説明

プロジェクタ及びその光学補償方法、並び液晶装置

【課題】プロジェクタにおいて、高コントラストの表示を可能とする。
【解決手段】プロジェクタは、光を出射する光源(12)と、一対の基板間に液晶が挟持されてなり、光を変調する液晶パネル(15c)と、液晶パネルを挟んで配置された一対の偏光板(15b、15d)とを備え。更に、一対の偏光板間に配置され(i)一の表面と、一の表面に対向すると共に一の表面に対して傾斜する他の表面とを有する第1板状光学部材(511)と、(ii)他の表面に形成され、負の屈折率異方性を有すると共に光軸として他の表面の法線に沿った第1光軸を有する第1光学異方性層(513)と、(iii)一の表面に形成され、正又は負の屈折率異方性を有すると共に光軸として一の表面に沿った第2光軸を有する第2光学異方性層(514)とを有する光学補償素子(15a)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタ及びその光学補償方法、並びに液晶装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大画面表示を可能とした表示装置として、液晶プロジェクタが実用化されている。このようなプロジェクタにおいては、誘電異方性が負の液晶を基板に垂直に配向させ、電圧印加によってこれを倒す「VA(Vertical Alignment)モード」によって駆動する液晶装置をライトバルブとして備えた構成が提案されている。この種の液晶プロジェクタのコントラストを向上させる技術として、位相差板を液晶ライトバルブに対して傾斜させて配置する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−11298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術によれば、確かに位相差板を傾斜させないときよりもコントラストが向上するが、液晶プロジェクタに設けられる偏光板や回折素子の組み合わせによっては、十分なコントラストが得られないおそれがあるという技術的問題点がある。
【0005】
まず、偏光板では、保護膜としてTAC(トリアセチルセルロース)のフィルムが用いられているが、この保護膜自体が位相差を有しており、この位相差を上記位相差板では補償することができない。
【0006】
また、マイクロレンズアレイ等の回折素子が設けられている場合には、マイクロレンズを透過する位置に依存して光に位相差が生じ、さらに光の拡散が生じるため、液晶のプレチルトに合わせて傾斜角を設定しても補償されない光が含まれることとなり、コントラストが低下してしまう。
【0007】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、例えば、高コントラストの表示が得られるプロジェクタ及びその光学補償方法、並びに液晶装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のプロジェクタは上記課題を解決するために、光を出射する光源と、一対の基板間に液晶が挟持されてなり、前記光を変調する液晶パネルと、前記液晶パネルを挟んで配置された一対の偏光板と、前記一対の偏光板間に配置され(i)一の表面と、該一の表面に対向すると共に前記一の表面に対して傾斜する他の表面とを有する第1板状光学部材と、(ii)前記他の表面に形成され、負の屈折率異方性を有すると共に光軸として前記他の表面の法線に沿った第1光軸を有する第1光学異方性層と、(iii)前記一の表面に形成され、正又は負の屈折率異方性を有すると共に光軸として前記一の表面に沿った第2光軸を有する第2光学異方性層とを有する光学補償素子とを備える。
【0009】
本発明のプロジェクタによれば、光源から出射された光は、例えば反射ミラー及びダイクロイックミラー等の色分離光学系によって赤色光、緑色光及び青色光に色分離される。液晶パネルは、例えば赤色光、緑色光及び青色光の各々を変調するライトバルブとして用いられる。液晶パネルは、例えばデータ信号(或いは画像信号)に応じて各画素の液晶分子の配向状態が規制され、その表示領域にデータ信号に応じた画像を表示する。各液晶パネルによって表示された画像は、例えばダイクロイックプリズム等の色合成光学系により合成され、投射レンズを介して投写画像としてスクリーン等の投写面に投写される。
【0010】
液晶パネルは、一対の基板間に液晶が挟持されてなる。液晶は、典型的には、垂直配向型の液晶、即ちVA型液晶である。一対の基板の各々には、例えば配向膜が設けられ、該配向膜によって、液晶を構成する液晶分子は、所定方位に所定角度だけ立ち上がるプレチルトが付与される。例えば液晶がVA型液晶の場合、液晶分子は、液晶パネルの基板面(即ち、一対の基板の基板面)の法線に対して所定方位にプレチルト角だけ傾いて配向する。液晶パネルは、一対の偏光板の間に挟み込まれるように配置される。
【0011】
本発明では特に、第1板状光学部材と、第1光学異方性層と、第2光学異方性層とを有する光学補償素子を備える。
【0012】
光学補償素子は、一対の偏光板間に配置される。より具体的には、一対の偏光板のうち一方の偏光板と液晶パネルとの間、或いは、一対の偏光板のうち他方の偏光板と液晶パネルとの間に配置される。言い換えれば、一対の偏光板間であって、液晶パネルにおける光が入射される側或いは光が出射される側に設けられる。
【0013】
第1板状光学部材は、例えば板状のガラスからなり、第1板状光学部材における他の表面は、例えば液晶のプレチルト角に応じた所定角度だけ傾斜するように形成されている。典型的には、第1板状光学部材は、傾斜しない一の表面と、傾斜するように形成された他の表面とを有する楔形状に形成されている。ここに、「楔形状」とは、第1板状光学部材の傾斜しない一の表面における所定方位に沿って該一の表面に垂直に切った断面において、台形をなす形状をいう。
【0014】
第1光学異方性層は、負の屈折率異方性を有しており、例えばCプレートからなる。第1光学異方性層は、第1板状光学部材の他の表面に形成されており、第1光学異方性層の光軸(即ち、光学軸)である第1光軸は、第1板状光学部材の他の表面の法線に沿っている。言い換えれば、第1光軸は、第1板状光学部材の一の表面の法線と、例えば液晶のプレチルト角に応じた所定角度をなしている。
【0015】
第2光学異方性層は、正又は負の屈折率異方性を有しており、例えばAプレートや二軸プレートからなる。第2光学異方性層は、第1板状光学部材の一の表面に形成されており、第2光学異方性層の光軸である第2光軸は、第1板状光学部材の一の表面に沿っている。第2光学異方性層は、当該光学補償素子が一対の偏光板間に配置された状態において、第2光軸が一対の偏光板のうちいずれかの偏光板の透過軸に沿うように、第1板状光学部材の一の表面に形成される。
【0016】
光学補償素子は、例えば、第1光軸が、プレチルト角だけ傾斜した液晶分子の長軸に沿うように、且つ、第1板状光学部材の一の表面が液晶パネルの基板面に沿うように配置される。
【0017】
従って、当該プロジェクタの動作時に、光源から出射された光が例えばプレチルト角だけ傾斜した液晶分子から構成された液晶や一対の偏光板等を通過することで発生する光の位相差を、光学補償素子が有する第1及び第2光学異方性層によって補償することができる。
【0018】
即ち、第1光学異方性層の第1光軸が、プレチルト角だけ傾斜した液晶分子の長軸に沿うように、光学補償素子が配置されることで、第1光学異方性層と液晶との光学的な正負が互いに逆(或いは反対)になり、第1光学異方性層によって液晶において生じる位相差(言い換えれば、複屈折効果)を打ち消す(即ち、補償する)ことができる。更に、第2光学異方性層の第2光軸が、例えば一対の偏光板のうちいずれかの偏光板の透過軸に沿うように、光学補償素子が配置されることで、第2光学異方性層によって例えば一対の偏光板に起因して生する光の位相差を補償することができる。
【0019】
このような補償を行うことで、液晶パネルを通過した光が出射側の偏光板に対し、位相がずれた状態で入射するのを防止することができる。よって、例えば出射側の偏光板において、本来通過させないはずの光が漏れる可能性は小さくなり、コントラストの低下や視野角の縮小を防止することができる。
【0020】
