説明

プロテクタ付ゴムホース

【課題】プロテクタ付ゴムホースは、ゴム製のホースHをプロテクタPT内に装着する作業が容易であり、かつ堅固にプロテクタPTに保持されること。
【解決手段】プロテクタ付ゴムホースは、ゴム製のホースHと、このホースHの外周を覆うように装着される中空のプロテクタPTとを備えている。プロテクタPTは、第1辺部Sd1、第2辺部Sd2、第3辺部Sd3により断面三角形に形成されている。ホースHの外周部は、第1辺部Sd1に接触する箇所を接着剤で接着した第1接着部Ad1および、第2辺部Sd2に接触する箇所を接着剤で接着した第2接着部Ad2で固定されている。第1辺部Sd1と第2辺部Sd2の角度は、60゜である。また、第3辺部Sd3は、ホースHの外周部との間にスペースSpを形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム製のホースの外周に保護のためにゴム製のプロテクタを取り付けたプロテクタ付ゴムホースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の燃料系統に使用されるゴムホースとして、押出成形により長尺状に成形された後、加硫されて所定寸法に裁断され、さらに、ゴムホースの外周に、磨耗防止、傷つき防止、保温等のために、筒状の弾性プロテクタを取付けた構成がある。
【0003】
こうした従来のプロテクタ付ゴムホースでは、プロテクタをホースに装着するのに、円筒状のプロテクタに空気を吹き込みつつ圧入することでホースの外周にプロテクタを密着して保持する構成(特許文献1)や、プロテクタの全内周にわたって突起を形成し、プロテクタ内にホースを圧入して、該突起部をホースの外周部に接触させて保持する構成(特許文献2)が知られている。
【0004】
また、プロテクタ付ゴムホースの他の技術として、取付けを容易にするためプロテクタの内径を取付けるゴムホースの外径よりも大きく形成し、プロテクタにゴムホースを挿入した後に、接着剤等により1箇所でゴムホースにプロテクタを固着する構成も知られている。しかし、このような接着方法では、ゴムホースがプロテクタ内に堅固に保持され難いという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−118999
【特許文献2】実開平5−87397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の技術の問題点を解決することを踏まえ、ゴム製のホースをプロテクタ内に装着する作業が容易であり、かつ堅固にプロテクタに保持することができるプロテクタ付ゴムホースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
適用例1は、加硫成形されたゴム製のホースと、該ホースの外周を覆うように装着される中空のプロテクタとを備えたプロテクタ付ゴムホースにおいて、
上記プロテクタは、上記ホースの外周部に接触する平面を有する第1辺部と、該第1辺部と所定角度で折曲されかつ上記ホースの外周部に接触する平面を有する第2辺部と、上記第1辺部と上記第2辺部とを連結しかつ上記ホースを上記第1辺部および第2辺部とともに囲む第3辺部と、を備え、
上記ホースの外周部は、上記第1辺部に接触する箇所を接着剤で接着されるとともに、上記第2辺部に接触する箇所を接着剤で接着され、
上記所定角度は、90゜以下であり、
上記第3辺部は、上記ホースの外周部に対してスペースを形成していること、
を特徴とする。
【0009】
適用例1に記載のプロテクタ付ゴムホースにおいて、ホースにプロテクタを装着するには、加硫済みのホースおよびプロテクタを準備し、さらにこれらを必要に応じて成形型などにより癖付けすることで曲がった形状にする。そして、ホースをプロテクタの通路内に挿入して、ホースの外周部を第1辺部および第2辺部に接触させ、それらの接触した2箇所に接着剤を塗布する。これにより、ホースにプロテクタを装着することができる。
【0010】
