説明

プロジェクタ用絞り装置

【課題】耐熱性に優れているうえに作動の円滑性,静音性,耐久性などにも優れた絞り羽根を備えている低コストなプロジェクタ用絞り装置を提供すること。
【解決手段】楕円形の開口部4a,5aを有している合成樹脂製の絞り羽根4,5は、電磁アクチュエータMの回転子8が回転すると、その回転子8と一体の出力ピン8c,8dによって相反する方向へ移動させられ、開口部4a,5aの縁によって絞り開口の大きさを変化させるようになっている。絞り羽根4,5の光源側の面には、開口部4a,5aの周囲の領域と重合するようにして、金属製の耐熱板6,7が、熱カシメ加工によって取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーンなどに画像を投影させるプロジェクタ用の絞り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタ用の絞り装置の中には、両者の間に羽根室を構成している二つの板部材が、全体として細長い形状をしていて、羽根室内に配置されている2枚の絞り羽根が、駆動手段によって相反する方向へ直線的に作動させられ、それらに形成された絞り開口形成縁によって複数の大きさの絞り開口を連続的又は段階的に制御するようにしたものが知られており、その一例が、下記の特許文献1に記載されている。そして、その絞り装置の場合には、2枚の絞り羽根は、それらの各々に形成されている複数の長孔を、一方の板部材に立設された複数の軸に嵌合させ、それらの軸に案内されて直線的に作動するように構成されている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−267227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のプロジェクタ用絞り装置は、光源の近傍位置において、羽根室を構成している板部材の一方を光源に向けて配置されるのが普通である。そのため、羽根室内に配置されている絞り羽根の光源側の面の一部には、板部材に形成されている光路用の開口部を通過した強力な光源光が直接当たることになる。従って、この種のプロジェクタ用絞り装置の絞り羽根には、耐熱性が要求されている。また、絞り羽根は、画像条件の変化などに対応して作動させる必要があることから、円滑な応答性と静音性が要求されており、もちろん耐久性も要求されている。
【0005】
ところで、一般に、絞り羽根のような板状の部材の場合は、合成樹脂製にするよりは金属製にした方が耐熱性に優れている。しかしながら、金属製にすると、重量があるため、円滑な作動を得るためには大きな駆動力が必要になるし、摩擦音を発生させやすいという問題点がある。また、軽くするために薄くすると、絞り羽根の長孔が嵌合している軸を傷付けたりして作動が不安定になり、耐久性が劣るようになってしまう。その点、合成樹脂製にすれば軽いので、大きな駆動力を必要としないし、音を発生させるようなこともなく、円滑な作動を得ることが可能になる。しかしながら、板状の絞り羽根を、一般の合成樹脂材料で製作すると、強力な光源光の熱によって変形したり、脆くなってしまうという問題点がある。そのため、特殊な材料を選定したり、特殊な表面処理加工を施したりすることが必要になるが、通常の表面処理加工で皮膜を薄く形成したくらいでは高熱に耐えることができないため、非常に高価なものになってしまう。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、全体として細長い形状をした1枚又は2枚の絞り羽根を、それらの略長手方向に沿って往復作動させるようにしたプロジェクタ用絞り装置において、優れた耐熱性を有しているうえに、作動の円滑性,静音性,耐久性などにも優れた絞り羽根を備えている低コストなプロジェクタ用絞り装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明のプロジェクタ用絞り装置は、各々が光路用の開口部を有していて全体として細長い形状をしており両者の間に構成された羽根室内においていずれか一方の幅方向の両端近傍部に少なくとも一つずつの軸を立設している二つの板部材と、少なくとも前記幅方向の一端近傍部に立設されている方の前記軸に嵌合させている長孔と絞り開口形成縁とを有していて光源側の面