説明

プロジェクター、プロジェクター調整システム及びプロジェクター調整方法

【課題】光学部品を交換したとしても画像の測定を行うことなく光学部品の角度依存性に起因する画質の劣化の防止を図ることができるプロジェクター等を提供する。
【解決手段】画像信号に基づいて画像を投射するプロジェクターは、光源部と、前記光源部からの光を複数の色光に分離する色分離部と、各色光を前記画像信号に基づいて変調する光変調部と、前記光源部からの光の分光分布に対応した分光情報、前記色分離部の分光反射率の角度依存性に基づく角度依存性情報、及び前記光変調部の分光変調率に対応した分光情報を用いて算出された面内ムラ補正データに基づいて、前記画像信号に対して面内ムラ補正処理を行う面内ムラ補正部とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクター、プロジェクター調整システム及びプロジェクター調整方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、投写型の画像表示装置としてのプロジェクターは、高画質化や低コスト化が進み、種々の場面で使用されるに至っている。そのため、プロジェクターについては、使用される場面に応じた色の再現性や画質が、より一層、重要視されるようになっている。そこで、投射画像の色ムラやプロジェクターの個体差等を考慮して、画質を精度良く向上させることが重要になっている。
【0003】
このプロジェクターによる投射画像の明るさや色を決める要素として、プロジェクターを構成する光学部品である光源、照明光学系、光変調光学系、及び投射光学系や、画像が投射されるスクリーン等がある。一般的に、プロジェクターは、光学部品(例えば光源)を交換できるように構成されており、光学部品の交換後においても投射画像の画質を維持する必要がある。
【0004】
このようなプロジェクターの投射画像の画質を調整する場合、この投射画像をマルチバンド測定(マルチバンド撮影)により測定し、その測定結果をプロジェクターに反映させることが行われる。このようなマルチバンド測定については、例えば特許文献1に開示されている。
【0005】
この特許文献1には、黒信号レベルによるオフセット画像を、複数の原色それぞれに対応するバンドのフィルターを切り替えながら順次マルチバンド測定を行い、プロジェクターの補正データを算出する技術が開示されている。即ち、特許文献1では、撮像側(測定側)であるカメラに、複数の原色それぞれに対応するバンドのフィルターを取り付けることでマルチバンド測定が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−20581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
プロジェクターにおいて、例えばランプ(光源)を交換した場合に、ランプが持つ特性のばらつきに起因して、交換後のランプと交換前のランプの明るさや色が変化してしまうことが多い。ここで、ランプの十分な選別によって特性を揃えることは可能であるが、コスト面において現実的ではない。また、例えば非常に狭い帯域のフィルターにランプからの光を通過させることで、色成分の純度を上げることができる。この場合、たとえランプの分光分布が変化しても、投射画像の画質を一定に維持できる。しかしながら、帯域の狭いフィルターの使用によってランプからの光の利用効率が下がり、画像が暗くなるという問題がある。
【0008】
一方、3板式液晶プロジェクターは、光の利用効率を上げて明るい画像を投射することができる構成を有することで知られており、高画質の投射画像を得やすい。これは、例えばダイクロイックミラーと呼ばれる光学部品により色成分毎に光を分離し、その後、色成分毎に変調して合成することにより実現される。ダイクロイックミラーは、その入射面が光源からの光の軸に対して所与の角度を有するように配置され、入射光の波長に応じて反射や透過させる機能を有する。
【0009】
ところで、ダイクロイックミラーの透過率には角度依存性がある。具体的に、ダイクロイックミラーの透過率は、入射光の入射角に応じて変化する。しかしながら、ダイクロイックミラーの入射面に入射される光が完全な平行光とならない場合、ダイクロイックミラーの入射面における光の入射角は入射面内において一定とはならない。そのため、これに起因して画面内の位置に応じてムラが発生してしまう場合がある。しかも、このムラは、光源の分光特性等が変わっても変化してしまうという問題がある。そのため、光源等の光学部品の交換作業の度に、例えば特許文献1に開示されたような画像の測定が必要となり、測定に必要な部品の追加によるコスト高や交換作業の煩わしさを招く。
【0010】
本発明は、以上のような技術的課題に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、光学部品を交換したとしても画像の測定を行うことなく光学部品の角度依存性に起因する画質の劣化の防止を図ることができるプロジェクター、プロジェクター調整システム及びプロジェクター調整方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明の一態様は、画像信号に基づいて画像を投射するプロジェクターが、光源部と、前記光源部からの光を複数の色光に分離する色分離部と、各色光を前記画像信号に基づいて変調する光変調部と、前記光源部からの光の分光分布に対応した分光情報、前記色分離部の分光反射率の角度依存性に基づく角度依存性情報、及び前記光変調部の分光変調率に対応した分光情報を用いて算出された面内ムラ補正データに基づいて、前記画像信号に対して面内ムラ補正処理を行う面内ムラ補正部とを含む。
【0012】
本態様によれば、光源部、色分離部や光変調部を交換した場合であっても、交換後にプロジェクターの投射画像を測定することなく面内ムラ補正テーブルを更新できるので、測定の煩わしさを伴うことなく、色分離部の角度依存性に起因する面内ムラ補正を正確に行うことができるようになる。
【0013】
(2)本発明の他の態様に係るプロジェクターでは、前記角度依存性情報が、前記色分離部の前記入射面内の前記複数の位置における分光反射率に対応した分光情報である。
【0014】
本態様によれば、上記の効果に加えて、簡素な処理で、色分離部の角度依存性に起因する面内ムラ補正を正確に行うことができるようになる。
【0015】
(3)本発明の他の態様に係るプロジェクターでは、前記面内ムラ補正データが、前記入射面内の中央部の位置における分光反射率を用いて求められた基準値を基準に算出される。
【0016】
本態様によれば、上記の効果に加えて、複雑な処理を行うことなく、面内ムラを補正することができるようになる。
【0017】
(4)本発明の他の態様に係るプロジェクターでは、前記面内ムラ補正データが、第1の面内ムラ補正データと、第2の面内ムラ補正データとからなり、前記光源部からの光の分光分布に対応した分光情報、前記角度依存性情報、及び前記光変調部の分光変調率に対応した分光情報のうち少なくとも1つが変更されたとき、前記光源部からの光の分光分布に対応した分光情報、前記角度依存性情報、及び前記光変調部の分光変調率に対応した分光情報を用いて前記第1の面内ムラ補正データが更新され、前記面内ムラ補正部が、更新後の前記第1の面内ムラ補正データと前記第2の面内ムラ補正データとに基づいて、前記画像信号に対して面内ムラ補正処理を行う。
【0018】
本態様によれば、面内ムラ補正データにより面内ムラ補正テーブルの内容を更新したとしても、色分離部の角度依存性に起因した面内ムラのみならず、他の要因に起因した面内ムラも確実に補正できるようになる。
【0019】
(5)本発明の他の態様に係るプロジェクターでは、前記光源部が、前記光源部からの光の分光分布に対応した分光情報を記憶する光源情報記憶部を含む。
【0020】
本態様によれば、光源部を交換した場合に、光源部の分光情報を更新する必要がなくなり、交換後の光源部に特有の分光情報を予め光源情報記憶部に記憶させておくだけで済むため、交換に伴う画質調整の作業を省略できるようになる。
【0021】
(6)本発明の他の態様に係るプロジェクターでは、前記色分離部が、前記角度依存性情報を記憶する色分離情報記憶部を含み、前記光変調部が、前記光源部の分光分布に対応した分光情報を記憶する光変調情報記憶部を含む。
【0022】
本態様によれば、色分離部や光変調部を交換した場合に、色分離部や光変調部の分光情報を更新する必要がなくなり、交換後の色分離部や光変調部に特有の分光情報を予め色分離情報記憶部や光変調情報記憶部に記憶させておくだけで済むため、交換に伴う画質調整の作業を省略できるようになる。
【0023】
(7)本発明の他の態様に係るプロジェクターでは、算出された前記面内ムラ補正データを記憶する面内ムラ補正データ記憶部を含む。
【0024】
本態様によれば、色分離部の角度依存性に起因した画質の劣化を防止できるプロジェクターの小型化及び低コスト化に寄与できるようになる。
【0025】
(8)本発明の他の態様に係るプロジェクターでは、前記面内ムラ補正データを算出する面内ムラ補正データ算出部を含む。
【0026】
本態様によれば、光源部、色分離部や光変調部を交換した場合であっても、交換後にプロジェクターの投射画像を測定することなく面内ムラ補正テーブルを更新できるので、測定の煩わしさを伴うことなく、色分離部の角度依存性に起因する面内ムラ補正を正確に行うことができるプロジェクターを提供できるようになる。
【0027】
(9)本発明の他の態様に係るプロジェクターでは、前記面内ムラ補正データ算出部が、所与の色空間上の色彩値として算出された基準値に基づいて、前記面内ムラ補正データを算出する。
【0028】
本態様によれば、プロジェクターの分光特性の違いに依存しない基準値を基準に、面内ムラ補正データを精度良く算出することができるようになる。
