説明

プロスタグランジンアゴニストのプロドラッグの安定した水性組成物およびその使用方法

本発明は、プロスタノイドアゴニスト組成物中に明確に定義された一定のカルボン酸を組み込んだ後に、組成物のpHを約4.0から約8.0に調整すると、該組成物の水溶液中での安定性(したがって貯蔵安定性)が著明に増大するという発見事項に基づいている。その結果として、本発明の組成物および方法は、多岐にわたる眼疾患を治療するための市場性のある局所用薬物に必要な、水溶液中の安定性を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2009年12月9日に出願された米国特許仮出願シリアル番号61/267,897の便益を主張する。この仮出願の開示は、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、一般には、プロスタノイドアゴニストのプロドラッグの組成物に関し、さらに具体的には、プロスタノイドアゴニストのプロドラッグの安定した水性組成物およびその使用の方法に関する。
【背景技術】
【0003】
眼圧降下剤は、手術後およびレーザー線維柱帯切除術後の高眼圧エピソード、緑内障など、多くの多様な高眼圧状態の治療において、また手術前の補助剤として、有用である。
【0004】
緑内障は、眼内圧上昇を特徴とする目の疾患である。緑内障は、その病因に基づいて、原発性または続発性に分類されてきた。例えば、成人の原発緑内障(先天性緑内障)は、開放隅角緑内障かまたは急性もしくは慢性の閉塞隅角緑内障かのいずれかでありうる。続発性緑内障は、ブドウ膜炎、眼内腫瘍または腫脹した白内障などの先行する眼疾患によって引き起こされる。
【0005】
原発緑内障の根本原因はまだ知られていない。眼内圧の上昇は、房水流出の閉塞によるものである。慢性の開放隅角緑内障では、前眼房およびその組織は正常に見えるが、房水の排出が妨げられる。急性もしくは慢性の閉塞隅角緑内障では、前眼房が浅く、透過角が狭められ、虹彩がシュレム管の入り口にある小柱網を閉塞する可能性がある。瞳孔の散大によって虹彩根が透過角に逆らって前方に押され、瞳孔ブロックが生じるため、急性発作の突然発症を招く可能性がある。狭前眼房角の眼球では、様々な重症度の急性閉塞隅角緑内障発作が起こる傾向がある。
【0006】
続発性緑内障は、後眼房から前眼房に向かった後シュレム管へと流れる房水のあらゆる流出障害によって引き起こされる。前眼部の炎症性疾患は、膨隆虹彩に完全な後癒着を生じさせることによって房水の脱出を阻み、浸出液で排水路をふさぐ可能性がある。これ以外によく見られる原因は、眼内腫瘍、腫脹した白内障、網膜中心静脈閉塞症、目の外傷、手術手技および眼内出血である。
【0007】
あらゆる種類のものを含めて考えれば、緑内障は40歳を超える人全員の約2%に発症し、急速な失明に進行するまで何年もの間漸近的な場合もある。手術が適応されない場合は、局所用α‐アドレナリン受容体拮抗薬が従来の緑内障治療の第一選択薬であった。
【0008】
あるエイコサノイドおよびその誘導体に眼圧亢進作用があることが報告されており、緑内障の管理に用いることが推奨されてきた。エイコサノイドおよび誘導体には、プロスタノイドおよびその誘導体などの生物学的に重要な多数の化合物が含まれる。プロスタノイドは、下記の構造式を有するプロスタノイン酸の誘導体として説明することができる:
【化1】