更に、本発明では特に、上述したように、第1及び第2光学異方性層は、典型的には楔形状を有する第1板状光学部材の他の表面及び一の表面に夫々形成されることで1つの光学補償素子を構成する。よって、仮に第1及び第2光学異方性層を互いに異なる(即ち、別個の)ガラス基板に夫々形成することで2つの光学補償素子として構成した場合と比較して、当該プロジェクタ内に配置するためのスペースが少なくて済む(即ち、省スペース化を図ることができる)、言い換えれば、当該プロジェクタ内に第1及び第2光学異方性層を1つの光学補償素子として容易に配置することができる。
【0021】
以上説明したように、本発明のプロジェクタによれば、液晶において生じる光の位相差を光学補償素子が有する第1光学異方性層によって補償することができ、更に、例えば一対の偏光板に起因して生ずる光の位相差を光学補償素子が有する第2光学異方性層によって補償することができる。よって、高コントラストで高品位な表示を得ることができる。
【0022】
本発明のプロジェクタの一態様では、前記光学補償素子を前記液晶パネルの基板面の法線を中心とする軸回りに回転させることが可能な第1光学調整手段を更に備える。
【0023】
この態様によれば、光学補償素子が有する第2光学異方性層によって一対の偏光板に起因して生ずる光の位相差が打ち消されるように、第1光学調整手段によって光学補償素子を回転させることが可能である。よって、コントラストの低下や視野角の縮小をより確実に防止することができる。
【0024】
本発明のプロジェクタの他の態様では、前記一の表面及び前記他の表面の各々は、四辺形状を有しており、前記他の表面は、前記一の表面の法線方向から見て、前記一の表面の一辺に対して垂直な方向に沿って、前記傾斜するように形成されている。
【0025】
この態様によれば、第1板状光学部材の他の表面を、一の表面に対して傾斜するように容易に形成することができる。よって、製造コストの低減も可能となる。
【0026】
本発明のプロジェクタの他の態様では、前記一の表面及び前記他の表面の各々は、四辺形状を有しており、前記他の表面は、前記一の表面の法線方向から見て、前記一の表面の一辺に対して鋭角をなす方向に沿って、前記傾斜するように形成されている。
【0027】
この態様によれば、第1板状光学部材の他の表面は、第1板状光学部材の一辺に対して例えば45度の角度をなす方向に沿って傾斜するように形成されている。よって、液晶パネルの配向方向(言い換えれば、液晶分子がプレチルト角だけ傾斜する方位)が、液晶パネルの一辺に対して例えば45度の角度をなす方向とされている場合には、第1板状光学部材及び液晶パネルを、第1板状光学部材の一の表面の一辺と液晶パネルの一辺とが互いに沿うように配置することで、第1光学異方性層の第1光軸と液晶パネルの明視方向(即ち、プレチルト角だけ傾斜した液晶分子の長軸に沿った方向或いはダイレクタ方向、言い換えれば、プレチルト方向)とを殆ど或いは完全に一致させることが可能となる。
【0028】
本発明のプロジェクタの他の態様では、前記光学補償素子は、前記第1板状光学部材との間で前記第1光学異方性層を挟み込むように配置された第2板状光学部材を更に備え、前記第2板状光学部材の前記第1光学異方性層に対向する一の表面は、当該一の表面に対向する前記第2板状光学部材の他の表面に対して傾斜するように形成されている。
【0029】
この態様によれば、第2板状光学部材は、典型的には、第1板状光学部材と同一形状を有している。即ち、第2板状光学部材は、典型的には、楔形状を有している。第1光学異方性層は、第1板状光学部材と第2板状光学部材との間に挟み込まれる。第1及び第2板状光学部材は、厚さの薄くなる方向(即ち、第1板状光学部材の他の表面が傾斜する方向及び第2板状光学部材の一の表面が傾斜する方向)が互いに反対になるように配置される。言い換えれば、第1及び第2板状光学部材は、第1板状光学部材の傾斜しない一の表面と第2板状光学部材の傾斜しない他の表面とは互いに沿うように(或いは略平行になるように)配置される。
【0030】
よって、光学補償素子から出射される光が、光学補償素子に入射される光に対して傾いてしまうことを防止できる。即ち、第1板状光学部材に起因して生じる光の屈折と、第2板状光学部材に起因して生じる光の屈折とを互いに打ち消し合わせることができ、光が光学補償素子を通過する際における光の直進性を高めることができる。
【0031】
更に、光学補償素子に入射される光は、第1板状光学部材或いは第2板状光学部材を通過した後に、第1光学異方性層に入射されるので、第1光学異方性層の劣化を抑制することができる、言い換えれば、光学補償素子の耐光性を高めることができる。
【0032】
本発明のプロジェクタの他の態様では、前記光学補償素子を前記液晶パネルの基板面に対して傾斜させることが可能な第2光学調整手段を更に備える。
【0033】
この態様によれば、第1光学補償層の第1光軸が液晶パネルの明視方向により確実に一致するように、第2光学調整手段によって光学補償素子を液晶パネルの基板面に対して傾斜させることができる。即ち、第1光軸が液晶パネルの明視方向に一致するように微調整することが可能となる。
【0034】
本発明のプロジェクタの他の態様では、前記第1光軸と前記液晶パネルの明視方向とが一致している。
【0035】
この態様によれば、液晶において生じる光の位相差を良好に補償することができ、コントラストの低下や視野角の縮小をより確実に防止することができる。尚、本発明に係る「一致している」とは、液晶において生じる光の位相差を、製品仕様上で許容される程度に補償するのに十分な範囲で第1光軸が液晶パネルの明視方向に近ければよい趣旨であり、即ち、第1光軸と液晶パネルの明視方向とが文字通り一致している場合の他、第1光軸と液晶パネルの明視方向とが実質的に一致している場合を含む意味である。
【0036】
本発明のプロジェクタの光学補償方法は上記課題を解決するために、光を出射する光源と、一対の基板間に液晶が挟持されてなり前記光を変調する液晶パネルと、前記液晶パネルを挟んで配置された一対の偏光板と、前記一対の偏光板間に配置され、(i)一の表面と、該一の表面に対向すると共に前記一の表面に対して傾斜する他の表面とを有する第1板状光学部材と、(ii)前記他の表面に形成され、負の屈折率異方性を有すると共に光軸として前記他の表面の法線に沿った第1光軸を有する第1光学異方性層と、(iii)前記一の表面に形成され、正又は負の屈折率異方性を有すると共に光軸として前記一の表面に沿った第2光軸を有する第2光学異方性層とを有する光学補償素子とを備えたプロジェクタの光学補償方法であって、前記光学補償素子の前記一の表面を前記液晶パネルの基板面に対して傾斜させる傾斜調整ステップと、前記光学補償素子を前記液晶パネルの基板面法線方向の軸回りに回転させる回転調整ステップとを含む。
【0037】
本発明のプロジェクタの光学補償方法によれば、光学補償素子を傾斜させる傾斜調整ステップによって、液晶において生じる光の位相差(つまり、液晶分子がプレチルト角だけ傾斜していることに起因する光の位相差)を容易に補償することができる。更に、光学補償素子を回転させる回転調整ステップによって、例えば一対の偏光板に起因して生ずる光の位相差を容易に補償することができる。この結果、高コントラストで高品位な表示を得ることができる。
【0038】
本発明の液晶装置は上記課題を解決するために、一対の基板間に液晶が挟持されてなる液晶パネルと、前記液晶パネルを挟んで配置された一対の偏光板と、前記一対の偏光板間に配置され、(i)一の表面と、該一の表面に対向すると共に前記一の表面に対して傾斜する他の表面とを有する第1板状光学部材と、(ii)前記他の表面に形成され、負の屈折率異方性を有すると共に光軸として前記他の表面の法線に沿った第1光軸を有する第1光学異方性層と、(iii)前記一の表面に形成され、正又は負の屈折率異方性を有すると共に光軸として前記一の表面に沿った第2光軸を有する第2光学異方性層とを有する光学補償素子とを備える。
【0039】
本発明の液晶装置によれば、液晶において生じる光の位相差を光学補償素子が有する第1光学異方性層によって補償することができ、更に、例えば一対の偏光板に起因して生ずる光の位相差を光学補償素子が有する第2光学異方性層によって補償することができる。よって、高コントラストで高品位な表示を得ることができる。