また、ホースは、プロテクタの第1辺部および第2辺部に2箇所で支持されるとともに接着されているので、強固かつ安定した姿勢で固定される。しかも、ホースは、車両のエンジンの振動を受けても、90゜以下に配置された第1辺部と第2辺部により、両側で支持されているから振動しにくく、より一層、強固にプロテクタに固定することができる。
【0011】
さらに、ホースは、プロテクタの第1辺部および第2辺部に接触するが、他の第3辺部に対してスペースを隔てて接触しないから、プロテクタへの挿入作業性に優れている。したがって、曲がったホースであっても容易に挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例にかかるプロテクタ付ゴムホースをエンジンと燃料タンクとの配管系に適用した構成を説明する説明図である。
【図2】図1のプロテクタ付ゴムホースの周辺を拡大した説明図である。
【図3】図2の矢印3から見た図である。
【図4】プロテクタ付ゴムホースを示す斜視図である。
【図5】他の実施例にかかるプロテクタ付ゴムホースを示す端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(1) 車両の燃料配管の構造
以下、本発明の一実施の形態にかかる実施例について図面を用いて説明する。図1は本発明の一実施例にかかるプロテクタ付ゴムホースをエンジンEGと燃料タンクFTとの配管系に適用した構成を説明する説明図である。図1において、自動車の燃料系統において、エンジンEGは、燃料タンクFTに燃料配管FPを通じて接続されている。燃料配管FPは、金属製のパイプPと、ゴム製のホースHとを備え、ホースHの一端部がエンジンEGおよび燃料タンクFTにそれぞれ接続されている。また、ホースHは、ゴム製のプロテクタPTに挿入されることで、その外周部が保護されている。パイプP、プロテクタPTおよびホースHは、配策経路に沿って所定の形状に曲げられている。
【0014】
図2は図1のプロテクタ付ゴムホースの周辺を拡大した説明図、図3は図2の矢印3から見た図である。ホースHは、内層H1と外層H2とを積層したゴムホースであり、耐燃料特性および機械的強度などを考慮して、例えば、内層H1にNBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)を用い、外層H2にクロロスルホン化ポリエチレン(CSM)を用いることができる。
【0015】
プロテクタPTは、ホースHの外周部を覆うことでホースHを保護するゴム製の断面三角形の長尺体であり、その耐衝撃性を考慮して、例えば、EPDMを用いることができる。ここで、各々の三角形の辺を、第1辺部Sd1、第2辺部Sd2および第3辺部Sd3とすると、これらは所定の肉厚で正三角形を形成している。
【0016】
ホースHの外周部は、第1辺部Sd1の内壁と接触し接着剤により接着されることで第1接着部Ad1となり、第2辺部Sd2の内壁と接触し接着剤により接着されることで第2接着部Ad2となっている。また、第1接着部Ad1と第2接着部Ad2に対して軸中心と逆側の第3辺部Sd3とホースHとの間に、スペースSpが確保されている。スペースSpは、ホースHがプロテクタPTの内壁に接触させず、挿入作業性を向上させるための間隙になっている。
【0017】
ホースHは、その内径d1を4〜30mm、外径d2を11〜40mmとすることができる。プロテクタPTは、その第1ないし第3辺部Sd1,Sd2,Sd3の肉厚t1を2〜5mmに設定することができる。また、ホースHの外周面と第3辺部Sd3の内面との最短距離L1は1〜10mmとすることができる。
【0018】
(2) プロテクタPTのホースHへの装着作業
ホースHにプロテクタPTを装着するには、加硫済みのホースHおよびプロテクタPTを準備し、さらにこれらを必要に応じて成形型などにより癖付けすることで曲がった形状にする。そして、ホースHをプロテクタPTの通路内に挿入して、ホースHの外周部を第1辺部Sd1および第2辺部Sd2に接触させ、接触した箇所のうち、プロテクタPTの一端面の2箇所に接着剤を塗布することで第1および第2接着部Ad1,Ad2とし、その他端面も同様に2箇所に接着剤を塗布して第1および第2接着部Ad1,Ad2とする。これにより、ホースHにプロテクタPTを装着することができる。
【0019】