【0009】
プロスタノイン酸骨格の脂環式環が有する構造および置換基に応じて、様々な種類のプロスタノイドが公知である。これ以上の分類は、プロスタノイドの一般種別の後の下付き数字によって示される側鎖の不飽和結合数(例えば、プロスタノイドE1(PGE1プロスタノイドE2(PGE2))、および、αまたは βによって示される脂環式環上の置換基の配置(例えば、プロスタノイドF(PGF))に基づく。
【0010】
プロスタノイドは以前には強力な眼球昇圧剤と考えられていたが、この20年の間に蓄積された証拠では、一部のプロスタノイドがきわめて有効な眼球降圧剤であり、緑内障の長期的な医療管理には理想的な適性を持つことが明らかになっている(例えば、Bito, L. Z. Biological Protection with Prostanoids, Cohen, M. M., ed., Boca Raton, Fla., CRC Press Inc., 1985, pp. 231-252; およびBito, L. Z., Applied Pharmacology in the Medical Treatment of Glaucomas Drance, S. M. and Neufeld, A. H. eds., New York, Grune & Stratton, 1984, pp. 477-505を参照されたい)。このようなプロスタノイドには、PGF、PGFβ、PGE2、およびこのような化合物のC1‐C2アルキルエステル、例えば1‐イソプロピルエステル、をはじめとするいくつかの脂溶性エステルがある。
【0011】
明確な機序はまだ知られていないが、実験結果では、プロスタノイドによって引き起こされる眼内圧の低下がブドウ膜強膜流出の増大によるものであることが示されている(Nilsson et. al., Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. (suppl), 284 (1987))。
【0012】
PGFのイソプロピルエステルは、その角膜浸透性が親化合物より有効である結果として、親化合物より有意に大きい降圧力を有することが明らかにされている。この化合物は、1987年に、「これまでに報告された最も強力な降圧剤」として記述されている(例えば、Bito, L. Z., Arch. Ophthalmol. 105, 1036 (1987) およびSiebold et al., Prodrug 5 3 (19891)を参照されたい)。
【0013】
プロスタノイドには眼内の有意な副作用はないと思われるが、このような化合物、特にPGFとそのプロドラッグ、例えばその1‐イソプロピルエステルのヒト眼球への局所使用には、一貫して眼表面(結膜)の充血および異物感が伴った。例えば緑内障などの眼圧上昇に伴う病状の管理に対するプロスタノイドの臨床的可能性は、このような副作用によって大きく制限される。
【0014】
Allergan社に譲渡された一連の米国特許には、眼圧低下作用が増強され、副作用が無いかまたは実質的に低減されたプロスタノイドエステルが開示されている。代表的な例をいくつか挙げると、米国特許第5,446,041号、米国特許第4,994,274号、米国特許第5,028,624号および米国特許第5,034,413号があり、いずれも参照によって本明細書に明示的に組み入れられる。
【0015】
用語「プロドラッグ」について関連する背景情報がさらに提供されている。エステルとは、投与後に治療効果のある化合物に転換される化合物のことであり、本明細書においてこの用語は、当分野で一般に理解される場合と同じく広く解釈されなければならない。本発明の範囲を限定する意図はないが、転換は、エステル基または生物学的に不安定な別の基の加水分解によって起こり得る。必ずというわけではないが、一般的に言って、エステルは不活性であるかまたは転換先の治療効果のある化合物ほど活性ではない。
【発明の概要】
【0016】
本発明は、プロスタノイドアゴニスト組成物中に明確に定義されたあるカルボン酸を組み込んだ後に、組成物のpHを約4.0〜約8.0に調整すると、該組成物の水溶液中での安定性(したがって貯蔵安定性)が著明に増大するという発見事項に基づいている。その結果として、本発明の組成物および方法は、多岐にわたる眼疾患を治療するための市場性のある局所用薬物に必要な、水溶液中の安定性を提供する。
【0017】
本発明の一実施態様では、プロスタノイドアゴニストのエステル、カルボン酸、二塩基性リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、可溶化剤、および残部水を含む組成物が提供され、ここで該組成物のpHは約4〜約8に調整される。
【0018】
本発明の別の実施態様では、プロスタノイドアゴニストのエステルを含む組成物に水溶液中での安定性を付与するための方法が提供される。このような方法は、例えば、該組成物にカルボン酸を付加し、それによってpHを4〜約8に調整することにより実施することができる。
【0019】
本発明の別の実施態様では、眼疾患を治療するための方法が提供される。このような方法は、例えば、プロスタノイドアゴニストのエステル、カルボン酸、二塩基性リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、可溶化剤、および残部水を含む組成物の治療的有効量を、それを必要とする対象に投与することにより実行することができ、ここで、該組成物のpHは約4から約8に調整される。
【0020】
(発明の詳細な説明)
上に述べた概要および以下に述べる詳細な説明がいずれも例示および説明を目的とするものにすぎず、本発明の主張を制限するものではないことは、理解されなければならない。別の具体的な記載がない限り、本明細書において単数形の使用には複数形も含まれる。別の記載がない限り、本明細書において「または」は「および/または」を意味する。さらに、用語「含む(including)」の使用は、「含む(includes)」および「含まれた(included)」などの他の形態の使用と同じく制限的ではない。本明細書に用いられるセクション見出しは構成を目的とするものにすぎず、記載される主題を制限するものと解釈されてはならない。