には前記開口部で光源光にさらされる領域に金属製の耐熱板を熱カシメで取り付けており駆動手段によって前記二つの板部材の長手方向へ往復作動させられる合成樹脂製の第1絞り羽根と、少なくとも前記幅方向の他端近傍部に立設されている方の前記軸に嵌合させている長孔と絞り開口形成縁とを有していて光源側の面には前記開口部で光源光にさらされる領域に金属製の耐熱板を熱カシメで取り付けており駆動手段によって前記第1絞り羽根とは略相反する方向へ同時に往復作動させられて該絞り開口形成縁と前記第1絞り羽根の前記絞り開口形成縁とによって前記開口部よりも小さい絞り開口を形成する第2絞り羽根と、を備えているようにする。
【0008】
その場合、前記駆動手段は、回転子を有していて前記二つの板部材の一方に取り付けられている電磁アクチュエータであり、該回転子には、相反する径方向へ延伸した二つの腕部が設けられていて、それらの腕部の先端に設けられている出力ピンを、前記各絞り羽根に形成された円形の孔又は長孔に嵌合させているようにすると、実用的な構成になる。
【0009】
また、上記の目的を達成するために、本発明のプロジェクタ用絞り装置は、各々が光路用の開口部を有していて全体として細長い形状をしており両者の間に構成された羽根室内においていずれか一方の幅方向の両端近傍部のうち少なくとも一方に少なくとも一つの軸を立設している二つの板部材と、前記軸に嵌合させている長孔と前記開口部よりも小さい絞り開口部とを有していて光源側の面には前記開口部で光源光にさらされる領域に金属製の耐熱板を熱カシメで取り付けており駆動手段によって前記地板の長手方向へ往復作動させられる合成樹脂製の絞り羽根と、を備えているようにしてもよい。
【0010】
その場合、前記駆動手段は、回転子を有していて前記二つの板部材の一方に取り付けられている電磁アクチュエータであり、該回転子には、径方向へ延伸した一つの腕部が設けられていて、該腕部の先端に設けられている出力ピンを、前記絞り羽根に形成された円形の孔又は長孔に嵌合させているようにすると、実用的な構成になる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の絞り装置によれば、絞り羽根を合成樹脂製として、作動の円滑性,静音性,耐久性などを確保したうえに、光源光にさらされる面に金属製の耐熱板を熱カシメで取り付けるようにしたものであるため、優れた耐熱性が得られるという利点があり、しかも、駆動力も従来と同等でよいし、耐熱板の取り付けも熱カシメであるから簡単であり、加工コストも安くて済むという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態を、図示した二つの実施例によって説明する。尚、実施例1は、2枚の絞り羽根を備えていて、複数の絞り開口を制御できるようにしたものであり、実施例2は、1枚の絞り羽根によって一つの小さい絞り開口を制御できるようにしたものである。そして、図1〜図7は実施例1を説明するためのものであり、図8〜図10は実施例2を説明するためのものである。
【実施例1】
【0013】
本実施例のプロジェクタ用絞り装置は、相反する方向へ往復作動させられる2枚の絞り羽根を備えたものであって、絞り開口の大きさを連続的又は段階的に制御できるように構成したものである。尚、図1は、光路の全開状態を投影側、即ち光源とは反対の方向から見て示した正面図であり、図2は、図1と同じ状態を光源側から見て示した背面図である。また、図3は、図1のA―A線断面図であり、図4は、図2においてカバー板を外し、羽根室内を示した平面図である。更に、図5は、図4に示されている第1絞り羽根に対する耐熱板の組付け構成を説明するための平面図であって、図5(a)は組付け完了状態を示したものであり、図5(b)は耐熱板を示したものであり、図5(c)は第1絞り羽根を示したものである。更にまた、図6は、図4に示されている第2絞り羽根に対する耐熱板の組付け構成を説明するための平面図であって、図6(a)は組付け完了状態を示したものであり、図6(b)は耐熱板を示したものであり、図6(c)は第2絞り板を示したものである。そして、図7は、最小絞り開口の制御状態を図4と同じようにして示した平面図である。
【0014】
