説明

プロセス・プラントにおける熱交換ネットワークの熱回収の最適化

【課題】熱交換ネットワークにおける熱回収を最大にする。
【解決手段】方法及びシステムは、多数の並列経路を有する熱交換器ネットワークからオンライン・プロセス・データを収集することを含む。オンライン・プロセス・データは、経路の低温プロセスストリーム出口温度から生成される。ストリームの流量目標値は、オンライン・プロセス・データに基づいて開発され、各々の低温プロセスストリーム出口温度の等化のために意図された各熱交換器を通る流量を含む。熱交換器ネットワークの1つ又はそれ以上の低温ストリーム流量制御バルブ及び熱交換器ネットワークの1つ又はそれ以上のプロセスストリーム流量制御バルブが、低温プロセスストリーム出口温度の等化をもたらすように流量目標値に基づいて制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般にプロセス制御システムに関し、特に多数の並列熱交換器を有する石油精製所のための熱回収マキシマイザに関する。
【背景技術】
【0002】
化学、石油、又は他のプロセスにおいて用いられるようなプロセス制御システムは、典型的に、少なくとも1つのホスト又はオペレータ・ワークステーションに通信可能に結合された1つ又はそれ以上の集中又は分散プロセス・コントローラを含む。プロセス・コントローラはまた、典型的に、アナログ、デジタル又はアナログとデジタルが組み合わされたバスを介して例えばフィールド機器のようなプロセス制御及び計装機器に結合される。フィールド機器は、バルブ、バルブ・ポジショナ、スイッチ、伝送器及びセンサ(例えば温度、圧力、及び流量センサ)であってもよく、プロセス・プラント環境内に配置され、バルブの開閉、プロセス・パラメータの測定、流体のストリームの増減等のようなプロセス内の機能を果たす。周知のFOUNDATION(商標)Fieldbus(以下「Fieldbus」)プロトコル又はHighway Addressable Remote Transmitter(HART(登録商標))プロトコルに準拠しているフィールド機器のようなスマート・フィールド機器が、制御計算、警報機能、及びプロセス・コントローラ内に通常実装される他の制御機能を果たすこともある。
【0003】
典型的にプロセス・プラント環境内に配置されるプロセス・コントローラは、フィールド機器によって作成された又はそれと関連付けられたプロセス測定値又はプロセス変数、及び/又はフィールド機器に関係している他の情報を表す信号を受信し、コントローラ・アプリケーションを実行する。コントローラ・アプリケーションは、例えば、プロセス制御決定を行い、受信した情報に基づいて制御信号を生成し、制御モジュール又はHART(登録商標)及びFieldbusフィールド機器のようなフィールド機器において実行されているブロックと協働する異なる制御モジュールを実装する。プロセス・コントローラにおける制御モジュールは、制御信号を通信ライン又は信号パス上でフィールド機器に送信し、それによりプロセスの動作を制御する。
【0004】
フィールド機器及びプロセス・コントローラからの情報は、典型的に、オペレータ・ワークステーション、保守ワークステーション、パーソナル・コンピュータ、ハンドヘルド機器、データ・ヒストリアン、リポート・ジェネレータ、集中データベース等のような、1つ又はそれ以上の他のハードウェア機器に利用できるように作成されて、オペレータ又は保守要員が、例えばプロセス制御ルーチンの設定を変更すること、プロセス・コントローラ又はスマート・フィールド機器内の制御モジュールの動作を修正すること、プロセスの又はプロセス・プラント内の特定の機器の現在状態を見ること、フィールド機器及びプロセス・コントローラによって生成された警報を見ること、作業者を訓練し又はプロセス制御ソフトウェアをテストする目的でプロセスの作動をシミュレートすること、及びプロセス・プラント内の問題又はハードウェア障害を診断することなどの所望の機能を実施することを可能にする。
【0005】
典型的なプロセス・プラントは、1つ又はそれ以上のプロセス・コントローラに結合されたバルブ、伝送器、センサ等のような多くのプロセス制御及び計装機器を有するが、同じくプロセス作動に必要な又はそれに関係する多くの他の支援機器が存在する。これらの付加的な機器には、例えば電力供給設備、発電及び配電設備、典型的なプラント内の多くの場所に配置されるタービン、モータ等のような回転機器がある。この付加的な設備は、必ずしもプロセス変数を生成し又は使用する必要はなく、多くの場合、プロセス作動に影響を及ぼす目的では制御されないか又はプロセス・コントローラに結合さえされないが、それにもかかわらず、この設備は、プロセスの適正な作動にとって重要であり、結局は必要なものである。
【0006】
エネルギー管理のプロセス制御は、石油精製産業ならびに他のプロセス・システムの全体にわたって肝要な事項である。典型的な石油精製所には、ある種の蒸留システムがある。蒸留システムにおいては、原油がヒータに輸送され、そこで原油が蒸留に先立って加熱される。結果として、原油精製所は、原油が蒸留の前に加熱される際に大きな投入エネルギーを必要とする。原油を加熱することは、熱い原油の方がより容易にその留分に分離するため必須である。さらに、原油を加熱することは、多くの精製プロセスの効率を高め、燃料の消費を減少させる。原油が加熱されているため、蒸留製品は、蒸留プロセスからの顕熱を含む。顕熱は、ストリームに温度の変化(上昇又は下降のいずれか)があるときに、製品のストリームに又はストリームから伝達される熱である。この顕熱は、取り戻され再利用されるならば蒸留プロセスの効率を引き上げることができる、潜在的に取り戻し可能なエネルギーである。したがって、ほとんどの石油精製所には、熱交換器のようなある種の熱回収システムがある。熱交換器は、顕熱の一部を蒸留製品から蒸留前の原油のストリームに移動させる。そうすることで、熱交換器は、原油を所定の温度まで予熱するのに必要な燃料の量を減少させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ほとんどの最新の石油精製所の規模及び複雑さのために、原油の充分な予熱を達成するには単一熱交換器では不十分である。したがって、多くの最新の石油精製所には、原油の異なるストリームを加熱する熱交換器ネットワークがある。しかしながら、これらの熱交換器ネットワークは、熱交換面上に流体汚れが堆積するため時間が経つにつれて熱交換器が異なるレベルの伝熱効率で作動するので、蒸留製品からの熱回収を最大にし、又は最適化するものではない。
【0008】
さらに、ほとんどの最新の石油精製所は、多様な品質の原油を処理し、精製製品への多様な需要をもっている。流体汚れの堆積、原油品質の変化、精製製品への需要の変化は、すべて、公知の熱交換器システムの効率を低下させる。もう1つの方法として、熱交換器は、原油を予熱して効率をさらに高めるために、二次プロセスの一部として冷却されなければならない高温プロセス流体のストリームを使用することができる。精製所の設計基準に従って熱回収が最大になるであろう熱交換器を指定するために、幾つかのプロセス設計技術が用いられる。精製所が建設された後で、プロセス制御システムは、一般に、所与の設計上の及び経済的な制約のなかで精製所のパフォーマンスを最適化させなければならない。幾つかのケースでは、原油供給熱回収オプティマイザは、多様な条件の下で、指定の原油装入量のときの熱回収を最大にすることができなければならない。多くの精製所は比較的小さく、多数の計測器及び制御バルブを正当化することはできない場合があるため、オプティマイザは経済的に妥当でなければならないことが多い。さらに、種々の精製所の間で種々のプロセス制御システムが与えられると、オプティマイザは実装が容易であるべきである。
【0009】
石油精製所のような多くのプロセス・プラントには、例えば、CSIシステムズ社によって提供されたMachinery Health(登録商標)アプリケーションのような設備監視・診断アプリケーション、又は種々の回転機器の作動状態を監視し、診断し、及び最適化するのに用いられる他の任意の公知のアプリケーションがある。保守要員は、通常、プラントの回転機のパフォーマンスを維持し監督するために、回転機に伴う問題を判定するために、及び回転機がいつ修理又は交換されなければならないか、および回転機が修理又は交換されなければならないかどうかを判定するために、これらのアプリケーションを使用する。同様に、多くのプロセス・プラントは、発電及び配電設備を制御し維持するために、例えばLiebert社及びASCO社によって提供されたような電力制御・診断アプリケーションを含む。プロセス・プラントの制御アクティビティを最適化させるために、プロセス・プラント内で例えばリアル・タイム・オプティマイザ(RTO+)のような制御最適化アプリケーションを走らせることも公知である。こうした最適化アプリケーションは、典型的に、例えば利益のような何らかの所望の最適化変数に対してプロセス・プラントの作動を最適化させるのにどれくらい入力を変化させればよいかを予測するために、プロセス・プラントの複雑なアルゴリズム及び/又はモデルを使用する。