【0021】
具体的な定義が提供されていない限り、本明細書に記載の分析化学、合成、有機および無機化学に関して利用される命名法、ならびにその実験法および手法は、当分野では公知のものである。標準の化学記号は、このような記号が表わす完全名称と互換可能に用いられる。そのため、例えば用語「水素」と「H」とは同一の意味を持つと理解される。化学融合、化学分析および調合には、標準的な技術を用いてよい。
【0022】
本明細書において、「アルキル」は、1個から約100個までの炭素原子を持つ鎖または分岐鎖のヒドロカルビル基である。本明細書中に「1〜100」または「C1‐C100」などの数値範囲が記載される場合は必ず、与えられた範囲内の各整数を表わす:例えば、「C1‐C100アルキル」は、アルキル基が炭素原子を1個だけ、2個、3個等々、100個を含めて100個まで有し得ることを意味する。ただし、用語「アルキル」には炭素原子の数値範囲が指定されない場合も含まれる。「置換アルキル」は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシ、オキソ、アルコキシ、メルカプト、シクロアルキル、置換シクロアルキル、複素環、置換複素環、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アリールオキシ、置換アリールオキシ、ハロゲン、ハロアルキル、シアノ、ニトロ、ニトロン、アミノ、低級アルキルアミノ、低級アルキルジアミノ、アミド、アジド、‐C(O)H、‐C(O)R7、‐CH2OR7、‐C(O)‐、‐S‐、‐S(O)2、‐OC(O)‐O‐などの置換基を帯びたアルキル部分を表わし、ここで、R7はHまたは低級アルキル、アシル、オキシアシル、カルボキシル、カルバミン酸、スルホニル、スルホンアミド、スルフリル等である。本明細書において、「低級アルキル」は、1から約6個の炭素原子を有するアルキル部分のことである。
【0023】
本明細書において、「シクロアルキル」は、通常約3個から約8個までの範囲の炭素原子を含有する環状(即ち環含有)アルキル部分を指し、「置換シクロアルキル」は、上に記載した1以上の置換基をさらに帯びたシクロアルキル基を指す。
【0024】
本明細書において、「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素‐炭素間二重結合を有し、2から約100個までの範囲の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のヒドロカルビル基を指し、また「置換アルケニル」は、上に記載の1以上の置換基をさらに持つアルケニル基を指す。本明細書において、「低級アルケニル」は、2から約6個までの炭素原子を有するアルケニル部分を指す。
【0025】
本明細書において、「オキシアルキル」は、少なくとも1つのメチレン単位が酸素原子に置換されたアルキル部分を指す。
【0026】
本明細書において、「オキシアルケニル」は、少なくとも1つのメチレン単位が酸素原子に置換されたアルケニル部分を指す。
【0027】
本明細書において、「ヒドロキシアルキル」は、少なくとも1つのヒドロキシル基を持つアルキル部分を指す。
【0028】
本明細書において、「ヒドロキシアルケニル」は、少なくとも1つのヒドロキシル基を持つアルケニル部分を指す。
【0029】
本明細書において、「アリーレン」は、6から14個までの範囲の炭素原子を有する二価芳香族基を指し、「置換アリーレン」は、上に記載した1以上の置換基をさらに持つ二価アリール基を指す。
【0030】
本明細書において、「ヘテロアリーレン」は、1個以上のヘテロ原子(例えば、N、O、S等)を環状構造の一部として含有し、環状構造に5から14個までの範囲の全原子(例えば、炭素原子およびヘテロ原子)を有する芳香族部分を表わす。「置換ヘテロアリーレン」は、上に記載した1以上の置換基をさらに持つヘテロアリーレン基を指す。
【0031】
本明細書において、「ハロゲン」または「ハロゲン化物」は、フッ化物、塩化物、臭化物またはヨウ化物を指す。
【0032】
本発明は、プロスタノイドアゴニストのエステル、カルボン酸、二塩基性リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、可溶化剤、および残部水を含む組成物を提供し、ここで、該組成物のpHは約4から約8に調整される。いくつかの実施態様では、組成物のpHは約4.5から約6.5に調整される。一実施態様では、組成物のpHは約6.0に調整される。
【0033】
本明細書に記載の組成物は、水溶液中で顕著な安定性を示し、それによって発明の組成物を含有する医薬製剤の貯蔵安定性を増大させる。
【0034】
本明細書において、語句「水溶液中での安定性」は、を意味する。
【0035】
本発明のあるいくつかの実施態様では、本明細書に開示されるプロスタノイドアゴニストのエステルプロドラッグが想定される。エステルはC1のカルボン酸(即ち、天然プロスタノイドの末端カルボン酸)から誘導されてもよく、または、エステルは、フェニル環など該分子の別の部分にあるカルボン酸官能基から誘導されてもよい。制限する意図はないが、エステルはアルキルエステル、アリールエステル、またはヘテロアリールエステルであり得る。いくつかの実施態様では、C1-6アルキルエステルが本発明の実施用に想定されており、ここで、該エステルのアルキル部分は1から6個の炭素原子を有し、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n‐ブチル、s‐ブチル、イソブチル、t‐ブチル、ペンチル異性体、ヘキシル異性体、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、および1〜6個の炭素を有するそれらの組み合わせ等を含むが、これに限定されない。
【0036】
本発明の組成物への使用に予想されるプロスタノイドアゴニストのプロドラッグは、下記の構造を有する:
【化2】


