説明

プロトン伝導性高分子膜およびその製造方法

本発明の目的は、プロトン伝導性に加え、優れた機械的特性、高いメタノール遮断性を有し、固体高分子形燃料電池および直接アルコール形燃料電池の電解質として有用なプロトン伝導性高分子膜を提供することである。本発明は、23℃でのプロトン伝導度と25℃での所定濃度のメタノール水溶液に対するメタノール遮断係数の積が、所定値以上のプロトン伝導性高分子膜である。また本発明は、イオン交換容量が0.3ミリ当量/g以上であり、かつ、結晶相を有するプロトン伝導性高分子膜である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、プロトン伝導性高分子膜およびその製造方法に関する。
【背景技術】
プロトン伝導性高分子膜は、固体高分子形燃料電池、湿度センサー、ガスサンサー、エレクトクロミック表示素子などの電気化学素子の主要な構成材料である。これら電気化学素子のなかでも、固体高分子形燃料電池は、将来の新エネルギー技術の柱の一つとして期待されている。高分子化合物からなるプロトン伝導性高分子膜を電解質膜として使用する固体高分子形燃料電池(PEFCまたはPEMFC)は、低温における作動、小型軽量化が可能などの特徴から、自動車などの移動体、家庭用コージェネレーションシステム、および民生用小型携帯機器などへの適用が検討されている。とくに、PEFCを搭載した燃料電池自動車は、エネルギー効率が高く、炭酸ガス排出量が少ないなどの特徴を有し、究極のエコロジーカーとして社会的な関心が高まってきている。さらに、メタノールを燃料とする直接メタノール形燃料電池(DMFC)は、単純な構造と燃料供給やメンテナンスの容易さ、さらには高エネルギー密度などの特徴を有し、リチウムイオン二次電池代替として、携帯電話やノート型パソコンなどの民生用小型携帯機器への応用が期待されている。
プロトン伝導性高分子膜としては、1950年代に開発された、スチレン系の陽イオン交換膜がある。しかし、このスチレン系の陽イオン交換膜は、燃料電池動作環境下における安定性に乏しく、充分な寿命を有する燃料電池を製造するにはいたっていない。実用的な安定性を有するプロトン伝導性膜として、ナフィオン(Nafion,デュポン社の登録商標。以下同様)に代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸膜が開発され、PEFCをはじめとする多くの電気化学素子への応用が提案されている。パーフルオロカーボンスルホン酸膜は、高いプロトン伝導度を有し、耐酸性、耐酸化性などの化学的安定性に優れている。しかし、製造が困難で、非常に高価であるという欠点がある。さらに、民生用携帯機器に搭載される燃料電池の燃料として有望視されているメタノールなどの水素含有液体などの透過(クロスオーバーともいう)が大きく、いわゆる化学ショート反応が起こる。これにより、カソード電位が低下するだけでなく、燃料効率の低下が起こり、セル特性低下の主要因となっている。従って、このようなパーフルオロカーボンスルホン酸膜を直接メタノール形燃料電池の電解質膜として用いるには課題が多い。また、含フッ素化合物は合成時および廃棄時の環境への負荷が大きく、環境問題を考慮した燃料電池などの構成材料として必ずしも望ましいものではない。
このような背景から、製造が容易で、より安価なプロトン伝導性高分子膜として、芳香族系高分子化合物のスルホン化物などからなる非パーフルオロカーボンスルホン酸型プロトン伝導性高分子膜が種々提案されている。その代表的なものとして、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(たとえば、特開平6−93114号公報を参照のこと)、スルホン化ポリエーテルスルホン(たとえば、特開平10−45913号公報を参照のこと)、スルホン化ポリスルホン(たとえば、特開平9−245818号公報を参照のこと)、スルホン化ポリイミド(たとえば、特表2000−510511号公報を参照のこと)などの耐熱芳香族高分子のスルホン化物などが提案されている。また、安価で、機械的、化学的に安定とされるSEBS〔スチレン−(エチレン−ブチレン)−スチレン〕のスルホン化体からなるプロトン伝導性高分子膜(特表平10−503788号公報を参照のこと)が提案されている。これらのスルホン化炭化水素系高分子膜は製造が容易であり、かつ低コスト化が可能であるとされている。しかし、高いプロトン伝導度が要求されるPEFCの電解質膜として使用するには、プロトン伝導度が不充分である。また、それを改善するために、スルホン酸基などのプロトン伝導性置換基の導入量を増やすと、機械的特性の低下(強度低下、伸び低下)や、水溶性になったり、膜の吸水率が上昇して著しく膨潤するなどハンドリング性が著しく損なわれる。また、小型携帯機器用燃料電池の燃料として有望なメタノールに対しても、これと同様の傾向を示し、その使用が制限される恐れがある。
化学的・熱的安定性を有する炭化水素系高分子化合物のスルホン化物として、さらに、ポリフェニレンサルファイドをベースとしたプロトン伝導性物質が提案されている。しかしながら、ポリフェニレンサルファイドは実質的に溶媒不溶性であり、他の溶媒溶解性のプロトン伝導性物質と比較して、製膜性等の加工性が劣る。例えば、米国特許第4,110,265号公報には、ポリフェニレンサルファイドを発煙硫酸と反応させてスルホン化ポリフェニレンサルファイドを調製し、カチオン交換物質として使用する方法が開示されている。しかし、この物質は溶媒不溶性の架橋性ポリマーであることから、さらに加工して使用するのは困難である。また、特表平11−510198号公報には、非プロトン性極性溶媒に可溶なスルホン化ポリフェニレンサルファイドが提案されている。これはポリフェニレンサルファイドを変性することにより、非プロトン性極性溶媒への溶解性を付与し、容易にフィルムに加工できるポリマーの調製方法が開示されている。しかし、ここに開示されている方法は、ポリフェニレンサルファイドの変性(スルホン化)、沈殿・乾燥による変性物の回収、非プロトン性極性溶媒溶液調製、製膜・溶媒除去、など種々の工程を経るものである。
さらに、国際公開第02/062896号パンフレットには、スルホン化ポリフェニレンサルファイドなどのスルホン化芳香族系高分子膜の製造方法が開示されている。このスルホン化芳香族高分子膜の製造方法において、スルホン化剤としてクロロスルホン酸、溶媒としてジクロロメタンを使用することが記載されている。しかし、この製造方法で得られたスルホン化高分子膜も、高いプロトン伝導度を得るためにスルホン酸基などのプロトン伝導性置換基の導入量を増やすと、メタノールの透過が大きくなることが容易に想定される。このように、直接メタノール形燃料電池の電解質膜には、プロトン伝導度を低下させずにメタノール透過を抑制することが要求されているが、プロトン伝導度とメタノール遮断性がトレードオフの関係にあり、これらの特性を両立させることは困難である。
また、このジクロロメタンなどの低炭素数のハロゲン化炭化水素は、その沸点が低いことから、スルホン化高分子膜を得るまでに、溶媒の揮発防止や揮発した溶媒の回収のためなどの付帯設備が必要になり、製造コストが大きくなることが容易に想定される。
【発明の開示】
本発明の目的は、上記問題を鑑みてなされたものであり、固体高分子形燃料電池や直接メタノール形燃料電池の電解質膜として有用な、プロトン伝導度とメタノール遮断性が両立したプロトン伝導性高分子膜およびその製造方法を提供することである。
すなわち本発明のプロトン伝導性高分子膜は、23℃でのプロトン伝導度[S/cm]と25℃での所定濃度のメタノール水溶液に対するメタノール遮断係数[(cm・日/μmol]の積[(S・日)/μmol]が、少なくとも下記(A)または(B)のいずれか一方をみたすものに関する。
(A)10重量%メタノール水溶液に対する値が、2.5×10−4(S・日)/μmol以上
(B)64重量%メタノール水溶液に対する値が、4.5×10−5(S・日)/μmol以上
また、イオン交換容量が0.3ミリ当量/g以上であり、かつ、結晶相を有するものに関する。
前記プロトン伝導性高分子膜が、スルホン酸基を含有するものである。
前記プロトン伝導性高分子膜が、炭化水素系高分子化合物からなるものが好ましく、さらに結晶性芳香族高分子化合物からなることが好ましい。さらにより好ましくはポリフェニレンサルファイドである。
前記プロトン伝導性高分子膜は、JIS K 7127に準じて測定される破断伸びが10%以上であることが好ましい。
また、前記プロトン伝導性高分子膜の23℃でのプロトン伝導度が1.0×10−3S/cm以上であり、より好ましくは、1.0×10−2S/cm以上である。
前記プロトン伝導性高分子膜の25℃での64重量%のメタノール水溶液におけるメタノール遮断係数が、3.0×10−4(cm・日)/μmol以上であることが好ましい。
また、前記プロトン伝導性高分子膜は、γ線、電子線およびイオンビームからなる群から選択させる少なくとも1種の放射線を照射したものが好ましく、前記放射線の照射量が、10〜1000kGyであることがより好ましい。
本発明はまた、前記プロトン伝導性高分子膜を使用した膜−電極接合体に関する。
前記膜−電極接合体の少なくとも一方の触媒層が、白金およびルテニウム触媒からなるものである。
本発明はまた、前記プロトン伝導性高分子膜、あるいは、前記膜−電極接合体、を使用した固体高分子形燃料電池に関する。