【0010】
ほとんどの公知の熱交換オプティマイザ・システムは、原油のストリームが再合流された後の最適混合後温度を見つけ出すために、サーチ・ルーチンを使用する。公知のシステムでは、1つの熱交換器の効率の小さな変化は混合後温度の大きな変化をもたらさないことがあり、したがって公知のシステムはこれらの効率の小さな変化を考慮に入れ得ない。しかしながら、効率の小さな変化は、時間が経つにつれて大きな損失につながることがある。
【0011】
これらの及び他の診断・最適化アプリケーションは、典型的に、システム全体ベースで1つ又はそれ以上のオペレータ又は保守ワークステーションに実装され、プロセス・プラント又はプロセス・プラント内の機器及び設備の作動状態に関する予め設定された表示をオペレータ又は保守要員に提供してもよい。典型的な表示には、プロセス・コントローラ又はプロセス・プラント内の他の機器によって生成された警報を受信する警報表示、プロセス・コントローラ及びプロセス・プラント内の他の機器の作動状態を示す制御表示、プロセス・プラント内の機器の作動状態を示す保守表示等がある。同様に、これらの及び他の診断アプリケーションは、オペレータ又は保守要員が制御ループを元に戻し又は他の制御パラメータをリセットすること、これらのフィールド機器の現在状態を判定するために1つ又はそれ以上のフィールド機器に対してテストを行うこと、或いはフィールド機器又は他の設備を校正することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
熱交換器ネットワークにおける熱回収を最大にする特定の前提をもつ、プロセス制御システムにおける熱回収を容易にするシステム及び方法が開示される。特に、各熱交換器経路から出口温度のみが収集される必要がある。このシステム及び方法は、増分費用等化(Incremental Cost Equalization)(ICE)として知られる負荷配分を通じて最大化を達成する。ICEは、増分費用が等しくない場合に、より高い増分費用をもつユニット(経路)からより低い増分費用をもつユニット(経路)に負荷がシフトされるべきであるという概念で機能する。したがって、負荷は、より高い増分費用(すなわちより低効率の)熱交換器経路からより低い増分費用(すなわちより高効率の)熱交換器経路にシフトされる。開示された技術は、効率を負荷の関数として計算するための明示的表現又はモデルから導出される。式は、各熱交換器経路の入口及び出口温度の、並びに経路内の1つ又は複数の熱交換器の熱容量の、差異を考慮に入れている。熱容量及び入口温度は一般に各並列経路について同一であるので、熱回収を最大にするには出口温度のみが等化される必要がある。各熱交換器についての出口温度を等化するために、出口温度に基づいて目標流量を計算することができ、目標流量を達成して、出口温度を等化し、熱交換器ネットワークにおける熱回収を最大にするように制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】1つ又はそれ以上のオペレータ及び保守ワークステーション、コントローラ、フィールド機器、及び支援設備を含む分散型プロセス制御システム及びネットワークを有するプロセス・プラントの例示的なブロック図である。
【図2A】本開示の教示に係る熱回収最大化システムを使用することができる熱交換器ネットワークを含む石油精製プロセス及びシステムを示す、図1のプロセス・プラントの一部の概略図である。
【図2B】本開示の教示に係る熱回収最大化システムを使用することができる熱交換器ネットワークを含む石油精製プロセス及びシステムを示す、図1のプロセス・プラントの一部の概略図である。
【図2C】本開示の教示に係る熱回収最大化システムを使用することができる熱交換器ネットワークを含む石油精製プロセス及びシステムを示す、図1のプロセス・プラントの一部の概略図である。
【図3】熱交換器を含むプロセス・プラントの異なる要素内に配置された熱回収最大化システムの種々のコンポーネント間の通信相互接続を示す、図1のプロセス・プラントの一部の例示的なブロック図である。
【図4】シェルアンドチューブ型熱交換器を示す、図1のプロセス・プラントの一部の例示的な概略図である。
【図5】多数の並列経路を提供する図4のような熱交換器ネットワークを示す、図1のプロセス制御システムの例示的なブロック図である。
【図6】コントローラと通信する熱交換器ネットワークを示す、図5のプロセス制御システムの例示的なブロック図である。
【図7】図6のような熱交換器ネットワークにおける熱回収の最大化のための流れ図の例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書で開示されるのは、熱交換器ネットワークにおける熱回収を最適化するための技術を実装するプロセス制御システム・アーキテクチャ及び方法である。
【0015】
ここで図1を参照すると、熱回収最大化システムを実装することができる例示的なプロセス・プラント10は、1つ又はそれ以上の通信ネットワークを介して支援設備と組み合わせて相互接続される多数の制御及び保守システムを含む。プロセス制御システム12は、PROVOX若しくはRS3システムのような従来のプロセス制御システム、又はオペレータ・インターフェース12Aを含み、オペレータ・インターフェース12Aがコントローラ12B、及びコントローラ12Bが入力/出力(I/O)カード12Cに結合され、次いで入力/出力(I/O)カード12Cがアナログ機器及びHART(登録商標)フィールド機器15のような種々のフィールド機器に結合された、任意の他の制御システムであってもよい。分散型プロセス制御システムであってもよいプロセス制御システム14は、イーサネット(登録商標)・バスのようなバスを介して1つ又はそれ以上の分散型コントローラ14Bに結合された1つ又はそれ以上のオペレータ・インターフェース14Aを含む。コントローラ14Bは、例えば、テキサス州オースティン所在のEmerson Process Managementによって販売されているDeltaV(商標)コントローラ、又は任意の他の所望のタイプのコントローラであってもよい。コントローラ14Bは、I/O機器を介して、例えばHART(登録商標)又はFieldbusフィールド機器、或いは例えばPROFIBUS(登録商標)、WORLDFIP(登録商標)、Device−Net(登録商標)、AS−Interface及びCANプロトコルのいずれかを用いるものを含む任意の他のスマート又は非スマート・フィールド機器のような1つ又はそれ以上のフィールド機器16に結合される。公知のように、フィールド機器16は、プロセス変数に並びに他の機器情報に関するアナログ又はデジタル情報をコントローラ14Bに提供することができる。オペレータ・インターフェース14Aは、例えば制御オプティマイザ、診断エキスパート、ニューラル・ネットワーク、同調器等を含むプロセスの作動を制御するためのプロセス制御オペレータが利用可能なツール17、19を格納し実行することができる。
【0016】
さらにまた、保守、監視及び診断アクティビティを実行するために、前述のAMS(商標)Suite:インテリジェント・デバイス・マネージャ・アプリケーション及び/又は後述の監視・診断・通信アプリケーションを実行するコンピュータのような保守システムを、プロセス制御システム12及び14に又はその中の個々の機器に接続してもよい。例えば、機器15と通信し、或る場合においては機器15上の他の保守アクティビティを再構成し又は実行するために、保守コンピュータ18が、任意の所望の通信ライン又はネットワーク(無線又はハンドヘルド機器ネットワークを含む)を介してコントローラ12Bに及び/又は機器15に接続されてもよい。同様に、AMS(商標)Suite:インテリジェント・デバイス・マネージャ・アプリケーションのような保守アプリケーションは、機器16の作動状態に関するデータの収集を含む保守及び監視機能を果たすために、分散型プロセス制御システム14と関連付けられた1つ又はそれ以上のユーザ・インターフェース14Aにインストールされ、それによって実行されてもよい。
【0017】