【0040】
本発明の液晶装置の他の態様では、前記一の表面及び他の表面の各々は、四辺形状を有しており、前記他の表面は、前記一の表面の法線方向から見て前記一の表面の一辺に対して垂直な方向に沿って、前記傾斜するように形成されている。
【0041】
この態様によれば、第1板状光学部材の他の表面を、一の表面に対して傾斜するように容易に形成することができる。
【0042】
本発明の液晶装置の他の態様では、前記一の表面及び他の表面の各々は、四辺形状を有しており、前記他の表面は、前記一の表面の法線方向から見て、前記一の表面の一辺に対して鋭角をなす方向に沿って、前記傾斜するように形成されている。
【0043】
この態様によれば、例えば光学調整手段によって光学補償素子を殆ど或いは全く回転させることなく、コントラストの低下や視野角の縮小を防止することができる。
【0044】
本発明の液晶装置の他の態様では、前記光学補償素子は、前記第1板状光学部材との間で前記第1光学異方性層を挟み込むように配置された第2板状光学部材を更に備え、前記第2板状光学部材の前記光学異方性層に対向する一の表面は、当該一の表面に対向する前記第2板状光学部材の他の表面に対して傾斜するように形成されている。
【0045】
この態様によれば、光学補償素子から出射される光が、光学補償素子に入射される光に対して傾いてしまうことを防止できる。更に、光学補償素子に入射される光は、第1板状光学部材或いは第2板状光学部材を通過した後に、第1光学異方性層に入射されるので、第1光学異方性層の劣化を抑制することができる。
【0046】
本発明の液晶装置の他の態様では、前記第1光軸と前記液晶パネルの明視方向とが一致している。
【0047】
この態様によれば、液晶において生じる光の位相差を良好に補償することができ、コントラストの低下や視野角の縮小をより確実に防止することができる。
【0048】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
<第1実施形態>
本実施形態に係るプロジェクタについて、図1から図7を参照して説明する。
【0050】
先ず、本実施形態に係るプロジェクタの全体構成について、図1を参照して説明する。
【0051】
図1は、第1実施形態に係るプロジェクタの概略構成図である。尚、本実施形態では、3つの液晶ライトバルブが設けられた3板式のプロジェクタについて説明するが、プロジェクタに設けられる液晶ライトバルブの数は3つに限られず、2つや4つ以上であってもよい。
【0052】
図1において、プロジェクタ10は、前方に設けられたスクリーン11に映像を投射する前方投影型のプロジェクタである。プロジェクタ10は、光源12と、ダイクロイックミラー13及び14と、本発明に係る「液晶装置」の一例としての液晶ライトバルブ15、16及び17と、投射光学系18と、クロスダイクロイックプリズム19と、リレー系20とを備えている。
【0053】
光源12は、赤色光、緑色光及び青色光を含む光を供給する超高圧水銀ランプで構成されている。ダイクロイックミラー13は、光源12からの赤色光LRを透過させるとともに緑色光LG及び青色光LBを反射する構成となっている。また、ダイクロイックミラー14は、ダイクロイックミラー13で反射された緑色光LG及び青色光LBのうち青色光LBを透過させるとともに緑色光LGを反射する構成となっている。このように、ダイクロイックミラー13及び14は、光源12から出射された光を赤色光LRと緑色光LGと青色光LBとに分離する色分離光学系を構成する。ダイクロイックミラー13と光源12との間には、インテグレータ21及び偏光変換素子22が光源12側から順に配置されている。インテグレータ21は、光源12から照射された光の照度分布を均一化する。偏光変換素子22は、光源12からの光を例えばs偏光のような特定の振動方向を有する偏光に変換する。
【0054】
液晶ライトバルブ15は、ダイクロイックミラー13を透過して反射ミラー23で反射した赤色光LRを画像信号に応じて変調する透過型の液晶装置である。液晶ライトバルブ15は、液晶パネル15c、光学補償素子15a、偏光板15b及び15dを備えている。
【0055】
ここで、液晶ライトバルブ15に入射した赤色光LRは、偏光板15bを透過して例えばs偏光に変換される。液晶パネル15cは、入射したs偏光を画像信号に応じた変調によってp偏光(中間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する。更に、偏光板15dは、s偏光を遮断してp偏光を透過させる偏光板である。従って、液晶ライトバルブ15は、画像信号に応じて赤色光LRを変調し、変調した赤色光LRをクロスダイクロイックプリズム19に向けて射出する構成となっている。
【0056】
液晶ライトバルブ16は、ダイクロイックミラー13で反射した後にダイクロイックミラー14で反射した緑色光LGを、画像信号に応じて緑色光LGを変調し、変調した緑色光LGをクロスダイクロイックプリズム19に向けて射出する透過型の液晶装置である。液晶ライトバルブ16は、液晶ライトバルブ15と同様に、液晶パネル16c、光学補償素子16a、偏光板16b及び16dを備えている。
【0057】
液晶ライトバルブ17は、ダイクロイックミラー13で反射し、ダイクロイックミラー14を透過した後でリレー系20を経た青色光LBを画像信号に応じて変調し、変調した青色光LBをクロスダイクロイックプリズム19に向けて射出する透過型の液晶装置である。液晶ライトバルブ17は、液晶ライトバルブ15及び16と同様に、液晶パネル17c、光学補償素子17a、偏光板17b及び17dを備えている。
【0058】
リレー系20は、リレーレンズ24a及び24bと反射ミラー25a及び25bとを備えている。リレーレンズ24a及び24bは、青色光LBの光路が長いことによる光損失を防止するために設けられている。リレーレンズ24aは、ダイクロイックミラー14と反射ミラー25aとの間に配置されている。リレーレンズ24bは、反射ミラー25a及び25bの間に配置されている。反射ミラー25aは、ダイクロイックミラー14を透過してリレーレンズ24aから出射した青色光LBをリレーレンズ24bに向けて反射するように配置されている。反射ミラー25bは、リレーレンズ24bから出射した青色光LBを液晶ライトバルブ17に向けて反射するように配置されている。
【0059】
クロスダイクロイックプリズム19は、2つのダイクロイック膜19a及び19bをX字型に直交配置した色合成光学系である。ダイクロイック膜19aは青色光LBを反射して緑色光LGを透過する。ダイクロイック膜19bは赤色光LRを反射して緑色光LGを透過する。従って、クロスダイクロイックプリズム19は、液晶ライトバルブ15、16及び17の各々で変調された赤色光LRと緑色光LGと青色光LBとを合成し、投射光学系18に向けて射出するように構成されている。投射光学系18は、投影レンズ(図示省略)を有しており、クロスダイクロイックプリズム19で合成された光をスクリーン11に投射するように構成されている。
【0060】
尚、赤色用及び青色用の液晶ライトバルブ15及び17にλ/2位相差板を設け、これらの液晶ライトバルブ15及び17からクロスダイクロイックプリズム19に入射する光をs偏光とし、液晶ライトバルブ16にはλ/2位相差板を設けない構成として液晶ライトバルブ16からクロスダイクロイックプリズム19に入射する光をp偏光とする構成も採用できる。クロスダイクロイックプリズム19に入射する光を異なる種類の偏光とすることで、ダイクロイック膜19a及び19bの反射特性を考慮して最適化された色合成光学系を構成できる。一般に、ダイクロイック膜19a及び19bはs偏光の反射特性に優れているので、上述したようにダイクロイック膜19a及び19bで反射される赤色光LR及び青色光LBをs偏光とし、ダイクロイック膜19a及び19bを透過する緑色光LGをp偏光とするとよい。
【0061】
次に、本実施形態に係るプロジェクタが備える液晶パネルの構成について、図2を参照して説明する。
【0062】
図2(a)は、液晶パネルの全体構成図であり、図2(b)は、図2(a)のH−H'線断面図である。尚、液晶ライトバルブ15、16及び17は、変調する光の波長領域が異なるだけであって、その基本的構成は同一である。従って、以下では、液晶パネル15cとこれを備えた液晶ライトバルブ15とを例示して説明する。
