説明

プロトン性溶媒を用いて抽出することによって、(メタ)アクリル酸を含有する混合物から有機化合物を回収する方法

【課題】
残留アルデヒドの含量が極めて低く、したがって毒性の問題が生じる可能性が極めて低い(メタ)アクリル酸を、できるだけ安価に製造することが可能な製造方法を提供する。
【解決手段】
(メタ)アクリル酸を調製する方法は、i)(メタ)アクリル酸およびアルデヒドを含む組成物Zを10〜100℃、圧力が0.1〜10バールの状態にし、組成物Zを得る工程であって、Zが、Za(メタ)アクリル酸と、Zbアルデヒドおよびアルデヒド捕捉剤の好ましくは高沸点の反応生成物と、Zc未反応のアルデヒド捕捉剤を含む工程と、ii)(メタ)アクリル酸を前記組成物Zから少なくとも部分的に分離させて、組成物Zを得る工程であって、Zが、Za アルデヒドおよびアルデヒド捕捉剤の反応の好ましくは高沸点の反応生成物と、Zb 未反応のアルデヒド捕捉剤を含む工程と、iii)好ましくは水相、特に好ましくは水を有する極性溶媒によって組成物Zから未反応のアルデヒド捕捉剤を抽出する工程であって、第1の、極性が高い、好ましくは水相Pと、第2の、前記水相Pより極性が低い、好ましくは有機層Pが得られる工程と、iv)第2相Pから第1相Pを分離する工程と含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル酸を調製する方法、(メタ)アクリル酸を調製する装置、本発明による方法によって得られる(メタ)アクリル酸を原料とする発泡体、成形体、繊維など、および、かかる生成物における本発明に係る方法によって得られる(メタ)アクリル酸の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本願明細書において、(メタ)アクリル酸は、メタクリル酸およびアクリル酸の両方、アクリル酸が好ましいと理解される。
【0003】
(メタ)アクリル酸、特にアクリル酸は、現在多くのポリマーに用いられているモノマーである。特にアクリル酸は、凝集剤等として水処理に用いられるポリマー、或いは超吸収ポリマーとして、具体的にはオムツ等の衛生用品に用いられるポリマーの調製に用いられている(Modern Superabsorbent Polymer Technology,F.L.Buchholz, A.T.Graham;Wiley−VCH(1998年)を参照)。
【0004】
更に、アクリル酸は、そして同様にメタクリル酸も、多くの場合、通常凝集した固体触媒上、200〜400℃の温度で、酸素によるプロピレンまたはイソブテンの不均一触媒気相酸化によって調製されることは広く知られている。これに関連して、独国特許第1962431号明細書、独国特許第2943707号明細書、および独国特許出願公開第10838845号明細書が参照される。
【0005】
更に、国際公開第03/051809号パンフレットにより、プロピレンの気相酸化反応により得られた(メタ)アクリル酸を含む生成ガスを水相に接触させて、水性クエンチ相を得ることが知られている。このようなクエンチ相中では、(メタ)アクリル酸は、不純物とみなされる他の反応生成物、更には吸収剤である水と共存している。このため、通常、上述のようにして得られたクエンチ相は、少なくとも1つの生成工程に供される必要がある。この精製工程は、特に吸収剤を分離するために、場合によっては連行剤の存在下で実施される蒸留である場合が多く、いわゆる粗製(メタ)アクリル酸が得られる。
【0006】
この粗製(メタ)アクリル酸を、共存する低沸点または高沸点の副生成物と分離するために、蒸留によって更に精製してもよい。
【0007】
通常、粗製(メタ)アクリル酸、または場合によっては蒸留により更に精製した粗製(メタ)アクリル酸は、無視できない量のベンズアルデヒドまたはフルフラール等のアルデヒドをなお含んでいる。しかし、アルデヒドはアクリル酸の重合を阻害し、更にはポリマーの変色をもたらす。更に、これらのアルデヒドは、健康上の理由から許容されないため、特に衛生用品に用いられる(メタ)アクリル酸は、アルデヒドに関して高い純度を有していなければならない。
【0008】
したがって、例えば、国際公開第03/014172号パンフレットでは、アルデヒドと反応して粗製(メタ)アクリル酸よりも高沸点の反応生成物を形成する、いわゆるアルデヒド捕捉剤の添加が提案されている。(メタ)アクリル酸は、その後、これらの高沸点の反応生成物を含む粗製(メタ)アクリル酸から蒸留によって分離することができる。この蒸留によって得られる高沸点の反応生成物を含む残留物は、通常、燃焼によって処分される。