プロセス・プラント10はまた、タービン、モータ等のような種々の回転機器20を含み、回転機器20は、何らかの恒久的又は一時的通信リンク(測定を行うために回転機器20に接続され後で取り外されるバス、無線通信システム、又はハンドヘルド機器など)を介して保守コンピュータ22に接続される。保守コンピュータ22は、プラントの回転機器20、その他の設備の作動状態を診断し、監視し、最適化するために、CSI(エマソン・プロセス・マネジメント・カンパニーの1つ)によって提供されたもの、ならびに、後述のアプリケーション、モジュール、及びツールのような市販のアプリケーションを含む、任意の数の監視・診断アプリケーション23を格納し実行することができる。保守要員は、通常、プラント10の回転機器20のパフォーマンスを維持し監督して、回転機器20に伴う問題を判定し、いつ回転機器20が修理され又は交換されなければならないか、および回転機器20が修理され又は交換されなければならないかどうかを判定するために、アプリケーション23を使用する。幾つかのケースでは、外部コンサルタント又はサービス組織が、回転機器20に関係しているデータを一時的に取得し又は測定し、このデータを用いて回転機器20についての分析を行って、問題、パフォーマンス低下、又は回転機器20に影響を及ぼす他の事柄を検出することができる。これらのケースでは、分析を行うコンピュータは、何らかの通信ラインを介して残りのシステム10に接続されなくてもよく、又は一時的にのみ接続されてもよい。
【0018】
同様に、プラント10と関連付けられた発電・配電設備25を有する発電・配電システム24が、プラント10内の発電・配電設備25を稼動させ作動を監督する別のコンピュータ26に、例えばバスを介して接続される。コンピュータ26は、発電・配電設備25を制御し維持するために、例えばLiebert社及びASCO社又は他の会社によって提供されたような公知の電力制御・診断アプリケーション27を実行することができる。また、多くのケースにおいて、外部コンサルタント又はサービス組織が、設備25に関係しているデータを一時的に取得し又は測定し、このデータを用いて設備25についての分析を行って、問題、パフォーマンス低下、又は設備25に影響を及ぼす他の事項を検出するサービス・アプリケーションを使用することができる。これらのケースでは、分析を行うコンピュータ(コンピュータ26など)は、何らかの通信ラインを介して残りのシステム10に接続されなくてもよく、又は一時的にのみ接続されてもよい。
【0019】
図1に示すように、コンピュータ・システム30は、熱回収最適化システム35の少なくとも一部を実装することができ、その実施形態を以下により詳細に説明する。一般的に言えば、熱回収最適化システム35は、それらが監視されている機器又はサブシステムの動作にかかわる情報を受け取るために、フィールド機器15、16、コントローラ12B、14B、回転機20又はその支援コンピュータ22、発電設備25又はその支援コンピュータ26、及びプロセス・プラント10内の任意の他の所望の機器及び設備と通信することができる。特に、熱回収最適化システム35は、フィールド機器、コントローラ、センサ、並びに例えば石油精製所内で見られるような1つ又はそれ以上の熱交換器又は熱交換システムと関連付けられた任意の他の所望の機器及び設備と通信することができる。熱回収最適化システム35は、有線接続バス45を介してプラント10内の各々の少なくとも幾つかのコンピュータ又は機器に通信可能に接続されてもよく、又は代替的に、例えば無線接続、OPCを用いる専用接続、データを収集するためにハンドヘルド機器に依存するような間欠的接続等を含む任意の他の所望の通信接続を介して接続されてもよい。同様に、熱回収最適化システム35は、インターネット、電話接続等のようなLAN又は公衆接続(図1にはインターネット接続46として示されている)を介して、プロセス・プラント10内のフィールド機器及び設備に関係しているデータを得ることができ、その場合こうしたデータは、例えば第三者のサービス・プロバイダによって収集されている。さらに、熱回収最適化システム35は、例えばイーサネット(登録商標)、Modbus、HTML、XML、所有権を主張できる技術/プロトコル等を含む様々な技術及び/又はプロトコルを介してプラント10のコンピュータ/機器に通信可能に結合されてもよい。さらにまた、熱回収最適化システム35は、特定の熱交換器のためのコントローラのような、熱交換器ネットワークの1つ又はそれ以上のコントローラとして実装されてもよく、その場合コントローラは、プラント10のコンピュータ、機器及び/又は他のコントローラに通信可能に結合される。したがって、熱回収最適化システム35をプラント10のコンピュータ/機器に通信可能に結合するためにOPCを用いる特定の例をここで説明したが、当業者であれば、熱回収最適化システム35をプラント10のコンピュータ/機器に結合する様々な他の方法を同様に用いることができることが分かるであろう。
【0020】
典型的な石油精製所における第1のユニットは、図2A〜図2Cに示されたような原油ユニットであり、原油は、ナフサ(ガソリン)124、灯油126、ディーゼル128、AGO(燃料油)130、残油製品(例えば潤滑油132、パラフィンワックス134、アスファルト136等)及びその他のもののような一次製品に分留される。これは、パイプ・スチル、精留塔又は大気圧(ときには真空)精留塔と呼ばれることもある蒸留器122において達成される。原油は、蒸留器122に入るときにフラッシュするように加熱される。あらゆる蒸留プロセスと同様に、一部の蒸気が凝縮され還流として戻され蒸留器122を流れ落ちていく際に、潜熱が取り出される。上昇していく蒸気(フラッシュした原油)と下降していく還流液体とが蒸留器122で混合されて製品の分離が生じ、それは或る範囲の平衡段にわたって起こる。ガソリン及び灯油のような製品がカラム内の上方で引き出される際に、カラムが適正に機能するために、下方にさらに還流が追加されなければならない。ポンプアラウンドを用いて顕熱と過冷却液体を取り出し、それはカラムに戻されて、凝縮を増加させ、付加的な内部還流を生み出す。製品は高温で取り出され、顕熱を同様に取り戻すことができる。原油を蒸発させるのに必要な熱は装入ヒータ112内で与えられる。原油は原油投入ライン114を通ってヒータ112に輸送される。燃料が燃料投入ライン116を通ってヒータ112に輸送され、空気が空気投入ライン118を通ってヒータ112に輸送される。燃料と空気がヒータ112内で混合され燃焼し、燃焼によって発生した熱が部分的に原油に移動される。加熱後に、原油は輸送ライン120を通って蒸留器122に輸送される。供給がヒータに入る前に供給のできるだけ多くのプロセス熱を回収することにより、必要とされる燃料を減らし、燃料費と余剰燃料の燃焼に関連して生じる排ガスとの両方を削減することができる。熱交換ネットワークは、還流凝縮器、ポンプアラウンド交換器、製品冷却器等からの熱回収を最大にする設計事例に基づいて設計される。原油供給は、これらの種々の熱交換器又は熱交換器システム(E−1からE−7で表されている)を通る複雑な経路で送られ、幾つかの熱交換器は並列に作動し、幾つかは直列に作動する(例えばE−5AからE−5I)。こうした複雑なネットワークの例が図2Bに示されており、高温のストリームは太線で示され、低温のストリームは点線で示されている。設計の目的のために、費用効果のある熱交換器ネットワーク設計が考え出されるように作動流量及び温度が選択され、妥協がなされる。実際には、原油組成、製品規格、周囲条件、熱交換器汚れ、及びその他の動的因子が変化するため、プロセスが厳密に設計条件下となることは一般に偶然一致的であり、起こりえない。利用可能なプロセス熱からの熱回収を最大にするようにネットワークの異なる経路に供給を割当てることが1つの制御問題となる。
【0021】
原油原材料品質の変化及び精製製品需要の変化があるために熱交換システムに導入される変動性が、プロセス制御及び熱回収システムに付加的な問題を与える。この変動性は、原油装入を予熱するために利用可能な熱量に現れる。プロセス制御システムは、原油供給及び/又は精製製品が変化する際に熱交換プロセスを安定化させなければならない。そうした変動性には、蒸留製品から利用可能な熱量の変化及び原油供給の熱の係数の変化がある。可能であれば、プロセス制御システムは、原油供給の熱回収を最大にすることによって熱交換プロセスも最適化させるべきである。
【0022】
図3は、熱回収最適化システム35が例示的なプロセス・プラント10の部分150における熱交換器164と通信することができる1つの方法を説明する目的のために、図1の例示的なプロセス・プラント10の部分150を示す。図3は、熱回収最適化システム35と熱交換器164との間の通信を示すが、熱回収最適化システム35と、図1及び/又は図2に示されたいずれかの機器及び設備を含むプロセス・プラント10内の熱交換器に関連付けられた他の機器及び設備との間で同様の通信が起こることも可能であることが理解されるであろう。さらに、本明細書で提供された例は、蒸留製品の高温プロセス流体のストリームを用いて原油のストリームを加熱することに関係してもよく、熱回収最大化技術はまた、流体を冷却するストリーム、並びに種々のタイプのプロセス流体、固体又は気体に適用されてもよい。