【0063】
図2に示すように、液晶パネル15cは、互いに対向して配置された対向基板31とTFTアレイ基板32とを備え、シール材33を介して両者を貼り合わせた構成である。対向基板31、TFTアレイ基板32及びシール材33に囲まれた領域内に、液晶層34が封入されている。液晶層34は、負の誘電率異方性を有する液晶からなる。液晶パネル15cは、液晶分子が配向膜43及び98の間で所定の傾き(プレチルト角)を有して垂直配向した構成である。
【0064】
液晶パネル15cは、TFTアレイ基板32、対向基板31及びシール材33で区画された領域に封止された液晶層34を有している。液晶パネル15cのうちシール材33の形成領域の内側には、周辺見切りとなる遮光膜53が形成されている。シール材33の外周側の角部には、TFTアレイ基板32と対向基板31との電気的導通をとるための基板間導通材57が配設されている。
【0065】
TFTアレイ基板32のうち平面視でシール材33の形成領域の外側となる領域に、データ線駆動回路71及び外部回路実装端子75と、2個の走査線駆動回路73とが形成されている。更に、TFTアレイ基板32の上記領域には、複数の画素電極42が配列された画像表示領域の両側に設けられた走査線駆動回路73の間を接続するための複数の配線74も形成されている。データ線駆動回路71及び走査線駆動回路73をTFTアレイ基板32上に形成する代わりに、例えば、駆動用LSIが実装されたTAB(Tape Automated Bonding)基板とTFTアレイ基板32の周辺部に形成された端子群とを異方性導電膜を介して電気的及び機械的に接続してもよい。
【0066】
図2(b)に示すように、対向基板31は、平面的に配列された複数のマイクロレンズを有するマイクロレンズ基板(集光基板)である。対向基板31は、基板92と、樹脂層93と、カバーガラス94とを主体として構成されている。
【0067】
基板92及びカバーガラス94は、ガラス等からなる透明基板であり、石英やホウ珪酸ガラス、ソーダライムガラス(青板ガラス)、クラウンガラス(白板ガラス)等からなる基板を用いることもできる。基板92の液晶層34側(図中、下面側)には、複数の凹部(マイクロレンズ)95が形成されている。マイクロレンズ95は、液晶層34と反対側から基板92に入射する光を集光して液晶層34側に射出する。
【0068】
樹脂層93は、基板92のマイクロレンズ95上に充填された樹脂材料からなる層であり、光を透過可能な樹脂材料、例えばアクリル系樹脂等を用いて形成される。樹脂層93は、基板92の一面側を覆い、マイクロレンズ95の凹状の内部を充填するように設けられている。樹脂層93の上面は平坦面とされ、かかる平坦面にカバーガラス94が貼り付けられている。
【0069】
対向基板31の液晶層34側の面には、遮光膜35と、共通電極97と、配向膜98とが形成されている。遮光膜35は平面視略格子状を成してカバーガラス94上に形成されている。マイクロレンズ95は、遮光膜35の間に位置して、液晶パネル15cの画素領域(画素電極42の形成領域)に平面視で重なる領域にそれぞれ配置されている。配向膜98は液晶層34を構成する液晶分子を基板面に対して略垂直に配向させる垂直配向膜であり、例えば、斜方蒸着により柱状構造を有して形成されたシリコン酸化物膜や、配向処理を施されたポリイミド膜等からなるものである。
【0070】
TFTアレイ基板32は、ガラスや石英等からなる透明の基板41と、基板41の液晶層34側面に形成された画素電極42と、画素電極を駆動するTFT44と、配向膜43とを主体として構成されている。
【0071】
図2(a)に示すように、画素電極42は、例えばITO等の透明導電材料からなる平面視略矩形状の導電膜であり、基板41上に平面視マトリクス状に配列され、平面視でマイクロレンズ95と重なる領域に形成されている。
【0072】
TFT44は、図示を簡略化しているが、画素電極42の各々に対応して基板41上に形成されており、通常は平面視で対向基板31側の遮光膜35と重なる領域(即ち、非表示領域或いは遮光領域)に配置されている。
【0073】
画素電極42を覆って形成された配向膜43は、先の配向膜98と同様に、斜方蒸着により形成されたシリコン酸化物膜等からなる垂直配向膜である。
【0074】
配向膜43及び98は、互いの配向方向(柱状構造物の配向方向)が平面視でほぼ平行になるように形成されており、液晶層34を構成する液晶分子を基板面に対して所定の傾きを有してほぼ垂直に配向させるとともに、液晶分子の傾き方向を基板面方向で一様なものとするべく機能する。
【0075】
尚、基板41の液晶層34側の表面のうち平面視でシール材33の形成領域の内側となる領域には、画素電極42やTFT44を接続するデータ線(図示省略)や走査線(図示省略)が形成されている。データ線及び走査線は、平面視で遮光膜35と重なる領域に形成されている。そして、遮光膜35やTFT44、データ線、走査線によって縁取られた領域が液晶パネル15cの画素領域とされる。そして、複数の画素領域が平面視マトリクス状に配列されて画像表示領域を構成している。
【0076】
次に、本実施形態に係るプロジェクタが備える光学補償素子について、図3から図7を参照して説明する。
【0077】
図3は、液晶ライトバルブの構成を示す説明図である。図4は、液晶ライトバルブの各構成部材の光学軸配置を示す図である。図5は、本実施形態に係るプロジェクタの具体的構成例を示す斜視図である。図6は、本実施形態に係る光学補償素子の構成を示す斜視図である。
【0078】
図3に示すように、液晶ライトバルブ15は、図2を参照して上述した液晶パネル15cと、液晶パネル15cの対向基板31の外側に配置された偏光板15bと、TFTアレイ基板32の外側に配置された光学補償素子15aと、光学補償素子15aの外側に配置された偏光板15dとを備えている。
【0079】
尚、本実施形態に係る液晶ライトバルブ15では、偏光板15bが配置された側(図3中、上側)が光入射側であり、偏光板15dが配置された側(図3中、下側)が光射出側である。
【0080】
図3において、液晶パネル15cの液晶層34を挟持して対向する配向膜43及び98は、例えば基板法線方向から50°程度ずれた斜め方向からシリコン酸化物を蒸着して形成されている。膜厚はいずれも40nm程度である。図3の配向膜43及び98に付した矢印により表される配向方向43a及び98aは、形成時の蒸着方向のうち基板面内の方向に一致している。配向膜43における配向方向43aと配向膜98における配向方向98aとは互いに平行である。
【0081】
液晶層34を構成する液晶分子51は、配向膜43及び98の配向規制力によって、基板法線から2°〜10°程度傾いた状態で配向すると共に、液晶分子51のダイレクタ(或いは長軸)の方向(即ち、プレチルト方向P)が基板法線方向から見て配向方向43a及び98aに沿った方向となるように配向している。
【0082】
偏光板15b及び15dは、いずれも、染色されたPVA(ポリビニルアルコール)からなる偏光素子151を、TAC(トリアセチルセルロース)からなる2枚の保護膜152で挟み込んだ三層構造を備えている。
【0083】
図4及び図5に示すように、偏光板15bの透過軸151bと、偏光板15dの透過軸151dとは直交して配置されている。透過軸151b及び151dの方向は、液晶パネル15cの配向膜43の配向方向43aに対して平面視で約45°ずれた方向となっている。
【0084】
図3に加えて図6(a)及び図6(b)に示すように、光学補償素子15aは、第1板状光学部材511と、第2板状光学部材512と、第1光学異方性層513と、第2光学異方性層514とを備えている。
【0085】
図6(a)において、第1板状光学部材511は、例えば板状のガラスからなる。第1板状光学部材511の表面511aは、当該表面511aに対向する第1板状光学部材511の表面511bに対して、角度βだけ傾斜している。角度βは、液晶のプレチルト角に応じて設定されており、例えば2°〜10°に設定されている。つまり、第1板状光学部材511は、傾斜するように形成された表面511aと、傾斜しない表面511bとを有する楔形状に形成されている。第1板状光学部材511の傾斜しない表面511bにおける辺511b1と約90°の角度をなす方位511cに沿って表面511bに垂直に切った断面は、台形をなす。言い換えれば、表面511aは、傾斜しない表面511bの辺511b1と約90°の角度をなす方位511cに沿って傾斜している。