【0009】
アルデヒド捕捉剤は、アルデヒドを可能な限り完全に高沸点の生成物に変換させるために、通常、粗製(メタ)アクリル酸に含まれるアルデヒドに対して、過剰に用いられる。しかし、この結果、残留物に含まれるアルデヒド捕捉剤が、上述のような処理の際に失われてしまうが、これは特にコスト上の理由から不利である。更に、メルカプタンをアルデヒド捕捉剤として用いる場合には、残留物に高い含量で含まれる硫黄化合物が、その燃焼により重大な環境汚染の原因となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
全般的には、本発明は、従来技術から生じる不利益を克服するという目的に基づくものである。
【0011】
具体的には、本発明は、残留アルデヒドの含量が極めて低く、したがって毒性の問題が生じる可能性が極めて低い(メタ)アクリル酸を、できるだけ安価に製造することが可能な製造方法を提供するという目的に基づくものである。
【0012】
この方法は更に、できるだけ環境負荷の(メタ)アクリル酸の製造において、環境負荷をできるだけ小さくすることを可能にする。
【0013】
また、本発明は、この方法を実施することが可能な装置を提供とする目的に基づくものでもある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的の達成により、(メタ)アクリル酸を調製する方法であって、i)(メタ)アクリル酸およびアルデヒドを含む組成物Zを10〜100℃、圧力が0.1〜10バールの状態でアルデヒド捕捉剤と接触させて、組成物Zを得る工程であって、Zが、Za(メタ)アクリル酸と、Zbアルデヒドおよびアルデヒド捕捉剤の好ましくは高沸点の反応生成物と、Zc未反応のアルデヒド捕捉剤を含む工程と、ii)(メタ)アクリル酸を組成物Zから少なくとも部分的に分離させて、組成物Zを得る工程であって、Zが、Za アルデヒドおよびアルデヒド捕捉剤の反応の好ましくは高沸点の反応生成物と、Zb 未反応のアルデヒド捕捉剤を含む工程と、iii)好ましくは水相、特に好ましくは水を有する極性溶媒によって組成物Zから未反応のアルデヒド捕捉剤を抽出する工程であって、極性が高い、好ましくは第1の水相Pと、前記水相Pより極性が低い、好ましくは第2の有機相Pが得られる工程と、iv)第2相Pから第1相Pを分離する工程と含む方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
驚くべきことに、しかし不利益を伴うことなく、未反応のアルデヒド捕捉剤は、溶媒、好ましくは水による抽出という単純な方法により、(メタ)アクリル酸を含む組成物から分離することができることが見出された。このようにして、少なくとも50重量%の未反応のアルデヒド捕捉剤を回収することができる。
【0016】
本発明の文脈において、「高沸点の」化合物とは、大気圧下での沸点が、アクリル酸の調製の場合は160℃よりも、メタクリル酸の調製の場合は180℃よりも高い化合物を意味すると理解される。逆に、本発明の文脈において、「沸騰しやすい」または「低沸点の」化合物とは、大気圧下での沸点が、アクリル酸の調製の場合は120℃よりも、メタクリル酸の調製の場合は140℃よりも低い化合物を意味すると理解される。
工程i)
【0017】
本発明による方法の好ましい実施形態において、工程i)で用いられる組成物Zは、a)C〜C炭化水素類を酸素で触媒気相酸化して(メタ)アクリル酸を含む生成ガス混合物を得る工程であって、生成ガス混合物が、副生成物としてアルデヒドを含む工程と、b)生成ガス混合物を溶媒に吸収させ、次いで、溶媒を分離して組成物Zを得るか、あるいは、生成ガス混合物の分別凝集して組成物Zを分離する工程を含む方法によって得られる組成物である。
【0018】
工程a)における、(メタ)アクリル酸を得るための、C〜Cの炭化水素、アクリル酸の調製の場合は、好ましくはプロパン、プロピレンおよび/またはアクロレイン、メタクリル酸の調製の場合は、好ましくはイソブテンの気相中での酸化は、それ自体公知の方法により実施される。供給原料は、場合によっては不活性な希釈ガスと混合され、通常200〜400℃の高温で、場合によっては高圧下で、酸素との混合物として、通常は、モリブデン、バナジウム、タングステン、および/または鉄等を含む遷移金属混合酸化物触媒である少なくとも1種類の不均一触媒上を通過して、酸化的に(メタ)アクリル酸に変換される。反応は1つの段階、或いは2つの段階で行ってもよい。(メタ)アクリル酸の調製の場合、2段階反応法では、出発化合物として用いられるプロピレンまたはイソブテンは、第1段階でアクロレイン(またはメタクロレイン)に酸化され、アクロレイン(またはメタクロレイン)は、第2段階で(メタ)アクリル酸に酸化される。好ましい不均一触媒は、第1段階においては、モリブデン、ビスマス、および鉄の酸化物よりなる酸化物多成分触媒であり、第2段階においては、モリブデンおよびバナジウムの酸化物よりなる対応する触媒である。