【0023】
図3に示されたプロセス・プラント10の部分150は、任意の所望の通信又はコントローラ・プロトコルに準拠した任意の所望のタイプの入力/出力(I/O)機器であってもよいI/Oカード又は機器169及び170を介して1つ又はそれ以上の熱交換器164に接続された1つ又はそれ以上のプロセス・コントローラ160を有する分散型プロセス制御システム154を含む。さらに、熱交換器164は、あらゆる所望のオープン・プロトコル、所有権を主張できるプロトコル、もしくは他の通信又はプログラミング・プロトコルに準拠することができ、I/O機器169及び170が熱交換器164によって用いられる所望のプロトコルと適合するべきであることが理解される。詳しく示されないが、熱交換器164は、フィールド機器、HART(登録商標)機器、センサ、バルブ、伝送器、ポジショナ等を含むがこれに限らない、任意の数の付加的な機器を含むことができる。
【0024】
いずれにしても、構成エンジニア、プロセス制御オペレータ、保守要員、工場長、監督者等のようなプラント要員によってアクセス可能な1つ又はそれ以上のユーザ・インターフェース又はコンピュータ172及び174(いかなるタイプのパーソナル・コンピュータ、ワークステーション等であってもよい)は、任意の所望の有線又は無線通信構造を用いて、及び例えばイーサネット(登録商標)・プロトコルのような任意の所望の又は適切な通信プロトコルを用いて実装されてもよい通信ライン又はバス176を介して、プロセス・コントローラ160に結合される。さらに、通信バス176にデータベース178が接続されて、構成情報、並びにオンライン・プロセス変数データ、パラメータ・データ、ステータス・データ、及びプロセス・コントローラ160、熱交換器164及びプロセス・プラント10内のその他のフィールド機器と関連付けられたその他のデータを収集し格納するデータ・ヒストリアンとして動作してもよい。したがって、データベース178は、プロセス構成モジュールを含む現在の構成、並びにプロセス・コントローラ160、熱交換器164の機器及びその他のフィールド機器内にダウンロードされ格納される際のプロセス制御システム154についての制御構成情報を格納するために、構成データベースとして動作することができる。同様に、データベース178は、熱交換器164(又はより具体的には熱交換器164の機器)及びプロセス・プラント10内の他のフィールド機器によって収集された統計データ及びセンサ・データ、熱交換器164(又はより具体的には熱交換器164の機器)及びその他のフィールド機器によって収集されプロセス変数から求められた統計データ、及び後述されるその他のタイプのデータを含む、ヒストリカル最適化データを格納することができる。
【0025】
プロセス・コントローラ160、I/O機器169及び170、並びに熱交換器164は典型的に、ときには苛酷なプラント環境内に設置され全体にわたって分散されるが、ワークステーション172及び174、並びにデータベース178は通常、制御室、保守室、又はオペレータ、保守要員等が容易にアクセス可能なその他のあまり過酷でない環境に配置される。図3には熱交換器164が1つだけ示されているが、プロセス・プラント10は、図1及び/又は図2に示されたような種々の他のタイプの設備と互いにネットワーク化された多数の熱交換器164を有する場合がしばしばあることを理解されたい。ここで説明した熱回収最適化技術は、任意の数の熱交換器164に等しく適用することができる。
【0026】
一般的に言えば、プロセス・コントローラ160は、多くの異なる個別に実行される制御モジュール又はブロックを用いる制御戦略を実装した1つ又はそれ以上のコントローラ・アプリケーションを格納し実行することができる。制御モジュールは、一般に機能ブロックと呼ばれるものから各々成っていてもよく、各々の機能ブロックは、制御ルーチンの全体の一部又はサブルーチンであり、プロセス・プラント10内のプロセス制御ループを実装するために他の機能ブロック(リンクと呼ばれる通信を介して)と組み合わされて動作する。周知のように、オブジェクト指向プログラミング・プロトコルにおけるオブジェクトであってもよい機能ブロックは、典型的に、入力機能、制御機能又は出力機能の1つを果たす。例えば、入力機能は、伝送器、センサ、又は他のプロセス・パラメータ測定機器と関連付けられてもよい。制御機能は、PID、ファジー論理、又は別のタイプの制御を実行する制御ルーチンと関連付けられてもよい。また、出力機能は、プロセス・プラント10内の何らかの物理的機能を果たすために、バルブのような何らかの機器の作動を制御することができる。もちろん、モデル予測コントローラ(MPC)、オプティマイザ等のようなハイブリッド及びその他のタイプの複雑な機能ブロックが存在する。Fieldbusプロトコル及びDeltaV(商標)システム・プロトコルは、オブジェクト指向プログラミング・プロトコルにより設計され実装された制御モジュール及び機能ブロックを用いるが、制御モジュールは、例えば順次機能ブロック、ラダー論理等を含む任意の所望の制御プログラミング・スキームを用いて設計されてもよく、機能ブロック又は任意の他の特定のプログラミング技術を用いて設計されることに限定されないことが理解される。
【0027】
図3に示すように、ワークステーション174は、プロセッサ174A、メモリ174B、及びディスプレイ機器174Cを含む。メモリ174Bは、熱回収最適化システム35を格納し、この熱回収最適化システム35は、ディスプレイ174C(又はプリンタのような任意の他のディスプレイ機器)を介してユーザに情報を提供するためにプロセッサ174A上に実装可能な様式のアプリケーションとして実装されてもよい。
【0028】
熱交換器164、具体的には熱交換器164に接続された機器は、感知機器によって感知された1つ又はそれ以上のプロセス変数に関係している統計データ・コレクションを実装するためのルーチン及び/又は後述する異常作動検出のためのルーチンのようなルーチンを格納するためのメモリ(図示せず)を含むことができる。各々の1つ又はそれ以上の熱交換器164、及び/又は、特にその幾つか又はすべての機器はまた、統計及び感知データ・コレクションを実装するためのルーチン、及び/又は熱回収最大化又は最適化のためのルーチンのようなルーチンを実行するプロセッサ(図示せず)を含むことができる。統計及び感知データ・コレクション及び/又は熱回収最大化は、ソフトウェアによって実装される必要はない。むしろ、当業者であれば、こうしたシステムは、1つ又はそれ以上のフィールド機器及び/又は他の機器内のソフトウェア、ファームウェア、及び/又はハードウェアのあらゆる組み合わせによって実装されてもよいことが分かるであろう。
【0029】
図3に示すように、熱交換器164の機器及び/又は熱交換器164自体(潜在的にはプラント10の幾つかの又はすべての熱交換器)は、後でより詳細に説明する1つ又はそれ以上の熱回収最大化ブロック180を含む。図3のブロック180は、熱交換器164に配置されたものとして示されているが、この又は同様のブロックは、全体として熱交換器ネットワークに特有のものであってもよく、熱交換器ネットワークは、熱回収最大化ブロック180に作動可能に結合されたセンサ及び制御バルブのようなさらに別の要素を含む。さらに、熱回収最大化ブロック180は、任意の数の熱交換器164に、又はプラント10の種々の他の設備及び機器内に、もしくはコントローラ160、I/O機器169、170又は図1に示されたいずれかの機器のような他の機器に配置することができる。さらにまた、プラント10又はプラントの部分150が1つよりも多い熱交換器164を含む場合には、ブロック180は、例えば温度センサ、温度伝送器等のような熱交換器164の1つ又はそれ以上の機器といった熱交換器164のいかなるサブセットにあってもよい。
【0030】
一般的に言えば、ブロック180又はブロック180のサブ要素は、プロセス変数データのようなデータを、それらが配置された機器から及び/又は他の機器から収集する。例えば、ブロック180は、温度センサ、温度伝送器、又は他の機器のような熱交換器164内の機器から原料流体の入口温度変数及び原料流体の出口温度変数を収集することができ、又は機器からの温度測定値から入口及び出口温度変数を求めることができる。ブロック180はまた、流量センサ、温度伝送器又は他の機器のような熱交換器164内の機器から流量変数を収集し、又は機器からの温度測定値から入口及び出口温度変数を求めることもできる。ブロック180は、熱交換器164に含められてもよく、バルブ、センサ、伝送器又は任意の他のフィールド機器を通じてデータを収集することができる。さらに、ブロック180又はブロックのサブ要素は、変数データを処理し、任意の数の理由についてデータ解析を行うことができる。例えば、熱交換器164と関連付けられているものとして示されたブロック180は、さらに後述される熱交換器164の幾つかのプロセス変数を分析する最適化ルーチン182を有することができる。
