説明

プロジェクター

【課題】少ない流量で光学素子の表面全体を効率的に冷却できるプロジェクターを提供する。
【解決手段】プロジェクター1は、光学素子36の表面に沿って冷却流体を流通させる冷却装置4を備える。冷却装置4は、光学素子36における第1端縁側から光学素子36の表面に沿って互いに平行に冷却流体を吐出する3つの第1吐出部S1と、光学素子36における第1端縁とは異なる第2端縁側から光学素子36の表面に沿って互いに平行に冷却流体を吐出する3つの第2吐出部S2と、第1,第2吐出部S1,S2にそれぞれ設けられ、吐出される冷却流体の流量を変更する流量変更部63,73とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクターにおいて、液晶パネルや偏光板等の光学素子の表面に沿って空気を流通させ、当該光学素子を冷却する冷却装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の冷却装置は、光学素子の表面上で第1の方向に沿って空気を流す第1の空冷部と、光学素子の表面上で第1の方向に交差する第2の方向に沿って空気を流す第2の空冷部とを備える。
そして、第1の方向に沿って流れる空気と第2の方向に沿って流れる空気とを衝突させ、当該衝突によって、光学素子の表面に沿って乱流の状態で空気を流通させている。
すなわち、乱流による冷却を利用することで、光学素子の表面に存在する速度境界層(空気の流速の変化が激しい薄い層の領域(表面で流速がゼロ))を薄くして、流通する空気と光学素子との間で熱交換を良好に行わせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−92842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の冷却装置では、光学素子の表面上の光軸が通る位置(中心位置)で空気を衝突させ、当該衝突によって生じた乱流を利用して光学素子を冷却しているため、光学素子の表面全体の広範囲を冷却するためには、空気を高速で、かつ光学素子の表面全体の広範囲に流通させる必要がある。すなわち、多くの流量が必要となる、という問題がある。
【0005】
本発明の目的は、少ない流量で光学素子の表面全体を効率的に冷却できるプロジェクターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプロジェクターは、光学素子の表面に沿って冷却流体を流通させる冷却装置を備えたプロジェクターであって、前記冷却装置は、前記光学素子における第1端縁側から前記光学素子の表面に沿って互いに平行に前記冷却流体を吐出する複数の第1吐出部と、前記光学素子における前記第1端縁とは異なる第2端縁側から前記光学素子の表面に沿って互いに平行に前記冷却流体を吐出する複数の第2吐出部と、前記複数の第1吐出部、及び前記複数の第2吐出部のうち少なくともいずれかに設けられ、吐出される冷却流体の流量を変更する流量変更部とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明では、冷却装置は、上述した複数の第1,第2吐出部を備える。
このことにより、光学素子の表面上において、複数の第1吐出部から吐出された冷却流体と、複数の第2吐出部から吐出された冷却流体とを衝突させ、当該衝突により生じる乱流を利用して、当該衝突位置付近の領域を冷却できる。
そして、冷却装置は、上述した流量変更部を備えるので、流量変更部を適宜、動作させれば、光学素子の表面上での冷却流体の衝突位置を変更できる。
すなわち、光学素子の表面を仮想的に複数の領域に分割した場合に、流量変更部を適宜、動作させて冷却流体の衝突位置を変更すれば、上記複数の領域のうち少なくとも1つの領域毎に冷却流体の衝突を順次、生じさせ、乱流を利用して順次、冷却できる。そして、上記複数の領域のうち少なくとも1つの領域毎に乱流を利用して冷却することで、光学素子の表面全体を冷却できる。
以上のように光学素子の表面全体を冷却することで、従来のように光学素子の表面上の光軸が通る位置での冷却流体の衝突により生じる乱流を利用して光学素子の表面全体を冷却する構成と比較して、流量を少なくすることができる。
【0008】
本発明のプロジェクターでは、前記複数の第1吐出部は、前記光学素子に入射する光束の光軸に沿う方向から見て、前記光学素子を、前記光軸が通る位置を含む中心側領域と前記中心側領域を除く外周側領域とに仮想的に分割した場合に、前記中心側領域に向けて前記冷却流体を吐出する第1中心吐出部と、前記第1中心吐出部を挟む両側にそれぞれ設けられ、前記外周側領域に向けて前記冷却流体を吐出する第1外周吐出部とを備え、前記複数の第2吐出部は、前記中心側領域に向けて前記冷却流体を吐出する第2中心吐出部と、前記第2中心吐出部を挟む両側にそれぞれ設けられ、前記外周側領域に向けて前記冷却流体を吐出する第2外周吐出部とを備えることが好ましい。
【0009】
ところで、プロジェクターでは、光学素子に光束を照射する場合、光学素子の表面全体を均一に照射することはできず、光学素子の表面に照度分布が生じるものである。すなわち、光学素子の表面には、高い照度の領域の温度が高く、低い照度の領域の温度が低くなり、照度分布に応じて温度分布が生じることとなる。
そして、光学素子の表面における照度分布としては、通常、光束の中心である光軸が通る位置の照度が高く、光軸から離れるにしたがって照度が低くなるものである。すなわち、光学素子の表面における温度分布も照度分布に対応し、光軸が通る位置の温度が高く、光軸から離れるにしたがって温度が低くなるものである。
【0010】
本発明では、複数の第1,第2吐出部は、上述した第1,第2中心吐出部を備える。
このことにより、第1,第2中心吐出部から吐出された冷却流体を衝突させ、当該衝突により生じる乱流を利用して、中心側領域を冷却できる。すなわち、第1,第2中心吐出部を設けることで、光学素子の表面において、外周側領域に対して温度の高い中心側領域で冷却流体の衝突を確実に生じさせ、当該衝突により生じる乱流を利用して中心側領域を確実に冷却できる。
また、複数の第1吐出部は、第1中心吐出部を挟む両側にそれぞれ設けられた第1外周吐出部を備える。複数の第2吐出部も同様の第2外周吐出部を備える。