【0086】
尚、辺511b1は、本発明に係る「一の表面の一辺」の一例である。
【0087】
第2板状光学部材512は、第1板状光学部材511と同様に、例えば板状のガラスからなり、第1板状光学部材511と同一形状を有している。即ち、第2板状光学部材512の表面512aは、当該表面512aに対向する第2板状光学部材512の表面512bに対して、角度βだけ傾斜している。つまり、第2板状光学部材512は、傾斜するように形成された表面512aと、傾斜しない表面512bとを有する楔形状に形成されている。第2板状光学部材512の傾斜しない表面512bにおける辺512b1と約90°の角度をなす方位に沿って表面512bに垂直に切った断面は、台形をなす。
【0088】
第1板状光学部材511と第2板状光学部材512とは、第1板状光学部材511の傾斜するように形成された表面511aと第2板状光学部材512の傾斜するように形成された表面512aとが互いに対向するように、且つ、厚さが薄くなる方向が互いに反対になるように配置されている。
【0089】
第1光学異方性層513は、例えばフィルム状の有機化合物からなる負の一軸性の位相差板(即ち、Cプレート)からなり、第1板状光学部材511と第2板状光学部材512との間に挟み込まれている。よって、第1光学異方性層513の光軸513pは、第1板状光学部材511の表面511aの法線方向511anに沿っている。第1光学異方性層513は、第1板状光学部材511の表面511aと第2板状光学部材512の表面512aとに例えば接着剤によって貼り付けられている。尚、第1光学異方性層513は、ディスコティック液晶を用いたCプレートであってもよいし、無延伸のセルロースエステルフィルム(例えば、無延伸のトリアセチルセルロース(TAC)、無延伸のセルロースアセテートプロピオネート(CAP)等)、二軸延伸したノルボルネン系樹脂等を用いた光学フィルムであってもよい。
【0090】
図3において、光学補償素子15aの側方に、第1光学異方性層513の平均的な屈折率楕円体255aを模式的に示している。この図において、nx及びnyはそれぞれ第1光学異方性層513の面方向(即ち、第1板状光学部材511の表面511aに沿った方向)の主屈折率を示しており、nzは厚さ方向(即ち、第1板状光学部材511の表面511aの法線方向511an)の主屈折率を示している。本実施形態では、主屈折率nx、ny及びnzは、nx=ny>nzなる関係を満たす構成とされている。即ち、厚さ方向の屈折率nzが他の方向の屈折率より小さく、屈折率楕円体では円盤型となる。この屈折率楕円体は、第1光学異方性層513の主表面(即ち、第1板状光学部材511の表面511aに沿った表面)に対して平行に配向されており、第1光学異方性層513の光軸513p(屈折率楕円体の短軸方向)は、主表面の法線方向(即ち、第1板状光学部材511の表面511aの法線方向511an)と平行になっている。
【0091】
図6(a)において、第2光学異方性層514は、例えばフィルム状の有機化合物からなる正の一軸性の位相差板(即ち、Aプレート)からなり、第1板状光学部材511の表面511bに形成されている。第2光学異方性層514の光軸514dは、第1板状光学部材511の表面511bに沿っており、更に、辺511b1と角度γをなす方向に沿っている。
【0092】
図5に示すように、角度γは、光学補償素子15aがプロジェクタ内に配置された状態において、第2光学異方性層514の光軸514dが偏光板15bの透過軸151bに沿う角度として設定され、本実施形態では約45°である。
【0093】
尚、角度γは、光学補償素子15aがプロジェクタ内に配置された状態において、第2光学異方性層514の光軸514dが第2の偏光板15dの透過軸151dに沿う角度として設定されてもよい。この場合には、角度γは、約135°となる。
【0094】
尚、第2光学異方性層514は、Aプレートに限られるものではなく、二軸プレートからなるようにしてもよい。
【0095】
尚、Aプレートは、主屈折率nx、ny及びnzが、nx>ny=nzなる関係を満たす光学フィルムであり、棒状液晶性化合物、1軸延伸ポリマー(例えば、ポリカーボネート等)等を用いて作製することができる。二軸プレートは、主屈折率nx、ny及びnzが、nx>ny>nzなる関係を満たす光学フィルムであり、延伸セルロースエステル(例えば、延伸セルロースアセテートプロピオネート(延伸CAP)、トリアセチルセルロース(延伸TAC)等)等を用いて作製することができる。
【0096】
図5に示すように、光学補償素子15aは、表面511aが傾斜する方位511cが配向方向43aに沿うように、且つ、第2光学異方性層514の光軸514dが偏光板15bの透過軸151bに沿うように配置されている。本実施形態では、液晶パネル15cの配向方向43aは、プロジェクタ内における水平方向(即ち、プロジェクタの底面における一の方向)に対して45°の角度をなす方向とされている。このため、光学補償素子15aは、その一辺(より具体的には、図6を参照して上述した表面511bにおける辺511b1に隣接する辺)がプロジェクタにおける水平方向に対して45°の角度をなすように配置されている。
【0097】
図4及び図5において、光学補償素子15aは、光学調整部80によって、回転軸81a及び82aの各々の回りに回転可能に構成されている。尚、光学調整部80は、本発明に係る「第1光学調整手段」及び「第2光学調整手段」の一例である。
【0098】
回転軸81aは、液晶パネル15cの基板面の法線方向から見て、液晶パネル15cにおける配向方向43a(98a)と直交する方向に沿った軸である。光学調整部80は、光学補償素子15aを回転軸81aの回りに回転させることで、液晶パネル15cの基板面に対して第1光学異方性層513(図4或いは図6参照)が傾斜する傾斜角を調整することが可能に構成されている。より具体的には、光学調整部80は、光学補償素子15aを回転軸81aの回りに角度θ1だけ回転させることで、第1光学異方性層513を液晶パネル15cの基板面に対して角度βと角度θ1との和である角度(β+θ1)だけ傾斜させることが可能に構成されている。
【0099】
回転軸82aは、液晶パネル15cの法線方向(言い換えれば、第1板状光学部材511の表面511bの法線方向)に沿った軸である。光学調整部80は、光学補償素子15aを回転軸82aの回りに角度θ2だけ回転させることで、第2光学異方性層514の光軸514dが偏光板15bの透過軸151bとなす角度を角度θ2だけ変更或いは調整することが可能に構成されている。
【0100】
次に、本実施形態に係るプロジェクタの作用効果について、図3から図6を参照して説明する。
【0101】
図3において、液晶パネル15cに封入された液晶層34は、光学的に正の一軸性を示すもので、液晶分子51のダイレクタ方向の屈折率が他の方向の屈折率より大きくなっている。即ち、液晶層34は、図3に平均的な屈折率楕円体250aを示すように、ラグビーボール型の屈折率楕円体を有するものとなっている。ここで、液晶層34の液晶分子51はプレチルト方向Pに沿って斜めに配向しており、黒表示の際に残留位相差を生じ、また斜め方向から観察したときの楕円形状が異なるために視角依存の位相差を有する。この位相差が黒表示における光漏れの原因となり、液晶パネルのコントラスト比を低下させることになる。
【0102】
しかるに、図3から図6において、本実施形態に係るプロジェクタによれば、光学補償素子15aを備えているので、当該プロジェクタの動作時に、光源12から出射された光が、液晶ライトバルブ15における、プレチルト方向Pに沿って斜めに配向した(即ち、液晶パネル15cの基板面の法線方向に対してプレチルト角だけ傾斜した)液晶分子51から構成される液晶層34や偏光板15b及び15d、マイクロレンズ95等を通過することで発生する光の位相差を、光学補償素子15aが有する第1光学異方性層513及び第2光学異方性層514によって補償することができる。
【0103】