本発明はまた、前記プロトン伝導性高分子膜、あるいは、前記膜−電極接合体、を使用した直接メタノール形燃料電池。
さらに、本発明のプロトン伝導性高分子膜の製造方法は、炭化水素系高分子化合物からなるフィルムと、スルホン化剤とを接触させることによって、23℃でのプロトン伝導度[S/cm]と25℃での所定濃度のメタノール水溶液に対するメタノール遮断係数[(cm・日)/μmol]の積[(S・日)/μmol]が、少なくとも下記(A)または(B)のいずれか一方をみたすものを得る方法に関する。
(A)10重量%メタノール水溶液に対する値が、2.5×10−4(S・日)/μmol以上
(B)64重量%メタノール水溶液に対する値が、4.5×10−5(S・日)/μmol以上
また、本発明のプロトン伝導性高分子膜の製造方法は、結晶性炭化水素系高分子化合物からなるフィルムと、スルホン化剤とを接触させることによって、イオン交換容量が0.3ミリ当量/g以上であり、かつ、結晶相を有するものを得る方法に関する。
前記炭化水素系高分子化合物が、結晶性炭化水素系高分子化合物であり、さらに好ましくはポリフェニレンサルファイドである。
前記スルホン化剤が、クロロスルホン酸,発煙硫酸,三酸化硫黄,濃硫酸からなる群から選択される少なくとも1種である。
また、前記フィルムと、スルホン化剤とを溶媒存在下で接触させることが好ましく、前記溶媒が炭素数3以上のハロゲン化物であることがより好ましい。
さらに前記溶媒が、1−クロロプロパン、1−ブロモプロパン、1−クロロブタン、2−クロロブタン、1−クロロ−2−メチルプロパン、1−ブロモブタン、2−ブロモブタン、1−ブロモ−2−メチルプロパン、1−クロロペンタン、1−ブロモペンタン、1−クロロヘキサン、1−ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサンおよびブロモシクロヘキサンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、1−クロロブタンであることがより好ましい。
前記スルホン化剤が三酸化硫黄であって、三酸化硫黄を含むガスと炭化水素系高分子化合物からなるフィルムとを接触させることに関する。
さらにγ線、電子線およびイオンビームからなる群から選択される少なくとも1種の放射線を照射することが好ましく、前記放射線の照射量が、10〜1000kGyであることがより好ましい。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の膜−電極接合体の要部断面図である。
図2は、本発明の固体高分子形燃料電池(直接メタノール形燃料電池)の要部断面図である。
図3は、本発明の直接メタノール形燃料電池の要部断面図である。
なお図1〜図3中、1はプロトン伝導性高分子膜を、2及び3は結着剤層を、4及び5は触媒層を、6及び7は拡散層を、8及び9は触媒担持ガス拡散電極を、10は膜−電極接合体を、11及び12はセパレーターを、13は燃料流路を、14は酸化剤流路を、15は燃料タンクを、16支持体を、それぞれ表す。
図4は、実施例1のプロトン伝導性高分子膜のX線回折チャートである。
図5は、実施例2のプロトン伝導性高分子膜のX線回折チャートである。
図6は、実施例3のプロトン伝導性高分子膜のX線回折チャートである。
図7は、実施例17のプロトン伝導性高分子膜のX線回折チャートである。
図8は、比較例3のプロトン伝導性高分子膜のX線回折チャートである。
図9は、比較例4のプロトン伝導性高分子膜のX線回折チャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明のプロトン伝導性高分子膜は、23℃でのプロトン伝導度[S/cm]と25℃での所定濃度のメタノール水溶液に対するメタノール遮断係数[(cm・日)/μmol]の積[(S・日)/μmol]が、少なくとも下記(A)または(B)のいずれか一方をみたすことが好ましい。
(A)10重量%メタノール水溶液に対する値が、2.5×10−4(S・日)/μmol以上
(B)64重量%メタノール水溶液に対する値が、4.5×10−5(S・日)/μmol以上
本発明におけるプロトン伝導度とは、プロトン伝導性高分子膜中のプロトン(H)の移動のし易さを示すものである。一般的には、公知の交流インピーダンス法により、プロトン伝導性高分子膜の膜抵抗を測定して、算出することができる。一方、メタノール遮断係数は、プロトン伝導性高分子膜中のメタノール透過のし難さを示すものである。公知の方法で、プロトン伝導性高分子膜のメタノール透過係数を測定し、その逆数により定義されるものである。一例をあげると、市販の膜透過実験装置を用いて、イオン交換水と所定濃度のメタノール水溶液をプロトン伝導性高分子膜で隔離する。所定時間経過後にイオン交換水側に透過したメタノール量をガスクロマトグラフで定量し、これからメタノール透過係数を求める。さらに、このメタノール透過係数の逆数をとり、メタノール遮断係数を算出することができる。これらのメタノール遮断係数を算出する際のフローチャートを以下に示す。
ここでメタノール遮断係数は、使用するメタノール水溶液の濃度に依存して代わるため、実際に使用するメタノール水溶液の濃度において、所望の値を有することが必要である。

本発明のプロトン伝導性高分子膜を、メタノール水溶液を燃料とする直接メタノール形燃料電池の電解質膜に使用して優れた発電特性を得るためには、高いプロトン伝導度のみでなく、燃料であるメタノールの透過によるセル特性の低下を防ぐこと、すなわち高いメタノール遮断性が要求される。ここで、本発明のプロトン伝導性高分子膜は、これらのプロトン伝導度とメタノール遮断係数の積が、特定の値以上であるため、プロトン伝導度が低すぎたり、メタノール透過が多すぎたりして、性能が低下することなく、直接メタノール形燃料電池の電解質膜として、優れた性能を発現することが可能である。
例えば、本発明のプロトン伝導性高分子膜と、これと同等のプロトン伝導度であって、メタノール遮断性が低く、前記(A)および(B)を満たさない膜とを比較した場合、本発明の膜はメタノール透過による燃料ロスが少なくなるため、一定の発電特性を満たすのに必要なメタノール供給量が少なくてすむ。また、これに伴って、燃料タンクなどの付帯設備を低容量化することができ、直接メタノール形燃料電池の重量エネルギー密度や体積エネルギー密度を向上させることができる。さらに、透過したメタノールによる性能低下も抑制でき、好ましい。
また、本発明のプロトン伝導性高分子膜と、これと同等のメタノール遮断性であって、プロトン伝導度が低く、前記(A)および(B)を満たさない膜とを比較した場合、同量のメタノールを供給した場合、本発明の膜はプロトン伝導度が優れるため、優れた発電特性を発現しうる。これに伴って、必要な特性を得るのに必要な、膜面積やセル数を減らすことができる。これによって、燃料電池本体を小型・軽量化することができ、直接メタノール形燃料電池の重量エネルギー密度や体積エネルギー密度を向上させることができ、好ましい。
なお、本発明において、23℃での10重量%メタノール水溶液に対するプロトン伝導度と25℃での10重量%メタノール水溶液に対するメタノール遮断係数の積は、2.5×10−4(S・日)/μmol以上であり上限値は特にないが、この積は2.5×10−4(S・日)/μmol以上、2.5×10−1(S・日)/μmol以下であることが好ましい。
また、本発明において、23℃での64重量%メタノール水溶液に対するプロトン伝導度と25℃での64重量%メタノール水溶液に対するメタノール遮断係数の積は、4.5×10−5(S・日)/μmol以上であり上限値は特にないが、この積は4.5×10−5(S・日)/μmol以上、4.5×10−2(S・日)/μmol以下であることが好ましい。
また、本発明のプロトン伝導性高分子膜は、イオン交換容量が0.3ミリ当量/g以上であり、かつ、結晶相を有することが好ましい。このプロトン伝導性高分子膜は、例えば、プロトン伝導性置換基としてスルホン酸基を含有する場合には、結晶性高分子化合物の主に非晶相に所定量のスルホン酸基を有し、膜形状に加工された形態において、前記結晶性高分子化合物に由来する結晶相が残存している状態のものを指す。イオン交換容量が前記範囲よりも低い場合、プロトン伝導性高分子膜のプロトン伝導度が低くなる恐れがある。本発明のプロトン伝導性高分子膜が、結晶相を有するかどうかは、公知の結晶化度の測定方法を使用することができる。たとえば、非容法(密度法)、X線回折、赤外吸収スペクトル法、核磁気共鳴法(NMR)、熱量測定法などを使用できる。本発明においては、X線回折において、結晶性ピークが確認できるものであればよい。また、示差走査熱量測定(DSC)や示差熱分析(DTA)で測定可能な融解吸熱量や再結晶発熱量から、結晶化度を測定し、結晶相の有無を確認してもよい。
本発明のプロトン伝導性高分子膜の結晶化度はとくに限定されないが、好ましくは、結晶性高分子膜を構成する結晶性炭化水素系高分子化合物固有の飽和結晶化度の5%程度が残存していればよい。さらに、飽和結晶化度の20%以上残存していることがより好ましい範囲である。この結晶化度が飽和結晶化度の5%未満であると、プロトン伝導性高分子膜の特性、とりわけ、引張伸びに代表される機械的特性や、メタノール遮断性が所望の値よりも低下する恐れがある。たとえば、ポリフェニレンサルファイドの場合、飽和結晶化度は60%である。他の結晶性高分子化合物についても、公知の文献などに記載の値を参照することができる。