このことにより、第1,第2中心吐出部の他、第1,第2外周吐出部から吐出された冷却流体により、中心側領域の他、外周側領域でも冷却流体の衝突を順次、生じさせ、光学素子の表面全体を効果的に冷却できる。
【0011】
本発明のプロジェクターでは、前記流量変更部の動作を制御する制御装置を備え、前記第1端縁及び前記第2端縁は、互いに交差する端縁であり、前記制御装置は、前記流量変更部の動作を制御し、所定の設定時間内に、前記複数の第1吐出部及び前記複数の第2吐出部からの吐出方向の各交差位置の全てで前記冷却流体を衝突させることが好ましい。
本発明では、第1,第2端縁は、光学素子における互いに交差する端縁である。
このことにより、流量変更部の構成として、当該流量変更部が設置された吐出部から冷却流体を吐出させる状態、または吐出させない状態の2つの状態に切り替える構成を採用することができる。
すなわち、流量変更部を上述したように構成しても、制御装置は、流量変更部を上述した2つの状態のいずれかに設定することで、所定の設定時間内に、複数の第1,第2吐出部からの吐出方向の各交差位置の全てで冷却流体を衝突させることができる。
したがって、流量変更部の構成、及び制御装置の制御構造を簡素化しつつ、光学素子の表面全体を効果的に冷却できる。
また、制御装置が上記設定時間内での処理を繰り返し実施すれば、光学素子の表面全体を継続して効果的に冷却できる。
【0012】
本発明のプロジェクターでは、前記制御装置は、前記設定時間内で、前記中心側領域での前記冷却流体の衝突時間が前記外周側領域での前記冷却流体の衝突時間よりも長くなるように、前記流量変更部の動作を制御することが好ましい。
本発明では、制御装置が上述したように流量変更部の動作を制御するので、所定の設定時間内で、外周側領域よりも温度の高い中心側領域を重点的に冷却できる。
すなわち、光学素子の表面における温度分布に対応させて、光学素子の表面全体を効果的に冷却できる。
【0013】
本発明のプロジェクターでは、前記第1吐出部及び前記第2吐出部は、3つずつ設けられ、前記流量変更部は、3つの前記第1吐出部、及び3つの前記第2吐出部にそれぞれ設けられ、前記制御装置は、前記設定時間内で、2つの前記第1吐出部及び2つの前記第2吐出部から吐出された冷却流体を同時に衝突させる第1状態と、1つの前記第1吐出部及び1つの前記第2吐出部から吐出された冷却流体を衝突させる第2状態とに切り替えることが好ましい。
【0014】
ところで、制御装置による処理として、所定の設定時間内に一貫して、1つずつの第1,第2吐出部から吐出された冷却流体を衝突させるように流量変更部を制御した場合には、以下の問題が生じてしまう。
すなわち、3つずつの第1,第2吐出部からの吐出方向の9つの各交差位置のうち、1つずつの交差位置で冷却流体の衝突を順次、生じさせることとなるため、全ての交差位置で冷却流体の衝突を終えるまでに多くの時間が掛かってしまう。言い換えれば、上記設定時間が長くなってしまう。
【0015】
本発明では、制御装置が上述したように流量変更部の動作を制御するので、3つずつの第1,第2吐出部からの吐出方向の9つの各交差位置のうち、2つの交差位置で冷却流体の衝突を同時に生じさせることができる。
このため、設定時間内に一貫して1つずつの第1,第2吐出部から吐出された冷却流体を衝突させるように流量変更部を制御する場合と比較して、全ての交差位置で冷却流体の衝突を終えるまでの時間(設定時間)を短くすることができる。
したがって、制御装置が上記設定時間内での処理を繰り返し実施する際、ある周期から次の周期に移行するまでの光学素子の温度上昇を抑制し、光学素子の温度を低い状態で良好に維持できる。
【0016】
本発明のプロジェクターでは、前記第1吐出部及び前記第2吐出部は、3つずつ設けられ、前記流量変更部は、3つの前記第1吐出部のうち、前記第2端縁に最も離間した前記第1端縁側から前記冷却流体を吐出する第1吐出部を除く2つの前記第1吐出部にそれぞれ設けられた2つの第1流量変更部と、3つの前記第2吐出部のうち、前記第1端縁に最も離間した前記第2端縁側から前記冷却流体を吐出する第2吐出部を除く2つの前記第2吐出部にそれぞれ設けられた2つの第2流量変更部とを備えることが好ましい。
【0017】
本発明では、流量変更部は、上述した2つずつの第1,第2流量変更部を備える。
このことにより、制御装置が2つずつの第1,第2流量変更部の動作を適宜、制御することで、3つずつの第1,第2吐出部からの吐出方向の9つの各交差位置のうち、3つの交差位置で冷却流体の衝突を同時に生じさせたり、2つの交差位置で冷却流体の衝突を同時に生じさせたりすることができる。
このため、設定時間内に一貫して1つずつの第1,第2吐出部から吐出された冷却流体を衝突させるように流量変更部を制御する場合と比較して、全ての交差位置で冷却流体の衝突を終えるまでの時間(設定時間)を短くすることができる。
したがって、制御装置が上記設定時間内での処理を繰り返し実施する際、ある周期から次の周期に移行するまでの光学素子の温度上昇を抑制し、光学素子の温度を低い状態で良好に維持できる。
また、流量変更部の数を低減できるため、冷却装置の構造の簡素化が図れるとともに、制御装置による処理負荷も軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態におけるプロジェクターの概略構成を示す図。
【図2】第1実施形態における冷却装置の構成を模式的に示す図。
【図3】第1実施形態における制御装置の処理による空気の流れの一例を示す図。
【図4】第1実施形態における制御装置による処理を説明するための図。
【図5】第2実施形態における冷却装置の構成を模式的に示す図。
【図6】第2実施形態における制御装置による処理を説明するための図。
【図7】各実施形態の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
〔プロジェクターの構成〕
図1は、プロジェクター1の概略構成を示す図である。
プロジェクター1は、画像を投射してスクリーン(図示略)上に投影画像を表示する。
そして、このプロジェクター1は、図1に示すように、外装筐体2内部に収納される光学ユニット3及び冷却装置4(図2参照)を備える。
