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プロテインキナーゼCイプシロン(PKC−イプシロン)タンパク質レベルの、アルツハイマー病に特異的な変化
説明

プロテインキナーゼCイプシロン(PKC−イプシロン)タンパク質レベルの、アルツハイマー病に特異的な変化

本発明は、対照対象のPKCイプシロンレベルと比較したヒト患者のPKCイプシロンタンパク質レベルの比の変化を検出することにより、ヒト患者においてアルツハイマー病を診断する方法に関する。本明細書中に開示されているアルツハイマー病に特異的な分子バイオマーカーは、アルツハイマー病の診断およびアルツハイマー病を治療または予防するための化合物を同定するためのスクリーニング法に有用である。本発明はまた、PKCイプシロンタンパク質レベルを上げるための方法であって、1以上のヒト細胞を、無接触のヒト細胞と比較してPKCイプシロンレベルを上げるために効果的な、ある量のPKCアクチベーターと接触させるステップを含む方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その開示全体が本明細書によって参照により本明細書中に組み込まれている、1010年2月22日に出願された米国仮出願シリアル番号第61/306,922号、および2010年7月8日に出願された米国仮出願シリアル番号第61/362,512号、および2010年7月9日に出願された米国仮出願シリアル番号第61/362,893号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、対照対象のPKCイプシロンレベルと比較したヒト患者におけるPKCイプシロンタンパク質レベルの比の変化を検出することにより、ヒト患者においてアルツハイマー病を診断する方法に関する。本明細書中に開示されているアルツハイマー病に特異的な分子バイオマーカーは、アルツハイマー病の診断およびアルツハイマー病を治療または予防するための化合物を同定するためのスクリーニング法に有用である。本発明はまた、PKCイプシロンタンパク質レベルを上げるための方法であって、1以上のヒト細胞を、無接触のヒト細胞と比較してPKCイプシロンレベルを上げるために効果的な、ある量のPKCアクチベーターと接触させるステップを含む方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
認知症の最も多くみられる形態であるアルツハイマー病(AD)は、近時記憶の喪失と共に始まり、脳における2つの主な病理学的特徴:細胞外アミロイド斑および細胞内の神経原線維変化を伴う。これらは通常、シナプシスの顕著な損失を伴う。アミロイド斑は、β−セクレターゼおよびγ−セクレターゼ経路によるアミロイド前駆タンパク質(APP)の切断により生成されるAβペプチドオリゴマーの凝集により形成され、αセクレターゼは、無毒性のシナプス形成性の可溶性APP−αを生成する。蓄積された監察結果により、プロテインキナーゼC(PKC)アイソザイム−αおよび−εは、直接的にAPPのα−セクレターゼ媒介性切断を直接的に活性化し(Slackら、1993年;Kinouchiら、1995;Jolly−TornettaおよびWolf、2000年;Yeonら、2001年、Lanniら、2004年)、および/または細胞外シグナル調節キナーゼのリン酸化を介して間接的に活性化する(ERK1/2)(Devariら、2006年、Alkonら、2007年)ことが示されている。PKCシグナル伝達経路は、ADの神経変性病態生理における重要な事象、例えば、エンドセリン変換酵素(ECE)媒介性のAβの分解などを調節していることも多くの観察結果により示されている(Nelsonら、2009年)。AD−遺伝子組み換えマウスにおけるPKC−εのインビボでの過剰発現は、アミロイド斑を減少させた(Choiら、2006年)。他の研究では、ADに特異的な病理学的異常を、血液、皮膚線維芽細胞および眼組織を含めた脳以外の組織において発見することができるという証拠が提供された(Gurreiroら、2007年、Rayら、2007年)。ADの皮膚線維芽細胞において、例えば、特定のKチャネル(Etcheberrigarayら、1993年;1994年)、PKCアイソザイム(Govoniら、1993年、Favitら、1998年)、Caシグナル伝達(Itoら、1994年)、MAPキナーゼErkl/2リン酸化(Zhaoら、2002年;KhanおよびAlkon、2006年)、およびPP2A(Zhaoら、2003年)の欠陥が発見された。家族性AD患者に関して、皮膚線維芽細胞はAβ分泌の強化を示したが(Citronら、1994年;Johnstonら、1994年)、その一方で、健常なヒト線維芽細胞では、特定のKチャネルのAD特異的な減少が、Aβ1−40により誘発された(Etcheberrigarayら、1993年;1994年)。最近、皮膚線維芽細胞における、病理解剖により確認された内部対照のリン酸化Erk1/2末梢バイオマーカーが、有望な感度および特異性を有することを示した(KhanおよびAlkon、2006年;2010年)。さらなる他の研究は、AD患者の脳の特定領域におけるPKCの欠損を示唆した(Masliahら、1991年)。最後に、PKC−αおよび−εの薬理学的アクチベーターは、ADのすべての病理学的および認知の異常特性から、2つの異なる系統のADマウスを保護することができることも最近実証された(Hongpaisanら、2011年)。これらの観察結果と一致して、PKC−αおよび−εは、AD遺伝子組み換えマウスにおいて顕著に減少していることが判明し、PKC−αおよび−εの薬理学的アクチベーターを用いた治療により正常レベルまで回復した(Hongpaisanら、2011年)。
【0004】
総合的に、これらおよび他の以前の研究は、2つの重要な意味を有する:I.ADは、症候の因果関係が脳機能に限られる全身の病態発現であり、II.PKCアイソザイム、特に−αおよび−εは、シナプシスの損失、Aβおよびアミロイド斑の生成、ならびに神経原線維変化におけるタウのGSK−3β媒介性過リン酸化を含むAD病態の主要な側面の調節において重要な役割を果たしている。これらの理由から、本発明者らは、定常状態レベルで、AD、年齢をマッチさせた対照(AC)およびAD認知症でない(非ADD)患者の皮膚線維芽細胞のPKC−εを分析した。この報告は、可溶性Aβオリゴマーの適用により誘発されるPKC−εならびにこれらのレベルの変化が、末梢組織におけるADのための診断の基礎を提供することができることを明らかにする。
【0005】
アルツハイマー病を診断するため、およびアルツハイマー病の治療および予防に有用な化合物をスクリーニングするための、高度に感受性で高度に特異的な試験に対する必要性が存在する。本発明者らは、これまでに知られている診断用試験と比較して高度に感受性で高度に特異的なアルツハイマー病の診断に有用な、アルツハイマー病に特異的な独自の分子バイオマーカーを初めて同定した。したがって、本明細書中に開示されている独自のアルツハイマー病に特異的な分子バイオマーカーは、アルツハイマー病の検出および診断に対して高度な感受性および特異性を有する診断法の基礎となる。本発明の、アルツハイマー病に特異的な独自の分子バイオマーカーはまた、アルツハイマー病の治療および予防において治療薬として使用することができる化合物を同定するためのスクリーニング法において有用である。本発明者らはまた、ヒト患者においてPKCイプシロンタンパク質レベルを上げるための方法を発見した。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、PKCイプシロンレベルが、年齢をマッチさせた対照(AC)よりも、アルツハイマー病対象(AD)において低いという驚くべき所見に基づく。特定の実施形態において、本発明は、ヒト対象においてアルツハイマー病を診断する方法であって、a)前記ヒト対象のPKCイプシロンレベルを判定するステップと、b)前記ヒト対象のPKCイプシロンレベルを、対照対象のPKCイプシロンレベルと比較するステップとを含み、前記ヒト対象のPKCイプシロンレベルが前記対照対象のPKCイプシロンレベルより低い場合、前記方法は、前記ヒト対象におけるアルツハイマー病を示す方法を対象とする。
【0007】
診断方法の特定の実施形態において、前記PKCイプシロンレベルは、1以上の細胞において測定される。特定の実施形態において前記PKCイプシロンレベルは、PKCイプシロンタンパク質レベルまたはPKCイプシロン活性レベルである。特定の実施形態において、PKCイプシロンレベルは、RT−PCRにより測定される。特定の実施形態において、対照対象は、アルツハイマー病を有さない。特定の実施形態において、本発明の診断方法は、インビトロで行われる。
【0008】
本発明の特定の好ましい実施形態において、前記1以上の細胞は、線維芽細胞、口腔粘膜細胞、神経細胞、または血液細胞である。
【0009】
特定の実施形態において、PKCイプシロンステップのレベルを測定または判定するステップは、放射免疫アッセイ、ウエスタンブロットアッセイ、免疫蛍光アッセイ、酵素免疫アッセイ、免疫沈降法、化学発光アッセイ、免疫組織化学的アッセイ、ドットブロットアッセイおよびスロットブロットアッセイからなる群から選択される方法を含む。
【0010】
特定の実施形態において、前記ヒト対象の前記PKCイプシロンレベルが前記対照対象のPKCイプシロンレベル以上である場合、前記ヒト対象においてアルツハイマー病が存在しないことが示される。
【0011】
特定の好ましい実施形態において、本発明は、ヒト対象においてアルツハイマー病を診断する方法であって、a)ヒト対象から1以上の細胞を得るステップと、b)前記1以上の細胞のPKCイプシロンレベルを判定するステップと、c)ステップ(a)の前記1以上の細胞を、PKCイプシロンアクチベーターである薬剤と接触させるステップと、d)ステップ(c)の前記1以上の細胞のPKCイプシロンレベルを、ステップ(c)における前記接触の後に判定するステップとを含み、ステップ(d)で判定されたPKCイプシロンレベルが、ステップ(b)で判定されたPKCイプシロンレベルより大きい場合、アルツハイマー病が前記ヒト対象において示される方法を対象とする。
【0012】
特定の実施形態において、ステップ(d)で判定された前記PKCイプシロンレベルが、ステップ(b)で判定されたPKCイプシロンレベル以下である場合、前記ヒト対象においてアルツハイマー病が存在しないことが示される。
【0013】
特定の実施形態において、本発明は、ヒト対象におけるアルツハイマー病の進行を判定またはモニターする方法であって、a)前記ヒト対象のPKCイプシロンレベルを判定するステップと、b)前記ヒト対象のPKCイプシロンレベルを、対照対象のPKCイプシロンレベルと比較するステップと、c)ステップ(b)における前記比較に基づいて、前記アルツハイマー病の進行を判定またはモニターするステップとを含む方法を対象とする。
【0014】
特定の実施形態において、時間と共にアルツハイマー病が進行するにつれて、前記ヒト対象のPKCイプシロンレベルは低下する。
【0015】
特定の実施形態において、アルツハイマー病の進行が逆行するにつれて、PKCイプシロンレベルは前記ヒト対象において増加する。
【0016】
特定の好ましい実施形態において、本発明は、細胞のPKCイプシロンタンパク質レベルを上げるための方法であって、1以上のヒト細胞を、無接触のヒト細胞と比較して前記細胞のPKCイプシロンタンパク質レベルを上げるために効果的なある量のPKCアクチベーターと接触させるステップを含む方法を対象とする。
【0017】
特定の実施形態において、前記ヒト細胞は、線維芽細胞、口腔粘膜細胞、神経細胞、または血液細胞である。特定の実施形態において前記PKCアクチベーターは大環状ラクトンである。特定の実施形態において、前記大環状ラクトンはブリオスタチンである。特定の実施形態において、前記ブリオスタチンはブリオスタチン1である。特定の実施形態において、前記PKCイプシロンレベルは、PKCイプシロンタンパク質レベルまたはPKCイプシロン活性レベルである。
【0018】
特定の実施形態において、本発明は、ヒト対象においてアルツハイマー病を診断する方法であって、a)ヒト対象から1以上の細胞を得るステップと、b)前記1以上の細胞のPKCイプシロンレベルを判定するステップと、c)ステップ(a)の前記1以上の細胞をAβペプチドと接触させるステップと、d)ステップ(c)の前記1以上の細胞のPKCイプシロンレベルを、ステップ(c)における前記接触の後に判定するステップとを含み、ステップ(d)で判定されたPKCイプシロンレベルが、ステップ(b)で判定されたPKCイプシロンレベルと有意に異ならない場合、アルツハイマー病が前記ヒト対象において示される方法を対象とする。
【0019】
特定の実施形態において、ステップ(d)で判定された前記PKCイプシロンレベルが、ステップ(b)で判定されたPKCイプシロンレベル未満である場合、前記ヒト対象においてアルツハイマー病が存在しないことが示される。
【0020】
特定の実施形態において、本発明は、PKCイプシロンに特異的な1以上の抗体を含むキットを対象とする。特定の実施形態において前記キットは、PKCアクチベーターを含み得る。特定の実施形態において、前記キットは、PKCイプシロンアクチベーターを含み得る。特定の実施形態において、前記キットは、PKCイプシロンをコードしている遺伝子に特異的な1以上のオリゴヌクレオチドを含み得る。
【0021】
特定の実施形態において、本発明は、PKCイプシロンをコードしている遺伝子に特異的な1以上のオリゴヌクレオチドを含むキットを対象とする。特定の実施形態において、前記キットは、PKCアクチベーターを含み得る。特定の実施形態において、前記キットは、PKCイプシロンアクチベーターを含み得る。
【0022】
特定の実施形態において、本発明は、アルツハイマー病の治療に有用な化合物を同定する方法であって、a)アルツハイマー病対象から1以上の細胞を得ることと、b)前記1以上の細胞のPKCイプシロンレベルを判定することと、c)前記細胞を候補化合物と接触させることと、d)前記接触させるステップ(c)の後に前記1以上の細胞のPKCイプシロンレベルを判定することとを含み、ステップ(d)で判定されたPKCイプシロンレベルが、ステップ(b)で判定されたPKCイプシロンレベルより大きい場合、前記候補化合物がアルツハイマー病の治療に有用な化合物であると同定される方法を対象とする。
【0023】
プロテインキナーゼC(PKC)アイソザイム、特に−αおよび−εは、シナプシスの損失、Aβおよびアミロイド斑の生成、ならびに神経原線維変化におけるタウのGSK−3β媒介性過リン酸化を含む、AD病態の主要な側面の調節において重大な役割を果たしている。AD特異的シグナル伝達の欠損の証拠が、例えば、血液、皮膚線維芽細胞、および眼組織などの末梢組織においてこれまで発見されている。AD皮膚線維芽細胞において、PKC−εは、正確なADバイオマーカーである。
【0024】
特定の実施形態において、PKC−εの基本タンパク質レベルは、AD患者、年齢をマッチさせた対照(AC)の症例、および非AD認知症患者の培養した皮膚線維芽細胞において、ウエスタンブロット法、蛍光抗体法によって、および転写レベルでRT−PCRによって測定することができる。11名のAC、および10名のAD対象が、病理解剖において脳内にアミロイド斑および神経原線維変化が存在する散発性と家族性の両方の症例から選択される(10例のAD症例のうち9例が病理解剖で確認された)。非ADの特徴の遺伝学的徴候を有する8名の遺伝性ハンチントン病(HD)患者、1名のパーキンソン病患者、および1名の前頭側頭型認知症患者を含めることによって、PKC−εの欠如は、AD病態のみによるものであることを確証する。
【0025】
すべてのAD線維芽細胞のPKC−εレベルは、ACおよび非AD認知症の線維芽細胞よりも低いことが見出される。AD(0.501±0.021、A.U.)における平均PKC−εは、βチューブリンに対して正規化した場合、ウエスタンブロット法において、AC(0.857±0.036、A.U.)よりも約40%低く、非AD認知症(1.040±0.288、A.U.)の症例よりも非常に低いことが見出される。同様の変化が、免疫蛍光分析後においても見出される。PKC−εのmRNAレベル(AC:0.904±0.103、AD:0.530±0.061)もまた、AD患者のものより低くなっていることが見出される。オリゴマーAβを皮膚線維芽細胞に適用後、PKC−εレベルは、ACの線維芽細胞では低下しているが、AD患者では低下しておらず、これは、PKC−εに対する病態生理学的Aβの作用を示している。
【0026】
本発明者らは、PKC−εレベルが、健常なACおよび非AD認知症の症例と比較して、培養したADの皮膚線維芽細胞で顕著に低くなっていることを発見している。PKC−εは、診断用の抹消バイオマーカーであり、ADのための治療標的である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1Aおよび1B:年齢をマッチさせた対照(AC)、アルツハイマー病(AD)、および非AD認知症の培養されたヒト線維芽細胞におけるPKC−εの発現。値は、3つの独立した実験の平均値±SEMである。
【0028】
図1A:AC、AD、および非AD認知症線維芽細胞におけるPKC−εおよびβ−チューブリンの免疫反応性。それぞれ、AC1、AC2、およびAC3(AG07714、AG11734およびAG12927)は年齢をマッチさせた対照の線維芽細胞であり、ADl、AD2およびAD3(AG06844、AG04159およびAG08245)はアルツハイマー病の線維芽細胞であり、HD1およびHD2(GM06274、GM04198)はハンチントン病線維芽細胞である。
【0029】