(3) 実施例の作用・効果
上記実施例の構成により、上述した効果のほか、以下の効果を奏する。
(3)−1 ホースHは、プロテクタPTの第1辺部Sd1および第2辺部Sd2にそれぞれ第1および第2接着部Ad1,Ad2を介して支持されるとともに接着されているので、強固かつ安定した姿勢で固定されている。しかも、ホースHは、車両のエンジンの振動を受けても、60゜の角度θで形成された第1辺部Sd1と第2辺部Sd2により支持されているから大きな振動を生じることがなく、より一層、強固に固定することができる。
【0020】
(3)−2 ホースHは、プロテクタPTの第1辺部Sd1および第2辺部Sd2に接触するが、他の第3辺部Sd3に対してスペースSpを隔てて接触しないから、プロテクタPTへの挿入作業性に優れている。したがって、曲がったホースであっても容易に挿入することができる。
【0021】
なお、この発明は上記実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0022】
図5は他の実施例にかかるプロテクタ付ゴムホースを示す断面図である。本実施例は、プロテクタPT−Bの断面が正方形である構成に特徴を有する。すなわち、プロテクタPT−Bは、断面四角形の第1辺部Sd1−Bと、第2辺部Sd2−Bと、第1辺部Sd1−Bおよび第2辺部Sd2−Bと連続した直角で連結する第3辺部Sd3−Bを備えており、第1辺部Sd1−Bおよび第2辺部Sd2−BでホースHの外周部と接触するとともに第1および第2接着部Ad1−B,Ad2−Bで接着され、さらに、その反対側がスペースSpになっている。このように、プロテクタPT−Bを構成する第1および第2辺部Sd1−B,Sd2−Bは、ホースHの振動を防ぐように堅固に支持することができる90゜以下の角度であれば、各種の形状をとることができる。また、プロテクタPT−Bの他の第3辺部Sd3−Bは、三角形の一辺を形成する辺部や曲面であってもよく、そのプロテクタの押出成形に適する形状であれば各種の形状を適用することができる。
【0023】
本実施例では、プロテクタ付ゴムホースを燃料配管について説明したが、これに限らず、冷却系のラジエータホースなど各種のホースに適用することができる。
【符号の説明】
【0024】
EG…エンジン
FP…燃料配管
FT…燃料タンク
H…ホース
H1…内層
H2…外層
P…パイプ
PT…プロテクタ
Sd1,Sd2,Sd3…第1ないし第3辺部
Ad1,Ad2…第1および第2接着部
Sp…スペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫成形されたゴム製のホース(H)と、該ホース(H)の外周を覆うように装着される中空のプロテクタ(PT)とを備えたプロテクタ付ゴムホースにおいて、
上記プロテクタ(PT)は、上記ホース(H)の外周部に接触する平面を有する第1辺部(Sd1)と、該第1辺部(Sd1)と所定角度で折曲されかつ上記ホース(H)の外周部に接触する平面を有する第2辺部(Sd2)と、上記第1辺部(Sd1)と上記第2辺部(Sd2)とを連結しかつ上記ホース(H)を上記第1辺部(Sd1)および第2辺部(Sd2)とともに囲む第3辺部(Sd3)と、を備え、
上記ホース(H)の外周部は、上記第1辺部(Sd1)に接触する箇所を接着剤で接着されるとともに、上記第2辺部(Sd2)に接触する箇所を接着剤で接着され、
上記所定角度は、90゜以下であり、
上記第3辺部(Sd3)は、上記ホースの外周部に対してスペース(Sp)を形成していること、
を特徴とするプロテクタ付ゴムホース。
【請求項2】
請求項1に記載のプロテクタ付ゴムホースにおいて、
上記プロテクタ(PT)は、断面が三角形または四角形であるプロテクタ付ゴムホース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−196859(P2010−196859A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45103(P2009−45103)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】