【0020】
〔光学ユニットの構成〕
光学ユニット3は、図1に示すように、発光管311及びリフレクター312を有する光源装置31と、レンズアレイ321,322、偏光変換素子323、及び重畳レンズ324を有する照明光学装置32と、ダイクロイックミラー331,332、及び反射ミラー333を有する色分離光学装置33と、入射側レンズ341、リレーレンズ343、及び反射ミラー342,344を有するリレー光学装置34と、3つの入射側偏光板35と、光変調装置(光学素子)としての3つの液晶パネル36と、3つの出射側偏光板37と、色合成光学装置としてのクロスダイクロイックプリズム38と、投射光学装置としての投射レンズ39とを備える。
そして、光学ユニット3では、上述した構成により、光源装置31から出射され照明光学装置32を介した光束は、色分離光学装置33にて赤(R)、緑(G)、青(B)の3つの色光に分離される。また、分離された各色光は、各液晶パネル36にてそれぞれ変調される。変調された各色光は、プリズム38にて合成されて画像となり、投射レンズ39にてスクリーンに投射される。
【0021】
〔冷却装置の構成〕
図2は、冷却装置4の構成を模式的に示す図である。具体的に、図2は、光軸Axに沿って液晶パネル36の光入射側から見た図である。
なお、図2では、説明の便宜上、後述する左,下側ダクト部材62,72の一部を省略及び破断している。
また、図2では、光軸Axに沿う方向から見て、液晶パネル36を9つの領域Arに仮想的に分割(図2中、1点鎖線にて分割)している。さらに、各領域Arを識別し易くするために、各領域Ar内に「A」〜「I」の文字を記載している。
ここで、「E」の文字が付された領域Arは、液晶パネル36の表面(光入射面)における光軸Axが通る位置を含む中心側領域ArOである。そして、「A」〜「D」、「F」〜「I」の文字が付された領域Arは、中心側領域ArOを除く外周側領域ArEである。
さらに、図2では、空気の流れを矢印Fで示している。
また、図2では、後述する左,下側流量変更部63,73を閉塞位置に位置付けた状態を示している。
【0022】
冷却装置4は、冷却流体を液晶パネル36の表面(光入射面)に沿って流通させ、液晶パネル36を冷却する。
本実施形態では、冷却流体として、空気を利用している。
そして、冷却装置4は、図2に示すように、冷却装置本体5Aと、駆動装置5Bと、制御装置5Cとを備える。
なお、冷却装置4は、R,G,B色光側に配設された各液晶パネル36に対応させてそれぞれ設けられているものである。そして、各冷却装置4は、それぞれ同様の構成を有しているため、以下では、1つの冷却装置4のみを説明する。
【0023】
〔冷却装置本体の構成〕
冷却装置本体5Aは、図2に示すように、光入射側から見て、液晶パネル36における左端縁(第1端縁)側から空気を吐出する左側冷却装置6と、液晶パネル36における左端縁に交差する下端縁(第2端縁)側から空気を吐出する下側冷却装置7とを備える。
【0024】
〔左側冷却装置の構成〕
左側冷却装置6は、図2に示すように、左側冷却ファン61と、左側ダクト62と、3つの左側流量変更部63とを備える。
左側ダクト62は、筒体で構成され、一端が左側冷却ファン61に接続し、他端が液晶パネル36における光入射側から見て左端縁に対向し、左側冷却ファン61からの空気を液晶パネル36の左側から吐出する。
なお、左側ダクト62の幅寸法(図2中、上下方向の長さ寸法)は、液晶パネル36における左端縁(短辺)の長さ寸法(図2中、上下方向の長さ寸法)と略同一となるように設定されている。
【0025】
また、左側ダクト62内部において、他端側には、図2に示すように、当該他端側の空間を3つの空間Sp1〜Sp3に区画する第1,第2区画部621,622が鉛直方向(図2中、上下方向)に並設されている。
第1,第2区画部621,622は、光軸Axに沿う方向から見て、水平方向(図2中、左右方向)に延びる板状に形成されている。
すなわち、左側冷却ファン61から左側ダクト62に導入された空気は、他端側において、第1、第2区画部621,622にて3つに分岐される。
【0026】
そして、上側の空間Sp1に分岐された空気は、「A」〜「C」の文字が付された外周側領域ArEに向けて吐出される。
また、中央の空間Sp2に分岐された空気は、「E」の文字が付された中心側領域ArOに向けて吐出される。
さらに、下側の空間Sp3に分岐された空気は、「G」〜「I」の文字が付された外周側領域ArEに向けて吐出される。
なお、各空間Sp1〜Sp3に分岐された空気は、互いに平行に吐出されるものである。
すなわち、中央の空間Sp2は、本発明に係る第1中心吐出部に相当する。また、上,下側の空間Sp1,Sp3は、中央の空間Sp2を挟んだ両側に設けられ、本発明に係る第1外周吐出部に相当する。
また、各空間Sp1〜Sp3は、本発明に係る第1吐出部S1(図2)に相当する。
【0027】
以下では、説明の便宜上、空間Sp1を上側吐出部Sp1と記載し、空間Sp2を第1中心吐出部Sp2と記載し、空間Sp3を下側吐出部Sp3と記載する。
なお、本実施形態では、各吐出部Sp1〜Sp3の各流路断面積等を適宜、調整することで、第1中心吐出部Sp2から吐出された空気の流速は、上,下側吐出部Sp1,Sp3から吐出された空気の流速よりも大きくなるように設定されている。
【0028】
3つの左側流量変更部63は、各吐出部Sp1〜Sp3内部にそれぞれ回動可能に設けられ、制御装置5Cによる制御の下、回動することで、各吐出部Sp1〜Sp3の流路をそれぞれ開放、または閉塞する。
すなわち、3つの左側流量変更部63は、各吐出部Sp1〜Sp3から空気を吐出させる状態、または吐出させない状態のいずれかに設定する。
以下では、説明の便宜上、上,下側吐出部Sp1,Sp3内部にそれぞれ設けられた左側流量変更部63を上,下側切替部631,633(図2)と記載し、第1中心吐出部Sp2内部に設けられた左側流量変更部63を第1中心切替部632(図2)と記載する。
【0029】
〔下側冷却装置の構成〕
下側冷却装置7は、左側冷却装置6と同様に、図2に示すように、下側冷却ファン71と、下側ダクト72と、3つの下側流量変更部73とを備える。