図1B:11のAC、10のAD、8のHD、1つのパーキンソン病(PD)および1つの前頭側頭型認知症(FT)におけるPKC−εとβ−チューブリンとの、正規化した濃度比のグラフによる提示。AC細胞において、比は、0.7〜1.2(Y軸)の間で変化し、非AD認知症において、この比は、0.72〜1.3の間で変化した(2つの例外がHD6およびHD8)が、その一方で、ADにおけるすべての細胞株の比は、0.6以下であった。パネルBの挿入図:AC細胞の平均値は、0.857±0.0361(SEM)であり、非AD認知症の平均値は、1.040±0.288であり、AD細胞の平均値は、0.501±0.021であった。PKC−εは、ADにおいて、AC(p<0.0001)および非AD認知症(p=0.0394)と比較して有意に低かった。AC11(0.6213±0.040)の平均値は、ACの中で最低であった。しかし、すべてのAD症例と比較した場合にもまた有意に異なっていた(P=0.0162)。
【図2】図2Aおよび2B:年齢をマッチさせた対照(AC)およびアルツハイマー病(AD)線維芽細胞の培養されたヒト線維芽細胞におけるPKC−εの免疫蛍光検出。
【0030】
図2A:年齢をマッチさせた対照(AC)、およびアルツハイマー病線維芽細胞(AD)の共焦点顕微鏡像。緑色のチャネル(FITC)は、PKC−εを表し、青色のチャネルは、(DAPI)核染色指標であり、第3のチャネルは、融合した画像を示す。緑色(PKC−εに対する)の平均蛍光強度(MFI)を、5つのACおよびAD線維芽細胞のそれぞれの5つの異なる視野についてすべての細胞から測定する。値は平均値±SEMである。
【0031】
図2B:5つのAC症例(AG07714、AG11734、AG05840、AG06242およびAG12927)および5つのAD症例(AG06844、AG04159、AG06840、AG05770およびAG08245)のPKC−εのMFI(平均値蛍光強度)のグラフによる提示。AC細胞において、MFIは15〜20A.U.の間で変化したが(Y軸)、その一方でADにおいては、領域は、7〜10の間である。ACおよびADにおけるPKC−εの平均強度は、それぞれ18.092±2.087および9.110±1.420であった。
【図3】図3Aおよび3B:PKC−εのRT−PCR分析。
【0032】
図3A:mRNAを3つのAC、3つのADおよび2つのHDの症例から単離した。PKC−ε、およびβ−チューブリンのRT−PCRアンプリコンを、E−Gelで作動し、Fujiゲルスキャナーで撮像した。(ACl、AC2およびAC3:それぞれAG11363、AG09977およびAG12998;AD1、AD2およびAD3:それぞれAG06263、AG10788およびAG08259;HD1およびHD2:それぞれGM02165およびGM04226)。
【0033】
図3B:(a)3つのAC、3つのADおよび2つのHDに対するβ−チューブリンに関するPKCεの正規化数を表しているヒストグラム。値は、3つの独立した実験の平均値±SEMを表す。(b)AD細胞の平均PKC−εmRNAレベルは、AC細胞(AC:0.904±0.103、AD:0.530±0.061およびHD:0.701±0.143)より有意に(p<0.0033)低かった。
【図4】図4A、4Bおよび4C:可溶性Aβオリゴマーは、アルツハイマーのPKC−ε表現型ヒト線維芽細胞を誘発する。
【0034】
図4A:Aβ1−42の、合成したAβオリゴマーのSDS−PAGE分析。レーンM:タンパク質分子量マーカー、レーンoAβ:可溶性Aβオリゴマー。
【0035】
図4B:すべての年齢をマッチさせた対照の皮膚線維芽細胞(5つのADおよび5つのAC症例)において、可溶性Aβオリゴマー(500nM)での処理は、PKC−εを低下させる。PKC−εの正規化した濃度の平均値を5つの異なる細胞株(Aβオリゴマーで処理した皮膚線維芽細胞および未処理の皮膚線維芽細胞)から算出した。いずれの場合も、AC値は、AD平均値を1つの値としてみなして算出した。ACは、Aβ治療後、PKC−ε発現の有意な低下を示した(p値は、それぞれAC1、AC2、AC3、AC4およびAC5に対して、0.0044、0.0035、0.0005、0.0330および0.0253である)が、AD症例は、発現において低下を示さなかった。
【0036】
図4C:Aβオリゴマーでの処理は、ACをAD表現型に変えた。PKC−εレベルは、Aβオリゴマーで処理したACおよびAD細胞において有意な差を示さなかったが、未処理の細胞においてADは、ACと比較して発現が40%減少したことを示した(P=0.0292)。
【図5】PKC−εとAβとの相互作用、アルツハイマー病との関係。AD病態において、より高いβ−、γ−セクレターゼ活性によるAβの過剰生産およびより低いα−セクレターゼ活性は、PKC−εの量を低下させる。他方ではPKC−αおよびPKC−εは、α−セクレターゼ活性を増加させ、PKC−εはまたAβ分解酵素、特にECE(エンドセリン変換酵素)の活性を増加させる。
【図6】本発明による使用に対して予期される分子の構造体(BR−101からBR−118)。
【図7】アルツハイマー病の進行、または認知障害の重症度、または疾患持続時間の関数としての、時間の経過によるPKCイプシロンレベルの減少の概略図。PKCイプシロンレベルは、活性レベル、例えばRT−PCRにより測定される、1以上の細胞のタンパク質レベルまたは転写レベルであってよい。
【図8】ブリオスタチンは、Tg2576マウス(5×FAD)における穿孔した線維中のPKCεの損失を防止する。
【図9】ブリオスタチンを有するおよび有さない穿孔した線維中のPKCε。
【発明の詳細な説明】
【0037】
本明細書で使用する場合、「PKCイプシロンレベル」という用語は、これらに限らないが、以下のうちのいずれか1つ以上を含む:PKCイプシロンの酵素活性、PKCイプシロンタンパク質の量、またはPKCイプシロンをコードしているRNAの量。
【0038】
「脂肪酸」は、およそ4〜30個の炭素を含有する非分枝の脂肪族鎖を有するカルボン酸であり、最も長い鎖の脂肪酸は、10〜24個の炭素を含有する。脂肪酸は、飽和または不飽和であってよい。飽和脂肪酸は、鎖に沿っていかなる二重結合または他の官能基も含有しない。不飽和脂肪酸は、1以上のアルケニル官能基を含有する。すなわち、鎖に沿って二重結合を含有する。「多価不飽和脂肪酸」または「PUFA」という用語は、1より多くの二重結合を含有する脂肪酸を意味する。3種類のPUFAが存在する:オメガ−3PUFA、オメガ−6PUFA、およびオメガ−9PUFAである。オメガ−3PUFAにおいて、第1の二重結合は、鎖内の最後の炭素から3個離れた炭素に見出される(オメガ炭素)。オメガ−6PUFAにおいて、第1の二重結合は、鎖から6個離れた炭素において見出され、オメガ−9PUFAにおいて、第1の二重結合は、オメガ炭素から9個目の炭素である。
【0039】
PUFAはまた、「ポリエン脂肪酸」とも呼ばれる。本明細書で使用する場合、PUFAという用語は、天然に生じた脂肪酸と合成脂肪酸との両方を含む。PUFAの主要な供給源は、海産魚および脂肪種子作物由来の植物油であるが、商業的に開発された植物油において見出されるPUFAは、通常リノール酸およびリノレン酸に限られる(18:3デルタ9,12,15)。
【0040】
「cis−PUFA」は、隣接する炭素原子が、二重結合と同じ側にあるものである。
【0041】
略語X:Yは、Xの炭素原子とYの二重結合とを含有するアシル基を示す。例えば、リノール酸は、18:2に短縮される。
【0042】
「メチレン遮断されたポリエン」とは、単一のメチレン群により互いに分離している2つ以上のcis二重結合を有するPUFAを指す。
【0043】
「非メチレン遮断されたポリエン」または「ポリメチレン遮断された脂肪酸」とは、1つより多いメチレン基により分離された2つ以上のcis二重結合を有するPUFAを指す。
【0044】
「単不飽和脂肪酸」(MUFA)は、脂肪酸鎖内に単一の二重結合を有する脂肪酸であり、鎖内の残りのすべての炭素原子が一重結合されている。例示的MUFAとして、オレイン酸、ミリストレイン酸およびパルミトレイン酸が挙げられる。
【0045】
「cis単不飽和脂肪酸」とは、隣接する水素原子が、二重結合の同じ側にあることを意味する。
【0046】
共役した脂肪酸、例えば、共役したリノール酸(9−シス、11−trans−オクタデカジエン酸)などは、隣接する炭素上の2つの二重結合である共役ジエンを有する。一部の証拠は、共役リノール酸は、抗腫瘍活性を有することを示唆している。
【0047】
例示的PUFAとして、リノレン酸(9,12−オクタデカジエン酸);γ−リノレン酸(GLA;6,9,12−オクタデカトリエン酸);α−リノレン酸(9,12,15−オクタデカトリエン酸);アラキドン酸(5,8,11,14−エイコサテトラエン酸);エイコサペンタン酸(EPA;5,8,11,14,17−エイコサペンタン酸);ドコサペンタエン酸(DPA;7,10,13,16,19−ドコサペンタエン酸);ドコサヘキサエン酸(DHA;4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸);およびステアリドン酸(6,9,12,15−オクタデカトリエン酸)が挙げられる。
【0048】
本明細書で使用する場合、「シクロプロパン」という用語は、環を形成するために互いに連結された3個の炭素原子からなり、各炭素原子が2個の水素原子を保持している、分子式C3H6を有するシクロアルカン分子を指す。
【0049】
「エポキシド」とは、3個の環原子を有する環状鎖エーテルを指す。
【0050】
本明細書で使用する場合、「PUFA誘導体」とは、二重結合のうちの少なくとも1つが、シクロプロパン化またはエポキシ化している、PUFA、またはアルコールまたはそのエステルを指す。
【0051】
本明細書で使用する場合、「MUFA誘導体」とは、二重結合がシクロプロパン化またはエポキシ化している、MUFA、またはアルコールまたはそのエステルを指す。
【0052】
PKCεの「選択的活性化」とは、本発明のPUFA誘導体化合物が、いかなる他のPKCアイソザイムよりも検出可能な程度までPKCεを活性化することを意味する。具体的な実施形態において、PUFA誘導体は、例えば、本明細書中に記載されているPKC活性化アッセイを使用して測定した場合、他のPKCアイソザイムよりも、PKCεを、少なくとも1倍、2倍または5倍活性化する。活性化の際に、プロテインキナーゼC酵素は、RACKタンパク質(活性化されるプロテインキナーゼCタンパク質に対する膜結合受容体)により原形質膜へと移動する。一般的に、活性化の際に、プロテインキナーゼC酵素は、RACKタンパク質により原形質膜へと移動する。PKC活性化の他の兆しとして、ホスファチジルイノシトール−トリスリン酸依存性キナーゼ(PDKl)による特定のC末端セリン/トレオニン残基でのリン酸化が挙げられ、PKCファミリーの各酵素においてよく保存された配列の少なくとも2つの追加のリン酸化および/または自己リン酸化が起こる。PKCの活性化は、SunおよびAlkon、Recent Patents CNS Drug Discov.2006年;1(2):147〜56頁において記載されている。
【0053】
「神経変性」とは、神経細胞死を含めた、神経細胞の構造または機能の進行性の損失を指す。
【0054】
本発明の目的のため、「神経系疾患」とは、APPのβ−アミロイド形成過程を伴う任意の中枢神経系(CNS)または末梢神経系(PNS)疾患を指す。これは、これらだけには限らないが、神経細胞の損失、神経細胞の変性、神経細胞の脱髄、グリオーシス(すなわち、アストログリオーシス)、または異常なタンパク質または毒素(例えばAβ)の神経細胞または神経細胞以外での蓄積を含めた、神経細胞またはグリア細胞の欠陥を結果として生じ得る。
【0055】
1つの例示的神経系疾患はアルツハイマー病(AD)である。別の例示的神経系疾患は、脳アミロイド血管症とも呼ばれる、コンゴーレッド親和性血管障害(CAA)である。
【0056】
「アルツハイマー病」または「AD」という用語は、Aβ堆積が中枢神経系の細胞内に最終的に蓄積することになるあらゆる状態を指す。1つの、非限定的実施形態では、Aβ、特にAβ1−42ペプチドは、APPのβ−アミロイド形成の代謝から形成される。ADは、家族性の発現において遺伝性であるか、または散発性であることもある。本明細書中では、ADには、表現型の発現に基づき、家族性、散発性、ならびにその中間およびサブグループが含まれる。
【0057】
別の神経系疾患は、ダウン症候群(DS)である。DSを有する対象は、ADの特徴的病変である大脳アミロイド(Aβ)プラークおよび神経原線維変化(NFT)を常に発症する(30代または40代に)。最近の研究は、Aβ42は、ダウン症候群の脳内に堆積されたこのタンパク質の最も早期の形態であり、12才の若い年齢の対象に見ることができ、可溶性Aβは、Aβプラークの形成よりもずっと前に、つまり妊娠第21週には早くもDS対象の脳内で検出することができることを示された。Gyureら、Archives of Pathology and Laboratory Medicine.2000年;125巻:.489〜92頁。
【0058】
本明細書で使用する場合、「対象」という用語は、哺乳動物を含む。
【0059】
「薬学的に許容される」という句は、生理学的に許容され、対象に投与された場合に有害な反応物を通常産生しない分子的実体および組成物を指す。好ましくは、本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される」という用語は、連邦または州政府の監督官庁により認可されている、または動物、より特定するとヒトにおける使用に対して米国薬局方または他の一般的に認められた薬局方に列挙されていることを意味する。「薬学的に許容される担体」という用語は、有効成分と併用することができ、併用に続いて、これを使用して有効成分を対象に投与することができ、化合物が共に投与される希釈剤、補助剤、賦形剤、またはビヒクルを指し得る化学組成物を意味する。
【0060】
「治療有効量」および「有効量」という用語は、測定可能な治療反応を生じることになる治療薬の量を指す。治療反応は、ユーザー(例えば、臨床医)が、療法に効果的な反応として認めたあらゆる反応であり、症状の改善および代理の臨床上のマーカーを含めたものであってよい。したがって、治療反応とは一般的に、疾患または状態、例えば、ADの1以上の症状の回復または阻害である。測定可能な治療反応には、治療薬によって、症状または疾患が予防され、または発症が遅延され、またはさもなければ弱毒化するという所見も含まれる。
【0061】
「およそ」および「約」という用語は、測定の性質または精密さを前提として、測定した量に対する許容可能な程度の誤差を一般的に意味するものとする。典型的な、例示的な程度の誤差は、所与の値または値の領域の20パーセント(%)内、好ましくは10%内、より好ましくは5%内である。あるいは、および特に生体系において、「およそ」および「約」という用語は、桁内であり、所与の値の好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内の値を意味し得る。本明細書中に与えられている数値的な量はおおよそであり、別途述べられていない限り、明示により述べられていない場合、「およそ」または「約」という用語は、推測することができることを意味する。
【0062】
PKC−εレベルは、AD線維芽細胞においてより低い
この研究集団において、本発明者らは、PKC−εが、散発性と家族性の両方の症例において機能不全であり、AD病理学的なシグナル伝達の特徴であることを試験するため、ADの6つの散発性(後期発症型、家族歴なし)および4つの家族性の(早期発症型)症例を含めた。10のAD細胞株、11の年齢AC細胞株および10の非AD認知症線維芽細胞の免疫ブロット分析により、AD試料におけるPKC−εレベルは、ACと比較して約40%低いことが明らかになった(図1)。PKC−εとβ−チューブリンとの平均の正規化比は、AC症例(n=11)において0.857±0.036(SEM)であり、非AD認知症(n=10)において1.040±0.288であり、AD細胞(n=10)において0.501±0.021であった。PKC−εレベルは、AC症例と比較して、AD線維芽細胞(p<O.0001)において有意に低かった。ACの11の症例(0.6213±0.040)に対する平均のPKC−ε基本レベルは、すべてのACの中で最低であった(図1B)。しかし、ACの11のPKC−ε基本レベルはまた、すべてのAD症例と別々に比較した場合、統計学的に有意であった(P=0.0162)。
【0063】
ウエスタンブロット法分析のデータは、ACとAD細胞との間での、FITCタグしたPKC−εの強度における明確な差を実証した着色した線維芽細胞の免疫蛍光分析により支持された(図2)。ACおよびAD細胞におけるPKC−εの平均強度は、それぞれ18.092±2.087および9.110±1.420であった。転写レベルでの機能不全のPKC−εを試験するため、RT−PCR実験を行った。3つのAD、3つのACおよび2つのHD細胞株の平均mRNAレベルを測定した(図3)。すべてのPKC−εのmRNAレベルを対応する細胞株のβ−チューブリンmRNAレベルで正規化した。AD細胞の平均の正規化mRNAレベルは、ACおよびHD細胞より有意に低かった(p<0.003)(AC:0.904±0.103、AD:0.530±0.061およびHD:0.701±0.143)(図3)。
【0064】
オリゴマーAβを用いた皮膚線維芽細胞の処理
以前に記載した方法により合成したオリゴマーAβは、100kDaを超えるサイズの分子量を有する高分子量オリゴマーを生産した(図4A)。これらオリゴマーは、極めて有毒であり、AD脳内で発見されたものと類似であることが報告された(Nouguchiら、2009年)。ADの病態生理学的関連性を確証するため、外部からの毒素性オリゴマーAβ1−42を正常な線維芽細胞(AC)に添加し、PKC−ε発現レベルに対する衝撃を基本的状態で評価した。オリゴマーAβでの処理後、PKC−εレベルは、AC症例において低下したことがわかったが、AD症例は統計的差を示さなかった。5つの異なるACおよびAD患者の3つの独立した実験の中間値の平均を、オリゴマーAβ処理に続いて算出し、未治療の細胞と比較した。未治療のACおよびAD細胞は、これらの中で約40%の差を示したが、治療したACおよびAD細胞は、PKC−εの発現において差を実証しないか、またはAD症例についてはAβ治療後により高いこともあった。