本発明のプロトン伝導性高分子膜は、プロトンを伝導可能な、置換基および/または物質が膜中に含まれることが必須である。プロトンを伝導可能な置換基としては、前述のスルホン酸基以外にも、リン酸基、カルボン酸基、フェノール性水酸基などが挙げられる。これらのなかでも、置換基の導入の容易さや得られた膜のプロトン伝導度に代表される特性を考慮すると、スルホン酸基および/またはスルホン酸基を含む置換基であることが好ましい。
本発明においてスルホン酸基とは、下記式(1)で表わされるスルホン酸基や下記一般式(2)で表わされるスルホン酸基を含む置換基をいう。
−SOH (1)
−R−SOH (2)
[式中、Rはアルキレン、ハロゲン化アルキレン、アリーレン、ハロゲン化アリーレンからなる群から選択される少なくとも1種の結合単位からなる2価の有機基、またはエーテル結合を含んでいてもよい]
また、プロトンを伝導可能な物質としては、硫酸やリン酸などの強酸性溶液、酸化タングステン水和物(WO・nHO)、酸化モリブデン水和物(MoO・nHO)などの無機酸化物、タングストリン酸、モリブドリン酸などの無機固体酸が挙げられる。
本発明のプロトン伝導性高分子化合物は、メタノール遮断性などを考慮すると、炭化水素系高分子からなることが好ましい。炭化水素系高分子化合物としては、例えば、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアリールエーテルスルホン、ポリ(アリルフェニルエーテル)、ポリエチレンオキシド、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリ塩化ビニル、ポリ(ジフェニルシロキサン)、ポリ(ジフェニルフォスファゼン)、ポリスルホン、ポリパラフェニレン、ポリビニルアルコール、ポリ(フェニルグリシジルエーテル)、ポリ(フェニルメチルシロキサン)、ポリ(フェニルメチルフォスファゼン)、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルホキシド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリベンズイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリスチレン、スチレン−(エチレン−ブチレン)スチレン共重合体、スチレン−(ポリイソブチレン)−スチレン共重合体、ポリ1,4−ビフェニレンエーテルエーテルスルホン、ポリアリーレンエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、シアン酸エステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルニトリルなどが例示できる。中でも、スルホン酸基および/またはスルホン酸基を含む置換基の導入のし易さ、得られた膜のプロトン伝導度、機械的特性、化学的安定性などの特性を考慮した場合、ポリベンズイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルホキシド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリパラフェニレン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、シアン酸エステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルニトリルからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。さらに、本発明においては、スルホン酸基および/またはスルホン酸基を含む置換基の導入の容易さ、得られた膜のプロトン伝導度、機械的特性、化学的安定性、水素、メタノールなどの燃料遮断性、酸素、空気などの酸化剤遮断性などの特性を考慮した場合、炭化水素系高分子化合物が、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶性芳香族高分子化合物であることが好ましい。さらに、高いプロトン伝導度、優れた機械的特性、高いメタノール遮断性を有することから、ポリフェニレンサルファイドであることがより好ましい。
本発明のポリフェニレンサルファイドは、具体的には、下記式(3)で表される繰り返し構造単位からなる。
−[Ar−S]− (3)
[式中、Arは下記式(4)〜(6)で表される2価の芳香族単位、nは1以上の整数]

また前記ポリフェニレンサルファイドのArの一部に、必要に応じて以下の構造単位を含有してもよい。
(1)芳香族単位の水素原子の一部がアルキル基、フェニル基、アルコキシル基、ニトロ基およびハロゲン基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換されたもの。
(2)3官能フェニルスルフィド単位。
(3)架橋または分岐単位。
本発明のプロトン伝導性高分子膜は、JIS K 7127に準じて測定した破断伸びが10%以上であることが好ましい。より好ましくは15%以上であり、さらに好ましくは20%以上である。破断伸びが10%よりも小さいと、たとえば、固体高分子形燃料電池や直接メタノール形燃料電池の電解質として使用した場合に、燃料や酸化剤に含まれる水や反応で生成する水を吸収し、膜が膨潤して寸法変形した場合に充分に追従できなくなり、破壊する恐れがある。プロトン伝導性高分子膜の破断伸びを前記範囲に設定するには、プロトン伝導性高分子膜の構成成分である炭化水素系高分子化合物や結晶性芳香族高分子化合物の種類、所望のプロトン伝導度を発現させるために必要なイオン交換容量、などを考慮して適宜設定する必要がある。基本的には、イオン交換容量が高くなるほど破断伸びは低下する傾向を生じるため、所望のプロトン伝導度と破断伸びを満たすように、イオン交換容量を適正化したプロトン伝導性高分子膜を製造する必要がある。
本発明のプロトン伝導性高分子膜のイオン交換容量は、好ましくは0.3ミリ当量/g以上であり、より好ましくは0.5ミリ当量/g以上であり、さらに好ましくは1.0ミリ当量/g以上である。イオン交換容量が、0.3ミリ当量/gよりも低い場合には、所望のプロトン伝導度を発現しない恐れがあり、好ましくない。本発明のプロトン伝導性高分子膜のイオン交換容量には上限値は特にない。しかしイオン交換容量は、0.3ミリ当量/g以上、5.0ミリ当量/g以下であることが好ましい。
本発明のプロトン伝導性高分子膜の、23℃でのにおけるプロトン伝導度は、好ましくは1.0×10−3S/cm以上であり、より好ましくは1.0×10−2S/cm以上である。プロトン伝導度が1.0×10−3S/cmよりも低い場合には、本発明のプロトン伝導性高分子膜を固体高分子形燃料電池や直接メタノール形燃料電池の電解質膜として使用した場合に、充分な発電特性を示さない恐れがある。本発明のプロトン伝導性高分子膜の23℃でのプロトン伝導度には上限値は特にない。しかし23℃でのプロトン伝導度としては、1.0×10−3S/cm以上、1.0S/cm以下であることが好ましく、1.0×10−2S/cm以上、1.0S/cm以下であることがより好ましい。
プロトン伝導性高分子膜のプロトン伝導度を前記範囲に設定するには、プロトン伝導性高分子膜の構成成分である炭化水素系高分子化合物や結晶性芳香族高分子化合物の種類などを考慮して、スルホン酸基などのプロトン伝導性置換基やプロトン伝導性物質の導入量を制御すればよい。
本発明のプロトン伝導性高分子膜のメタノール遮断係数は、メタノール濃度で規格化していないため、測定に使用するメタノール水溶液濃度によって異なる。25℃での64重量%のメタノール水溶液を使用した場合には、好ましくは3.0×10−4(cm・日)/μmol以上、より好ましくは5.0×10−4(cm・日)/μmol以上、さらに好ましくは1.0×10−3(cm・日)/μmol以上である。このメタノール遮断係数が、3.0×10−4(cm・日)/μmolより小さいと、前述したように直接メタノール形燃料電池の電解質膜として使用した場合に、膜中のメタノール透過に起因して生じる、性能低下が起こりやすくなる傾向を示す。本発明のプロトン伝導性高分子膜の25℃での64重量%のメタノール水溶液におけるメタノール遮断係数は、3.0×10−4(cm・日)/μmol以上が好ましいが、上限値は特にない。しかし25℃での64重量%のメタノール水溶液におけるメタノール遮断係数としては、3.0×10−4(cm・日)/μmol以上、3.0×10−1(cm・日)/μmol以下であることがより好ましい。
プロトン伝導性高分子膜のメタノール透過係数を前記範囲に設定するには、プロトン伝導性高分子膜の構成成分である炭化水素系高分子化合物や結晶性芳香族高分子化合物の種類、所望のプロトン伝導度を発現させるために必要なイオン交換容量、などを考慮して適宜設定する必要がある。基本的には、イオン交換容量が高くなるほどメタノール遮断係数が小さくなる傾向を生じるため、所望のプロトン伝導度とメタノール透過係数を満たすように、スルホン酸基などのプロトン伝導性置換基やプロトン伝導性物質の導入量を制御すればよい。
