、CH2OH); 3.59 m (1H、CH2OH); 0.56 s (3H、H-18)。
【0043】
実施例3a20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-11β-[4-(ヒドロキシアセチル)フェニル]-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンの合成
a) 20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-11β-[4-(ヒドロキシアセチル)フェニル]-5,17-ジヒドロキシ-19-ノル-5α,17α-プレグン-9-エン-3-オン2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジイルケタール
283 μlのt-ブチルヒドロペルオキシドを室温において、7 mlのジクロロメタン中の3.6 mgの三酸化クロムに滴下する。次いで、7 mlのジクロロメタン中の450 mgの実施例1 c) において製造した化合物の溶液を滴下する。この混合物を室温において3時間攪拌する。ジメチルサルファイドの添加により、反応を停止させる。この混合物を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空濃縮する。生ずる粗生成物をシリカゲルのクロマトグラフィーにかけ、ヘキサン/酢酸エチル混合物を使用すると、87 mgの標題化合物が白色泡状物として得られる。
【0044】
1H-NMR (300 MHz、CDCl3): δ= 7.83 d (J=9 Hz、2H、アリール); 7.37 d (J=9 Hz、2H、アリール); 4.84 m (2H、CH2OH); 4.37 dbr (J=6.5 Hz、1H、H-11); 3.53 m (2H、3-ケタール); 3.47 m (J=11.0 Hz、1H、3-ケタール); 3.42 m (J=11.0 Hz、1H、3-ケタール); 1.04 s (3H、3-ケタール); 0.85 s (3H、3-ケタール); 0.49 s (3H、H-18)。
【0045】
b) 20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-11β-[4-(ヒドロキシアセチル)フェニル]-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オン
実施例1 d) に記載するプロセスと同様にして、87 mgの3 a) に記載する化合物を1.4 mlのメタノール中で62 μlの半濃水性硫酸と反応させると、25 mgの標題化合物が無色泡状物として得られる。
【0046】
1H-NMR (300 MHz、CDCl3): δ= 7.86 d (J=9 Hz、2H、アリール); 7.34 d (J=9 Hz、2H、アリール); 5.81 s (1H、H-4): 4.85 dbr (J=5 Hz、2H、CH2OH); 4.50 dbr (J=7 Hz、1H、H-11); 3.50 tbr (J=5 Hz、1H OH); 0.57 s (3H、H-18)。
【0047】
実施例3b20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-11β-[4-(ヒドロキシアセチル)フェニル]-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンの代替合成
a) [[2-(4-ブロモフェニル)-1,3-ジオキソラン-2-イル]メトキシ](1,1-ジメチルエチル)ジメチルシラン
【化7】

【0048】
73.5 gの2-(4-ブロモフェニル)-1,3-ジオキソラン-2-メタノールを800 mlのN,N-ジメチルホルムアミド中に溶解する。38.6 gのイミダゾールおよび51.3 gのt-ブチルジメチルクロロシランを添加した。それを23℃において12時間攪拌した。その後、反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液中に入れた。それをさらに30分間攪拌した。次いで、それを酢酸エチルで2回抽出した。一緒にした有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製した。103.21 gの生成物が得られた (理論値の97.5%)。
【0049】
1H-NMR (300 MHz、CDCl3): δ= 7.45 d (J=9 Hz、2H、アリール); 7.37 d (J=9 Hz、2H、アリール); 4.08 m (2H、ケタール); 3.84 m (2H、ケタール); 0.83 s (9H、t-ブチル-Si); -0.05 s (6H、Me-Si)。
【0050】
b) 11β-[4-[2-[[[(1,1-ジメチルエチル)ジメチルシリル]オキシ]メチル]-1,3-ジオキソラン-2-イル]フェニル]- 20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-5,17-ジヒドロキシ-19-ノル-5α,17α-プレグン-9-エン-3-オン2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジイルケタール
【化8】