下側ダクト72は、筒体で構成され、一端が下側冷却ファン71に接続し、他端が液晶パネル36における下端縁に対向し、下側冷却ファン71からの空気を液晶パネル36の下側から吐出する。
なお、下側ダクト72は、幅寸法(図2中、左右方向の長さ寸法)が液晶パネル36における下端縁(長辺)の長さ寸法(図2中、左右方向の長さ寸法)と略同一となるように、左側ダクト62を大きくした形状に相当する。
このため、下側ダクト72の他端側にも、図2に示すように、第1,第2区画部621,622及び空間Sp1〜Sp3に対応した第1,第2区画部721,722及び空間Sp4〜Sp6が設けられている。
【0030】
すなわち、下側冷却ファン71から下側ダクト72に導入された空気は、他端側において、第1,第2区画部721,722にて3つに分岐される。
そして、左側の空間Sp4に分岐された空気は、「G」、「D」、「A」の文字が付された外周側領域ArEに向けて吐出される。
また、中央の空間Sp5に分岐された空気は、「E」の文字が付された中心側領域ArOに向けて吐出される。
さらに、右側の空間Sp6に分岐された空気は、「I」、「F」、「C」の文字が付された外周側領域ArEに向けて吐出される。
なお、各空間Sp4〜Sp6に分岐された空気は、左側冷却装置6と同様に、互いに平行に吐出されるものである。
すなわち、中央の空間Sp5は、本発明に係る第2中心吐出部に相当する。また、左,右側の空間Sp4,Sp6は、中央の空間Sp5を挟んだ両側に設けられ、本発明に係る第2外周吐出部に相当する。
また、各空間Sp4〜Sp6は、本発明に係る第2吐出部S2(図2)に相当する。
【0031】
以下では、説明の便宜上、空間Sp4を左側吐出部Sp4と記載し、空間Sp5を第2中心吐出部Sp5と記載し、空間Sp6を右側吐出部Sp6と記載する。
なお、第2中心吐出部Sp5から吐出された空気の流速は、左側冷却装置6と同様に、左,右側吐出部Sp4,Sp6から吐出された空気の流速よりも大きくなるように設定されている。
【0032】
3つの下側流量変更部73は、左側流量変更部63と同様の機能を有するものであり、各吐出部Sp4〜Sp6内部にそれぞれ設けられている。
以下では、説明の便宜上、左,右側吐出部Sp4,Sp6内部にそれぞれ設けられた下側流量変更部73を左,右側切替部734,736(図2)と記載し、第2中心吐出部Sp5内部に設けられた下側流量変更部73を第2中心切替部735(図2)と記載する。
【0033】
〔制御装置の構成〕
図3は、制御装置5Cの処理による空気の流れの一例を示す図である。
制御装置5Cは、6つの切替部631〜633,734〜736毎に設けられたモーター等の駆動装置5Bを介して、各切替部631〜633,734〜736の動作(流路の開閉動作)を独立して制御する。
例えば、制御装置5Cは、図3に示すように、第1,第2中心切替部632,735の2つを開放位置に位置付け、他の切替部631,633,734,736を閉塞位置に位置付ける。
各切替部631〜633,734〜736が上述した位置に位置付けられた場合には、各吐出部Sp1〜Sp6のうち、第1,第2中心吐出部Sp2,Sp5からのみ空気が吐出される。他の吐出部Sp1,Sp3,Sp4,Sp6からの空気は、各切替部631,633,734,736にて遮断される。
そして、第1,第2中心吐出部Sp2,Sp5から吐出された空気は、第1,第2中心吐出部Sp2,Sp5からの吐出方向の交差位置、すなわち、「E」の文字が付された中心側領域ArO(光軸Ax上)にて衝突することとなる。
【0034】
図4は、制御装置5Cによる処理を説明するための図である。具体的に、図4(A)は、予め設定された第1の設定時間TC1内での左,下側流量変更部63,73の駆動のタイミングチャートである。図4(B)は、図4(A)に示すタイミングで左,下側流量変更部63,73を制御した際に、第1の設定時間TC1内において、9つの領域Arで生じた空気の衝突発生回数を示している。
次に、上述した制御装置5Cによる処理について説明する。
先ず、制御装置5Cは、第1の設定時間TC1を6等分した第1〜第6期間T1〜T6のうち第1期間T1において、上,左側切替部631,734を開放位置に位置付け(図4(A)中、「ON」の状態)、他の切替部632,633,735,736を閉塞位置に位置付ける(図4(A)中、「OFF」の状態)。
そして、第1期間T1では、上,左側吐出部Sp1,Sp4から吐出された空気により、上,左側吐出部Sp1,Sp4からの吐出方向の交差位置、すなわち、「A」の文字が付された外周側領域ArEにて空気の衝突が生じる。
【0035】
次に、制御装置5Cは、第2期間T2において、上側切替部631、第1中心切替部632、左側切替部734、及び第2中心切替部735を開放位置に位置付け、他の切替部633,736を閉塞位置に位置付ける。
そして、第2期間T2では、第1中心吐出部Sp2及び左側吐出部Sp4から吐出された空気により、各吐出部Sp2,Sp4からの吐出方向の交差位置、すなわち、「D」の文字が付された外周側領域ArEにて空気の衝突が生じる。
また、上側吐出部Sp1及び第2中心吐出部Sp5から吐出された空気により、各吐出部Sp1,Sp5からの吐出方向の交差位置、すなわち、「B」の文字が付された外周側領域ArEにて空気の衝突が生じる。
【0036】
次に、制御装置5Cは、第3期間T3において、上側切替部631、第1中心切替部632、第2中心切替部735、及び右側切替部736を開放位置に位置付け、他の切替部633,734を閉塞位置に位置付ける。
そして、第3期間T3では、第1,第2中心吐出部Sp2,Sp5から吐出された空気により、「E」の文字が付された中心側領域ArOにて空気の衝突が生じる。
また、上,右側吐出部Sp1,Sp6から吐出された空気により、上,右側吐出部Sp1,Sp6からの吐出方向の交差位置、すなわち、「C」の文字が付された外周側領域ArEにて空気の衝突が生じる。
【0037】
次に、制御装置5Cは、第4期間T4において、第1中心切替部632、下側切替部633、左側切替部734、及び第2中心切替部735を開放位置に位置付け、他の切替部631,736を閉塞位置に位置付ける。
そして、第4期間T4では、下,左側吐出部Sp3,Sp4から吐出された空気により、下,左側吐出部Sp3,Sp4からの吐出方向の交差位置、すなわち、「G」の文字が付された外周側領域ArEにて空気の衝突が生じる。