より具体的には、図3において、光学補償素子15aが有する第1光学異方性層513は光学的に負の一軸性を示すものであるから、第1光学異方性層513の光軸513p(即ち、円盤型の屈折率楕円体255aのz方向の光軸)を、液晶層34における屈折率楕円体250aの光軸251aと平行に配置すれば、光学的な正負が逆になって、液晶パネル15cにおける複屈折効果を打ち消すことができる。
【0104】
そこで本実施形態では、図6を参照して上述したように、第1光学異方性層513は、楔形状に形成された第1板状光学部材511の傾斜した表面511aに形成され、第1光学異方性層513の光軸513pが液晶層34を構成する液晶分子51のプレチルト方向Pと略一致するように、第1光学異方性層513が、液晶パネル15cの基板面と平行な位置から、角度βだけ傾斜して配置されている。これにより、液晶パネル15cにおいて生じる位相差を三次元的に補償することが可能になる。つまり、第1光学異方性層513の光軸513pが、プレチルト角だけ傾斜した液晶分子51のプレチルト方向Pに沿うように、光学補償素子15aが配置されることで、第1光学異方性層513と液晶層34との光学的な正負が互いに逆になり、第1光学異方性層513によって液晶において生じる位相差を打ち消すことができる。
【0105】
更に、第2光学異方性層514の光軸514dが、偏光板15bの透過軸151bに沿うように、光学補償素子15aが配置されることで、第2光学異方性層514によって偏光板15b及び15dに起因して生する光の位相差やマイクロレンズ95の回折の影響による光の位相差を補償することができる。
【0106】
加えて、図4及び図5において、本実施形態では特に、光学調整部80を備えているので、光学調整部80によって、光学補償素子15aを回転軸82aの回りに回転させることで、偏光板15b及び15dに起因する位相差やマイクロレンズ95の回折の影響による位相差をより確実に補償することができる。特に、偏光板の保護膜152は面内で光軸がばらついているため、保護膜152の影響により画像表示領域内で輝度ムラが生じ得るが、第2光学異方性層154によりコントラストだけでなく上述の如き輝度ムラも抑えることができる。
【0107】
尚、光学調整部80によって、光学補償素子15aを回転軸81aの回りに回転させることで、光学補償素子15aを傾斜させてもよい。この場合には、液晶パネル15cにおける配向方向43aと、第1光学異方性層513の光軸513pとが、液晶パネル15cの基板の法線方向から見て平行に保持されたまま、光軸513pとプレチルト方向Pとを一致させるように調整することができ、極めて容易に最適な表示を得ることができる。
【0108】
更に加えて、本実施形態では特に、図6を参照して上述したように、第1光学異方性層513及び第2光学異方性層514は、楔形状を有する第1板状光学部材511の表面511a及び511bに夫々形成されることで1つの光学補償素子15aを構成している。よって、仮に第1光学異方性層513及び第2光学異方性層514を互いに異なる(別個の)ガラス基板に夫々形成することで2つの光学補償素子として構成した場合と比較して、プロジェクタ内に配置するためのスペースが少なくて済む(即ち、省スペース化を図ることができる)。従って、プロジェクタ内に第1光学異方性層513及び第2光学異方性層514を1つの光学補償素子15aとして容易に配置することができる。
【0109】
光学補償素子15aによって上述の如き補償を行うことで、液晶パネル15cを通過した光が出射側の偏光板15dに対し、位相がずれた状態で入射するのを防止することができる。よって、出射側の偏光板15dにおいて、本来通過させないはずの光が漏れる可能性は小さくなり、コントラストの低下や視野角の縮小を防止することができる。
【0110】
図6において、本実施形態では特に、光学補償素子15aは、第1板状光学部材511との間で第1光学異方性層513を挟み込むように配置されると共に、第1板状光学部材511と同様に楔形状を有する第2板状光学部材512を備えている。よって、光学補償素子15aから出射される光が、光学補償素子15aに入射される光に対して傾いてしまうことを防止できる。即ち、第1板状光学部材511に起因して生じる光の屈折と、第2板状光学部材512に起因して生じる光の屈折とを互いに打ち消し合わせることができ、光が光学補償素子15aを通過する際における光の直進性を高めることができる。
【0111】
更に、光学補償素子15aに入射される光は、第2板状光学部材512を通過した後に、第1光学異方性層513に入射されるので、第1光学異方性層513の劣化を抑制することができる、言い換えれば、光学補償素子15aの耐光性を高めることができる。また、本実施形態では、光学補償素子15aに入射される光は、第2板状光学部材512及び第1板状光学部材511を通過した後に、第2光学異方性層514に入射されるので、第2光学異方性層514の劣化を抑制することができる。
【0112】
本実施形態に係るプロジェクタにおける液晶ライトバルブ15の光学調整は、光学調整部80によって光学補償素子15aを回転軸81a回りに回転させることで、液晶パネル15cの基板面に対して第1光学補償層513が傾斜する傾斜角の調整を行う傾斜調整ステップと、光学調整部80によって光学補償素子15aを回転軸82a回りに回転させる回転調整ステップとにより実施することができる。
【0113】
図4及び図5において、傾斜調整ステップでは、回転軸81aを中心とする軸回りに光学補償素子15aを角度θ1だけ回転させて第1光学補償層513が傾斜する傾斜角を調整することで、第1光学異方性層513の光軸513pと、液晶層34のプレチルト方向Pとを略一致させる。尚、第1光学補償層513が傾斜する傾斜角の大きさは、上述した角度(β+θ1)である。これにより、液晶パネル15cの基板面の法線に対してプレチルト角だけ傾斜して配向した液晶分子51から構成された液晶層34の位相差を三次元的に補償できる位置に第1光学異方性層513をより一層確実に配置することができる。
【0114】
回転調整ステップでは、回転軸82aを中心とする軸回りに光学補償素子15aを角度θ2だけ回転させて第2光学補償層514の光軸514dの方位を調整することで、偏光板15b及び15dに起因する光の位相差や、マイクロレンズ95の回折の影響により生じる光の位相差を補償することができる位置に光学補償素子15aを配置する。即ち、角度θ2を変化させることで第2光学異方性層514の光軸514dと、偏光板15b及び15dや液晶パネル15cの光軸との位置関係を変更し、第2光学異方性層514の位置を最適化することができる。
【0115】
尚、上述した回転調整ステップは、実際にコントラスト(又は黒表示の輝度)を測定しつつ実施することが好ましい。一般に、偏光板の保護膜152における面方向の光軸は一定の方向に設定されているわけではなく、更に同一の偏光板でも面内で光軸がばらついていることがある。そのため、光学補償素子15aを回転軸82a回りに回転させる角度θ2を一定角度に設定することは困難であり、実際に最大コントラストが得られる位置、或いは黒レベルが最低になる位置をもって光学補償素子15aの最適位置とすればよい。
【0116】
次に、本発明の作用効果について、図7を参照して更に詳細に説明する。
【0117】
図7は、本発明の作用効果を説明するためのグラフである。
【0118】
図7のグラフは、第1光学異方性層513の傾斜角に対する液晶ライトバルブのコントラスト変化を示すグラフである。尚、第1光学異方性層513の傾斜角とは、第1光学異方性513が液晶パネル15cの基板面に対して傾斜する角度であり、本実施形態では、上述したように、角度(β+θ1)である。
【0119】
図7において、データD1に示すように、液晶分子51(図3参照)のプレチルト角が2°〜5°の範囲内である場合(即ち、プレチルト角が小さい場合)には、第1光学異方性層513の傾斜角を6°とすれば、最大のコントラストが得られる。しかしながら、データD2に示すように、液晶分子51のプレチルト角が6°〜9°の範囲内である場合(即ち、プレチルト角が大きい場合)には、第1光学異方性層513の傾斜角を10°としなければ、最大のコントラストを得ることができない。よって、仮に、第1光学異方性層513を単に平板状の位相板として形成した場合には、プロジェクタ内に第1光学異方性層513を傾斜させるためのスペースが十分に確保されないために、第1光学異方性層513の傾斜角を10°とすることができず、最大のコントラストを得ることができないおそれがある。
