説明

プロスタグランジンEレセプター拮抗薬

【課題】新規プロスタグランジンレセプター拮抗薬化合物を提供する。
【解決手段】本発明は、下記の一般式Iによって示されるプロスタグランジンレセプター拮抗薬化合物を提供する:
【化1】


(式中、A、R、RおよびRは、本明細書において定義したとおりである)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PGEレセプター拮抗薬、特に、PGE2‐グリセリルエステルレセプターの拮抗薬を提供する。
【背景技術】
【0002】
個々のプロスタグランジンレセプターの存在において活性である化合物を判定するのに役に立つプロスタグランジンレセプターを薬理学的に特徴付けするのを助けるプロスタグランジンレセプター拮抗薬を取得することは望ましい。
【0003】
プロスタグランジンF拮抗薬は、米国特許第4,632,928号、第5,747,660号および第5,955,575号に報告されている。米国特許第4,632,928号のPGF拮抗薬は、エルゴリン骨格を有するピラゾール誘導体である。米国特許第5,747,660号のPGF拮抗薬は、PGFがそのレセプターへ結合するのを抑制することができるプロスタグランジンFレセプター調節タンパク質(FPRP)である。
【0004】
新規なプロスタグランジンF2α拮抗薬は、米国特許第6,369,089号、第6,407,250号、第6,509,364号および第6,511,999号に報告されている。
EP4およびD2活性を有するプロスタグランジンレセプター拮抗薬は、それぞれ、公開された米国特許出願第20050065200号および第20040162323号に開示されている。
トロンボキサンA2レセプター拮抗薬として有用なインターフェニレン(interphenylene) 7‐オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタンオキサゾールは、米国特許第5,100,889号および第5,153,327号、ヨーロッパ特許出願第0 391 652号およびJ. Med. Chem. 1993, 36, 1401‐1417に報告されている。
【0005】
トロンボキサンA2レセプター拮抗薬、例えば、7‐オキサビシクロヘプチル置換複素環式アミドプロスタグランジンアナログは、ヨーロッパ特許出願第0 448 274号および米国特許第5,605,917号において開示されているように、単独でまたは抗炎症薬と併用して、潰瘍性胃腸症状および月経困難症を治療するのに有用である。
上記の文献は、全て、その全体を参考として本明細書に合体させる。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、プロスタグランジンレセプター拮抗薬、例えば、プロスタグランジンEレセプター拮抗薬、並びに、これらのプロスタグランジンレセプター拮抗薬の、そのサブタイプ、即ち、プロスタグランジンE4レセプター拮抗薬を包含するプロスタグランジンEレセプターの存在において活性を有する化合物の判定およびヒトにおける種々の疾患および症状、例えば、骨関連疾患の治療における使用に関する。
【0007】
本発明のプロスタグランジンEレセプター拮抗薬として有用な化合物およびその製薬上許容し得る塩は、下記の一般式Iによって示し得る。
【化1】