【0065】
本発明は、特定の態様において、試験および診断に対して特定された対象から採取したヒト細胞においてアルツハイマー病を診断する方法に関する。診断は、独自のアルツハイマー病に特異的な分子バイオマーカーの発見に基づく。特定の態様において、本発明は、アルツハイマー病の進行をモニターする方法およびアルツハイマー病を治療または予防するためのリード化合物の同定のためのスクリーニング法を対象とする。
【0066】
生存しているヒトの脳内の神経細胞に直接アクセスすることは不可能なので、アルツハイマー病の初期診断は極度に困難である。本明細書中に開示されている、アルツハイマー病に特異的な分子バイオマーカーを測定することによって、本発明は、アルツハイマー病の初期診断のための高度な実用性、高度な特異性、および高度な選択性のある試験を提供する。さらに、本明細書中に記載されている、アルツハイマー病に特異的な分子バイオマーカーは、病気の進行を追跡するための、およびアルツハイマー病の治療および予防を標的とする創薬のために治療薬を特定するための基礎を提供する。
【0067】
本発明者らは、アルツハイマー病の診断に対して高度に感受性で高度に特異的な診断用アッセイにおいて有用な末梢(非CNS)組織を使用して、アルツハイマー病のための独自の分子バイオマーカーを発見した。本発明の大きな利点は、最小の侵襲性処置を使用して、すなわち脊椎穿刺を使用することなく、本明細書中に開示されているアッセイおよび方法で使用する組織を対象から得られることである。したがって、本発明の一態様は、アルツハイマー病の早期検出のためのアッセイまたは試験を対象とする。
【0068】
一実施形態において本発明は、アルツハイマー病の治療または予防に有用な試験化合物(またはリード化合物)をスクリーニングするための方法であって、インビトロアッセイを含む方法を対象とする。
【0069】
本発明のさらなる実施形態では、プロテインキナーゼCアクチベーターは、ブラジキニン、ブリオスタチン、ボンベシン、コレシストキニン、トロンビン、プロスタグランジンF2アルファおよびバソプレッシンからなる群から選択される。本発明さらなる実施形態において、細胞は末梢細胞である。本発明のまたさらなる実施形態において、末梢細胞は、皮膚細胞、皮膚線維芽細胞、血液細胞および口腔の粘膜細胞からなる群から選択される。本発明のまたさらなる実施形態において、細胞は、脳脊髄液から単離しない。本発明のまたさらなる実施形態において、細胞は、脳脊髄液を含まない。本発明のまたさらなる実施形態において、細胞は、脊椎穿刺または腰椎穿刺により取得しない。本発明のまたさらなる実施形態において、プロテインキナーゼCアクチベーターを、血清を含む培地内の前記細胞と接触させる。本発明のまたさらなる実施形態において、プロテインキナーゼCアクチベーターを、血清を含まない培地内の前記細胞と接触させる。本発明のまたさらなる実施形態において、PKCイプシロンタンパク質は、免疫アッセイによって検出される。本発明のまたさらなる実施形態において、免疫アッセイは、放射免疫アッセイ、ウエスタンブロットアッセイ、免疫蛍光アッセイ、酵素免疫アッセイ、免疫沈降アッセイ、化学発光アッセイ、免疫組織化学的アッセイ、免疫電気泳動アッセイ、ドットブロットアッセイ、またはスロットブロットアッセイである。本発明のまたさらなる実施形態において、測定は、タンパク質アレイ、ペプチドアレイ、またはタンパク質マイクロアレイを使用して行われる。
【0070】
本発明のさらなる実施形態において、PKCアクチベーターまたは医薬組成物は、以下からなる群から選択される以下の化合物のいずれかを含む:DCP−LA;DCPLAメチルエステル、DHA−CP6メチルエステル(BR−111);EPA−CP5メチルエステル(BR−114);AA−CP4メチルエステル(BR−115);DHA−CP6;EPA−CP5;AA−CP4;シクロプロパン化リノレニルアルコール(BR−104);シクロプロパン化リノレイックアルコール(BR−105);シクロプロパン化エライジックアルコール(BR−106);シクロプロパン化エライジン酸(BR−107);シクロプロパン化オレイルアルコール(BR−108);シクロプロパン化ベルノール酸メチルエステル(BR−109);シクロプロパン化リノレン酸(BR−118);シクロプロパン化エライジン酸メチルエステル;シクロプロパン化ベルノール酸;シクロプロパン化リノレン酸メチルエステル;
8−(2((2−ペンチルシクロプロピル)メチル)シクロプロピル)オクタン酸(DCP−LA);
メチル3−(2−((2−((2−((2−((2−((2−エチルシクロプロピル)メチル)シクロプロピル)メチル)シクロプロピル)メチル)−シクロプロピル)メチル)シクロプロピル)メチル)シクロプロピル)プロパノエート
メチル3−(2−((2−((2−((2−((2−((2−エチルシクロプロピル)メチル)シクロプロピル)メチル)シクロプロピル)メチル)−シクロプロピル)メチル)シクロプロピル)メチル)シクロプロピル)プロパノエート(DHA−CP6メチルエステル)
メチル4−(2−((2−((2−((2−((2−エチルシクロプロピル)メチル)シクロプロピル)メチル)シクロプロピル)−メチル)シクロプロピル)メチル)シクロプロピル)ブタノエート
メチル4−(2−((2−((2−((2−((2−エチルシクロプロピル)メチル)シクロプロピル)メチル)シクロプロピル)−メチル)シクロプロピル)メチル)シクロプロピル)ブタノエート(EPA−CP5メチルエステル)
メチル4−(2−((2−((2−((2−ペンチルシクロプロピル)メチル)シクロプロピル)メチル)−シクロプロピル)メチル)シクロプロピル)ブタノエート
メチル4−(2−((2−((2−((2−ペンチルシクロプロピル)メチル)シクロプロピル)メチル)−シクロプロピル)メチル)シクロプロピル)ブタノエート(AA−CP4メチルエステル)
本発明の方法において、個体または患者から採取する細胞は、任意の生細胞であってよい。好ましくは、これらの細胞は皮膚線維芽細胞であるが、任意の他の末梢組織細胞(すなわち中枢神経系の外側)も、このような細胞が入手または処理するのにより便利である場合には、本発明の試験において使用することができる。他の適切な細胞として、これらに限らないが、血液細胞、例えば、赤血球およびリンパ球など、口腔粘膜細胞、神経細胞、例えば、嗅覚神経細胞など、脳脊髄液、尿および任意の他の末梢細胞の種類が挙げられる。加えて、比較目的のために使用される細胞は、必ずしも健常な提供者からものでなくてもよい。
【0071】
細胞は、得たばかりの状態のものでも、または培養されたものであってよい(その全体が本明細書中に参照により組み込まれている米国特許第6,107,050号を参照)。具体的な実施形態では、パンチ皮膚生検を使用して、対象から皮膚線維芽細胞を得ることができる。これらの線維芽細胞は、本明細書中に記載されている技法を使用して直接分析するか、または細胞培養条件下に導入する。次いで、生成した培養線維芽細胞は、実施例および明細書全体を通して記載されているように分析する。分析に使用し得る他の種類の細胞、例えば口腔粘膜細胞、嗅覚細胞などの神経細胞、赤血球およびリンパ球などの血液細胞などを準備するための他のステップが必要となることもある。例えば、血液細胞は、末梢静脈から血液を取り出すことで容易に得ることができる。次いで細胞を、標準的な手順(例えばセルソータ、遠心分離などを使用)により分離し、後で分析することができる。
【0072】
したがって、本発明は、特定の態様において、対象におけるアルツハイマー病の診断および治療のための方法に関する。本発明はまた、特定の実施形態において、アルツハイマー病の検出または診断に有用な試薬を含有するキットを対象とする。特定の態様において、本発明は、アルツハイマー病を治療するのに有用なリード化合物を同定するためのスクリーニングのための方法ならびにそれを必要とする対象においてアルツハイマー病を治療または予防するために、医薬製剤内においてこれらの化合物またはリード化合物の化学的誘導体を使用する方法を対象とする。
【0073】
診断法、診断用キットおよび本発明の化合物を同定するためのスクリーニング法において使用することを特異的に想定したプロテインキナーゼCアクチベーターとして、これらに限らないが、以下が挙げられる:ブラジキニン;ε−ΑΡΡモジュレーター;ブリオスタチン1;ブリオスタチン2;DHI;1,2−ジオクタノイル−sn−グリセロール;FTT;グニジマクリン、ステレラ・カマエヤスメ(Stellera chamaejasme)L.;(−)−インドラクタムV;リポキシンA4;リングビアトキシンA、ミクロモノスポラ属;オレイン酸;l−オレオイル−2−アセチル−sn−グリセロール;4α−ホルボール;ホルボール−12,13−ジブチレート;ホルボール−12,13−ジデカノエート;4α−ホルボール−12,13−ジデカノエート;ホルボール−12−ミリスチン酸−13−アセテート;L−α−ホスファチジルイノシトール−3,4−ビスホスフェート、ジパルミトイル−、ペンタアンモニウム塩;L−α−ホスファチジルイノシトール−4,5−ビスホスフェート、ジパルミトイル−、ペンタアンモニウム塩;L−α−ホスファチジルイノシトール−3,4,5−トリスリン酸、ジパルミトイル−、ヘプタアンモニウム塩;1−ステアロイル−2−アラキドノイル−sn−グリセロール;チメレアトキシン、チメレア・ヒルスタ(Thymelea hirsuta)L.;インスリン、ホルボールエステル、リゾホスファチジルコリン、リポ多糖、アントラサイクリンダウノルビシンおよび硫酸バナジル。同様に含まれているのは、「ブリオログ」として知られている化合物である。ブリオログは、例えば、Wenderら、Organic letters(United States)2005年5月12日、7巻(10)l995〜8頁;Wenderら、Organic letters(United States)2005年3月17日、7巻(6)1177〜80頁;Wenderら、Journal of Medicinal Chemistry(United States)2004年12月16日、47巻(26)6638〜44頁に記載されている。プロテインキナーゼCアクチベーターは、本明細書中に開示されている診断法、キットおよび化合物のスクリーニング法において、単独でまたは任意の他のプロテインキナーゼCアクチベーターと併用して使用することができる。
【0074】
ブラジキニンは、様々な炎症状態の過程で生成する強力な血管作用性ノナペプチドである。ブラジキニンは、特定の細胞膜ブラジキニン受容体(複数可)に結合し、これを活性化し、よって細胞内事象のカスケードを引き起こし、「マイトジェン活性化されたタンパク質キナーゼ」(MAPK)として知られているタンパク質のリン酸化を引き起こす。タンパク質のリン酸化、すなわちSer、Thr、またはTyr残基へのホスフェート基の付加は、タンパク質キナーゼとして総合的に知られた多数の酵素により媒介される。リン酸化は、通常タンパク質の機能を修正し、普通タンパク質を活性化する。ホメオスタシスは、リン酸化は一時的な処理であることを必要とし、これは基質を脱リン酸化するホスファターゼ酵素により逆転される。リン酸化または脱リン酸化において任意の逸脱があることで、生化学的経路および細胞機能が崩壊し得る。
【0075】
タンパク質の検出のための本発明の免疫アッセイは、免疫蛍光アッセイ、放射免疫アッセイ、ウエスタンブロットアッセイ、酵素免疫アッセイ、免疫沈降法、化学発光アッセイ、免疫組織化学的アッセイ、ドットまたはスロットブロットアッセイなどであってよい。(「Principles and Practice of Immunoassay」(1991年)Christopher P.Price and David J.Neoman編、Stockton Press、New York、New York、Ausubelら編(1987年)「Current Protocols in Molecular Biology」John Wiley and Sons、New York、New York)。検出は、当業者に知られている比色分析法または放射能法または任意の他の従来の方法であってよい。ELISAに関した当技術分野で知られている標準的な技法は、Methods in Immunodiagnosis、第2版、Rose and Bigazzi編、John Wiley and Sons、New York1980年およびCampbellら、Methods of Immunology、W.A.Benjamin、Inc.、1964年、に記載されており、これら両方ともが本明細書に参照により組み込まれている。このようなアッセイは、当技術分野で記載されているような直接的、間接的、競合的、または非競合的免疫アッセイであってよい(「Principles and Practice of Immunoassay」(1991年)Christopher P.Price and David J.Neoman編、StocktonPres、NY、NY;Oellirich、M.、1984年;J.Clin.Chem.Clin.Biochem.22:895〜904頁、Ausubelら編、1987年、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley and Sons、New York、New York。
【0076】
これまでに述べたように、診断が行われている患者から採取した細胞は、任意の細胞であってよい。使用することができる細胞の例として、これらに限らないが、皮膚細胞、皮膚線維芽細胞、口腔粘膜細胞、血液細胞、例えば、赤血球、リンパ球およびリンパ芽細胞など、ならびに神経細胞およびPKCイプシロンタンパク質を発現する任意の他の細胞が挙げられる。剖検試料および病態試料も使用することができる。脳組織または脳細胞を含めたこれらの細胞を含む組織もまた使用することができる。細胞は、得たばかりの状態のもの、培養されたものまたは凍結したものであってよい。細胞または組織から単離したタンパク質試料は、診断用アッセイまたは化合物をスクリーニングするための方法で即時に使用することができるか、または後で使用するため凍結することができる。好ましい実施形態において線維芽細胞が使用される。線維芽細胞は、パンチ皮膚生検により得ることができる。
【0077】
タンパク質は、当業者に知られている従来の方法により細胞から単離することができる。好ましい方法において、患者から単離した細胞を洗浄し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中でペレットにする。次いでペレットを50nMのNaF、1mMのEDTA、1mMのEGTA、20μg/mlのロイペプチン、50μg/mlのペプスタチン、10mMのTRIS−HCl、pH=7.4を含む「均質化緩衝液」で洗浄し、遠心分離でペレットにする。上清を廃棄し、「均質化緩衝液」をペレットに添加し、続いてペレットを超音波処理する。このタンパク質抽出物は、得たばかりの状態で使用することもでき、または後で分析するために−80℃で保存することもできる。
【0078】
本発明の方法において、開示した免疫アッセイで使用される抗体は、モノクローナルまたはポリクローナル起源であってよい。抗体を生成するために使用された、全部のPKCイプシロンタンパク質またはその一部分は、天然のまたは組換え供給源からのもの、または化学合成で生成したものであってよい。天然のErk1/2タンパク質は、従来の方法で生体試料から単離することができる。PKCイプシロンタンパク質を単離するために使用することができる生体試料の例として、これらに限らないが、皮膚細胞、例えば、線維芽細胞、線維芽細胞の細胞株、例えばアルツハイマー病線維芽細胞の細胞株および対照線維芽細胞の細胞株が挙げられ、これらは、Coriell Cell Repositories、Camden、N.J.を介して市販されており、National Institute of Aging 1991年の細胞株カタログ、National Institute of General Medical Sciences 1992/1993年、細胞株カタログ[(NIH公開92−2011(1992年)]に列挙されている。
【0079】
本発明はまた、アルツハイマー病の治療または予防に有用な物質をスクリーニングし、同定する方法を対象とする。本実施形態によると、本明細書中に記載されているアルツハイマー病に特異的な分子バイオマーカーを逆行させるまたは向上させる(すなわち正常細胞において見出されるレベルに戻す)物質は、アルツハイマー病の治療または予防に対して潜在的に有用な物質として同定および選択される。
【0080】
例として、治療物質を同定するためのスクリーニングの、1つのこのような方法は、アルツハイマー病の患者の試料細胞を、本明細書中に開示されているプロテインキナーゼCアクチベーターのいずれかの存在下で、スクリーニングされている物質と接触させ、次いで本明細書中に開示されているアルツハイマー病に特異的な分子バイオマーカーのいずれかを測定するステップを含む。アルツハイマー病に特異的な分子バイオマーカーを逆行または向上させて、正常細胞に見出されるレベルに戻す(すなわち、アルツハイマー病を有さない対象から摂取した細胞)薬剤は、アルツハイマー病の治療または予防に対して潜在的に有用な物質として同定および選択される。
【0081】
本発明はまた、アルツハイマー病の治療または予防に有用な組成物を対象とする。本明細書中に記載されているスクリーニング法を使用して同定された化合物は、それを必要とする対象への投与のための医薬組成物として製剤化することができる。
【0082】
本発明の医薬組成物または本明細書中に開示されているスクリーニング法を使用して同定された化合物(またはリード化合物の化学的誘導体)は、経口、皮下、経皮、皮膚を通したまたは非経口(例えば、局所的、直腸または静脈内)投与のための、例えば、錠剤(糖コーティング錠および膜コーティング錠を含めて)、散剤、粒剤、カプセル剤(軟カプセル剤を含む)、液剤、注射剤、坐剤、持続放出薬剤などの医薬組成物を与えるための既知の方法により、例えば薬理学的に許容される担体と混和することにより安全に投与することができる。