本発明のプロトン伝導性高分子膜は、γ線、電子線およびイオンビームからなる群から選択される少なくとも1種の放射線を照射したものであることが好ましい。放射線を照射し、前記プロトン伝導性高分子膜を改質することによって、プロトン伝導度は向上する傾向を示す。また、メタノール遮断性も向上する場合がある。特に、放射線量、プロトン伝導性高分子膜への透過性、照射時間(工業的な連続照射)などの点から、電子線であることが好ましい。
前記放射線の照射雰囲気は、空気中、無酸素雰囲気、真空雰囲気のいずれの場合も選択可能であるが、生産性を考慮すると空気中であることが好ましい。本発明においては、放射線照射により、プロトン伝導性高分子膜の劣化が生じない雰囲気を適宜設定すれば良い。また、放射線照射によるプロトン伝導性高分子膜の改質を効率的に実施するため、照射雰囲気や膜を加熱してもよい。この際も、プロトン伝導性高分子膜の劣化が生じない条件を適宜設定すればよい。
前記放射線の加速電圧は、0.01〜5.0MeVであることが好ましい。加速電圧が0.01MeVより低いと、プロトン伝導性高分子膜への放射線の透過度が低くなり、膜内部まで均質な膜を得るのが困難になる傾向がある。また、必要な照射線量を確保するのに長時間の照射が必要となり、生産性が著しく低下する傾向がある。5.0MeVを越える場合は、装置が必要以上に大がかりになったり、プロトン伝導性高分子膜の劣化を促進する傾向がある。
前記放射線の照射量は10〜1000kGyであることが好ましい。10kGyよりも照射線量が少ない場合は、充分な照射効果が発現しない傾向がある。また、1000kGyを越える場合は、照射効果が飽和したり、照射時間が長くなったり、プロトン伝導性高分子膜の劣化や特性低下を導く傾向がある。
本発明のプロトン伝導性高分子膜の厚みは、用途に応じて任意の厚みが選択可能である。膜の内部抵抗を低減することを考慮した場合、実用的な機械的強度を有する範囲で、固体高分子形燃料電池の電解質膜に使用する場合には、燃料および酸化剤の遮断性を有する範囲で、それぞれ薄いほどよい。電解質膜としての特性は、イオン交換容量やプロトン伝導度が同等であれば、厚みが薄くなるほど、膜としての抵抗値が低くなる。したがって、膜の厚みは、好ましくは5〜200μmであり、より好ましくは20〜150μmである。この厚みが、5μmより薄い場合は、使用時にピンホールの発生や膜割れが生じやすくなる傾向がある。また、固体高分子形燃料電池の電解質膜として使用した場合に、燃料や酸化剤の遮断性が不充分となり、性能低下の要因となる傾向がある。さらに直接メタノール形燃料電池の電解質膜として使用した場合には、メタノール遮断性が不充分となり、メタノール透過による性能低下の要因となる傾向がある。一方、200μmを超える場合は、プロトン伝導性高分子膜の抵抗が大きくなり、性能低下の要因となる傾向がある。
つぎに、本発明の膜−電極接合体について、一例として、図面を引用して説明する。図1は、本発明のプロトン伝導性高分子膜を使用した膜−電極接合体の要部断面図である。これは、プロトン伝導性高分子膜1と、1の両側に必要に応じて結着剤層2,3が形成され、さらにその外側に触媒層4,5、拡散層6,7をそれぞれ有する触媒担持ガス拡散電極8,9が配置され、膜−電極接合体10が構成される。触媒担持ガス拡散電極8,9としては、市販の触媒担持ガス拡散電極(米国E−TEK社製、など)を用いる方法が例示できるが、これに限定されるものではない。
本発明において、プロトン伝導性高分子膜1は、前記の本発明のプロトン伝導性高分子膜が使用される。
結着剤層2,3は、同一または異なっていてもよく、必要の応じて形成されてもよく、また、形成されなくてもよい。一般的には、ナフィオンに代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸系高分子化合物や、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリイミドなど溶媒溶解性の公知のプロトン伝導性高分子化合物が使用される。これらは、プロトン伝導性高分子膜1と触媒層4.5を接合(接着)するために使用される。これらの材料に対しては、その異種材料に対する接合性に加え、プロトン伝導性高分子膜と同様に、プロトン伝導性や化学的安定性などが要求される。
触媒層4,5は、同一または異なっていてもよく、片側には使用する燃料(水素やメタノールなど)の酸化能を有する触媒が使用される。もう一方には、使用する酸化剤(酸素や空気など)の還元能を有する触媒が使用される。具体的には、活性炭,カーボンナノホーン,カーボンナノチューブなどの高表面積の導電性材料に、白金などの貴金属触媒が担持されたものが使用される。燃料に純水素以外のものを使用する場合には、触媒の被毒を抑制するため、白金の代わりに、白金とルテニウムからなる複合あるいは合金触媒などが使用される。
拡散層6,7は、同一または異なっていてもよく、カーボンペーパーやカーボンクロスなどの多孔質の導電性材料が使用される。これらは供給される水分や電気化学反応によって生成した水で、気孔が塞がれるのを抑制するため、必要に応じて、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系化合物で撥水処理を施してもよい。一般的には、これらの拡散層6,7上に、前記触媒層4,5がナフィオンに代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸系高分子化合物や、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリイミドなど溶媒溶解性の公知のプロトン伝導性高分子化合物をバインダーとして形成され、触媒担持ガス拡散電極8,9が調製され使用される。
本発明の膜−電極接合体10において、触媒層4,5の少なくとも一方は、白金およびルテニウム触媒からなることが好ましい。本発明においては、プロトン伝導性高分子膜1として、メタノール遮断性の高い材料を使用するため、一方の触媒層4で未反応のメタノールが、プロトン伝導性高分子膜1を透過して、もう一方の触媒層5の触媒を被毒するのを抑制することができ、好ましい。
本発明の膜−電極接合体10の製造方法は、公知あるいは任意の方法が選択可能である。一例をあげると、触媒担持ガス拡散電極8,9の触媒層4,5上に、結着剤2,3の構成材料の有機溶媒溶液を塗布した後、溶媒を除去し、プロトン伝導性高分子膜1の両面に配置する。その後、ホットプレス機やロールプレス機などのプレス機を使用して、一般的には120〜250℃程度のプレス温度でホットプレスし、膜−電極接合体10を調製することができる。また必要に応じて、結着剤2,3を使用せずに、膜−電極接合体10を調製しても構わない。
つぎに、本発明のプロトン伝導性高分子膜あるいは膜−電極接合体を使用した固体高分子形燃料電池(直接メタノール形燃料電池)について、一例として、図面を引用して説明する。
図2は、本発明のプロトン伝導性高分子膜あるいは膜−電極接合体を使用した固体高分子形燃料電池(直接メタノール形燃料電池)の要部断面図である。
これは、本発明の膜−電極接合体10と、その外側に配置されたセパレーター11,12に形成された燃料ガスまたは液体、並びに、酸化剤を送り込む流路13,14、の構成よりなるものである。セパレーター11,12は、導電性および化学的安定性、燃料や酸化剤の遮断性を有するカーボングラファイトや金属のプレートが使用される。また、これらは、必要に応じて、撥水処理や耐食処理が施されていてもよい。セパレーター11,13の表面には、燃料ガスまたは液体、並びに、酸化剤を送り込む流路13,14が形成され、固体高分子形燃料電池(直接メタノール形燃料電池)が構成される。燃料ガスまたは液体として、水素を主たる成分とするガスやメタノールを主たる成分とするガスまたは液体を一方の流路13に供給し、酸化剤として、酸素を含むガス(酸素あるいは空気)をもう一方の流路14にそれぞれ供給することにより、該固体高分子形燃料電池は作動する。このとき燃料としてメタノールを使用する場合には、直接メタノール形燃料電池となる。
本発明の固体高分子形燃料電池(直接メタノール形燃料電池)を単独で、あるいは複数積層して、スタックを形成し、使用することや、それらを組み込んだ燃料電池システムとすることもできる。
さらに、本発明のプロトン伝導性高分子膜を使用した直接メタノール形燃料電池について、一例として、図面を引用して説明する。
図3は、本発明のプロトン伝導性高分子膜1あるいは膜−電極接合体10からなる直接メタノール形燃料電池の要部断面図である。膜−電極接合体10は、燃料(メタノールあるいはメタノール水溶液)を充填および供給する機能を有する燃料(メタノールあるいはメタノール水溶液)タンク15の両側に必要数が平面状に配置される。さらにその外側には、酸化剤流路14が形成された支持体16が配置され、これらに狭持されることによって、直接メタノール形燃料電池のセル、スタックが構成される。
前記の例以外にも、本発明のプロトン伝導性高分子膜および膜−電極接合体は、特開2001−313046号公報、特開2001−313047号公報、特開2001−93551号公報、特開2001−93558号公報、特開2001−93561号公報、特開2001−102069号公報、特開2001−102070号公報、特開2001−283888号公報、特開2000−268835号公報、特開2000−268836号公報、特開2001−283892号公報などで公知になっている直接メタノール形燃料電池の電解質膜や膜−電極接合体として、使用可能である。