【0051】
0.3 mlのジブロモエタンを80 mlのTHF中の6.22 gのマグネシウム削りくずの懸濁液に添加した。その後、900 mlのTHF中の95.5 gの3b a) の溶液をゆっくり添加した。温度を50℃以下に保持した。その後、それを50℃において1時間攪拌した。次いで、反応混合物を0℃に冷却し、400 mgのCuClを添加した。さらに10分間攪拌した後、200 mlのTHF中の20 gの2 c) に記載する化合物の溶液を0℃において添加した。この混合物を0℃において2時間攪拌し、次いで23℃に加温した。23℃においてさらに12時間攪拌した。次いで、反応混合物を飽和塩化アンモニウム溶液中に注いだ。それをさらに30分間攪拌し、その後それを酢酸エチルで3回抽出した。一緒にした有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製した。31 gの生成物が得られた (理論値の97%)。
【0052】
1H-NMR (300 MHz、CDCl3): δ= 7.40 d (J=9 Hz、2H、アリール); 7.20 d (J=9 Hz、2H、アリール); 4.49 s (1H、OH); 4.36 dbr (J=6.5 Hz、1H); 4.12 m (2H、ケタール); 3.90 (2H、ケタール); 3.79 m (4H、ケタール); 3.50 m (2H); 1.09 s (3H); 0.94 s (3H); 0.90 (9H、t-ブチル-Si); 0.57 s (3H); 0.00 (6H、Me-Si)。
【0053】
c) 20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-5,17-ジヒドロキシ-11β-[4-[2-(ヒドロキシメチル)-1,3-ジオキソラン-2-イル]フェニル]-19-ノル-5α,17α-プレグン-9-エン-3-オン2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジイルケタール
【化9】

【0054】
フッ化テトラブチルアンモニウム (THF中の1モル溶液の0.6 ml) を、5 mlのTHF中の470 mgの化合物3b b) の溶液に添加した。それを23℃において2時間攪拌した。次いで、反応混合物を飽和塩化アンモニウム溶液中に注いだ。それをさらに30分間攪拌し、その後それを酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製した。318 mgの生成物が得られた (理論値の80%)。
【0055】
1H-NMR (300 MHz、CDCl3): δ= 7.34 d (J=9 Hz、2H、アリール); 7.18 d (J=9 Hz、2H、アリール); 4.44 s (1H、OH); 4.30 dbr (J=6.5 Hz、1H、H-11); 4.10 m (2H、ケタール); 3.88 m (2H、ケタール); 3.70 m (4H、ケタール); 3.50 m (2H); 1.02 s (3H); 0.88 s (3H); 0.50 s (3H)。
【0056】
dα) 3b b) から20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-11β-[4-(ヒドロキシアセチル)フェニル]-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オン
【化10】

【0057】
150 mlのTHF中の15 gの実施例3b b) に記載する化合物の溶液に、15 mlの半濃水性硫酸を添加した。それを23℃において2.5時間攪拌した。その後、反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液中に注いだ。それをさらに30分間攪拌し、その後酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製した。7.99 gの生成物が得られた (理論値の80%)。
【0058】
dβ) 3b c) から20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-11β-[4-(ヒドロキシアセチル)フェニル]-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オン
実施例3 dα) に記載する手順と同様にして、300 mgの3b c) の化合物をTHF中で半濃水性硫酸と反応させると、198 mg (理論値の85%) の生成物が得られた。
【0059】
実施例4雌ラットの流産試験
慣用の収容および給餌条件下に交尾後5〜7日の妊娠ラット (6匹のラット/群) について、本発明によるプロゲステロンレセプターアンタゴニストの抗ゲスターゲン作用を試験した。
【0060】
好結果の交尾後、妊娠している動物 (妊娠の第1日 = d1 p.c. における膣のスミア中の精子の存在) を無作為化し、処理群と対照群とに分割した。次いで、各動物に1.5 mg/kgの被検物質 (実施例1に従う11β-[4-(1,2-ジヒドロキシエチル)フェニル]-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンまたは実施例3に従う20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-11β-[4-(ヒドロキシアセチル)フェニル]-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オン) または1.0 ml/kgのベヒクル (安息香酸ベンジル/ヒマシ油: 1+4 [v/v]) を第5日から第7日 (d5 〜 d7 p.c.) まで毎日皮下注射した。
【0061】
剖検を第9日 (d9 p.c.) に実行した。抗ゲスターゲン作用のパラメーターとして、着床部位の存在について子宮を検査した。第9日 (d9 p.c.) に着床部位の完全な不存在ならびに病理学的、出血またはそうでなければ異常な着床部位の存在を流産として評価した。流産試験の結果を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
実施例5ウサギのマクファイル (McPhail) インデックスの決定
慣用の収容および給餌条件下に35日齢のウサギについて、本発明によるプロゲステロンレセプターアンタゴニストの抗ゲスターゲン効能を試験した。
【0064】
予備の手段として、動物を第1日から第4日に5.0μg/kg/日の17β-エストラジオールで皮下処置した。抗ゲスターゲン効能を決定するために、動物を第7日から第10日に0.2 mg/kg/日のプロゲステロンおよび3 mg/kg/日の被検物質 (実施例1に従う11β-[4-(1,2-ジヒドロキシエチル)フェニル]-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンまたは実施例3に従う20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-11β-[4-(ヒドロキシアセチル)フェニル]-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オン) で同時に皮下処置した。使用したベヒクルは1+4 (v/v) の比の安息香酸ベンジルとヒマシ油との混合物であった。
【0065】
剖検を処置開始後第11日に実行した。子宮を取出し、組織学のために固定した。抗ゲスターゲン効能 (プロゲステロンにより引き起こされる腺の分化の阻害) のパラメーターとして光学顕微鏡技術 (評価: 1 = 腺の分化なし; 4 = 最大の腺の分化) より、McPhailインデックス (腺の分化の程度) を決定した。結果として生ずるMcPhailインデックスを表2に示す。
【0066】
【表2】