【0083】
本発明の医薬組成物内での使用のための薬理学的に許容される担体の例として、これらに限らないが、様々な従来からの有機または無機の担体が挙げられ、これには、固体製剤用の賦形剤、滑沢剤、結合剤および崩壊剤、ならびに液体製剤用の溶媒、可溶化剤、懸濁剤、等張剤、緩衝液、緩和剤などが含まれる。必要な場合、従来の添加剤、例えば、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、吸収剤、湿潤剤などを適切な量で適切に使用することができる。
【0084】
PKCシグナル伝達欠損は、ADの病態を引き起こす主要な要素の1つであることを増々多くの証拠が示唆している(Alkonら、2007年、Lironら、2007年、Choiら、2006年)。AD患者の脳内でPKCアイソザイムの分布が変化することは以前の知見により実証されている(Shimohamaら、1993年、Masliahら、1990年)。PKC−α、PKC−γおよびPKC−βは、AD脳内でより低いことが判明した。Matsushimaらの1996年の報告では、PKC−δおよびPKC−ξレベルは変化しなかったにもかかわらず、AD脳内のPKC−εレベルは、サイトゾル部分と膜質部分の両方において減少したことが判明し、これは、Ca2+に依存しないPKCアイソザイムの中で、PKC−εの変化はAD脳内において特異的事象であり、AD病態生理において重大な役割を有することを示唆した。APPのα−セクレターゼ媒介性切断を活性化する主要な手段は、PKCアイソザイム−αおよび−εまたは間接的にPKC媒介性ERK1/2またはこれら両方を介して成し遂げられた(Alkonら、2006年;Skovronskyら、2000年;Diaz−Rodrigezら、2002年;RobinsonおよびCobb、1997年)。散発性ADに対する最も大きなリスクファクターは年齢であり、これは、脳内のPKCアイソザイムの特異的分布、移動障害、およびPKCアンカリングタンパク質RACK1(活性化したプロテインキナーゼCの受容体)レベルの減少を伴う(Battaniら、1997年)。
【0085】
ADに関連したPKC−εシグナル伝達欠損:アミロイド仮説によると、ADは、β−およびγ−セクレターゼ経路により生成されたアミロイド斑を形成するAβペプチドの凝集および蓄積により、引き起こされる。ヒト皮膚線維芽細胞を用いた研究は、AD患者と、年齢をマッチさせた対照との間でのPKCアイソザイム機能の異常性を記録した(VanHuynhら、1989年、Etcheberrugarayら、1993年、Govoniら、1993年、Favitら、1998年)。しかし、これまではAD患者の末梢組織、例えば血液細胞または皮膚線維芽細胞などにおけるPKC−εレベルの低下を示す証拠が存在しなかった。より低くなったPKC−εの基本レベルがAD特異性であるかどうかを調べるため、病理解剖で脳内にアミロイド斑および神経原線維変化が存在する、散発性と家族性ADの両方の症例からAD患者を選択し、また2つの異なるセットの非AD認知症対照、例えば:(i)8つの遺伝性ハンチントン病(HD)患者の線維芽細胞:非AD特徴の強力な証拠を有し、遺伝子によりHDが識別されたものと、(ii)1つのパーキンソン病および1つの前頭側頭型認知症患者の線維芽細胞とを比較した。したがって、PKC−ε欠損は、他の非AD認知症病態を伴わなかった。PKC−εの基本レベルはまた、年齢と共に低下し得る。しかし、この研究は、11のAC(年齢をマッチさせた対照)が、有意により高いPKC−εレベルを有することを明らかに実証した。したがって、AD皮膚線維芽細胞においてより低くなったPKC−εの基本レベルは、アルツハイマー型の病態によるもので、加齢それ自体によるものではない。
【0086】
ADは、複数の病理学的欠損を含む疾患であり、PKCは、細胞生存、分化、および調節の主要な機構制御因子の1つである。PKCの中でも、PKC−εは、シナプス形成を制御する。PKC−εはまた、コレステロール除去の間の低密度受容体の転写を誘発すると報告され(Mehtaら、2002年)、LDL受容体はAβの輸送および排除においてある役割を果たすと示唆された。他の研究において、PKCεアクチベーターは、ラットの空間迷路学習において、学習および記憶ならびに構造特異的なシナプス変化を強化することが示された(HongpaisanおよびAlkon、2007年)。したがって、患者におけるPKC−ε総量の減少が、ADにおける記憶損失を引き起こす可能性があった。さらに、PKC−εのmRNA転写レベルもまたAD患者の試料においてより低かった。
【0087】
ADにおけるPKC−εの病態生理学的関連性:PKC−αが、Aβ治療により分解され(Favitら、1998年)、ホルボールエステル治療により、AβがB103細胞内のPKC−αおよびPKC−εの膜移動を変化させることがこれまでに示された(Lanniら、2004年)。PKC−εの過剰発現は、遺伝子組み換えマウスにおいてAβレベルを減少させたことも示された(Choiら、2006年;Hongpaisanら、2011年)。100kDaを超える分子量のAβオリゴマーは、ラットの初代神経細胞に極めて有毒であることが判明した(Noguchiら、2009年;Hoshiら、2003年)。これら合成オリゴマーに対する抗体は、AD患者の脳の未処置のアミロスフェロイドを認識し(Noguchiら、2009年)、それ故これらオリゴマーは、疾患に対して病理学的に大きな意義がある。本発明者らは、これら極めて有毒なオリゴマー(>100kDa)は、AC線維芽細胞のPKC−εレベルに影響を及ぼし、これをAD表現型に変えたことを実証した(図4B)。これらオリゴマーでAC細胞を処理することで、PKC−εの発現レベルを減少させたが、AD細胞には影響を及ぼさなかった。処理した細胞における正規化されたPKC−εのAC−AD比は、約1であることが判明したが、未処理の細胞では1.4(図4C)であった。
【0088】
AD病態において、より高いβ−,γ−セクレターゼ活性およびより低いα−セクレターゼ活性によるAβの過剰生産は、PKC−ε量を低下させる結果となり得るが、他方ではPKC−αおよびPKC−εは、α−セクレターゼ活性を増加させ、ならびにPKC−εは、Aβ分解酵素の活性を増加させる。PKC−εレベルは、ACおよび非AD認知症と比較して、AD線維芽細胞において有意に低いことが判明しているので、したがって、PKC−εシグナル伝達のAD関連の機能不全および皮膚線維芽細胞におけるPKC−εの基本量の低下は、ADに対するバイオマーカーとしての末梢性PKC−ε、および治療的候補としてのPKC−εアクチベーターの可能性を支持している。異なる形態の有毒なAβオリゴマーは、Aβを分解するエンドセリン変換酵素(ECE)の調整に関与している細胞中のPKC−εレベルに影響を及ぼす可能性がある。これらのタンパク質は、Aβ排除において重要な役割を果たす。したがって、β−,γ−セクレターゼ活性の上昇によるAβの異常な蓄積がPKC−εの低下を引き起こし、次いでこれがフィードバックループ(図5)に参加することで、さらなるAβの高まりおよびシナプスの損失を引き起こすというのが当然の仮説である。
【0089】
AD線維芽細胞および末梢バイオマーカーにおけるPKC−εの欠如:ADの診断に対する判断基準は、神経病理パラメータの死後解剖分析であるが、様々な実験室は、末梢組織を使用して効果的な診断を発見しようとしており、この診断には、非侵襲性、容易に入手可能なこと、低コストおよび最も重要なことに疾患の早期検出などの利点がある。本明細書中に開示されている知見は、PKCシグナル伝達欠損は大部分のAD要素より後で生じることを示している。高齢の動物において、PKC機能は、脳内PKCアイソザイムの年齢特異的な分布、移動の減少およびRACK1タンパク質レベルの減少(Battaniら、1997年)と共に落ち、年齢は散発性ADの症例において最も重要なリスクファクターである。PKC−εの過剰発現は、AD遺伝子組み換えマウスのAβレベルを減少させることが示されている(Choiら、2006年)。本発明者らは、驚くことに、PKC−εがAD患者の末梢細胞において欠如していることを示した。
【表1】

【0090】
PKCイプシロンのアクチベーター
PKCεは、Aβ産生を最も効果的に抑制するアイソザイムである。Racciら、Mol.Psychiatry.2003年;8巻:209〜216頁;およびZhuら、Biochem.Biophys.Res.Commun.2001年;285巻:997〜1006頁。したがって、アイソフォームに特異的なPKCアクチベーターが有望な抗アルツハイマー薬物として極めて望ましい。特異的アクチベーターは、あまり特異性を示さないブリオスタチンなどの化合物が好ましい。なぜなら、PKCδまたはβの非特異的活性化は、望ましくない副作用を生じる可能性があるからである。
【0091】
さらに、PKCεはまた、脳以外ではすべての正常な組織において極めて低レベルで発現する。Mischakら、J.Biol.Chem.1993年;268巻:6090〜6096頁;Van Kolenら、J.Neurochem.2008年;104巻:1〜13頁。シナプス前の神経線維での大量のPKCεは、神経突起成長またはニューロトランスミッター放出における役割を示唆している。Shiraiら、FEBS J.2008年;275巻:3988〜3994頁)。したがって、特異的PKCεアクチベーターの作用であれば、主として脳に限定され、望ましくない末梢性の副作用を生じる可能性は低い。
【0092】
PKCアクチベーターとしてのPUFA
一部のPUFA、例えばアラキドン酸(図6を参照)などは、PKCの天然のアクチベーターとして長年の間知られてきた。ドコサヘキサエン酸(DHA)もまた、PKCの既知のアクチベーターであり、ADに関係する、脳を詰まらせるプラークおよびもつれを伴うAβおよびタウタンパク質の蓄積を遅延させることが最近示されている。Sahlinら、Eur J Neurosci.2007年;26巻(4):882〜9頁。
【0093】
Kannoらは、8−[2−(2−ペンチル−シクロプロピルメチル)−シクロプロピル]−オクタン酸(DCP−LA)、すなわちcis−二重結合の代わりにシクロプロパン環を有する、新たに合成されたリノール酸誘導体の、プロテインキナーゼC(PKC)活性に対する作用を記載した。Journal of Lipid Research.2007年;47巻:1146〜1156頁。DCP−LAは、PKCεを活性化し、作用強度は、他のPKCアイソザイムの7倍を超えた。これは、DCP−LAがPKCεに対して極めて特異的であることを示している。この化合物はまた、グルタミン酸作動性の末端または神経細胞でのシナプス前のアセチルコリン受容体の活性を強化することによって海馬のシナプス伝達を促進した。しかし、DCP−LAは、その最大の作用を生じるためには比較的高濃度を必要とする。
【0094】
WO2002/50113で、Nishizakiらは、シナプス伝達のLTP同様の増強のための、または認知強化薬物または認知症を治療するための薬物としての使用のための、シクロプロパン環を有するカルボン酸化合物およびこれらの対応する塩を開示している。これらの合成例は、エステルの調製を開示しているが、これらの実験結果は、遊離酸の使用を教示している。この理由は、脂肪酸出発物質のカルボン酸基が、Simmons−Smith反応に使用されているジエチル亜鉛と反応するからである。メチルエステルは、保護基として作用し、加水分解によって切断されるか、または必要な場合にはとどまることが可能なこともある。
【0095】
従来の技術の所見を有する仮出願は、前述の作用、PKCアイソフォームの非特異的活性化、または急速な代謝および未改質PUFAの、脂肪組織および他の器官への隔離(ここで、これらはトリグリセリドおよびカイロミクロンへと取り込まれる)を達成するために高濃度で投与する必要性を含む。J Pharmacobiodyn.1988年;11巻(4):251〜61頁。加えて未改質PUFAを使用すれば、無数の有害な副作用を有することになる。例えば、アラキドン酸は、プロスタグランジン、トロンボキサン、およびロイコトリエンの生化学的前駆体であり、この前駆体は、強力な炎症促進作用を有する。病態が炎症を含む可能性のある場合には、これは、アルツハイマー病の治療に対して望ましくない。他の主要な脂肪酸もまた、一酸化窒素シグナル伝達の強化、抗炎症作用、およびHMG−CoAレダクターゼの阻害(コレステロール生合成を妨げることになる)を含めた、多数の他の生物学的作用を有し得る。
【0096】
ADと脳卒中の両方を治療するための、限られた既存のオプションのため、神経保護を導き出すPKCアイソフォームのみを選択的に活性化することができる新しい治療法が必要とされる。
【0097】
PUFAおよびMUFAおよび疾患
増大する数の研究が、オメガ−3PUFAは、他の気分障害疾患、例えば臨床的うつ病、双極性障害、人格障害、統合失調症、および注意欠陥障害などに対して有利となり得ることを示唆した。Rossら、Lipids Health Dis.2007年;18巻;6:21。オメガ−3脂肪酸、特にドコサヘキサエン酸およびエイコサペンタエン酸、およびオメガ−3とオメガ−6脂肪酸との健常なバランスを、うつ病の危険性が低くなることと結びつける多くの証拠が存在する。Loganら、Lipids Health Dis.2004年;3巻:25。オメガ−3脂肪酸のレベルは、ある程度まで低く、オメガ−6とオメガ−3脂肪酸との比は、うつ病で入院した患者の臨床研究で特に高かったことが判明した。最近の研究では、大うつ病性障害を有する患者の眼窩前頭皮質において、ドコサヘキサエン酸の選択的欠損が存在したことを実証された。McNamaraら、Biol Psychiatry.2007年;62巻(1):17〜24頁。いくつかの研究はまた、双極性障害を有する対象が、より低いレベルのオメガ−3脂肪酸を有することを示した。いくつかの最近の研究において、オメガ−3脂肪酸は、双極性うつ病を有する成人と小児の両方において、うつ病に対してプラシーボより効果的であることを示した。OsherおよびBelmaker、CNS Neurosci Ther.2009年;15巻(2):128〜33頁;Turnbullら、Arch Psychiatr Nurs.2008年;22巻(5):305〜11頁。
【0098】
大規模な調査はまた、オメガ−3脂肪酸が炎症を減少させ、慢性疾患、例えば、心疾患、癌、炎症性腸疾患および関節リウマチなどを伴うリスクファクターを防止するのに役立つことを示している。Calderら、Biofactors.2009年;35巻(3):266〜72頁;Psotaら、Am J Cardiol.2006年;98巻(4A):3i−18i頁;Wendelら、Anticancer Agents Med Chem.2009年;9巻(4):457〜70頁。
【0099】
単不飽和脂肪酸はまた、障害に有利であることも示されている。2型糖尿病における医学的栄養療法のための低脂肪食の代替として、MUFA食への優れた科学的支持が存在する。Ros、American Journal of Clinical Nutrition.2003年;78巻(3):617S−625S頁。単不飽和脂肪酸を多く摂取する食事により、プラズマコレステロールとトリアシルグリセロール濃度の両方が低くなる。Kris−Ethertonら、Am J Clin Nutr.1999年12月;70巻(6):1009〜15頁。
【0100】
本発明は、二重結合のうちの1つ、一部、またはすべてがシクロプロパン基またはエポキサイド基で置きかえられている、PUFAまたはMUFAのシクロプロパン化およびエポキシ化誘導体の使用を含む。末端官能基は、遊離カルボン酸、またはメチルエステル、エチルエステル、または脂肪族または芳香族アルコールを有するいくつかの他のアルキルエステルであってよい。このアルコールは、特にグリセロールおよびその誘導体もまた含む。脂肪酸は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、またはホスファチド酸の形態でグリセロールに結合しているのが最も頻繁に発見されているので、グリセロール誘導体は、生物学的に重要である。例えば、トリアシルグリセロールは、脂肪酸のカルボキシル基が、グリセロール中に発見される3個すべての炭素のヒドロキシルへエステル化している化合物であり、トリアシルグリセロールまたはトリグリセリドと呼ばれている。
【0101】
カルボン酸をエステル化する目的は、負電荷を排除することにより血液と脳のバリアを超えて輸送を促進することである。アルコール基の目的も、血液と脳のバリアを超えて輸送を促進することである。
【0102】
一実施形態において、本発明に使用される化合物の基礎を形成する脂肪酸は、以下の構造を有する多価不飽和脂肪酸である:
CH(CH(CH=CHCH(CHCOOH
式中、Xは、2〜6であり、Yは、2〜6であり、メチレンまたはポリメチレンで遮断されたポリエンを含む。例示的多価不飽和脂肪酸として、以下の構造を有するリノール酸、γ−リノール酸、アラキドン酸、およびアドレン酸が挙げられる:
リノール酸 CH(CH(CH=CHCHCHCOOH
γ−リノレン酸 CH(CH(CH=CHCH(CHCOOH
アラキドン酸 CH(CH(CH=CHCH(CHCOOH
アドレン酸 CH(CH(CH=CHCH(CHCOOH
これらは、オメガ−6PUFAである。
【0103】
別の実施形態において、本発明に使用される化合物の基礎を形成する脂肪酸は、以下の構造を有する多価不飽和脂肪酸である:
CHCH(CH=CHCH(CHCOOH
式中、Xは、2〜6であり、Yは、2〜6であり、メチレンまたはポリメチレンで遮断されたポリエンを含む。例示的多価不飽和脂肪酸として、以下の構造を有するα−リノレン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、エイコサテトラエン酸が挙げられる:
α−リノレン酸 CHCH(CH=CHCH(CHCOOH
エイコサテトラエン酸 CHCH(CH=CHCH(CHCOOH
エイコサペンタエン酸 CHCH(CH=CHCH(CHCOOH
ドコサヘキサエン酸 CHCH(CH=CHCH(CHCOOH
これらは、オメガ−3PUFAとして知られている。
【0104】
特定の実施形態では、本発明の化合物は、ヒドロキシル基がアルコキシ基で置きかえられ、二重結合の少なくとも1つがシクロプロパン化されている、cis−PUFAのエステルである。本実施形態に対する出発物質は、以下の構造を有する:
CH(CH(CH=CHCH(CHCOORまたはCHCH(CH=CHCH(CHCOOR
式中、Rは、例えば、一価アルコールおよび多価アルコールなどのアルコール、例えば、これらだけには限らないがメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、グリセロール、マンニトール、およびソルビトールなどを含めたものからのアルキル基である。
【0105】
さらなる実施形態において、化合物は、少なくとも3つのシクロプロパン化二重結合を含有する。
【0106】
別の実施形態において、本発明に使用される化合物に対する基礎を形成する脂肪酸は、以下の構造を有する単不飽和脂肪酸である:
CH(CHCH=CH(CHCOOH
式中、XおよびYは、3〜11の奇数である。
【0107】
本発明に使用される化合物の基礎となることができる例示的単不飽和脂肪酸として、cis−およびtrans−単不飽和脂肪酸、例えば、オレイン酸、エライジン酸、トウハク酸、カプロレイン酸、ラウロレン酸、リンデル酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、およびペトロセリン酸などが挙げられる。
【0108】
本発明によるエステルとは、モノエステルまたはポリエステルを意味する。脂肪酸のエステルとして、メチル、プロピル、およびブチルエステル、およびより複雑なアルコール、例えば、プロピレングリコールなどから生成したエステルが挙げられる。非限定的実施形態において、R’は、直鎖または分枝であり、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、secブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、およびテトラデシルなどが挙げられる。エステルはまた、エステル結合で脂肪族アルコールと連結されている脂肪酸から形成されてもよい。
【0109】
エステルは、これだけに限らないが脂肪族アルコールエステルを含めたアルコールエステルであってよい。一実施形態において、アルコールエステルはグリセロールエステルである。脂肪酸のグリセロールエステルとして、グリセロール脂肪酸エステル、グリセロール酢酸脂肪酸エステル、グリセロール乳酸脂肪酸エステル、グリセロールクエン酸脂肪酸エステル、グリセロールコハク酸脂肪酸エステル、グリセロールジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、グリセロール酢酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、およびポリグリセリン凝縮したリシノール酸エステルが挙げられる。
【0110】
別の特定の実施形態において、化合物は、二重結合のうちの少なくとも1つがシクロプロパン化されている、cis−PUFAのアルコールである。さらなる実施形態において、化合物は、少なくとも3つのシクロプロパン化二重結合を含有するcis−PUFAのアルコールである。これらの化合物として、これらに限らないが、リノレイックアルコールジシクロプロパン(BR−105)、またはリノレニックアルコールトリシクロプロパン(BR−104)が挙げられる。本実施形態において、R’は、直鎖または分枝鎖のアルコールまたはフェノールのアルコールとなり得る。
【0111】
別の実施形態において、本発明の化合物、この化合物は、少なくとも1つの二重結合がエポキシル基で置きかえられている、cis−多価不飽和脂肪酸、またはその誘導体である。さらなる実施形態において、化合物は、少なくとも3つのエポキシ化二重結合を含有する。
【0112】
特定の実施形態では、化合物は、cis−PUFAのエポキシ化エステルであり、これには、これだけに限らないが脂肪族アルコールエステルが含まれる。エステルは、シクロプロパン化PUFASに対して上で記載されているものと同じエステルであってよい。さらなる実施形態において、アルコールは、脂肪族アルコールエステル、例えばグリセロールなどであってよい。
【0113】
別の特定の実施形態において、化合物は、エポキシ化cis−多価不飽和脂肪族アルコール、例えばリノレイックアルコールジシクロプロパンまたはリノレニックアルコールトリシクロプロパンなどである。アルコールは、シクロプロパン化PUFASに対して上で記載されているものと同じであってよい。
【0114】
別の実施形態において、化合物として、cis−単不飽和脂肪酸(cis−モノエン酸)由来のシクロプロパン化またはエポキシ化した脂質、例えばオレイン酸、エライジン酸、エライジックアルコール、オレイルアルコール、および1−モノリノレイルrac−グリセロールなどが挙げられる。例示的化合物として、エライジックアルコールシクロプロパン(BR−106)、エライジン酸シクロプロパン(BR−107)、およびオレイルアルコールシクロプロパン(BR−108)が挙げられる。
【0115】
さらなる実施形態として、1以上のエポキサイド残基を含有する、cis−単不飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸、脂肪酸エステル、または脂肪酸アルコールの由来のシクロプロパン化脂質、例えば、ベルノリン酸メチルエステルシクロプロパン(例えば、BR−109)などが挙げられる。
【0116】
特定の実施形態において、本発明に使用される、シクロプロパン化した化合物の基礎を形成するPUFAとして、これらに限らないが、アラキドン酸(AA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、およびエイコサペンタエン酸(EPA)が挙げられる。本発明の方法における使用のための例示的化合物として、ドコサヘキサエン酸メチルエステルヘキサシクロプロパン(BR−111);エイコサペンタエン酸メチルエステルペンタシクロプロパン(BR−114);およびアラキドン酸メチルエステルテトラシクロプロパン(BR−115)が挙げられる。
【0117】
さらなる特定の実施形態において、化合物は、以下の構造を有するドコサヘキサエン酸のシクロプロパン化PUFA誘導体である:
【化1】

【0118】
式中、RはHまたはアルキル基である。特定の実施形態では、Rは、CH3(BR−111またはDHA−CB6メチルエステルまたはメチル−3−(2−((2−((2−((2−((2−((2−エチルシクロプロピル)メチル)シクロプロピル)メチル)シクロプロピル)メチル)−シクロプロピル)メチル)シクロプロピル)メチル)シクロプロピル)プロパノエートである。
【0119】
別の特定の実施形態において、PUFA誘導体は、以下の構造を有する:
【化2】

【0120】
この化合物は、BR−114(EPA−CP5またはメチル4−(2((2−((2−((2−エチルシクロプロピル)メチル)シクロプロピル)メチル)シクロプロピル)メチル)シクロプロピル)メチル)−シクロプロピル)ブタノエートメチルエステル)である。
【0121】
さらなる別の特定の実施形態において、PUFA誘導体は、以下の構造を有する:
【化3】

【0122】
この化合物は、BR−115(AA−CP4またはメチル4−(2−((2−((2−((−ペンチルシクロプロピル)メチル)シクロプロピル)メチル)シクロプロピル)メチル)シクロプロピル)ブタノエートメチルエステル)である。
【0123】
さらに別の特定の実施形態において、PUFA誘導体は、以下の構造を有する:
式中、Rは、Hまたはアルキルエステルである。特定の実施形態では、RはCH3である。
【0124】
本発明における使用に対して想定された、天然にシクロプロパン化またはエポキシ化したMUFASまたはそのエステルもしくはアルコール誘導体として、マルベニン酸(malvenic acid)、ベルノリン酸、およびステルクリン酸が挙げられる。例示的化合物はベルノリン酸メチルエステル(BR−117)である。
【0125】
合成方法
脂肪酸、ならびにそのエステルおよびアルコールは、天然の供給源、例えば、魚油、アマニ油、ダイズ、アブラナ油、もしくは藻などからの精製により得るもしくは生成することができ、または微生物酵素の合成と化学合成の組合せを使用して合成することもできる。一例として、脂肪酸メチルエステルは、メタノールおよび同種のアルカリ触媒を使用して、精製油/食用タイプの油のトリグリセリドのエステル交換により生成することができる。
【0126】
炭化水素における二重結合のシクロプロパン化の方法は周知である。一例として、改質されたSimmons−Smith反応は、二重結合をシクロプロパンへ変換するための標準的方法である。TanakaおよびNishizaki、Bioorg.Med.Chem.Let.2003年;13巻:1037〜1040頁;KawabataおよびNishimura、J.Tetrahedron.1967年;24巻:53〜58頁;ならびにDenmarkおよびEdwards、J.OrgChem.1991年;56巻:6974頁。この反応において、金属カルベノイド、例えば、メチレンアイオダイドおよびジエチル亜鉛などでのアルケンの処理は、結果としてアルケンのシクロプロパン化を生じる。Itoら、Organic Syntheses.1988年;6巻:327頁も参照されたい。メチルエステルのシクロプロパン化もまた、触媒としての酢酸パラジウム(II)の存在下、ジアゾメタンを使用して行われた。Gangadharら、Journal of the American Oil Chemists’ Society.1988年;65巻(4):601〜606頁。
【0127】
エポキシ化の方法もまた周知であり、有機溶媒中の脂肪酸ジオキシランの反応を通常含む。Sonnetら、Journal of the American Oil Chemists’ Society.1995年;72巻(2)199〜204頁。一例として、PUFA二重結合のエポキシ化は、エポキシ化薬剤としてジメチルジオキシラン(DMD)を使用して達成することができる。Grabovskiyら、Helvetica Chimica Acta.2006年;89巻(10):2243〜53頁。
【0128】
治療方法
本発明は、本明細書中に開示されているPUFA誘導体を使用した、病原性のAβに伴う神経系疾患、例えばADおよび脳卒中などの治療を想定している。本発明はまた、本明細書中に開示されているPUFA誘導体を使用した、病原性のAβに伴う神経系疾患の予防を想定している。任意の特定の機序に限定されることなく、PKCεの選択的活性化は、結果としてTACEの活性化の増加を生じることができ、同時にAβの産生を低下させる。しかし、これは主に非神経細胞、例えば線維芽細胞などに生じているようである。PKCεの活性化はまた、ADにおける病原性タウタンパク質の過リン酸化を減少させることもできる。PKCεの活性化はまた、シナプス形成を誘発し、またはADにおけるまたは脳卒中後のアポトーシスを防止することもできる。PKCεの活性化はまた、GSΚ−3βの阻害を介して、Aβ−媒介性神経毒性からラット神経細胞を保護することもできる。PKCεアクチベーターはまた、PKCα/εの下方制御に対するAβの作用に反作用することもでき、これによって、Aβ誘発性変化を逆行させるまたは防止することもできる。別の可能な作用機構は、Aβ−分解酵素、例えばエンドセリン変換酵素などの活性化である。実施例で提示された実験結果は、これが作用機構となり得ることを示唆している。
【0129】
さらに別の機構は、PKC−結合したM1およびM3ムスカリンの受容体の刺激によるものであってよく、これは、TACEにより、非アミロイド合成APPプロセシングを増加させると報告されている。Rossnerら、Prog.Neurobiol.1998年;56巻:541〜569頁。ムスカリン作用剤は、3x遺伝子組み換えADマウスを認知障害から救い、一部はTACE/ADAM17非アミロイド合成経路を活性化することによって、Aβおよびタウ病態を減少させる。Caccamoら、Neuron.2006年;49巻:671〜682頁。ムスカリン受容体シグナル伝達は、PKCに密接に結ばれている。ムスカリン受容体mRNAは、PKCにより調節され、M1ムスカリン受容体活性化により生じる神経細胞の分化は、PKCにより媒介される。Barnesら、Life Sci.1997年;60巻:1015〜1021頁;Vandemarkら、J.Pharmacol.Exp.Ther.2009年;329巻(2):532〜42頁。
【0130】
本発明の方法による治療に対して想定される他の障害として、気分障害、例えばうつ病性障害および双極性障害、統合失調症、関節リウマチ、癌、循環器疾患、2型糖尿病、さらにこれらだけに限らないが、背景技術において言及されたものを含めて、PUFAまたはMUFAが有利であることが示された任意の他の障害などが挙げられる。
【0131】
製剤および投与
PUFA誘導体は、これらが血液−脳バリアを通過することを可能にする任意の経路による投与に有用な用量単位で生産することができる。血漿のPUFAは、脳を通過することができることが実証されている。Rapoportら、J.LipidRes.2001年.42巻:678〜685頁。例示的経路として、経口、非経口、経粘膜、鼻腔内、吸入、または経皮経路が挙げられる。非経口の経路として、静脈内、細動脈内、筋肉内、皮内、皮下、腹腔内、側脳室内、くも膜下腔内、および脳内の投与が挙げられる。
【0132】
本発明の化合物は、従来の方法により製剤化することができる。PUFA誘導体化合物は、標準的製剤で対象に提供することができ、任意の薬学的に許容される添加剤、例えば賦形剤、滑沢剤、希釈剤、着香剤、着色剤、緩衝剤および崩壊剤などを含むことができる。標準的製剤は、当技術分野で周知である。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第20版、Mack Publishing Company、2000年を参照されたい。
【0133】
一実施形態において、化合物は、固体の経口投与剤形で製剤化する。経口投与に対して、例えば、PUFAに対して、医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤、例えば結合剤(例えば、アルファ化したトウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);フィラー(例えば、ラクトース、微結晶性セルロースまたはカルシウムリン酸水素);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(例えば、バレイショデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などと共に従来の手段で調製した錠剤またはカプセル剤の形態を取ることができる。錠剤は、当技術分野で周知の方法によりコーティングすることもできる。経口投与用の液体製剤は、例えば、溶液剤、シロップ剤または懸濁剤の形態を取ることができ、またはこれらは、使用前に水または他の適切なビヒクルと共に構成するための乾燥製品として提供することもできる。このような液体製剤は、薬学的に許容される添加剤、例えば懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ剤、セルロース誘導体または水素化した食用の脂肪);乳化剤(例えば、レシチンまたはアラビアゴム);非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコールまたは分画された植物油);および保存剤(例えば、メチルまたはプロピル−p−ヒドロキシベンゾアートまたはソルビン酸)などと共に従来の手段で調製することができる。製剤はまた、必要に応じて緩衝塩、香味剤、着色剤および甘味料を含有することもできる。
【0134】
一例として、薬物Omacor(登録商標)は、オメガ−3PUFAのエチルエステルの濃縮した組合せを含有する。各1gカプセル剤は、薬物ラベルによると、少なくとも900mgのオメガ−3脂肪酸のエチルエステル、主にEPA(465mg)およびDHA(375mg)を含有する。Omacor(登録商標)は、低カロリーの黄色の油を充填した1グラムの透明な軟ゼラチンカプセルとして、1日最高4回まで投与する。本発明のPUFA化合物を投与するために同様の組成物を使用することができるが、ただし本発明はPUFA誘導体のより低い投与量の使用を想定している。PUFAの安定した蝋−エステルの製剤は、n−3PUFAおよび長鎖アルコール(18〜22個の炭素原子)を多く含む化学量論の量のエチルエステルのエステル交換による、n−3PUFAおよび長鎖アルコール(18〜22個の炭素原子)を多く含む化学量論の量のエチルエステルのエステル交換によるものが記載されている。Gorettaら、Lebensmittel−Wissenschaft und−Technologie.2002年;35巻(5):458〜65頁。
【0135】
別の実施形態において、PUFA化合物は、非経口投与用に製剤化される。化合物は、注射、例えば、大量瞬時投与または持続的な点滴などの非経口投与用に製剤化することができる。注射用の製剤は、アンプルなどの単位剤形、または多数回容器などの形態で、保存剤を添加して提供することができる。組成物は、例えば、懸濁液、溶液、分散液、または油性または水性のビヒクル中のエマルジョンなどの形態を取ることができ、製剤化剤、例えば、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤などを含有することもできる。
【0136】
特定の実施形態では、本発明のPUFA誘導体は、疎水性の担体と共に投与される。疎水性の担体として、包接錯体、分散液(例えばミセル、マイクロエマルジョン、およびエマルジョン)、およびリポソームなどが挙げられる。例示的疎水性担体として、包接錯体、ミセルおよびリポソームなどがある。これらの製剤は、当技術分野で既知である(Remington’s:The Science and Practice of Pharmacy 第20版、Gennaro、Lippincott編集:Philadelphia、PA 2003年)。本発明のPUFA誘導体は、例えば、担体の総質量の少なくとも1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、または90質量%を疎水性担体に取り込むことができる。加えて、他の化合物が、例えば製剤を安定化させるために、疎水性担体または溶液剤のいずれかの中に含まれていてもよい。
【0137】
前に記載した製剤に加えて、PUFA誘導体はまた、デポー製剤として製剤化することもできる。このような長時間作用型製剤は、埋め込み(例えば皮下または筋肉内)または筋肉内注射により投与することができる。したがって、例えば、化合物は、適切なポリマーまたは疎水性物質(例えば許容可能な油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂、または難溶性の誘導体、例えば、難溶性の塩などと共に製剤化することができる。
【0138】
別の実施形態において、PUFA誘導体は、小嚢、特にミセル、リポソームまたは米国特許出願第11/648,808号、Alkonらに記載されたような人工LDL粒子で届けることができる。
【0139】
投与のための投与量は、1日当たり1mg〜10g、好ましくは10mg〜1g、極めて好ましくは250mg〜500mgの化合物を届けるために適切に調製することができる。局所的投与または非経口製剤用に調製する場合、最終製剤の0.01質量%〜60質量%、好ましくは0.1質量%〜30質量%、極めて好ましくは1質量%〜10質量%を含有する処方で作ることができる。最適な1日の投与量は、当技術分野で知られている方法で判定することになるが、例えば患者の年齢および他の臨床的に関連する要因などの要因により影響を受けることになる。
【0140】
併用薬物療法
PUFA化合物は、ADまたはAβに関連する他の神経学的障害を有する患者を治療するために、障害を治療するために同様に使用される他の薬物と併用して使用することができる。ADの治療に対して米国で認可された、例示的、非限定的な薬理作用のある物質として、コリンエステラーゼ阻害剤、例えばAricept(登録商標)(ドネペジル)、Exelon(登録商標)(リバスチグミン)、Reminyl(登録商標)(ガランタミン)など、およびNMDA受容体アンタゴニスト、例えばNamenda(登録商標)(メマンチン)などが挙げられる。他の有望な治療薬として、プロテアーゼ阻害剤(例えば、米国特許第5,863,902号;第5,872,101号を参照);Aβ産生阻害剤、例えば米国特許第7,011,901号;第6,495,540号;第6,610,734号;第6,632,812号;第6,713,476号;および第6,737,420号に記載のものなど;Aβ凝集モジュレーター、第6,303,567号;第6,689,752号に記載のものなど;ならびにBACE阻害剤、例えば米国特許第第6,982,264号;第7,034,182号;第7,030,239号に開示ものなどが挙げられる。脳卒中の治療のために使用される例示的薬物として、アスピリン、抗血小板薬剤、例えば組織プラスミノゲンアクチベーターまたは他の抗凝血剤などが挙げられる。
【0141】
ある特定の実施形態において、本発明は、これだけに限らないがベンゾラクタム大環状ラクトンを含めた他のPKCアクチベーターとの併用療法を想定している。ブリオスタチン1は、PKCをモジュレートし、結果として、非アミロイド形成経路への、TACEによるAPPの切断を増加させることが示されている大環状ラクトンである。ブリオスタチンは、ウミウシの記憶保持の持続時間を、500%を超えて増加させることができ、ラットの学習速度を劇的に増加させることができた。米国特許出願第10/919,110号;Kurzirianら、Biological Bulletin.2006年;210巻(3):201〜14頁;Sun and Alkon、European Journal of Pharmacology.2005年;512巻(1):43〜51頁を参照されたい。他の非限定的なPKCアクチベーターは、審議中の米国特許出願番号第12/068,742号、Alkonらにおいて記載されている。
【0142】
例えば内因性のTACE阻害剤を阻害することによって、または内因性のTACEアクチベーターを増加させることによって、TACEを間接的に増加させる薬物との併用。PKCを直接活性化する代替的手法は、内因性アクチベーター、ジアシルグリセロールのレベルを増加させることである。ジアシルグリセロールキナーゼ阻害剤、例えば6−(2−(4−[(4−フルオロフェニル)フェニルメチレン]−1−ピペリジニル)エチル)−7−メチル−5H−チアゾロ[3,2−a]ピリミジン−5−オン(R59022)および[3−[2−[4−(ビス−(4−フルオロフェニル)メチレン]ピペリジン−1−イル)エチル]−2,3−ジヒドロ−2−チオキソ−4(1H)−キナゾリノン(R59949)などは、内因性リガンドジアシルグリセロールのレベルを強化し、これによって、PKCの活性化が生じる。Meinhardtら、(2002年)Anti−Cancer Drugs 13巻:725頁。
【0143】
さらなる別の実施形態は、BACE阻害剤との併用療法である。BACE阻害剤は、既知であり、CoMentis Inc.が所有するCTS−21166が挙げられ、これはヒト治験において陽性結果を示した。他のBACE阻害剤は、公開された国際PCT出願WO2007/019080およびBaxterら、Med.Chem.2007年;50巻(18):4261〜4264頁において記載されている。
【0144】
併用療法において使用される化合物は、相容性の場合、本発明のPUFA化合物と同じ製剤で投与してもよいし、または別個の製剤として投与してもよい。
【0145】
治療の評価
本発明のPUFA誘導体を用いた治療の評価は、疾患の症状または臨床代理マーカーにおける評価の改善により行うことができる。例えば、治療したAD対象における記憶または認知スキルの改善は、病原性のAβ蓄積が減少していることを示唆し得る。認知表現型の例として、これらに限らないが、健忘、失語症、失行症および認知不能症が挙げられる。精神医学的症状の例として、これらに限らないが、人格変化、うつ病、幻覚および妄想が挙げられる。1つの非限定的な例として、the Diagnostic and Statistical Manual of Mental disorders、第4版(DSM−IV−TR)(American Psychiatric Associationより出版)は、アルツハイマータイプの認知症に対する基準を含有する。
【0146】
ADの表現型発現はまた、物理学的、例えばAβプラークの直接的(撮像)または間接的(生化学的)検出などによるものであってよい。Aβのインビボの撮像は、造影剤として放射性ヨウ化フラボン誘導体を使用し(Onoら、J Med Chem.2005年;48巻(23):7253〜60頁)、アミロイド結合染料、例えば、40−残基放射性ヨウ化Aペプチド(125I−PUT−A1−40を生成)(血液−脳バリアを通過してAβプラークと結合することが示された)に結合したプトレシンを用いて達成することができる。Wengenackら、Nature Biotechnology.2000年;18巻(8):868〜72頁。Aβの撮像はまた、スチルベン[11C]SB−13およびベンゾチアゾール[11C]6−0H−BTA−1([11C]PIBとしても知られている)を使用して示された。Verhoeffら、Am J Geriatr Psychiatry.2004年;12巻:584〜595頁。
【0147】
末梢血におけるAβ(1−40)の定量化は、高速液体クロマトグラフィーを、線形イオントラップでのタンデム質量分析と一緒に使用して実証された。Duら、J Biomol Tech.2005年;16巻(4):356〜63頁。蛍光相関分光法による、アルツハイマー型患者の脳脊髄液中の単一Aβタンパク質凝集体の検出もまた記載されている。Pitschkeら、Nature Medicine.1998年;4巻:832〜834頁。米国特許第5,593,846号は、可溶性Aβを検出するための方法を記載している。抗体を使用した、終末糖化産物(RAGE)のためのAβペプチドおよび受容体の間接的検出もまた記載されてきた。最後に、色素生産性基質を使用した、脳脊髄液中の増加したBACE−1活性の生化学的検出もまた、ADの診断用または予後の指標として仮定されてきた。Verheijenら、Clin Chem.2006年;52巻:1168〜1174頁。
【0148】
ADを評価するための現在の手段として、初期の、進行性のおよび顕著なエピソード記憶喪失の臨床的コアの観察にADに特徴的な1以上の異常なバイオマーカー(生物学的指標)を加えたものが挙げられるが、これにはMRIで示されるような側頭葉萎縮の病理解剖(廃棄);脳脊髄液中の異常なAβタンパク質濃度;脳のPETスキャンにおけるグルコース代謝の減少を示す特定のパターン;および近親内での関連する遺伝子変異が含まれる。
【実施例】
【0149】
例1:患者集団および細胞培養
アルツハイマー病患者(AD)、非AD認知症(ハンチントン病、パーキンソン病および前頭側頭認知症)患者、および年齢をマッチさせた対照(AC)症例のヒト皮膚線維芽細胞を、Coriell Institute of Medical Research(Camden、NJ)から入手した。線維芽細胞は、10%FBSを補充した低グルコース(Invitrogen、USA)を含むDMEM中で維持し、培養して実験前に100%コンフルエンスにした。異なる10例のAD患者(4つの家族性タイプおよび6つの散発性;これらの中で、10例のうち9例は、病理解剖で確認した)、11例のACおよび8例のハンチントン病、1例のパーキンソン病および1例の前頭側頭型認知症が研究(表:1)に対して検討された。AD症例の平均年齢は69.6±13.01(SD)才であり、AC症例の平均年齢は63.364±7.65(SD)才であり、非AD認知症症例の平均年齢は56.44±9.7(SD)才であった。
【0150】
タンパク質の単離:細胞を含有するフラスコを1×PBS(pH7.4)で3×洗浄し、細胞スクレーパーを使用して細胞を収集した。収集した細胞を1.5mlの微小遠心管に移し、1000rpmで5分間遠心した。得た細胞ペレットをホモジナイズ緩衝液中に懸濁させ(10mM TRIS pH7.4、1mM PMSF、10mM EGTA、10mM EDTAおよび50mM NaF)、30秒の間超音波処理した。ホモジネートを、4℃でl0分間、10000rpmで再び遠心し、上清を収集し、タンパク質評価のために新しいチューブに移した。Bradfordタンパク質アッセイキットを使用して全タンパク質濃度を測定した(Thermo Scientific、USA)。
【0151】
免疫ブロット分析:タンパク質可溶化液(それぞれタンパク質20μg)を2×Laemmli緩衝液内で10分間煮沸し、4〜20%グラジエントTRIS−グリシンゲルを使用して分離した。分離したタンパク質をニトロセルロース膜に移し、この膜をBSAで、室温で(RT)15分間遮断し、1:2000希釈の抗−PKC−εウサギポリクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology、Santa Cruz、CA.;Cat No:sc−214)、および1:5000希釈の抗βチューブリン、クラスIIIウサギモノクローナル抗体(Millipore Corporation、Billerica MA、Cat No:04−1049)と共に1時間RTでインキュベートした。インキュベーション後、膜部分を標準的ウエスタンブロット洗浄緩衝液で3×洗浄し、さらにアルカリホスファターゼ結合した二次抗体(Jackson Immunoresearch Laboratories、USA)1:10000希釈と共に45分間インキュベートした。この膜部分を標準的なウエスタンブロット洗浄緩衝液で最後に3×洗浄し、1−ステップNBT−BCIP基質(Thermo Scientific、Rockford、IL)を使用して発色させた。シグナル強度の画像をImageQuant RT−ECL(GE Life Sciences、Piscataway、NJ)で記録し、IMALソフトウエア(Blanchette Rockefeller Neurosciences Institute、Morgantown、WV)を使用して濃度定量化を実施した。PKC−εに対してこのように定量化した強度を、各レーンについてβ−チューブリンに対して正規化した。
【0152】
免疫蛍光:線維芽細胞を、低密度で充填したスライド(Nunc、Rochester、NY)内で培養した。免疫蛍光染色のため、細胞を1×PBS(pH7.4)3×で洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで4分間固定した。固定に続き、細胞を遮断し、1×PBS中の5%血清および0.3%Triton X100で30分間透過処理した。細胞を1×PBSで3×洗浄し、ウサギポリクローナルPKC−ε抗体(Santa Cruz Biotechnology、Santa Cruz、CA)と共に1時間、1:100希釈でインキュベートした。インキュベーション後、1×PBS中でスライドを3×洗浄し、FITC抗ウサギIgG(Jackson Immunoresearch Laboratories、USA)と共に1時間、1:400希釈でインキュベートした。細胞を洗浄し、DAPI(4’,6−ジアミジノ−2’−フェニルインドール、ジヒドロクロリド)(Thermo Scientific、USA)でも着色した。最後に、スライドを洗浄し、グリセロールPBS封入液中に固定し、LSM 710 Meta共焦点顕微鏡(Zeiss、Germany)で、DAPIおよびFITCに対してそれぞれ350nmおよび490nm励起、ならびに470nmおよび525nm発光で観察した。5つの個々の視野を63×オイルレンズ拡大率で取り込み、各チャネルで平均蛍光強度(MFI)を分析した。
【0153】
RT−PCR:Trizol試薬(Invitrogen、USA)を使用して、製造者のプロトコルに従い、RNAを約1×10細胞から単離した。簡単に説明すると、オリゴdTおよびSuperscript III(Invitrogen、USA)を使用して、50℃で1時間2μgのRNAを逆転写した。PKC−εに対するプライマーを使用して(フォワードプライマー−AGCCTCGTTCACGGTTCTATGC、リバースプライマー−GCAGTGACCTTCTGCATCCAGA)、およびβ−チューブリン(フォワードプライマー−TTGGGAGGTGATCAGCGATGAG、リバースプライマーCTCCAGATCCACGAGCACGGC)(Origene、Rockville、MD)、2μlのcDNA生成物を増幅した。55℃アニーリング温度での25サイクルの増幅に続いて、E−ゲル(Invitrogen、USA)内でアンプリコンを分析した。Fuji Imageゲルスキャナー(FLA−9000、Fuji Film)を使用してゲル画像を記録し、IMALソフトウエア(Blanchette Rockefeller Neurosciences Institute、Morgantown、WV)を使用して濃度定量化を実施した。3つの独立した実験について、PKC−ε OD(光学密度)と、β−チューブリンODとの正規化した比としてデータを表示した。
【0154】
可溶性のオリゴマーAβの調製:Noguchiら、(2009年)により記載された方法に従いオリゴマーAβを調製した。本方法で生成されたAβは、極めて神経毒性のある、アミロスフェロイド(ASPD)と呼ばれる10〜15nmの球状のAβ集合体であると報告された。ASPDの合成のため、Aβ1−42(Anaspec、USA)を100μΜの濃度で、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルロ(hexafluro)−2−プロパノール中に、4℃で一晩、次いで37℃で3時間溶解した。最後に、溶解したAβを、アリコット(40nmol/チューブ)の中で凍結乾燥させた。凍結乾燥したAβを、1μΜ濃度で、50%PBS中に溶解し、4℃で14時間ゆっくりと回転させた。インキュベーションを流して、100kDa分子量のカットオフフィルター(Ultrafree−MC、Millipore、USA)を使用して有毒なASPDを精製した。100kdaを超える分子量の保持液を、線維芽細胞を処理するために使用した。
【0155】
オリゴマーAβ1−42での皮膚線維芽細胞の処理:ADとAC症例の両方の皮膚線維芽細胞を、100%コンフルエンスまで7日間培養した。コンフルエント細胞は、これらが100%コンフルエントになった後で、500nM(最終濃度)のASPDで、37℃で24時間処理した。インキュベーションに続いて、細胞を1×PBS(pH7.4)で3×洗浄し、以前に記載されたウエスタンブロット法用に処理した。ImageQuant RT−ECL(GE Life Sciences、USA)を使用して、結果として得たPKC−εに対するバンド強度を定量化し、IMALソフトウエア(Blanchette Rockefeller Neurosciences Institute、Morgantown、WV)を使用して、濃度分析を実施した。
【0156】
例2:脂肪酸メチルエステルシクロプロパン化脂肪酸メチルエステルの合成。
【0157】