【0008】
【化2】


(式中、Rは、C(O)R3‐CH2‐CH(OH)(CH2OH)またはC(O)R3‐CH(CH2OH)2であり、そして、R3は、O、NR4、SおよびC(R5)2からなる群から選ばれ;これらにおいて、R4は、H、ヒドロカルビルおよびヘテロ原子置換ヒドロカルビル基からなる群から選ばれる基を示し、上記ヘテロ原子は、ハロゲン、O、SおよびNからなる群から選ばれ、即ち、O、Sおよび/またはNは、O、SまたはN‐含有基として含ませ得、例えば、R4は、H、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリール或いはヘテロ原子置換のアルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリール(ヘテロアリール)基であり、そして、R5は、H、ヒドロカルビルおよびヘテロ原子置換ヒドロカルビル基からなる群から選ばれる基を示し、上記ヘテロ原子は、ハロゲン、O、SおよびNからなる群から選ばれ、即ち、O、Sおよび/またはNは、O、SまたはN‐含有基として含ませ得、例えば、H、アルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリール或いはヘテロ原子置換のアルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリール(ヘテロアリール)を示し;
mは、1〜3、好ましくは1または2の整数であり;
nは、0、または1〜4、好ましくは2〜4の整数であり;
Aは、6〜14個の炭素原子を有するアリールまたはヘテロアリール基であり、上記ヘテロアリールは、ヘテロアリール環およびそのヘテロ原子置換誘導体中で、1個以上の酸素、イオウまたは窒素によって置換し得;
R1およびR2は、個々に、H、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、C3〜C7シクロアルキル、C4〜C12アルキルシクロアルキル、C6〜C10アリール、C7〜C12アルキルアリール基およびこれらの基のヘテロ原子置換誘導体からなる群から選ばれ、これらの基中の1個以上の水素または炭素原子は、ハロゲン、酸素、窒素またはイオウ‐含有基によって置換し得る)。
【0009】
R1およびR2における好ましい置換基は、ヒドロキシル、ハロゲン(例えば、フルオロまたはクロロ)、COOR6、NO2、N(R6)2、SR6、スルホキシ、スルホン、CNおよびOR6からなる群から選ばれ、R6は、HまたはC1〜C6アルキルである。
【0010】
これらの化合物は、プロスタグランジンE作用薬活性を有する化合物の判定において、さらに、多くの疾患の治療において特に有用である。PGE2は、アラキドン酸カスケード中の代謝産物の1つとして知られている。さらに、PGE2は、疼痛誘発活性、炎症活性、子宮収縮活性、消化蠕動に対する促進作用、覚醒活動、胃酸分泌に対する抑制作用、降圧作用、血小板阻害作用、骨吸収活性、血管形成活性等のような各種活性を有することも知られている。
【0011】
プロスタグランジンE‐感受性またはPGE2‐感受性レセプターは、4種類のサブタイプ、即ち、EP1、EP2、EP3およびEP4に細分類されており、これらのレセプターは、種々の組織内で広い分布を有する。EP1およびEP3レセプターに関連する作用は、興奮性とみなし得、ホスファチジルイノシトール回転の刺激またはアデニルシクラーゼ活性の抑制が介在すると信じられており、結果としてのサイクリックAMPの細胞内レベルの低下を伴う。対照的に、EP2およびEP4レセプターに関連する作用は、抑制性とみなし得、アデニルシクラーゼの刺激および細胞内サイクリックAMPの細胞レベルの上昇に関連すると信じられている。特に、EP4 レセプターは、平滑筋弛緩、抗炎症または炎症誘発活性、リンパ球分化、抗アレルギー活性、メサンギウム細胞弛緩または増殖、胃または腸粘液分泌等に関連するとみなし得る。
【0012】
上記式(I)によって示される化合物またはその塩は、PGE2‐感受性レセプター対する結合活性を有し、従って、上記化合物または塩は、PGE2‐拮抗またはPGE2‐抑制活性を有する。
従って、上記式(I)によって示される化合物またはその塩は、ヒトまたは動物における炎症性疾患、各種疼痛等のような、PGE2‐グリセリルエステル作用の遮断のようなPGE2介在疾患を予防または治療において有用である。
【0013】
さらに詳細には、上記式(I)によって示される化合物またはその塩は、ヒトまたは動物における、関節および筋肉の炎症および疼痛(例えば、関節リウマチ、リウマチ様脊椎炎、変形性関節症、痛風性関節炎、若年性関節炎等)、炎症性皮膚症状(例えば、日焼け、火傷、湿疹、皮膚炎等)、炎症性眼症状(例えば、結膜炎等)、炎症に関与する肺疾患(例えば、喘息、気管支炎、ハト病(pigeon fancier's desease)、農夫肺等)、炎症に関連する胃腸管症状(例えば、アフター性潰瘍、クローン病、萎縮性胃炎、ガストリチス バリアロフォーム(gastritis varialofome)、潰瘍性大腸炎、セリアック病、限局性回腸炎、過敏性腸症候群等)、歯肉炎、炎症、術後または負傷後の疼痛および腫れ、発熱、炎症に関連する疼痛および他の症状、アレルギー性疾患、全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎、腱炎、滑液包炎、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、シェーグレン症候群、ベーチェット病、甲状腺炎、I型糖尿病、糖尿病性合併症(糖尿病性細小血管症、糖尿病性網膜症、糖尿病性ネフロパシー等)、ネフローゼ症候群、再生不良性貧血、重症筋無力症、ブドウ膜炎、接触性皮膚炎、乾癬、川崎病、サルコイドーシス、ホジキン病、アルツハイマー病、腎臓機能障害(腎炎、腎炎症候群等)、肝機能障害(肝炎、肝硬変等)、胃腸障害(下痢、炎症性腸疾患等)、ショック、骨粗しょう症のような異常骨代謝に特徴を有する骨疾患(特に閉経後骨粗しょう症)、高カルシウム血症、副甲状腺機能亢進症、骨パジェット病、骨溶解、骨への転移を有するまたは有さない悪性腫瘍の高カルシウム血症、関節リウマチ、歯周炎、骨関節炎、骨痛、骨減少症、癌悪液質、結石症(calculosis)、結石症(lithiasis) (特に尿石症)、固形癌等の治療または予防において有用である。例えば、PGE2拮抗薬は、皮膚、毛髪、内臓または他の色素性細胞の色素沈着過剰疾患(hyperpigmentary disorders)の治療において有用であり得る。さらに、プロスタグランジン拮抗薬は、例えば、多毛症の場合或いは毛髪生長の抑制または防止が望ましくあり得る場合、毛髪成長を抑制するのに有用であり得る。また、プロスタグランジン拮抗薬は、疾患または手術に関連する低眼圧症の治療において有用であり得る。最後に、プロスタグランジン拮抗薬は、限定するつもりはないが、関節リウマチ、ブドウ膜炎および結膜炎のような炎症および自己免疫疾患の治療において有用であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】PG‐2が、ヒト破骨細胞においてカルシウム応答を生じさせないことを示す。
【図2】PG‐2グリセリルエステルが、ヒト破骨細胞においてカルシウム応答を誘発することを示す。
【図3】PGE2によって開始したカルシウム応答が、実施例1の化合物によって遮断されることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の、下記で説明するPGE2レセプター拮抗薬、例えば、EP4またはPGE2‐グリセリルエステル特異性レセプターの拮抗薬においては、Aは、下記の一般式によって示し得る。
【化3】

または
【化4】


(式中、Xは、H、R6、ヒドロキシ、ハロゲン(例えば、フルオロまたはクロロ)、COOR6、NO2、CF3、N(R6)2、CON(R6)2、SR6、スルホキシ、スルホン、CNおよびOR6からなる群から選ばれ、これらにおいて、R6は、HまたはC1〜C6アルキルであり;Yは、OまたはSであり;Zは、NまたはCHである)。
【0016】
好ましくは、プロスタグランジン拮抗薬化合物は、下記の一般式IIまたは一般式IIIによって示される。
【化5】