先ず、本実施例の構成を説明する。地板1は、合成樹脂製であって、図1に示されているように、細長い形状をしており、円形をした光路用の開口部1aを有しているほか、周辺部には、プロジェクタ本体への三つの取付部1b,1c,1dを有している。また、地板1の右端には、後述する周知の電磁アクチュエータMが取り付けられていて、その上面(図1における手前側の面)には、プリント配線板Pが取り付けられている。
【0015】
図2に示されているように、地板1の背面側には、金属製のカバー板2が、周辺部に設けられた明示していない複数のフック部と、ビス3とによって取り付けられていて、地板1との間に羽根室を構成している。このカバー板2は、地板1と略同じような細長い形状をしており、円形をした光路用の開口部2aを有しているほか、略円弧状をした二つの長孔2b,2cと、通常の形状をした二つの長孔2d,2eを有している。そして、図1から分かるように、このカバー板2の開口部2aは、地板1の開口部1aよりも直径が小さくて、光路の最大開口を規制している。尚、図4及び図7においては、この開口部2aを二点鎖線で示してある。
【0016】
次に、主に図3〜図6を用いて、羽根室内の構成を説明する。図4に示されているように、地板1には、左端近傍部に、大きな異形の開口部1eが形成されていて、その開口部1eを通して上記した電磁アクチュエータMの一部の構成が見えるようになっている。また、地板1の羽根室側の面には、円形をした開口部1aの近傍であって、幅方向の両端近傍部に、二つの支軸1f,1gが立設されており、異形の開口部1eの近傍には、上記のビス3をねじ込むための取付部1hが設けられている。
【0017】
それらのうち、二つの支軸1f,1gは、図3に示されているように、地板1側から、台部1f−1,1g−1、軸部1f−2,1g−2、挿入部1f−3,1g−3となるように形成されている。そして、台部1f−1,1g−1は、地板1からの高さが異なっていて、軸部1f−2,1g−2側に円環状の平面を有している。また、軸部1f−2,1g−2は断面形状が円形をしているが、挿入部1f−3,1g−3は、断面が小判状をしていて、カバー板2の突出し部に形成された上記の長孔2d,2eに挿入されている。
【0018】
羽根室内には、第1絞り羽根4と第2絞り羽根5とが、第1絞り羽根4が地板1側になるようにして配置されている。それらの絞り羽根4,5は、いずれも合成樹脂製であって、金属製の耐熱板6,7を取り付けている。そこで、それらの絞り羽根4,5に対する耐熱板6,7の取り付け構成を、図5及び図6を用いて説明する。尚、図5及び図6で用いている符号の全てを、図3,図4,図7においても付けようとすると、図面が非常に見にくくなってしまうので、それらの三つの図面には、代表的な符号だけを付けてある。
【0019】
先ず、第1絞り羽根4は、図5(c)に示されているように、楕円形をした開口部4aと、長孔4bと、円形状の孔4cとを有している。また、図5(c)の手前側の面、即ち光源側となる面には、四つの軸4d,4e,4f,4gが立設されている。そして、長孔4bと孔4cの周囲には、肉厚部4h,4iが形成されている。また、この第1絞り羽根4に取り付けられている耐熱板6は、図5(b)に示されているように、楕円形をした開口部6aと、逃げ部6bと、小判型をした孔6cと、円形状をした三つの孔6d,6e,6fとを有している。
【0020】
この耐熱板6は、次のようにして、第1絞り羽根4に取り付けられている。先ず、第1絞り羽根4の軸4d,4e,4f,4gと耐熱板6の孔6c,6d,6e,6fとを嵌合させて、両者を重合状態にする。このとき、軸4d,4eと孔6c,6dとが位置決めの役目をしているので、両者の開口部4a,6aも重なるようになっている。しかしながら、加工上の誤差も考慮する必要があるので、実際の設計上では、光源側となる耐熱板6の開口部6aよりも開口部4aの方を大きくしておくのが好ましい。
【0021】
また、そのような重合状態のとき、軸4f,4gの先端は、孔6e,6fから突き出ている。そこで、それらの軸4f,4gの先端を熱溶解させ、鍔状に変形させることによって、両者を一体化させる。図5(a)は、そのような熱カシメ加工によって、耐熱板6が第1絞り羽根4に組み付けられた状態を示したものである。そして、このようにして耐熱板6を取り付けた第1絞り羽根4は、図3に示されているように、幅方向の一端側に形成されている長孔4bを、上記の支軸1fの軸部1f−2に嵌合させている。そのため、第1絞り羽根4は、長孔4bの内壁が軸部1f−2に線接触するほか、支軸1fの台部1f−1と、カバー板2の突出し部2fとに面接触するようになる。