【0031】
図4を参照すると、熱回収最大化ブロック180は、熱の最大化/最適化が達成されているかどうかを確認するために熱交換器164を監視することができる。当業者であれば、ここで説明した技術が様々なタイプの熱交換器に利用可能であることを理解するであろうが、提供された例は、この開示における技術を説明する目的のために、シェルアンドチューブ型熱交換器164を言及するものである。シェルアンドチューブ型熱交換器164は、シェル部分270とチューブ部分274とを含むことができる。シェル部分270は、入口278、出口284、及び多数のバッフル286を含むことができる。チューブ部分274は、入口290、出口294及びシェル部分270によって囲まれた多数のチューブ298を含むことができる。作動時には、低温流体が、入口278を通って、チューブ298を取り囲むシェル部分270に入り、バッフル286の周りを流れて、乱流202を生じ、出口284へ続く。同時に、高温流体が、入口290に入り、チューブ298を通って流れ、そこで乱流状の低温水が流体の熱を吸収し、流体は出口294へ続く。したがって、熱交換器164は、高温流体の温度を低下させる。もちろん、プロセスは、低温流体が入口290に入り高温流体が入口278に入るように逆にされてもよい。入口278、290及び出口292、294はまた、任意の数のフィールド機器(図示せず)、コントローラ(図示せず)、バルブ206、ポンプ210又は熱交換器164の作動中に流体温度、流体圧力、流量及び他の計量事項を測定し制御するその他の機器を含むことができる。「高温」及び「低温」という用語は、必ずしも2つのストリームの温度を説明するものではなく、2つのストリームを区別するために用いられることを理解されたい。例えば、原油は低温プロセスのストリームを通じて加熱するために熱交換器に供給されるが、原油の温度は熱交換器の低温プロセスストリーム出口において「低温」ではないことが理解される。同様に、高温プロセスストリームを冷却するための逆の熱交換器において、蒸留製品の温度は、熱交換器の高温プロセスストリーム出口において必ずしも「高温」ではない。
【0032】
典型的な熱交換器アプリケーションにおいて、幾つかの測定値を利用することができる。熱交換器164の測定値の幾つかの例として、低温流体流量(F)、低温流体入口温度(Tc,in)、低温流体出口温度(Tc,out)、低温流体入口圧力(Pc,in)、低温流体出口圧力(Pc,out)、高温流体流量(F)、高温流体入口温度(Th,in)、高温流体出口温度(Th,out)、高温流体入口圧力(Ph,in)、及び高温流体出口圧力(Ph,out)が挙げられる。一部の熱交換器164は、これらの測定値のほんのいくつかのみを捕らえる場合があり、他のものは測定値を修正する場合がある。修正された測定値の一例は、別々の入口及び出口温度ではなく、単一の温度差の測定値のみを含む場合がある。しかしながら、本明細書で説明する熱回収最大化技術については、1つの熱交換器につき1つの測定値のみ(すなわち低温流体出口温度)が捕らえられる必要があり、この場合、熱交換器は、同一経路内に直列に配置され、経路(一般的には経路内の最後の熱交換器)についての出口温度のみが測定される必要がある。
【0033】
熱交換器164における熱回収最大化は、前述の幾つかの又はすべての測定値を含む場合がある。熱回収最大化の1つの方法は、温度差の監視を含む場合がある。温度差は、(1)温度差(ΔT)を直接測定するための熱交換器の両端にわたる温度差伝送器、又は(2)熱交換器又は熱交換器経路上の入口温度Tin及び出口温度Toutを測定するための絶対温度伝送器、によって測定されてもよい。したがって、
ΔT=Tin−Tout (式1)
である。さらに、ΔTは、熱回収最大化ブロック180が熱交換器164又は熱交換器経路の高温側及び低温側の両方でTin及びTout値を測定し検出することを可能にする。これらの温度測定の例は図2Cに示されており、この場合、温度センサ/伝送器(T01からT17で表されている)が各々の熱交換器の出口に設けられている。
【0034】
熱回収最大化の別の方法は、伝熱又は熱回収(Q)の監視を含むことができる。熱交換器における熱回収(Q)は、高温側又は低温側のいずれかでの測定値を用いる明示的な式
Q=m・C・ΔT=m・C・ΔT (式2)
によって計算されてもよく、ここで、m及びmは低温及び高温流体の質量流量であり、C及びCは低温及び高温流体についての比熱容量であり(これは小さい範囲にわたって一定であるとみなされる)、ΔT及びΔTは低温及び高温流体の温度差であり、ΔT=Tc,out−Tc,in及びΔT=Th,in−Th,outである。C及びC(C)は一般に短い時間間隔では一定であり、所与のアプリケーションについては、項C及びCは一定であると考えてもよい。
【0035】
熱回収最大化はまた、対数平均温度差(LMTD)及び熱交換器の特性を用いて計算されてもよい。
Q=U・A・LMTD (式3)
ここでUは平均伝熱係数であり、Aは熱交換器の伝熱表面積であり、LMTDは対数平均温度差であり、次式のように定義され、
【0036】
【数1】

【0037】
ここで、並流の又は二層流の熱交換器については、
Δt=th,in−tc,in , Δt=th,out−tc,out (式5)
であり、対向流の熱交換器については、
Δt=th,in−tc,out , Δt=th,out−tc,in (式6)
である。式3のAは製品の文献から得てもよいが、Uは分析的に求めるのが難しいことがある。しかしながら、U及びAは、単一変数である総合的な総括熱伝達率として一緒に捉えてもよい。
【0038】
図5は、ヒータ112に入るのに先立って原油を予熱するための多数の経路を有する熱交換器ネットワークを提供するために、ブロック180を含む多数の熱交換器164を実装することができる、熱分解及び/又は蒸留のような精製プロセス310を含む石油精製所300を概略的に表す。原油投入ライン312は、原油を精製所300に輸送する。ネットワークは各経路内に単一の熱交換器164を有するものとして示されているが、原油は並列経路に配列された一連の熱交換器164を通って予熱されてもよく、その例を以下により詳しく示す。予熱後に、原油は中間ライン316を通って精製プロセス(図2A〜図2Cのヒータ112を含むことができる)に輸送される。精製プロセスの後で、蒸留製品のような精製製品は予熱プロセス及び精製プロセスからの顕熱を保持する。これらの精製製品は、輸送ライン318を通って輸送されて熱交換器164に戻り、そこで顕熱の一部が精製製品から、入ってくる原油に伝達される。熱交換器164を通って循環した後で、さらに処理し及び/又は販売するために精製製品がプロセス流体出口320を通って輸送される。
【0039】
図6は、図5において符号322が付されたボックス内に含まれ、図2B及び図2Cに示されたものと比べて簡単化された熱交換器ネットワークの例として提供された、並流経路熱回収マキシマイザ・システム300を概略的に表す。この例では、熱交換器は、多数の並列経路により直列状に設けられる。当業者であれば、異なる数の並流経路、ならびに並列及び直列配列をもつ複雑な経路を提供してもよい各直列経路内に異なる数の熱交換器を含む、異なる熱交換器ネットワークが提供されてもよいことが分かるであろう。各熱交換器入力ライン312は制御バルブ330を含む。制御バルブ330は、熱交換器164を通る原油の流れを調整する。各制御バルブ330は、制御バルブを開閉して各熱交換器164を通る原油を所望の流量に設定するコントローラ332に作動可能に接続される。各熱交換器経路の下流には、温度計又はサーモスタットのような温度感知機器334がある。温度感知機器334は、各熱交換器164を出てきた原油の温度を測定し、又は経路内の直列の熱交換器164の場合には、経路内の最後の熱交換器164を出てきた原油の温度を測定する。温度感知機器334は、温度情報をコントローラ332に送る。各熱交換器164はまた、精製製品流量制御バルブ336を含む。プロセス流体制御バルブ336は、熱交換器164を通る精製製品の流量を制御する。コントローラ332は、各制御バルブ330、336を互いとは無関係に制御し、各熱交換器164を出てきた原油のそれぞれの温度読取値に基づいて各制御バルブ330、336を調節する。