実施例6aヒト肝ミクロソーム (HLM) における11β-[4-(1,2-ジヒドロキシエチル)フェニル]-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンおよび20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-11β-[4-(ヒドロキシアセチル)フェニル]-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンの代謝安定性
ヒト肝ミクロソーム (HLM) を使用して、一般式Iの物質の代謝安定性を評価した。
二重反復試験においてHLMおよびNADPH発生系を使用して37℃の震蘯浴中で、インキュベーションを実施した。下記表に従い、インキュベーション混合物 (コファクター溶液、リン酸カリウム緩衝液およびミクロソーム製剤から成る) を新しく調製した。
【0067】
【表3】

【0068】
インキュベーション体積は0.25 mlであった。インキュベーション混合物を37℃において3分間前インキュベートした。被検物質 (最終濃度50 μM) の添加により、反応を開始した。60分間インキュベートした後、250 μlのメタノールの添加により反応を終了させ、次いで混合物を遠心してタンパク質を沈殿させた。引き続くRP-HPLC分析のために、試料を-18℃において貯蔵した。
【0069】
RP-HPLC分析に従い、使用した11β-[4-(1,2-ジヒドロキシエチル)フェニル]-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンの約70%および使用した20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-11β-[4-(ヒドロキシアセチル)フェニル]-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンの約80%が上清中で回収された。
【0070】
実施例6bヒト肝ミクロソーム (HLM) における11β-(4-アセチルフェニル)-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンの代謝安定性
ヒト肝ミクロソーム (HLM) を使用して、一般式Iの物質の代謝安定性を評価した。
二重反復試験においてHLMおよびNADPH発生系を使用して37℃の震蘯浴中で、インキュベーションを実施した。下記表に従い、インキュベーション混合物 (コファクター溶液、リン酸カリウム緩衝液およびミクロソーム製剤から成る) を新しく調製した。
【0071】
【表4】