【0022】
他方、第2絞り羽根5は、図6(c)に示されているように、楕円形をした開口部5aと、長孔5bと、円形状の孔5cとを有している。また、図6(c)の手前側の面、即ち光源側となる面には、四つの軸5d,5e,5f,5gが立設されていて、長孔5bと孔5cの周囲には、肉厚部5h,5iが形成されている。この第2絞り羽根5に取り付けられている金属製の耐熱板7は、図6(b)に示されているように、楕円形をした開口部7aと、逃げ部7bと、小判型をした孔7cと、円形状をした三つの孔7d,7e,7fとを有している。
【0023】
また、この耐熱板7は、上記の耐熱板6の場合と同様に、孔7c,7d,7e,7fを第2絞り羽根5の軸5d,5e,5f,5gに嵌合させて第2絞り羽根5に重合させ、熱カシメ加工によって、図6(a)に示された組み付け状態にさせられている。そして、耐熱板7を取り付けた第2絞り羽根5は、図3に示されているように、長孔5bを、上記の支軸1gの軸部1g−2に嵌合させている。そのため、第2絞り羽根5は、長孔5bの内壁が軸部1g−2に線接触するほか、支軸1gの台部1g−1と、カバー板2の突出し部2gとに面接触するようになる。
【0024】
尚、図6(a)においては、開口部5a,7aが完全に重なっているが、上記の場合と同様に、実際には、光源側となる耐熱板7の開口部7aよりも第2絞り羽根5の開口部5aの方を大きくするのが好ましい。従って、本実施例の場合には、後述の作動説明からも分かるように、第1絞り羽根4の開口部4aの縁の一部と第2絞り羽根5の開口部5aの縁の一部が、絞り開口形成縁になるが、それらの開口部4a,5aを、耐熱板6,7の開口部6a,7aよりも大きくした場合には、開口部6a,7aの縁の一部が絞り開口形成縁になる。従って、そのように形成された絞り開口形成縁も、実質的には、本発明の第1絞り羽根と第2絞り羽根との絞り開口形成縁ということになる。
【0025】
次に、図4を用いて、上記の電磁アクチュエータMの構成を簡単に説明する。本実施例の電磁アクチュエータMは、特許文献1や、特開2005−24638号公報の第2実施例に記載されているような、周知の電流制御式のモータに属するものである。回転子8は、永久磁石製であって、二つの固定子枠に軸受けされており、それらの軸受け部を囲むようにして二つの固定子枠の外側にコイル9が巻回されている。そして、この電磁アクチュエータMは、回転子8の回転軸を垂直にして地板1に取り付けられている。そのため、図4においては、一方の固定子枠10の一部だけが、羽根室側から見えている。
【0026】
また、回転子8には、二つの腕部8a,8bが一体化されていて、固定子枠の外側に延伸している先端には出力ピン8c,8dが設けられており、羽根室内で、上記の絞り羽根4,5の孔4c,5cに対し、回転可能に嵌合している。そして、出力ピン8c,8dの先端は、カバー板2の上記の長孔2b,2cに挿入されている。また、もう一方の明示されていない方の固定子枠には、図示していないホール素子が取り付けられている。
【0027】
そして、この電磁アクチュエータMは、コイル9に順方向の電流を供給すると、回転子8を時計方向へ回転させる力が発生し、また、コイル9に逆方向の電流を供給すると、回転子8を反時計方向へ回転させる力が発生するようになっており、図示していないホール素子によって回転子8の回転位置を検出することによって、電流の供給方向や電流値を制御し、所定の回転位置で回転子8を停止させることができるようになっている。尚、本実施例では、一つのコイル9を巻回し、このような制御を行なえるようにしているが、周知のように、二つのコイルを巻回して、一方のコイルに対して順方向の電流を供給すると、回転子8を時計方向へ回転させる力が発生し、他方のコイルに対して順方向の電流を供給すると、回転子8を反時計方向へ回転させる力が発生するようにしておき、両者の回転力がバランスしたところで、回転子8を停止させるようにしても構わない。
【0028】