つぎに、本発明のプロトン伝導性高分子膜の製造方法について説明する。
本発明のプロトン伝導性高分子膜の製造方法は、本発明のプロトン伝導性高分子膜の製造方法は、23℃でのプロトン伝導度[S/cm]と25℃での所定濃度のメタノール水溶液に対するメタノール遮断係数[(cm・日)/μmol]の積[(S・日/μmol]が、少なくとも下記(A)または(B)のいずれか一方をみたすプロトン伝導性高分子膜の製造方法であって、炭化水素系高分子化合物からなるフィルムと、スルホン化剤とを接触させることが好ましい。
(A)10重量%メタノール水溶液に対する値が、2.5×10−4(S・日)/μmol以上
(B)64重量%メタノール水溶液に対する値が、4.5×10−5(S・日)/μmol以上
また、イオン交換容量が0.3ミリ当量/g以上であり、かつ、結晶相を有するプロトン伝導性高分子膜の製造方法であって、結晶性炭化水素系高分子化合物からなるフィルムと、スルホン化剤とを接触させることが好ましい。ここで、非晶相へのスルホン酸基の導入は、結晶性炭化水素系高分子化合物からなるフィルムの結晶相にスルホン酸基がまったく導入されないということではなく、スルホン酸基の導入後において、フィルム中に結晶相が残存していることを意味するものである。
本発明において、前記炭化水素系高分子化合物や結晶性炭化水素系高分子化合物からなるフィルムの厚さは、用途に応じて任意の厚さを選択することが可能である。均一にフィルム内部までスルホン酸基を導入することや、プロトン伝導性高分子膜の内部抵抗を低減することを考慮した場合、フィルム厚みは薄い程良い。一方、メタノール遮断性やハンドリング性を考慮すると、フィルム厚みは薄すぎると好ましくない。これらを考慮すると、フィルムの厚みは、1.2〜350μmであるのが好ましい。前記フィルムの厚さが1.2μmより薄いと、製造が困難であるとともに、加工時にシワになったり、破損が生じるなどハンドリング性がわるくなる傾向があり、350μmをこえると、内部まで均一にスルホン化するのが困難になるとともに、得られたプロトン伝導性高分子膜の内部抵抗も大きくなり、プロトン伝導度が低下する恐れがある。
スルホン化剤としては、クロロスルホン酸、発煙硫酸、三酸化硫黄、三酸化硫黄−トリエチルフォスフェート、濃硫酸、トリメチルシリルクロロサルフェート、トリメチルベンゼンスルホン酸などの公知のスルホン化剤などが使用できる。工業的入手の容易さ、スルホン酸基の導入の容易さや得られるプロトン伝導性高分子膜の特性を考慮すると、クロロスルホン酸、発煙硫酸、三酸化硫黄、濃硫酸からなる群から選択させる少なくとも1種であることことが好ましい。とくに本発明においては、スルホン酸基の導入の容易さや得られた膜の特性、工業的入手の容易さなどから、クロロスルホン酸を使用するのがより好ましい。
また、反応系を適正化することによって、フリーデル−クラフツ反応にしたがって、塩化アルミニウムなどの触媒存在下で、プロパンサルトンや1,4−ブタンサルトンなどの環状含硫黄化合物と炭化水素系高分子化合物中の芳香族単位を接触させて、スルホプロピル基やスルホブチル基などのスルホン酸基を含む置換基を導入する方法なども使用することができる。
さらに、本発明のプロトン伝導性高分子膜は、前記高分子化合物からなるフィルムと、スルホン化剤とを溶媒存在下で接触させて製造することが好ましい。本発明においては、炭素数3以上のハロゲン化物を使用するのが好ましい。これらは、炭化水素系化合物のスルホン化時に一般的に使用されている、ジクロロメタンや1,2−ジクロロエタンなどの炭素数2以下のハロゲン化物を使用するのと比較して、沸点が高く、揮発しにくいため、溶媒の揮発防止や揮発した溶媒の回収のためなどの付帯設備が必要とならず、付帯設備に係る製造コストを低減することが可能となる。また、得られたプロトン伝導性高分子膜のメタノール遮断性が低下しにくくなり、高いプロトン伝導度と高いメタノール遮断性が両立したプロトン伝導性高分子膜を得ることができる。特に、ポリフェニレンサルファイドなどの結晶性高分子化合物からなるフィルムを使用した場合には、製造過程おけるフィルムの劣化が生じにくく、プロトン伝導度やメタノール遮断性、機械的特性が優れたプロトン伝導性高分子膜が得ることができ、好ましい。
本発明に使用可能な炭素数3以上のハロゲン化物としては、たとえば、炭化水素系高分子化合物として、ポリフェニレンサルファイドを使用する場合には、従来から使用されているジクロロメタンや1,2−ジクロロエタンなどの低炭素数のハロゲン化炭化水素の代わりに、1−クロロプロパン、1−ブロモプロパン、1−ヨードプロパン、1−クロロブタン、2−クロロブタン、1−クロロ−2−メチルプロパン、1−ブロモブタン、2−ブロモブタン、1−ブロモ−2−メチルプロパン、1−ヨードブタン、2−ヨードブタン、1−ヨード−2−メチルプロパン、1−クロロペンタン、1−ブロモペンタン、1−ヨードペンタン、1−クロロヘキサン、1−ブロモヘキサン、1−ヨードヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン、ヨードシクロヘキサンなどが例示できる。特に使用する溶媒の扱いやすさ、得られるプロトン伝導性高分子膜の特性を考慮すると、1−クロロプロパン、1−ブロモプロパン、1−クロロブタン、2−クロロブタン、1−クロロ−2−メチルプロパン、1−ブロモブタン、2−ブロモブタン、1−ブロモ−2−メチルプロパン、1−クロロペンタン、1−ブロモペンタン、1−クロロヘキサン、1−ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサンおよびブロモシクロヘキサンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。更に工業的な入手のし易さから1−クロロプロパン、1−クロロブタン、2−クロロブタン、1−クロロ−2−メチルプロパン、1−クロロペンタン、1−クロロヘキサン、クロロシクロヘキサンから選択される少なくとも1種であることが好ましい。前記溶媒のなかでも、工業的入手の容易さや得られるプロトン伝導性高分子膜の特性などの点から、1−クロロブタンが好ましい。
スルホン化剤の使用量としては、炭化水素系高分子化合物中の芳香族単位に対して、0.5〜30当量、さらには0.5〜15当量であるのが好ましい。スルホン化剤の使用量が、0.5当量よりも少ない場合には、スルホン酸基の導入量が少なくなったり、導入に要する時間が長くなるなどの傾向がある。一方、30当量を超える場合には、高分子フィルムが化学的に劣化し、得られるプロトン伝導性高分子膜の機械的強度が低下し、ハンドリングが困難となったり、スルホン酸基の導入量が多くなりすぎて、メタノール遮断性が低下するなど、かえってプロトン伝導性高分子膜の実用的な特性が損なわれる傾向がある。
溶媒中のスルホン化剤の濃度は、スルホン酸基の目標とする導入量や反応条件(温度・時間)を勘案して適宜設定すればよい。具体的には、0.1〜10重量%であることが好ましく、より好ましい範囲は、0.2〜5重量%である。0.1重量%より低いとスルホン化剤と高分子化合物中の芳香族単位とが接触しにくくなり、所望のスルホン酸基が導入できなかったり、導入するのに時間がかかりすぎたりする傾向がある。一方、10重量%をこえるとスルホン酸基の導入が不均一となったり、得られたプロトン伝導性高分子膜の機械的特性が損なわれる傾向がある。
また、接触させる際の反応温度、反応時間についてはとくに限定はないが、0〜100℃、さらには10〜30℃、0.5時間以上、さらには2〜100時間の範囲で設定するのが好ましい。反応温度が、0℃より低い場合は、設備上冷却等の措置が必要になるとともに、反応に必要以上の時間がかかる傾向があり、100℃をこえると反応が過度に進行したり、副反応を生じたりして、膜の特性を低下させる傾向がある。また、反応時間が、0.5時間より短い場合は、スルホン化剤と高分子化合物中の芳香族単位との接触が不充分となり、所望のスルホン酸基が導入しにくくなる傾向があり、反応時間が100時間をこえる場合は、生産性が著しく低下する傾向を示すとともに、膜特性の大きな向上は期待できなくなる傾向がある。実際には、使用するスルホン化剤や溶媒などの反応系、目標とする生産量などを考慮して、所望の特性を有するプロトン伝導性高分子膜を効率的に製造することができるように設定すればよい。
本発明のプロトン伝導性高分子膜の製造方法は、上記のスルホン酸基の導入工程の後、未反応のスルホン化剤や溶媒の除去を行うため、水洗することが好ましい。このとき、スルホン酸基の導入工程後のプロトン伝導性高分子膜を回収することなく、連続的に水洗を行い、適切な条件で乾燥を実施し、プロトン伝導性高分子膜を得ることが好ましい。また、水洗の代わりに、水酸化ナトリウム水溶液などで中和洗浄した後、酸処理を行って、プロトン伝導性高分子膜を得ても良い。
また、本発明のプロトン伝導性高分子膜の製造方法は、スルホン化剤が三酸化硫黄であって、三酸化硫黄を含むガスと炭化水素系高分子化合物からなるフィルムとを接触させて製造することが好ましい。この場合、スルホン酸基の導入工程が、乾式処理となり、スルホン化に溶媒を使用することなく、原材料や再生処理に係る工程や費用を低減できる。