シクロプロパン化脂肪酸の合成。クロロヨードメタンおよびジエチル亜鉛を使用した、改変されたSimmons−Smith反応を使用して、多価不飽和脂肪酸のメチルエステルをシクロプロパン化した(Tanakaら、Bioorg.Med.Chem.Let.2003年;13巻:1037〜40頁;Furukawaら、Tetrahedron.1967年;53〜58頁;Denmarkら、J.Org.Chem.1991年;56巻:6974〜81頁)。すべての装置は、60℃で1時間ベーキングし、乾燥窒素を用いた炎光を使用して乾燥させた。撹拌子および温度プローブを有する100mlの3口丸底フラスコを、氷−ドライアイスの混合物で取り囲み、25mlのジクロロメタン中の1.25g(4.24mmol)のリノール酸メチルエステルまたはドコサヘキサエン酸メチルエステルを充填し、Nでバブリングした。24インチの長さの20ゲージニードルを使用して、ジエチル亜鉛(51ml、54.94mmol)のヘキサン中1M溶液を嫌気的に添加し、溶液を−5℃に冷却した。絶え間なく撹拌しながら、ジヨードメタン(8.2ml、101.88mmol)またはクロロヨードメタン(ClCH2I)を毎秒一滴ずつ滴下添加した。必要に応じて添加速度を低下させることで、この反応混合物を2℃以下に維持した。この反応中にて反応混合物は濁り、不溶性の白色の亜鉛生成物を遊離した。フラスコを密閉し、この混合物を1時間反応させておき、次いで2時間に渡りゆっくりと室温に戻した。
【0158】
フード内での爆発性残渣の形成を防止するため、ジエチル亜鉛は蒸発させなかった。混合物を撹拌しながら、100mlの水の中へゆっくりと注ぎ入れ、あらゆる過剰なジエチル亜鉛を分解した。エタンが生成した。この混合物をガラス遠心管内で、5000rpmで遠心させ、上部の水層を廃棄した。白色沈殿物をCHClで抽出し、有機相と合わせた。有機相を水で洗浄し、遠心した。ヘキサンプラス1%酢酸エチルを使用して、シリカゲルG TLCで生成物を分析し、n−ヘキサン中の増加する濃度の1〜10%酢酸エチルを使用して、シリカゲル上でのクロマトグラフィーにより精製し、窒素下で蒸発させると、無色の油としてメチルエステルが残った。
【0159】
Simmons−Smith反応は、出発物質の立体配置を保存する。Furukawaら、Tetrahedron.1967年;53〜58頁。ドコサヘキサエン酸メチルエステルを、90〜95%収率でDHA−CP6へと変換した。生成物は、無色の油であり、エタノール中での単一の吸収度は202nmで最大であり、Iとの反応はなかった。IRスペクトルは、3070および1450cm−1でのシクロプロパン環の吸収を示した。同じ条件下で、エイコサペンタエン酸メチルエステルをEPA−CP5に変換し、アラキドン酸メチルエステルをAA−CP4に変換した。リノール酸メチルエステルをDCP−LAメチルエステルに変換したが、これは、既知の試料と等しかった。
【0160】
メチルエステルの加水分解。メチルエステル(0.15g)を1mlの1N LiOHおよび1mlのジオキサン中に溶解した。ジオキサンおよびメタノールを、それが均一になるまで添加し、この溶液を60°で一晩撹拌した。生成物をCHCl中に抽出し、遠心した。水層および白色の界面を水で再抽出し、白色層が形成されなくなるまで洗浄した。生成物をN下で蒸発させ、シリカゲル上でのクロマトグラフィーで精製した。n−ヘキサン中20%EtOAcの中で生成物である無色の油を溶出した。10%EtOAc/ヘキサン中のTLCおよびC18 RP−HPLCで、205nmでのUV検出を使用して、その純度をチェックした。
【0161】
エポキサイド基は、従来の手段、例えば適切なアルケンをm−クロロ過安息香酸またはt−ブチルヒドロペルオキシドで酸化することによって、導入することができる。
【0162】
合成した他の化合物として、図1に表されているものが挙げられる(BR−101〜BR−118)。
【0163】
例2:ドコサヘキサエン酸を使用した精製したPKCイプシロンの活性化
プロテインキナーゼCアッセイ。組換えPKC(1ngのアルファまたはイプシロンアイソフォーム)を、10マイクロモルのヒストン、5mM CaCl、1.2μg/μlのホスファチジル−L−セリン、0.18μg/μlの1,2ジオクタノイル−sn−グリセロール(DAG)、10mM MgCl、20mM HEPES(pH7.4)、0.8mM EDTA、4mM EGTA、4%グリセロール、8μg/mlのアプロチニン、8μg/mlのロイペプチン、および2mM ベンズアミジンの存在下、BR−101(DCP−LA)と混合した。0.5マイクロCi[γ32P]ATPを添加した。このインキュベーション混合物を、総量10マイクロリットルで、37度で15分間インキュベートした。1×2cmのセルロースホスフェート紙片(Whatman P81)の上にこの反応混合物をスポットすることによって、この反応を中止し、即時に0.5%HPO中で2回、1時間に渡り洗浄した。このセルロースホスフェートの紙片をシンチレーションカウンターでカウントした。一部の実験では、ホスファチジルセリン、ジアシルグリセロール、および/またはカルシウムを取り除いた。
【0164】
DHAメチルエステルは、Cayman Chemical(Ann Arbor、ME)から購入した。PKCアイソザイムは、Calbiochem(San Diego、CA)から購入した。精製されたPKCεは、Calbiochemから購入した。
【0165】
結果
精製されたPKCεを使用したPKC測定は、試験した最低の濃度(10nM)において、化合物BR−101は、2.75倍のPKCεの活性化を生じたことを示した。PKCαは、影響を受けなかった(データは示されていない)。化合物BR−102はまた、活性化されていないPKCεのおよそ1.75倍までPKCεの活性化を選択的に誘発した。低濃度でPKCεを活性化するこれら化合物の有効性は、これらが優れた治療的候補となることを示唆している。
【0166】
例3:他のPKCアクチベーターを使用した、精製されたまたは細胞のPKCイプシロンの活性化
材料。培地はK−D Medical(Columbia、MD)またはInvitrogen(Carlsbad、CA)から得た。Aβ1−42はAnaspec(San Jose、CA)から購入した。多価不飽和脂肪酸メチルエステルはCayman Chemicals、Ann Arbor、MIから入手した。他の化学薬品はSigma−Aldrich ChemicalCo.(St.Louis、MO)から入手した。PKCアイソザイムは、Calbiochem(San Diego、CA)から入手した。精製されたPKCεはCalbiochemから購入した。
【0167】
細胞培養。ラット海馬H19−7/IGF−IR細胞(ATCC、Manassas、VA)をポリ−L−リジンコーティングしたプレートにプレーティングし、DMEM/10%FCS中で、35℃で数日間培養し、およそ50%カバー度が得られるまでこれを続けた。次いで細胞は、39℃で、培地を、10ng/ml塩基性の線維芽細胞成長因子を含有する5mlのN培地で置きかえることによって、神経細胞表現型へと分化するように誘導し、T−75フラスコ内で、37℃で培養した。ヒトSH−SY5Yニューロブラストーマ細胞(ATCC)は、45%F12K/45%MEM/10%FCS中で培養した。マウスN2Aニューロブラストーマ細胞は、DMEM/10%FCS中でグルタミンなしで培養した。18日齢の胎仔のラット海馬の神経細胞。
【0168】
Sprague Dawleyラットの脳を、ポリ−D−リジン(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)でコーティングされた12−または96−ウェルプレート上で、0.5mMグルタミンおよび25μΜグルタメート(Invitrogen、Carlsbad、CA)を含有するB−27 neurobasal培地内でプレーティングし、培地内で3日間グルタメートなしで培養した。5%CO下、37℃で維持したインキュベーター内で神経細胞を14日間培養した。
【0169】
培養細胞に対するすべての実験は、他に述べられていない限り、3回重複して行った。すべてのデータ点は、平均値±SEとして表示されている。BR−101(DCP−LA)は、すべての実験においてその遊離酸で使用し、その一方で、BR−111(DHA−CP6)、BR−114(EPA−CP5)、およびBR−116(AA−CP4)は、これらのメチルエステルで使用した。
【0170】
プロテインキナーゼCアッセイ。ラットの海馬細胞を培養し、0.2mlの均質化緩衝液(20mM TRIS−HCl、pH7.4、50mM NaF、1μg/ml ロイペプチン、および0.1mM PMSF)中ですくい取り、超音波処理により、Marsonix マイクロ−プローブソニケーター(5秒、10W)内でホモジナイズした。PKCを測定するため、10μlの細胞ホモジネートまたは精製されたPKCアイソザイム(Calbiochemから購入)を、10μΜヒストン、4.89mM CaCl、1.2μg/μlのホスファチジル−L−セリン、0.18μg/μlの1,2−ジオクタノイル−sn−グリセロール、10mM MgCl、20mM HEPES(pH7.4)、0.8mM EDTA、4mM EGTA、4%グリセロール、8μg/mlのアプロチニン、8μg/mlのロイペプチン、および2mMベンズアミジンの存在下、37℃で15分間インキュベートした。0.5μCi[γ−32P]ATPを添加し、前に記載した通り、ホスホセルロース上への吸着により32P−ホスホタンパク質の形成を測定した。NelsonおよびAlkon、J.Neurochemistry.1995年;65巻:2350〜57頁。BR−101(DCP−LA)および同様の化合物による活性化の測定のため、ジアシルグリセロールおよびホスファチジルセリンの非存在下、Kannoらにより記載された通り、PKC活性を測定し、添加したEGTAおよびCaClの非存在下、Kannoら、J.Lipid Res.2006年;47巻:1146〜50頁で記載の通り、PKCδ、ε、η、およびμを測定した。高濃度のCa2+は、PKCホスファチジルセリン結合部位と相互作用し、活性化を防止するので、低濃度のCa2+を使用する。ブリオスタチン活性化の測定に対して、1,2−ジアシルグリセロールは、他に述べられていない限り、省略した。
【0171】
結果および考察
これらのPKCアイソザイム特異性を判定するため、新しい化合物を精製されたPKCと共に5分間プレインキュベートし、PKC活性を放射分析により測定した。上の例2に対して示されているように、BR−101(DCP−LA)は、10μΜでPKCの効果的なアクチベーターであるが、他のPKCアイソフォームに対する作用は比較的低かった(データは示されていない)。より高い濃度では、BR−101(DCP−LA)は、PKCδ(およそ1〜100μΜ)を部分的に阻害し、PKCγ(50〜100μΜ)を活性化した(データは示されていない)。
【0172】
BR−111(DHA−CP6)、BR−114(EPA−CP5)、およびBR−115(AA−CP4)は、それぞれドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、およびアラキドン酸のシクロプロパン化誘導体であるが、精製されたPKCεを同じ程度まで活性化した。PKCを活性化するために必要な濃度は、BR−101(DCP−LA)に対する濃度よりも約100分の1低く、これはより高い親和性を示唆した。シクロプロパン化リノレニルおよびリノレイルアルコール(BR−104およびBR−105)、エポキシステアリン酸(BR−116)、およびベルノリン酸メチルエステル(BR−117)は、PKCに対する作用がわずかにあるか、またはなかった。シクロプロパン化ベルノリン酸メチルエステル(BR−109)は、1μΜより上の濃度でPKCεを阻害した。
【0173】
ジアシルグリセロール結合部位に結合したPKCアクチベーターは、ブリオスタチン、グニジマクリン、およびホルボールエステルなどを含めて、PKC活性の一時的な活性化を生じ、続いてより長い下方制御が生じた。Nelsonら、Trends in Biochem.Sci.2009年;34巻:136〜45頁。これを培養したラット海馬細胞において確認した。ブリオスタチンと共にラットH19−7/IGF−IR細胞(0.04nMおよび0.2nM)をインキュベートすることで、2倍の活性化を生じ、これが30分間持続し、続いて20%の下方制御があり、24時間でベースラインに戻った(データは示されていない)。対照的に、DCP−LAに曝露されたPKCは、少なくとも4時間の間高いままであった。この持続性の活性化は、初代神経細胞内でしか観察されなかった。
【0174】
ブリオスタチンは、ホルボール12−ミリスチン酸エステル13−アセテート(PMA)(EC50=1.35nM対10nM)よりもPKCに対して高い親和性を有するにもかかわらず、ブリオスタチンは、PKCの下方制御においてPMAより効果が極めて低かった。PKC活性は、8時間でホルボールエステルにより強力に下方制御されているが、その一方で、ブリオスタチンで処理した細胞のPKCは、ベースライン上またはその付近にある(データは示されていない)。この差は、da Cruz e Silvaら、J.Neurochem.2009年:108巻:319〜30頁で報告された、PdBuにより生じるAβの増加を説明し得る。これらの研究者は、1μΜ PdBuを培養されたCOS細胞に8時間適用し、Aβの増加を観察した。この増加は、ホルボールエステルによるPKCの下方制御に起因するものであったが、これらの結果と一致する。下方制御は、DCP−LAに対して、および関連化合物に対して測定することができなかった。
【0175】
例4:Aβ産生および分解に対するPKCアクチベーターの作用
細胞培養。例3に対して上で記載されているように細胞培養を実施した。
【0176】
Aβの測定および細胞生存度アッセイ。Aβ 1−42ヒト蛍光分析ELISAキット(Invitrogen)を使用して、製造者の指示書に従いAβを測定した。Biotek Synergy HTマイクロプレートリーダーで結果を測定した。製造者の指示書に従い、AlamarBlueおよびCyQuant NF(Invitrogen)で測定を行った。
【0177】
結果および考察
Aβ産生に対するPKCε活性化の効果を測定するため、本発明者らは、多量のAβを産生する、ヒトAPPS we/PSIDを形質移入したマウスneuro2a(N2a)神経芽細胞腫細胞を使用した。Petanceskaら、JNeurochem.1996年;74巻:1878〜84頁。様々な濃度のPKCアクチベーター、ブリオスタチン、BR−101(DCP−LA)およびBR−111(DHA−CP6)との、これらの細胞の24時間のインキュベーションは、細胞内と分泌されたAβの両方のレベルを著しく減少させた。ジアシルグリセロール結合部位への結合によりPKCを活性化するブリオスタチンを用いた場合、阻害は二相性であり、20nM以上の濃度では正味の影響はない。これは、このクラスのPKCアクチベーターが高濃度で使用された場合の、PKCを下方制御するその能力から説明することができる。対照的に、PKCのホスファチジルセリン部位に結合するBR−101(DCP−LA)およびBR−111(DHA−CP6)は、10〜100μΜまでの濃度で阻害を単調に増加させ、より高い濃度では下方制御の証拠がないことを示した。
【0178】
PKCアクチベーターにより引き起こされるAβレベルの減少は、Aβ合成の阻害またはAβ分解の活性化が原因であったかどうか判定するため、本発明者らは、BR−111(DHA−CP6)(0.01〜10μΜ)および低濃度(100nM)の外因性の単量体Aβ−42を、培養したSH−SY5Y細胞に適用した。このAβ濃度は低すぎて、測定可能な毒性または細胞死を生じない。SH−SY5Y細胞は微量のAβしか産生しないので、この実験は、PKCアクチベーターのAβ分解を強化する能力の効果的な試験であった。24時間で、大部分のAβが細胞により取り込まれ培地内のAβ濃度は検出不能であった。0.01〜10μΜのDHA−CP6の細胞への添加は、Aβの細胞レベルを45〜63%減少させたが、これは、PKCεアクチベーターが外因性のAβの分解速度を増加させたことを示した。
【0179】
DHA−CP6、ブリオスタチン、およびDCP−LAは、アラマーブルーおよびCyQuant染色で測定した場合、細胞生存または増殖に対して効果がなく、これは、Aβ産生の減少が、細胞増殖または細胞生存の変化から生じなかったことを示している。
【0180】
例5:TACE活性に対するPKCアクチベーターの効果
TACEアッセイ。5μlの細胞ホモジネート、3μlの緩衝液(50mM TRIS−HCl 7.4プラス25mM NaClプラス4%グリセロール)、および1μlの100μΜ TACE基質IV(Aβz−LAQAVRSSSR−DPa)(Calbiochem)を1.5mlポリプロピレン遠心管内で、37°で20分間インキュベートすることによりTACEを測定した(Jinら、Anal.Biochem.2002年;302巻:269〜75頁)。4℃まで冷却することにより、この反応を停止した。試料を1mlに希釈し、Spex Fluorolog 2蛍光分光計内で蛍光を素早く測定した(ex=320nm、em=420nm)。
【0181】
結果および考察