【0019】
プロパン、プロピレン、またはイソブテンより(メタ)アクリル酸を生成する反応は、極めて発熱的である。したがって、供給原料の気流は、大気中の窒素、二酸化炭素、メタンおよび/または水蒸気等の不活性な希釈ガスで希釈されるのが有利である。用いられる反応器の性質はそれ自体何ら制限されるものではないが、反応により放出される熱の大部分が、対流および冷却された管壁での放射により除去されるため、酸化触媒を充填した多管式熱交換器が好適に用いられる。(メタ)アクリル酸以外にも、1つの段階または2つの段階の触媒気相酸化により得られる反応ガスは、通常、未反応の出発化合物、水蒸気、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、酸素、酢酸、プロピオン酸、ホルムアルデヒド、他のアルデヒドおよびマレイン酸または無水マレイン酸を含んでいる。
【0020】
工程b)では、工程a)で得られた生成ガス混合物の処理が開始される。これに関連して、2とおりの異なる手順が考えられる。
【0021】
本発明の1つの実施形態では、(メタ)アクリル酸は、反応ガスから吸収液中に吸収される。(メタ)アクリル酸が高い溶解度を有し、例えば、(メタ)アクリル酸よりも高い沸点を有する液体が、吸収液として好適である。ジフェニル、ジフェニルエーテル、フタル酸ジメチル、エチルヘキサン酸、N−メチルピロリドン、パラフィン留分またはこれらの混合物等が、高沸点液体として好適である。或いは、ジアクリル酸、トリアクリル酸およびテトラアクリル酸等のアクリル酸オリゴマーを含む混合物を高沸点液体として用いてもよい。ジフェニル、ジフェニルエーテル、フタル酸o−ジメチルまたはこれらの混合物、特に、25〜30重量%のジフェニルと、70〜75重量%のジフェニルエーテルとの混合物で、0.1〜25重量%のフタル酸o−ジメチルを含む混合物が好ましい。
【0022】
本発明の方法の特に好ましい実施形態では、吸収液として水が用いられる。
【0023】
吸収液を、適当な方法で生成ガス混合物と十分に接触させる。このため、生成ガス混合物を、通常、下降流をなす吸収液に対し対向流を形成するように吸収塔に導入する。吸収塔としては、充填塔、棚段塔、または泡鐘塔等を用いることができる。
【0024】
反応ガスは、通常、温度が200〜400℃であり、好ましくは、吸収塔に導入する前に、例えば、100〜180℃の吸収に好適な温度に冷却される。吸収温度までの反応ガスの冷却は、例えば、熱交換器等の間接冷却により実施することができる。しかし、好ましくは、この冷却は、好ましくはスプレー洗浄器中で冷却液と直接接触させることにより実施される。冷却液は、通常その大部分が分離装置中で再度分離され、冷却後、反応ガスが吸収塔に導入される前に再利用される。冷却液は、好ましくは、後工程で反応ガスからのアクリル酸の吸収のために用いられる液体と同一である。
【0025】
(メタ)アクリル酸を吸収した吸収液は、通常、(メタ)アクリル酸以外にも、水、アクロレイン、ホルムアルデヒドおよびギ酸および酢酸等の揮発性の不純物を更に含んでいる。水、アクロレイン、ホルムアルデヒドおよび酢酸およびギ酸等の二次生成物は、特に高沸点の液体を吸収液として用いる場合には、ストリッピングガスによるストリッピングにより、少なくともその一部を除去することができる。これを実施するために、(メタ)アクリル酸を吸収した液体を、空気または窒素等のストリッピングガスに対し対向流を形成するように脱着塔に導入する。必要なストリッピングガスの量は、特に脱着温度に依存するが、吸収温度よりも20〜50℃高く設定するのが有利である。この操作は、好ましくは吸収工程と同一の圧力下で実施される。ストリッピングガスの量は、好ましくは、反応ガスの量に対し5〜25体積%である。脱着塔としては、充填塔、棚段塔、または泡鐘塔等を用いることができる。
【0026】