一般式II
【化6】

一般式III

(式中、Rは、上記で定義したとおりである)。
【0017】
好ましくは、R1およびR2は、H、C1〜C6アルキル、C3〜C7シクロアルキルおよびC4〜C12アルキルシクロアルキルからなる群から選ばれる。
好ましくは、R4およびR5は、HおよびC1〜C6アルキルからなる群から選ばれる。最も好ましくは、R4およびR5は、Hである。
好ましくは、Xは、水素またはハロゲン、例えば、フルオロからなる群から選ばれる。
好ましくは、Rは、C(O)NH‐CH2‐CH(OH)(CH2OH)またはC(O)NH‐CH(CH2OH)2である。
【0018】
最も好ましい化合物は、3‐(2‐{(1R,2R,3S,4R)‐3‐[4‐(4‐シクロヘキシル‐ブチルカルバモイル)‐オキサゾリ‐2‐イル]‐7‐オキサ‐ビシクロ[2.2.1]へプチ‐2‐イルメチル}‐4‐フルオロ‐フェニル)‐プロピオン酸の、即ち、1‐OHを、セリノールアミドまたはジヒドロキシプロピルアミドでそれぞれ置換しているセリノールアミドまたはジヒドロキシプロピルアミド誘導体として説明し得る。
【0019】
下記の定義は、本明細書全体に亘って使用し得る。
“製薬上許容し得る塩”とは、遊離塩基の生物学的有効性と諸性質を保持し、且つ塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p‐トルエンスルホン酸、サリチル酸等のような無機酸との反応によって得られる製薬上許容し得る塩を称する。また、“製薬上許容性し得る塩”とは、遊離酸の生物学的有効性と諸性質を保持し、且つ水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化カルシウム等のような無機塩基或いはリシン、アルギニン、エタノールアミン等のような有機塩基との反応によって得られる製薬上許容し得る塩を称する。
【0020】
“アルキル”とは、直鎖、枝分れまたは環状の飽和脂肪族炭化水素を称する。好ましくは、アルキル基は、1〜12個の炭素を有する。さらに好ましくは、アルキル基は、1〜6個の炭素、最も好ましくは1〜4個の炭素を有する低級アルキルである。典型的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ターシャリブチル、ペンチル、ヘキシル等がある。アルキル基は、必要に応じて、ヒドロキシル、シアノ、アルコキシ、=O、=S、NO2、ハロゲン、ジメチルアミノおよびSHからなる群から選ばれる1個以上の置換基によって置換し得る。
【0021】
“アルケニル”とは、少なくとも1個の炭素‐炭素二重結合を含有する直鎖、枝分れまたは環状の不飽和炭化水素基を称する。好ましくは、アルケニル基は、1〜12個の炭素を有する。さらに好ましくは、アルケニル基は、1〜7個の炭素、最も好ましくは1〜4個の炭素を有する低級アルケニルである。アルケニル基は、必要に応じて、ヒドロキシル、シアノ、アルコキシ、=O、=S、NO2、ハロゲン、ジメチルアミノおよびSHからなる群から選ばれる1個以上の置換基によって置換し得る。
【0022】
“アルキニル”とは、少なくとも1個の炭素‐炭素三重結合を含有する直鎖、枝分れまたは環状の不飽和炭化水素を称する。好ましくは、アルキニル基は、1〜12個の炭素を有する。さらに好ましくは、アルキニル基は、1〜7個の炭素、最も好ましくは1〜4個の炭素を有する低級アルキニルである。アルキニル基は、必要に応じて、ヒドロキシル、シアノ、アルコキシ、=O、=S、NO2、ハロゲン、ジメチルアミノおよびSHからなる群から選ばれる1個以上の置換基によって置換し得る。
【0023】
“アルコキシ”とは、“O‐アルキル”基を称する。
“アリール”とは、共役パイ電子系を有する少なくとも1個の環を有する芳香族基を称し、炭素環アリール、複素環アリールおよびビアリール基を包含する。アリール基は、必要に応じて、ハロゲン、トリハロメチル、ヒドロキシル、SH、OH、NO2、アミン、チオエーテル、シアノ、アルコキシ、アルキルおよびアミノからなる群から選ばれる1個以上の置換基によって置換し得る。
【0024】
“アルカリール”とは、アリール基に共有結合しているアルキルを称する。好ましくは、そのアルキルは、低級アルキルである。
“炭素環アリール”とは、環原子が炭素であるアリール基を称する。
“複素環アリールまたはヘテロアリール”とは、環原子として1〜3個のヘテロ原子を有し、環原子の残余が炭素であるアリール基を称する。
“ヘテロ原子”としては、酸素、イオウおよび窒素がある。従って、複素環アリール基としては、フラニル、チエニル、ピリジル、ピロリル、N‐低級アルキルピロロ、ピリミジル、ピラジニル、イミダゾリル等がある。
【0025】
“ヒドロカルビル”とは、炭素および水素原子のみを有する炭化水素基を称する。好ましくは、上記炭化水素基は、1〜20個の炭素原子、より好ましくは1〜12個の炭素原子、最も好ましくは1〜6個の炭素原子を有する。
【0026】
“ヘテロ原子置換ヒドロカルビル”とは、1個以上であるが全てではない水素および/または炭素原子が、ハロゲン、窒素、酸素またはイオウ原子或いはハロゲン、窒素、酸素またはイオウ原子を含む基、例えば、フルオロ、クロロ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、ホスフェート、チオール等によって置換されているヒドロカルビル基を称する。
【0027】
“アミド”とは、-C(O)-NH‐R'-を称し、R'は、アルキル、アリール、アルキルアリールまたはハロゲンである。
“アミン”とは、-N(R'')R'''基を称し、R''およびR'''は、個々に、アルキル、アリールおよびアルキルアリールからなる群から選ばれる。
THFは、テトラヒドロフランを称する。
DCMは、ジクロロメタンを称する。
DIBAL-Hは、水素化ジイソブチルアルミニウムを称する。
DMAPは、4-ジメチルアミノピリジンを称する。
【0028】
下記の実施例は、本発明のプロスタグランジン拮抗薬化合物の合成方法を説明する;実勢例の番号は、米国特許第7,217,725号(参考として本明細書に合体させる)に記載されている反応スキームに示されている各種中間体および最終化合物の番号に相応する。
【実施例】
【0029】
(実施例1)
N‐(1,3‐ジヒドロキシプロピ‐2‐イル)‐3‐(2‐{(1R,2R,3S,4R)‐3‐[4‐(4‐シクロヘキシル‐ブチルカルバモイル)‐オキサゾリ‐2‐イル]‐7‐オキサ‐ビシクロ[2.2.1]へプチ‐2‐イルメチル}‐4‐フルオロ‐フェニル)‐プロピオンアミドの合成
【化7】

【0030】
ラクトール中間体10の合成
(1) キラルモノメントールエステル
【化8】

CO2R = L‐メントールエステル
【0031】
0℃の無水THF (1L)中のL‐メントール (202g、1.3モル)の撹拌溶液に、n‐ブチルリチウム (ヘキサン中2.5M;510ml、1.28モル)を添加し、温度を10℃よりも低く保った。反応物を直ちに−78℃に冷却し、直ぐに、無水THF (1.2L)中のメソ‐7‐オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン‐2,3‐ジカルボン酸無水物 (177g、1.05モル)の溶液を、およそ20分に亘って添加し、温度を−50℃よりも低く保った。添加後、反応物を−64℃でさらに1時間放置し、その後、希釈塩酸 (2M、800ml)により5分間に亘って失活させ、温度をおよそ−25℃に上昇させた。塩水 (400ml)を添加し、層を分離した。有機層を塩水 (400ml)で洗浄した。混ぜ合せた水性層をDCM (1L)で再抽出した。混ぜ合せた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させた。残留物を、DCM (700ml)と酢酸エチル (2800ml)の混合物中に沸騰時に溶解させた。溶液をゆっくり室温に冷却し、4℃で21時間放置し、濾過し、酢酸エチル(2×500ml)で洗浄し、真空中で乾燥させ、上記モノメントールエステルを、純粋な所望のジアステレオマー (NMR分析によって確認したキラル純度;111.5g、66%)として得た。
【0032】
(2) キラルラクトン
【化9】