【0040】
時間が経つにつれて生じる熱交換器164間の効率の差異のために、コントローラ332は、各熱交換器の効率に従って熱交換器164に入る原油流量のバランスをとることによって熱回収を最適化させる。コントローラ332は、変化する流量、変化する原油入力温度及び変化する原油品質のような広範囲の条件にわたって最適な熱回収を維持する。コントローラは、増分費用等化(ICE)として知られる負荷配分を通じて最大化を達成する。最適化は、増分費用が等しくない場合に、より高い増分費用をもつユニット(経路)からより低い増分費用をもつユニット(経路)に負荷がシフトされるべきであるという概念で機能する。したがって、ICEにおいては、コントローラ332は、負荷を、より高い増分費用(すなわちより低効率の)熱交換器164からより低い増分費用(すなわちより高効率の)熱交換器164にシフトさせる。
【0041】
幾つかの従来の負荷配分は、費用を負荷の関数として計算するための方法を使用するものであり、効率を負荷の関数として計算するための明示的表現又はモデルは存在していなかった。代わりに、従来の負荷配分表現又はモデルは、経験的に開発され立法多項式にフィットされ、増分費用の明示的モデルを得るために負荷について微分されたものであった。しかしながら、熱交換器の効率は、上記で式2として与えられたものと同様に表現されてもよく、これは供給(負荷とも呼ばれる)の関数として各経路についての熱回収を説明する明示的関数である。式2を供給について微分することによって、図5及び図6に示されたような原油を予熱するための多数の並列経路又は多数の熱交換器システムについての増分費用は、次式によって求められてもよい。
【0042】
【数2】

【0043】
及びTInは各並列経路について同一であるので、コントローラ332は、熱回収を最大にするためにTOutを等化することのみを必要とする。例えば、図2Cを参照すると、T01=T02、T03=T04、T05=T06=T07、T08=T09=T10=T11、T12=T13、T14=T15、T16=T17、及びF01=中間ライン316における最終温度である。しかしながら、幾つかのケースではプロセスの制約が出力温度の等化を禁止することがある。多くのオプティマイザと同様に、原油(「低温」)側及び「高温」側の両方での最小及び最大流量及び温度についての制約は実施されるべきである。例えば、熱交換器164は、熱交換器164への損傷を防止するような最小及び/又は最大流量を要求することができる。コントローラ332は、個々の流量が最小及び最大流量によって定められた範囲内に確実に保持されるようにすることにより出力温度を等化することを試みるときに、こうした制限を遵守する。さらに、コントローラ332は、過制御及び/又は下流の精製プロセスを複雑にさせうる出口温度におけるコントローラ由来の振動を防止するために、ダンピング・ルーチンを含むことができる。したがって、各熱交換器164又は熱交換器経路の出口温度を監視し、適宜流量を調節して必要に応じて各熱交換器164又は熱交換器経路の出口温度を等化するために、さらに後述するルーチンが開発されてもよい。
【0044】
公知のオプティマイザ・システムと比べると、開示された熱交換マキシマイザ・システム300は、システム300が、各熱交換器164又は熱交換器経路の出力温度を測定し調節して、より高い総括熱回収効率を達成するので、より高感度でより高効率である。ほとんどの他のオプティマイザは、ストリームが(例えば中間ライン316で)再合流した後の最適混合後温度を見つけ出すために「サーチ・ルーチン」を用いる。しかしながら、典型的な精製所の動力学的挙動は、小さい変化は熱回収の改善又は悪化を示す混合後温度の明らかな変化につながらないことがあり、より大きな変化は循環の制限につながるといったものである。一方、前述の及びさらに後述する手法は、必ずしも「高温」側で何が起こっているかについての何らかの情報を必要とせず、ソリューションを識別する前に変化がシステムを伝播するのを待つ必要はない。すなわち、システムの(例えば中間ライン316の又はプロセスの後の方の)どこか他の場所で熱回収の非能率を示すのに十分なだけの大きさの変化が起こるのを待っているのではなく、式6及び式7によって実証されたように、各並列経路の出口温度の差異を用いてシステムの熱回収を最適化させることができる。
【0045】
図7は、ブロック180の最適化ルーチン182の一部として例えば図6のコントローラ332によって使用されてもよい論理ルーチン400の例を示す。しかしながら、論理ルーチン400は、プロセス制御システムの任意の部分に実装することができ、コントローラ332における実装は単なる一例であることを理解されたい。論理ルーチン400はまた、熱交換器164、熱交換器ネットワーク、プロセス・プラント10の部分150、蒸留システム100、プロセス制御システム等のモデルの一部として実装されてもよい。したがって、論理ルーチン400は、より大きいプロセス制御ルーチンの一部として実装されてもよい。
【0046】
ルーチン400を参照すると、並列経路間の出力温度TOutを等化し、熱回収を最適化するために、コントローラ332は、ブロック460において各熱交換器164又は熱交換器経路(図6)の出口ストリームにおける温度感知機器334(図6)から出力温度TOut読取値を得ることができる。前述の温度差(ΔT)と同様に、出力温度差は、(1)温度差(ΔTOut)を直接測定するための熱交換器164又は熱交換器経路の両端にわたる温度差伝送器、又は(2)各熱交換器又は各熱交換器経路上の出口温度TOutを測定するための絶対温度伝送器、によって測定されてもよい。図7のルーチン400は、後者のケースを実証するものであり、この場合、コントローラ332は、ブロック462において各並列経路又は熱交換器164の出力温度読取値間の差異を計算する。
【0047】
ステップ464において、コントローラ332は、出力温度を等化することになる各熱交換器(拡張して考えれば、その幾つかが温度コントローラTCによって制御される流量コントローラ/値FCを経由する各熱交換器経路)について要求される流量を計算する。例えば、式2及び式7に示すように、流量mと出口温度TOutとの間には、流量mの調節によって出口温度TOutの変化が引き起こされることになるという関係が存在することを理解されたい。
【0048】
しかしながら、前述のように、熱交換器164への損傷を防止するために、最小及び/又は最大流量についてのプロセス制約が課されてもよい。したがって、コントローラ332が、これらの流量制限を遵守し、各熱交換器164についての流量を最小及び最大流量によって予め定められた範囲内に維持してもよい。例えば、ブロック466において、コントローラ332は、計算された流量を予め設定された最小及び最大流量と比較する。計算された流量が制約パラメータ(すなわち最小及び最大流量によって設定された範囲)を外れている場合には、ブロック468において、コントローラ332は、計算された流量が予め設定された最小流量と最大流量との間にとどまるように、計算された流量を増加又は減少させる。計算された流量が必要に応じて確立され、必要に応じて最小及び最大流量内にとどまるように調節されると、コントローラ332は、制御バルブ(図6の330、336)に信号を送って、それぞれの熱交換器164(又は熱交換器経路)を通るそれぞれの流量を設定し、システムの熱回収の最適化をもたらすことができる。
【0049】
また、前述したように、コントローラ332は過制御及び/又は出口温度におけるコントローラ由来の振動を防止するために、ダンピング・ルーチンを含むことができる。特に、最適化ルーチンは、プロセスの付加的な変動の発生が防止されるように、ゆっくり徐々に反応するべきである。下流の精製プロセスの付加的な変動又は振動は、プロセスの「高温」側(すなわち下流の精製プロセス)での制御によって容易に減衰させることができない、付加的な問題を引き起こすことがある。したがって、ブロック472において、コントローラ332は、過制御を防止するために遅延のようなダンピング・ルーチンを実行することができる。ダンピング・ルーチンは、コントローラが次にステップ460−470を再実行する前に、数秒から数分間の遅延を含むことができる。
【0050】
