説明

プロスタグランジン誘導体の製造方法

本発明は、プロスタグランジン誘導体の製造方法及びそのための中間体に関する。本発明によれば、高純度のプロスタグランジンF(PGF)誘導体を、共役付加反応を通じて得られたプロスタグランジンE(PGE)誘導体の保護基をまず除去してから、シクロペンタノン環に存在するケトン基を立体選択的に還元させることにより、効率的かつ経済的に製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、経済的かつ効率的に高純度のプロスタグランジン誘導体を製造する方法及びそのための中間体に関する。
【0002】
〔背景技術〕
プロスタグランジン誘導体のうち、化学式2のトラボプロスト(Travoprost)、ビマトプロスト(Bimatoprost)、ラタノプロスト(Latanoprost)は、眼圧の低下及び毛髪や眉毛の成長促進等、有用な臨床効果によって商業的に広く使用されている。
【0003】
【化1】

【0004】
これらプロスタグランジン誘導体の製造に関してこれまでかなり多くの合成法が報告されているが、ほとんどの場合、合成経路が非常に長く、多くの合成手順を経る必要があるため、製品の歩留まりが非常に低いことが多かった。特に、商業的に最も広く使用されているものと知られているコーリーラクトン(Corey lactone)を使用した合成法の場合[参考文献:E.J. Corey et al., J. Amer. Chem. Soc., 91, 5675−5677, 1969]、下記反応式1に示したところのように、コーリーラクトンを出発物質として、プロスタグランジン誘導体を容易に製造することができる。しかし、コーリーラクトンが相当に高価であり、ω鎖を導入した後に生成された15−ケトン基をα−OHに還元する際、副産物として多量に発生するβ−OHを除去するためにクロマトグラフィーを使用しなければならないのであるが、これは大量生産には適さず、多くの費用を要するだけでなく、歩留まりが非常に低下するため、結果的に高価なコーリーラクトンを多量に消失することによる生産単価の上昇を招いている。副産物として発生するβ−OHを減らすために、立体選択的還元剤としてキラル水素化ホウ素化合物(chiral borane)等を使用する方法等も開発されているが、これらの方法もまた、キラル水素化ホウ素化合物自体が非常に高価であるという問題を有している。
【0005】
【化2】

【0006】
前記問題を克服するために、比較的最近になって開発された合成方法として、下記反応式2に示したところのように、α側鎖(α−side chain)を有するシクロペンテノン(cyclopentenone)誘導体にα−OHを含むω鎖を共役付加反応(conjugate addition)させる方法があり、このうちLipshutzらが開発した“高次混合有機クプラート(higher−order mixed organocuprate)”を利用する方法は、立体選択的にω鎖を導入することに成功している[参考文献:米国特許第4,785,124号、第4,904,820号、第4,952,710号、第5,055,604号及びWO02/090324号]。
【0007】
【化3】

【0008】
しかし、前記合成方法を利用する場合、プロスタグランジンF(PGF)誘導体を合成するためには、共役付加反応を通じて得られたプロスタグランジンE(PGE)誘導体のシクロペンタノン環に存在するケトン基を立体選択的にα−OHに還元させなければならないのであるが、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)を使用する場合には、α−OH:β−OHが6:4の割合で得られ、バルキーな水素化物(hydride)であるL−セレクトライド(L−selectride)、N−セレクトライド(N−selectride)、K−セレクトライド(K−selectride)又はLS−セレクトライド(LS−selectride)を使用する場合には、その選択性が9:1まで増加するものの、依然として相当量のβ−OHが混在しているため、これを除去する必要があり、また、このプロセスが非常に困難であり、多くの歩留まりによる損失が発生することになる。
【0009】
したがって、プロスタグランジンE誘導体のシクロペンタノン環に存在するケトン基のより立体選択的な還元方法の開発が求められてきた。
【0010】
〔発明の概要〕
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明者らは、共役付加反応を利用したプロスタグランジンF(PGF)誘導体の合成において、前記問題を解決するために鋭意研究、検討した結果、共役付加反応後に得られるプロスタグランジンE(PGE)誘導体の保護基をまず除去してから、シクロペンタノン環に存在するケトン基を立体選択的に還元させることにより、β−OHがほとんど存在しない高純度のPGF誘導体を効率的かつ経済的に製造することができることを発見し、本発明を完成するに至った。
【0011】
したがって、本発明の目的は、高純度のプロスタグランジンF(PGF)誘導体を経済的かつ効率的に製造する方法を提供することである。
【0012】
また、本発明の他の目的は、前記製造方法に使用される新規な中間体を提供することである。
【0013】
〔課題を解決するための手段〕
本発明は、下記化学式1のプロスタグランジンF(PGF)誘導体の製造方法に関し、本発明の製造方法は、
(i)下記化学式5の保護化プロスタグランジンE(PGE)誘導体のヒドロキシ保護基を除去するために、下記化学式6のプロスタグランジンE(PGE)誘導体を得るステップ、及び
(ii)下記化学式6の化合物のシクロペンタノン環に存在するケトン基を立体選択的に還元反応させるステップ、を含む。
【0014】
【化4】