【0029】
(10)本発明の他の態様は、複数の色光を画像信号に基づいて変調して画像を投射するプロジェクターを調整するプロジェクター調整システムが、上記のいずれか記載のプロジェクターと、前記プロジェクターの投射画像を調整する画像調整装置とを含み、前記画像調整装置は、前記面内ムラ補正データを算出する面内ムラ補正データ算出部を含む。
【0030】
本態様によれば、光源部、色分離部や光変調部を交換したとしても画像の測定を行うことなく光学部品の角度依存性に起因する画質の劣化の防止を図ることができるプロジェクター調整システムを提供できるようになる。
【0031】
(11)本発明の他の態様は、光源部と、前記光源部からの光を複数の色光に分離する色分離部と、各色光を画像信号に基づいて変調する光変調部とを含むプロジェクターを調整するプロジェクター調整方法が、前記光源部からの光の分光分布に対応した分光情報、前記色分離部の分光反射率の角度依存性に基づく角度依存性情報、及び前記光変調部の分光変調率に対応した分光情報を用いて面内ムラ補正データを算出する面内ムラ補正データ算出ステップと、前記面内ムラ補正データ算出ステップにおいて算出された前記面内ムラ補正データに基づいて、前記画像信号に対して面内ムラ補正処理を行う面内ムラ補正ステップとを含む。
【0032】
本態様によれば、光源部、色分離部や光変調部を交換した場合であっても、交換後にプロジェクターの投射画像を測定することなく面内ムラ補正テーブルを更新できるので、測定の煩わしさを伴うことなく、色分離部の角度依存性に起因する面内ムラ補正を正確に行うことができるプロジェクター調整方法を提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施形態1におけるプロジェクター調整システムの構成例のブロック図。
【図2】図1の投射部の構成例のブロック図。
【図3】図2の投射部の詳細な構成例を示す図。
【図4】実施形態1におけるR成分用ダイクロイックミラーの透過率の角度依存性の説明図。
【図5】図5(A)、図5(B)はダイクロイックミラーの透過率の角度依存性の説明図。
【図6】実施形態1における分光情報記憶部の構成例を示す図。
【図7】図1の面内ムラ補正部及び面内ムラ補正テーブル記憶部の構成例のブロック図。
【図8】プロジェクターの投射光の分光分布の一例を示す図。
【図9】図8の各階調をxy色度図上の色度座標に変換した図。
【図10】実施形態1における面内ムラ補正データ算出部の動作説明図。
【図11】図2又は図3の光源部の分光分布の説明図。
【図12】図3のR成分用ダイクロイックミラー及びG成分用ダイクロイックミラーの分光透過率の説明図。
【図13】図3のR成分用液晶パネル、G成分用液晶パネル及びB成分用液晶パネルの入射光の分光分布の説明図。
【図14】等色関数の説明図。
【図15】実施形態1における画像調整装置のハードウェア構成例のブロック図。
【図16】実施形態1における画像調整装置における面内ムラ補正データの算出処理例のフロー図。
【図17】図16のステップS10の処理例のフロー図。
【図18】図16のステップS12の処理例のフロー図。
【図19】実施形態1におけるプロジェクター調整システムの処理例のフロー図。
【図20】実施形態2における投射部の構成例のブロック図。
【図21】実施形態3におけるプロジェクター調整システムの構成例のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成のすべてが本発明の課題の解決に必須の構成要件であるとは限らない。
【0035】
以下の実施形態では、光学部品の分光透過率又は分光反射率を用いる例を説明するが、この分光透過率、分光反射率及びこれに類する概念の上位概念である分光変調率を用いるものに本発明を適用できる。
【0036】
〔実施形態1〕
図1に、本発明に係る実施形態1におけるプロジェクター調整システムの構成例のブロック図を示す。
【0037】
実施形態1におけるプロジェクター調整システム10は、プロジェクターPJと、画像調整装置20とを含む。
【0038】
画像調整装置20は、画像信号生成部22と、面内ムラ補正データ算出部26とを含む。画像調整装置20は、プロジェクターPJと接続されており、プロジェクターPJを制御することができるようになっている。より具体的には、画像調整装置20は、プロジェクターPJを構成する光学部品の分光情報に基づいて面内ムラ補正データを算出し、該面内ムラ補正データに基づいてプロジェクターPJの投射画像の画質を調整する制御を行う。プロジェクターPJは、この面内ムラ補正データに基づいて投射画像の輝度及び色度を調整できる。
【0039】
画像調整装置20において、画像信号生成部22は、コンテンツ画像に対応した画像信号を生成し、該画像信号をプロジェクターPJに対して出力する。この画像信号生成部22の機能は、画像調整装置20の外部に設けられてもよい。
【0040】
また、画像調整装置20において、面内ムラ補正データ算出部26は、プロジェクターPJから、このプロジェクターPJを構成する光学部品の分光情報を取得し、該分光情報に基づいて面内ムラ補正データを算出する。ここで、面内ムラ補正データ算出部26は、投射画面の中央部を基準に面内ムラがないように面内ムラ補正を行うための面内ムラ補正データを算出する。画像調整装置20は、この面内ムラ補正データを含むコマンドをプロジェクターPJに対して送信することができる。このような画像調整装置20の機能は、例えばパーソナルコンピューター等を用いたソフトウェア処理や専用ハードウェア等によるハードウェア処理により実現される。
【0041】
プロジェクターPJにおけるムラ補正においては、画面内の位置(座標)ごとに補正量が異なる上に、各画素位置において階調それぞれの値ごとにも補正量が異なる。そこで、以下では、プロジェクターPJが、サンプリングされた画素位置において複数の階調値それぞれに対応した補正量をテーブルとして保持し、当該画素位置における残りの階調値の補正量や残りの画素位置における階調値の補正量を補間処理により求めるものとする。具体的には、プロジェクターPJは、画面の中央と左右の3点のそれぞれの画素位置について、9階調分の離散的なテーブルを保持し、他の補正量を所与の補間処理により求めるものとする。
【0042】
プロジェクターPJは、分光情報記憶部30と、画像処理部(画像処理装置)40と、投射部(画像表示部)100とを含む。画像処理部40は、画像信号入力部42と、面内ムラ補正テーブル記憶部48と、面内ムラ補正部50とを含む。
【0043】
分光情報記憶部30には、投射部100を構成する光学部品の分光情報が記憶されている。この分光情報は、面内ムラ補正データ算出部26により読み取り可能に構成されている。画像調整装置20の面内ムラ補正データ算出部26は、分光情報記憶部30に記憶される分光情報を取得し、該分光情報に基づいて面内ムラ補正データを算出する。このとき、面内ムラ補正データ算出部26は、所与の基準値を基準に面内ムラ補正データを算出する。
【0044】
画像処理部40は、画像信号生成部22からの画像信号に対して、面内ムラ補正データ算出部26において算出された面内ムラ補正データに基づいて面内ムラ補正処理を行う。そして、画像処理部40は、面内ムラ補正処理後の画像信号を投射部100に対して出力する。
【0045】
即ち、画像処理部40において、画像信号入力部42は、画像調整装置20からの画像信号の受信インターフェース処理を行い、入力画像の画像信号として面内ムラ補正部50に出力する。この受信インターフェース処理としては、物理層の信号レベルの変換処理やプログレッシブ変換処理を含むことができる。
【0046】
一方、画像調整装置20からのコマンドにより面内ムラ補正データを受け取った画像処理部40は、面内ムラ補正テーブル記憶部48において、この面内ムラ補正データを面内ムラ補正テーブルとして順次記憶していく。この面内ムラ補正テーブル記憶部48に記憶された面内ムラ補正テーブルは、面内ムラ補正データ算出部26によって面内ムラ補正データが算出される毎に、そのテーブル内容が更新されるようになっている。面内ムラ補正テーブルは、例えば、1画面を複数のブロックに分割したブロック毎に、画像を構成する色成分毎に増減すべき階調値に対応付けられた面内ムラ補正データにより構成される。
【0047】
面内ムラ補正部50は、画像信号入力部42からの画像信号に対し、面内ムラ補正テーブル記憶部48に記憶された面内ムラ補正テーブルを参照して補正処理を行い、面内ムラを補正した画像信号を生成し、該画像信号を投射部100に対して出力する。
【0048】
図1において、画像調整装置20の機能が、プロジェクターPJに内蔵されていてもよい。この場合、プロジェクターPJには、画像信号生成部22、面内ムラ補正データ算出部26の少なくとも1つの機能が内蔵される。また、分光情報記憶部30は、投射部100又は画像処理部40の外部に設けられているが、投射部100又は画像処理部40の内部に設けられていてもよい。
【0049】
図2に、図1の投射部100の構成例のブロック図を示す。なお、実施形態1では、投射部100が図2の構成を有するものとして説明するが、本発明に係るプロジェクターにおける投射部の構成が図2の構成に限定されるものではない。
【0050】
投射部100は、光源部110と、色分離部180と、光変調部190〜190(Nは2以上の整数)と、合成部192と、投射レンズ170とを含む。
【0051】
光源部110は、複数の色光を含む光を発生する。色分離部180は、光源部110からの光を複数の色光に分離する。色分離部180によって分離された各色光は、対応する光変調部に入射される。
【0052】
