説明

プロテインキナーゼの阻害剤として有用な3−アミノ−ピラゾール−4−カルボキサミド誘導体

本発明は、遊離形態または塩形態である式(I)
【化1】


(式中、可変基は全て明細書に記載の意味である)で示される新規複素環化合物、それらの製法、医薬としてのそれらの使用およびそれらを含む医薬に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3−アミノ−ピラゾール−4−カルボン酸誘導体、プロテインキナーゼ調節応答性疾患の処置または上記疾患の処置に有用な医薬品の製造におけるそれらの使用、上記化合物および医薬上許容される担体を含む、上記疾患に対して特に有用な医薬品、特に上記疾患に対して動物または人体の処置に使用される上記化合物、動物またはヒトへ上記化合物を投与することによる動物または人体の処置方法、および上記化合物の製造方法に関するものであり、化合物に触れているそれぞれの場合において、それらはそのままおよび/または(好ましくは医薬上許容される)塩の形態で存在し得るものとする。
【背景技術】
【0002】
「プロテインキナーゼ」の語は、酵素活性タンパク質の一つのクラスを指すもので、受容体型キナーゼおよび非受容体型キナーゼとして、並びにチロシンおよびセリン/トレオニンキナーゼとして区別され得る。それらの局在性については、核、細胞質および膜結合型キナーゼとして区別され得る。多くの膜結合型チロシンキナーゼは、同時に成長因子の受容体でもある。
【0003】
触媒活性について述べると、プロテインキナーゼ(PK)は、細胞性タンパク質における特異的なセリン、トレオニンまたはチロシン残基のリン酸化を触媒する酵素である。基質タンパク質のこの翻訳後修飾は、通常、細胞増殖、活性化および/または分化の調節における一つの段階を表す分子スイッチとして働く。異常または過度の、またはさらに一般的には不適切なPK活性が、良性および悪性増殖性疾患を含む幾つかの病的状態において観察されている。多くの症例で、PK阻害剤を利用することにより、インビトロおよびインビボで例えば増殖性疾患などの病気を処置することが可能となった。
【0004】
過去何年間かにわたって、Eph受容体チロシンキナーゼおよびそれらのリガンド、エフリンについての基本的役割が解明されてきた。幾つかの異なるEph受容体について目録が作成され、リガンドに対する親和力に基づいて、それらはEphAまたはEphBサブクラスに分類された。グリセロホスファチジルイノシトール(GPI)結合(エフリンA)または貫膜(エフリンB)型のいずれかの膜タンパク質である、少なくとも8種のエフリンが同定された。Eph受容体とそれらのリガンド間のシグナル伝達は、直接細胞−細胞接触部位に制限されていると思われる。接触の結果、細胞間の相互二方向性事象が誘導される。ある位置でのエフリンおよびそれらの受容体の発現は、組織パターン化および空間的に非常に制限された細胞位置の組織化に影響を及ぼすと考えられる。特異的な効果には、とりわけ細胞移動、接着および体節形成の修飾が含まれる。
【0005】
EphB4(HTKとも称す)およびそのリガンド、エフリンB2(HTKL)は、血管網の確立および決定において重要な役割を演じる。静脈内皮ではEphB4が特異的に発現され、一方で血管発生の段階中では、エフリンB2が動脈内皮細胞で特異的かつ相反的に発現される。機能障害性遺伝子はマウスでの胎芽致死を誘発し、それらの胎芽は欠陥エフリンB2およびEphB4のいずれかの場合に毛細管結合形成において同一の欠損を示す。両方とも、胚形成中における造血および血管発生の最初の部位で発現される。適切な造血、内皮、血管芽細胞および始原中胚葉発生のための本質的役割は、既に確立されている。EphB4欠損により、胚性幹細胞の中胚葉分化の結果に改変がもたらされる。乳房組織におけるEphB4の異所性発現は、構造不良、組織機能の異常および悪性疾患への素因をもたらす(例えば、N. Munarini et al., J. Cell. Sci. 115, 25-37 (2002)参照)。これらおよび他のデータから、不適切なEphB4発現が悪性疾患の形成に関与し得るため、EphB4の阻害は例えば癌などの悪性疾患と闘う手段となることが期待できるという結論に達した。
【0006】
細胞で見出されるチロシンキナーゼc−Srcの構成的に発現されたウイルス形態c−Src(レトロウイルス、ラウス肉腫ウイルスから)は、Srcプロテインチロシンキナーゼの不適切な発現がいかに細胞トランスフォーメーションに基づいた悪性疾患を誘発し得るかの一例である。Srcプロテインチロシンキナーゼの阻害により、例えば結合組織腫瘍において、トランスフォーメーション腫瘍細胞の調節解除された増殖が阻害され得る。したがって、ここでもc−Srcまたはその修飾または突然変異形態の阻害は、増殖性疾患の処置において有益な効果を示すことが期待される。
【0007】
VEGFR(血管内皮成長因子受容体)は、血管新生開始の制御に関与することが知られている。特に固形腫瘍は十分な血液供給に依存するため、VEGFR、すなわち血管新生の阻害は、上記腫瘍の処置において臨床試験中であり、有望な成果を示している。VEGFはまた、白血病およびリンパ腫において主要な役割を演じ、様々な固形悪性腫瘍で多く発現されており、悪性疾患の進行と明確な相関関係を示している。VEGFR−2(KDR)発現を伴う腫瘍疾患の例は、肺癌、乳癌、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、膵臓癌、悪性胸膜中皮種およびメラノーマである。その脈管形成活性に加えて、VEGFRのリガンド、VEGFは、腫瘍細胞において直接的向生存効果により腫瘍の増大を促進し得る。様々な他の疾患が、例えば下記に挙げるとおり、脈管新生の調節解除に随伴している。
【0008】
abl癌原遺伝子から発癌遺伝子への変換は、慢性骨髄性白血病(CML)の患者において観察された。染色体転座により、染色体22のbcr遺伝子が染色体9からのabl遺伝子に連結され、フィラデルフィア染色体が形成される。生成した融合タンパク質は、Ablチロシンプロテインキナーゼのカルボキシ末端に結合されたBcrタンパク質のアミノ末端を有する。その結果、Ablキナーゼドメインは、不適当な形で活性を呈し、骨髄において造血細胞のクローンの過剰な増殖を駆動する。この融合タンパク質阻害剤、Gleevec(登録商標)またはGlivec(登録商標)(Novartisの登録商標)の活性成分によるこのチロシンキナーゼの阻害は、CMLに対して非常に活性な治療であることが示された。すなわち、Ablチロシンキナーゼの発現が不適切であると悪性疾患、特に白血病が改善され得るという一般概念が証明され得た。
【0009】
しかしながら、プロテインキナーゼ阻害剤として使用される多くの化合物は、これまでのところ、特異性の欠如、特に複数タイプのプロテインキナーゼに対する不利な阻害特性により誘発され得る望ましくない副作用、高過ぎる特異性による有効性の欠如、ある種の疾患のみに対する有効性、投与中における耐性の発生および/または類似した望ましくない特性を示している。
【0010】
これが本発明の課題を導く:特に、多数の増殖性および他のプロテインキナーゼ関連疾患並びにある種の治療薬に対する耐性の発生を考えると、プロテインキナーゼ阻害剤として、すなわちこれらのプロテインチロシンキナーゼ、例えばセリン/トレオニンおよび/または好ましくはプロテインチロシンキナーゼ(PTK)関連疾患の処置において有用な新規化合物の提供に対する要望が依然として存在している。要求されるのは、特に有利な特性、例えば限定された一群または単一のプロテインキナーゼに対する高い親和性および/または選択性、異なる種類の化合物に対する耐性が発現されている活性、ある種の群のキナーゼ類に対する有用な親和力プロフィールなどを有する、新しい種類の医薬上有利なプロテインキナーゼ、特にPTK阻害性化合物である。上述または他の問題に対処できる新種のプロテインキナーゼ阻害剤に対する要望が存在する。
【発明の概要】
【0011】
発明の概略
驚くべきことに、プロテインキナーゼ類の活性、例えば増殖的(例えば、腫瘍)成長を含む、栄養因子を介するシグナル伝達および疾患の発現に関与し得る若干のプロテインキナーゼ、特にプロテインチロシンキナーゼに関する代表的な例として、srcキナーゼのファミリーからのキナーゼ、特にc−srcキナーゼ、VEGF−受容体キナーゼ(例えば、KDRおよびFlt−1)、RET−受容体キナーゼおよび/またはエフリン受容体キナーゼ類、例、EphB2キナーゼ、EphB4キナーゼまたは関連キナーゼ類、さらなるablキナーゼ、特にv−ablまたはc−ablキナーゼ、b−raf(V599E)、EGF受容体キナーゼまたはEGFファミリーの他のキナーゼ類、例えばHER−1またはc−erbB2キナーゼ(HER−2)、Flt−3、lck、fyn、c−erbB3キナーゼ、c−erbB4キナーゼ、PDGF−受容体チロシンプロテインキナーゼ類のファミリーの構成員、例えばPDGF−受容体キナーゼ、CSF−1受容体キナーゼ、Kit−受容体キナーゼ(c−Kit)、FGF−受容体キナーゼ、例、FGF−R1、FGF−R2、FGF−R3、FGF−R4、c−Raf、カゼインキナーゼ類(CK−1、CK−2、G−CK)、Pak、ALK、ZAP70、Jak1、Jak2、Axl、Cdk1、cdk4、cdk5、Met、FAK、Pyk2、Syk、Tie−2、インスリン受容体キナーゼ(Ins−R)、インスリン様増殖因子の受容体キナーゼ(IGF−1キナーゼ)、および/またはさらなるセリン/トレオニンキナーゼ類、例えばプロテインキナーゼC(PK−C)、PK−B、EK−Bまたはcdcキナーゼ類、例えばCDK1、ならびに例えばこれらのうちのいずれか1つまたはそれ以上の構成的に活性化された突然変異形態(例えば、Bcr−Abl、RET/MEN2A、RET/MEN2B、RET/−PTC1−9またはb−raf(V599E))が、本発明による3−アミノ−ピラゾール化合物により阻害され得ることが見出された。これらおよび他のプロテインキナーゼは全て、ヒト細胞を含む哺乳類細胞での成長調節およびトランスフォーメーションにおいてある一定の役割を演じる。特に、細胞性Eph4Bキナーゼに対する高い有効性が見出され得る。
【0012】
これらの活性を考慮した上で、本発明化合物は、例えばプロテインキナーゼ調節応答性疾患、例えば上記キナーゼ類、特に名を挙げたもの、最も特定すれば好ましいものとして挙げたものの特に異常な(例えば、無秩序または調節解除または構成的など)または過度の活性に関連した疾患の処置に使用され得る。
【0013】
発明の詳細な説明
本発明は、遊離形態または塩形態の式
【化1】