また、第1,第2中心吐出部Sp2,Sp5から吐出された空気により、「E」の文字が付された中心側領域ArOにて空気の衝突が生じる。
【0038】
次に、制御装置5Cは、第5期間T5において、第1中心切替部632、下側切替部633、第2中心切替部735、及び右側切替部736を開放位置に位置付け、他の切替部631,734を閉塞位置に位置付ける。
そして、第5期間T5では、下側吐出部Sp3及び第2中心吐出部Sp5から吐出された空気により、各吐出部Sp3,Sp5からの吐出方向の交差位置、すなわち、「H」の文字が付された外周側領域ArEにて空気の衝突が生じる。
また、第1中心吐出部Sp2及び右側吐出部Sp6から吐出された空気により、各吐出部Sp2,Sp6からの吐出方向の交差位置、すなわち、「F」の文字が付された外周側領域ArEにて空気の衝突が生じる。
【0039】
次に、制御装置5Cは、第6期間T6において、下,右側切替部633,736を開放位置に位置付け、他の切替部631,632,734,735を閉塞位置に位置付ける。
そして、第6期間T6では、下,右側吐出部Sp3,Sp6から吐出された空気により、各吐出部Sp3,Sp6からの吐出方向の交差位置、すなわち、「I」の文字が付された外周側領域ArEにて空気の衝突が生じる。
【0040】
以上のように、制御装置5Cは、第1の設定時間TC1内において、各吐出部Sp1〜Sp6からの吐出方向の各交差位置の全てで空気の衝突を生じさせる。
具体的には、制御装置5Cは、図4(B)に示すように、「A」〜「D」、及び「F」〜「I」の文字が付された各外周側領域ArEにて空気の衝突発生回数が1回、「E」の文字が付された中心側領域ArOにて空気の衝突発生回数が2回となるように、各切替部631〜633,734〜736の動作を制御する。
すなわち、制御装置5Cは、第1の設定時間TC1内において、中心側領域ArOでの空気の衝突時間が他の各外周側領域ArEでの空気の衝突時間よりも長くなるように、各切替部631〜633,734〜736の動作を制御する。
また、制御装置5Cは、第1の設定時間TC1内で、2つずつの第1,第2吐出部S1,S2から吐出された空気を同時に衝突させる第1状態(各期間T2〜T5)と、1つずつの第1,第2吐出部S1,S2から吐出された空気を衝突させる第2状態(各期間T1,T6)とに切り替える。
そして、制御装置5Cは、上述した第1の設定時間TC1での処理を繰り返し実施する。
【0041】
上述した第1実施形態によれば、以下の効果がある。
本実施形態では、冷却装置4は、3つずつの第1,第2吐出部S1,S2を備える。
このことにより、液晶パネル36の表面(光入射面)上において、各第1吐出部S1から吐出された空気と、各第2吐出部S2から吐出された空気とを衝突させ、当該衝突により生じる乱流を利用して、当該衝突位置付近の領域Arを冷却できる。
そして、冷却装置4は、左,下側流量変更部63,73を備えるので、左,下側流量変更部63,73を適宜、動作させることで、液晶パネル36の表面上での空気の衝突位置を変更できる。
【0042】
すなわち、左,下側流量変更部63,73を適宜、動作させて空気の衝突位置を変更すれば、9つの領域Arのうち少なくとも1つの領域Ar毎に空気の衝突を順次、生じさせ、乱流を利用して順次、冷却できる。そして、少なくとも1つの領域Ar毎に乱流を利用して冷却することで、液晶パネル36の表面全体を冷却できる。
以上のように、液晶パネル36の表面全体を冷却することで、従来のように光学素子の表面上の光軸が通る位置での空気の衝突により生じる乱流を利用して光学素子の表面全体を冷却する構成と比較して、流量を少なくすることができる。
また、少ない流量で液晶パネル36の表面全体を冷却できるので、サイズの大きな冷却ファンを必要とせず、小型の冷却ファン61,71を用いることができる。したがって、プロジェクター1の小型化が図れるとともに、冷却ファン61,71の駆動時の騒音も低減でき、プロジェクター1の静粛性を十分に確保できる。
【0043】
また、第1,第2吐出部S1,S2は、第1,第2中心吐出部Sp2,Sp5を備える。
このことにより、第1,第2中心吐出部Sp2,Sp5から吐出された空気を衝突させ、当該衝突により生じる乱流を利用して、中心側領域ArOを冷却できる。すなわち、第1,第2中心吐出部Sp2,Sp5を設けることで、液晶パネル36の表面において、外周側領域ArEに対して温度の高い中心側領域ArOで空気の衝突を確実に生じさせ、当該衝突により生じる乱流を利用して中心側領域ArOを確実に冷却できる。
また、第1吐出部S1は、第1中心吐出部Sp2を挟む両側にそれぞれ設けられた上,下側吐出部Sp1,Sp3を備える。第2吐出部S2も同様の左,右側吐出部Sp4,Sp6を備える。
このことにより、第1,第2中心吐出部Sp2,Sp5の他、各吐出部Sp1,Sp3,Sp4,Sp6から吐出された空気により、中心側領域ArOの他、各外周側領域ArEでも空気の衝突を順次、生じさせ、液晶パネル36の表面全体を効果的に冷却できる。
【0044】
さらに、液晶パネル36の4つの端縁において、左,下側冷却装置6,7が配設される各端縁は、互いに交差する端縁である。
このことにより、左,下側流量変更部63,73の構成として、第1,第2吐出部S1,S2から空気を吐出させる状態(開放位置に位置付けた状態)、または吐出させない状態(閉塞位置に位置付けた状態)の2つの状態に切り替える構成を採用することができる。
すなわち、左,下側流量変更部63,73を上述したように構成しても、制御装置5Cは、左,下側流量変更部63,73を開放位置または閉塞位置のいずれかに位置付けることで、第1の設定時間TC1内に、第1,第2吐出部S1,S2からの吐出方向の各交差位置の全て(9つの領域Arの全て)で空気を衝突させることができる。
したがって、左,下側流量変更部63,73の構成、及び制御装置5Cの制御構造を簡素化しつつ、液晶パネル36の表面全体を効果的に冷却できる。
また、制御装置5Cが第1の設定時間TC1内での処理を繰り返し実施することで、液晶パネル36の表面全体を継続して効果的に冷却できる。
【0045】