次に、図4及び図7を用いて本実施例の作動を説明する。尚、プロジェクタの仕様によっては、光源が点灯していないときには、光路を全開にしておく場合と、光路を閉鎖するか最小にしておく場合があるが、本実施例では前者の場合で説明する。図4に示されている状態は、プロジェクタの不使用状態を示したものである。そのため、コイル9には、電流が供給されていない。そして、このとき、最大光路を規制しているカバー板2の開口部2aは、全開状態になっている。使用に際して電源をオンにすると、光源が点灯し、コイル9に順方向の電流が供給されるが、このときに回転子8に与えられる回転力は僅かであって、2枚の絞り羽根4,5を伴って回転するまでには至らない。
【0029】
投影が開始されると、その像の明るさ状態に応じて、供給電流が調節され、回転子8が時計方向へ回転させられる。そのため、第1絞り羽根4は略右方向へ、第2絞り羽根5は略左方向へ、相対的に移動させられるが、それらの作動は長手方向への直線的な運動ではない。即ち、第1絞り羽根4は、支軸1fの軸部1f−2に支持されているだけであり、出力ピン8cは円弧状に作動するため、途中までは、支軸1fを支点として時計方向へも僅かに回転し、途中からは、反時計方向へも回転しながら、全体として右方向へ移動する。同様に、第2絞り羽根5の方は、支軸1gの軸部1g−2に支持されていて、出力ピン8dが円弧状に作動するため、途中までは、支軸1gを支点として反時計方向へ僅かに回転し、途中からは、時計方向へも回転するようになるが、全体として左方向へ移動するようになる。
【0030】
このようにして、所定の位置に達すると、回転子8の回転が停止し、第1絞り羽根4の開口部4aの縁と第2絞り羽根5の開口部5aの縁とによって、絞り開口が決定される。図7は、そのようにして、最小絞り開口の形成された状態を示したものである。また、このような、絞り開口の調整は、投影中にも自動的に行なわれ、照明光を調節することがあるが、その場合には、コイル9に対する供給電流の方向と電流値を変えることによって行なわれる。そして、投影が終了したときには、回転子8は図4の位置まで反時計方向へ回転させられ、次の投影の待機状態となり、次の投影をしない場合には電源をオフにする。
【0031】
このような作動説明からも分かるように、第1絞り羽根4と第2絞り羽根5とによって絞り開口を形成しているときは、それらの一部の面が、開口部2aを通ってくる強力な光源光に長時間さらされることになる。ところが、本実施例の場合には、少なくとも光源光にさらされる領域に耐熱板6,7を取り付けていて、熱カシメした部位には光源光が当たらないようになっているので、変形などによって絞り開口の制御が不能になるようなことがない。また、支軸1f,1gには、金属製である耐熱板6,7が接触しないので、支軸1f,1gの磨耗や摩擦音の発生が抑制されている。
【0032】
尚、本実施例では、2枚の絞り羽根4,5に楕円形の開口部6a,7aを形成しているが、上記の作動説明からも分かるように、絞り開口形成縁として利用しているのは、開口部6aの左側の円弧状の縁と、開口部7aの右側の円弧状の縁だけである。そのため、2枚の絞り羽根4,5には、それらの縁が形成されていればよく、本実施例のように楕円形の開口部6a,7aに形成する必要は全くない。
【0033】
また、本実施例の場合には、摩擦を小さくし且つ摩擦音の発生を極力抑えるようにするために、2枚の絞り羽根4,5は、一つずつの支軸1f,1gで支持されるようにし、且つ出力ピン8c,8dとの連結も円形の孔4a,5aで行なうようにしているが、本発明は、このような構成に限定されず、特許文献1に記載されているように、絞り羽根4,5の各々には、幅方向の両端近傍部に、一端側には一つ、他端側には二つの長孔を形成して、それらの長孔を、地板1の幅方向の両端近傍部に立設された三つの支軸(ガイド軸)に嵌合させると共に、出力ピン8c,8dには、長孔で連結させ、2枚の絞り羽根4,5を、地板の1の長さ方向に、直線的に往復作動させるようにしても構わない。そして、このことは、下記の実施例2のように、絞り羽根が1枚の場合にも言えることである。
【実施例2】
【0034】