[式中、
は、C1−7アルキルまたはC1−7アルコキシまたはC1−7アルキルのうちの1個により置換されたフェニルであり、
は、−NH−CO−フェニル(式中、フェニル環は、ハロゲン、C1−7アルコキシまたはトリフルオロメチルから選択される1個または2個の置換基により置換されている)、または
−CO−NH−フェニル(式中、フェニル環は、ハロゲン、C1−7アルコキシまたはトリフルオロメチルから選択される1個または2個の置換基により置換されている)であり、
は、C1−7アルキルまたはハロゲンである]
で示される3−アミノ−ピラゾール−4−カルボン酸誘導体に関するものである。
【0014】
本発明はまた、特に動物または好ましくはヒトにおけるプロテインキナーゼ調節応答性疾患、特に「発明の概略」の項で挙げた1種またはそれ以上のプロテインチロシンキナーゼ(PTK)、さらに特定すればsrcキナーゼ類のファミリー、特にc−srcキナーゼ、VEGF−受容体キナーゼ類(例えば、KDRおよびFlt−1)、RET−受容体キナーゼ類またはエフリン受容体キナーゼ類、例えばEphB2キナーゼ、EphB4キナーゼまたは関連キナーゼ類、またはそれらの突然変異(例えば、構成的活性または他の形として一部または完全に調節解除された)形態から選択される1種またはそれ以上のPTKの阻害に応答する疾患の処置を目的とする式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩の使用に関するものである。
【0015】
本発明はまた、上記疾患の処置に有用な医薬品の製造における式(I)で示される化合物またはその(好ましくは医薬上許容される)塩の使用、式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩および少なくとも1種の医薬上許容される担体を含む上記疾患に対して特に有用な医薬品、特に前項で挙げた疾患に対して動物または人体の処置で使用される式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩、動物または人体の処置方法であって、動物またはヒト、特に処置を必要とする患者に、上記疾患の処置に有効な量で式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩を投与することを含む方法、および式(I)で示される化合物またはその(好ましくは医薬上許容される)塩の製造方法に関するものである。
【0016】
式Iでは、以下の意味が独立して、集合的に、または任意の組み合わせまたは部分的組み合わせで好ましい。
【0017】
前記および後記で使用されている一般的用語または記号は、特記しない限り、好ましくは本明細書内では以下の意味を有するものとする。
【0018】
「C1−7アルキル」の語は、7個またはそれ以下、特に4個またはそれ以下の炭素原子を有する部分をいい、上記部分は、1箇所または複数箇所で分枝しているか、または直鎖状である。低級またはC1−7アルキルは、例えば、n−ペンチル、n−ヘキシルまたはn−ヘプチルまたは好ましくはC1−4アルキル、特にメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはtert-ブチル、好ましくはメチルである。
【0019】
「C1−7アルコキシ」の語は、7個またはそれ以下、特に4個またはそれ以下の炭素原子を有する部分をいい、例えばメトキシまたはエトキシ、好ましくはメトキシがある。
【0020】
ハロまたはハロゲンは、好ましくはフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード、最も好ましくはフルオロ、クロロまたはブロモである。
【0021】
塩は、特に式(I)で示される化合物の医薬上許容される塩である。それらは、塩基性または酸性基などの塩形成基が存在するときに形成され得、それらは例えば水性環境中4〜10のpH範囲で、少なくとも部分的に解離形態で存在し得るか、または特に固体形態で単離され得る場合、または荷電基(例えば、第4級アンモニウム)が存在する − 後者の場合、アシル化塩は有機または無機酸(例えば、次段落に記載)のアニオンにより形成される。
【0022】
このような塩は、例えば、塩基性窒素原子をもつ式(I)の化合物から好ましくは有機または無機酸との酸付加塩、特に医薬上許容される塩として形成される。適切な無機酸は、例えば、ハロゲン酸、例えば塩酸、硫酸またはリン酸である。適切な有機酸は、例えば、カルボン酸、ホスホン酸、スルホン酸またはスルファミン酸、例えば酢酸、プロピオン酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、クエン酸、アミノ酸、例えばグルタミン酸またはアスパラギン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、安息香酸、メタン−またはエタン−スルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、1,5−ナフタレン−ジスルホン酸、N−シクロヘキシルスルファミン酸、N−メチル−、N−エチル−またはN−プロピル−スルファミン酸、または他の有機プロトン酸、例えばアスコルビン酸である。
【0023】
負に荷電した基、例えばカルボキシまたはスルホの存在下では、塩類はまた塩基により形成され得、例えば金属またはアンモニウム塩類、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩類、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウムまたはカルシウム塩類、またはアンモニアによるアンモニウム塩類または適切な有機アミン類、例えば第3級モノアミン類、例えばトリエチルアミンまたはトリ(2−ヒドロキシエチル)アミン、または複素環塩基、例えばN−エチル−ピペリジンまたはN,N’−ジメチルピペラジンであり得る。
【0024】
塩基性基および酸性基が同一分子中に存在するとき、式(I)の化合物はまた内部塩を形成し得る。
【0025】
単離または精製目的で、医薬上許容されない塩類、例えばピクリン酸塩または過塩素酸を使用することも可能である。治療用途の場合、医薬上許容される塩類または遊離化合物のみが使用されるため(適用可能な場合医薬品に含まれる)、これらが好ましい。
【0026】
化合物の遊離形態および、例えば化合物またはその塩の精製または同定における中間体として使用され得る塩を含むそれらの塩形態間の密接な関係を考慮に入れて、前記および後記で「化合物群」または「一化合物」(出発物質および「中間体」も含む)、特に式(I)で示される化合物(複数も可)といえば、適切かつ好都合であり、他を明示していなければ、その1種またはそれ以上の塩または遊離化合物および1種またはそれ以上のその塩の混合物も包含するものとし、それぞれ溶媒和物、式(I)で示される化合物のエステルまたはアミドなどの代謝前駆体、またはこれらのうちのいずれか1つまたはそれ以上の塩も含むものとする。異なる結晶形態および溶媒和物も得られることから、それらも包含される。
【0027】
化合物、塩、医薬品、疾患、障害などについて複数形態が使用されている場合、これは単一化合物、塩、医薬品、疾患、障害などを含むことを意味するものとし、英文明細書中で単数表現が使用されている場合、これは不定冠詞または好ましくは「1つ」を指すものとする。
【0028】
場合によっては、本発明化合物は、置換基中に1つまたはそれ以上のキラル中心を含むか、または他の不斉中心(鏡像体を誘導する)を示し得、またはそうでなければ、例えば複数のキラル中心または複数の他のタイプの不斉中心故に、またはZ/E(またはシス−トランス)異性現象(ジアステレオマー)をもたらし得る環または二重結合故に、複数の立体異性体形態で存在することが可能であり得る。本発明は、2種またはそれ以上の上記異性体の混合物、例えばラセミ混合物、並びに好ましくは精製された異性体、特に精製鏡像体または高鏡像体混合物を両方とも包含する。
【0029】
式(I)で示される化合物は、価値ある薬理学的特性を有し、プロテインキナーゼ、特にプロテインチロシンキナーゼ(特に上記「発明の概略」で挙げたプロテインキナーゼのうちの1種またはそれ以上、最も限定すればc−srcキナーゼ、VEGF−受容体キナーゼ(例えば、KDRおよびFlt−1)、RET−受容体キナーゼおよび/またはエフリン受容体キナーゼ、例、EphB2キナーゼ、EphB4キナーゼまたは関連キナーゼ類)調節応答性疾患の処置において有用であり、上記調節は、好ましくは阻害および応答手段を意味し、病気および/またはその症状の進行を緩和するか、止めるかまたは完全または少なくとも一時的治癒状態まで回復させるものとする。「処置」の語は、特に、例えば患者が病気を発症し易い状態にあるかまたは前記状態であり得ることを示す突然変異または変化が見出された患者における予防的処置、または好ましくは上記疾患、特に下記疾患のいずれか一つまたはそれ以上の治療的(限定されるわけではないが、軽減的、治癒的、症状寛解、症状減退、疾患または症状抑制、進行遅延、キナーゼ調節および/またはキナーゼ阻害的なものを含む)処置を含む予防を含む。
【0030】
本明細書で使用している「治癒的」の語は、(特に調節解除)受容体チロシンキナーゼ活性を伴う進行中の症状発現の処置において効力があることを意味する。「予防的」の語は、好ましくは調節解除受容体チロシンキナーゼ活性を伴う病気の開始または再発の阻止を意味する。
【0031】
本明細書で使用している「進行の遅延」の語は、特に処置される病気の前段階または初期にある患者へ活性化合物を投与することを意味し、その場合、患者に対し、例えば対応する疾患の前形態であるという診断が下されているか、または患者は、対応する疾患が発現すると思われるか、または例えば処置をしなければ転移が予測され得る、例えば医療処置中の状態または事故から生じる状態にある。
【0032】
動物は、好ましくは温血動物、さらに好ましくは哺乳類である。ヒト(通常、一般用語「動物」の範囲に入る)は、特に(例えば何らかの突然変異または他の特徴故に)上記または下記の病気に罹患する危険がある患者または人間である。
【0033】
下記または上記で、「使用」の語を(動詞または名詞として)(式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩の使用に関して)用いる場合、これは(異なる内容を示すかまたは文脈上異なる内容を示唆することがない場合)、適切かつ好都合であり、他を明示していなければ、本発明の以下の態様のいずれか一つまたはそれ以上を(特記しない限り)それぞれ含むものとする:プロテイン(特にチロシン)キナーゼ調節(特に阻害)応答性疾患の処置における使用、プロテインキナーゼ調節(特に阻害)応答性疾患の処置で使用される医薬組成物の製造に関する使用、プロテインキナーゼ調節(特に阻害)応答性および/または増殖性疾患の処置における式(I)で示される1種またはそれ以上の化合物の使用方法、プロテインキナーゼ調節(特に阻害)応答性疾患の処置を目的とする式(I)で示される1種またはそれ以上の化合物を含む医薬品、および上記プロテインキナーゼ調節(特に阻害)応答性疾患の処置における式(I)で示される1種またはそれ以上の化合物。特に、処置されるべき、式(I)で示される化合物の「使用」に好適な疾患は、下記の(特にチロシン)プロテインキナーゼ調節(特に阻害)応答性(病気がプロテインキナーゼの調節、特に阻害に応答している状況も含め、「依存的」だけではなく「促進される」、すなわちプロテインキナーゼの活性が病状の発現を促進するかまたはさらには誘発することも意味する)疾患、特に下記で挙げた増殖性疾患から選択される。
【0034】
プロテインキナーゼについて言う場合、これはあらゆるタイプのプロテインキナーゼ、特に上記「発明の概略」で挙げたもののうちの一つ、さらに特定すればセリン/トレオニンおよび/または好ましくはプロテインチロシンキナーゼ類、最も好ましくは、特にc−srcキナーゼ、VEGF−受容体キナーゼ(例えば、KDRおよびFlt−1)、RET−受容体キナーゼおよび/またはエフリン受容体キナーゼ類、例、EphB2キナーゼ、EphB4キナーゼまたは関連キナーゼ類、およびこれらのうちのいずれか1種またはそれ以上の、1つまたはそれ以上の改変または突然変異または対立遺伝子形態(例えば、それぞれの癌原遺伝子から発癌遺伝子への変換をもたらすもの、例えば構成的に活性化された突然変異体、例えばBcr−Abl)から成る群から選択される1種またはそれ以上のチロシンプロテインキナーゼに関するものである。特に、異常に高度発現されているか、構成的に活性化されているかまたは正常ではあるが患者における他の調節機構の所与の状況では比較的過活性である、および/または突然変異形態も包含される。
【0035】
プロテインキナーゼの特に阻害剤としての調節における本発明の化合物の有用性は、特に、また例証的に上記で好ましいものとして挙げられたプロテインキナーゼに関する以下の試験システムにより立証され得る。
【0036】
典型例である以下の試験システムの記載において、以下の省略形は、以下の意味を有する:DMSO=ジメチルスルホキシド;DTT=ジチオトレイトール;EDTA=エチレンジアミン四酢酸;MOI=感染多重度;PMSF=p−トルエンスルホニルフルオリド;トリス=トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン。「阻害剤」は、特記しない限り、式(I)で示される試験化合物である。
【0037】
エフリンB4受容体(EphB4)キナーゼ類の阻害剤としての式(I)で示される化合物の効力は、以下の要領で立証され得る:
Bac-to-Bac(登録商標)(Invitrogen Life Technologies、バーゼル、スイス国)GST−融合発現ベクターの生成:EphB−クラスの全細胞質コーディング領域を、ヒト胎盤または脳にそれぞれ由来するcDNAライブラリーからPCRにより増幅する。ヒトEphB4受容体(SwissProtデータベース、受入番号P54760)のアミノ酸領域566−987を発現する組換えバキュロウイルスが作製される。GST配列をpFastBac1(登録商標)ベクター(Invitrogen Life Technologies、バーゼル、スイス国)へクローン化し、PCR増幅する。EphB4−受容体ドメインをコード化するcDNAを、それぞれGST配列に対し枠3’プライムで、この修飾 FastBac1ベクターへクローン化することにより、pBac-to-Bac(登録商標)ドナーベクターを作製する。形質転換から生じる単コロニーを接種することにより、小規模プラスミド調製物のための一晩培養物を得る。プラスミドDNAの制限酵素分析は、幾つかのクローンが予測サイズの挿入体を含むことを明らかにしている。自動配列決定により、挿入体および約50bpのフランキングベクター配列が両鎖で確認される。
【0038】
ウイルスの作製:特記しない限り、GIBCOにより供給されたプロトコルに従って、キナーゼのそれぞれについてウイルスを作製する。簡単に述べると、キナーゼドメインを含む転移ベクターを、DH10Bac細胞株(GIBCO)へトランスフェクションし、選択的寒天プレートで平板培養する。ウイルスゲノム(細菌により運ばれる)への融合配列の挿入を伴わないコロニーは青色である。単白色コロニーを採取し、標準プラスミド精製手順によりウイルス性DNA(バクミド)を細菌から分離する。次いで、Sf9細胞またはSf21細胞を、プロトコルに従ってセルフェクチン試薬を用いてウイルスDNAにより25cmフラスコへトランスフェクションする。
【0039】
GST標識キナーゼの精製:遠心分離した細胞ライゼートを、2mLグルタチオン−セファロースカラム(Pharmacia)へローディングし、10mLの25mMトリス−HCl、pH7.5、2mMのEDTA、1mMのDTT、200mMのNaClで3回洗浄する。次いで、GST−標識タンパク質を、25mMのトリス−HCl、pH7.5、10mMの還元グルタチオン、100mMのNaCl、1mMのDTT、10%グリセリンの10回適用(各1mL)により溶離し、−70℃で貯蔵する。
【0040】
プロテインキナーゼ検定法:プロテインキナーゼの活性を、[γ33P]ATPから基質としてのグルタミン酸およびチロシンのポリマー(ポリ(Glu、Tyr))への33Pの取り込みを測定することにより、阻害剤の存在下または非存在下で検定する。精製GST−EphB(30ng)での検定法を、20mMのトリス/HCl、pH7.5、10mMのMgCl、3〜50mMのMnCl、0.01mMのNaVO、1%DMSO、1mMのDTT、3μg/mLのポリ(Glu、Tyr)4:1(Sigma、セントルイス、ミズーリ、米国)および2.0〜3.0μMのATP(γ−[33P]−ATP 0.1μCi)を含む30μLの最終分量中周囲温度で15〜30分間実施する。125mMのEDTA20μLを加えることにより、検定を終結させる。それに続いて、反応混合物40μLを、予め5分間メタノールで浸漬しておいたImmobilon-PVDF膜(Millipore、ベッドフォード、マサチューセッツ、米国)へ移し、水ですすぎ、次いで5分間0.5%HPOで浸漬し、真空源との接続を断ったマニホールドに載せる。全試料をスポットした後、真空源を接続し、それぞれ200μlの0.5%HPOで十分にすすぐ。膜を取り出し、1.0%HPOで振とう器において4回、エタノールで1回洗浄する。膜を周囲温度で乾燥し、PackardのTopCount96-ウェルフレームに載せ、10μL/ウェルのMicroscint(登録商標)(Packard)を加えた後、計数する。4濃度(通常、0.01、0.1、1および10μM)で、デュプリケイトでの各化合物の阻害パーセンテージの一次回帰分析によりIC50値を計算する。1単位のプロテインキナーゼ活性を、37℃でタンパク質1mg当たり1分間につき[γ33P]ATPから基質タンパク質へ移された1nmolの33P ATPとして定義する。式(I)で示される化合物は、0.005〜10μMの範囲でのEphB4阻害、好ましくは0.05〜10μM間のIC50値を示す。
【0041】
別法として、EphB4受容体自動リン酸化は、以下の要領で測定され得る:EphB4受容体自動リン酸化の阻害は、細胞でのインビトロ実験により確認され得、例えば、ヒトEphB4(SwissProt、受入番号P54760)を永続的に発現するトランスフェクションA375ヒトメラノーマ細胞(ATCC番号:CRL−1619)を、6−ウェル細胞培養プレートにおいて完全培養培地(10%胎児ウシ血清=FCS含有)に播種し、それらが約90%飽和密度を示すまで5%CO2下37℃でインキュベーションする。次いで、試験すべき化合物を培養培地(FCS不含有、0.1%ウシ血清アルブミン含有)中で希釈し、細胞に加える。(対照は試験化合物を含まない培地を含む)。1マイクログラム/mlの可溶性エフリンB2−Fc(s−エフリンB2−Fc:R&D Biosystems、カタログ番号496−EB)および0.1マイクロモルのオルト−バナデートを加えることにより、リガンド誘導自動リン酸化を誘導する。37℃でさらに20分間インキュベーションした後、細胞を氷冷PBS(リン酸緩衝食塩水)で2回洗浄し、直ちに1ウェル当たり200μlの溶解緩衝液中で溶解する。次いで、ライゼートを遠心分離にかけることにより、細胞核を除去し、市販のタンパク質アッセイ(PIERCE)を用いて上清のタンパク質濃度を測定する。次いで、ライゼートを直ちに使用するかまたは必要ならば−20℃で貯蔵し得る。