【0033】
無水THF (650ml)中の上記モノメントールエステル (65g、0.20モル)とトリエチルアミン(CaH2から新たに蒸留、55ml)の0℃溶液に、クロロギ酸エチル(37ml、0.39モル)を添加し、温度を10℃よりも低く保った。添加後、反応混合物を0℃で1時間放置し、その後、エーテル(700ml;分子篩上で前以って乾燥させた)と石油エーテル (700ml)を添加した。混合物を硫酸マグネシウム(200g)で濾過し、エーテル(2×400ml)で洗浄した。濾液を真空中で蒸発させた。白色固形残留物をTHF (550ml)中に溶解し、5℃に冷却し、無水アルコール(800ml)を添加し、その後、水素化ホウ素ナトリウム(15g、0.39モル)を2分間に亘って分割して添加した。15分後、希釈塩酸(2M、600ml)と氷を添加し、混合物をDCM (3×750ml)で抽出した。混ぜ合せた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させた。油状残留物をDCM (600ml)中に再溶解し、パラ‐トルエンスルホン酸一水和物(3.75g、0.02モル)を添加し、混合物を25分間撹拌した。重炭酸ナトリウム溶液(200ml)で洗浄した後、有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させた。残留物を石油エーテル(40〜60℃;300ml)中で煮沸し、−20℃に冷却し、濾過し、石油エーテル(3×50ml)で洗浄し、上記キラルラクトン(24.5g;79%)を得た。
【0034】
(3) キラルラクトール中間体10
【化10】

【0035】
DIBAL‐H (トルエン中25%、170ml)を、−78℃の無水トルエン(400ml)中のラクトン (25g、 モル)の溶液に40分に亘って添加した。温度を、添加中は、−60℃よりも低く保った。さらに30分後、酢酸 (50ml)を慎重に滴下により添加した。反応混合物を室温に温め、その後、希釈塩酸 (2M、250ml)に添加した。トルエン層を分離し、水層を塩化ナトリウムで飽和させ、DCM (4×600ml)で抽出した。混ぜ合せた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させ、トルエン (2×300ml)で共沸させて、中間体10(25g、99%)を得た。
【0036】
アリールブロミド中間体8の合成
(4) 無水THF (1.2L)中のメチル(トリフェニルホスホラニリデン)アセテート(233.3g、0.70モル)の懸濁液に、無水THF (150mL)中の2‐ブロモ‐4‐フルオロベンズアルデヒド(中間体4;141.6g、0.70モル)の溶液を30分に亘って滴下により添加した。混合物を1夜撹拌し、溶媒を真空中で除去した。残留物を石油エーテル(沸点40〜60℃、1L)中で粉砕し、 シリカ(1Kg)中に通し、石油エーテル中10%酢酸エチルで溶出して、中間体5(176g、97%)をシスおよびトランス異性体の混合物として得た。
【0037】
(5) THF (600ml)中の中間体5(60g、0.23モル)と炭素上5%ロジウム(10g)の混合物を、室温で2日間水素下に撹拌した。混合物をセライトで濾過し、フィルターパッドをTHF (3×200ml)で洗浄した。濾液を真空中で蒸発させ、中間体6(60g、99%)を得た。
【0038】
(6) 無水トルエン(150ml)中の中間体6(26.1g、0.10モル)の−70℃溶液に、DIBAL‐H (トルエン中25%、140ml)を20分に亘って添加し、温度を−50℃よりも低く保った。混合物を−60℃でさらに30分間、次いで、0℃でさらに1時間撹拌した。塩酸(6M、150ml)を、温度を40℃よりも低く慎重に保ちながら添加した。有機層を分離し、水性層をトルエン(2×50ml)で抽出した。混ぜ合せた有機抽出物を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させ、中間体7(23.3g、100%)を得た。
【0039】
(7) 無水DCM (700ml)中の中間体7(81.5g、0.35モル)、トリエチルアミン(56ml)およびDMAP (1.75g、0.014モル)の溶液に、ジメチルテキシルシリルクロリド(70ml、0.355モル)を20分に亘って滴下によって添加した。混合物を室温で1夜放置した。水(200ml)を添加し、層を分離した。水性層をジクロロメタン(2×100ml)で抽出した。混ぜ合せた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、シリカ(500g)中に通し、DCMで溶出して中間体8(125g、95%)を得た。
【0040】
中間体8と10のグリニャールカップリング並びにN‐(1,3‐ジヒドロキシプロピ‐2‐イル)‐3‐(2‐{(1R,2R,3S,4R)‐3‐[4‐(4‐シクロヘキシル‐ブチルカルバモイル)‐オキサゾリ‐2‐イル]‐7‐オキサ‐ビシクロ[2.2.1]へプチ‐2‐イルメチル}‐4‐フルオロ‐フェニル)‐プロピオンアミドへの仕上げ
(8) 触媒量のヨウ素を、無水THF (500ml)中のマグネシウム削りくず(15g、0.62モル)とアリールブロミド中間体8(140g、0.37モル)の混合物に添加した。初期反応が弱まった後、混合物を60℃に2時間加熱し、グリニャール化合物中間体9の形成を完了させ、その後、室温に冷却した。
【0041】
エチルマグネシウムブロミド(THF中の1M;280ml、0.28モル)を、無水THF (260ml)中の中間体10(45g、0.29モル)の溶液に0〜5℃で15分に亘って滴下により添加した。溶液を0〜5℃でさらに25分放置し、その後、調製したグリニャール溶液中間体9(上述した)を10分に亘ってカニューレを介して添加した。反応混合物を室温に温め、24時間撹拌し、真空中で濃縮し、DCM (2L)および塩化アンモニウム溶液(1L)間に分配した。希釈塩酸(2M)を撹拌混合物に添加し、pHを8〜9に低下させた。有機層を分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させた。ヘキサン中5〜40%酢酸エチル中での残留物のクロマトグラフィーによって、生成物中間体11(111g、88%)を得た。
【0042】
(9) 無水ピリジン(200ml)中のグリニャール生成物中間体11(111g、0.25モル)と無水酢酸(28ml、0.30モル)の溶液を、周囲温度で1夜撹拌し、その後、真空中で蒸発させた。残留物をヘキサン (1.2L)中で溶解し、水(500ml)、希釈塩酸(2×500ml)、水(500ml)、塩水(500ml)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させ、生成物中間体12(130g;存在する少量のジアセテート/溶媒)を得、これを、次の工程においてさらに精製することなく使用した。
【0043】
(10) 酢酸(200ml)中の粗中間体12(38g)と炭素上の10%パラジウム(10g)の混合物を、水素下に40時間55℃で撹拌した。冷却後、酢酸エチル(200ml)を添加し、混合物をセライトで濾過し、フィルターパッドを酢酸エチル(3×200ml)によって洗浄した。濾液を真空中で蒸発させ、残留物をヘキサン中10%酢酸エチル中でクロマトグラフィー処理して、先ず脱ヒドロキシル化物中間体12a (14.5g、0.030モル)を溶出し、次いで、酢酸エチルで溶出して脱シリル化脱ヒドロキシル化物中間体12b(6.5g、0.019モル)を得た。中間体11から2工程に亘っての収率:68%。これら2つの生成物(下記に示す)は、次の反応において結合させた。
【0044】
【化11】