次に、図8〜図10を用いて実施例2を説明する。上記の実施例1では絞り羽根を2枚備えていたが、本実施例の絞り装置は、絞り羽根を1枚だけにしたものである。そして、本実施例の構成は、一部を除き実施例1の場合と同じである。そのため、実質的に同じ部材,部位には同じ符号を付け、実施例1の場合と異なるところだけを説明する。先ず、地板1は、実施例1と全く同じである。また、実施例1の電磁アクチュエータMは、回転子8に、二つの腕部8a,8bを一体化していたが、本実施例では、腕部8aだけを一体的に設けているので、出力ピン8dを備えていない。また、固定子枠にはホール素子を取り付けていない。更に、回転子8に出力ピン8dを備えていないので、本実施例のカバー板2には、図2に示されている長孔2cが形成されていない。そして、カバー板2に形成されている光路用の開口部2aは、実施例1の場合よりも直径が小さい。
【0035】
本実施例の絞り羽根14は、合成樹脂製であって、少なくとも光源光に直接さらされる領域に金属製の耐熱板16を取り付けている。絞り羽根14の外形形状は、実施例1の第1絞り羽根4と全く同じであって、長孔14c,孔14dの形状と形成位置も、実施例1における第1絞り羽根4の長孔4b,孔4cと同じである。また、符号を付けていないが、長孔14c,孔14dの周囲には、実施例1における肉厚部4h,4iと全く同じ肉厚部が形成されている。更に、符号を付けていないが、実施例1における第1絞り羽根4の軸4d〜4gと全く同じ軸が全く同じ位置に立設されている。そして、本実施例の絞り羽根14が、実施例1の第1絞り羽根4と異なるのは、楕円形をした開口部4aの代わりに、直径の異なる二つの開口部14a,14bが形成されていることである。
【0036】
また、耐熱板16の外形形状は、実施例1の耐熱板6と全く同じである。また、符号を付けていないが、実施例1における耐熱板6の孔6c〜6fと全く同じ形状の孔が全く同じ位置に形成されている。本実施例の耐熱板16が、実施例1の耐熱板6と異なるのは、楕円形をした開口部6aの代わりに、上記の絞り羽根14の開口部14a,14bに重ね合わせるための、直径の異なる二つの開口部16a,16bが形成されていることである。そして、この耐熱板16は、実施例1の耐熱板6と全く同じようにして、熱カシメによって絞り羽根14に取り付けられている。
【0037】
次に、本実施例の作動を簡単に説明する。本実施例は、光源による照明光を2段階に切り換えることのできる絞り装置である。そして、図8は、強い照明光の制御状態を示したものである。このとき、カバー板2の開口部2aには、絞り羽根14の大きい方の開口部14aが耐熱板16の開口部16aと共に対向している。そのため、光源光の光路は、カバー板2の開口部2aによって規制されている。尚、このとき、コイル9には、回転子8を時計方向へ回転させるように電流を供給していてもよいが、本実施例では、全く供給されていない。
【0038】
投影像の明るさ状態によって、照明光を弱くするときは、コイル9に通電して、図示していないストッパによって停止させられるまで、回転子8を反時計方向へ回転させる。それによって、絞り羽根14は、実施例1の第1絞り羽根4のようにして、支軸1fを支点として、途中までは時計方向へも僅かに回転し、途中からは、反時計方向へも回転しながら、全体として左方向へ移動していく。そして、図示していないストッパに当接して停止させられた状態が、図10に示された状態である。このとき、カバー板2の開口部2aには、絞り羽根14の小さい方の開口部14bが耐熱板16の開口部16bと共に対向している。そのため、光源光の光路は、重なり合っている開口部14b,16bによって規制されていることになる。尚、この状態で、電流をコイル9に供給し続けてもよいが、本実施例では、供給を断つようにする。
【0039】
図10に示されている状態から、図8の状態に復帰させる場合は、コイル9に対して、先ほどとは逆方向へ電流を供給し、絞り羽根14が図示していないストッパに当接して停止させられるまで、回転子8を時計方向へ回転させればよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】光路の全開状態を投影側から見て示した実施例1の正面図である。
【図2】図1と同じ状態を光源側から見て示した実施例1の背面図である。
【図3】図1のA―A線断面図である。
【図4】図2からカバー板を外して羽根室内を示した平面図である。
【図5】図4に示されている第1絞り羽根に対する耐熱板の組付け構成を説明するための平面図であって、図5(a)は組付け完了状態を示したものであり、図5(b)は耐熱板を示したものであり、図5(c)は第1絞り羽根を示したものである。