【0042】
サンドイッチELISAを実施することにより、EphB4リン酸化を測定する:リン酸化EphB4タンパク質を捕捉するため、100ng/ウェルのエフリンB2−Fc(s−エフリンB2−Fc:R&D Biosystems、カタログ番号496−EB)を、MaxiSorb(Nunc)ELISAプレートに固定化する。次いで、プレートを洗浄し、残存する遊離タンパク質結合部位を、Tween20(登録商標)(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ICI/Uniquema)を含むリン酸緩衝食塩水(PBST)中の3%TopBlock(登録商標)(Juro、カタログ番号TB232010)で飽和させる。次いで、細胞ライゼート(1ウェル当たり100μgタンパク質)を室温で1時間これらのプレートにおいてインキュベーションする。ウェルをPBSで3回洗浄した後、アルカリ性ホスファターゼと結合させた抗ホスホチロシン抗体(PY20アルカリリン酸コンジュゲート:ZYMED、カタログ番号03−7722)を加え、さらに1時間インキュベーションする。プレートを再び洗浄し、次いで捕捉されたリン酸化受容体への抗ホスホチロシン抗体の結合が立証され、基質として10mMのD−ニトロフェニルホスファットを用い、0.5時間〜1時間405nmでODを測定することによりこれを定量する。
【0043】
陽性対照(バナデートおよびs−エフリンB2−Fcで刺激)のシグナルと陰性対照(刺激せず)のシグナル間の差異は、最大EphB4リン酸化(=100%)に対応する。試験物質の活性を、最大EphB4リン酸化の阻害パーセントとして計算するが、最大阻害の半分を誘導する物質の濃度を、IC50(50%阻害についての阻害用量)として定義する。式(I)で示される化合物の場合、IC50値は0.005〜10μMの範囲であり、好ましくは0.005〜5μMであり得る。
【0044】
式(I)で示される化合物はまた、他のチロシンプロテインキナーゼ、例えば特に動物、ヒト細胞を含む、特に哺乳類細胞での成長調節およびトランスフォーメーションにおいてある一定の役割を演じるc−Srcキナーゼも阻害し得る。適切な検定法は、Andrejauskas-Buchdunger et al., Cancer Res. 52, 5353-8 (1992)に記載されている。この試験システムを用いると、式(I)で示される化合物は、例えば0.01〜20μM、通常0.01〜10μMの範囲でc−Srcの阻害に関するIC50値を示し得る。
【0045】
KDRプロテイン−チロシンキナーゼ活性の阻害剤としての本発明化合物の活性は、以下の要領で立証できる:VEGF−誘導受容体自動リン酸化の阻害は、細胞、例えばトランスフェクションCHO細胞で確認され得、ヒトVEGF−R2受容体(KDR)を永続的に発現する上記細胞を、6−ウェル細胞培養プレートにおいて完全培養培地(10%胎児ウシ血清=FCS含有)に播種し、それらが約80%飽和密度を示すまで5%CO下37℃でインキュベーションする。次いで、試験すべき化合物を培養培地(FCS不含有、0.1%ウシ血清アルブミン含有)中で希釈し、細胞に加える。対照は試験化合物を含まない培地を含む。37℃で2時間インキュベーションした後、組換えVEGFを加える。最終VEGF濃度は20ng/mlである。37℃で5分のさらなるインキュベーション期間後、細胞を氷冷PBS(リン酸緩衝食塩水)で2回洗浄し、直ちに1ウェル当たり100μlの溶解緩衝液中で溶解する。次いで、ライゼートを遠心分離にかけることにより、細胞核を除去し、市販のタンパク質アッセイ(BIORAD)を用いて上清のタンパク質濃度を測定する。次いで、ライゼートを直ちに使用するかまたは必要ならば−20℃で貯蔵し得る。このプロトコルを用いることにより、式(I)で示される選択的化合物は、好ましくはc−Ablチロシンキナーゼの場合よりも少なくとも1.5倍高い、さらに好ましくはEphB4チロシンキナーゼの場合よりも2倍を超える割合で高いKDR阻害に関するIC50値を示すことが見出され得る。式(I)で示される化合物によるこの試験システムでは、IC50値は0.01〜20μM、さらに好ましくは0.01〜10μMの範囲である。
【0046】
式(I)で示される化合物はまた、他のプロテインキナーゼ類を阻害し得る。
【0047】
c−Ablプロテイン−チロシンキナーゼ活性の阻害剤としての本発明化合物の効力は、以下の要領で立証され得る:
インビトロ酵素検定法を、Geissler et al. in Cancer Res. 1992; 52:4492-4498頁に記載されたフィルター結合検定法として、以下の修正を加えて96ウェルプレートで実施する。c−AblのHis標識キナーゼドメインを、Bhat et al. in J.Biol.Chem. 1997; 272:16170-16175頁記載の要領でバキュロウイルス/Sf9系においてクローン化し、発現させる。37kDのタンパク質(c−Ablキナーゼ)を、コバルト金属キレートカラム、次いでアニオン交換カラムという2段階手順で精製することにより、1〜2mg/LのSf9細胞を得る(Bhat et al.、引用参考文献)。c−Ablキナーゼの純度は、クーマシーブルー染色後のSDS−PAGEにより判断したところ90%より大である。この検定は、c−Ablキナーゼ(50ng)、20mMのトリス・HCl、pH7.5、10mMのMgCl、10μMのNaVO、1mMのDTTおよび0.06μCi/検定[γ33P]−ATP(5μMのATP)を含み(総容量30μL)、1%DMSOの存在下30μL/mLのポリ−Ala,Glu,Lys,Tyr−6:2:5:1(ポリ−AEKY、シグマP1152)を用いる。250mMのEDTA10μLを加えることにより反応を終結させ、反応混合物30μLを、予めメタノールで5分間浸漬しておいたImmobilon-PVDF膜(Millipore、ベッドフォード、マサチューセッツ、米国)に移し、水ですすぎ、次いで5分間0.5%HPOで浸漬し、真空源との接続を断ったマニホールドに載せる。全試料をスポットした後、真空源を接続し、それぞれ200μLの0.5%HPOで十分にすすぐ。膜を取り出し、振とう器で0.5%HPO(4回)、エタノールにより1回洗浄する。膜を周囲温度で乾燥し、PackardのTopCount96ウェルフレームに載せ、10μL/ウェルのMicroscint(登録商標)(Packard)を加えた後、計数する。この試験システムを用いると、式(I)で示される化合物は、例えば0.02〜10μM、通常0.02〜5μM間の範囲でc−Abl阻害に関する阻害のIC50値を示し得る。
【0048】
さらに、式(I)で示される化合物はまた、b−raf(V599E)を阻害するのに使用され得る。B−Raf−V599Eの活性を、[γ33P]−ATPから(His)−lkBへの33Pの取り込みを測定することにより阻害剤の存在下または非存在下で検定する。試験化合物をDMSO(10mM)に溶解し、−20℃で貯蔵する。系列希釈液を新たにDMSOで調製し、さらに純水で希釈することにより、3%DMSO中の3倍濃縮試験液を得る。検定の最終分量(30μl)は、10μlの試験液(1%DMSO)、10μlの検定ミックス(20mMのトリス−HCl、pH7.5、3mMのMnCl、3mMのMgCl、1nMのDTT、3μg/mlの(His)−lkB、1%DMSOおよび3.5μMのATP([γ33P]−ATP 0.1μCi))および10μlの酵素希釈液(600ngのGST−B−Raf−V599E)を含む。ピペット段階をプログラム化し、96ウェルフォーマットでの MultiPROBE、Iix、MultiPROBE IILxまたはHamiltonSTAR ロボットで実行する。文献に記載の要領で検定法を実施し(C. Garcia-Echeverria et al., Cancer Cel.. 5, 231-9 (2004)参照)、20μlの125mMのEDTAを加えることにより終結させる。フィルター結合方法によるリン酸化ペプチドの捕捉を以下の要領で実施する:反応混合物40μlを、予め5分間メタノールで浸漬しておいたインモビロン−PVDF膜へ移し、水ですすぎ、次いで5分間0.5%HPOで浸漬し、真空源との接続を断ったマニホールドに載せる。全試料をスポットした後、真空源を接続し、それぞれ200μlの0.5%HPOで十分にすすぐ。遊離膜を取り出し、1.0%HPOで振とう器において4回、エタノールで1回洗浄する。膜を周囲温度で乾燥し、PackardのTopCount96ウェルフレームに載せ、10μL/ウェルのMicroscint(登録商標)を加えた後、計数する。プレートを最終的に密閉し、マイクロプレートシンチレーション計数管(TopCount NXT、TopCount NXT HTS)で計数する。フラッシュプレート方法の場合、まずキナーゼ反応をポリスチレンベースのプラスチックプレートで実施し、次いで125mMのEDTA20μlを加えることにより60分後に止める。捕捉(60分、RT)するため、ビオチニル化基質をニッケルコーティングのフラッシュプレートに移す。検定プレートをPBSで3回洗浄し、室温で乾燥する。その後、プレートを密閉し、マイクロプレートシンチレーション計数管(TopCount NXT、TopCount NXT HTS)で計数する。4濃度(通常、0.01、0.1、1および10μM)でのデュプリケイトで、または10μMで出発、次いで1:3希釈物での8シングルポイントのIC50として化合物による阻害パーセンテージの一次回帰分析によりIC50値を計算する。b−raf阻害について、式(I)で示される化合物は、0.0005〜20μMの範囲、例えば0.001〜10μMの範囲のIC50値を示し得る。
【0049】
結果は、式(I)で示される化合物の有利な親和力プロフィールを示す。
【0050】
また、インビボでの式(I)で示される化合物の抗腫瘍活性を立証する実験もある。例えば、式(I)で示される化合物がインビボで新脈管形成を阻害するか否かを試験するため、マウスでの成長因子移植モデルにおいてVEGF、bFGF、S−1P.PDGFまたはIGF−1などの脈管形成因子により誘導される脈管形成応答に対するその効果を試験する:多孔質テフロンチャンバー(容量0.5mL)を、成長因子(2μg/mlヒトVEGF)含有または不含有でヘパリン(20単位/ml)を含む0.8%w/v寒天で満たし、C57/C6マウスの背面脇腹に皮下移植する。チャンバーの移植当日から開始し、その後4日間続けてマウスを試験化合物(例えば、5、10、25、50または100mg/kg経口、1日1回)または賦形剤で処置する。処置の最後に、マウスを殺し、チャンバーを取り出す。チャンバー周囲で成長している血管新生組織を注意深く取り出して秤量し、組織のヘモグロビン含有量を測定することにより(Drabkins 方法;Sigma、ダイセンホーフェン、ドイツ国)、血液含有量を評価する。内皮マーカーの尺度として、Tie−2タンパク質レベルを特異的ELISAにより測定し、脈管形成応答を定量する。これらの成長因子が、チャンバー周囲におけるこの組織成長(線維芽細胞および小血管を含むことを組織学的に特徴とする)の重量、血液含有量およびTie−2タンパク質レベルの用量依存的増加を誘導すること、およびこの応答が、例えばVEGFを特異的に中和する中和性抗体により遮断されることは、以前に示されている(Wood JM et al., Cancer Res. 60(8), 2178-2189, (2000);およびSchlaeppi et al., J. Cancer Res. Clin. Oncol. 125, 336-342, (1999)参照)。このモデルによると、阻害は、上記濃度の式(I)で示される化合物の場合に示され得る。
【0051】
本発明の好ましい観念では、プロテインキナーゼ調節応答性疾患は、処置された個体にとって有益な形で、式(I)で示される化合物が使用され得るプロテイン(好ましくはチロシン)キナーゼ、特に上記で好ましいとされる特徴を有するものの活性の調節、特に阻害に応答する疾患であり、過増殖状態、例えば白血病、過形成、線維症(特に肺、および他のタイプの線維症、例えば腎線維症)、新脈管形成、乾癬、アテローム性動脈硬化症および血管での平滑筋増殖、例えば狭窄または血管形成術後の再狭窄のうちの1種またはそれ以上を含む1種またはそれ以上の増殖性疾患(プロテインキナーゼの(特に不適切な)活性に依存的であるものを意味する)である。さらに、式(I)で示される化合物は、血栓症および/または強皮症の処置に使用され得る。
【0052】
好ましいのは、腫瘍または癌疾患、表皮過剰増殖(癌以外)、特に乾癬、前立腺過形成、または白血病から選択される増殖性疾患(特に本明細書で好ましいものとして挙げられている、特にプロテイン(好ましくはチロシン)キナーゼの活性の調節、特に阻害に応答性を示す)の治療(予防を含む)における式(I)で示される化合物の使用であり、上記腫瘍または癌疾患については、特に好ましくは良性または特に悪性腫瘍または癌疾患、さらに好ましくは固形腫瘍、例えば脳、腎臓、肝臓、副腎、膀胱、乳房、腹部(特に胃の腫瘍)、卵巣、結腸、直腸、前立腺、膵臓、肺(例えば、小または大細胞肺癌)、膣、甲状腺の癌、肉腫、神経膠芽細胞腫、多発性骨髄腫または胃腸癌、特に結腸癌または結腸直腸腺腫、または頸部および頭部の腫瘍、例えば頭部および頸部の扁平上皮癌、および例えば乳癌の症例における特に上皮形質の新生物に対するものである。
【0053】
式(I)で示される化合物またはその使用により、腫瘍の退縮をもたらし、そして/または腫瘍転移巣の形成および(微小も含む)転移巣の増大を阻止することが可能となる。
【0054】
また、幾つかまたは特に個々のプロテイン(好ましくはチロシン)キナーゼ、特に好ましいとして挙げたものが関与する場合の免疫系疾患の処置において式(I)で示される化合物を使用することも可能である。さらに、式(I)で示される化合物はまた、特に好ましいものとして挙げたプロテインチロシンキナーゼから選択される少なくとも1つのプロテイン(好ましくはチロシン)キナーゼによるシグナル伝達が関与する中枢または末梢神経系の疾患の処置においても使用され得る。
【0055】
慢性骨髄性白血病(CML)では、造血幹細胞(HSC)での相互均衡染色体転座により、BCR−ABLハイブリッド遺伝子が生じる。これは、発癌性Bcr−Abl融合タンパク質をコード化する。ABLは、細胞増殖、接着およびアポトーシスの調節において根本的役割を演じる堅固に調節されたプロテインチロシンキナーゼをコード化し、BCR−ABL融合遺伝子は構成的活性化キナーゼをコード化するが、前記キナーゼは、HSCを形質転換することにより、調節解除に陥ったクローン増殖、骨髄ストロマへの接着能の低下および突然変異誘発刺激因子に対するアポトーシス応答の低下を呈する表現型を生じさせ、さらに悪性の形質転換体を累進的に蓄積させ得る。その結果、顆粒球は成熟リンパ球へ発達することができず、循環系へ放出されることにより、成熟細胞における欠損をまねき、感染感受性を高める。Bcr−Abl(または類似した突然変異形態)のATP−競合的阻害剤は、キナーゼが分裂促進および抗アポトーシス経路(例えば、P−3キナーゼおよびSTAT5)を活性化するのを阻止して、BCR−ABL表現型細胞の死を誘発することにより、CMLに対する有効な治療法を提供するものとして報告されている。したがって、本発明によりBcr−Abl阻害剤として有用な式(I)で示される3−アミノ−ピラゾール化合物は、その過剰発現に関連した疾患、特に白血病、例えばCMLまたはALLなどの白血病の治療に特に適切である。
【0056】
新脈管形成は、約1〜2mmの最大直径を超えて増大する腫瘍にとっての絶対的必要条件としてみなされており、この限界まで、酸素および栄養分が拡散により腫瘍細胞に供給され得る。したがって、どの腫瘍も、その起源およびその原因とは関係なく、それがある一定サイズに達した後は、その増大について新脈管形成に依存的である。3つの主な機構が、腫瘍に対する新脈管形成阻害剤の活性において重要な役割を演じる:1)無血管休止腫瘍中への血管、特に毛細管の成長の阻害、この結果、アポトーシスおよび増殖間での均衡が達成されるため最終的な腫瘍の増大は無い;2)腫瘍での血流の出入りが無いことによる腫瘍細胞の移動の阻害;および3)内皮細胞増殖の阻害、この結果、通常血管の内側を覆う内皮細胞により周囲組織に対して発揮されるパラクリン成長刺激効果が回避される。
【0057】
式(I)で示される化合物は、それがKDRおよび特にエフリン受容体キナーゼ、および恐らくは他のプロテインキナーゼをも阻害することにより新脈管形成を調節する能力に関して、対応する受容体、好ましくはチロシンキナーゼの不適当な活性、特にその過剰発現に関連した疾患または障害に対する使用に特に適している。これらの疾患の中で、特に例えば虚血性の網膜症、例えば加齢性の黄斑変性、乾癬、肥満、血管芽細胞腫、血管腫、炎症性疾患、例えばリウマチ様またはリウマチ性炎症疾患、特に関節炎、例えば慢性関節リウマチ、または他の慢性炎症性障害、例えば慢性喘息、動脈または移植後アテローム性動脈硬化症、子宮内膜症、および特に新生物疾患、例えばいわゆる固形腫瘍、特に胃腸管、膵臓、乳房、腹部、頸部、膀胱、腎臓、前立腺、卵巣、子宮内膜、肺、脳の癌、メラノーマ、カポジ肉腫、頭部および頸部の扁平上皮癌、悪性胸膜中皮腫、リンパ腫または多発性骨髄腫、およびさらなる液体癌、例えば白血病が特に重要である。
【0058】
式(I)で示される化合物は、持続的新脈管形成により誘発される疾患、例えば再狭窄、例えばステント誘発再狭窄、クローン病、ホジキン病、眼病、例えば糖尿病性網膜症および血管新生緑内障、腎臓病、例えば糸球体腎炎、糖尿病性ネフロパシー、炎症性腸疾患、悪性腎硬化症、血栓性細小血管症候群、(例えば、慢性)移植拒絶および糸球体症、線維症疾患、例えば肝硬変、糸球体間質細胞増殖疾患、神経組織損傷の予防または処置、バルーンカテーテル処置後の血管再閉塞の阻止、血管プロテーゼまたはステントなど管腔の開放性を確保するための機械的デバイスの挿入後での使用、免疫抑制剤として、瘢痕を残さない創傷治癒の補助剤として、そして染みおよび接触皮膚炎の処置に特に有用である。
【0059】
好ましくは、本発明は、本明細書で挙げた固形腫瘍および/または本明細書で挙げた液体腫瘍、例えば白血病の処置における式(I)で示される化合物、またはその医薬上許容される塩の使用に関するものである。
【0060】
製造方法
式(I)で示される化合物は、他の化合物について原則として当業界で知られている方法と同様にして製造され、したがって、式(I)で示される新規化合物について、その製法は、好ましくは、式
【化2】