中間体12a:R = ジメチルテキシルシリル
中間体12b:R = H
【0045】
(11) ジョーンズ試薬(35ml)を、アセトン (265ml)中の中間体12aと中間体12bの上記混合物(合せて21g、0.049モル)の水冷溶液に添加した。30分後、2‐プロパノール (25ml)の添加し、得られた混合物を15分間撹拌し、セライトで濾過し、アセトンによって洗浄した。濾液を真空中で蒸発させ、DCM (500ml)中に溶解し、水(200ml)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させた。残留物を無水メタノール(100ml)中に溶解し、これに塩化アセチル(2ml)を添加し、1夜撹拌した。蒸発後、残留物をヘキサン中60%酢酸エチル中でクロマトグラフィー処理して、生成物中間体15(9.3g、59%)を得た。
【0046】
(12) ジョーンズ試薬(24ml)を、アセトン(260ml)中の中間体15(10.2g、0.032モル)の水冷溶液に添加した。35分後、2‐プロパノール(16ml)を添加し、得られた混合物を15分間撹拌し、セライトで濾過し、アセトンで洗浄した。濾液を真空中で蒸発させ、DCM (500ml)中に溶解し、水(200ml)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させて、酸‐エステル生成物中間体16(10.2g、95%)を得、これを、次の工程においてさらに精製することなく使用した。
【0047】
(13) 無水THF (150ml)中の中間体16(10.7g、0.032モル)、L‐セリンベンジルエステル塩酸塩(8.8g、0.038モル)および1‐ヒドロキシベンゾトリアゾール(6.3g、0.046モル)の0℃混合物に、トリエチルアミン(11.5ml)を添加した。5分後、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCM中1M;45ml、0.045モル)を添加し、反応混合物を室温で1夜放置した。真空中で濃縮した後、残留物を酢酸エチル(200ml)中でスラリー化し、濾過した。フィルターパッドを酢酸エチル(3×50ml)で洗浄し、濾液を真空中で蒸発させた。残留物をヘキサン中60〜100%酢酸エチル中でクロマトグラフィー処理して、中間体17を白色固形物(13g、79%)として得た。
【0048】
(14) 無水DCM (24ml)および無水アセトニトリル(120ml)中の中間体17(13g、0.025モル)、トリフェニルホスフィン(19.5g、0.074モル)およびジイソプロピルエチルアミン(12.9ml、CaH2から新たに蒸留、0.074モル)の0℃溶液に、四塩化炭素(7.22ml、0.074モル)を添加した。混合物を室温で4時間放置し、0℃に冷却し、酢酸エチル(300ml)と重炭酸ナトリウム溶液(300ml)を添加した。5分間激しく撹拌した後、混合物を酢酸エチル(500ml)および塩水(400ml)に添加した。有機層を分離し、硫化ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させた。残留物をヘキサン中60%酢酸エチル中でクロマトグラフィー処理して、中間体18(6.1g、49%)を淡黄白色固形物として得た。
【0049】
(15) 無水DCM (60ml)中の中間体18(6.1g、0.012モル)の−20℃溶液に、DBU (2ml)を、次いで、ブロモトリクロロメタン(1.5ml)を添加した。反応混合物を栓で閉じ、1夜冷蔵庫内に放置し、その後、塩化アンモニウム溶液(150ml)で洗浄した。水性層を分離し、DCM (100ml)で逆抽出した。混ぜ合せた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させた。残留物をヘキサン中40%酢酸エチル中でクロマトグラフィー処理して、オキサゾール中間体19(4.7g、78%)を得た。
【0050】
(16) 酢酸エチル(35ml)中の中間体19(1.8g、3.65ミリモル)と水酸化パラジウム(20%、0.5g)の混合物を、水素下に2時間撹拌した。冷却後、混合物をセライトで濾過し、フィルターパッドを酢酸エチル(3×25ml)で洗浄した。濾液を真空中で蒸発させ、生成物中間体20(1.45g、99%)を白色固形物として得た。
【0051】
(17) 塩化オキサリル(0.91g;0.61ml、7.15ミリモル)を、無水DCM (15ml)中の中間体20(1.45g、3.60ミリモル)の溶液に添加した。1滴のN,N‐ジメチルホルムアミドを添加して、反応を触媒させた。20分後、混合物を真空中で蒸発させ、無水トルエン(50ml)と共沸させ、その後、無水ジクロロメタン(18ml)に溶解し、0℃に冷却した。トリエチルアミン(CaH2から新たに蒸留;1.15ml)と4‐シクロヘキシルブチルアンモニウムクロリド(1g、5.22ミリモル)を添加し、その後、混合物を室温に1.5時間温めた。混合物を希釈塩酸(1M、50ml)に添加し、DCM (3×50ml)で抽出した。混ぜ合せた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させた。残留物をヘキサン中50%酢酸エチル中でクロマトグラフィー処理して、中間体21(1.45g、75%)を得た。
【0052】
(18) THF (50ml)およびメタノール (230ml)中の中間体21(8.8g、16.30ミリモル)の溶液に、水酸化ナトリウム溶液(1M、90ml)を添加した。3時間後、酢酸(6.5ml)を添加し、溶液を真空中でおよそ100mlに濃縮し、酢酸エチル(1L)に溶解し、希釈塩酸(2M、600ml)、塩水(300ml)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させた。残留物をDCM (70ml)に溶解し、石油エーテル(40〜60℃、350ml)を、温めて撹拌している溶液にゆっくり添加した。結晶化中の混合物を室温に20分に亘って冷却し、濾過し、ペンタン(2×50ml)で洗浄し、真空中で乾燥させて、N‐(1,3‐ジヒドロキシプロピ‐2‐イル)‐3‐(2‐{(1R,2R,3S,4R)‐3‐[4‐(4‐シクロヘキシル‐ブチルカルバモイル)‐オキサゾリ‐2‐イル]‐7‐オキサ‐ビシクロ[2.2.1]へプチ‐2‐イルメチル}‐4‐フルオロ‐フェニル)‐プロピオンアミドを白色固形物(7.60g、融点165〜166℃、87%)として得た。母液を真空中で蒸発させ、ジクロロメタン中5%メタノール中でクロマトグラフィー処理し、上記のように結晶化させて、N‐(1,3‐ジヒドロキシプロピ‐2‐イル)‐3‐(2‐{(1R,2R,3S,4R)‐3‐[4‐(4‐シクロヘキシル‐ブチルカルバモイル)‐オキサゾリ‐2‐イル]‐7‐オキサ‐ビシクロ[2.2.1]へプチ‐2‐イルメチル}‐4‐フルオロ‐フェニル)‐プロピオンアミド(0.49g、融点165〜166℃、5.7%)のさらなる産生物を得た。
【0053】
(実施例2)
適切な試薬または中間体に置き換えることによって、相応するプロピオン酸またはオキサアナログを調製する。
【0054】
(実施例3)
適切な試薬または中間体に置き換えることによって、相応するチオ酸またはスルフィドアナログを調製する。
【0055】
(実施例4)
適切な試薬または中間体に置き換えることによって、相応するメチレンアナログを調製する。
【0056】
(実施例5〜8)
実施例1〜4の合成方法において適切な試薬または中間体に置き換えることによって、
相応するジヒドロキシプロピル誘導体を調製する。
【0057】
本発明の化合物は、哺乳類、例えば、ヒトにおける骨疾患および症状の治療において特に有用である。
骨芽細胞と破骨細胞と称する2つの主要細胞タイプの活性間の複雑な平衡が、ヒトの総骨量を決定する。
骨リモデリングは、破骨細胞が調整する再吸収(resorption)から出発する。破骨細胞は、ミネラルを溶解し、骨芽細胞が形成しているマトリックスを再吸収することによって骨を破壊する。
【0058】
骨芽細胞は、コラーゲンとヒドロキシアパタイトを産生する。ある種の骨芽細胞は、それら細胞のマトリックス中に埋伏され、その場合、これらの細胞は骨細胞と称する。残りの骨芽細胞は、新生骨の表面を覆う。その領域に移入する波状の骨芽細胞は、新たな骨層も形成する。
破骨細胞は、その機能が、ミネラルマトリックスに作用することによって骨を溶解することである大型の細胞である。破骨細胞は、コラーゲンを破壊するコラゲナーゼのような酵素を産生する。また、破骨細胞は、ヒドロキシアパタイト構造体を溶解し得る各種の酸を分泌する。
【0059】
骨芽細胞および破骨細胞の機能を制御する種々のシグナルが存在する。骨芽細胞は、低分子タンパク質を産生し、その1つは、OPG (オステオプロテグリン(osteoprotegrin))である。OPGは、破骨細胞が活性化するのを阻害する。
骨芽細胞は、その形状を変えて、そのマトリックス中に埋伏され、小管と称する細い突起によってのみ互いに結合する。骨芽細胞が骨内に埋伏された後、骨芽細胞は骨細胞と称する。骨細胞は、骨格における全ての細胞の90パーセントを占める。
骨の構築および骨の吸収過程は、これら過程における異常が骨疾患に至るために重要であることを理解されたい。
【0060】