ここで:
1からZ6はそれぞれ独立してC、N、O、またはSであり;
Aは‐(CH2)6‐または シス‐CH2CH=CH‐(CH2)3であり、ここで、1または2個の原子はSまたはOに置換されてもよく;または
Aは‐(CH2)m‐Ar‐(CH2)o‐であり、ここで、 Arはアリーレンまたはヘテロアリーレンであり、mおよびoの合計は1から4であり、またここで、1つのCH2はSまたはOで置換されてもよく;
1はアルキル、シクロアルキル、オキシアルキル、ヒドロキシアルキル、アルケニル、オキシアルケニル、またはヒドロキシアルケニルであり;
2はアルキル、ヒドロキシル、ハロゲン化物、またはオキソであり;
Jはアルキル、シクロアルキル、オキシアルキル、ヒドロキシアルキルであり;
EはC1-12アルキル、R3、または‐Y‐R3であり、ここでYはCH2、S、またはOであり、そしてR3はアリールまたはヘテロアリールであり;
nは0または1であり;
またここで、点線は結合の有無を表わす。
いくつかの実施態様では、プロスタノイドアゴニストのプロドラッグは、nが0である構造を有する。
別のいくつかの実施態様では、プロスタノイドアゴニストのプロドラッグは、R1がアルキルまたはヒドロキシアルキルである構造を有する。ある実施態様では、R1はイソプロピルまたは‐CH2‐CH2‐OHである。
代表的なプロスタノイドアゴニストのプロドラッグは、以下の構造の化合物を含むが、これに限定されない:
【化3】