光変調部は、色分離部180により分離される色光数分設けられており、色分離部180が光源部110からの光をRGBの3つの色成分の色光に分離する場合、Nが3となる。例えば、光変調部190は、色分離部180によって分離された色光のうちR成分の色光を、画像処理部40において補正された画像信号に基づいて変調し、変調後の光を合成部192に出射する。また光変調部190は、色分離部180によって分離された色光のうちG成分の色光を、画像処理部40において補正された画像信号に基づいて変調し、変調後の光を合成部192に出射する。更に、光変調部190は、色分離部180によって分離された色光のうちB成分の色光を、画像処理部40において補正された画像信号に基づいて変調し、変調後の光を合成部192に出射する。
【0053】
合成部192は、光変調部190〜190のそれぞれからの変調後の光を合成し、合成した光を投射レンズ170に出射する。投射レンズ170は、合成部192によって複数の変調光が合成された光を用いて投射画像をスクリーンSCR上に拡大して結像させる。
【0054】
図3に、図2の投射部100の詳細な構成例を示す。図3において、図2と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。図3では、実施形態1における投射部100が、いわゆる3板式の液晶プロジェクターにより構成されるものとして説明するが、本発明に係るプロジェクターの投射部がいわゆる3板式の液晶プロジェクターにより構成されるものに限定されるものではない。即ち、以下では、1画素がR成分のサブ画素、G成分のサブ画素、及びB成分のサブ画素により構成されるものとして説明するが、1画素を構成するサブ画素数(色成分数)に限定されるものではない。
【0055】
実施形態1における投射部100は、光源部110、インテグレーターレンズ112、114、偏光変換素子116、重畳レンズ118、R成分用ダイクロイックミラー120R、G成分用ダイクロイックミラー120G、反射ミラー122、R成分用フィールドレンズ124R、G成分用フィールドレンズ124G、R成分用液晶パネル130R(第1の光変調部)、G成分用液晶パネル130G(第2の光変調部)、B成分用液晶パネル130B(第3の光変調部)、リレー光学系140、クロスダイクロイックプリズム160、投射レンズ170を含む。R成分用液晶パネル130R、G成分用液晶パネル130G及びB成分用液晶パネル130Bとして用いられる液晶パネルは、透過型の液晶表示装置である。リレー光学系140は、リレーレンズ142、144、146、反射ミラー148、150を含む。
【0056】
光源部110は、例えば超高圧水銀ランプにより構成され、少なくともR成分の光、G成分の光、B成分の光を含む光を射出する。インテグレーターレンズ112は、光源部110からの光を複数の部分光に分割するための複数の小レンズを有する。インテグレーターレンズ114は、インテグレーターレンズ112の複数の小レンズに対応する複数の小レンズを有する。重畳レンズ118は、インテグレーターレンズ112の複数の小レンズから射出される部分光を液晶パネル上で重畳する。
【0057】
また偏光変換素子116は、偏光ビームスプリッターアレイとλ/2板とを有し、光源部110からの光を略一種類の偏光光に変換する。偏光ビームスプリッターアレイは、インテグレーターレンズ112により分割された部分光をp偏光とs偏光に分離する偏光分離膜と、偏光分離膜からの光の向きを変える反射膜とを、交互に配列した構造を有する。偏光分離膜で分離された2種類の偏光光は、λ/2板によって偏光方向が揃えられる。この偏光変換素子116によって略一種類の偏光光に変換された光が、重畳レンズ118に照射される。
【0058】
重畳レンズ118からの光は、R成分用ダイクロイックミラー120Rに入射される。R成分用ダイクロイックミラー120Rは、R成分の光を反射して、G成分及びB成分の光を透過させる機能を有する。R成分用ダイクロイックミラー120Rを透過した光は、G成分用ダイクロイックミラー120Gに照射され、R成分用ダイクロイックミラー120Rにより反射した光は反射ミラー122により反射されてR成分用フィールドレンズ124Rに導かれる。
【0059】
G成分用ダイクロイックミラー120Gは、G成分の光を反射して、B成分の光を透過させる機能を有する。G成分用ダイクロイックミラー120Gを透過した光は、リレー光学系140に入射され、G成分用ダイクロイックミラー120Gにより反射した光はG成分用フィールドレンズ124Gに導かれる。
【0060】
リレー光学系140では、G成分用ダイクロイックミラー120Gを透過したB成分の光の光路長と他のR成分及びG成分の光の光路長との違いをできるだけ小さくするために、リレーレンズ142、144、146を用いて光路長の違いを補正する。リレーレンズ142を透過した光は、反射ミラー148によりリレーレンズ144に導かれる。リレーレンズ144を透過した光は、反射ミラー150によりリレーレンズ146に導かれる。リレーレンズ146を透過した光は、B成分用液晶パネル130Bに照射される。
【0061】
R成分用フィールドレンズ124Rに照射された光は、平行光に変換されてR成分用液晶パネル130Rに入射される。R成分用液晶パネル130Rは、光変調部(光変調素子)として機能し、R成分用画像信号に基づいて透過率(通過率、変調率)が変化するようになっている。従って、R成分用液晶パネル130Rに入射された光(第1の色成分の光)は、R成分用画像信号に基づいて変調され、変調後の光がクロスダイクロイックプリズム160に入射される。
【0062】
G成分用フィールドレンズ124Gに照射された光は、平行光に変換されてG成分用液晶パネル130Gに入射される。G成分用液晶パネル130Gは、光変調部(光変調素子)として機能し、G成分用画像信号に基づいて透過率(通過率、変調率)が変化するようになっている。従って、G成分用液晶パネル130Gに入射された光(第2の色成分の光)は、G成分用画像信号に基づいて変調され、変調後の光がクロスダイクロイックプリズム160に入射される。
【0063】
リレーレンズ142、144、146で平行光に変換された光が照射されるB成分用液晶パネル130Bは、光変調部(光変調素子)として機能し、B成分用画像信号に基づいて透過率(通過率、変調率)が変化するようになっている。従って、B成分用液晶パネル130Bに入射された光(第3の色成分の光)は、B成分用画像信号に基づいて変調され、変調後の光がクロスダイクロイックプリズム160に入射される。
【0064】
R成分用液晶パネル130R、G成分用液晶パネル130G、B成分用液晶パネル130Bは、それぞれ同様の構成を有している。各液晶パネルは、電気光学物質である液晶を一対の透明なガラス基板に密閉封入したものであり、例えばポリシリコン薄膜トランジスターをスイッチング素子として、各サブ画素の画像信号に対応して各色光の通過率を変調する。
【0065】
実施形態1では、1画素を構成する色成分毎に光変調部としての液晶パネルが設けられ、各液晶パネルの透過率がサブ画素に対応した画像信号により制御される。即ち、R成分のサブ画素用の画像信号が、R成分用液晶パネル130Rの透過率(通過率、変調率)の制御に用いられ、G成分のサブ画素用の画像信号が、G成分用液晶パネル130Gの透過率の制御に用いられ、B成分のサブ画素用の画像信号が、B成分用液晶パネル130Bの透過率の制御に用いられる。
【0066】
クロスダイクロイックプリズム160は、R成分用液晶パネル130R、G成分用液晶パネル130G及びB成分用液晶パネル130Bからの入射光を合成した合成光を出射光として出力する機能を有する。投射レンズ170は、出力画像をスクリーンSCR上に拡大して結像させるレンズである。
【0067】
図3において、R成分用ダイクロイックミラー120R及びG成分用ダイクロイックミラー120Gは、図2の色分離部180の機能を実現する。また、図3は、図2においてNが「3」である例を表しており、R成分用液晶パネル130Rは図2の光変調部190の機能を実現し、G成分用液晶パネル130Gは図2の光変調部190の機能を実現し、B成分用液晶パネル130Bは図2の光変調部190の機能を実現する。また、クロスダイクロイックプリズム160は、図2の合成部192の機能を実現する。
【0068】
このように、投射部100は、光源部110と、色分離部180と、光変調部190〜190とを含むことができる。なお、投射部100は、図2又は図3に示す構成をすべて含む必要はない。
【0069】
ところで、R成分用ダイクロイックミラー120R及びG成分用ダイクロイックミラー120Gの透過率には角度依存性がある。具体的に、R成分用ダイクロイックミラー120R及びG成分用ダイクロイックミラー120Gの透過率は、入射光の入射角に応じて変化する。しかしながら、インテグレーターレンズ112、114、偏光変換素子116及び重畳レンズ118からなる光学系においては、光源部110からの光を完全な平行光に変換することが難しい。そのため、この透過率の角度依存性に起因して、後述するムラが発生する。
【0070】
図4に、実施形態1におけるR成分用ダイクロイックミラー120Rの透過率の角度依存性の説明図を示す。図4では、R成分用ダイクロイックミラー120Rの透過率の角度依存性について説明するが、G成分用ダイクロイックミラー120Gの透過率の角度依存性についても同様である。
【0071】
図4は、R成分用ダイクロイックミラー120Rを側面から見た図を模式的に表している。なお、Lは、インテグレーターレンズ112、114、偏光変換素子116及び重畳レンズ118からなる光学系の出射面における仮想的な光源を示している。ここで、R成分用ダイクロイックミラー120Rの入射面の中央部の位置(該入射面の中心位置を含む領域内の位置)をPC、該入射面の右端部の位置(該入射面の右側領域内の端部又はその近傍の位置)をP1、該入射面の左端部の位置(該入射面の左側領域内の端部又はその近傍の位置)をP2とする。