本発明のプロトン伝導性高分子膜の製造方法は、連続的に実施してもよい。すなわち、被処理物である炭化水素系高分子化合物からなるフィルムを連続的にスルホン化剤との反応槽に供給し、さらに必要に応じて、洗浄工程や乾燥工程を連続的に実施してもよく、途中過程において、プロトン伝導性高分子膜の精製や回収を実施する必要はない。この方法によって、プロトン伝導性高分子膜の生産性が向上する。
本発明のプロトン伝導性高分子膜の製造方法は、高分子フィルムを反応槽内でスルホン化剤と接触させることによって、フィルム(膜)形状のままスルホン酸基を導入することができる。したがって、従来の均一反応系でスルホン化高分子を合成した後、膜形状に加工する方法と比較して、反応物の回収・精製・乾燥などの工程、溶媒へのスルホン化高分子の溶解や支持体への塗布、溶媒除去などの工程が省略できるため好ましい。さらに、フィルムを連続供給するため、その生産性は著しく向上する。
また、反応槽に浸漬したフィルムに付着および/または包含されたスルホン化剤を除去・洗浄することを連続的に実施することにより、スルホン化剤による周辺機器の腐食の防止やフィルムのハンドリング性が改善する。除去・洗浄の条件は、使用するスルホン化剤や炭化水素系高分子化合物の種類を考慮して適宜設定すればよいが、水洗により、残存したスルホン化剤を不活性化したり、アルカリを使用して中和処理してもよい。
さらに、得られたプロトン伝導性高分子膜を連続して乾燥することによって、プロトン伝導性高分子膜を実際に使用可能な形態で回収することができる。乾燥条件は、使用する高分子フィルムの種類や得られるプロトン伝導性高分子膜の特性を考慮して適宜設定すればよい。スルホン酸基が強い親水性を示すため、洗浄過程において、含水して著しく膨潤している恐れがある。そのため、乾燥時に収縮し、皺や脹れなどの凹凸が生じる恐れがある。したがって、乾燥時にはプロトン伝導性高分子膜の面方向に適度なテンションをかけて乾燥することが好ましい。また、急激な乾燥を抑制するため、湿度の調節下で徐々に乾燥してもよい。
使用するスルホン化剤やスルホン化の反応条件によっては、例えば、炭化水素系高分子化合物として、ポリフェニレンサルファイドを使用した場合、高分子フィルム中のスルフィド単位(−S−)がスルホキシド単位(−SO−)やスルホン単位(−SO−)に酸化されたり、また、スルホキシド単位(−SO−)がスルホン単位(−SO−)に酸化されたり、また、フェニレン単位の水素が−Clなどの置換基で置換される副反応が生じる可能性がある。しかし、得られたプロトン伝導性高分子膜の特性を著しく低下させるものでなけば、前記副反応の結果生じた構造単位が含まれていても構わない。
さらに、本発明のプロトン伝導性高分子膜の製造方法は、前記方法で得られたプロトン伝導性高分子膜に、γ線、電子線およびイオンビームからなる群から選択される少なくとも1種の放射線を照射することが好ましく、その照射量は10〜1000kGyであることが好ましい。
また、本発明の製造方法により製造されるプロトン伝導性高分子膜を製造する際に、その高分子膜に、可塑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、抗菌剤、滑剤、表面活性剤、各種フィラーなどの添加剤を適量含有させてもよい。
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
<イオン交換容量の測定方法>
プロトン伝導性高分子膜(約10mm×40mm)を25℃での塩化ナトリウム飽和水溶液20mLに浸漬し、ウォーターバス中で60℃、3時間反応させる。25℃まで冷却し、次いで膜をイオン交換水で充分に洗浄し、塩化ナトリウム飽和水溶液および洗浄水をすべて回収する。この回収した溶液に、指示薬としてフェノールフタレイン溶液加え、0.01Nの水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定し、イオン交換容量を算出する。
<プロトン伝導度の測定方法>
イオン交換水中に保管したプロトン伝導性高分子膜(約10mm×40mm)を取り出し、膜表面の水をろ紙で拭き取る。2極非密閉系のテフロン(登録商標)製のセルに膜を設置し、さらに白金電極を電極間距離30mmとなるように、膜表面(同一側)に設置した。23℃での膜抵抗を、交流インピーダンス法(周波数:42Hz〜5MHz、印可電圧:0.2V)により測定し、プロトン伝導度を算出する。
<メタノール遮断性の測定方法>
25℃の環境下で、ビードレックス社製膜透過実験装置を使用して、プロトン伝導性高分子膜でイオン交換水と所定濃度のメタノール水溶液を隔離する。所定時間経過後にイオン交換水側に透過したメタノールを含む溶液を採取し、ガスクロマトグラフでメタノール含有量を定量する。この定量結果から、メタノール透過速度を求め、メタノール透過係数およびメタノール遮断係数を算出する。メタノール透過係数およびメタノール遮断係数は、以下の数式1及び数式2にしたがって算出する。

<機械的特性(破断強度および破断伸び)の測定方法>
JIS K 7127の方法に準じてプロトン伝導性高分子膜の破断強度および破断伸びを測定方法する。プロトン伝導性高分子膜(幅:約10mm)を用いて、チャック間距離30mm、引張速度:20mm/分の条件でn=5測定する。破断伸びについては、平均値と最大値を記録する。
<寸法安定性>
プロトン伝導性高分子膜(約40mm×10mm)の中央部分に約20mm間隔の測定点をマーキングする。その膜を、25℃の環境下でイオン交換水または64重量%メタノール水溶液中に2時間浸漬する。その後、測定点間の距離を測定し、寸法変化率を算出する。
<X線回折の測定方法>
(株)島津製作所製X線回折装置を使用して、使用X線がCu・Kα線、X線強度が30kV、100mA、角度域が2θ=5〜50°、走査速度が2°/分の条件で、プロトン伝導性高分子膜のX線回折測定を実施する。
<結晶性>
前記X線回折測定により得られたX線回折パターンから、以下の基準によって結晶性の有無を確認する。
○:X線回折測定によりシャープなピークが確認できる。
×:X線回折測定によりシャープなピークが確認できない。
【実施例1】
炭化水素系高分子化合物として、ポリフェニレンサルファイドを使用した。
ガラス容器に、1−クロロブタン729g、クロロスルホン酸3.65gを秤量し、クロロスルホン酸溶液を調製した。ポリフェニレンサルファイドフィルム(東レ株式会社製、商品名:トレリナ、厚み:50μm)を1.69g秤量し、クロロスルホン酸溶液に浸漬し、室温で20時間、放置した(クロロスルホン酸添加量は、ポリフェニレンサルファイドの芳香族単位に対して2当量)。室温で20時間放置後に、ポリフェニレンサルファイドフィルムを回収し、イオン交換水で中性になるまで洗浄した。
洗浄後のポリフェニレンサルファイドフィルムを23℃に調温した恒温恒湿器内で、相対湿度98%、80%、60%および50%の湿度調節下で、それぞれ30分間放置してフィルムを乾燥し、プロトン伝導性高分子膜として、スルホン酸基が導入されたポリフェニレンサルファイド膜(以下、スルホン化ポリフェニレンサルファイド膜)(80mm×80mm、厚み:51μm)を得た。
このプロトン伝導性高分子膜の各種特性を上述の方法で測定した。
この膜の特性評価の結果を表1〜5および図4に示す。
【実施例2】
1−クロロブタン量を721g、クロロスルホン酸量を5.40g、ポリフェニレンサルファイドフィルムを1.67gとした以外は、実施例1と同様に実施した(クロロスルホン酸添加量は、ポリフェニレンサルファイドの芳香族単位に対して3当量)。得られたスルホン化ポリフェニレンサルファイド膜(80mm×80mm、厚み:53μm)は、膜形状を維持していた。
この膜の特性評価の結果を表1〜3,5および図5に示す。
【実施例3】
1−クロロブタン量を716g、クロロスルホン酸量を7.16g、ポリフェニレンサルファイドフィルムを1.66gとした以外は、実施例1と同様に実施した(クロロスルホン酸添加量は、ポリフェニレンサルファイドの芳香族単位に対して4当量)。得られたスルホン化ポリフェニレンサルファイド膜(80mm×80mm、厚み:54μm)は、膜形状を維持していた。
この膜の特性評価の結果を表1,2,5および図6に示す。
【実施例4】
1−クロロブタン量を734g、クロロスルホン酸量を11.00g、ポリフェニレンサルファイドフィルムを1.70gとした以外は、実施例1と同様にした(クロロスルホン酸添加量は、ポリフェニレンサルファイドの芳香族単位に対して6当量)。得られたスルホン化ポリフェニレンサルファイド膜(80mm×80mm、厚み:78μm)は、膜形状を維持していた。
この膜の特性評価の結果を表1〜3に示す。
【実施例5】
1−クロロブタン量を746g、クロロスルホン酸量を14.93g、ポリフェニレンサルファイドフィルムを1.73gとした以外は、実施例1と同様に実施した(クロロスルホン酸添加量は、ポリフェニレンサルファイドの芳香族単位に対して8当量)。得られたスルホン化ポリフェニレンサルファイド膜(80mm×80mm、厚み:93μm)は、膜形状を維持していた。
この膜の特性評価の結果を表1〜3に示す。
【実施例6】
1−クロロブタン量を712g、クロロスルホン酸量を17.80g、ポリフェニレンサルファイドフィルムを1.65gとした以外は、実施例1と同様に実施した(クロロスルホン酸添加量は、ポリフェニレンサルファイドの芳香族単位に対して10当量)。得られたスルホン化ポリフェニレンサルファイド膜(80mm×80mm、厚み:100μm)は、膜形状を維持していた。