また、制御装置5Cは、第1の設定時間TC1内において、中心側領域ArOでの空気の衝突時間が他の各外周側領域ArEでの空気の衝突時間よりも長くなるように、左,下側流量変更部63,73の動作を制御する。
このことにより、第1の設定時間TC1内で、外周側領域ArEよりも温度の高い中心側領域ArOを重点的に冷却できる。
すなわち、液晶パネル36の表面における温度分布に対応させて、液晶パネル36の表面全体を効果的に冷却できる。
以上のように、液晶パネル36の表面全体を効果的に冷却できるため、液晶パネル36にて形成される画像に色ムラ等が生じることがなく、投影画像の画質を良好に維持できる。
また、第1中心吐出部Sp2から吐出された空気の流速は、上,下側吐出部Sp1,Sp3から吐出された空気の流速よりも大きくなるように設定されている。同様に、第2中心吐出部Sp5から吐出された空気の流速も、左,右側吐出部Sp4,Sp6から吐出された空気の流速よりも大きくなるように設定されている。
したがって、上述した衝突時間に加えて、流速を上述したように設定することで、中心側領域ArOをさらに効果的に冷却できる。
【0046】
さらに、本実施形態では、制御装置5Cは、第1の設定時間TC1内で、2つずつの第1,第2吐出部S1,S2から吐出された空気を衝突させる第1状態(各期間T2〜T5)と、1つずつの第1,第2吐出部S1,S2から吐出された空気を衝突させる第2状態(各期間T1,T6)に切り替える。
このことにより、9つの領域Arのうち、2つの領域Arで空気の衝突を同時に生じさせることができる。
このため、全ての領域Arで空気の衝突を終えるまでの時間(第1の設定時間TC1)を短くすることができる。
したがって、制御装置5Cが第1の設定時間TC1内での処理を繰り返し実施する際、ある周期から次の周期に移行するまでの液晶パネル36の温度上昇を抑制し、液晶パネル36の温度を低い状態で良好に維持できる。
【0047】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
以下の説明では、前記第1実施形態と同様の構成及び同一部材には同一の符号を付して、その詳細な説明は省略または簡略化する。
図5は、第2実施形態における冷却装置4の構成を模式的に示す図である。具体的に、図5は、図2に対応した図である。
前記第1実施形態では、各吐出部Sp1〜Sp6内部にそれぞれ切替部631〜633,734〜736が設けられていた。
これに対して、第2実施形態では、上,右側吐出部Sp1,Sp6内部に設けられた上,右側切替部631,736が省略されている。
すなわち、3つの第1吐出部S1のうち、下端縁に最も離間した左端縁側から空気を吐出する上側吐出部Sp1を除く2つの吐出部Sp2,Sp3と、3つの第2吐出部S2のうち、左端縁に最も離間した下端縁側から空気を吐出する右側吐出部Sp6を除く2つの吐出部Sp4,Sp5とに切替部632,633,734,735が設けられている。
そして、第1中心切替部632及び下側切替部633が本発明に係る第1流量変更部630(図5)に相当し、左側切替部734及び第2中心切替部735が本発明に係る第2流量変更部730(図5)に相当する。
すなわち、第2実施形態では、常時、上,右側吐出部Sp1,Sp6から空気が吐出される状態となっている。
また、第2実施形態の制御装置5Cは、上,右側切替部631,736が省略されたことに伴い、前記第1実施形態とは異なる処理を実施する。
【0048】
図6は、第2実施形態における制御装置5Cによる処理を説明するための図である。具体的に、図6(A)は図4(A)に対応した図であり、図6(B)は図4(B)に対応した図である。
なお、上述したように第2実施形態では上,右側切替部631,736が省略されているが、図6(A)では、説明の便宜上、上,右側切替部631,736が常時、「ON」の状態に設定されているものとしている。
先ず、制御装置5Cは、第1の設定時間TC1よりも短い時間である第2の設定時間TC2を5等分した第1〜第5期間T1〜T5(前記第1実施形態で説明した各期間T1〜T5と同一の期間)のうち第1期間T1において、全ての切替部632,633,734,735を開放状態に位置付ける。
そして、第1期間T1では、下,左側吐出部Sp3,Sp4から吐出された空気により、「G」の文字が付された外周側領域ArEにて空気の衝突が生じる。
また、第1,第2中心吐出部Sp2,Sp5から吐出された空気により、「E」の文字が付された中心側領域ArOにて空気の衝突が生じる。
さらに、上,右側吐出部Sp1,Sp6から吐出された空気により、「C」の文字が付された外周側領域ArEにて空気の衝突が生じる。
【0049】
次に、制御装置5Cは、第2期間T2において、第1中心切替部632、下側切替部633、及び第2中心切替部735を開放位置に位置付け、他の左側切替部734を閉塞位置に位置付ける。
そして、第2期間T2では、下側吐出部Sp3及び第2中心吐出部Sp5から吐出された空気により、「H」の文字が付された外周側領域ArEにて空気の衝突が生じる。
また、第1中心吐出部Sp2及び右側吐出部Sp6から吐出された空気により、「F」の文字が付された外周側領域ArEにて空気の衝突が生じる。
なお、上側吐出部Sp1から吐出された空気は、「A」の文字が付された外周側領域ArE、「B」の文字が付された外周側領域ArE、及び「C」の文字が付された外周側領域ArEの順に層流(乱れを含まない流れ)の状態で流通する。
【0050】
次に、制御装置5Cは、第3期間T3において、第1中心切替部632、左側切替部734、及び第2中心切替部735を開放位置に位置付け、他の下側切替部633を閉塞位置に位置付ける。
そして、第3期間T3では、第1中心吐出部Sp2及び左側吐出部Sp4から吐出された空気により、「D」の文字が付された外周側領域ArEにて空気の衝突が生じる。
また、上側吐出部Sp1及び第2中心吐出部Sp5から吐出された空気により、「B」の文字が付された外周側領域ArEにて空気の衝突が生じる。
なお、右側吐出部Sp6から吐出された空気は、「I」の文字が付された外周側領域ArE、「F」の文字が付された外周側領域ArE、及び「C」の文字が付された外周側領域ArEの順に層流の状態で流通する。
【0051】