【0072】
インキュベーション体積は0.25 mlであった。インキュベーション混合物を37℃において3分間前インキュベートした。被検物質 (最終濃度10 μM) の添加により、反応を開始した。60分間インキュベートした後、250 μlのメタノールの添加により反応を終了させ、次いで混合物を遠心してタンパク質を沈殿させた。引き続くRP-HPLC分析のために、試料を-18℃において貯蔵した。
【0073】
RP-HPLC分析に従い、使用した11β-(4-アセチルフェニル)-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンの60%が上清中で回収された。
【0074】
実施例7ヒトプロゲステロンAまたはプロゲステロンBレセプターおよびMTV-LUCリポーター構築物を使用するヒト神経芽細胞腫細胞 (SK-N-MC細胞) の安定なトランスフェクタンド中の11β-[4-(1,2-ジヒドロキシエチル)フェニル]-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンおよび20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-11β-[4-(ヒドロキシアセチル)フェニル]-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンの抗ゲスターゲン作用
ヒトプロゲステロンレセプターB (pRChPR-B-neo) またはヒトプロゲステロンレセプターA (pRChPR-A-neo) およびリポーター構築物 (pMMTV-LUC) を発現するプラスミドで安定にトランスフェクトしたSK-N-MC細胞 (ヒト神経芽細胞腫細胞) を、増加する量の11β-[4-(1,2-ジヒドロキシエチル)フェニル]-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンまたは20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-11β-[4-(ヒドロキシアセチル)フェニル]-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オン (0.01 nmol/l、0.1 nmol/l、1 nmol/l、10 nmol/l、100 nmol/lおよび1μmol/l) の不存在 (陰性対照) または存在において24時間インキュベートして、アゴニスト効能を決定した。
【0075】
リポーター遺伝子誘導の陽性対照として、細胞を合成ゲスターゲンプロメゲストン (0.01 nmol/l、0.1 nmol/l、1 nmol/l、10 nmol/l、100 nmol/lおよび1μmol/l) で処理した。アンタゴニスト活性を決定するために、細胞を0.1 nmol/lのプロメゲストンで処理し、さらに増加する量の11β-[4-(1,2-ジヒドロキシエチル)フェニル]-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンまたは20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-11β-[4-(ヒドロキシアセチル)フェニル]-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オン (0.01 nmol/l、0.1 nmol/l、1 nmol/l、10 nmol/l、100 nmol/lおよび1μmol/l) で処理した。
【0076】
リポーター遺伝子転写阻害の陽性対照として、細胞を増加する量のプロゲステロンレセプターアンタゴニスト11β-(4-アセチルフェニル)-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オン (1 pmol/l、0.01 nmol/l、0.1 nmol/l、1 nmol/l、10 nmol/lおよび100 nmol/l) とインキュベートした。LUCリポーター遺伝子 (LUC = ルシフェラーゼ) の活性を細胞ライゼート中で決定し、RLU (相対光単位) として測定した。すべての測定値を効能% (平均プラス/マイナス標準偏差 (n = 3実験) として相対LUC活性) としておよびEC50またはIC50濃度として記載する。
【0077】
a) アゴニスト活性
11β-[4-(1,2-ジヒドロキシエチル)フェニル]-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンおよび20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-11β-[4-(ヒドロキシアセチル)フェニル]-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンのいずれもPR-AまたはPR-Bに対してLUC活性の誘導を示さない (投与量の関数としてリポーター遺伝子を誘導する、プロメゲストン陽性対照に比較して)。2つの被検物質およびプロメゲストンのアゴニスト活性を表5に示す。
【0078】
【表5】

【0079】
b) アンタゴニスト活性
11β-[4-(1,2-ジヒドロキシエチル)フェニル]-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンおよび20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-11β-[4-(ヒドロキシアセチル)フェニル]-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンは、両方のプロゲステロンレセプターイソ型において0.1 nmol/lのプロメゲストン (100%) により誘導されたLUC活性の投与量依存的阻害を示した。11β-(4-アセチルフェニル)-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンと比較して、2つの物質のアンタゴニスト活性を表6に示す。
【0080】
【表6】

【0081】
これらのデータが示すように、11β-[4-(1,2-ジヒドロキシエチル)フェニル]-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンおよび20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-11β-[4-(ヒドロキシアセチル)フェニル]-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンは、プロゲステロンレセプターAまたはプロゲステロンレセプターBを安定に発現するSK-N-MC細胞中の両方のプロゲステロンレセプターイソ型の純粋なアンタゴニストである。いずれの化合物も1つのプロゲステロンレセプターイソ型に関してなんらの選択性をも示さない。
【0082】
しかしながら、11β-[4-(1,2-ジヒドロキシエチル)フェニル]-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンは、プロゲステロンレセプターにおいて11β-(4-アセチルフェニル)-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンよりも約130倍少ない効力を有する。20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-11β-[4-(ヒドロキシアセチル)フェニル]-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンは、11β-(4-アセチルフェニル)-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンよりも約13倍弱い。安定にトランスフェクトされた細胞系統は、ほぼ500 fm (フェムトモル) のPR-AまたはPR-Bを発現する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I:
【化1】