以前の研究者らは、ホルボール12−ミリスチン酸エステル13−アセテートなどのPKCアクチベーターは、sAPPαの増加およびAβの低下と相関するTACE活性において大きな増加を生じ、これはAPP基質の利用可能性に対してTACEおよびBACE1が競合していることを示唆し、PKCアクチベーターは、この競合をTACE優位へとシフトさせることを報告した。Buxbaumら、J.Biol.Chem.1998年;273巻:27765〜67頁;Etcheberrigarayら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.2006年:103巻:8215−20頁。しかし、これら以前の研究の多くは、線維芽細胞および他の非神経細胞型において行われ、これら細胞は、PKCアクチベーターに対して神経細胞とは異なる反応をするようである。例えば、Etcheberrigarayらは、10pM〜100pMブリオスタチンによるヒト線維芽細胞におけるPKCの活性化が、α−セクレターゼ活性の初期速度をそれぞれ16倍および132倍増加させたことを発見した(Etcheberrigarayら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.2006年)。しかし、ヒトSH−SY5Yニューロブラストーマ細胞、N2aマウス神経芽細胞腫細胞、およびラット海馬の初代神経細胞において、PKCアクチベーターであるブリオスタチン、BR−101(DCP−LA)および/またはBR−111(DHA−CP6)は、TACE活性においてわずかな増加しか起こさなかった。これは、PKCアクチベーターによる神経細胞のAβレベルの減少が、TACEの活性化以外のいくつかの他の機構により引き起こされているに違いないことを示唆している。
【0182】
例6:エンドセリン変換酵素活性に対するPKCアクチベーターの効果
ECEアッセイ。SH−S757ニューロブラストーマ細胞を、ブリオスタチン(0.27nM)、BR−101(DCP−LA)(1μΜ)、およびBR−111(DHA−CP6)(1μΜ)と共にインキュベートした。エンドセリン−変換酵素(ECE)を、JohnsonおよびAhn、Anal.Biochem.2000年;286巻:112〜118頁の方法を使用して蛍光分析により測定した。細胞ホモジネート試料(20μl)を、50mM MES−KOH、pH6.0、0.01% C12E10(ポリオキシエチレン−10−ラウリルエーテル)、および15μΜ McaBK2(7−メトキシクマリン−4−アセチル[Ala7−(2,4−ジニトロフェニル)Lys9]−ブラジキニントリフルオロアセテート塩)(Sigma−Aldrich)内でインキュベートした。37℃で60分後、トリフルオロ酢酸を0.5%まで添加することによって、この反応をクエンチした。試料を水で1.4mlに希釈し、蛍光を、ex=334nm、em=398nmで測定した。
【0183】
結果および考察
Aβは、インスリン分解酵素(インスリジン)、ネプリライシン、およびECEを含めたいくつかの酵素で、インビボで分解することができる。PKCεの過剰発現は、ECEを活性化することが報告されているので(Choiら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.2006年;103巻:8215〜20頁)、本発明者らは、ECEに対するPKCアクチベーターの効果を試験した。ブリオスタチン、BR−101(DCP−LA)、およびBR−111(DHA−CP6)はすべて、ECE活性の持続的増加を生じた。ECEは、ジアシルグリセロール結合CIドメインを有さないので、これは、ブリオスタチンによる活性化は、ECEの直接的活性化によるものではなく、PKCによる、ECEまたはいくつかのECE活性化中間体のリン酸化から生じるものに違いないことを示唆している。この結果はまた、PKCアクチベーターによる間接的活性化ECEは、患者におけるAβのレベルを減少させる有用な手段となり得ることを示唆している。
【0184】
PKCεを特異的に活性化する、本発明のPUFA誘導体などの化合物の利点は、これらが、ホルボールエステルおよび同様の1,2−ジアシルグリセロール(DAG)類似体と比べてあまり下方制御を生じないことにある。DAGに基づくアクチベーターへのPKCの二相性の反応とは、PKCアクチベーターは、ある時点においてAβレベルを減少させ、別の時点ではこれらを増加させることを意味する。da Cruz e Silvaら、J.Neurochem.2009年;108巻:319〜330頁。意図するものと反する効果を回避するためには、慎重な投薬および患者のモニターが必要とされる。この新しいクラスのPKCアクチベーターは、PKCを下方制御する能力に比較的劣るため、この問題は回避することができる。
【0185】
参考文献








【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対象においてアルツハイマー病を診断する方法であって、
a)前記ヒト対象のPKCイプシロンレベルを判定するステップと、
b)前記ヒト対象のPKCイプシロンレベルを、対照対象のPKCイプシロンレベルと比較するステップと
を含み、前記ヒト対象のPKCイプシロンレベルが、前記対照対象のPKCイプシロンレベルより低い場合、前記方法は、前記ヒト対象におけるアルツハイマー病を示す方法。
【請求項2】
前記PKCイプシロンレベルが、1以上の細胞において測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PKCイプシロンレベルが、PKCイプシロンタンパク質レベルまたはPKCイプシロン活性レベルである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記PKCイプシロンレベルが、RT−PCRにより測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記対照対象が、アルツハイマー病を有さない、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記判定するステップ(a)が、インビトロで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞が、線維芽細胞、口腔粘膜細胞、神経細胞、または血液細胞である、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記判定するステップ(a)が、放射免疫アッセイ、ウエスタンブロットアッセイ、免疫蛍光アッセイ、酵素免疫アッセイ、免疫沈降法、化学発光アッセイ、免疫組織化学的アッセイ、ドットブロットアッセイおよびスロットブロットアッセイからなる群から選択される方法を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ヒト対象の前記PKCイプシロンレベルが、前記対照対象のPKCイプシロンレベル以上である場合、前記ヒト対象においてアルツハイマー病が存在しないことが示される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ヒト対象においてアルツハイマー病を診断する方法であって、
a)ヒト対象から1以上の細胞を得るステップと、
b)前記1以上の細胞のPKCイプシロンレベルを判定するステップと、
c)ステップ(a)の前記1以上の細胞を、PKCイプシロンアクチベーターである薬剤と接触させるステップと、
d)ステップ(c)の前記1以上の細胞のPKCイプシロンレベルを、ステップ(c)における前記接触の後に判定するステップと
を含み、ステップ(d)で判定されたPKCイプシロンレベルが、ステップ(b)で判定されたPKCイプシロンレベルより大きい場合、アルツハイマー病が前記ヒト対象において示される方法。
【請求項11】
前記PKCイプシロンレベルが、PKCイプシロンタンパク質レベルまたはPKCイプシロン活性レベルである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記PKCイプシロンレベルがRT−PCRにより測定される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記PKCイプシロンレベルが、1以上の細胞において測定される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記ステップ(b)、(c)および(d)が、インビトロで行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞が、線維芽細胞、口腔粘膜細胞、神経細胞、または血液細胞である、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記判定するステップ(b)、(d)、または(b)および(d)の両方が、放射免疫アッセイ、ウエスタンブロットアッセイ、免疫蛍光アッセイ、酵素免疫アッセイ、免疫沈降法、化学発光アッセイ、免疫組織化学的アッセイ、ドットブロットアッセイおよびスロットブロットアッセイからなる群から選択される方法を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(d)で判定された前記PKCイプシロンレベルが、ステップ(b)で判定されたPKCイプシロンレベル以下である場合、前記ヒト対象においてアルツハイマー病が存在しないことが示される、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
ヒト対象におけるアルツハイマー病の進行を判定またはモニターする方法であって、
a)前記ヒト対象のPKCイプシロンレベルを判定するステップと、
b)前記ヒト対象のPKCイプシロンレベルを、対照対象のPKCイプシロンレベルと比較するステップと、
c)ステップ(b)における前記比較に基づいて、前記アルツハイマー病の進行を判定またはモニターするステップと
を含む方法。
【請求項19】
アルツハイマー病が進行するにつれて、前記ヒト対象のPKCイプシロンレベルが低下する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記PKCイプシロンレベルが、1以上の細胞において測定される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記PKCイプシロンレベルが、PKCイプシロンタンパク質レベルまたはPKCイプシロン活性レベルである、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記PKCイプシロンレベルが、RT−PCRにより測定される、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記対照対象が、アルツハイマー病を有さない、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記判定するステップ(a)が、インビトロで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記細胞が、線維芽細胞、口腔粘膜細胞、神経細胞、または血液細胞である、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記判定するステップ(a)が、放射免疫アッセイ、ウエスタンブロットアッセイ、免疫蛍光アッセイ、酵素免疫アッセイ、免疫沈降法、化学発光アッセイ、免疫組織化学的アッセイ、ドットブロットアッセイおよびスロットブロットアッセイからなる群から選択される方法を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
アルツハイマー病の進行が逆行するにつれて、PKCイプシロンレベルが前記ヒト対象において増加する、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
細胞のPKCイプシロンタンパク質レベルを上げるための方法であって、1以上のヒト細胞を、無接触のヒト細胞と比較して前記細胞のPKCイプシロンタンパク質レベルを上げるために効果的な、ある量のPKCアクチベーターと接触させるステップを含む方法。
【請求項29】
前記ヒト細胞が、線維芽細胞、口腔粘膜細胞、神経細胞、または血液細胞である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記PKCアクチベーターが大環状ラクトンである、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記大環状ラクトンがブリオスタチンである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ブリオスタチンがブリオスタチン1である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記PKCイプシロンレベルが、PKCイプシロンタンパク質レベルまたはPKCイプシロン活性レベルである、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
ヒト対象においてアルツハイマー病を診断する方法であって、
a)ヒト対象から1以上の細胞を得るステップと、
b)前記1以上の細胞のPKCイプシロンレベルを判定するステップと、
c)ステップ(a)の前記1以上の細胞をAβペプチドと接触させるステップと、
d)ステップ(c)の前記1以上の細胞のPKCイプシロンレベルを、ステップ(c)における前記接触の後に判定するステップと
を含み、ステップ(d)で判定されたPKCイプシロンレベルが、ステップ(b)で判定されたPKCイプシロンレベルと有意に異ならない場合、アルツハイマー病が前記ヒト対象において示される方法。
【請求項35】
前記PKCイプシロンレベルが、PKCイプシロンタンパク質レベルまたはPKCイプシロン活性レベルである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記AβペプチドがAβ1−42である、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記PKCイプシロンレベルがRT−PCRにより測定される、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記PKCイプシロンレベルが1以上の細胞において測定される、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記ステップ(b)、(c)および(d)がインビトロで行われる、請求項に記載の方法。
【請求項40】
前記細胞が、線維芽細胞、口腔粘膜細胞、神経細胞、または血液細胞である、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
前記判定するステップ(b)、(d)、または(b)および(d)の両方が、放射免疫アッセイ、ウエスタンブロットアッセイ、免疫蛍光アッセイ、酵素免疫アッセイ、免疫沈降法、化学発光アッセイ、免疫組織化学的アッセイ、ドットブロットアッセイおよびスロットブロットアッセイからなる群から選択される方法を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項42】
ステップ(d)で判定された前記PKCイプシロンレベルが、ステップ(b)で判定されたPKCイプシロンレベル未満である場合、前記ヒト対象においてアルツハイマー病が存在しないことが示される、請求項34に記載の方法。
【請求項43】
PKCイプシロンに特異的な1以上の抗体を含むキット。
【請求項44】
PKCアクチベーターをさらに含む、請求項43に記載のキット。
【請求項45】
PKCイプシロンアクチベーターをさらに含む、請求項43に記載のキット。
【請求項46】
PKCイプシロンをコードしている遺伝子に特異的な1以上のオリゴヌクレオチドをさらに含む、請求項43に記載のキット。
【請求項47】
PKCイプシロンをコードしている遺伝子に特異的な1以上のオリゴヌクレオチドを含むキット。
【請求項48】
PKCアクチベーターをさらに含む、請求項47に記載のキット。
【請求項49】
PKCイプシロンアクチベーターをさらに含む、請求項47に記載のキット。
【請求項50】
アルツハイマー病の治療に有用な化合物を同定する方法であって、
a)アルツハイマー病対象から1以上の細胞を得ることと、
b)前記1以上の細胞のPKCイプシロンレベルを判定することと、
c)前記細胞を候補化合物と接触させることと、
d)前記接触させるステップ(c)の後に前記1以上の細胞のPKCイプシロンレベルを判定することと
を含み、ステップ(d)で判定されたPKCイプシロンレベルが、ステップ(b)で判定されたPKCイプシロンレベルより大きい場合、前記候補化合物がアルツハイマー病の治療に有用な化合物であると同定される方法。
【請求項51】
前記PKCイプシロンレベルが、PKCイプシロンタンパク質レベルまたはPKCイプシロン活性レベルである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記PKCイプシロンレベルが、RT−PCRにより測定される、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記ステップがインビトロで行われる、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記細胞が、線維芽細胞、口腔粘膜細胞、神経細胞、または血液細胞である、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
前記判定するステップ(b)もしくは(d)、または両方が、放射免疫アッセイ、ウエスタンブロットアッセイ、免疫蛍光アッセイ、酵素免疫アッセイ、免疫沈降法、化学発光アッセイ、免疫組織化学的アッセイ、ドットブロットアッセイおよびスロットブロットアッセイからなる群から選択される方法を含む、請求項50に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−520652(P2013−520652A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553907(P2012−553907)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2011/000315
【国際公開番号】WO2011/102907
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(503310224)ブランシェット・ロックフェラー・ニューロサイエンスィズ・インスティテュート (25)
【Fターム(参考)】