【0072】
R成分用ダイクロイックミラー120Rの入射面に垂直な方向(入射面の法線方向)を基準にすると、位置PCにおける光源Lからの入射角θ2は、位置P1における光源Lからの入射角θ1より小さい。また、入射角θ2は、位置P2における光源Lからの入射角θ3より大きい。即ち、図4では、R成分用ダイクロイックミラー120Rの入射面において、光源Lからの光の入射角について、θ3<θ2<θ1の関係にある。この関係は、R成分用ダイクロイックミラー120Rと光源Lとの位置関係に依存するが、いずれにしても、R成分用ダイクロイックミラー120Rは、光源L又は光源部110からの光の入射面内の複数の位置において入射角が異なって配置される。R成分用ダイクロイックミラー120Rは、光の入射角に応じて分光透過率が異なる性質を有しているため、入射面内の複数の位置において分光透過率を異ならせて複数の色光に分離することになる。
【0073】
図5(A)、図5(B)に、ダイクロイックミラーの透過率の角度依存性の説明図を示す。図5(A)は、R成分用ダイクロイックミラー120Rの透過率の角度依存性の説明図の一例を表す。図5(B)は、G成分用ダイクロイックミラー120Gの透過率の角度依存性の説明図の一例を表す。図5(A)、図5(B)では、横軸に光の波長、縦軸に透過率を示す。
【0074】
図5(A)に示すように、R成分用ダイクロイックミラー120Rでは、入射面の法線方向を基準とした入射角が大きいほど、透過波長領域と反射波長領域との境界が短波長側に移動する。従って、図4に示すように配置されたR成分用ダイクロイックミラー120Rの入射面の各位置において、透過又は反射する光の波長が異なる。即ち、R成分用液晶パネル130Rの入射面内においてムラが発生する。
【0075】
同様に、図5(B)に示すように、G成分用ダイクロイックミラー120Gでは、入射面の法線方向を基準とした入射角が大きいほど、透過波長領域と反射波長領域との境界が短波長側に移動する。従って、図4と同様に配置されたG成分用ダイクロイックミラー120Gの入射面の各位置において、透過又は反射する光の波長が異なる。即ち、G成分用液晶パネル130Gの入射面内においてムラが発生する。また、このようなG成分用ダイクロイックミラー120Gを透過した光についても、B成分用液晶パネル130Bの入射面内においてムラが発生する。
【0076】
そこで、実施形態1では、分光情報記憶部30に、色分離部の角度依存性情報を記憶させ、面内ムラ補正データ算出部26が、該角度依存性情報を用いて面内ムラ補正データを算出する。
【0077】
図6に、実施形態1における分光情報記憶部30の構成例を示す。図6において、図1と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0078】
分光情報記憶部30は、光源情報記憶部210と、色分離情報記憶部310と、光変調情報記憶部410とを含む。光源情報記憶部210は、光源部110からの光の分光分布に対応した分光情報を記憶する。色分離情報記憶部310は、色分離部180の分光透過率に対応した分光情報を記憶する。光変調情報記憶部410は、色成分毎の光変調部の分光透過率に対応した分光情報を記憶する。
【0079】
より具体的には、色分離情報記憶部310は、中央部分光情報記憶部320と、角度依存性情報記憶部330とを含む。中央部分光情報記憶部320は、色分離部180(R成分用ダイクロイックミラー120R、G成分用ダイクロイックミラー120G)の入射面の中央部における分光透過率に対応した分光情報を記憶する。角度依存性情報記憶部330は、色分離部180(R成分用ダイクロイックミラー120R、G成分用ダイクロイックミラー120G)の入射面における入射角に対応した分光透過率に応じた角度依存性情報を記憶する。この角度依存性情報としては、例えば入射面の中央部における分光透過率を基準とし、入射角に応じて補正すべき量に対応した情報を採用できる。そして、面内ムラ補正データ算出部26は、中央部分光情報記憶部320に記憶された分光情報に基づいて算出された色を基準に、光源部110からの光の分光分布に対応した分光情報、色分離部180の分光反射率の角度依存性に基づく角度依存性情報、及び光変調部の分光透過率に対応した分光情報を用いて面内ムラ補正データを算出する。
【0080】
なお、実施形態1では、角度依存性情報として、色分離部180の入射面の右端部(又は投射画面の右端部に対応した位置)における分光透過率に対応した分光情報と、該入射面の左端部(又は投射画面の左端部に対応した位置)における分光透過率に対応した分光情報とを有するものとする。この場合、角度依存性情報は、色分離部180の入射面内の複数の位置における分光透過率に対応した分光情報となる。こうすることでも、入射面の入射角に応じた面内ムラの補正処理が可能となる。
【0081】
より具体的には、実施形態1では、角度依存性情報記憶部330は、右端部分光情報記憶部332と、左端部分光情報記憶部334とを有する。右端部分光情報記憶部332は、色分離部180の入射面の右端部(又は投射画面の右端部に対応した位置)における分光透過率に対応した分光情報を記憶する。左端部分光情報記憶部332は、色分離部180の入射面の左端部(又は投射画面の左端部に対応した位置)における分光透過率に対応した分光情報を記憶する。なお、実施形態1では、色分離部180の入射面又は投射画面の左右方向(水平方向)の両端部における分光情報を記憶しているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0082】
ところで、投射画像の面内ムラは、色分離部180を構成するR成分用ダイクロイックミラー120R及びG成分用ダイクロイックミラー120Gの配置以外にも、光変調部として機能するR成分用液晶パネル130R、G成分用液晶パネル130G及びB成分用液晶パネル130Bの特性ばらつきやその他の要因に起因して発生する。そのため、面内ムラ補正テーブル記憶部48には、少なくとも2種類の面内ムラ補正テーブルを記憶しておき、色分離部180の角度依存性を補正する面内ムラ補正テーブルのみを更新するようにし、面内ムラ補正部50は、更新後の面内ムラ補正テーブルを含む複数種類の面内ムラ補正テーブルを統合して、統合後の面内ムラ補正データに基づいて面内ムラ補正処理を行うようにする。こうすることで、色分離部180を交換した場合であっても、面内ムラ補正データ算出部26は、交換後の色分離部180の角度依存性に起因する面内ムラ補正のみを正確に補正できるようになる。
【0083】
図7に、図1の面内ムラ補正部50及び面内ムラ補正テーブル記憶部48の構成例のブロック図を示す。図7において、図1と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0084】
面内ムラ補正テーブル記憶部48は、第1の面内ムラ補正テーブル記憶部48と、第2の面内ムラ補正テーブル記憶部48とを含む。第1の面内ムラ補正テーブル記憶部48は、面内ムラ補正データ算出部26により色分離部180の角度依存性に基づいて算出された第1の面内ムラ補正データを第1の面内ムラ補正テーブルとして記憶する。第2の面内ムラ補正テーブル記憶部48は、色分離部180の角度依存性以外の要因に起因した面内ムラを補正するために予め算出された第2の面内ムラ補正データを第2の面内ムラ補正テーブルとして記憶する。
【0085】
面内ムラ補正部50は、加算部52と、面内ムラ補正処理部54とを含む。加算部52は、第1の面内ムラ補正テーブル記憶部48から読み出された更新後の第1の面内ムラ補正データと第2の面内ムラ補正テーブル記憶部48から読み出された第2の面内ムラ補正データとを加算(統合)し、加算結果を面内ムラ補正処理部54に出力する。面内ムラ補正処理部54は、画像信号入力部42からの画像信号に対して、加算部52の加算結果に基づいて面内ムラ補正処理を行う。面内ムラ補正処理部54によって行われた面内ムラ補正処理後の画像信号は、投射部100に出力される。
【0086】
このように面内ムラ補正テーブル記憶部48に複数の面内ムラ補正テーブル記憶部を設け、そのうち1つの面内ムラ補正テーブル記憶部に記憶される面内ムラ補正テーブルを面内ムラ補正データ算出部26により算出される面内ムラ補正データにより更新している。更に、面内ムラ補正部50の加算部52において、複数の面内ムラ補正テーブル記憶部に記憶される面内ムラ補正テーブルを統合して面内ムラ補正処理を行うようにしている。これにより、面内ムラ補正データ算出部26により算出される面内ムラ補正データにより面内ムラ補正テーブルの内容を更新したとしても、色分離部180の角度依存性に起因した面内ムラのみならず、他の要因に起因した面内ムラも確実に補正できるようになる。
【0087】
このような面内ムラ補正データは、色分離部180の中央部における分光透過率により得られる色を基準に生成される。この色分離部180の中央部における分光透過率により得られる色は、プロジェクターPJを構成する光学部品の分光情報に基づいて算出される。
【0088】
一般的に、プロジェクターPJの投射光の分光分布は、各色成分について、階調が異なると分光分布の形状も異なってしまう。この分光分布の形状の変化は、色の変化を意味する。
【0089】
図8に、プロジェクターPJの投射光の分光分布の一例を示す。図8は、横軸に投射光の波長を示し、縦軸に投射光のエネルギーを示し、RGBの色成分毎に、階調値の最大値と最小値とを含む9階調のそれぞれについての分光分布を表している。この9階調についての補正量(又は補正量に対応した情報)が、画素位置における階調方向のテーブルとして保持され、入力画像の画像信号に対応した画素値が、この9階調のいずれかの間の値であるとき、このテーブルに保持された値を補間して補正量が求められる。
図9に、図8の各階調をxy色度図上の色度座標に変換した図を示す。図9では、横軸にx、縦軸にyを表している。