【0015】
前記化学式において、
【0016】
【化5】

【0017】
は、炭素間の単結合又は二重結合を示し、
Xは、O又はNHを示し、
Yは、α−OH又はジフルオロ、好ましくは、α−OHを示し、
Y’は、α−OPG又はジフルオロ、好ましくは、α−OPGを示し、
Zは、CH、O又はS、好ましくは、CH又はOを示し、
Rは、H又はC1−C5のアルキル基、好ましくは、C1−C5のアルキル基を示し、
R’は、C1−C5のアルキル基、C3−C7のシクロアルキル基又はアリール基、好ましくは、C1−C5のハロアルキル基又はハロゲン、より好ましくは、CF、Cl又はF、最も好ましくは、CFで置換又は非置換されたフェニル基を示し、
PGは、ヒドロキシ保護基、好ましくはテトラヒドロピラニル、トリメチルシリル、トリエチルシリル又はt−ブチルジメチルシリル、より好ましくは、トリエチルシリルを示す。
【0018】
本明細書において使用される、“C1−C5のアルキル基”は、炭素数1〜5個で構成される直鎖型又は分枝鎖型炭化水素を意味し、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル等が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
本明細書において使用される“C3−C7のシクロアルキル基”は、炭素数3〜7個で構成される環状炭化水素を意味し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
本明細書において使用される“アリール基”は、芳香族基及びヘテロ芳香族基並びにそれらの部分的に還元された誘導体をすべて含む。前記芳香族基は、5〜15角形からなる単環又は縮合環型であり、ヘテロ芳香族基は、酸素、硫黄又は窒素を一以上含む芳香族基を意味する。代表的なアリール基の例としては、フェニル、ナフチル、ピリジニル(pyridinyl)、フラニル(furanyl)、チオフェニル(thiophenyl)、インドリル(indolyl)、キノリニル(quinolinyl)、イミダゾリニル(imidazolinyl)、オキサゾリル(oxazolyl)、チアゾリル(thiazolyl)、テトラヒドロナフチル等があるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
前記C1−C5のアルキル基、C3−C7のシクロアルキル基及びアリール基は、一又はそれ以上の水素が、C1−C5のアルキル基、C2−C6のアルケニル基、C2−C6のアルキニル基、C3−C10のシクロアルキル基、C1−C5のハロアルキル基、C1−C5のアルコキシ基、C1−C5のチオアルコキシ基、アリール基、アシル基、ヒドロキシ、チオ(thio)、ハロゲン、アミノ、アルコキシカルボニル、カルボキシ、カルバモイル、シアノ、ニトロ等で置換され得る。
【0022】
以下、本発明の製造方法を、下記反応式3を参照しつつ、より詳細に説明することとする。
【0023】
【化6】

【0024】
<ステップ1> 化学式6のプロスタグランジンE(PGE)誘導体の製造
前記化学式6のプロスタグランジンE(PGE)誘導体は、前記化学式5の保護化プロスタグランジンE(PGE)誘導体のヒドロキシ保護基を除去して製造する。
【0025】
前記ヒドロキシ保護基は、酸性条件下で、又は特に保護基がシリル基である場合には、多様なフッ化物(fluoride)を使用して脱保護化することができる。
【0026】
保護基がシリル基であるとき、酸性条件では、d−HCl、NaHSO水溶液、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム(pyridinium p−toluenesulfonate:PPTS)等を使用することができるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、アセトンと水の混合溶媒において触媒量のPPTSを使用する。フッ化物としては、テトラブチルアンモニウムフルオリド(Bu)、ヒドロゲンフルオリド−ピリジン(HF−pyridine)、フルオロケイ酸(HSiF)等を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
前記化学式5の保護化プロスタグランジンE(PGE)誘導体のうち、13,14番目の炭素が二重結合である化合物は、公知の方法[参考文献:J. Am. Chem. Soc. 1988, 110, 2641−2643]により、下記化学式3のアルケニル錫化合物を、そのクプラートで転換させた後、下記化学式4のシクロペンテノンに共役付加反応(conjugate addition)させて製造することができる。
【0028】
【化7】