で示されるか、または式
【化3】

で示される出発物質と、式
【化4】

で示される出発物質またはその反応性誘導体の間のアミド結合の形成、および所望ならば、式(I)で示される一化合物から式(I)で示される異なる化合物への変換、式(I)で示される得られる化合物の塩から遊離化合物または異なる塩への変換、式(I)で示される得られる遊離化合物からその塩への変換、および/または式(I)で示される化合物の異性体の得られる混合物から個々の異性体への分離によるもので、類似方法として新規である。
【0061】
好ましくは、式(VI)で示される酸またはその反応性誘導体との縮合反応は、例えば第3級窒素塩基、例えばトリ低級アルキルアミンまたはピリジンの存在下、そのままで使用され得る反応性酸誘導体により、例えば反応性酸誘導体の不斉または混合無水物、活性エステルまたは酸ハライド、例えば酸塩化物の形態により行われるか、または反応性酸誘導体は、例えば、反応性エステルをin situで形成する試薬の存在下での縮合によりin situで形成され得る。この反応は、例えば出発物質を適切な溶媒、例えばハロゲン化炭化水素、例えば塩化メチレン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドまたはN−メチル−2−ピロリドン、または上記溶媒の2種またはそれ以上の混合物に溶解し、適切な塩基、例えばトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)またはN−メチルモルホリンを加えることにより実施され、さらに反応性酸誘導体がin situで形成される場合、反応性酸誘導体をin situで形成させる適切なカップリング剤、例えばジシクロヘキシルカルボジイミド/1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(DCC/HOBT)、ビス(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)ホスフィニッククロリド(BOPCl)、O−(1,2−ジヒドロ−2−オキソ−1−ピリジル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TPTU)、O−ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)−トリピロリジノホスホニウム−ヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩/ヒドロキシベンゾトリアゾールまたは1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(EDC/HOBTまたはEDC/HOAt)またはHOAtを単独で、または(1−クロロ−2−メチル−プロペニル)−ジメチルアミンと共に加える。他の可能なカップリング剤については、例えばKlauser; Bodansky, Synthesis 1972, 453-463頁参照。反応混合物を、好ましくは約−20〜50℃、特に0℃〜30℃の温度、例えば室温で撹拌する。
【0062】
所望による反応および変換
式(I)で示される化合物は、式(I)で示される異なる化合物に変換され得る。
少なくとも1個の形成基を有する式(I)で示される化合物の塩は、自体公知の方法で製造され得る。例えば、酸性基を有する式(I)で示される化合物の塩は、化合物を金属化合物、例えば適切な有機カルボン酸のアルカリ金属塩、例えば2−エチルヘキサン酸ナトリウム塩、無機アルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物、例えば対応する水酸化物、炭酸化合物または炭酸水素塩、例えば水酸化、炭酸または炭酸水素ナトリウムまたはカリウム、対応するカルシウム化合物またはアンモニアまたは適切な有機アミンで処理することにより形成され得、好ましくは化学量論量または僅かに過剰の塩形成剤が使用される。式(I)で示される化合物の酸付加塩は、慣用的方法で、例えば式(I)で示される化合物を酸または適切なイオン交換試薬で処理することにより得られる。酸性および塩基性塩形成基、例えばカルボキシ基およびアミノ基による式(I)で示される化合物の内部塩は、例えば酸付加塩などの塩の、例えば弱塩基による等電点への中和により、またはイオン交換体での処理により形成され得る。
【0063】
式(I)で示される化合物の塩は、慣用的方法で、例えば適切な酸および酸付加塩による処理、例えば適切な塩基性剤での処理により遊離化合物、金属またはアンモニウム塩に変換され得る。両方の場合とも、適切なイオン交換体が使用され得る。
【0064】
立体異性体混合物、例えばジアステレオマー混合物は、適切な分離方法による自体公知の方法でそれらの対応する異性体に分離され得る。例えばジアステレオマー混合物は、分画結晶化、クロマトグラフィー、溶媒分配および類似手順を用いることによりそれらの個々のジアステレオマーに分離され得る。この分離は、出発化合物の一つのレベルで、または式(I)で示される化合物それ自体で行われ得る。鏡像体は、ジアステレオマー塩の形成を通して、例えば鏡像体について純粋なキラル酸による塩形成により、またはキラルリガンドを伴うクロマトグラフィー基質を用いるクロマトグラフィー、例えばHPLCにより分離され得る。
【0065】
中間体および最終生成物は、標準的方法に従って、例えばクロマトグラフィー方法、分配方法、(再)結晶化などを用いて後処理および/または精製され得る。
【0066】
出発物質
出発物質は、当業界で公知であり、それらいくつかは市販されているか、または当業界で公知の方法にしたがって製造され得る。保護基は、特記しない限り、官能基の反応が対応する反応段階(複数も可)では望ましくない場合にそれらを保護するために適宜導入および除去され得る。保護基およびそれらの導入および除去方法は、例えば引用した参考文献において、例えば報告されている。当業者であれば、保護基が有用であるかまたは必要とされる否か、そしてどの保護基が有用であるかまたは要求されるかを容易に決定できるはずである。
【0067】
出発物質は、式(IV)、(V)または(VI)で示されるものに加えて、例えば好ましくは以下のものである(出発物質の式における可変基は、特記しない限り、式(I)で定義の通りである):
【0068】

【化5】

(式中、Rは、ハロゲン、C1−7アルコキシまたはトリフルオロメチルであり、nは1または2であり、Haloはハロゲン、例えばクロロ、フルオロ、ヨードまたはブロモ、好ましくはクロロである)
で示される出発物質、

【化6】

(式中、RはC1−7アルキルまたはハロゲンである)
で示される出発物質、および

【化7】

(式中、RはC1−7アルキルまたはハロゲンであり、Rはハロゲン、C1−7アルコキシまたはトリフルオロメチルであり、nは1または2である)
で示される出発物質。
【0069】
式(III)で示される出発物質は、例えば室温でジクロロメタン中、トリエチルアミンを用いることによる、例えば式(II)で示される出発物質と式(II’)で示される出発物質の間におけるアミド結合の形成により得られる。
【0070】
式(IV)(式中、RはC1−7アルキルまたはハロゲンであり、Rはハロゲン、C1−7アルコキシまたはトリフルオロメチルであり、nは1または2である)で示される出発物質は、例えば室温でメタノール中のラネーニッケルによる、例えば式(III)の対応する出発物質の水素化により得られる。
【0071】
式(V)(式中、RはC1−7アルキルまたはハロゲンであり、Rはハロゲン、C1−7アルコキシまたはトリフルオロメチルであり、nは1または2である)で示される出発物質は、例えば対応する出発物質を用いる式(IV)で示される出発物質の製造に関して記載した方法と類似した方法で得られる。
【0072】
式(IV)および(V)で示される出発物質は、下記一般式
【化8】