特に、促進された破骨細胞骨吸収は、骨粗しょう症および他の骨疾患の発症における中心的役割を有する。破骨細胞活性を調節する分子経路を同定することは、これら疾患の原因を理解することおよび新規な治療法を開発することに対する手掛かりを提供する。カンナビノイドタイプ1 (CB1)レセプターの不活性化を示すマウスが、骨量を増大し、卵巣摘出術誘発性骨量減少から保護されることは証明されている。CB1およびCB2レセプターの薬理的拮抗薬は、卵巣摘発術誘発性生体内骨量減少を予防し、そして、生体外破骨細胞抑制を、破骨細胞アポトーシスを促進させ且つ数種の破骨細胞生存因子の産生を阻害することによって生じさせている。従って、上記CB1レセプターは骨量および卵巣摘出術誘発性骨量減少の調節における役割を有し、CB1‐およびCB2‐選択性カンナビノイドレセプター拮抗薬は、破骨細胞阻害剤であり、骨粗しょう症および他の骨疾患の治療において有用である。
【0061】
本発明のプロスタグランジンE2拮抗薬は、下記の通り、相応するプロスタグランジンE2レセプターの存在においてプロスタグランジンE2グリセリルレセプター作用薬活性を有するまたは有さない化合物について試験するのに使用し得る:
プロスタグランジンE2‐グリセリルエステルおよびプロスタグランジンE2に対して応答性の組織または細胞、例えば、ネコ虹彩括約筋組織XXを種々の濃度の上記プロスタグランジンE‐グリセリルエステルと接触させ、第1応答を濃度依存方式で測定する。(好ましくは、上記ネコ虹彩括約筋組織は、下記の試験目的においては4対の組織標本に切開し得る)。上記組織または細胞を、上記種々の濃度の上記プロスタグランジンE2‐グリセリンエステルと、プロスタグランジン拮抗薬の存在下に接触させ、第2応答を濃度依存方式で測定する。
上記組織または細胞を、プロスタグランジンE2‐グリセリルエステル作用薬活性について評価すべきである種々の濃度の化合物と接触させ、第3応答を濃度依存性方式で測定する。上記組織または細胞を、プロスタグランジンE2‐グリセリルエステル作用薬活性について評価すべき各種濃度の上記化合物と上記プロスタグランジンE2‐グリセリルエステル拮抗薬の存在下に接触させ、第4応答を濃度依存方式で測定する。
【0062】
プロスタグランジンE2‐グリセリルエステル作用薬活性を有する化合物を、上記第3と第4応答との差異が上記第1と第2応答との差異よりも大きい化合物として判定する。
好ましくは、上記第1と第2応答との差異は実質的に無視してもよい、即ち、上記プロスタグランジンE2‐グリセリルエステルは、プロスタグランジン作用薬活性を実質的に有していない、従って、プロスタグランジンE2‐グリセリルエステル拮抗薬の存在は、組織応答に影響を与えない。従って、プロスタグランジンE2‐グリセリルエステル作用薬は、プロスタグランジンE2‐グリセリルエステル拮抗薬の存在下での応答を、プロスタグランジンE2‐グリセリルエステル拮抗薬の不存在下での応答と比較したとき無視できる化合物である。
【0063】
本発明のもう1つの局面においては、プロスタグランジンE2‐グリセリルエステル作用薬の相対的活性を、2種以上のプロスタグランジンE2‐グリセリルエステル作用薬を、特定濃度の本発明のプロスタグランジンE2‐グリセリルエステル拮抗薬の存在下においてプロスタグランジンE2‐グリセリルエステル作用薬に対して応答性である組織または細胞と接触させることによって測定することができる。上記プロスタグランジンE2‐グリセリルエステル作用薬の各々の相対的活性は、上記組織または細胞の相対的応答を比較することによって判定する。
【0064】
当業者であれば、投与に当っては、本明細書において開示する化合物を当該技術においてそれ自体周知である製薬上許容し得る賦形剤と混合し得ることは容易に理解し得るであろう。特に、全身投与すべき薬物は、経口投与または非経口投与または吸入に適する粉末、ピル、錠剤等として、或いは、溶液、エマルジョン、懸濁液、エアゾール、シロップまたはエリキシル剤として調合し得る。
【0065】
固形の投与剤形のためには、無毒性固形担体としては、限定するものではないが、製薬級のマンニトール、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、サッカリン酸ナトリウム、ポリアルキレングリコール、タルカム、セルロース、グルコース、スクロースおよび炭酸マグネシウムがある。固形投与剤形は、コーティーングしてなくてもよく、或いは、既知の方法によってコーティーングして胃腸管内での崩壊および吸収を遅延させ、それによって、長期に亘る持続作用を付与し得る。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルのような時間遅延物質を使用し得る。また、固形投与剤形は、米国特許第4,256,108号、第4,166,452号および第4,265,874号に記載された方法によってコーティーングして、制御放出用の浸透性治療用錠剤を調製することもできる。薬物投与可能な液体投与剤形は、例えば、例えば水、生理食塩水、含水デキストロース、グリセリン、エタノール等のような担体中の1種以上の現在有用な化合物および任意成分としての製薬用アジュバントの溶液または懸濁液を含み、それによって、溶液または懸濁液を調製することができる。必要に応じて、投与すべき製薬組成物は、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤等のような少量の無毒性補助物質もまた含有し得る。そのような助剤の典型的な例は、酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、トリエタノールアミン、酢酸ナトリウム、オレイン酸トリエタノールアミン等である。そのような投与剤形の実際の調製方法は、既知であり、当業者にとっては明白であろう;例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 16th Edition, 1980を参照されたい。投与すべき製剤組成物は、いずれにしても、一定量の1種以上の現在有用な化合物を所望の治療効果を与える有効量で含有する。
【0066】
非経口投与は、一般的には、皮下、筋肉内または静脈内のいずれかの注射に特徴を有する。注射物質は、通常の剤形で、液体の溶液または懸濁液、注入前に液体中溶液または懸濁液にするのに適する固形剤形、またはエマルジョンのいずれかとして調製し得る。適切な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセリン、エタノール等である。さらに、必要に応じて、投与する注射用製薬組成物は、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤等のような少量の無毒性補助物質も含有し得る。また、上記化合物は、ペグ化マトリックスまたはフィブリントロンビンマトリックスのような骨への局所投与用の担体と接合させ得る。
【0067】
投与する現在有用な化合物(1種以上)の量は、勿論、所望する治療効果(単数または複数の)、治療する特定の哺乳類、哺乳類症状の重篤度および性質、投与方式、使用する特定化合物(1種以上)の有効性および薬力学、並びに処方医師の判断による。現在有用な化合物(1種以上)の製薬上有効な投与量は、好ましくは約0.5ng/kg/日または約1ng/kg/日〜約100mg/kg/日の範囲内であり得る。
【0068】
本発明の化合物は、皮膚、毛髪、臓器または他の色素沈着細胞の高色素沈着疾患或いは多毛症にかかり易いことが知られている種々の哺乳類種、例えば、ヒト、ネコおよびイヌ等に、約0.1〜約100mg/kg、好ましくは約0.2〜約50mg/kg、より好ましくは約0.5〜約25mg/kg (または約1〜約2500mg、好ましくは約5〜約2000mg)の投与量範囲内の有効量で、単回または2〜4回の分割投与日量での処方にて経口、非経口または局所投与し得る。炎症性疾患においては、本発明の化合物は、上記のように局所、経口または局所注射によって投与し得る。
【0069】
上記活性成分は、色素沈着または毛髪成長等を抑制する局所剤形において、投与量単位当り約5〜約500mgの式I、IIまたはIIIの化合物或いはこれら化合物の混合物を含有する錠剤、カプセル剤、溶液または懸濁液のような組成物において使用し得る(0.01〜5質量%の式Iの化合物、1日当り1〜5回の治療)。これらの化合物は、通常の数量で、生理学上許容し得るビヒクルまたは担体、賦形剤、バインダー、防腐剤、安定剤、香味料等或いは一般に認められた製薬業務が必要とするような局所担体、例えば、鉱油と配合し得る。
【0070】
上記の説明は、本発明を実施するのに使用し得る特定の方法および組成物を詳述しており、意図する最良の形態を示している。しかしながら、当業者にとっては、所望の薬理特性を有するさらなる化合物を同様な方法で調製し得ること、また、開示した化合物は種々の出発化合物からも得ることができることが明白である。本発明のプロスタグランジン拮抗薬を含む種々の製薬組成物を、実質的に同じ結果でもって調製し使用することができる。最後に、本発明を、上記で、式Iの化合物に関連して説明してきたが、これら化合物の自明の変形は、本発明の範囲内に包含される。
【0071】
従って、詳細ではあるが、上記は明細書に示されており、本発明の全体的範囲を限定するものと解釈すべきではない;むしろ、本発明の範囲は、特許請求の範囲の法的解釈によってのみ支配されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式Iによって示される、プロスタグランジンレセプター拮抗薬活性を有する化合物およびその製薬上許容し得る塩:
【化1】