熱交換器ネットワークにおける熱回収の最大化に関係した前述の例は、開示されたシステム、方法、及び技術の実施がこうした状況に限定されないという理解の下で開示される。むしろ、開示されたシステム、方法、及び技術は、データ収集等を監視するために選択可能な、異なる組織構造、コンポーネント配置、もしくは他の個別部品、ユニット、コンポーネント、又はアイテムの集合体を有するものを含む、あらゆる診断システム、アプリケーション、ルーチン、技術又はプロシージャと共に用いるのに好適である。診断に用いられているプロセス・パラメータを指定する他の診断システム、アプリケーション等が開発されてもよく、又は別の方法で、本明細書で説明されたシステム、方法、及び技術からの恩恵を受けてもよい。こうしたパラメータの個々の指定は、次に、それに関連したプロセス・データを探し出し、監視し、格納するために用いられてもよい。さらにまた、開示されたシステム、方法、及び技術は、特にこうした態様がまだ開発されていないか又は開発の初期段階にあるときに、プロセス制御システムの診断態様とだけ共同して用いられる必要はない。むしろ、開示されたシステム、方法、及び技術は、プロセス制御システム、プロセス・プラント、又はプロセス制御ネットワーク等のあらゆる要素又は態様と共に用いるのに好適である。
【0051】
本明細書で説明された方法、プロセス、プロシージャ及び技術は、ハードウェア、ファームウェア、及びソフトウェアのあらゆる組み合わせを用いて実装されてもよい。したがって、本明細書で説明されたシステム及び技術は、標準多目的プロセッサに、又は必要に応じて専用に設計されたハードウェア又はファームウェアを用いて実装されてもよい。ソフトウェアに実装されたときには、ソフトウェアは、磁気ディスク、レーザ・ディスク、又は他の記憶媒体上に、コンピュータ、プロセッサ、I/O機器、フィールド機器、インターフェース機器等のRAM又はROM或いはフラッシュ・メモリにといった任意のコンピュータ可読メモリに格納されてもよい。同様に、ソフトウェアは、例えばコンピュータ可読ディスク又は他の可搬型コンピュータ記憶機構上を含むあらゆる公知の又は所望の配信方法を通じて、又は通信媒体を通じて、ユーザ又はプロセス制御システムに配信されてもよい。通信媒体は、典型的に、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラム・モジュール、もしくは搬送波のようなモジュール化されたデータ信号又は他の輸送機構における他のデータを具体化するものである。「モジュール化されたデータ信号」という用語は、1つ又はそれ以上のその特徴セットを有する信号、又は信号内の情報をエンコードするような方法で変化された信号を意味する。単なる例として、限定ではなく、通信媒体は、有線ネットワーク又は直接有線接続のような有線媒体、並びに音声、無線周波数、赤外線その他の無線媒体のような無線媒体を含む。したがって、ソフトウェアは、電話回線、インターネット等のような通信チャネルを介してユーザ又はプロセス制御システムに配信されてもよい(これらは、こうしたソフトウェアを、可搬型記憶媒体を介して提供することと同一であるか又は交換可能であるとみなされる)。
【0052】
したがって、本発明は、単なる実例となり本発明を限定しないことを意図された特定の例を参照して説明されたが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、開示された実施形態に変化、付加又は削除を加えてもよいことが当業者には明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセス制御システムの熱交換ネットワークにおける熱回収最大化システムであって、
熱交換器の作動中に複数の熱交換器からオンライン・プロセス・データを収集するように適合され、前記複数の熱交換器が多数の並列経路を有する熱交換器ネットワークを含み、前記オンライン・プロセス・データが前記多数の並列経路の低温プロセスストリーム出口温度から生成され、各々の前記出口温度がそれぞれの前記経路内の1つ又はそれ以上の熱交換器を通過した前記低温プロセスストリームの温度に関係している、データ収集ツールと、
前記オンライン・プロセス・データに基づいて、各々の前記低温プロセスストリーム出口温度の等化のために意図された各熱交換器を通る高温プロセスストリーム及び低温プロセスストリームの流量を含む、一連のストリームの流量目標値を開発するように構成された、熱回収最適化モジュールと、
前記熱回収最適化モジュールに作動可能に結合され、前記熱回収最適化モジュールから提供された前記一連のストリームの流量目標値に基づいて、少なくとも1つの、前記熱交換器ネットワークの1つ又はそれ以上の低温ストリーム流量制御バルブ及び前記熱交換器ネットワークの1つ又はそれ以上の高温プロセスストリーム流量制御バルブを制御して、前記低温プロセスストリーム出口温度の等化をもたらすように構成された、制御モジュールと、
を含むシステム。
【請求項2】
前記オンライン・プロセス・データが、低温プロセスストリーム出口温度の差異の測定値を含む、請求項1に記載の熱回収最大化システム。
【請求項3】
前記熱回収最適化モジュールが、前記オンライン・プロセス・データに基づいて各々の前記出口温度間の温度差を求め、前記温度差に基づいて前記一連のストリームの流量目標値を開発するように構成される、請求項1に記載の熱回収最大化システム。
【請求項4】
前記熱回収最適化モジュールが、前記オンライン・プロセス・データに基づいて、各々の前記並列経路間の等化のために意図された低温プロセスストリーム出口温度を含む、すべての前記熱交換器についての低温プロセスストリーム出口温度目標値を開発するように構成され、
前記熱回収最適化モジュールが、前記低温プロセスストリーム出口温度目標値と前記熱交換器についての前記ストリームの流量目標値との間の関係性に基づいて、各熱交換器についての前記ストリームの流量目標値を開発するように構成され、前記関係性が、
【数1】

として表され、式中、
Q=熱交換器の熱回収であり、
m=熱交換器についてのストリームの流量目標値であり、
=熱交換器の熱容量であり、
out,t=低温プロセスストリーム出口温度目標値であり、
in=低温プロセスストリーム入口温度値である、
請求項1に記載の熱回収最大化システム。
【請求項5】
が一定である、請求項4に記載の熱回収最大化システム。
【請求項6】
前記ストリームの流量目標値が、前記低温プロセスストリームの流量及び前記高温プロセスストリームの流量、前記低温プロセスストリーム入口温度、前記低温プロセスストリーム出口温度、前記高温プロセスストリーム入口温度、及び前記高温プロセスストリーム出口温度からなる群の1つ又はそれ以上の関数である、請求項1に記載の熱回収最大化システム。
【請求項7】
前記コントローラが、各々の前記ストリームの流量目標値を、所定の最小流量値及び所定の最大流量値によって定められる範囲のストリームの流量値と比較するように構成され、前記所定の最小及び最大流量値は、前記熱交換器への損傷を防止するために制約制限と関係付けられており、
前記コントローラが、各々の前記ストリームの流量目標値を調節して前記ストリームの流量を前記ストリームの流量値範囲内に維持するように構成された、
請求項1に記載の熱回収最大化システム。
【請求項8】
前記コントローラが、各熱交換器の1つ又はそれ以上の流量制御バルブを徐々に調節して、コントローラ由来の振動なしに前記熱交換器についての前記ストリームの流量目標値をもたらすように構成されている、請求項1に記載の熱回収最大化システム。
【請求項9】
プロセス制御システムにおける熱回収最適化方法であって、
熱交換器の作動中に、多数の並列経路を有する熱交換器ネットワークを含む前記複数の熱交換器から、それぞれの前記経路内の1つ又はそれ以上の熱交換器を通過した低温プロセスストリームの前記温度に各々関係している前記多数の並列経路の低温プロセスストリーム出口温度から生成されたオンライン・プロセス・データを収集すること、
前記オンライン・プロセス・データに基づいて、各々の前記低温プロセスストリーム出口温度の等化のために意図された各熱交換器を通る前記プロセスストリーム及び低温プロセスストリームの流量を含む、一連のストリームの流量目標値を開発すること、
前記低温プロセスストリーム出口温度の等化をもたらすために、前記熱回収最適化モジュールから前記制御モジュールへ提供された前記一連のストリームの流量目標値に基づいて、少なくとも1つの、前記熱交換器ネットワークの1つ又はそれ以上の低温ストリーム流量制御バルブ及び前記熱交換器ネットワークの1つ又はそれ以上のプロセスストリーム流量制御バルブを制御すること、
を含む方法。
【請求項10】
前記複数の熱交換器からオンライン・プロセス・データを収集することが、低温プロセスストリーム出口温度の差異の測定値を収集することを含む、請求項9に記載の熱回収最適化方法。
【請求項11】
前記一連のストリームの流量目標値を開発することが、
前記オンライン・プロセス・データに基づいて各々の前記出口温度間の温度差を求めること、
前記温度差に基づいて前記一連のストリームの流量目標値を開発する、
ことを含む、請求項9に記載の熱回収最適化方法。
【請求項12】