【0029】
好ましくは、前記化学式3のアルケニル錫化合物をMeCu(CN)Li溶液に加えて下記化学式7の高次混合クプラート(higher order mixed cuprate)に転換させた後、前記化学式4のシクロペンテノンに共役付加反応させて製造することができる。
【0030】
【化8】

【0031】
前記反応は、テトラヒドロフラン(THF)とヘキサンの混合溶媒、THFとエーテルの混合溶媒等において行うことが好ましく、THFとジエチルエーテルの混合溶媒において行うことが最も好ましい。
【0032】
共役付加反応の温度は、−60℃以下の低温が好ましい。
【0033】
前記化学式3のアルケニル錫化合物は、公知の方法[参考文献:J. Am. Chem. Soc. 1988, 110, 2641−2643]により、末端アセチレン基を含むω鎖前駆体とBuSnHを反応させて得ることができる。
【0034】
一方、前記化学式5の保護化プロスタグランジンE(PGE)誘導体のうち、13,14番目の炭素が単結合である化合物は、公知の方法[参考文献:WO 02/090324号]により製造することができる。
【0035】
<ステップ2> 化学式1のプロスタグランジンF(PGF)誘導体の製造
化学式1のプロスタグランジンF(PGF)誘導体は、前記化学式6の化合物のシクロペンタノン環に存在するケトン基を立体選択的に還元反応させて製造する。
【0036】
還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、L−セレクトライド(L−selectride)、N−セレクトライド(N−selectride)、K−セレクトライド(K−selectride)、LS−セレクトライド(LS−selectride)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(2,6−di−tert−butyl−4−methyl phenol)及び水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)等を使用することができるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール及びDIBALを使用する。
【0037】
2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール及びDIBALを使用して還元させる場合、立体選択的にα−OHのみが生成され、β−OHは生成されない。一般的には、2〜10当量、好ましくは、5当量の2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、及び2〜5当量、好ましくは、4当量のDIBALを、トルエンを溶媒として、−10〜10℃、好ましくは、0℃で、1〜2時間、好ましくは、1時間反応させた後、反応溶液の温度を−70℃に下げてから、化学式6の化合物を滴下し、1〜3時間、好ましくは、2時間攪拌し、反応溶液の温度を−40〜−20℃、好ましくは、−30℃まで上げてから、3〜6時間、好ましくは、4時間攪拌して還元反応を行う。
【0038】
代案的に、XがNHである化学式1のプロスタグランジンF(PGF)誘導体は、XがOであり、Rがメチルである化学式1のプロスタグランジンF(PGF)誘導体をRNHと反応させて製造することができる。
【0039】
前記反応は、常温で行うことが好ましい。
【0040】
本発明の製造方法により製造される前記化学式1のプロスタグランジンF(PGF)誘導体の代表的な例は、眼圧の低下及び毛髪や眉毛の成長促進等、有用な臨床効果によって商業的に広く使用されているトラボプロスト(Travoprost)、ビマトプロスト(Bimatoprost)及びラタノプロスト(Latanoprost)として、本発明により製造されるトラボプロスト、ビマトプロスト及びラタノプロストは、炭化水素とアルコールの混合溶媒、好ましくは、n−ヘキサンと無水エタノールの混合溶媒、又はn−ヘプタンと無水エタノールの混合溶媒、若しくはジクロロメタンとアルコールの混合溶媒、好ましくは、ジクロロメタンとイソプロパノールの混合溶媒で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)して、従来の技術では達成し得なかった99.5%以上の純度を達成することができる。
【0041】
また一方、本発明は、トラボプロストの製造中間体である下記化学式8の化合物、及びビマトプロストの製造中間体である化学式9の化合物に関する。
【0042】
【化9】

【0043】
〔発明の効果〕
本発明によれば、高純度のプロスタグランジンF(PGF)誘導体を、共役付加反応を通じて得られたプロスタグランジンE(PGE)誘導体の保護基をまず除去してから、シクロペンタノン環に存在するケトン基を立体選択的に還元させることにより、効率的かつ経済的に製造することができる。特に、還元剤として2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(di−tert−butyl methyl phenol)及び水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)を使用する場合、α−OHのみを立体選択的に製造することができる。
【0044】
〔発明を実施するための形態〕
以下、実施例により本発明をより具体的に説明することとするが、これらの実施例は、単に本発明を説明するためのものであって、本発明の範囲がこれら実施例に極限されないということは、当業者にとって自明のことである。
【0045】
<実施例1>化合物8の合成
【0046】
【化10】