【0120】
しかるに、本実施形態に係る光学補償素子15aによれば、上述したように光学補償素子15aにおける第1光学異方性層513が光学補償素子15aの表面511b(或いは表面512b)に対して角度βだけ傾斜しているので、光学補償素子15aが傾斜する角度θ1が小さくても最大のコントラストを得ることができる。即ち、角度βが例えば6°に設定された光学補償素子15aによれば、データD1に示すようなプレチルト角が2°〜5°の範囲内である場合には、角度θ1を0°とすることで最大のコントラストを得ることができ、データD2に示すようなプレチルト角が6°〜9°の範囲内である場合には、角度θ1を4°とすることで最大のコントラストを得ることができる。言い換えれば、最大のコントラストを得るための角度θ1を角度β分だけ小さくすることができる。つまり、本実施形態に係る光学補償素子15aによれば、仮に第1光学異方性層513を単に平板状の位相板として形成した場合と比較して、光学補償素子15aが傾斜する角度θ1を小さくし或いは無くしつつ、コントラストを高めることができる。よって、プロジェクタ内に光学補償素子15aを傾斜させるためのスペースを殆ど或いは全く設けなくてもよい。このため、プロジェクタの小型化も可能となる。
【0121】
更に、光学補償素子15aを液晶パネル15cの基板面に対して傾斜させる角度θ1を小さくすることができるので、液晶パネル15cの放熱性を高めることができる。即ち、プロジェクタ10(図1参照)の筺体内に配置された液晶パネル15cを冷却するための冷却空気の流れを、光学補償素子15aが液晶パネル15cの基板面に対して傾斜して配置されることで妨げてしまうことを低減或いは防止できる。
【0122】
加えて、液晶分子51が液晶パネル15cの基板面の法線方向となす角度であるプレチルト角を大きくすることが可能となる。よって、液晶分子51の応答速度の向上やリバースチルトドメインの低減も可能となる。
【0123】
尚、本実施形態では、液晶ライトバルブ15の構成として、液晶パネル15cの光射出側に光学補償素子15aが配置された場合について説明したが、光学補償素子15aは、液晶パネル15aの光入射側に配置されてもよい。また、本実施形態では、第2光学異方性層514が第1光学異方性層513に対して光出射側に配置された場合について説明したが、第2光学異方性層514は、第1光学異方性層513に対して光入射側に配置されてもよい。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係るプロジェクタについて、図8及び図9を参照して説明する。
【0124】
先ず、本実施形態に係るプロジェクタが備える光学補償素子の構成について、図8を参照して説明する。
【0125】
図8は、第2実施形態に係る光学補償素子の構成を示す斜視図であり、図8(a)は、第2実施形態に係る光学補償素子の分解斜視図であり、図8(b)は、第2実施形態に係る光学補償素子の全体を示す斜視図である。尚、図8では、説明の便宜上、角度βを実際よりも大きくなるように図示している。図8において、図6に示した第1実施形態に係る構成要素と同様の構成要素に同一の参照符合を付し、それらの説明は適宜省略する。
【0126】
本実施形態に係るプロジェクタは、上述した第1実施形態における光学補償素子15aに代えて光学補償素子15a2を備えている点で、上述した第1実施形態に係るプロジェクタと異なり、その他の点については、上述した第1実施形態に係るプロジェクタと概ね同様に構成されている。
【0127】
図8(a)及び図8(b)に示すように、光学異方性素子15a2は、第1板状光学部材521と、第2板状光学部材522と、第1光学異方性層523と、第2光学異方性層524とを備えている。
【0128】
第1板状光学部材521は、例えば板状のガラスからなり、第1板状光学部材521の表面521aは、当該表面521aに対向する第1板状光学部材521の表面521bに対して、角度βだけ傾斜している。つまり、第1板状光学部材521は、傾斜するように形成された表面521aと、傾斜しない表面521bとを有する楔形状に形成されている。
【0129】
本実施形態では特に、第1板状光学部材521の傾斜しない表面521bにおける辺521b1と約45°の角度をなす方位521cに沿って表面521bに垂直に切った断面は、台形をなす。言い換えれば、表面521aは、傾斜しない表面521bの辺521b1と約45°の角度をなす方位521cに沿って傾斜している。
【0130】
尚、辺521b1は、本発明に係る「一の表面の一辺」の一例である。
【0131】
第2板状光学部材522は、例えば板状のガラスからなり、第1板状光学部材521と同一形状を有している。即ち、第2板状光学部材522の表面522aは、当該表面522aに対向する第2板状光学部材522の表面522bに対して、角度βだけ傾斜している。第2板状光学部材522の傾斜しない表面522bにおける辺522b1と約45度をなす方位に沿って表面522bに垂直に切った断面は、台形をなす。
【0132】
第1板状光学部材521と第2板状光学部材522とは、第1板状光学部材521の傾斜するように形成された表面521aと第2板状光学部材522の傾斜するように形成された表面522aとが互いに対向するように、且つ、厚さの薄くなる方向が互いに反対になるように配置されている。
【0133】
第1光学異方性層523は、例えばフィルム状の有機化合物からなる負の一軸性の位相差板(即ち、Cプレート)からなり、第1板状光学部材521と第2板状光学部材522との間に挟み込まれている。よって、光学異方性層523の光軸523pは、第1板状光学部材521の表面521aの法線方向521anに沿っている。
【0134】
第2光学異方性層524は、例えばフィルム状の有機化合物からなる正の一軸性の位相差板(即ち、Aプレート)からなり、第1板状光学部材521の表面521bに形成されている。第2光学異方性層524の光軸524dは、第1板状光学部材511の表面511bに沿っており、更に、辺521b1に対して垂直な方向(即ち、辺521b1に対して約90°の角度をなす方向)に沿っている。
【0135】
図9に示すように、光学補償素子15a2は、表面521aが傾斜する方位521cが配向方向43aに沿うように、且つ、第2光学異方性層524の光軸524dが偏光板15bの透過軸151bに沿うように配置されている。このように配置されることで、第1光学異方性層523の光軸523pと液晶パネル15cの明視方向とを略一致させることが可能となる。よって、液晶パネル15cにおいて生じる位相差を第1光学異方性層523によって三次元的に補償することが可能になる。更に、このように配置されることで、第2光学異方性層524によって偏光板15b及び15dに起因して生する光の位相差やマイクロレンズ95の回折の影響による光の位相差を補償することができる。
【0136】
本実施形態では、液晶パネル15cの配向方向43aは、プロジェクタ内における水平方向に対して約45°の角度をなす方向とされている。
【0137】
本実施形態では特に、図8を参照して上述したように、光学補償素子15a2の第1板状光学部材521における表面521aが傾斜する方位である方位521cは、辺521b1と約45°の角度をなしている。よって、光学補償素子15a2を、辺521b1がプロジェクタにおける水平方向に沿うように配置することで、上述のように、表面521aが傾斜する方位521cが配向方向43aに沿うように、且つ、第2光学異方性層524の光軸524dが偏光板15bの透過軸151bに沿うように配置することができる。言い換えれば、光学補償素子15a2の第1板状光学部材521における表面521aが傾斜する方位である方位521cが、辺521b1と約45°の角度をなしているがゆえに、図5を参照して上述した第1実施形態における光学補償素子15aが、その一辺がプロジェクタにおける水平方向に対して約45°の角度をなすように配置されるのとは異なり、光学補償素子15a2をその一辺がプロジェクタにおける水平方向に沿うように配置することができる。このため、光学補償素子15a2をプロジェクタ内において容易に安定して配置することが可能となる。或いは、光学補償素子15a2を回転させるための機構を設けなくとも、光学補償素子15aをプロジェクタ内にいわば落とし込むだけで、光学補償素子15aのプロジェクタ内における位置決めをすることも可能となる。