次に、制御装置5Cは、第4期間T4において、左側切替部734及び第2中心切替部735を開放位置に位置付け、他の切替部632,633を閉塞位置に位置付ける。
そして、第4期間T4では、上,左側吐出部Sp1,Sp4から吐出された空気により、「A」の文字が付された外周側領域ArEにて空気の衝突が生じる。
なお、第2中心吐出部Sp5から吐出された空気は、「H」の文字が付された外周側領域ArE、「E」の文字が付された外周側領域ArE、及び「B」の文字が付された外周側領域ArEの順に層流の状態で流通する。
また、右側吐出部Sp6から吐出された空気は、「I」の文字が付された外周側領域ArE、「F」の文字が付された外周側領域ArE、及び「C」の文字が付された外周側領域ArEの順に層流の状態で流通する。
【0052】
次に、制御装置5Cは、第5期間T5において、第1中心切替部632及び下側切替部633を開放位置に位置付け、他の切替部734,735を閉塞位置に位置付ける。
そして、第5期間T5では、下,右側吐出部Sp3,Sp6から吐出された空気により、「I」の文字が付された外周側領域ArEにて空気の衝突が生じる。
なお、上側吐出部Sp1から吐出された空気は、「A」の文字が付された外周側領域ArE、「B」の文字が付された外周側領域ArE、及び「C」の文字が付された外周側領域ArEの順に層流の状態で流通する。
また、第1中心吐出部Sp2から吐出された空気は、「D」の文字が付された外周側領域ArE、「E」の文字が付された外周側領域ArE、及び「F」の文字が付された外周側領域ArEの順に層流の状態で流通する。
【0053】
以上のように、制御装置5Cは、前記第1実施形態と同様に、第2の設定時間TC2内において、各吐出部Sp1〜Sp6からの吐出方向の各交差位置の全てで空気の衝突を生じさせる。
具体的には、制御装置5Cは、図6(B)に示すように、「A」〜「I」の文字が付された各領域ArO,ArEにて空気の衝突発生回数が1回となるように、各切替部632,633,734,735の動作を制御する。
そして、制御装置5Cは、上述した第2の設定時間TC2での処理を繰り返し実施する。
【0054】
上述した第2実施形態によれば、前記第1実施形態と同様の効果の他、以下の効果がある。
本実施形態では、冷却装置4は、2つずつの第1,第2流量変更部630,730を備える。
このことにより、制御装置5Cが2つずつの第1,第2流量変更部630,730の動作を適宜、制御することで、9つの領域Arのうち、3つの領域Arで空気の衝突を同時に生じさせたり、2つの領域Arで空気の衝突を同時に生じさせたりすることができる。
このため、全ての領域Arで空気の衝突を終えるまでの時間(第2の設定時間TC2)を短くすることができる。
したがって、制御装置5Cが第2の設定時間TC2内での処理を繰り返し実施する際、ある周期から次の周期に移行するまでの液晶パネル36の温度上昇を抑制し、液晶パネル36の温度を低い状態で良好に維持できる。
また、左,下側流量変更部63,73の数を低減できるため、冷却装置4の構造の簡素化が図れるとともに、制御装置5Cによる処理負荷も軽減できる。
【0055】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記各実施形態では、冷却流体として空気を利用していたが、これに限らず、水やエチレングリコール等の液体を冷却流体として利用しても構わない。
前記各実施形態では、冷却対象として、液晶パネル36を採用していたが、これに限らず、偏光変換素子323、入射側偏光板35、あるいは、出射側偏光板37等の他の光学素子を冷却対象としても構わない。
【0056】
前記各実施形態では、冷却対象として、1つの光学素子(液晶パネル36)のみを採用していたが、2つ以上の光学素子を冷却対象としても構わない。
例えば、入射側偏光板35及び液晶パネル36を冷却対象とした場合には、入射側偏光板35及び液晶パネル36の隙間に空気を吐出すれば、入射側偏光板35の光出射面全体、及び液晶パネル36の光入射面全体を簡素な構造で効率的に冷却できる。
【0057】
前記各実施形態では、冷却装置4は、R,G,B色光側の液晶パネル36に対応させてそれぞれ設けられていたが、これに限らず、いずれか1つのみに対応させて1つのみ設けてもよく、いずれか2つのみに対応させて2つのみ設けてもよい。
また、冷却ファン61,71は、1つのダクト62,72に対応させて1つずつ設けられていたが、これに限らない。
例えば、2つのダクトに1つの冷却ファンを共通に用いてもよい。
また、例えば、各吐出部Sp1〜Sp6に対応させて冷却ファンをそれぞれ設けてもよく、各吐出部Sp1〜Sp6の少なくとも2つに1つの冷却ファンを共通に用いてもよい。
【0058】
前記各実施形態では、第1吐出部S1は、3つ設けられていたが、これに限らず、2つ、あるいは、4つ以上でも構わない。第2吐出部S2も同様である。
また、第1,第2吐出部S1,S2は、同一の数(3つ)、設けられていたが、これに限らず、異なる数となるように構成しても構わない。
前記各実施形態では、左,下側冷却装置6,7は、液晶パネル36の左,下端縁にそれぞれ設けられていたが、これに限らず、その他の端縁、例えば、上,下端縁にそれぞれ設けた構成を採用しても構わない。
【0059】
前記各実施形態では、左,下側流量変更部63,73は、第1,第2吐出部S1,S2から空気を吐出させる状態、または吐出させない状態の2つの状態に切り替える構成を採用していたが、これに限らない。
すなわち、左,下側流量変更部63,73としては、第1,第2吐出部S1,S2から吐出される空気の流量をそれぞれ変更する構成であれば、その他の構成でも構わない。
前記各実施形態において、制御装置5Cによる処理としては、図4や図6に示す処理に限らず、その他の処理、例えば、以下に示す処理を採用しても構わない。
【0060】
図7は、前記各実施形態の変形例を示す図である。具体的に、図7(A)は、第1実施形態とは異なるタイミングで左,下側流量変更部63,73を制御した場合での左,下側流量変更部63,73の駆動のタイミングチャートである。図7(B)は、図7(A)に示すタイミングで左,下側流量変更部63,73を制御した際に、所定の設定時間TC0内において、9つの領域Arで生じた空気の衝突発生回数を示している。