【0047】
シアン化銅(30g)をTHF(680ml)に溶解し、0℃に冷却した後、メチルリチウム(1.6Mジエチルエーテル、445ml)を滴下した。反応溶液を10〜20分間撹拌した後、THF(200ml)に溶解した化合物3−I(215g)を加えた。1.5〜2時間攪拌した後、反応溶液を−70℃に冷却し、THF(680ml)に溶解した化合物4−I(90g)を迅速に加えた。その次に、反応溶液を−45℃まで徐々に上げた後、反応が終結したことを確認し、反応溶液を塩化アンモニウム水溶液/アンモニア水(9:1、1.8L)とジエチルエーテル(2L)の混合液に加え、1〜2時間、常温で攪拌した。有機層を分離した後、硫酸ナトリウム(1kg)を加えて乾燥、濾過及び濃縮した。得られた残留物をn−ヘキサン:酢酸エチル(10:1)でクロマトグラフィーして、化合物8(127g)を得た(収率:75%)。
【0048】
<実施例2>化合物6−Iの合成
【0049】
【化11】

【0050】
アセトン(1.2L)と水(0.25L)の混合液に溶解した化合物8(127g)にp−トルエンスルホン酸ピリジニウム(PPTS、2.3g)を加え、12時間、常温で攪拌した。反応の終結を確認し、反応溶液を真空下で濃縮した後、酢酸エチル(1.5L)と水(1L)を加え、攪拌後、有機層を分離した。硫酸ナトリウム(1kg)を加えて乾燥、濾過及び濃縮し、残留物をn−ヘキサン:酢酸エチル(1:3)でクロマトグラフィーして、化合物6−I(78g)を得た(収率:89%)。
【0051】
<実施例3>トラボプロストの合成
【0052】
【化12】

【0053】
トルエン(2L)に2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(172g)を溶解した後、0℃に冷却し、DIBAL(1.0Mトルエン、625ml)を1時間で滴下した。その次に、反応溶液を−70℃に冷却し、トルエン(0.5L)に溶解した化合物6−I(78g)を滴下した。約2時間攪拌し、反応溶液の温度を−40〜−20℃まで徐々に上げた後、4時間攪拌した。反応の終結を確認し、2N塩酸水溶液(1L)を加えた後、有機層を分離し、硫酸ナトリウム(1kg)で乾燥、濾過及び濃縮した。残留物をn−ヘキサン:酢酸エチル(1:5)でクロマトグラフィーして、トラボプロスト(純度96%以上)を得た。これをジクロロメタン:イソプロパノール=90:10で分取HPLCして、高純度のトラボプロスト(50g、純度99.5%以上)を得た(収率:63%)。
【0054】
<実施例4>化合物9の合成
【0055】
【化13】

【0056】
シアン化銅(98g)をTHF(2.2L)に溶解し、0℃に冷却した後、メチルリチウム(1.6Mジエチルエーテル、1.44L)を滴下した。反応溶液を10〜20分間撹拌した後、THF(1.4L)に溶解した化合物3−II(598g)を加えた。1.5〜2時間攪拌した後、反応溶液を−70℃に冷却し、THF(2.2L)に溶解した化合物4−II(270g)を15分間で加えた。その次に、反応溶液を−45℃まで徐々に上げた後、反応が終結したことを確認し、反応溶液を塩化アンモニウム水溶液/アンモニア水(9:1、7.0L)とジエチルエーテル(3.5L)の混合液に加え、1〜2時間、常温で攪拌した。有機層を分離した後、硫酸ナトリウム(1kg)を加えて乾燥、濾過及び濃縮した。得られた残留物をn−ヘキサン:酢酸エチル(10:1)でクロマトグラフィーして、化合物9(420g)を得た(収率:88%)。
【0057】
<実施例5>化合物6−IIの合成
【0058】
【化14】