(式中、RおよびRは式(I)で定義の通りである)
を有する。
【0073】

【化9】

で示される出発物質において、Rは式(I)で定義の通りである。
【0074】
一般的製造条件
以下の内容は、概して前記および後記で挙げた方法全てに適用されるものであり、具体的に上記または下記で述べている反応条件が好ましい。
【0075】
反応のいずれにおいても、保護基は、特記しない限り、適切な場合または所望に応じて、所与の反応に関与させる意図のない官能基を保護するのに使用され得、それらは適切または所望の段階で導入および/または除去され得る。したがって、保護基の使用を含む反応は、保護および/または脱保護を具体的に述べていない反応が本明細書に記載されている場合でも可能なものとして含まれる。
【0076】
この開示の範囲内では、特記しない限り、式(I)で示される特定の目的最終生成物の一構成成分ではない容易に除去可能な基のみを「保護基」と称す。上記保護基による官能基の保護、保護基それ自体およびそれらの除去については、例えば標準参考文献で、例えばJ. F. W. McOmie, “Protective Groups in Organic Chemistry”, Plenum Press, London and New York 1973, T. W. Greene and P. G. M. Wuts, “Protective Groups in Organic Synthesis”, Third edition, Wiley, New York 1999, in “The Peptides”; Volume 3 (editors: E. Gross and J. Meienhofer), Academic Press, London and New York 1981, “Methoden der organischen Chemie” (Methods of Organic Chemistry), Houben Weyl, 4th edition, Volume 15/I, Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1974, H.-D. Jakubke and H. Jeschkeit, “Aminosaeuren, Peptide, Proteine” (Amino acids, Peptides, Proteins), Verlag Chemie, Weinheim, Deerfield Beach, and Basel 1982およびJochen Lehmann, “Chemie der Kohlenhydrate: Monosaccharide und Derivate” (Chemistry of Carbohydrates: Monosaccharides and Derivatives), Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1974に記載されている。保護基の特徴は、それらが、例えばソルボリシス、還元、光分解により、または別法として生理学的条件下で(例えば酵素開裂により)容易に除去され得る(すなわち、望ましくない二次反応の発生を伴わない)ことである。
【0077】
上記の製造工程は全て、自体公知である反応条件、好ましくは具体的に挙げた条件下、溶媒または希釈剤、好ましくは使用試薬に対して不活性であり、それらを溶かす溶媒または希釈剤の非存在下または慣用的には存在下、反応および/または反応体の性質によって、触媒、縮合または中和剤、例えばイオン交換体、例えばカチオン交換体、例えばH形態の非存在下または存在下、低温、常温または高温、例えば約−100℃〜約190℃、好ましくは約−80℃〜約150℃、例えば−80〜−60℃、室温、−20〜40℃の温度範囲または還流温度で、大気圧下または高圧または低圧下の密閉容器中、および/または不活性雰囲気中、例えばアルゴンまたは窒素雰囲気下で実施され得る。
【0078】
特定の反応に適している溶媒が選択され得る溶媒の例としては、製法の記載において特記しない限り、具体的に挙げたもの、例えば水、エステル類、例えば低級アルキル−低級アルカノエート、例えば酢酸エチル、エーテル類、例えば脂肪族エーテル類、例えばジエチルエーテル、または環状エーテル類、例えばテトラヒドロフランまたはジオキサン、液体芳香族炭化水素類、例えばベンゼンまたはトルエン、アルコール類、例えばメタノール、エタノールまたは1−または2−プロパノール、ニトリル類、例えばアセトニトリル、ハロゲン化炭化水素類、例えば塩化メチレンまたはクロロホルム、酸アミド類、例えばジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミド、塩基類、例えば複素環窒素塩基類、例えばピリジンまたはN−メチルピロリジン−2−オン、カルボン酸無水物、例えば低級アルカン酸無水物、例えば無水酢酸、環状、線状または分枝状炭化水素類、例えばシクロヘキサン、ヘキサンまたはイソペンタン、またはこれらの混合物、例えば水溶液がある。上記溶媒混合物もまた、例えばクロマトグラフィーまたは分配による後処理で使用され得る。
【0079】
本発明はまた、製造工程のいずれかの段階で中間体として得られる化合物が出発物質として使用され、残りの製造工程が実施されるか、または出発物質が反応条件下で形成されるかまたは誘導体、例えば保護形態または塩形態で使用されるか、または本発明による製法により得られる化合物が製造工程条件下で生成され、さらにin situで処理されるといった製法形態に関するものである。本発明の製法では、好ましいものとして記載された式(I)の化合物をもたらす出発物質を好ましくは使用する。本発明はまた、新規中間体および/または出発物質に関するものである。特に好ましいのは、実施例で挙げたものと同一または類似した反応条件である。
【0080】
本発明による好ましい態様
好ましい態様並びにさらに先行のおよび後続の一般的な態様および請求の範囲では、いずれか1つまたはそれ以上または全ての一般的表現は、上記および下記で示した対応するさらに具体的な定義と置き換えられ得、それによって本発明の好ましい態様がさらに明確なものとなる。
【0081】
本発明は、好ましくは式(I)で示される化合物の遊離形態または医薬上許容される塩形態に関するものであり、
− Rは、−CHまたは次の置換基C1−7アルコキシまたはC1−7アルキルの1つにより置換されたフェニルであり、フェニル置換基は、好ましくはC1−7アルコキシ、好ましくはC1−4アルコキシであるか、または
− Rは、C1−7アルキル、好ましくはC1−4アルキルであるか、または
− Rは、−CHまたはC1−7アルコキシ、好ましくはC1−4アルコキシにより置換されたフェニルであり、
− Rは、−NH−CO−フェニル(式中、フェニル環は、フルオロ、C1−7アルコキシ、好ましくはC1−4アルコキシ、またはトリフルオロメチルから選択される1個または2個の置換基により置換されている)または−CO−NH−フェニル(式中、フェニル環は、C1−7アルコキシ、好ましくはC1−4アルコキシ、またはトリフルオロメチルから選択される1個または2個の置換基により置換されている)であり、
− Rは、C1−7アルキル、好ましくはC1−4アルキルであるか、または
− Rは、−CHまたはC1−4アルコキシ、好ましくはメトキシにより置換されたフェニルであり、
− Rは、−NH−CO−フェニル(式中、フェニル環は、フルオロ、C1−4アルコキシ、好ましくはメトキシ、またはトリフルオロメチルから選択される1個または2個の置換基により置換されている)または−CO−NH−フェニル(式中、フェニル環は、C1−4アルコキシ、好ましくはメトキシ、またはトリフルオロメチルから選択される1個または2個の置換基により置換されている)であり、
− Rは、C1−4アルキル、好ましくはメチルである。
【0082】
さらなる態様において、本発明は以下の内容に関するものである:
− 式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩、および少なくとも1種の医薬上許容される担体を含む医薬品。
− 動物または人体の診断的または治療的処置で使用される、式(I)で示される化合物、またはその医薬上許容される塩。
【0083】
− プロテインキナーゼ調節応答性疾患の処置、プロテインキナーゼ調節応答性疾患の処置に有用な医薬品の製造における式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩の使用。ただし、例えばプロテインキナーゼ調節応答性疾患は、c−srcキナーゼ、VEGF−受容体キナーゼ(例えば、KDRおよびFlt−1)、RET−受容体キナーゼおよび/またはエフリン受容体キナーゼ、例、EphB2キナーゼ、EphB4キナーゼまたは関連キナーゼ類から成る群から選択される1種またはそれ以上のプロテインチロシンキナーゼの阻害に応答する疾患から成る群から選択される1つまたはそれ以上の疾患であり、例えば、処置される疾患は、増殖性疾患、例えば白血病、特に慢性骨髄性白血病(CML)またはALL、過形成、線維症、例えば肝硬変、新脈管形成、乾癬、アテローム性動脈硬化症、特に動脈または移植後アテローム性動脈硬化症、血管における平滑筋増殖、例えば狭窄または血管形成術後の再狭窄、腫瘍または癌疾患、特に良性または特に悪性腫瘍または癌疾患、さらに好ましくは固形腫瘍、例えば脳、腎臓、肝臓、副腎、膀胱、乳房、腹部、卵巣、結腸、直腸、前立腺、膵臓、肺、頸部、膣、子宮内膜、甲状腺の癌、肉腫、神経膠芽細胞腫、多発性骨髄腫または胃腸癌、結腸直腸腺癌、メラノーマ、または頸部および頭部の腫瘍、例えば頭部および頸部の扁平上皮癌、糸球体間質細胞増殖性疾患、悪性胸膜中皮種、リンパ腫、例えば乳癌の症例における特に上皮形質の新生物、表皮過剰増殖(癌以外)、特に乾癬、前立腺過形成、カポジ肉腫、血栓症、強皮症、免疫系疾患、特に好ましいものとして挙げたプロテインチロシンキナーゼから選択される少なくとも1つのプロテイン(好ましくはチロシン)キナーゼによるシグナル伝達が関与する中枢または末梢神経系の疾患、網膜症、例えば糖尿病性網膜症、血管新生緑内障または黄斑変性、肥満、血管芽細胞腫、血管腫、糖尿病性ネフロパシー、悪性腎硬化症、炎症性疾患、例えばリウマチ様またはリウマチ性炎症疾患、特に関節炎、例えば慢性関節リウマチ、他の慢性炎症性障害、例えば慢性喘息、子宮内膜症、クローン病、ホジキン病、糸球体腎炎、炎症性腸疾患、血栓性細小血管症候群、移植拒絶、糸球体症、神経組織損傷、創傷治癒、肝斑、接触皮膚炎、および再狭窄、例えばステント誘発性再狭窄から成る群から選択される1つまたはそれ以上の疾患である。
【0084】
− 式(V’)で示される出発物質と式(VI)で示される出発物質(式中、R、RおよびRは前記の意味である)の間におけるアミド結合の形成、および所望による、式(I)で示される一化合物から式(I)で示される異なる化合物への変換、式(I)で示される得られる化合物の塩から遊離化合物または異なる塩への変換、式(I)で示される得られる遊離化合物からその塩への変換、および/または式(I)で示される化合物の異性体の得られる混合物から個々の異性体への分離を含む式(I)で示される化合物の製造方法。
【0085】
医薬組成物
本発明はまた、式(I)で示される好ましくは新規の化合物を含む医薬組成物、不適切なプロテイン(特にチロシン)キナーゼ活性に左右される疾患または障害、特に上記の好ましい障害または疾患の治療的(本発明の広範な態様では、予防的)処置または処置方法におけるそれらの使用、上記使用を目的とする化合物および特に上記使用を目的とする医薬品およびそれらの製造に関するものである。さらに一般的には、医薬品は、式(I)で示される化合物の場合に有用である。
【0086】
本発明の薬理学的に許容される化合物は、1種またはそれ以上の無機または有機、固体または液体の医薬上許容される担体(担体物質)と一緒に、または混合した形で有効成分として式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩の有効量を含む医薬組成物中に存在するか、または例えば、それらの製造に使用され得る。
【0087】
本発明はまた、プロテイン、特にチロシンキナーゼ活性の阻害に応答する疾患の処置(この場合、本発明のさらに広範な態様では、疾患の防止、例えばこれに対する予防も含む)を目的とし、式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩の好ましくは上記阻害に有効な量を、少なくとも1種の医薬上許容される担体と一緒に含む、温血動物、特にヒト(または温血動物、特にヒトに由来する細胞または細胞株、例えばリンパ球)への投与に適した医薬組成物に関するものである。
【0088】
本発明による医薬組成物は、薬理学的有効成分の有効量を単独で、またはかなりの量の医薬上許容される担体と一緒に含む、温血動物、特にヒトへの経腸、例えば経鼻、直腸または経口、または非経口、例えば筋肉内または静脈内投与用のものである。有効成分の用量は、例えば温血動物の種、体重、年齢および個々の条件、個々の薬物動態データ、処置される疾患および投与方法により異なる。
【0089】
本発明はまた、プロテイン、特にチロシンキナーゼの不適切な活性に左右される病気の阻害に応答する疾患に関する処置方法であって、特に上記疾患の一つのため、処置を必要とする温血動物、例えばヒトに式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩の予防または特に治療有効量を投与することを含む方法に関するものである。
【0090】
体重約70kgの温血動物、例えばヒトに投与される式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩の用量は、好ましくは約3mg〜約10g、さらに好ましくは約10mg〜約1.5g、最も好ましくは約100mg〜約1000mg/人/日であり、好ましくは1〜3回の単用量に分割され、前記用量は例えば同一サイズであり得る。通常、子供には成人用量の半分を与える。
【0091】
医薬組成物は、約1%〜約95%、好ましくは約20%〜約90%の割合で有効成分を含有する。本発明による医薬組成物は、例えば単位用量形態、例えばアンプル、バイアル、坐薬、糖衣錠、錠剤またはカプセル形態であり得る。
【0092】
本発明の医薬組成物は、自体公知の方法で、例えば慣用的溶解、凍結乾燥、混合、造粒または糖衣工程により製造される。
【0093】
有効成分の溶液および懸濁液、および特に等張性水溶液または懸濁液を好ましくは使用し、例えば有効成分を単独または担体、例えばマンニトールと一緒に含む凍結乾燥組成物の場合、上記溶液または懸濁液を使用前に調製することが可能である。医薬組成物は、滅菌され得、そして/または賦形剤、例えば保存剤、安定剤、湿潤および/または乳化剤、可溶化剤、浸透圧調節用塩および/または緩衝液を含み得、自体公知の方法で、例えば慣用的溶解または凍結乾燥方法により製造される。上記溶液または懸濁液は、増粘性物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルピロリドンまたはゼラチンを含み得る。
【0094】