【0090】
図8では、短波長側からB成分、G成分、R成分の投射光のエネルギーが示されている。そして、図8は、色成分毎に、階調値を「255」、「224」、「192」、「160」、「128」、「96」、「64」、「32」、「0」に変化させたときのエネルギーの変化を表す。各色成分においても、階調値が大きいほど、エネルギーが大きくなる。
【0091】
ところが、図8に示すように、例えば階調値「255」の約半分である階調値「128」の分光分布の形状は、階調値「255」の分光分布と比較してピークが失われたりして形状が異なってくる。従って、図9に示すように、xy色度図上の色度座標が階調値毎に変化してしまい、色が変化していることがわかる。
【0092】
そのため、色分離部180の角度依存性に起因した面内ムラ補正テーブルに従って面内ムラ補正が可能であったとしても、投射部100を構成する光学部品(特に、光源部110)を交換してしまうと、交換後の光学部品の分光特性に合わせて面内ムラ補正を行う必要がある。そこで、光学部品の交換の度に投射画像を測定し、その測定結果を面内ムラ補正テーブルに反映させる必要があり、これは、手間がかかるばかりか、プロジェクターPJの測定システムが必要になる。
【0093】
そこで、実施形態1では、投射部100を構成する光学部品を交換する度に、面内ムラ補正データ算出部26が、分光情報記憶部30に記憶される分光情報を取得し、この分光情報を用いて面内ムラ補正データを算出し、この面内ムラ補正データにより面内ムラ補正テーブルを更新する。
【0094】
図10に、実施形態1における面内ムラ補正データ算出部26の動作説明図を示す。
図11に、図2又は図3の光源部110の分光分布の説明図を示す。図11は、横軸に光源部110からの光の波長、縦軸に光のエネルギーを表す。
図12に、図3のR成分用ダイクロイックミラー120R及びG成分用ダイクロイックミラー120Gの分光透過率の説明図を示す。図12は、横軸に入射光の波長、縦軸に各ダイクロイックミラーの透過率を表す。
図13に、図3のR成分用液晶パネル130R、G成分用液晶パネル130G及びB成分用液晶パネル130Bの入射光の分光分布の説明図を示す。図13は、横軸に各色成分の入射光の波長、縦軸に各色成分の色光のエネルギーを表す。
【0095】
プロジェクターPJの投射光の色は、光源部110の分光分布、色分離部180の分光透過率、光変調部の分光透過率によって決まる。そこで、面内ムラ補正データ算出部26は、まず、図10に示すように、光源部110からの光の分光分布に対応した分光情報、色分離部としてのダイクロイックミラーの分光透過率に対応した分光情報、及び光変調部としての液晶パネルの分光透過率に対応した分光情報を乗算し、その乗算結果に等色関数を掛け合わせることにより、CIE(Commission Internationale de l'Eclairage)表色系の色彩値を出力する。ここで、色分離部の分光透過率は、色分離部の入射面の中央部における分光透過率である。
【0096】
より具体的には、面内ムラ補正データ算出部26は、上記の分光情報を用いてRGBの色成分毎に、プロジェクターPJの出射光の分光分布を算出する。分光情報記憶部30には、各分光情報が、光の波長に対応したエネルギー又は透過率(反射率)が記憶されており、光の波長毎に分光情報により重み付けして足し合わせる処理によって、上記の分光分布が求められる。
【0097】
即ち、面内ムラ補正データ算出部26は、R成分の出射光の分光分布について、図11に示すような光源部110からの光の分光分布に対応した分光情報、図12に示すようなR成分用ダイクロイックミラー120Rの入射面の中央部における分光反射率に対応した分光情報、及びR成分用液晶パネル120Rの分光透過率に対応した分光情報を乗算してR成分の光の分光分布を算出する。ここで、R成分用ダイクロイックミラー120Rの分光反射率は、図12に示す分光透過率より求められる。
【0098】
同様に、面内ムラ補正データ算出部26は、G成分の出射光の分光分布について、図11に示すような光源部110からの光の分光分布に対応した分光情報、図12に示すようなR成分用ダイクロイックミラー120Rの入射面の中央部における分光透過率に対応した分光情報、G成分用のダイクロイックミラー120Gの入射面の中央部における分光反射率に対応した分光情報、及びG成分用液晶パネル120Gの分光透過率に対応した分光情報を乗算してG成分の光の分光分布を算出する。ここで、G成分用ダイクロイックミラー120Gの分光反射率は、図12に示す分光透過率より求められる。
【0099】
更に、面内ムラ補正データ算出部26は、B成分の出射光の分光分布について、図11に示すような光源部110からの光の分光分布に対応した分光情報、図12に示すようなR成分用ダイクロイックミラー120Rの入射面の中央部における分光透過率に対応した分光情報、G成分用ダイクロイックミラー120Gの入射面の中央部における分光透過率に対応した分光情報、及びB成分用液晶パネル120Bの分光透過率に対応した分光情報を乗算してB成分の光の分光分布を算出する。
【0100】
この結果、図13に示すようなR成分用液晶パネル130R、G成分用液晶パネル130G及びB成分用液晶パネル130Bの各色成分の入射光の分光分布に対して、波長毎に、各色成分の液晶パネルの分光透過率により重み付けされて足し合わされた値が、出射光の分光分布として求められる。
【0101】
その後、面内ムラ補正データ算出部26は、各色成分の出射光の分光分布に等色関数を掛け合わせることにより、CIE(Commission Internationale de l'Eclairage)表色系の色彩値を出力する。
【0102】
図14に、等色関数の説明図を示す。図14は、横軸に光の波長、縦軸に分光応答度を示し、人間の眼に対応する分光応答度を示す等色関数の一例を表す。
【0103】
面内ムラ補正データ算出部26は、上記のように求められた各色成分の分光分布を、図14に示す等色関数に従って重み付けを行って足し合わせることでXYZ表色系の色彩値を出力する。そして、面内ムラ補正データ算出部26は、この色彩値を基準に、面内ムラがなくなるように、画像信号に対する面内ムラ補正データを算出する。
【0104】
これにより、光学部品を交換してプロジェクターPJの投射画像の色が変化してしまう場合であっても、測定システムにより投射画像を測定することなく面内ムラ補正テーブルを修正して更新できるので、低コスト、且つ、容易に画質の向上を図ることができるプロジェクターを提供できるようになる。
【0105】
このような面内ムラ補正データ算出部26を含む画像調整装置20の機能は、ハードウェア処理により実現されてもよいし、ソフトウェア処理により実現されてもよい。
【0106】
図15に、実施形態1における画像調整装置20のハードウェア構成例のブロック図を示す。
【0107】
画像調整装置20は、中央演算処理装置(Central Processing Unit:CPU)60、インターフェース(InterFace:I/F)回路62、読み出し専用メモリー(Read Only
Memory:ROM)64、ランダムアクセスメモリー(Random Access Memory:RAM)66、バス68を有し、バス68を介して、CPU60、I/F回路62、ROM64、及びRAM66は電気的に接続されている。
【0108】
例えばROM64には、画像調整装置20の機能を実現するプログラムが記憶される。CPU60は、ROM64に記憶されたプログラムを読み出し、該プログラムに対応した処理を実行することで、画像調整装置20の機能をソフトウェア処理で実現できる。なお、RAM66は、CPU60による処理の作業エリアとして用いられたり、I/F回路62やROM64のバッファエリアとして用いられたりする。I/F回路62は、プロジェクターPJに送られる画像信号や補正データを含むコマンドの入力インターフェース処理を行う。
【0109】
図16に、実施形態1における画像調整装置20における面内ムラ補正データの算出処理例のフロー図を示す。例えば、図15のROM64に図16に示す処理手順を指示するプログラムが記憶されており、CPU60がROM64から読み込んだプログラムに対応した処理を実行することで、画像調整装置20の面内ムラ補正データ算出部26の機能を図16に示すようにソフトウェア処理により実現できるようになっている。
【0110】
画像調整装置20は、まず、面内ムラ補正データ算出部26において、色分離部180の中央部における分光情報等を用いて基準値を算出する(ステップS10)。このステップS10では、面内ムラ補正データ算出部26は、図10に示すように、分光情報記憶部30に記憶される各種の分光情報を用いて面内ムラ補正データを算出するが、色分離部180の分光情報については中央部分光情報記憶部320に記憶される色分離部180の中央部(R成分用ダイクロイックミラー120R及びG成分用ダイクロイックミラー120Gそれぞれの中央部)における分光情報を用いる。
【0111】
続いて、画像調整装置20は、面内ムラ補正データ算出部26において、角度依存性情報記憶部330に記憶される角度依存性情報を用いて、色分離部180の中央部と同じ色になるように面内ムラ補正データを算出し(ステップS12)、一連の処理を終了する(エンド)。実施形態1では、ステップS12では、面内ムラ補正データ算出部26は、右端部分光情報記憶部332に記憶される色分離部180の右端部の分光情報と左端部分光情報記憶部334に記憶される色分離部180の左端部の分光情報とを用いて、ステップS10における基準値に基づいて、投射画面の面内において色分離部180の中央部と同じ色になるように面内ムラ補正データを算出する。
【0112】