(式中、Rは、R3‐C(O)CH2‐CH(OH)(CH2OH)またはR3‐C(O)CH(CH2OH)2であり;R3は、O、NR4、SおよびC(R5)2からなる群から選ばれ、これらの式中、R4は、H、ヒドロカルビルおよびヘテロ原子置換ヒドロカルビル基からなる群から選ばれる基を示し、前記ヘテロ原子は、ハロゲン、O、SおよびNからなる群から選ばれ、即ち、O、Sおよび/またはNは、O、SまたはN‐含有基として含ませ得、そして、R5は、H、ヒドロカルビルおよびヘテロ原子置換ヒドロカルビル基からなる群から選ばれる基を示し、前記ヘテロ原子は、ハロゲン、O、SおよびNからなる群から選ばれ、即ち、O、Sおよび/またはNは、O、SまたはN‐含有基として含ませ得;
mは、1〜3の整数であり;
nは、0または1〜4の整数であり;
Aは、6〜14個の炭素原子を有するアリールまたはヘテロアリール基であり、該ヘテロアリールは、ヘテロアリール環およびそのヘテロ原子置換誘導体中で、1個以上の酸素、イオウまたは窒素によって置換し得;
R1およびR2は、個々に、H、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、C3〜C7シクロアルキル、C4〜C12アルキルシクロアルキル、C6〜C10アリール、C7〜C12アルキルアリール基およびそれらの基のヘテロ原子置換誘導体からなる群から選ばれ、これらの基内の1個以上の水素または炭素原子は、ハロゲン、酸素、窒素またはイオウ‐含有基によって置換し得る)。
【請求項2】
式IIによって示される請求項1記載の化合物:
【化2】