油中懸濁液は、油成分として注射目的で常用される植物性、合成または半合成油を含む。それについては、酸成分として8〜22個、特に12〜22個の炭素原子を有する長鎖脂肪酸、例えばラウリル酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ベヘン酸または対応する不飽和酸、例えばオレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、ブラシジン酸またはリノール酸を含む特に液体の脂肪酸エステル類などが挙げられ、所望ならば酸化防止剤、例えばビタミンE、β−カロテンまたは3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエンが添加され得る。それらの脂肪酸エステルのアルコール成分は、最大6個の炭素原子を有するもので、モノ−またはポリ−ヒドロキシ、例えばモノ−、ジ−またはトリ−ヒドロキシ、アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールまたはペンタノールまたはその異性体、および特にグリコールおよびグリセリンである。したがって、脂肪酸エステル類について以下の例が挙げられる:エチルオレエート、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、「Labrafil M2375」(ポリオキシエチレングリセリントリオレエート、Gattefosse、パリ)、「Miglyol 812」(C8〜C12の鎖長をもつ飽和脂肪酸のトリグリセリド、Huels AG、ドイツ国)、および特に植物油、例えば綿実油、扁桃油、オリーブ油、ひまし油、ごま油、大豆油および落花生油。
【0095】
注射または注入組成物は、滅菌条件下慣用的方法で製造される;これはアンプルまたはバイアル中へ組成物を導入し、容器を密閉する場合にも当てはまる。
【0096】
経口投与用医薬組成物は、有効成分を固体担体と合わせ、所望ならば生成した混合物を粒状化し、所望または必要ならば、適切な賦形剤を錠剤、糖衣錠コアまたはカプセル剤に加えた後、混合物を加工処理することにより得られる。また、有効成分を定量で拡散または放出させ得るプラスチック担体中へそれらを組み込むことも可能である。
【0097】
適切な担体は、特に充填剤、例えば糖類、例えばラクトース、サッカロース、マンニトールまたはソルビトール、セルロース調製物および/またはリン酸カルシウム、例えばリン酸三カルシウムまたはリン酸水素カルシウム、および結合剤、例えばトウモロコシ、小麦、稲またはジャガイモ澱粉を用いた澱粉ペースト、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドン、および/または所望ならば、崩壊剤、例えば上記澱粉類、および/またはカルボキシメチル澱粉、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムである。賦形剤は、特に流動調節剤および滑沢剤、例えばケイ酸、タルク、ステアリン酸またはその塩、例えばステアリン酸マグネシウムまたはカルシウム、および/またはポリエチレングリコールである。糖衣錠コアには、適切な、所望により腸溶コーティングが施され、特に、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタンを含み得る濃縮糖溶液、または適切な有機溶媒でのコーティング溶液、または腸溶コーティングの製造については適切なセルロース調製物、例えばエチルセルロースフタレートまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートの溶液が使用される。カプセル剤は、ゼラチンでできた乾燥充填カプセル剤およびゼラチンおよび可塑剤、例えばグリセリンまたはソルビトールでできた密封ソフトカプセル剤である。乾燥充填カプセル剤は、例えば充填剤、例えばラクトース、結合剤、例えば澱粉類、および/または流動促進剤、例えばタルクまたはステアリン酸マグネシウム、および所望ならば安定剤と共に、有効成分を顆粒形態で含み得る。ソフトカプセル剤では、有効成分は、好ましくは適切な油性賦形剤、例えば脂肪油、パラフィン油または液体ポリエチレングリコールに溶解または懸濁され、安定剤および/または抗菌剤を添加することも可能である。染料または色素は、例えば識別する目的で、または異なる用量の有効成分を示すため、錠剤または糖衣錠コーティングまたはカプセルケーシングに添加され得る。
【0098】
式(I)で示される化合物はまた、他の生物活性物質と、優先的には他の抗増殖剤と組み合わせて有利なものとなるように使用され得る。上記抗増殖剤には、限定されるわけではないが、アロマターゼ阻害剤、抗エストロゲン、トポイソメラーゼI阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤、微小管活性剤、アルキル化剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、細胞分化過程を誘導する化合物、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、MMP阻害剤、mTOR阻害剤、抗新生物性抗代謝物質、プラチン化合物、タンパク質または脂質キナーゼ活性をターゲッティング/低減化する化合物およびさらなる血管新生阻害性化合物、タンパク質または脂質ホスファターゼの活性をターゲッティング、低減化または阻害する化合物、ゴナドレリンアゴニスト、抗アンドロゲン、メチオニンアミノペプチダーゼ阻害剤、ビスホスホネート類、生物応答修飾物質、抗増殖性抗体、ヘパラナーゼ阻害剤、Ras発癌遺伝子イソ型の阻害剤、テロメラーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、造血系悪性疾患の処置で使用される薬剤、Flt−3の活性をターゲッティング、低減化または阻害する化合物、Hsp90阻害剤およびテモゾロミド(TEMODAL(登録商標))がある。
【0099】
本明細書で使用している「アロマターゼ阻害剤」の語は、エストロゲン産生、すなわち基質アンドロステンジオンおよびテストステロンからのそれぞれエストロンおよびエストラジオールへの変換を阻害する化合物に関するものである。この語は、限定されるわけではないが、ステロイド類、特にアタメスタン、エキセメスタンおよびホルメスタンおよび特に非ステロイド類、特にアミノグルテチミド、ログレチミド、ピリドグルテチミド、トリロスタン、テストラクトン、ケトコナゾール、ボロゾール、ファドロゾール、アナストロゾールおよびレトロゾールを包含する。エキセメスタンは、例えば登録商標名AROMASINとして、例えば市販されている形態で投与され得る。ホルメスタンは、例えば登録商標名LENTARONとして、例えば市販されている形態で投与され得る。ファドロゾールは、例えば登録商標名AFEMAとして、例えば市販されている形態で投与され得る。アナストロゾールは、例えば登録商標名ARIMIDEXとして、例えば市販されている形態で投与され得る。レトロゾールは、例えば登録商標名FERARAまたはFEMARとして、例えば市販されている形態で投与され得る。アミノグルテチミドは、例えば登録商標名ORIMETENとして、例えば市販されている形態で投与され得る。アロマターゼ阻害剤である化学療法剤を含む本発明の組合わせは、ホルモン受容体陽性腫瘍、例えば乳房腫瘍の処置に特に有用である。
【0100】
本明細書で使用している「抗エストロゲン」の語は、エストロゲン受容体レベルでエストロゲンの効果と拮抗する化合物に関するものである。この語は、限定されるわけではないが、タモキシフェン、フルベストラント、ラロキシフェンおよびラロキシフェン塩酸塩を包含する。タモキシフェンは、例えば登録商標名NOLVADEXとして、例えば市販されている形態で投与され得る。ラロキシフェン塩酸塩は、例えば登録商標名EVISTAとして、例えば市販されている形態で投与され得る。フルベストラントは米国特許第4659516号に開示されている要領で製剤化され得るか、またはそれは例えば登録商標名FASLODEXとして、例えば市販されている形態で投与され得る。抗エストロゲンである化学療法剤を含む本発明の組合わせは、エストロゲン受容体陽性腫瘍、例えば乳房腫瘍の処置に特に有用である。
【0101】
本明細書で使用している「抗アンドロゲン」の語は、アンドロゲンホルモンの生物学的作用を阻害し得る物質に関するものであり、限定されるわけではないが、例えば米国特許第4636505号に開示されている要領で製剤化され得るビカルタミド(CASODEX)を含む。
【0102】
本明細書で使用している「ゴナドレリンアゴニスト」の語は、限定されるわけではないが、アバレリックス、ゴセレリンおよびゴセレリン酢酸塩がある。ゴセレリンは、米国特許第4100274号に開示されており、例えば登録商標名ZOLADEXとして、例えば市販されている形態で投与され得る。アバレリックスは、例えば米国特許第5843901号に開示されている要領で製剤化され得る。
【0103】
本明細書で使用している「トポイソメラーゼI阻害剤」の語は、限定されるわけではないが、トポテカン、ギマテカン、イリノテカン、カンプトテシアンおよびその類似体、9−ニトロカンプトテシンおよび高分子カンプトテシンコンジュゲートPNU−166148(国際公開第99/17804号における化合物A1)を包含する。イリノテカンは、例えば登録商標名CAMPTOSARとして、例えば市販されている形態で投与され得る。トポテカンは、例えば登録商標名HYCAMTINとして、例えば市販されている形態で投与され得る。
【0104】
本明細書で使用している「トポイソメラーゼII阻害剤」の語は、限定されるわけではないが、アントラサイクリン類、例えばドキソルビシン、例えばその封入リポソーム製剤、例、CAELYX、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシンおよびネモルビシン、アントラキノン類ミトキサントロンおよびロソキサントロン、およびポドフィロトキシン類エトポシドおよびテニポシドを包含する。エトポシドは、例えば登録商標名ETOPOPHOSとして、例えば市販されている形態で投与され得る。テニポシドは、例えば登録商標名VM 26-BRISTOLとして、例えば市販されている形態で投与され得る。ドキソルビシンは、例えば登録商標名ADRIBLASTINまたはADRIAMYCINとして、例えば市販されている形態で投与され得る。エピルビシンは、例えば登録商標名FARMORUBICINとして、例えば市販されている形態で投与され得る。イダルビシンは、例えば登録商標名ZAVEDOSとして、例えば市販されている形態で投与され得る。ミトキサントロンは、例えば登録商標名NOVANTRONとして、例えば市販されている形態で投与され得る。
【0105】
本明細書で使用している「微小管活性剤」の語は、微小管安定化、微小管脱安定化剤および微小管重合阻害剤に関するものであり、限定されるわけではないが、タキサン類、例えばパクリタキセルおよびドセタキセル、ビンカアルカロイド類、例えばビンブラスチン、特に硫酸ビンブラスチン、ビンクリスチン、特に硫酸ビンクリスチン、およびビノレルビン、ディスコデルモリド、コルヒチン(cochicine)およびエポチロン類およびその誘導体、例えばエポチロンBまたはその誘導体を包含する。パクリタキセルは、例えば登録商標名TAXOLとして、例えば市販されている形態で投与され得る。ドセタキセルは、例えば登録商標名TAXOTEREとして、例えば市販されている形態で投与され得る。硫酸ビンブラスチンは、例えば登録商標名VINBLASTIN R.P.として、例えば市販されている形態で投与され得る。硫酸ビンクリスチンは、例えば登録商標名FARMISTINとして、例えば市販されている形態で投与され得る。ディスコデルモリドは、米国特許第5010099号に開示された要領で得られる。また、国際公開第98/10121号、米国特許第6194181号、国際公開第98/25929号、国際公開第98/08849号、国際公開第99/43653号、国際公開第98/22461号および国際公開第00/31247号に開示されたエポチロン誘導体も含まれる。特に好ましいのは、エポチロンAおよび/またはBである。
【0106】
本明細書で使用している「アルキル化剤」の語は、限定されるわけではないが、シクロホスファミド、イフォスファミド、メルファランまたはニトロソ尿素(BCNUまたはGliadel)を含む。シクロホスファミドは、例えば登録商標名CYCLOSTINとして、例えば市販されている形態で投与され得る。イフォスファミドは、例えば登録商標名HOLOXANとして、例えば市販されている形態で投与され得る。
【0107】
本明細書で使用している「ヒストンデアセチラーゼ阻害剤」または「HDAC阻害剤」の語は、ヒストンデアセチラーゼを阻害し、抗増殖活性を有する化合物に関するものである。これらの例としては、国際公開第02/22577号に開示された化合物、特にN−ヒドロキシ−3−[4−[[(2−ヒドロキシエチル)[2−(1H−インドール−3−イル)エチル]−アミノ]メチル]フェニル]−2E−2−プロペンアミド、N−ヒドロキシ−3−[4−[[[2−(2−メチル−1H−インドール−3−イル)−エチル]−アミノ]メチル]フェニル]−2E−2−プロペンアミドおよびその医薬上許容される塩がある。さらにそれは、特にスベロイルアニリドヒドロキサミン酸(SAHA)を含む。
【0108】
「抗新生物性抗代謝物質」の語は、限定されるわけではないが、5−フルオロウラシル(5−FU)、カペシタビン、ゲムシタビン、DNA脱メチル化剤、例えば5−アザシチジンおよびデシタビン、メトトレキサート、エダトレキサート、および葉酸拮抗物質、例えばペメトレキセドを包含する。カペシタビンは、例えば登録商標名XELODAとして、例えば市販されている形態で投与され得る。ゲムシタビンは、例えば登録商標名GEMZARとして、例えば市販されている形態で投与され得る。例えば登録商標名HERCEPTINとして、例えば市販されている形態で投与され得るモノクローナル抗体トラスツズマブも含まれる。
【0109】
本明細書で使用している「プラチン化合物」の語は、限定されるわけではないが、カルボプラチン、シスプラチン、シスプラチナムおよびオキサリプラチンを包含する。カルボプラチンは、例えば登録商標名CARBOPLATとして、例えば市販されている形態で投与され得る。オキサリプラチンは、例えば登録商標名ELOXATINとして、例えば市販されている形態で投与され得る。
【0110】
本明細書で使用している「タンパク質または脂質キナーゼ活性をターゲッティング/低減化する化合物およびさらなる血管新生阻害化合物」の語は、限定されるわけではないが、プロテインチロシンキナーゼおよび/またはセリンおよび/またはトレオニンキナーゼ阻害剤または脂質キナーゼ阻害剤、例えば以下のものを含む:
a)血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)の活性をターゲッティング、低減化または阻害する化合物、例えばPDGFRの活性をターゲッティング、低減化または阻害する化合物、特にPDGF受容体を阻害する化合物、例えばN−フェニル−2−ピリミジン−アミン誘導体、例、イマチニブ、SU101、SU6668およびGFB−111;