【0059】
アセトン(4.3L)と水(0.83L)の混合液に溶解した化合物9(420g)にp−トルエンスルホン酸ピリジニウム(PPTS、8.8g)を加え、12時間、常温で攪拌した。反応の終結を確認し、反応溶液を真空下で濃縮した後、酢酸エチル(5.0L)と水(2.0L)を加え、攪拌後、有機層を分離した。硫酸ナトリウム(1kg)を加えて乾燥、濾過及び濃縮し、残留物をn−ヘキサン:酢酸エチル(1:3)でクロマトグラフィーして、化合物6−II(205g)を得た(収率:76%)。
【0060】
<実施例6>化合物1−Iの合成
【0061】
【化15】

【0062】
トルエン(6.5L)に2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(560g)を溶解した後、0℃に冷却し、DIBAL(1.0Mトルエン、2.05L)を1時間で滴下した。その次に、反応溶液を−70℃に冷却し、トルエン(1.6L)に溶解した化合物6−II(205g)を滴下した。約2時間攪拌し、反応溶液の温度を−40〜−20℃まで徐々に上げた後、4時間攪拌した。反応の終結を確認し、2N塩酸水溶液(2.5L)を加えた後、有機層を分離し、硫酸ナトリウム(1kg)で乾燥、濾過及び濃縮した。残留物をn−ヘキサン:酢酸エチル(1:5)でクロマトグラフィーして、化合物1−I(155g)を得た(収率:76%)。
【0063】
<実施例7>ビマトプロストの合成
【0064】
【化16】

【0065】
70%エチルアミン水溶液(3.0L)に化合物1−I(155g)を加え、常温で60時間攪拌した。反応の終結を確認し、反応溶液を減圧下で半分にまで濃縮した。これを2M硫酸水素ナトリウム水溶液(3.0L、pH=4〜5)で中和し、酢酸エチル(3.0L)で抽出した。有機層を硫酸ナトリウム(1.0kg)で乾燥、濾過及び濃縮した。残留物をn−ヘキサン:無水エタノール=90:10で分取HPLCし、濃縮後、残留物をジエチルエーテル(1.5L)で処理して結晶化した。生成された固体を濾過及び真空乾燥して、高純度のビマトプロスト(100g、純度99.5%以上)を得た(収率:62%)。
【0066】
<実施例8>化合物6−IIIの合成
【0067】
【化17】

【0068】
アセトン(1.2L)と水(0.2L)の混合液に溶解した化合物5−I(217g)にp−トルエンスルホン酸ピリジニウム(PPTS、4.3g)を加え、12時間、常温で攪拌した。反応の終結を確認し、反応溶液を真空下で濃縮した後、酢酸エチル(1.5L)と水(1.0L)を加え、攪拌後、有機層を分離した。硫酸ナトリウム(1kg)を加えて乾燥、濾過及び濃縮し、残留物をn−ヘキサン:酢酸エチル(1:3)でクロマトグラフィーして、化合物6−III(128g)を得た(収率:90%)。
【0069】
<実施例9>ラタノプロストの合成
【0070】
【化18】

【0071】
トルエン(3.7L)に2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(408g)を溶解した後、0℃に冷却し、DIBAL(1.0Mトルエン、1484ml)を1時間で滴下した。その次に、反応溶液を同温で1時間攪拌した後、−70℃に冷却し、トルエン(128mL)に溶解した化合物6−III(128g)を滴下した。約2時間、同温で攪拌し、反応溶液の温度を−40〜−20℃まで徐々に上げた後、4時間攪拌した。反応の終結を確認し、2N塩酸水溶液(1.8L)を加えた後、有機層を分離し、硫酸ナトリウム(1kg)で乾燥、濾過及び濃縮した。残留物をn−ヘキサン:酢酸エチル(1:3)でクロマトグラフィーして、ラタノプロスト(純度96%以上)を得た。これをヘプタン:無水エタノール=94:6で分取HPLCして、高純度のラタノプロスト(96g、純度99.8%以上)を得た(収率:75%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)下記化学式5の保護化プロスタグランジンE(PGE)誘導体のヒドロキシ保護基を除去するために、下記化学式6のプロスタグランジンE(PGE)誘導体を得るステップ;及び
(ii)下記化学式6の化合物のシクロペンタノン環に存在するケトン基を立体選択的に還元反応させるステップ;
を含む、下記化学式1のプロスタグランジンF(PGF)誘導体の製造方法。
【化1】

(前記化学式において、
【化2】

は、炭素間の単結合又は二重結合を示し、
Xは、O又はNHを示し、
Yは、α−OH又はジフルオロを示し、
Y’は、α−OPG又はジフルオロを示し、
Zは、CH、O又はSを示し、
Rは、H又はC1−C5のアルキル基を示し、
R’は、C1−C5のアルキル基、C3−C7のシクロアルキル基又はアリール基を示し、
PGは、ヒドロキシ保護基を示す。)
【請求項2】
【化3】