(式中、Xは、H、C1〜C6アルキル、ヒドロキシル、ハロゲン、COOR6、NO2、CF3、N(R6)2、CON(R6)2、SR6、スルホキシ、スルホン、CNおよびOR6からなる群から選ばれ、これらにおいて、R6は、HまたはC1〜C6アルキルである)。
【請求項3】
mが、1または2である、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
nが、2〜4である、請求項2記載の化合物。
【請求項5】
R1およびR2が、H、C1〜C6アルキル、C3〜C7シクロアルキルおよびC4〜C12アルキルシクロアルキルからなる群から選ばれる、請求項2記載の化合物。
【請求項6】
Xが、水素またはハロゲンである、請求項2記載の化合物。
【請求項7】
Xが、フルオロである、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
下記の式IIIによって示される、請求項1記載の化合物:
【化3】


(式中、Yは、OまたはSであり;Zは、NまたはCHであり;Xは、H、C1〜C6アルキル、ヒドロキシル、ハロゲン、COOR6、NO2、N(R6)2、CON(R6)2、SR6、スルホキシ、スルホン、CNおよびOR6からなる群から選ばれ、これらにおいて、R6は、C1〜C6アルキルである)。
【請求項9】
mが、1または2である、請求項8記載の化合物。
【請求項10】
nが、2〜4である、請求項8記載の化合物。
【請求項11】
R1およびR2が、H、C1〜C6アルキル、C3〜C7シクロアルキルおよびC4〜C12アルキルシクロアルキルからなる群から選ばれる、請求項8記載の化合物。
【請求項12】
Xが、水素またはハロゲンである、請求項8記載の化合物。
【請求項13】
Xが、フルオロである、請求項12記載の化合物。
【請求項14】
前記化合物が、3‐(2‐{(1R,2R,3S,4R)‐3‐[4‐(4‐シクロヘキシル‐ブチルカルバモイル)‐オキサゾリ‐2‐イル]‐7‐オキサ‐ビシクロ[2.2.1]へプチ‐2‐イルメチル}‐4‐フルオロ‐フェニル)‐プロピオン酸、1,3‐ジヒドロキシプロピ‐2‐イルエステルである、請求項1記載の化合物。
【請求項15】
前記化合物が、3‐(2‐{(1R,2R,3S,4R)‐3‐[4‐(4‐シクロヘキシル‐ブチルカルバモイル)‐オキサゾリ‐2‐イル]‐7‐オキサ‐ビシクロ[2.2.1]へプチ‐2‐イルメチル}‐4‐フルオロ‐フェニル)‐1,3‐ジヒドロキシプロピ‐2‐イル‐プロピオンアミドである、請求項1記載の化合物。
【請求項16】
前記化合物が、3‐(2‐{(1R,2R,3S,4R)‐3‐[4‐(4‐シクロヘキシル‐ブチルカルバモイル)‐オキサゾリ‐2‐イル]‐7‐オキサ‐ビシクロ[2.2.1]へプチ‐2‐イルメチル}‐4‐フルオロ‐フェニル)‐プロピオン酸、1,2‐ジヒドロキシプロピ‐3‐イルエステルである、請求項1記載の化合物。
【請求項17】
前記化合物が、下記である、請求項1記載の化合物:
【化4】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−522796(P2012−522796A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503702(P2012−503702)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/029626
【国際公開番号】WO2010/114997
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(390040637)アラーガン インコーポレイテッド (117)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】