b)線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)の活性をターゲッティング、低減化または阻害する化合物;
c)インスリン様増殖因子I受容体(IGF−IR)の活性をターゲッティング、低減化または阻害する化合物、特にIGF−IRを阻害する化合物、例えば国際公開第02/092599号に開示された化合物;
d)Trk受容体チロシンキナーゼファミリーの活性をターゲッティング、低減化または阻害する化合物;
e)Axl受容体チロシンキナーゼファミリーの活性をターゲッティング、低減化または阻害する化合物;
f)c−Met受容体の活性をターゲッティング、低減化または阻害する化合物;
g)c−Kit受容体チロシンキナーゼ(PDGFRファミリーの一部)の活性をターゲッティング、低減化または阻害する化合物、例えばc−Kit受容体チロシンキナーゼファミリーの活性をターゲッティング、低減化または阻害する化合物、特にc−Kit受容体を阻害する化合物、例えばイマチニブ;
h)c−Ablファミリーの構成員およびそれらの遺伝子融合産物(例えば、BCR−Ablキナーゼ)の活性をターゲッティング、低減化または阻害する化合物、例えばc−Ablファミリー構成員およびそれらの遺伝子融合産物の活性をターゲッティング、低減化または阻害する化合物、例えばN−フェニル−2−ピリミジン−アミン誘導体、例えば、イマチニブ;PD180970;AG957;NSC680410またはPD173955(ParkeDavisから);
i)セリン/トレオニンキナーゼ類のプロテインキナーゼC(PKC)およびRafファミリーの構成員、MEK、SRC、JAK、FAK、PDK、Ras/MAPKおよびPI(3)キナーゼファミリー、またはPI(3)−キナーゼ関連キナーゼファミリーの構成員、および/またはサイクリン依存性キナーゼファミリー(CDK)の構成員の活性をターゲッティング、低減化または阻害する化合物、特に米国特許第5093330号に開示されたスタウロスポリン誘導体、例えばミドスタウリン;さらなる化合物の例には、例えばUCN−01、サフィンゴール、BAY43−9006、ブリオスタチン1、ペリホシン;イルモホシン;RO318220およびRO320432;GO6976;Isis 3521;LY333531/LY379196;イソチノリン化合物、例えば国際公開第00/09495号に開示されたもの;FTI;PD184352またはQAN697(P13K阻害剤)がある;
j)プロテイン−チロシンキナーゼの活性をターゲッティング、低減化または阻害する化合物、例えばイマチニブメシレート(GLIVEC/GLEEVEC)またはチルホスチン。チルホスチンは、好ましくは低分子量(分子量<1500)化合物、またはその医薬上許容される塩、特にベンジリデンマロニトリルクラスまたはS−アリールベンゼンマロニトリルまたは二基質キノリンクラスの化合物から選択される化合物、さらに特定すればチルホスチンA23/RG−50810;AG99;チルホスチンAG213;チルホスチンAG1748;チルホスチンAG490;チルホスチンB44;チルホスチンB44(+)鏡像体;チルホスチンAG555;AG494;チルホスチンAG556、AG957およびアダホスチン(4−{[(2,5−ジヒドロキシフェニル)メチル]アミノ}−安息香酸アダマンチルエステル;NSC680410、アダホスチン)から成る群から選択される化合物である;および
k)受容体チロシンキナーゼ類(ホモ−またはヘテロ二量体としてEGFR、ErbB2、ErbB3、ErbB4)の表皮増殖因子ファミリーの活性をターゲッティング、低減化または阻害する化合物、例えば表皮増殖因子受容体ファミリーの活性をターゲッティング、低減化または阻害する化合物は、特にEGF受容体チロシンキナーゼファミリーの構成員、例えばEGF受容体、ErbB2、ErbB3およびErbB4を阻害するかまたはEGFまたはEGF関連リガンドに結合する化合物、タンパク質または抗体であり、特に国際公開第97/02266号(例えば、実施例39の化合物)、または欧州特許第0564409号、国際公開第99/03854号、欧州特許第0520722号、欧州特許第0566226号、欧州特許第0787722号、欧州特許第0837063号、米国特許第5747498号、国際公開第98/10767号、国際公開第97/30034号、国際公開第97/49688号、国際公開第97/38983号、および特に国際公開第96/30347号(例えば、CP358774として知られている化合物)、国際公開第96/33980号(例えば、化合物ZD1839)、および国際公開第95/03283号(例えば化合物ZM105180)に包括的および具体的に開示された化合物、タンパク質またはモノクローナル抗体;例えばトラスツズマブ、例えばHerpetinR、セツキシマブ、イレッサ、エルロチニブ(Tarceva(登録商標))、CI−1033、EKB−569、GW−2016、E1.1、E2.4、E2.5、E6.2、E6.4、E2.11、E6.3またはE7.6.3および国際公開第03/013541号に開示された7H−ピロロ−[2,3−d]ピリミジン誘導体である。
【0111】
さらなる血管新生阻害化合物は、例えばタンパク質または脂質キナーゼ阻害と関連のない、別の作用機序を有する化合物、例えばサリドマイド(THALOMID)およびTNP−470を含む。
【0112】
タンパク質または脂質ホスファターゼの活性をターゲッティング、低減化または阻害する化合物は、例えばホスファターゼ1、ホスファターゼ2A、PTENまたはCDC25の阻害剤、例えばオカダ酸またはその誘導体である。
【0113】
細胞分化過程を誘導する化合物は、例えばレチノイン酸、α−、γ−またはδ−トコフェロールまたはα−、γ−またはδ−トコトリエノールである。
【0114】
本明細書で使用している「シクロオキシゲナーゼ阻害剤」の語は、例えばCox−2阻害剤、5−アルキル置換2−アリールアミノフェニル酢酸および誘導体、例えばセレコキシブ(CELEBREX)、レフェコキシブ(VIOXX)、エトリコキシブ、バルデコキシブまたは5−アルキル−2−アリールアミノフェニル酢酸、例えば5−メチル−2−(2’−クロロ−6’−フルオロアニリノ)フェニル酢酸、ルミラコキシブを包含するが、限定されるわけではない。
【0115】
「mTOR阻害剤」の語は、ラパマイシンの哺乳類標的(mTOR)を阻害し、抗増殖活性を有する化合物に関するものであり、例えばシロリムス(Rapamune(登録商標))、エベロリムス(Certican(登録商標))、CCI−779およびABT578がある。
【0116】
本明細書で使用している「ビスホスホネート」の語は、エチドロン(etridonic)酸、クロドロン酸、チルドロン酸、パミドロン酸、アレンドロン酸、イバンドロン酸、リセドロン酸およびゾレドロン酸を包含するが、これらに限定されるわけではない。「エチドロン酸」は、例えば登録商標名DIDRONELとして、例えば市販されている形態で投与され得る。「クロドロン酸」は、例えば登録商標名「BONEFOS」として、例えば市販されている形態で投与され得る。「チルドロン酸」は、例えば登録商標名「SKELID」として、例えば市販されている形態で投与され得る。「パミドロン酸」は、例えば登録商標名「AREDIA」として、例えば市販されている形態で投与され得る。「アレンドロン酸」は、例えば登録商標名「FOSAMAX」として、例えば市販されている形態で投与され得る。「イバンドロン酸」は、登録商標名「BONDRANAT」として、例えば市販されている形態で投与され得る。「リセドロン酸」は、例えば登録商標名「ACTONEL」として、例えば市販されている形態で投与され得る。「ゾレドロン酸」は、例えば登録商標名「ZOMETA」として、例えば市販されている形態で投与され得る。
【0117】
本明細書で使用している「ヘパラナーゼ阻害剤」の語は、ヘパリン硫酸分解をターゲッティング、低減化または阻害する化合物をいう。この語はPI−88を含むが、限定されるわけではない。
【0118】
本明細書で使用している「生物応答修飾物質」の語は、リンホカインまたはインターフェロン、例えばインターフェロンγをいう。
【0119】
本明細書で使用している、例えばH−Ras、K−RasまたはN−Rasといった「Ras発癌遺伝子イソ型の阻害剤」の語は、Rasの発癌活性をターゲッティング、低減化または阻害する化合物をいい、例えば「ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤」、例えばL−744832、DK8G557またはR115777(Zarnestra、ザルネストラ)がある。
【0120】
本明細書で使用している「テロメラーゼ阻害剤」の語は、テロメラーゼの活性をターゲッティング、低減化または阻害する化合物、特にテロメラーゼ受容体を阻害する化合物をいい、例えばテロメスタチンがある。
【0121】
本明細書で使用している「メチオニンアミノペプチダーゼ阻害剤」の語は、メチオニンアミノペプチダーゼの活性をターゲッティング、低減化または阻害する化合物をいい、例えばベンガミドまたはその誘導体がある。
【0122】
本明細書で使用している「プロテアソーム阻害剤」の語は、プロテアソームの活性をターゲッティング、低減化または阻害する化合物、例えばPS−341またはMLN341をいう。
【0123】
本明細書で使用している「マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤」または(「MMP阻害剤」)の語は、コラーゲンペプチド模倣性および非ペプチド模倣性阻害剤、テトラサイクリン誘導体、例えばヒドロキサメートペプチド模倣性阻害剤バチマスタットおよびその生物利用可能な類似体マリマスタット(BB−2516)、プリノマスタット(AG3340)、メタスタット(NSC683551)、BMS−279251、BAY 12−9566、TAA211、MMI270BまたはAAJ996を包含するが、これらに限定されるわけではない。
【0124】
本明細書で使用している「造血系悪性疾患の処置で使用される薬剤」の語は、FMS様チロシンキナーゼ阻害剤、例えばFlt−3の活性をターゲッティング、低減化または阻害する化合物、インターフェロン、1−b−D−アラビノフランシルシトシン(ara−c)およびビスルファン(bisulfan)、およびALK阻害剤、例えば未分化リンパ腫キナーゼをターゲッティング、低減化または阻害する化合物を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0125】
「Flt−3の活性をターゲッティング、低減化または阻害する化合物」は、特にFlt−3を阻害する化合物、タンパク質または抗体、例えばPKC412、ミドスタウリン、スタウロスポリン誘導体、SU11248およびMLN518である。
【0126】
本明細書で使用している「HSP90阻害剤」の語は、HSP90の固有アデノシントリホスファターゼ活性をターゲッティング、低減化または阻害する;ユビキチンプロテアソーム経路を介してHSP90クライアントタンパク質を分解、ターゲッティング、低減化または阻害する化合物を含むが、これらに限定されるわけではない。HSP90の固有アデノシントリホスファターゼ活性をターゲッティング、低減化または阻害する化合物は、特にHSP90のアデノシントリホスファターゼ活性を阻害する化合物、タンパク質または抗体、例えば17−アリルアミノ、17−デメトキシゲルダナマイシン(17AAG)、ゲルダナマイシン誘導体;他のゲルダナマイシン関連化合物;ラジシコールおよびHDAC阻害剤である。
【0127】
本明細書で使用している「抗増殖性抗体」の語は、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))、ラスツズマブ−DM1、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))、PRO64553(抗CD40)および2C4抗体を含むが、これらに限定されるわけではない。「抗体」とは、それが所望の生物活性を呈するものであれば、例えば無傷のモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2個の無傷抗体から形成される多重特異性抗体、および抗体フラグメントを全て含むものとする。
【0128】
急性骨髄性白血病(AML)を処置する場合、式(I)で示される化合物は、標準白血病治療と組み合わせて、特にAMLの処置に使用される治療法と組み合わせて使用され得る。特に、式(I)で示される化合物は、例えばファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤および/またはAMLの処置に有用な他の薬剤、例えばダウノルビシン、アドリアマイシン、Ara−C、VP−16、テニポシド、ミトキサントロン、イダルビシン、カルボブラチナムおよびPKC412と組み合わせて投与され得る。
【0129】
コード番号、一般名または商品名により識別される活性物質の構造については、標準総目録The Merck Indexの現行版またはデータベース、例えばPatents International(例えば、IMS World Publications)から入手できる。
【0130】
式(I)で示される化合物と併用され得る上述の化合物は、文献、例えば上記で引用されている文書に記載の要領で製造および投与され得る。
【0131】
式(I)で示される化合物はまた、既知治療方法、例えばホルモン投与または特に放射線療法と組み合わせて有利な形で使用され得る。
【0132】
特に式(I)で示される化合物は、特に、放射線療法に対する感受性が乏しい腫瘍の処置をするための放射線増感剤として使用され得る。
【0133】
「組み合わせ」とは、一用量単位形態での一定の組み合わせ、または併用投与用のパーツのキットをいい、特に組み合わせの成分どうしが協同的、例えば相乗効果、またはその組み合わせを示し得るように、式(I)で示される化合物および組み合わせの相手は同時に独立して、またはある時間間隔内で別々に投与され得る。
【0134】
以下、実施例により本発明を説明するが、その範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0135】
温度は摂氏で測定されている。特記しない限り、反応は室温(RT)で行われる。
TLCにおけるR値は、各物質による移動距離対溶離液先端による移動距離の比を示す。TLCについてのR値は、5×10cmプレート、シリカゲルF254(Merck、ダルムスタッド、ドイツ国)で測定される。溶媒系は実施例において次の通り印を付す:
10%メタノール/90%塩化メチレン
**5%メタノール/95%塩化メチレン
【0136】
特記しない限り、分析的HPLC条件は次の通りである:
カラム:Column Engineering, Inc.、マトリックス、3μm C18 150×4.6mm(ロット#205)、215および254nmでのUV吸収により検出。カラム温度は35℃であり、保持時間(t)は分単位である。流速:1mL/分。
勾配:水(0.1%TFA)/アセトニトリル(0.1%TFA)=1分間98/2〜10分で100%アセトニトリル(0.1%TFA)。2分間100%で留める(総移動時間:13分)
【0137】
【表1】