【0138】
以上説明したように、第2実施形態に係るプロジェクタによれば、液晶において生じる光の位相差を光学補償素子15a2が有する第1光学異方性層523によって補償することができ、更に、偏光板15b及び15dに起因して生ずる光の位相差を光学補償素子15a2が有する第2光学異方性層524によって補償することができる。よって、高コントラストで高品位な表示を得ることができる。更に、光学補償素子15a2をプロジェクタ内において容易に安定して配置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】第1実施形態に係るプロジェクタの概略構成図である。
【図2】液晶パネルの全体構成図及びH−H'線断面図である。
【図3】液晶ライトバルブの構成を示す説明図である。
【図4】液晶ライトバルブの各構成部材の光学軸配置を示す図である。
【図5】第1実施形態に係るプロジェクタの具体的構成例を示す斜視図である。
【図6】第1実施形態に係る光学補償素子の構成を示す斜視図である。
【図7】作用効果を説明するためのグラフである。
【図8】第2実施形態に係る光学補償素子の構成を示す斜視図である。
【図9】第2実施形態に係るプロジェクタの具体的構成例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0140】
10…プロジェクタ、11…スクリーン、12…光源、15、16、17…液晶ライトバルブ、15a…光学補償素子、15b、16b、17b、15d、16d、17d…偏光板、15c、16c、17c…液晶パネル、31…対向基板、32…TFTアレイ基板、43a、98a…配向方向、43、98…配向膜、51…液晶分子、81a…回転軸、82a…回転軸、LB…青色光、LG…緑色光、LR…赤色光、P'…光軸、P…プレチルト方向、15a、15a2…光学補償素子、511、521…第1板状光学部材、513、523…第1光学異方性層、512、522…第2板状光学部材、514、524…第2光学異方性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出射する光源と、
一対の基板間に液晶が挟持されてなり、前記光を変調する液晶パネルと、
前記液晶パネルを挟んで配置された一対の偏光板と、
前記一対の偏光板間に配置され(i)一の表面と、該一の表面に対向すると共に前記一の表面に対して傾斜する他の表面とを有する第1板状光学部材と、
(ii)前記他の表面に形成され、負の屈折率異方性を有すると共に光軸として前記他の表面の法線に沿った第1光軸を有する第1光学異方性層と、(iii)前記一の表面に形成され、正又は負の屈折率異方性を有すると共に光軸として前記一の表面に沿った第2光軸を有する第2光学異方性層とを有する光学補償素子と
を備えたことを特徴とするプロジェクタ。
【請求項2】
前記光学補償素子を前記液晶パネルの基板面の法線を中心とする軸回りに回転させることが可能な第1光学調整手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のプロジェクタ。
【請求項3】
前記一の表面及び前記他の表面の各々は、四辺形状を有しており、
前記他の表面は、前記一の表面の法線方向から見て、前記一の表面の一辺に対して垂直な方向に沿って、前記傾斜するように形成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のプロジェクタ。
【請求項4】
前記一の表面及び前記他の表面の各々は、四辺形状を有しており、
前記他の表面は、前記一の表面の法線方向から見て、前記一の表面の一辺に対して鋭角をなす方向に沿って、前記傾斜するように形成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のプロジェクタ。
【請求項5】
前記光学補償素子は、
前記第1板状光学部材との間で前記第1光学異方性層を挟み込むように配置された第2板状光学部材を更に備え、
前記第2板状光学部材の前記第1光学異方性層に対向する一の表面は、当該一の表面に対向する前記第2板状光学部材の他の表面に対して傾斜するように形成されている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のプロジェクタ。
【請求項6】
前記光学補償素子を前記液晶パネルの基板面に対して傾斜させることが可能な第2光学調整手段を更に備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のプロジェクタ。
【請求項7】
前記第1光軸と前記液晶パネルの明視方向とが一致していることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のプロジェクタ。
【請求項8】
光を出射する光源と、一対の基板間に液晶が挟持されてなり前記光を変調する液晶パネルと、前記液晶パネルを挟んで配置された一対の偏光板と、前記一対の偏光板間に配置され、(i)一の表面と、該一の表面に対向すると共に前記一の表面に対して傾斜する他の表面とを有する第1板状光学部材と、(ii)前記他の表面に形成され、負の屈折率異方性を有すると共に光軸として前記他の表面の法線に沿った第1光軸を有する第1光学異方性層と、(iii)前記一の表面に形成され、正又は負の屈折率異方性を有すると共に光軸として前記一の表面に沿った第2光軸を有する第2光学異方性層とを有する光学補償素子とを備えたプロジェクタの光学補償方法であって、
前記光学補償素子の前記一の表面を前記液晶パネルの基板面に対して傾斜させる傾斜調整ステップと、
前記光学補償素子を前記液晶パネルの基板面法線方向の軸回りに回転させる回転調整ステップと
を含むことを特徴とするプロジェクタの光学補償方法。
【請求項9】
一対の基板間に液晶が挟持されてなる液晶パネルと、
前記液晶パネルを挟んで配置された一対の偏光板と、
前記一対の偏光板間に配置され、(i)一の表面と、該一の表面に対向すると共に前記一の表面に対して傾斜する他の表面とを有する第1板状光学部材と、(ii)前記他の表面に形成され、負の屈折率異方性を有すると共に光軸として前記他の表面の法線に沿った第1光軸を有する第1光学異方性層と、(iii)前記一の表面に形成され、正又は負の屈折率異方性を有すると共に光軸として前記一の表面に沿った第2光軸を有する第2光学異方性層とを有する光学補償素子と
を備えたことを特徴とする液晶装置。
【請求項10】
前記一の表面及び他の表面の各々は、四辺形状を有しており、
前記他の表面は、前記一の表面の法線方向から見て前記一の表面の一辺に対して垂直な方向に沿って、前記傾斜するように形成されている
ことを特徴とする請求項9に記載の液晶装置。
【請求項11】
前記一の表面及び他の表面の各々は、四辺形状を有しており、
前記他の表面は、前記一の表面の法線方向から見て、前記一の表面の一辺に対して鋭角をなす方向に沿って、前記傾斜するように形成されている
ことを特徴とする請求項9に記載の液晶装置。
【請求項12】
前記光学補償素子は、
前記第1板状光学部材との間で前記第1光学異方性層を挟み込むように配置された第2板状光学部材を更に備え、
前記第2板状光学部材の前記光学異方性層に対向する一の表面は、当該一の表面に対向する前記第2板状光学部材の他の表面に対して傾斜するように形成されている
ことを特徴とする請求項9から11のいずれか一項に記載の液晶装置。
【請求項13】
前記第1光軸と前記液晶パネルの明視方向とが一致していることを特徴とする請求項9から12のいずれか一項に記載の液晶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−25541(P2009−25541A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188359(P2007−188359)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】