は、炭素間の単結合又は二重結合を示し、
Xは、O又はNHを示し、
Yは、α−OHを示し、
Y’は、α−OPGを示し、
Zは、CH又はOを表し、
Rは、C1−C5のアルキル基を示し、
R’は、C1−C5のハロアルキル基又はハロゲンで置換又は非置換されたフェニル基を示し、
PGは、ヒドロキシ保護基を示すことを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
【化4】

は、炭素間の単結合又は二重結合を示し、
XはO又はNHを示し、
Yは、α−OHを示し、
Y’は、α−OPGを示し、
Zは、CH又はOを表し、
Rは、C1−C5のアルキル基を示し、
R’は、CF、Cl又はFで置換又は非置換されたフェニル基を示し、
PGは、ヒドロキシ保護基を示すことを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
【化5】

は、炭素間の単結合又は二重結合を示し、
XはO又はNHを示し、
Yは、α−OHを示し、
Y’は、α−OPGを示し、
Zは、CH又はOを示し、
Rは、C1−C5のアルキル基を示し、
R’は、CFで置換又は非置換されたフェニル基を示し、
PGは、ヒドロキシ保護基を示すことを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
ヒドロキシ保護基が、テトラヒドロピラニル、トリメチルシリル、トリエチルシリル又はt−ブチルジメチルシリルであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項6】
ヒドロキシの保護基がトリエチルシリルであることを特徴とする、請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
ステップ(i)において、化学式5の保護化プロスタグランジンE(PGE)誘導体のヒドロキシ保護基を酸性条件下で除去することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項8】
酸性条件として、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム(pyridinium p−toluenesulfonate:PPTS)を使用することを特徴とする、請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
【化6】

が炭素間の二重結合を示す化学式5の保護化プロスタグランジンE(PGE)誘導体が、下記化学式3のアルケニル錫化合物をそのクプラートで転換させた後、下記化学式4のシクロペンテノンに共役付加反応(conjugate addition)させて製造されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項記載の製造方法。
【化7】

【請求項10】
化学式3のアルケニル錫化合物をMeCu(CN)Li溶液に加えて下記化学式7の高次混合クプラート(higher order mixed cuprate)に転換させることを特徴とする、請求項9記載の製造方法。
【化8】

【請求項11】
ステップ(ii)において、還元剤として、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、L−セレクトライド(L−selectride)、N−セレクトライド(N−selectride)、K−セレクトライド(K−selectride)、LS−セレクトライド(LS−selectride)、又は2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(2,6−di−tert−butyl−4−methyl phenol)及び水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)を使用することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項12】
還元剤として、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(2,6−di−tert−butyl−4−methyl phenol)及び水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)を使用することを特徴とする、請求項11記載の製造方法。
【請求項13】
XがOであり、Rがメチルである化学式1のプロスタグランジンF(PGF)誘導体をRNHと反応させて、XがNHである化学式1のプロスタグランジンF(PGF)誘導体を製造することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項14】
化学式1のプロスタグランジンF(PGF)誘導体を、炭化水素とアルコールの混合溶媒又はジクロロメタンとアルコールの混合溶媒でHPLCして精製するステップ、をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項15】
炭化水素とアルコールの混合溶媒が、n−ヘキサンと無水エタノールの混合溶媒又はn−ヘプタンと無水エタノールの混合溶媒であることを特徴とする、請求項14記載の製造方法。
【請求項16】
ジクロロメタンとアルコールの混合溶媒が、ジクロロメタンとイソプロパノールの混合溶媒であることを特徴とする、請求項14記載の製造方法。
【請求項17】
99.5%以上の純度を有するトラボプロスト。
【請求項18】
99.5%以上の純度を有するビマトプロスト。
【請求項19】
下記化学式8の化合物。
【化9】

【請求項20】
下記化学式9の化合物。
【化10】


【公表番号】特表2012−520294(P2012−520294A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553956(P2011−553956)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際出願番号】PCT/KR2010/001529
【国際公開番号】WO2010/104344
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(511222238)ヨンソン ファイン ケミカル カンパニー リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】YONSUNG FINE CHEMICAL CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】129−9 Suchon−ri,Jangan−myeon,Hwaseong−si,Gyeonggi−do 445−944,Republic of Korea
【Fターム(参考)】