この膜の特性評価の結果を表1〜3に示す。
【実施例7】
1−クロロブタン量を583g、クロロスルホン酸量を5.83g、ポリフェニレンサルファイドフィルム(東レ株式会社製、商品名:トレリナ、厚み:25μm)を1.35gとした以外は、実施例1と同様に実施した(クロロスルホン酸添加量は、ポリフェニレンサルファイドの芳香族単位に対して4当量)。得られたスルホン化ポリフェニレンサルファイド膜(80mm×80mm、厚み:32μm)は、膜形状を維持していた。
この膜の特性評価の結果を表1,2に示す。
【実施例8】
1−クロロブタン量を595g、クロロスルホン酸量を7.44g、ポリフェニレンサルファイドフィルムを1.38gとした以外は、実施例7と同様に実施した(クロロスルホン酸添加量は、ポリフェニレンサルファイドの芳香族単位に対して5当量)。得られたスルホン化ポリフェニレンサルファイド膜(80mm×80mm、厚み:35μm)は、膜形状を維持していた。
この膜の特性評価の結果を表1,2に示す。
【実施例9】
1−クロロブタン量を578g、クロロスルホン酸量を8.67g、ポリフェニレンサルファイドフィルムを1.34gとした以外は、実施例7と同様に実施した(クロロスルホン酸添加量は、ポリフェニレンサルファイドの芳香族単位に対して6当量)。得られたスルホン化ポリフェニレンサルファイド膜(80mm×80mm、厚み:40μm)は、膜形状を維持していた。
この膜の特性評価の結果を表1〜3に示す。
【実施例10】
1−クロロブタン量を587g、クロロスルホン酸量を11.74g、ポリフェニレンサルファイドフィルムを1.36gとした以外は、実施例7と同様に実施した(クロロスルホン酸添加量は、ポリフェニレンサルファイドの芳香族単位に対して8当量)。得られたスルホン化ポリフェニレンサルファイド膜(80mm×80mm、厚み:42μm)は、膜形状を維持していた。
この膜の特性評価の結果を表1〜3に示す。
【実施例11】
実施例4に従って得られたスルホン化ポリフェニレンサルファイド膜に、加速電圧4.6MeV、照射線量500kGy、電流20mAの電子線を照射した。得られたスルホン化ポリフェニレンサルファイド膜(80mm×80mm、厚み:83μm)は、膜形状を維持していた。
この膜の特性評価の結果を表1,2に示す。
【実施例12】
実施例4に従って得られたスルホン化ポリフェニレンサルファイド膜の代わりに、実施例5に従って得られたスルホン化ポリフェニレンサルファイド膜を使用した以外は、実施例11と同様に実施した。得られたスルホン化ポリフェニレンサルファイド膜(80mm×80mm、厚み:93μm)は、膜形状を維持していた。
この膜の特性評価の結果を表1〜3に示す。
【実施例13】
実施例4に従って得られたスルホン化ポリフェニレンサルファイド膜の代わりに、実施例6に従って得られたスルホン化ポリフェニレンサルファイド膜を使用した以外は、実施例11と同様に実施した。得られたスルホン化ポリフェニレンサルファイド膜(80mm×80mm、厚み:104μm)は、膜形状を維持していた。
この膜の特性評価の結果を表1,2に示す。
【実施例14】
実施例4に従って得られたスルホン化ポリフェニレンサルファイド膜の代わりに、実施例8に従って得られたスルホン化ポリフェニレンサルファイド膜を使用した以外は、実施例11と同様に実施した。得られたスルホン化ポリフェニレンサルファイド膜(80mm×80mm、厚み:36μm)は、膜形状を維持していた。
この膜の特性評価の結果を表1〜3に示す。
【実施例15】
実施例4に従って得られたスルホン化ポリフェニレンサルファイド膜の代わりに、実施例9に従って得られたスルホン化ポリフェニレンサルファイド膜を使用した以外は、実施例11と同様に実施した。得られたスルホン化ポリフェニレンサルファイド膜(80mm×80mm、厚み:41μm)は、膜形状を維持していた。
この膜の特性評価の結果を表1〜3に示す。
【実施例16】
実施例4に従って得られたスルホン化ポリフェニレンサルファイド膜の代わりに、実施例10に従って得られたスルホン化ポリフェニレンサルファイド膜を使用した以外は、実施例11と同様に実施した。得られたスルホン化ポリフェニレンサルファイド膜(80mm×80mm、厚み:48μm)は、膜形状を維持していた。
この膜の特性評価の結果を表1〜3に示す。
【実施例17】
500mLのガラス容器に、ポリフェニレンサルファイドフィルム(東レ株式会社製、商品名:トレリナ、厚み:50μm)を1.0g秤量し、滴下漏斗で三酸化硫黄溶液を1.5g滴下した。ウォーターバスで60℃に加温し、三酸化硫黄を気化させて、ポリフェニレンサルファイドフィルムと接触させた。この状態で30分放置した後、イオン交換水で中性になるまで洗浄した。
洗浄後のポリフェニレンサルファイドフィルムを23℃に調温した恒温恒湿器内で、相対湿度98%、80%、60%および50%の湿度調節下で、それぞれ30分間放置してフィルムを乾燥し、プロトン伝導性高分子膜として、スルホン酸基が導入されたポリフェニレンサルファイド膜(以下、スルホン化ポリフェニレンサルファイド膜)(50mm×50mm、厚み:70μm)を得た。
この膜の特性評価の結果を表1,2,5および図7に示す。
(比較例1)
非炭化水素系高分子化合物からなるスルホン酸基含有膜として、デュポン社製ナフィオン115を使用した。
この膜の特性評価結果を表1,2,4に示す。
(比較例2)
500mLのセパラブルフラスコ中で、15gの1,4−ポリフェニレンサルファイド(アルドリッチ社製、数平均分子量:10,000)を300mLのクロロスルホン酸に溶解させた。氷冷して、反応温度5℃で60分間撹拌した。ついで、反応液を20℃にして、発煙硫酸(15%SO)を100mL滴下し、300分間撹拌して、1,4−ポリフェニレンサルファイドと発煙硫酸とを反応させた。この反応溶液を、2kgの氷と600mLの硫酸(30重量%)の混合物中に攪拌しながら添加した。沈殿物を煮沸したイオン交換水中で洗浄水が中性になるまで、イオン交換水を交換しながら洗浄(イオン交換水の交換10回、のべ洗浄時間80時間)し、沈殿物をろ過により回収した。80℃で3時間乾燥し、スルホン化ポリフェニレンサルファイドを得た。
得られたスルホン化ポリフェニレンサルファイドの20重量%のN−メチル−2−ピロリドン溶液を調製し、ガラスシャレー上に流延させて、150℃で減圧乾燥したが、自己支持性のある膜形状とはならず、イオン交換容量以外の特性評価は実施できなかった。
この膜の特性評価の結果を表1に示す。
(比較例3)
900mLのマヨネーズ瓶に、ジクロロメタン945g、クロロスルホン酸4.72gを秤量し、クロロスルホン酸溶液を調製した。ポリフェニレンサルファイドフィルム(東レ株式会社製、商品名:トレリナ、厚み:50μm)を2.21g秤量し、クロロスルホン酸溶液に浸漬接触させ、室温で20時間放置した(クロロスルホン酸添加量は、ポリフェニレンサルファイドの芳香族単位に対して2当量)。室温で20時間放置後に、ポリフェニレンサルファイドフィルムを回収し、イオン交換水で中性になるまで洗浄した。
洗浄後のポリフェニレンサルファイドフィルムを23℃に調温した恒温恒湿器内で、相対湿度98%、80%、60%および50%の湿度調節下で、それぞれ30分間放置してフィルムを乾燥し、プロトン伝導性高分子膜として、スルホン酸基が導入されたポリフェニレンサルファイド膜(以下、スルホン化ポリフェニレンサルファイド膜)(50mm×50mm、厚み:110μm)を得た。
この膜の特性評価の結果を表1〜5および図8に示す。
(比較例4)
ポリフェニレンサルファイド(大日本インキ工業株式会社製、商品名:DIC−PPS FZ−2200−A5)100重量部に対し、可塑剤として、トリクレジルフォスフェート(大八化学工業株式会社製、商品名:TCP)を2重量部添加し、280℃で加熱した二軸押出機で溶融混合し、所定の混合物のペレットを得た。これをスクリュー温度290℃、Tダイ温度320℃の押出機で溶融押出し、厚み50μmのフィルムを得た。
900mLのマヨネーズ瓶に、ジクロロメタン945g、クロロスルホン酸4.72gを秤量し、クロロスルホン酸溶液を調製した。前記の方法で得られたポリフェニレンサルファイドからなるフィルムを2.21g秤量し、クロロスルホン酸溶液に浸漬接触させ、室温で20時間放置した(クロロスルホン酸添加量は、ポリフェニレンサルファイドの芳香族単位に対して2当量)。室温で20時間放置後に、ポリフェニレンサルファイドフィルムを回収し、イオン交換水で中性になるまで洗浄した。
洗浄後のポリフェニレンサルファイドフィルムを23℃に調温した恒温恒湿器内で、相対湿度98%、80%、60%および50%の湿度調節下で、それぞれ30分間放置してフィルムを乾燥し、プロトン伝導性高分子膜として、スルホン酸基が導入されたポリフェニレンサルファイド膜(以下、スルホン化ポリフェニレンサルファイド膜)(80mm×80mm、厚み:60μm)を得た。
この膜の特性評価結果を表1〜5および図9に示す。