なお、図7(A)では、制御装置5Cは、所定の設定時間TC0内に一貫して、1つずつの第1,第2吐出部S1,S2から吐出された空気を衝突させるように、左,下側流量変更部63,73を制御している。また、制御装置5Cは、設定時間TC0内において、図7(B)に示すように、中心側領域ArOでの空気の衝突発生回数が3回、各外周側領域ArEのうち、光軸Axに近接した「B」、「D」、「F」、「H」の文字が付された各外周側領域ArEでの空気の衝突発生回数が2回、残りの「A」、「C」、「G」、「I」の文字が付された各外周側領域ArEでの空気の衝突発生回数が1回となるように、左,下側流量変更部63,73を制御している。
【0061】
前記各実施形態では、液晶パネル36は、3つ設けられていたが、その数は3つに限らず、1つ、2つ、あるいは、4つ以上であっても構わない。
前記各実施形態では、光変調装置として透過型の液晶パネル36を採用していたが、これに限らず、反射型の液晶パネルを採用してもよく、あるいは、マイクロミラーを用いたデバイス等、液晶以外の光変調装置を採用しても構わない。
前記各実施形態では、スクリーンを観察する方向から投射を行うフロントタイプのプロジェクターの例のみを挙げたが、本発明は、スクリーンを観察する方向とは反対側から投射を行うリアタイプのプロジェクターにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、プレゼンテーションやホームシアターに用いられるプロジェクターに利用できる。
【符号の説明】
【0063】
1・・・プロジェクター、4・・・冷却装置、5C・・・制御装置、36・・・液晶パネル(光学素子)、63,73・・・左,下側流量変更部、630,730・・・第1,第2流量変更部、Ax・・・光軸、ArO・・・中心側領域、ArE・・・外周側領域、S1・・・第1吐出部、S2・・・第2吐出部、Sp1,Sp3・・・上,下側吐出部(第1外周吐出部)、Sp2・・・第1中心吐出部、Sp4,Sp6・・・左側吐出部(第2外周吐出部)、Sp5・・・第2中心吐出部、TC1,TC2・・・第1,第2の設定時間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子の表面に沿って冷却流体を流通させる冷却装置を備えたプロジェクターであって、
前記冷却装置は、
前記光学素子における第1端縁側から前記光学素子の表面に沿って互いに平行に前記冷却流体を吐出する複数の第1吐出部と、
前記光学素子における前記第1端縁とは異なる第2端縁側から前記光学素子の表面に沿って互いに平行に前記冷却流体を吐出する複数の第2吐出部と、
前記複数の第1吐出部、及び前記複数の第2吐出部のうち少なくともいずれかに設けられ、吐出される冷却流体の流量を変更する流量変更部とを備える
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクターにおいて、
前記複数の第1吐出部は、
前記光学素子に入射する光束の光軸に沿う方向から見て、前記光学素子を、前記光軸が通る位置を含む中心側領域と前記中心側領域を除く外周側領域とに仮想的に分割した場合に、
前記中心側領域に向けて前記冷却流体を吐出する第1中心吐出部と、
前記第1中心吐出部を挟む両側にそれぞれ設けられ、前記外周側領域に向けて前記冷却流体を吐出する第1外周吐出部とを備え、
前記複数の第2吐出部は、
前記中心側領域に向けて前記冷却流体を吐出する第2中心吐出部と、
前記第2中心吐出部を挟む両側にそれぞれ設けられ、前記外周側領域に向けて前記冷却流体を吐出する第2外周吐出部とを備える
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項3】
請求項2に記載のプロジェクターにおいて、
前記流量変更部の動作を制御する制御装置を備え、
前記第1端縁及び前記第2端縁は、
互いに交差する端縁であり、
前記制御装置は、
前記流量変更部の動作を制御し、所定の設定時間内に、前記複数の第1吐出部及び前記複数の第2吐出部からの吐出方向の各交差位置の全てで前記冷却流体を衝突させる
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項4】
請求項3に記載のプロジェクターにおいて、
前記制御装置は、
前記設定時間内で、前記中心側領域での前記冷却流体の衝突時間が前記外周側領域での前記冷却流体の衝突時間よりも長くなるように、前記流量変更部の動作を制御する
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載のプロジェクターにおいて、
前記第1吐出部及び前記第2吐出部は、
3つずつ設けられ、
前記流量変更部は、
3つの前記第1吐出部、及び3つの前記第2吐出部にそれぞれ設けられ、
前記制御装置は、
前記設定時間内で、2つの前記第1吐出部及び2つの前記第2吐出部から吐出された冷却流体を同時に衝突させる第1状態と、1つの前記第1吐出部及び1つの前記第2吐出部から吐出された冷却流体を衝突させる第2状態とに切り替える
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項6】
請求項3または請求項4に記載のプロジェクターにおいて、
前記第1吐出部及び前記第2吐出部は、
3つずつ設けられ、
前記流量変更部は、
3つの前記第1吐出部のうち、前記第2端縁に最も離間した前記第1端縁側から前記冷却流体を吐出する第1吐出部を除く2つの前記第1吐出部にそれぞれ設けられた2つの第1流量変更部と、
3つの前記第2吐出部のうち、前記第1端縁に最も離間した前記第2端縁側から前記冷却流体を吐出する第2吐出部を除く2つの前記第2吐出部にそれぞれ設けられた2つの第2流量変更部とを備える
ことを特徴とするプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−109128(P2013−109128A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253667(P2011−253667)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】