図17に、図16のステップS10の処理例のフロー図を示す。例えば、図15のROM64に図17に示す処理手順を指示するプログラムが記憶されており、CPU60がROM64から読み込んだプログラムに対応した処理を実行することで、画像調整装置20の面内ムラ補正データ算出部26の機能を図17に示すようにソフトウェア処理により実現できるようになっている。
【0113】
まず、面内ムラ補正データ算出部26は、プロジェクターPJの分光情報記憶部30に記憶される分光情報のうち、光源部110の分光分布に対応した分光情報を読み出す(ステップS20)。続いて、面内ムラ補正データ算出部26は、分光情報記憶部30からR成分用ダイクロイックミラー120R及びG成分用ダイクロイックミラー120Gの入射面の中央部における分光透過率に対応した分光情報を読み出す(ステップS22)。更に、面内ムラ補正データ算出部26は、分光情報記憶部30からR成分用液晶パネル130R、G成分用液晶パネル130G及びB成分用液晶パネル130Bの分光透過率に対応した分光情報を読み出す(ステップS24)。
【0114】
そして、面内ムラ補正データ算出部26は、9階調のそれぞれの階調値に対応した分光分布を算出し、XYZ表色系の色彩値を算出し(ステップS26)、一連の処理を終了する(エンド)。ステップS26では、RGBの各色成分の9階調のそれぞれについてXYZ表色系の色彩値が基準値として算出される。
【0115】
図18に、図16のステップS12の処理例のフロー図を示す。例えば、図15のROM64に図18に示す処理手順を指示するプログラムが記憶されており、CPU60がROM64から読み込んだプログラムに対応した処理を実行することで、画像調整装置20の面内ムラ補正データ算出部26の機能を図18に示すようにソフトウェア処理により実現できるようになっている。
【0116】
まず、面内ムラ補正データ算出部26は、プロジェクターPJの分光情報記憶部30に記憶される分光情報のうち、光源部110の分光分布に対応した分光情報と、R成分用ダイクロイックミラー120R及びG成分用ダイクロイックミラー120Gの入射面の右端部における分光透過率に対応した分光情報と、R成分用液晶パネル130R、G成分用液晶パネル130G及びB成分用液晶パネル130Bの分光透過率に対応した分光情報とを読み出す(ステップS30)。
【0117】
そして、面内ムラ補正データ算出部26は、例えば全階調のうちサンプリングされた階調の階調値に対応した分光分布を図10に従って算出し、XYZ表色系の色彩値を求める(ステップS32)。
【0118】
次に、面内ムラ補正データ算出部26は、図17のステップS10で求められた基準値とステップS32で求められた色彩値とが一致するか否かを判別する(ステップS34)。なお、ステップS34では、基準値とステップS32で求められた色彩値との差が所与の閾値以下であるとき、或いはこの差が最小となったときに両者が一致したと判断するようにしてもよい。
【0119】
ステップS34において、両者が一致していない(又は両者の差が所与の閾値より大きい)と判別されたとき(ステップS34:N)、面内ムラ補正データ算出部26は、ステップS32で用いた階調のうち1つの色成分を微小変化させて(ステップS36)、ステップS32に戻り、ステップS36で微小変化させた階調に対応するXYZ表色系の色彩値を求める。
【0120】
ステップS34において、両者が一致する(又は両者の差が所与の閾値以下、差が最小)と判別されたとき(ステップS34:Y)、面内ムラ補正データ算出部26は、プロジェクターPJの分光情報記憶部30に記憶される分光情報のうち、光源部110の分光分布に対応した分光情報と、R成分用ダイクロイックミラー120R及びG成分用ダイクロイックミラー120Gの入射面の左端部における分光透過率に対応した分光情報と、R成分用液晶パネル130R、G成分用液晶パネル130G及びB成分用液晶パネル130Bの分光透過率に対応した分光情報とを読み出す(ステップS38)。
【0121】
そして、面内ムラ補正データ算出部26は、例えば全階調のうちサンプリングされた階調の階調値に対応した分光分布を図10に従って算出し、XYZ表色系の色彩値を求める(ステップS40)。
【0122】
次に、面内ムラ補正データ算出部26は、図17のステップS10で求められた基準値とステップS40で求められた色彩値とが一致するか否かを判別する(ステップS42)。なお、ステップS42では、基準値とステップS40で求められた色彩値との差が所与の閾値以下であるとき、又はこの差が最小のときに両者が一致したと判断するようにしてもよい。
【0123】
ステップS42において、両者が一致していない(又は両者の差が所与の閾値より大きい)と判別されたとき(ステップS42:N)、面内ムラ補正データ算出部26は、ステップS40で用いた階調のうち1つの色成分を微小変化させて(ステップS44)、ステップS40に戻り、ステップS44で微小変化させた階調に対応するXYZ表色系の色彩値を求める。
【0124】
ステップS42において、両者が一致する(又は両者の差が所与の閾値以下、差が最小)と判別されたとき(ステップS42:Y)、面内ムラ補正データ算出部26は、画面中央と同じ色になるために増減すべき階調値に対応した面内ムラ補正データを生成し(ステップS46)、一連の処理を終了する(エンド)。
【0125】
こうして、面内の右端部及び左端部において、サンプリングされた階調のそれぞれについて面内ムラ補正データが算出されると、コマンドとしてプロジェクターPJに送信する。プロジェクターPJでは、画像処理部40の面内ムラ補正テーブル記憶部48に記憶される面内ムラ補正テーブルが、上記のように算出された面内ムラ補正データにより更新される。
【0126】
このように、実施形態1では、投射画像を測定することなく、投射部100を構成する光学部品の分光情報を用いて、面内ムラ補正テーブルの面内ムラ補正データが算出される。このような面内ムラ補正テーブルの更新は、投射部100を構成する光学部品の少なくとも1つが交換される毎に行われることが望ましい。このとき、XYZ表色系の色彩値に変換した後に面内ムラ補正データを算出するようにしたので、プロジェクターPJの分光特性の違いに依存しない基準値を基準に、面内ムラ補正データを精度良く算出することができるようになる。
【0127】
次に、実施形態1におけるプロジェクター調整システムの処理例について説明する。
【0128】
図19に、実施形態1におけるプロジェクター調整システム10の処理例のフロー図を示す。
【0129】
プロジェクター調整システム10を構成するプロジェクターPJにおいて、光学部品の1つが交換されたものとする。このとき、画像調整装置20は、面内ムラ補正データ算出ステップとして、上記のように、プロジェクターPJの分光情報記憶部30に記憶される分光情報を取得し、面内ムラ補正データを算出する(ステップS50)。このステップS50の処理は、図18において説明した処理であり、面内の中央部におけるXYZ表色系の色彩値を基準として面内ムラ補正データであり、第1の面内ムラ補正データとして第1の面内ムラ補正テーブル記憶部48に格納されていく。
【0130】
そして、画像調整装置20は、面内ムラ補正テーブル更新ステップとして、コマンドにより、算出した面内ムラ補正データをプロジェクターPJに送信し、プロジェクターPJ内の面内ムラ補正テーブル記憶部48に記憶される面内ムラ補正テーブルを、ステップS30において算出された面内ムラ補正テーブルにより更新する(ステップS52)。
【0131】
その後、プロジェクターPJは、画像調整装置20からの画像信号の入力を待つ(ステップS54)。プロジェクターPJは、画像調整装置20から画像信号が入力されると、画像処理部40において、面内ムラ補正ステップとして、面内ムラ補正テーブル記憶部48に記憶された面内ムラ補正テーブルを参照して、更新後の第1の面内ムラ補正データと第2の面内ムラ補正データとを読み出し(ステップS56)、更新後の第1の面内ムラ補正データと第2の面内ムラ補正データとを加算した面内ムラ補正データを用いて該画像信号を補正する(ステップS58)。このステップS58では、プロジェクターPJは、面内ムラ補正データを、画面内の画素位置に応じた公知の補間処理で補間して、補間処理後の補正データにより画像信号に対して面内ムラ補正処理を行う。
【0132】
続いて、プロジェクターPJは、画像信号の入力が継続するとき(ステップS60:N)、ステップS54に戻って処理を継続し、画像信号の入力が終了するとき(ステップS60:Y)、一連の処理を終了する(エンド)。
【0133】
以上説明したように、実施形態1によれば、プロジェクターPJを構成する光学部品を交換した場合であっても、光学部品を交換後にプロジェクターPJの投射画像を測定することなく面内ムラ補正テーブルを更新できるので、測定の煩わしさを伴うことなく、光学部品の角度依存性に起因する面内ムラ補正を正確に行うことができるようになる。
【0134】
〔実施形態2〕
実施形態1では、プロジェクターPJ内に分光情報記憶部30が内蔵される例について説明したが、投射部100を構成する光学部品の分光情報は、それぞれの光学部品自体が記憶しておくことが望ましい。この場合、図1の分光情報記憶部30の機能が、各光学部品に内蔵された記憶部に分割される。
【0135】
図20に、本発明に係る実施形態2における投射部100の構成例のブロック図を示す。図20において、図2又は図6と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0136】
実施形態2では、投射部100は、光源装置200と、色分離装置300と、光変調装置400〜400と、合成部192と、投射レンズ170とを含む。以下では、Nが3であるものとする。
【0137】
光源装置200の光源部110は、光源部110は、複数の色光を含む光を発生する。色分離装置300の色分離部180は、光源部110からの光を複数の色光に分離する。色分離部180によって分離された各色光は、対応する光変調部に入射される。