(式中R1は水素原子であり、そしてR2はヒドロキシル基であるか、あるいはR1およびR2は一緒になってオキソ基であることができる)
のプロゲステロンレセプターアンタゴニスト。
【請求項2】
11β-[4-(1,2-ジヒドロキシエチル)フェニル]-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オン。
【請求項3】
11β-[4-[(1R)-1,2-ジヒドロキシエチル]フェニル]-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オン。
【請求項4】
11β-[4-[(1S)-1,2-ジヒドロキシエチル]フェニル]-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オン。
【請求項5】
20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-11β-[4-(ヒドロキシアセチル)フェニル]-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オン。
【請求項6】
請求項1のプロゲステロンレセプターアンタゴニストを含有する薬物。
【請求項7】
11β-[4-(1,2-ジヒドロキシエチル)フェニル]-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンを含有する請求項6の薬物。
【請求項8】
11β-[4-[(1R)-1,2-ジヒドロキシエチル]フェニル]-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンを含有する請求項7の薬物。
【請求項9】
11β-[4-[(1S)-1,2-ジヒドロキシエチル]フェニル]-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンを含有する請求項7の薬物。
【請求項10】
20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-11β-[4-(ヒドロキシアセチル)フェニル]-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンを含有する請求項6の薬物。
【請求項11】
子宮内膜症、筋腫またはホルモン依存性腫瘍、ことに乳房の癌腫を治療するための薬物、および女性の避妊の製剤を製造するための請求項1のプロゲステロンレセプターアンタゴニストの使用。
【請求項12】
11β-[4-(1,2-ジヒドロキシエチル)フェニル]-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-3-オンを含有する請求項11の使用。
【請求項13】
11β-[4-[(1R)-1,2-ジヒドロキシエチル]フェニル]-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンを含有する請求項12の使用。
【請求項14】
11β-[4-[(1S)-1,2-ジヒドロキシエチル]フェニル]-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンを含有する請求項12の使用。
【請求項15】
20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-11β-[4-(ヒドロキシアセチル)フェニル]-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンを含有する請求項11の使用。
【請求項16】
一般式Iのプロゲステロンレセプターアンタゴニストの製造における中間体としての11β-(4-エテニルフェニル)-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-5,17-ジヒドロキシ-19-ノル-5α,17α-プレグン-9-エン-3-オン2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジイルケタール。
【請求項17】
一般式Iのプロゲステロンレセプターアンタゴニストの製造における中間体としての11β-[4-(1,2-ジヒドロキシエチル)フェニル]-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-5,17-ジヒドロキシ-19-ノル-5α,17α-プレグン-9-エン-3-オン2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジイルケタール。
【請求項18】
一般式Iのプロゲステロンレセプターアンタゴニストの製造における中間体としての20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-5,10α-エポキシ-19-ノル-5α,17α-プレグン-9(11)-エン-3-オン2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジイルケタール。
【請求項19】
一般式Iのプロゲステロンレセプターアンタゴニストの製造における中間体としての11β-{4-[(4R)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル]フェニル}-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-5,17-ジヒドロキシ-19-ノル-5α,17α-プレグン-9-エン-3-オン2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジイルケタール。
【請求項20】
プロゲステロンレセプターアンタゴニスト20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-11β-[4-(ヒドロキシアセチル)フェニル]-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンの製造における中間体としての11β-[4-[2-[[[(1,1-ジメチルエチル)ジメチルシリル]オキシ]メチル]-1,3-ジオキソラン-2-イル]フェニル]-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-5,17-ジヒドロキシ-19-ノル-5α,17α-プレグン-9-エン-3-オン2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジイルケタール。
【請求項21】
プロゲステロンレセプターアンタゴニスト20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-11β-[4-(ヒドロキシアセチル)フェニル]-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンの製造における中間体としての20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-5,17-ジヒドロキシ-11β-[4-[2-(ヒドロキシメチル)-1,3-ジオキソラン-2-イル]フェニル]-19-ノル-5α,17α-プレグン-9-エン-3-オン2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジイルケタール。
【請求項22】
単離された形態、好ましくは固体の形態の請求項1〜7のいずれかの化合物。
【請求項23】
請求項3または4の他の化合物を実質的に含まない請求項3または4の化合物。
【請求項24】
経口投与に適合した、好ましくは単位投与形態としての請求項6〜10のいずれか1つの薬物。
【請求項25】
0.01 mg〜100 mgの請求項1の化合物を含有する請求項6〜10または11のいずれかの薬物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2010−509386(P2010−509386A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536670(P2009−536670)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【国際出願番号】PCT/EP2007/009997
【国際公開番号】WO2008/058767
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(300049958)バイエル・シエーリング・ファーマ アクチエンゲゼルシャフト (357)
【Fターム(参考)】