前記一連のストリームの流量目標値を開発することが、
前記オンライン・プロセス・データに基づいて、各々の前記並列経路間の等化のために意図された低温プロセスストリーム出口温度を含む、すべての前記熱交換器についての低温プロセスストリーム出口温度目標値を開発すること、
前記低温プロセスストリーム出口温度目標値と前記熱交換器についての前記ストリームの流量目標値との間の関係性に基づいて、各熱交換器についての前記ストリームの流量目標値を開発すること、
を含み、前記関係性が、
【数2】

として表され、式中、
Q=熱交換器の熱回収であり、
m=熱交換器についてのストリームの流量目標値であり、
=熱交換器の熱容量であり、
out,t=低温プロセスストリーム出口温度目標値であり、
in=低温プロセスストリーム入口温度値である、
請求項9に記載の熱回収最適化方法。
【請求項13】
が一定である、ことを特徴とする請求項12に記載の熱回収最適化方法。
【請求項14】
前記ストリームの流量目標値が、前記低温プロセスストリームの流量及び前記高温プロセスストリームの流量、前記低温プロセスストリーム入口温度、前記低温プロセスストリーム出口温度、前記高温プロセスストリーム入口温度、及び前記高温プロセスストリーム出口温度からなる群の1つ又はそれ以上の関数である、請求項9に記載の熱回収最適化方法。
【請求項15】
少なくとも1つの、前記熱交換器ネットワークの1つ又はそれ以上の低温ストリーム流量制御バルブ及び前記熱交換器ネットワークの1つ又はそれ以上のプロセスストリーム流量制御バルブを制御することが、
各々の前記ストリームの流量目標値を、所定の最小流量値及び所定の最大流量値によって定められる範囲のストリームの流量値と比較すること、前記所定の最小及び最大流量値は、前記熱交換器への損傷を防止するために制約制限と関係付けられていること、
前記ストリームの流量を前記ストリームの流量値範囲内に維持するように各々の前記ストリームの流量目標値を調節すること、
を含む、請求項9に記載の熱回収最適化方法。
【請求項16】
少なくとも1つの、前記熱交換器ネットワークの1つ又はそれ以上の低温ストリーム流量制御バルブ及び前記熱交換器ネットワークの1つ又はそれ以上のプロセスストリーム流量制御バルブを制御することが、
コントローラ由来の振動なしに前記熱交換器についての前記ストリームの流量目標値をもたらすように各熱交換器の1つ又はそれ以上の流量制御バルブを徐々に調節することを含む、請求項9に記載の熱回収最適化方法。
【請求項17】
複数並列経路熱交換器システムであって、
低温プロセスストリーム入口と、
前記低温プロセスストリーム入口に作動可能に結合され、各々が1つ又はそれ以上の熱交換器を含み、別の複数の熱交換経路のための導管に対して各々が互いに独立していて、かつ平行な導管に沿って低温プロセスストリームを受け入れるように構成され、前記低温プロセスストリーム入口は各導管に共通の低温プロセスストリーム入口を含む、複数の熱交換器経路と、
各々の前記複数の導管に作動可能に結合され、各々がそれぞれの前記熱交換器経路を通る低温プロセスストリームの流量を制御する、低温プロセスストリームの流量制御バルブと、
前記各熱交換器経路に作動可能に結合され、各々がそれぞれの前記熱交換器経路を通る高温プロセスストリームの流量を制御する、高温プロセスストリームの流量制御バルブと、
前記各熱交換器経路の出口に作動可能に結合され、前記熱交換器経路を通過する前記低温プロセスストリームの温度を測定する、温度感知装置と、
前記各温度感知装置、前記各低温プロセスストリームの流量制御バルブ、及び前記各高温プロセスストリームの流量制御バルブに作動可能に結合され、前記各低温プロセスストリームの流量制御バルブ及び前記各高温プロセスストリームの流量制御バルブを調節して、前記複数の熱交換器経路を通過した低温プロセスストリームの前記温度を等化する、コントローラと、
を含むシステム。
【請求項18】
前記コントローラが、
前記複数の熱交換器経路の前記低温プロセスストリーム出口温度と関係付けられたオンライン・プロセス・データを収集し、
前記オンライン・プロセス・データに基づいて、各々の前記低温プロセスストリーム出口温度の等化のために意図された前記各熱交換器を通る前記高温プロセスストリーム及び低温プロセスストリームの流量を含む、前記一連のストリームの流量目標値を開発し、
前記一連のストリームの流量目標値に基づいて、前記各低温プロセスストリームの流量制御バルブ及び前記各高温プロセスストリームの流量制御バルブを調節して、前記複数の熱交換器経路を通過する前記低温プロセスストリームの温度を等化する、
ように構成される、請求項17に記載の複数並列経路熱交換器システム。
【請求項19】
前記ストリームの流量目標値が、前記低温プロセスストリームの流量及び前記高温プロセスストリームの流量、前記低温プロセスストリームの入口温度、前記低温プロセスストリームの出口温度、及び前記高温プロセスストリームの入口温度、及び前記高温プロセスストリームの出口温度からなる群の1つ又はそれ以上の関数である、請求項18に記載の複数並列経路熱交換器システム。
【請求項20】
プロセス制御システムの複数並列経路熱交換器システムにおける熱回収を最適化させるためにコンピュータで実行可能な命令を有するコンピュータ可読媒体であって、前記コンピュータで実行可能な命令が、
熱交換器の作動中に、多数の並列経路を有する熱交換器ネットワークを含む複数の熱交換器から、それぞれの前記経路内の1つ又はそれ以上の熱交換器を通過した低温プロセスストリームの温度に各々関係している前記多数の並列経路の低温プロセスストリーム出口温度から生成されたオンライン・プロセス・データを収集し、
前記オンライン・プロセス・データに基づいて、各々の前記低温プロセスストリーム出口温度の等化のために意図された各熱交換器を通る前記高温プロセスストリーム及び低温プロセスストリームの流量を含む、前記一連のストリームの流量目標値を開発し、
前記低温プロセスストリーム出口温度の等化をもたらすために、前記熱回収最適化モジュールから前記制御モジュールへ提供された前記一連のストリームの流量目標値に基づいて、少なくとも1つの、前記熱交換器ネットワークの1つ又はそれ以上の低温ストリームの流量制御バルブ及び前記熱交換器ネットワークの1つ又はそれ以上の高温プロセスストリームの流量制御バルブを制御する、
ための命令を含む、コンピュータ可読媒体。
【請求項21】
複数の熱交換器からオンライン・プロセス・データを収集するための前記命令が、低温プロセスストリーム出口温度の差異の計測値を収集するためのコンピュータで実行可能な命令を含む、請求項20に記載のコンピュータで実行可能な命令を有するコンピュータ可読媒体。
【請求項22】
一連のストリームの流量目標値を開発するための前記命令が、
前記オンライン・プロセス・データに基づいて各々の前記出口温度間の温度差を求め、
前記温度差に基づいて前記一連のストリームの流量目標値を開発する、
ためのコンピュータで実行可能な命令を含む、請求項20に記載のコンピュータで実行可能な命令を有するコンピュータ可読媒体。
【請求項23】
前記一連のストリームの流量目標値を開発するための命令が、前記低温プロセスストリームの流量及び前記高温プロセスストリームの流量、前記低温プロセスストリームの入口温度、前記低温プロセスストリームの出口温度、前記高温プロセスストリームの入口温度、及び前記高温プロセスストリームの出口温度からなる群の1つ又はそれ以上の関数として、一連のストリームの流量目標値を開発するためのコンピュータで実行可能な命令を含む、請求項20に記載のコンピュータで実行可能な命令を有するコンピュータ可読媒体。
【請求項24】
少なくとも1つの、前記熱交換器ネットワークの1つ又はそれ以上の低温ストリーム流量制御バルブ及び前記熱交換器ネットワークの1つ又はそれ以上の高温プロセスストリーム流量制御バルブを制御するための前記命令が、各熱交換器の1つ又はそれ以上の流量制御バルブを徐々に調節してコントローラ由来の振動なしに前記熱交換器についてのプロセスストリームの流量目標値をもたらすためのコンピュータで実行可能な命令を含む、請求項20に記載のコンピュータで実行可能な命令を有するコンピュータ可読媒体。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−54163(P2011−54163A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188991(P2010−188991)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(594120847)フィッシャー−ローズマウント システムズ, インコーポレイテッド (231)
【Fターム(参考)】