【化4】

【化5】

【0037】
本発明の組成物への使用には、広範囲にわたるカルボン酸が予想される。いくつかの態様では、カルボン酸はC1‐C10のカルボン酸である。一実施態様では、カルボン酸はクエン酸である。
【0038】
カルボン酸は、通常は約0.05重量%から約0.2重量%の濃度で組成物中に存在する。いくつかの実施態様では、カルボン酸は、約0.1重量%から約0.15重量%の濃度で組成物中に存在する。一実施態様では、カルボン酸は、0.135重量%カルボン酸濃度で組成物中に存在する。
【0039】
二塩基性リン酸ナトリウムは、通常は約1.0重量%から約2.0重量%の濃度で組成物中に存在する。いくつかの実施態様では、二塩基性リン酸ナトリウムが約1.2重量%から約1.6重量%の濃度で組成物中に存在する。一実施態様では、二塩基性リン酸ナトリウムは約1.42重量%の濃度で組成物中に存在する。
【0040】
塩化ナトリウムは、通常は約0.05重量%から約0.2重量%の濃度で組成物中に存在する。いくつかの実施態様では、塩化ナトリウムは約0.1重量%から約0.15重量%の濃度で組成物中に存在する。一実施態様では、塩化ナトリウムは約0.135重量%の濃度で組成物中に存在する。
【0041】
本発明の実施に用いるために、例えばポリソルベート80、プルロニックF127等、多種多様の可溶化剤が予想される。
【0042】
本発明の別の実施態様では、プロスタノイドアゴニストのエステルを含む調合物に水溶液中での安定性を付与するための方法が提供される。このような方法は、例えば、調合物にカルボン酸を付加し、それによりpHを4から約8に調整することによって実行される。いくつかの実施態様では、pHは約4.5から約6.5に調整される。いくつかの実施態様では、pHは約6.0に調整される。
【0043】
本発明の別のいくつかの実施態様では、眼疾患を治療するための方法が提供される。このような方法は、例えば、プロスタノイドアゴニストのエステル、カルボン酸、二塩基性リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、可溶化剤、および残部水を含む治療的有効量の組成物を、それを必要とする対象に投与することによって実行することができ、ここで、該組成物のpHは約4から約8に調整される。
【0044】
本明細書において、用語「治療的有効量」とは、前記医薬組成物の量であって、それを必要とする対象から、研究者、獣医、医師、または他の臨床家が現在探究している生物学的または医学的な応答を引き出すような量を意味する。いくつかの実施態様では、それを必要とする対象とは哺乳動物である。いくつかの実施態様では、該哺乳動物はヒトである。
【0045】
本発明の方法を用いて治療することのできる疾患としては、緑内障、眼内圧上昇、視神経症、角膜痛、糖尿病性網膜症、網膜ジストロフィ、黄斑変性症、非滲出性老人性黄斑変性症(ARMD)、浸出性老人性黄斑変性症(ARMD)、遺伝性視神経症、多発性硬化症に伴うことの多い視神経炎、網膜静脈閉塞症、虚血性神経症および他の神経変性疾患、脈絡膜血管新生、中心性漿液性網脈絡膜症、嚢胞様黄斑浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、近視性網膜変性症、急性多発性小板状色素上皮症、ベーチェット病、散弾脈絡網膜炎、中間部ブドウ膜炎(周辺部)、多病巣性脈絡膜炎、多発消失性白点症候群(MEWDS)、眼サルコイドーシス、後部強膜炎、地図状脈絡膜炎、網膜下線維症およびブドウ膜炎症候群、フォークト小柳原田症候群、点状脈絡膜内層症、急性後極部多発性小板状網膜色素上皮症、急性黄斑部視神経網膜症、ならびに光線力学療法およびレーザー角膜切削形成術(LASIK)などの治療・手術が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
以下の実施例は、本発明の例示を目的とするにすぎず、決して本発明を制限するものと解釈するべきではない。
【実施例】
【0047】
本発明の組成物の水溶液中の安定性を、化合物2および3を用いて評価した。以下の表に掲載する通り、各化合物について4種類の調合物を調整した。
【表1】


【表2】

【0048】
調合物は、下記の測定パラメーターを用いてHPLCにより分析した。
カラム: BioWidePore C18(SUPELCO)、4.6mm×25cm、5μm
移動相A:脱イオン水(di water)中トリフルオロ酢酸(TFA)0.1%(V/V)、0.8ミクロンフィルターで濾過
移動相B:アセトニトリル100%、0.8ミクロンフィルターで濾過
カラム温度:周囲温度
注入容積:30μL
UV検出:214nm
フロー:1.0mL/分
運転時間: 25分
試料:脱イオン水中アセトニトリル50%
【0049】
上記のHPLCパラメーターを用いて、下記の安定性データを得た:
【表3】


【表4】


【表5】


【表6】


【表7】


【表8】


【表9】


【表10】

【0050】
上記の安定性データから、両試験化合物2および3とも、30℃では各調合物中で45日間安定であったことが明らかである。45℃では、ほとんどの調合物中に有意の減量は認められなかった。ただし、調合物4中の化合物2は例外である。
【0051】
また、結論として、調合物2がいずれの試験化合物に関しても優れており、ポリソルベート80の調合物がプルロニックF127に優っているということが言える。最後に、両試験化合物とも、pH7.3の方がpH6の場合より安定しているように思われる。
【0052】
上に挙げた具体的な実施例に関して本発明を説明してきたが、本発明の精神から逸脱することなく他の修正および変更が可能であると理解されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロスタノイドのエステル、カルボン酸、二塩基性リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、可溶化剤、および残部水を含み、pHが約4から約8に調整される組成物。
【請求項2】
前記カルボン酸がC1からC10のカルボン酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記カルボン酸がクエン酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
約0.05%から約0.2%のカルボン酸を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
約0.1%から約0.15%のカルボン酸を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
0.135%のカルボン酸を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
約4.5から約6.5のpHを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
約6.0のpHを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
プロスタノイドアゴニストのプロドラッグが下記の構造を有する、請求項1の化合物:



ここで
1からZ6のそれぞれは独立してC、N、O、もしくはSであり;
Aは、−(CH2)6−もしくはシス−CH2CH=CH−(CH2)3−であり、ここで、1または2個の炭素がSもしくはOで置換されてもよく;または
Aは−(CH2)m−Ar−(CH2)o−であり、ここで、Arはアリーレンもしくはヘテロアリーレンであり、mとoとの合計は1から4であり、またここで、1つのCH2がSもしくはOで置換されてもよく;
1はアルキル、シクロアルキル、オキシアルキル、ヒドロキシアルキル、アルケニル、オキシアルケニル、またはヒドロキシアルケニルであり;
2はアルキル、アルケニル、ヒドロキシル、ハロゲン化物、シアノ、またはオキソであり;
Jはアルキル、シクロアルキル、オキシアルキル、ヒドロキシアルキルであり;
EはC1-12アルキル、R3、または−Y−R3であり、ここで、YはCH2、S、もしくはOであり、R3はアリールもしくはヘテロアリールであり;
nは0もしくは1であり;
またここで、点線は結合の有無を表わす。
【請求項10】
nは0である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
1はアルキルまたはヒドロキシアルキルである、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
1はイソプロピルまたは−CH2−CH2−OHである、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
プロスタノイドアゴニストのプロドラッグは下記の構造:







を有する、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
約1.0%から約2.0%の二塩基性リン酸ナトリウムを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
約1.2%から約1.6%の二塩基性リン酸ナトリウムを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
約1.42%の二塩基性リン酸ナトリウムを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
約0.05%から約0.2%の塩化ナトリウムを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
約0.1%から約0.15%の塩化ナトリウムを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
0.135%の塩化ナトリウムを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記可溶化剤はポリソルベート80またはプルロニックF127である、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
プロスタノイドアゴニストのエステルを含む調合物に水溶液中での安定性を付与するための方法であって、該調合物にカルボン酸を付加し、それによってpHを4から約8に調整することを含む、方法。
【請求項22】
前記pHは約4.5から約6.5に調整される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記pHは約6.0に調整される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記カルボン酸はクエン酸である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
眼疾患を治療するための方法であって、請求項1に記載の組成物の治療的有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項26】
前記疾患は、緑内障、眼内圧上昇、視神経症、角膜痛、糖尿病性網膜症、網膜ジストロフィ、黄斑変性症、非滲出性老人性黄斑変性症(ARMD)、浸出性老人性黄斑変性症(ARMD)、遺伝性支神経症、多発性硬化症に伴うことの多い視神経炎、網膜静脈閉塞症、虚血性神経症および他の神経変性疾患、脈絡膜血管新生、中心性漿液性網脈絡膜症、嚢胞様黄斑浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、近視性網膜変性症、急性多発性小板状色素上皮症、ベーチェット病、散弾脈絡網膜炎、中間部ブドウ膜炎(周辺部)、多病巣性脈絡膜炎、多発消失性白点症候群(MEWDS)、眼サルコイドーシス、後部強膜炎、地図状脈絡膜炎、網膜下線維症およびブドウ膜炎症候群、フォークト小柳原田症候群、点状脈絡膜内層症、急性後極部多発性小板状網膜色素上皮症、急性黄斑部視神経網膜症、ならびに光線力学療法およびレーザー角膜切削形成術(LASIK)などの治療・手術である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記疾患は緑内障または眼内圧上昇である、請求項25に記載の方法。

【公表番号】特表2013−513606(P2013−513606A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543111(P2012−543111)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/055590
【国際公開番号】WO2011/071620
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(390040637)アラーガン インコーポレイテッド (117)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】