【0138】
出発物質
アニリンビルディングブロックの一般的合成手順(N−(3−アミノ−4−メチル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミドについて式および抽出物で説明):
【化10】

【0139】
上記の左側に示した化合物、N−(3−アミノ−4−メチル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミドは、(A)RTでメタノール中、ラネー-ニッケルによる対応するニトロ化合物(N−(4−メチル−3−ニトロ−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミド)の水素化により得られる。生成物は、高い収率で得られる。中間体(A)は、RTでトリエチルアミンを用いることにより、塩化メチレン中における4−メチル−3−ニトロ−フェニルアミン(B)および3−トリフルオロメチル−ベンゾイルクロリド(C)の反応により得られる。中間体(A)は良い収率で得られる。類似のおよび異なるアニリン類も以前に報告されている(例えば、CAS第30069−31−9号)。カップリングについては、好ましくは対応する酸塩化物を使用する。
【0140】
逆3−アミノ−ベンズアミド誘導体、3−アミノ−4−メチル−N−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−ベンズアミドおよび3−アミノ−N−(4−メトキシ−3−トリフルオロメチル−フェニル)−4−メチル−ベンズアミドは、対応する市販の出発物質を用いて類似手順に従って合成される。
【0141】
実施例1:5−アミノ−1−(4−メトキシ−フェニル)−1H−ピラゾール−4−カルボン酸[2−メチル−5−(3−トリフルオロメチル−ベンゾイルアミノ)−フェニル]−アミド
5−アミノ−1−(4−メトキシ−フェニル)−1H−ピラゾール−4−カルボン酸(100mg、0.43mmol)、TPTU(140mg、0.47mmol)およびDIEA(184ml、1.07mmol)を、中間体活性化エスエルが完全に形成されるまでRTで撹拌する。次いで、N−(3−アミノ−4−メチル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミド(126mg、0.43mmol)を加え、混合物を3時間90℃に加熱し、水を加えてクエンチングし、酢酸エチルを用いて抽出する。生成物を自動式カラムクロマトグラフィーにより精製し、高度真空ポンプで乾燥することにより、白色固体として標記化合物を得る。HPLC:t=10.57分;MS−ES:(M+H)+=510;TLC:R=0.62。
【0142】
出発物質を次の手順で製造する:
工程1.1:5−アミノ−1−(4−メトキシ−フェニル)−1H−ピラゾール−4−カルボン酸
5−アミノ−1−(4−メトキシ−フェニル)−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アミド(2.0g、8.6mmol)を、18時間8M水酸化ナトリウム溶液30mlおよびエタノール20ml中で還流温度に加熱する。6MのHCl溶液を用いて反応物をpH6に酸性化し、形成された沈殿物を濾過により分離し、真空ポンプで乾燥することにより、標記化合物を得る。HPLC:t=7.29分;MS−ES:(M+H)+=234;TLC:R=0.33。
【0143】
工程1.2:5−アミノ−1−(4−メトキシ−フェニル)−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アミド
5−アミノ−1−(4−メトキシ−フェニル)−1H−ピラゾール−4−カルボニトリル(18.3g、69.8mmol)を、濃硫酸(1680mmol)93mlに、温度を10〜15℃に保つようにゆっくりと加える。完全に加えた後、反応混合物を1時間撹拌する。その後、混合物を氷/水中に注ぎ、pHをpH8に調節する。形成された沈殿物を濾過により分離し、高度真空ポンプで乾燥することにより標記化合物を得る。HPLC:t=6.92分;MS−ES:(M+H)+=233;TLC**:R=0.27。
【0144】
工程1.3:5−アミノ−1−(4−メトキシ−フェニル)−1H−ピラゾール−4−カルボニトリル
エタノール中の4−メトキシ−フェニルヒドラジン塩酸塩(20g、89.5mmol)(Fluka)の懸濁液に、トリエチルアミン(13.1ml、94mmol)を滴下する。反応が発熱性なので、その溶液にエトキシメチレンマロノニトリル(11g、89.5mmol)(Aldrich)を少量ずつ加える。生成した沈殿物を濾過により分離し、エーテルで洗浄し、高度真空ポンプで乾燥することにより標記化合物を得る。HPLC:t=6.07分;MS−ES:(M+H)+=215;TLC**:R=0.52。
【0145】
実施例2:5−アミノ−1−(4−メトキシ−フェニル)−1H−ピラゾール−4−カルボン酸[2−メチル−5−(3−トリフルオロメチル−フェニルカルバモイル)−フェニル]−アミド
実施例1の記載と同じ手順を用いるが、ただし、N−(3−アミノ−4−メチル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミドの代わりに3−アミノ−4−メチル−N−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−ベンズアミドを使用する。生成物を自動式カラムクロマトグラフィーにより単離し、高度真空ポンプで乾燥することにより、白色固体として標記化合物を得る。HPLC:t=10.65分;MS−ES:(M+H)+=510;TLC:R=0.63。
【0146】
実施例3:5−アミノ−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸[2−メチル−5−(3−トリフルオロメチル−ベンゾイルアミノ)−フェニル]−アミド
5−アミノ−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸(80mg、0.57mmol)、EDC−HCl(111mg、0.57mmol;Fluka)およびHOBt(77mg、0.57mmol;Fluka)を、乾燥DMF2ml中で撹拌する。1時間後、出発物質は全く残存していない状態であり、N−(3−アミノ−4−メチル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミド(167mg、0.57mmol)を加える。反応物を90℃で16時間撹拌し、水を加えることによりクエンチングし、酢酸エチルを用いて抽出する。生成物を自動式カラムクロマトグラフィーにより精製し、高度真空ポンプで乾燥することにより、白色固体として標記化合物を得る。HPLC:t=9.22分;MS−ES+:(M+H)+=418;TLC:R=0.38。
【0147】
出発物質を次の手順で製造する:
工程3.1:5−アミノ−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸
5−アミノ−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチルエステル(16.4g、97mmol)を、2M水酸化ナトリウム溶液97mlおよびエタノール100ml中で還流温度に加熱する。完全に鹸化した後、6MのHCl溶液で混合物をpH5に酸性化し、形成された沈殿物を濾過により分離する。生成物を高度真空ポンプで乾燥し、標記化合物を白色固体として分離する。HPLC:t=4.65分;MS−ES+:(M+H)+=142;TLC:R=0.24。
【0148】
工程3.2:5−アミノ−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチルエステル
メチルヒドラジン(7.6ml、0.14mol;Aldrich)を、25mlのエタノールで希釈する。トリエチルアミン(20ml、0.14mol)を加え、混合物を0℃に冷却する。2−シアノ−3−エトキシ−アクリル酸エチルエステル(24.02g、0.14mol;Fluka)を少量ずつ加え、混合物をRTで18時間撹拌する。エタノールを減圧下で除去し、得られた油状物を結晶化する。生成物をジエチルエーテルに懸濁し、濾過により分離する。標記化合物を淡黄色固体として得る。HPLC:t=6.87分;MS−ES+:(M+H)+=170。
【0149】
実施例4:5−アミノ−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸[2−メチル−5−(3−トリフルオロメチル−フェニルカルバモイル)−フェニル]−アミド
実施例3の記載と同じ手順を用いるが、ただし、N−(3−アミノ−4−メチル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミドの代わりに3−アミノ−4−メチル−N−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−ベンズアミドを使用する。生成物を自動式カラムクロマトグラフィーにより単離し、高度真空ポンプで乾燥することにより、白色固体として標記化合物を得る。HPLC:t=9.54分;MS−ES:(M+H)+=418;TLC:R=0.33。
【0150】
実施例5:5−アミノ−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸[5−(4−メトキシ−3−トリフルオロメチル−ベンゾイルアミノ)−2−メチル−フェニル]−アミド
実施例3の記載と同じ手順を用いるが、ただし、N−(3−アミノ−4−メチル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミドの代わりにN−(3−アミノ−4−メチル−フェニル)−4−メトキシ−3−トリフルオロメチル−ベンズアミドを使用する。生成物を自動式カラムクロマトグラフィーにより単離し、高度真空ポンプで乾燥することにより、白色固体として標記化合物を得る。HPLC:t=9.21分;MS−ES:(M+H)+=448;TLC:R=0.34。
【0151】
実施例6:5−アミノ−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸[5−(4−フルオロ−3−トリフルオロメチル−ベンゾイルアミノ)−2−メチル−フェニル]−アミド
実施例3の記載と同じ手順を用いるが、ただし、N−(3−アミノ−4−メチル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミドの代わりにN−(3−アミノ−4−メチル−フェニル)−4−フルオロ−3−トリフルオロメチル−ベンズアミドを使用する。生成物を自動式カラムクロマトグラフィーにより単離し、高度真空ポンプで乾燥することにより、白色固体として標記化合物を得る。HPLC:t=9.45分;MS−ES:(M+H)+=436;TLC:R=0.30。
【0152】
実施例7:5−アミノ−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸[5−(4−メトキシ−3−トリフルオロメチル−フェニルカルバモイル)−2−メチル−フェニル]−アミド
実施例3の記載と同じ手順を用いるが、ただし、N−(3−アミノ−4−メチル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−ベンズアミドの代わりに3−アミノ−N−(4−メトキシ−3−トリフルオロメチル−フェニル)−4−メチル−ベンズアミドを使用する。生成物を自動式カラムクロマトグラフィーにより単離し、高度真空ポンプで乾燥することにより、白色固体として標記化合物を得る。HPLC:t=9.30分;MS−ES:(M+H)+=448;TLC:R=0.32。
【0153】
実施例8:ソフトカプセル剤
それぞれ有効成分として式(I)で示される化合物0.05gを含む5000個のソフトゼラチンカプセル剤を次の要領で製造する:
【表2】

製造工程:微粉化有効成分をラウログリコール(Lauroglykol)(プロピレングリコールラウレート、Gattefosse S.A.、サンプリースト、フランス国)に懸濁し、湿式微粉機で粉砕することにより、約1〜3μmの粒子サイズとする。次いで、カプセル充填機を用いて0.419g分量の混合物をソフトゼラチンカプセルに導入する。
【0154】
実施例9:錠剤
それぞれ有効成分として式(I)で示される化合物100mgを含む錠剤を次の標準手順で製造する:
【表3】

製法:有効成分を担体材料と混合し、打錠機(Korsch EKO、型直径10mm)により圧縮成型する。Avicel(登録商標)は、微晶性セルロースである(FMC、フィラデルフィア、米国)。PVPPXLは、架橋ポリビニルピロリドンである(BASF、ドイツ国)。Aerosil(登録商標)は二酸化ケイ素である(Degussa、ドイツ国)。
【0155】
実施例10:EphB4キナーゼ活性の阻害
上記試験システムを用いることにより、実施例1〜7の化合物を、それらのEphB4キナーゼ阻害能について試験する。特に一般的な記載において与えられた範囲のIC50値(μmol/l)が見出される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離形態または塩形態の、式
【化1】

[式中、
は、C1−7アルキルまたはC1−7アルコキシまたはC1−7アルキルのうちの1個により置換されたフェニルであり、
は、−NH−CO−フェニル(式中、フェニル環は、ハロゲン、C1−7アルコキシまたはトリフルオロメチルから選択される1個または2個の置換基により置換されている)、または
−CO−NH−フェニル(式中、フェニル環は、ハロゲン、C1−7アルコキシまたはトリフルオロメチルから選択される1個または2個の置換基により置換されている)であり、
は、C1−7アルキルまたはハロゲンである]
で示される化合物。
【請求項2】
が、C1−7アルキルまたはC1−7アルコキシにより置換されたフェニルであり、
が、C1−7アルキルである、
請求項1記載の式(I)で示される化合物。
【請求項3】
が、−CHまたはメトキシにより置換されたフェニルであり、
が、−NH−CO−フェニル(式中、フェニル環は、フルオロ、メトキシまたはトリフルオロメチルから選択される1個または2個の置換基により置換されている)、または
−CO−NH−フェニル(式中、フェニル環は、メトキシまたはトリフルオロメチルから選択される1個または2個の置換基により置換されている)であり、
が−CHである、
請求項1または請求項2記載の式(I)で示される化合物。
【請求項4】
5−アミノ−1−(4−メトキシ−フェニル)−1H−ピラゾール−4−カルボン酸[2−メチル−5−(3−トリフルオロメチル−ベンゾイルアミノ)−フェニル]−アミド、
5−アミノ−1−(4−メトキシ−フェニル)−1H−ピラゾール−4−カルボン酸[2−メチル−5−(3−トリフルオロメチル−フェニルカルバモイル)−フェニル]−アミド、
5−アミノ−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸[2−メチル−5−(3−トリフルオロメチル−ベンゾイルアミノ)−フェニル]−アミド、
5−アミノ−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸[2−メチル−5−(3−トリフルオロメチル−フェニルカルバモイル)−フェニル]−アミド、
5−アミノ−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸[5−(4−メトキシ−3−トリフルオロメチル−ベンゾイルアミノ)−2−メチル−フェニル]−アミド、
5−アミノ−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸[5−(4−フルオロ−3−トリフルオロメチル−ベンゾイルアミノ)−2−メチル−フェニル]−アミドおよび
5−アミノ−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸[5−(4−メトキシ−3−トリフルオロメチル−フェニルカルバモイル)−2−メチル−フェニル]−アミド
から成る化合物の群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項記載の遊離形態または医薬上許容される塩形態の式(I)で示される化合物。
【請求項5】
有効成分として請求項1記載の遊離形態または医薬上許容される塩形態の式(I)で示される化合物および医薬用担体または希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項6】
医薬として使用される、請求項1記載の遊離形態または医薬上許容される塩形態の式(I)で示される化合物。
【請求項7】
プロテインキナーゼ調節応答状態、疾患または障害の処置または予防で使用される、請求項1記載の遊離形態または医薬上許容される塩形態の式(I)で示される化合物。
【請求項8】
プロテインキナーゼ調節応答状態、疾患または障害の処置または予防を目的とする医薬としての、請求項1記載の遊離形態または医薬上許容される塩形態の式(I)で示される化合物の使用。
【請求項9】
プロテインキナーゼ調節応答状態、疾患または障害の処置または予防を目的とする医薬の製造における、請求項1記載の遊離形態または医薬上許容される塩形態の式(I)で示される化合物の使用。
【請求項10】
処置または予防を必要とする対象におけるプロテインキナーゼ調節応答状態、疾患または障害の処置または予防方法であって、上記対象に請求項1記載の遊離形態または医薬上許容される塩形態の式(I)で示される化合物の治療有効量を投与することを含む方法。
【請求項11】
請求項1記載の遊離形態または医薬上許容される塩形態の式(I)で示される化合物の治療有効量および第2薬剤物質を含む、同時または連続投与用の組み合わせ。
【請求項12】
請求項1記載の遊離形態または塩形態の式(I)で示される化合物の製造方法であって、式
【化2】

(式中、RおよびRは式(I)で定義の通りである)
で示される出発物質の遊離形態または塩形態と、式
【化3】

(式中、Rは式(I)で定義の通りである)
で示される出発物質の遊離形態または塩形態の間にアミド結合を形成させ、
次いで所望により、生成した化合物の還元、酸化または他の官能化を実施し、所望により存在してもよい保護基(複数も可)を開裂し、式(I)で示される得られる一化合物から式(I)で示される異なる化合物への変換、式(I)で示される得られる化合物の塩から遊離化合物または異なる塩への変換、式(I)で示される得られる遊離化合物からその塩への変換、および/または式(I)で示される化合物の異性体の得られる混合物から個々の異性体への分離を実施してもよく、
次いでそうして得られる式(I)で示される化合物を遊離形態または塩形態で回収する
工程を含む方法。

【公表番号】特表2010−508325(P2010−508325A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535068(P2009−535068)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【国際出願番号】PCT/EP2007/061636
【国際公開番号】WO2008/052974
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】