【図6】図4に示されている第2絞り羽根に対する耐熱板の組付け構成を説明するための平面図であって、図6(a)は組付け完了状態を示したものであり、図6(b)は耐熱板を示したものであり、図6(c)は第2絞り板を示したものである。
【図7】最小絞り開口の制御状態を図4と同じようにして示した平面図である。
【図8】実施例1の図4と同じようにして示した実施例2の平面図である。
【図9】図8のB−B線断面図である。
【図10】最小絞り開口の制御状態を図8と同じようにして示した平面図である。
【符号の説明】
【0041】
M 電磁アクチュエータ
P プリント配線板
1 地板
1a,1e,2a,4a,5a,6a,7a,14a,14b,16a,16b
開口部
1b〜1d,1h 取付部
1f,1g 支軸
1f−1,1g−1 台部
1f−2,1g−2 軸部
1f−3,1g−3 挿入部
2 カバー板
2b〜2e,4b,5b,14c 長孔
2f,2g 突出し部
3 ビス
4 第1絞り羽根
4c,5c,6c〜6f,7c〜7f,14d 孔
4d〜4g,5d〜5g 軸
4h,4i,5h,5i 肉厚部
5 第2絞り羽根
6,7,16 耐熱板
6b,7b 逃げ部
8 回転子
8a,8b 腕部
8c,8d 出力ピン
9 コイル
10 固定子枠
14 絞り羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が光路用の開口部を有していて全体として細長い形状をしており両者の間に構成された羽根室内においていずれか一方の幅方向の両端近傍部に少なくとも一つずつの軸を立設している二つの板部材と、少なくとも前記幅方向の一端近傍部に立設されている方の前記軸に嵌合させている長孔と絞り開口形成縁とを有していて光源側の面には前記開口部で光源光にさらされる領域に金属製の耐熱板を熱カシメで取り付けており駆動手段によって前記二つの板部材の長手方向へ往復作動させられる合成樹脂製の第1絞り羽根と、少なくとも前記幅方向の他端近傍部に立設されている方の前記軸に嵌合させている長孔と絞り開口形成縁とを有していて光源側の面には前記開口部で光源光にさらされる領域に金属製の耐熱板を熱カシメで取り付けており駆動手段によって前記第1絞り羽根とは略相反する方向へ同時に往復作動させられて該絞り開口形成縁と前記第1絞り羽根の前記絞り開口形成縁とによって前記開口部よりも小さい絞り開口を形成する第2絞り羽根と、を備えていることを特徴とするプロジェクタ用絞り装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、回転子を有していて前記板部材の一方に取り付けられている電磁アクチュエータであり、該回転子には、相反する径方向へ延伸した二つの腕部が設けられていて、それらの腕部の先端に設けられている出力ピンを、前記各絞り羽根に形成された円形の孔又は長孔に嵌合させていることを特徴とする請求項1に記載のプロジェクタ用絞り装置。
【請求項3】
各々が光路用の開口部を有していて全体として細長い形状をしており両者の間に構成された羽根室内においていずれか一方の幅方向の両端近傍部のうち少なくとも一方に少なくとも一つの軸を立設している二つの板部材と、前記軸に嵌合させている長孔と前記開口部よりも小さい絞り開口部とを有していて光源側の面には前記開口部で光源光にさらされる領域に金属製の耐熱板を熱カシメで取り付けており駆動手段によって前記地板の長手方向へ往復作動させられる合成樹脂製の絞り羽根と、を備えていることを特徴とするプロジェクタ用絞り装置。
【請求項4】
前記駆動手段は、回転子を有していて前記二つの板部材の一方に取り付けられている電磁アクチュエータであり、該回転子には、径方向へ延伸した一つの腕部が設けられていて、該腕部の先端に設けられている出力ピンを、前記絞り羽根に形成された円形の孔又は長孔に嵌合させていることを特徴とする請求項3に記載の絞り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−237295(P2009−237295A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83554(P2008−83554)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】