【0138】
実施形態2における光源装置200は、光源部110と、光源部110からの光の分光分布に対応した分光情報を記憶する光源情報記憶部210とを含み、光源情報記憶部210に記憶される分光情報が、外部に読み出し可能に構成される。このような光源部110は、実施形態1と同様に、例えば超高圧水銀ランプにより構成される。光源情報記憶部210は、フラッシュROM等の不揮発性メモリー素子により構成される。なお、光源部110が、光源情報記憶部210を含んで構成されていてもよい。
【0139】
そして、図2又は図3の光源部110に代えて、光源装置200が、投射部100に交換可能に設けられる。この場合、投射部100は、光源装置200の交換後においても、光源情報記憶部210が画像調整装置20の面内ムラ補正データ算出部26によってアクセスできるように構成されている。
【0140】
こうすることで、光源装置200を交換した場合に、分光情報記憶部30に記憶される分光情報を更新する必要がなくなり、交換後の光源部110に特有の分光情報を予め光源情報記憶部210に記憶させておくだけでよい。
【0141】
実施形態2における色分離装置300は、色分離部180と、色分離部180の分光透過率に対応した分光情報を記憶する色分離情報記憶部310とを含み、色分離情報記憶部310に記憶される分光情報が、外部に読み出し可能に構成される。この色分離情報記憶部310は、中央部分光情報記憶部320と、角度依存性情報記憶部330とを含み、角度依存性情報記憶部330には、色分離部180の角度依存性に対応する分光情報が記憶される。このような色分離部180は、実施形態1と同様に、例えばR成分用ダイクロイックミラー120R、G成分用ダイクロイックミラー120Gにより構成される。色分離情報記憶部310は、フラッシュROM等の不揮発性メモリー素子により構成される。なお、色分離部180が、色分離情報記憶部310を含んで構成されていてもよい。
【0142】
そして、図2の色分離部180又は図3のR成分用ダイクロイックミラー120RやG成分用ダイクロイックミラー120Gに代えて、色分離装置300が、投射部100に交換可能に設けられる。この場合、投射部100は、色分離装置300の交換後においても、色分離情報記憶部310が画像調整装置20の面内ムラ補正データ算出部26によってアクセスできるように構成されている。
【0143】
こうすることで、色分離装置300を交換した場合に、分光情報記憶部30に記憶される分光情報を更新する必要がなくなり、交換後の色分離部180に特有の分光情報を予め色分離情報記憶部310に記憶させておくだけでよい。
【0144】
実施形態2における光変調装置400は、光変調部190と、光変調部190の分光透過率に対応した分光情報を記憶する光変調情報記憶部410とを含み、光変調情報記憶部410に記憶される分光情報が、外部に読み出し可能に構成される。このような光変調部190は、実施形態1と同様に、例えばR成分用液晶パネル130Rにより構成される。光変調情報記憶部410は、フラッシュROM等の不揮発性メモリー素子により構成される。なお、光変調部190が、光変調情報記憶部410を含んで構成されていてもよい。
【0145】
そして、図2の光変調部190又は図3のR成分用液晶パネル130Rに代えて、光変調装置400が、投射部100に交換可能に設けられる。この場合、投射部100は、光変調装置400の交換後においても、光変調情報記憶部410が画像調整装置20の面内ムラ補正データ算出部26によってアクセスできるように構成されている。
【0146】
同様に、図示しない光変調装置400は、光変調部190と、光変調部190の分光透過率に対応した分光情報を記憶する光変調情報記憶部410とを含み、光変調情報記憶部410に記憶される分光情報が、外部に読み出し可能に構成される。このような光変調部190は、実施形態1と同様に、例えばG成分用液晶パネル130Gにより構成される。光変調情報記憶部410は、フラッシュROM等の不揮発性メモリー素子により構成される。そして、図2の光変調部190又は図3のG成分用液晶パネル130Gに代えて、光変調装置400が、投射部100に交換可能に設けられる。この場合、投射部100は、光変調装置400の交換後においても、光変調情報記憶部410が画像調整装置20の面内ムラ補正データ算出部26によってアクセスできるように構成されている。
【0147】
また、同様に、図示しない光変調装置400は、光変調部190と、光変調部190の分光透過率に対応した分光情報を記憶する光変調情報記憶部410とを含み、光変調情報記憶部410に記憶される分光情報が、外部に読み出し可能に構成される。このような光変調部190は、実施形態1と同様に、例えばB成分用液晶パネル130Bにより構成される。光変調情報記憶部410は、フラッシュROM等の不揮発性メモリー素子により構成される。そして、図2の光変調部190又は図3のB成分用液晶パネル130Bに代えて、光変調装置400が、投射部100に交換可能に設けられる。この場合、投射部100は、光変調装置400の交換後においても、光変調情報記憶部410が画像調整装置20の面内ムラ補正データ算出部26によってアクセスできるように構成されている。
【0148】
こうすることで、光変調装置400〜400の少なくとも1つを交換した場合に、分光情報記憶部30に記憶される分光情報を更新する必要がなくなり、交換後の光変調部190〜190に特有の分光情報を予め光変調情報記憶部に記憶させておくだけでよい。
【0149】
この場合、図6の光変調情報記憶部410は、光変調情報記憶部410〜410を含むことになる。
【0150】
図20において、光変調装置400〜400のそれぞれは、色分離部180によって分離された色光のうち対応する色成分の色光を、面内ムラ補正部50によって補正された画像信号に基づいて変調し、変調後の光を合成部192に出射する。合成部192は、光変調装置400〜400の光変調部190〜190のそれぞれからの変調後の光を合成し、合成した光を投射レンズ170に出射する。投射レンズ170は、合成部192によって複数の変調光が合成された光を用いて投射画像をスクリーンSCR上に拡大して結像させる。
【0151】
図20に示す構成を有する投射部100もまた、図3の構成を有することができる。また、画像調整装置20の処理例やプロジェクター調整システム10の処理例も実施形態1と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0152】
以上説明したように、実施形態2によれば、プロジェクターPJを構成する光学部品を交換した場合であっても、光学部品を交換後にプロジェクターPJの投射画像を測定することなく面内ムラ補正テーブルを更新できるので、測定の煩わしさを伴うことなく、光学部品の角度依存性に起因する面内ムラ補正を正確に行うことができるようになる。更に、実施形態2によれば、投射部100を構成する各光学部品を交換した場合に、分光情報記憶部30に記憶される分光情報を更新する必要がなくなり、交換後の光学部品に特有の分光情報を予め該光学部品に内蔵された記憶部に記憶させておくだけでよい。
【0153】
〔実施形態3〕
実施形態1又は実施形態2では、面内ムラ補正データ算出部26の機能を画像調整装置20が有していたが、面内ムラ補正データ算出部26の機能をプロジェクターPJが有していてもよい。
【0154】
図21に、本発明に係る実施形態3におけるプロジェクター調整システムの構成例のブロック図を示す。図21において、図1と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。なお、図21では、実施形態2と同様に投射部100を構成する光学部品毎に分光情報を記憶するものとして説明するが、実施形態1と同様に、分光情報記憶部30に投射部100を構成する光学部品の分光情報をすべて記憶させるようにしてもよい。
【0155】
実施形態3におけるプロジェクター調整システム500は、プロジェクターPJ1と、画像生成装置510とを含む。画像生成装置510は、画像信号生成部22を含む。プロジェクターPJ1は、画像処理部(画像処理装置)520と、投射部(画像表示部)100とを含む。画像処理部520は、画像信号入力部42と、面内ムラ補正テーブル記憶部48と、面内ムラ補正部56と、面内ムラ補正データ算出部26とを含む。
【0156】
画像生成装置510において、画像信号生成部22は、コンテンツ画像に対応した画像信号を生成し、該画像信号をプロジェクターPJ1に対して出力する。プロジェクターPJ1では、画像生成装置510からの画像信号に基づいて画像を投射する。この際、プロジェクターPJ1では、投射部100を構成する光学部品の分光情報に基づいて面内ムラ補正データを算出し、該面内ムラ補正データに基づいてプロジェクターPJ1の投射画像の輝度及び色度を調整する制御を行う。なお、画像生成装置510の機能は、例えばパーソナルコンピューター等を用いたソフトウェア処理や専用ハードウェア等によるハードウェア処理により実現される。
【0157】
より具体的には、プロジェクターPJ1においても、投射部100を構成する光学部品毎に分光情報が記憶されると共に該分光情報が読み出し可能に構成されており、プロジェクターPJ1において、実施形態1と同様に面内ムラ補正データ算出部26によって面内ムラ補正データが算出される。そして、プロジェクターPJ1において、算出された面内ムラ補正データを面内ムラ補正テーブル記憶部48において順次面内ムラ補正テーブルとして記憶していく。この面内ムラ補正テーブル記憶部48に記憶された面内ムラ補正テーブルは、面内ムラ補正データ算出部26によって面内ムラ補正データが算出される毎に、そのテーブル内容が更新されるようになっている。面内ムラ補正部50は、画像信号入力部42からの画像信号に対し、面内ムラ補正テーブル記憶部48に記憶された面内ムラ補正テーブルを参照して補正処理を行い、面内ムラを補正した画像信号を生成し、該画像信号を投射部100に対して出力する。