表1〜表5の実施例1〜17と比較例1、3、4の比較から、本発明のプロトン伝導性高分子膜は、従来のプロトン伝導性高分子膜と、同オーダーのプロトン伝導性を有し、固体高分子形燃料電池や直接メタノール形燃料電池の電解質として有用であることが明らかとなった。また、本発明のプロトン伝導性高分子膜は、従来のプロトン伝導性高分子膜よりも優れたメタノール遮断係数を有し、直接メタノール形燃料電池の電解質として有用であることが明らかとなった。さらに、本発明のプロトン伝導性高分子膜は、従来のプロトン伝導性高分子膜と比較して、プロトン伝導度とメタノール遮断係数の積が大きく、プロトン伝導度とメタノール遮断性が両立した特性を有することが示された。よって、本発明のブロトン伝導性高分子膜は、直接メタノール形燃料電池の電解質として有用であることが明らかとなった。
表3の実施例1、2、4〜6、9、10、12、14〜16と比較例3、4の比較から、本発明のプロトン伝導性高分子膜は、従来のプロトン伝導性高分子膜と比較して、優れた破断強度および破断伸びを有し、固体高分子形燃料電池や直接メタノール形燃料電池の電解質として有用であることが明らかとなった。
表4の実施例1と比較例1、3、4の比較から、本発明のプロトン伝導性高分子膜は、従来のプロトン伝導性高分子膜と比較して、イオン交換水および64重量%メタノール水溶液に対する寸法安定性が高く、ハンドリング性に優れることが示された。よって、固体高分子形燃料電池や直接メタノール形燃料電池の電解質として有用であることが明らかとなった。
図4〜図9のX線回折および表5の結晶性評価の結果から、実施例1〜3および17の本発明のプロトン伝導性高分子膜は、結晶性ピークを有し、結晶相が残存していることが明らかとなった。これらに対して、図8および図9のX線回折の測定結果から、比較例3および4の従来のプロトン伝導性高分子膜は、結晶性ピークが観察されず、結晶相がほとんど残存していないことが明らかとなった。
さらに、比較例2の従来のプロトン伝導性高分子膜は、自己支持性のある膜が取得できないと共に、その製造に90時間もの時間を要するが、実施例1の本発明のプロトン伝導性高分子膜は、約24時間で製造可能であり、本発明は生産性の面からも優れている。すなわち、本発明の製造方法は、より簡便な方法で、実用的なハンドリング性を有するプロトン伝導性高分子膜を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
本発明によれば、プロトン伝導度とメタノール遮断係数の積が特定値以上であるプロトン伝導性高分子膜、あるいは、イオン交換容量が0.3ミリ当量/g以上であり、かつ、結晶相を有するプロトン伝導性高分子膜によって、優れたプロトン伝導度と高いメタノール遮断性を発現することが可能となった。
これらは、優れたプロトン伝導度、高いメタノール遮断性、優れた機械的特性などを有し、固体高分子形燃料電池や直接メタノール形燃料電池の電解質として有用である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
23℃でのプロトン伝導度[S/cm]と25℃での所定濃度のメタノール水溶液に対するメタノール遮断係数[(cm・日)/μmol]の積[(S・日)/μmol]が、少なくとも下記(A)または(B)のいずれか一方をみたすプロトン伝導性高分子膜。
(A)10重量%メタノール水溶液に対する値が、2.5×10−4(S・日)/μmol以上
(B)64重量%メタノール水溶液に対する値が、4.5×10−5(S・日)/μmol以上
【請求項2】
イオン交換容量が0.3ミリ当量/g以上であり、かつ、結晶相を有するプロトン伝導性高分子膜。
【請求項3】
プロトン伝導性高分子膜が、スルホン酸基を含有する請求の範囲第1項または第2項に記載のプロトン伝導性高分子膜。
【請求項4】
プロトン伝導性高分子膜が、炭化水素系高分子化合物からなる請求の範囲第1項〜第3項のいずれか一項に記載のプロトン伝導性高分子膜。
【請求項5】
炭化水素系高分子化合物が、結晶性芳香族高分子化合物からなる請求の範囲第4項に記載のプロトン伝導性高分子膜。
【請求項6】
結晶性芳香族高分子化合物が、ポリフェニレンサルファイドである請求の範囲第5項に記載のプロトン伝導性高分子膜。
【請求項7】
JIS K 7127に準じて測定される破断伸びが10%以上である請求の範囲第1項〜第6項のいずれか一項に記載のプロトン伝導性高分子膜。
【請求項8】
23℃でのプロトン伝導度が1.0×10−3S/cm以上である請求の範囲第1項〜第7項のいずれか一項に記載のプロトン伝導性高分子膜。
【請求項9】
23℃でのプロトン伝導度が、1.0×10−2S/cm以上である請求の範囲第8項に記載のプロトン伝導性高分子膜。
【請求項10】
25℃での64重量%のメタノール水溶液におけるメタノール遮断係数が、3.0×10−4(cm・日)/μmol以上である請求の範囲第1項〜第9項のいずれか一項に記載のプロトン伝導性高分子膜。
【請求項11】
γ線、電子線およびイオンビームからなる群から選択させる少なくとも1種の放射線を照射した請求の範囲第1項〜第10項のいずれか一項に記載のプロトン伝導性高分子膜。
【請求項12】
放射線の照射量が、10〜1000kGyである請求の範囲第11項に記載のプロトン伝導性高分子膜。
【請求項13】
請求の範囲第1項〜第12項のいずれか一項に記載のプロトン伝導性高分子膜を使用した膜−電極接合体。
【請求項14】
膜−電極接合体の少なくとも一方の触媒層が、白金およびルテニウム触媒からなる請求の範囲第13項に記載の膜−電極接合体。
【請求項15】
請求の範囲第1項〜第12項のいずれか一項に記載のプロトン伝導性高分子膜、あるいは、請求の範囲第13項または第14項に記載の膜−電極接合体、を使用した固体高分子形燃料電池。
【請求項16】
請求の範囲第1項〜第12項のいずれか一項に記載のプロトン伝導性高分子膜、あるいは、請求の範囲第13項または第14項に記載の膜−電極接合体、を使用した直接メタノール形燃料電池。
【請求項17】
23℃でのプロトン伝導度[S/cm]と25℃での所定濃度のメタノール水溶液に対するメタノール遮断係数[(cm・日/μmol]の積[(S・日)/μmol]が、少なくとも下記(A)または(B)のいずれか一方をみたすプロトン伝導性高分子膜の製造方法であって、炭化水素系高分子化合物からなるフィルムと、スルホン化剤とを接触させることによるプロトン伝導性高分子膜の製造方法。
(A)10重量%メタノール水溶液に対する値が、2.5×10−4(S・日/μmol以上
(B)64重量%メタノール水溶液に対する値が、4.5×10−5(S・日)/μmol以上
【請求項18】
イオン交換容量が0.3ミリ当量/g以上であり、かつ、結晶相を有するプロトン伝導性高分子膜の製造方法であって、結晶性炭化水素系高分子化合物からなるフィルムと、スルホン化剤とを接触させることによるプロトン伝導性高分子膜の製造方法。
【請求項19】
炭化水素系高分子化合物が、結晶性炭化水素系高分子化合物である請求の範囲第17項に記載のプロトン伝導性高分子膜の製造方法。
【請求項20】
炭化水素系高分子化合物が、ポリフェニレンサルファイドである請求の範囲第17項〜第19項のいずれか一項に記載のプロトン伝導性高分子膜の製造方法。
【請求項21】
スルホン化剤が、クロロスルホン酸,発煙硫酸,三酸化硫黄,濃硫酸からなる群から選択される少なくとも1種である請求の範囲第17項〜第20項のいずれか一項に記載のプロトン伝導性高分子膜の製造方法。
【請求項22】
フィルムと、スルホン化剤とを溶媒存在下で接触させる請求の範囲第17項〜第21項のいずれか一項に記載のプロトン伝導性高分子膜の製造方法。
【請求項23】
溶媒が、炭素数3以上のハロゲン化物である請求の範囲第22項に記載のプロトン伝導性高分子膜の製造方法。
【請求項24】
溶媒が、1−クロロプロパン、1−ブロモプロパン、1−クロロブタン、2−クロロブタン、1−クロロ−2−メチルプロパン、1−ブロモブタン、2−ブロモブタン、1−ブロモ−2−メチルプロパン、1−クロロペンタン、1−ブロモペンタン、1−クロロヘキサン、1−ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサンおよびブロモシクロヘキサンからなる群から選択される少なくとも1種である請求の範囲第22項または第23項に記載のプロトン伝導性高分子膜の製造方法。
【請求項25】
溶媒が、1−クロロブタンである請求の範囲第22項〜第24項のいずれか一項に記載のプロトン伝導性高分子膜の製造方法。
【請求項26】
スルホン化剤が三酸化硫黄であって、三酸化硫黄を含むガスと炭化水素系高分子化合物からなるフィルムとを接触させる請求の範囲第17項〜第21項のいずれか一項に記載のプロトン伝導性高分子膜の製造方法。
【請求項27】
さらにγ線、電子線およびイオンビームからなる群から選択される少なくとも1種の放射線を照射する前記請求の範囲第17項〜第26項のいずれか一項に記載のプロトン伝導性高分子膜の製造方法。
【請求項28】
放射線の照射量が、10〜1000kGyである請求の範囲第27項に記載のプロトン伝導性高分子膜の製造方法。

【国際公開番号】WO2004/027909
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【発行日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−568908(P2004−568908)
【国際出願番号】PCT/JP2003/011322
【国際出願日】平成15年9月4日(2003.9.4)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】