【0158】
以上、本発明に係るプロジェクター、プロジェクター調整システム及びプロジェクター調整方法を上記の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0159】
(1)上記の各実施形態では、プロジェクターの外部に画像調整装置20又は画像生成装置510が設けられていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、プロジェクターが画像調整装置20又は画像生成装置510の機能を内蔵していてもよい。
【0160】
(2)上記の各実施形態では、面内ムラ補正データの基準値を、XYZ表色系の色彩値であるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の表色系の値であってもよい。
【0161】
(3)上記の各実施形態では、色分離部の角度依存性について、面内の中央部以外に面内の右端部と左端部の2カ所の分光情報を有するものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、中央部を除き、1カ所又は3カ所以上の分光情報を持って、それぞれの位置について面内ムラ補正データを算出するようにしてもよい。
【0162】
(4)上記の各実施形態では、色分離部の分光透過率に対応した分光情報を用いる例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、色分離部の分光透過率に代えて、色分離部の分光反射率であってもよい。
【0163】
(5)上記の各実施形態では、光変調部の分光透過率を用いる例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、光変調部の分光透過率に代えて、光変調部の分光反射率であってもよい。
【0164】
(6)上記の各実施形態では、プロジェクターを調整する例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、液晶表示装置、プラズマディスプレイ装置、有機ELディスプレイ装置等の画像を調整する各種の画像調整システムにも適用できる。
【0165】
(7)上記の各実施形態では、光変調部として液晶パネルを用いるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。光変調部として、例えばDLP(Digital Light Processing)(登録商標)、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)等を採用してもよい。
【0166】
(8)上記の各実施形態において、本発明を、プロジェクター、プロジェクター調整システム及びプロジェクター調整方法等として説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明を実現するためのプロジェクターの調整方法の処理手順が記述されたプログラムや、該プログラムが記録された記録媒体であってもよい。
【符号の説明】
【0167】
10,500…プロジェクター調整システム、 20…画像調整装置、
22…画像信号生成部、 26…面内ムラ補正データ算出部、 30…分光情報記憶部、
40,520…画像処理部、 42…画像信号入力部、
48…面内ムラ補正テーブル記憶部、 48…第1の面内ムラ補正テーブル記憶部、
48…第2の面内ムラ補正テーブル記憶部、 50…面内ムラ補正部、
52…加算部、 54…面内ムラ補正処理部、 60…CPU、 62…I/F回路、
64…ROM、 66…RAM、 68…バス、 100…投射部、 110…光源部、
112,114…インテグレーターレンズ、 116…偏光変換素子、
118…重畳レンズ、 120R…R成分用ダイクロイックミラー、
120G…G成分用ダイクロイックミラー、 122,148,150…反射ミラー、
124R…R成分用フィールドレンズ、 124G…G成分用フィールドレンズ、
130R…R成分用液晶パネル、 130G…G成分用液晶パネル、
130B…B成分用液晶パネル、 140…リレー光学系、
142,144,146…リレーレンズ、 160…クロスダイクロイックプリズム、
170…投射レンズ、 180…色分離部、 190〜190…光変調部、
192…合成部、 200…光源装置、 210…光源情報記憶部、
300…色分離装置、 310…色分離情報記憶部、 320…中央部分光情報記憶部、
330…角度依存性情報記憶部、 332…右端部分光情報記憶部、
334…左端部分光情報記憶部、 400〜400…光変調装置、
410,410〜410…光変調情報記憶部、 510…画像生成装置、
PJ,PJ1…プロジェクター、 SCR…スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像信号に基づいて画像を投射するプロジェクターであって、
光源部と、
前記光源部からの光を複数の色光に分離する色分離部と、
各色光を前記画像信号に基づいて変調する光変調部と、
前記光源部からの光の分光分布に対応した分光情報、前記色分離部の分光反射率の角度依存性に基づく角度依存性情報、及び前記光変調部の分光変調率に対応した分光情報を用いて算出された面内ムラ補正データに基づいて、前記画像信号に対して面内ムラ補正処理を行う面内ムラ補正部とを含むことを特徴とするプロジェクター。
【請求項2】
請求項1において、
前記角度依存性情報が、
前記色分離部の前記入射面内の前記複数の位置における分光反射率に対応した分光情報であることを特徴とするプロジェクター。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記面内ムラ補正データが、
前記入射面内の中央部の位置における分光反射率を用いて求められた基準値を基準に算出されることを特徴とするプロジェクター。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記面内ムラ補正データが、第1の面内ムラ補正データと、第2の面内ムラ補正データとからなり、
前記光源部からの光の分光分布に対応した分光情報、前記角度依存性情報、及び前記光変調部の分光変調率に対応した分光情報のうち少なくとも1つが変更されたとき、前記光源部からの光の分光分布に対応した分光情報、前記角度依存性情報、及び前記光変調部の分光変調率に対応した分光情報を用いて前記第1の面内ムラ補正データが更新され、
前記面内ムラ補正部が、
更新後の前記第1の面内ムラ補正データと前記第2の面内ムラ補正データとに基づいて、前記画像信号に対して面内ムラ補正処理を行うことを特徴とするプロジェクター。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記光源部が、
前記光源部からの光の分光分布に対応した分光情報を記憶する光源情報記憶部を含むことを特徴とするプロジェクター。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記色分離部が、
前記角度依存性情報を記憶する色分離情報記憶部を含み、
前記光変調部が、
前記光源部の分光分布に対応した分光情報を記憶する光変調情報記憶部を含むことを特徴とするプロジェクター。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
算出された前記面内ムラ補正データを記憶する面内ムラ補正データ記憶部を含むことを特徴とするプロジェクター。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかにおいて、
前記面内ムラ補正データを算出する面内ムラ補正データ算出部を含むことを特徴とするプロジェクター。
【請求項9】
請求項8において、
前記面内ムラ補正データ算出部が、
所与の色空間上の色彩値として算出された基準値に基づいて、前記面内ムラ補正データを算出することを特徴とするプロジェクター。
【請求項10】
複数の色光を画像信号に基づいて変調して画像を投射するプロジェクターを調整するプロジェクター調整システムであって、
請求項1乃至7のいずれか記載のプロジェクターと、
前記プロジェクターの投射画像を調整する画像調整装置とを含み、
前記画像調整装置は、
前記面内ムラ補正データを算出する面内ムラ補正データ算出部を含むことを特徴とするプロジェクター調整システム。
【請求項11】
光源部と、
前記光源部からの光を複数の色光に分離する色分離部と、
各色光を画像信号に基づいて変調する光変調部とを含むプロジェクターを調整するプロジェクター調整方法であって、
前記光源部からの光の分光分布に対応した分光情報、前記色分離部の分光反射率の角度依存性に基づく角度依存性情報、及び前記光変調部の分光変調率に対応した分光情報を用いて面内ムラ補正データを算出する面内ムラ補正データ算出ステップと、
前記面内ムラ補正データ算出ステップにおいて算出された前記面内ムラ補正データに基づいて、前記画像信号に対して面内ムラ補正処理を行う面内ムラ補正ステップとを含むことを特徴とするプロジェクター調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−230801(P2010−230801A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75936(P2009−75936)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】