通常、冷却液および/または吸収液は、例えば、0.01〜1重量%のフェノチアジン、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、p−ニトロソフェノール、tert−ブチルフェノール等のフェノール性化合物、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オールまたはこれらの混合物等の少なくとも1種類の重合禁止剤を含む。
【0027】
粗製(メタ)アクリル酸とも呼ばれる組成物Zが、(メタ)アクリル酸を吸収した吸収液から分離される。吸収液として高沸点の液体を用いる場合には、粗製(メタ)アクリル酸は、通常精密蒸留によって分離される。精密蒸留による分離は、通常、例えば0.04〜0.1バールの減圧下で、充填塔または棚段塔を用いて実施される。重合禁止剤は、精密蒸留塔の頂部または上部に加えるのが有利である。このよう場合において、粗製(メタ)アクリル酸は、留出物として除去することができるが、好ましくは、精密蒸留塔の上部のサイドカットの取出口から取り出され、水および酢酸等の(メタ)アクリル酸よりも低沸点の不純物が塔の頂部から留出する。粗製(メタ)アクリル酸の分離後に得られる高沸点液体は、通常回収され吸収に再利用される。条件によっては、主に高沸点液体からなる残渣の全部または一部を、吸収塔で再利用する前に180℃を超える温度で熱処理し、不純物として存在するエステル状の(メタ)アクリル酸オリゴマーを分解し、生成する(メタ)アクリル酸を高沸点液体と共に蒸留するのが有利である。特に、アクリル酸を合成する場合に残存するマレイン酸またはそのアルデヒド体は、水による抽出等の、それ自体は通常の方法により、高沸点液体の再利用の前に除去することができる。
【0028】
本発明の好ましい方法において、反応ガスからの(メタ)アクリル酸の吸収のために水を吸収剤として用いる場合、粗製(メタ)アクリル酸は、通常抽出剤による抽出および最初に得られた(メタ)アクリル酸水溶液からの抽出物の蒸留によって単離される。抽出剤は、(メタ)アクリル酸に対する高い分配係数および水に対する低い溶解度を有し、水と共沸混合物を形成するものでなければならない。酢酸エチル、酢酸ブチル、アクリル酸エチル、2−ブタノンまたはこれらの混合物等の(メタ)アクリル酸よりも低沸点の抽出剤、または(メタ)アクリル酸よりも高沸点の抽出剤を用いることができる。トルエンは、アクリル酸の調製において特に好ましい抽出剤である。
【0029】
抽出を実施するためには、(メタ)アクリル酸水溶液を、選択した抽出剤に対し対向流を形成するように、適当な方法で抽出塔に導入する。
【0030】
その後、粗製(メタ)アクリル酸は、蒸留によって抽出液から分離される。蒸留の手順は、使用する抽出剤の沸点が(メタ)アクリル酸よりも高いか、或いは低いかによる。本発明において極めて好ましい(メタ)アクリル酸よりも低沸点の抽出剤を用いる場合、例えば、抽出物を溶媒分離塔に供給して、抽出剤および残存する水を塔の頂部から留去する。次いで、溶媒分離塔の残留物を低沸点物質用の分離塔に供給し、(メタ)アクリル酸よりも低沸点の不純物を頂部から留出させ、粗製(メタ)アクリル酸を残留物として得るのが有利である。更に蒸留工程を実施し、この粗製(メタ)アクリル酸から高沸点の不純物を更に除去することもできる。
【0031】
反応ガスから吸収剤への吸収によって組成物Zを分離する代わりに、反応ガスの分別凝集によって粗製(メタ)アクリル酸を得て、その後、場合によっては結晶化によって精製してもよい。
【0032】
分別凝集を実施する場合、冷却剤によって直接冷却され、好ましくは、温度が、例えば100〜180℃に低下した反応ガスは、通常、分離操作のための装置が内蔵された分離塔の下部に流入し、塔内を上昇する。粗製(メタ)アクリル酸の留分は、適当に取り付けられた回収トレイにより、中沸点留分である組成物Zとして回収することができる。このような方法は、独国特許第19740253号明細書および独国特許第19740252号明細書に記載されている。通常、上述のような重合禁止剤を塔内に導入する。
【0033】
分別蒸留の際に得られた組成物Zの粗製(メタ)アクリル酸留分は、更に精製するために結晶化に供してもよい。結晶化の方法は特に制限されない。結晶化による精製法が用いられる場合、懸濁結晶化により実施されるのが有利である。
【0034】
生成ガス混合物の処理の性質に関係なく、アルデヒドを含む粗製(メタ)アクリル酸が、組成物Zとして得られる。
【0035】
本発明の方法の特に好ましい実施形態において、クエンチ塔内での生成ガス混合物の水への吸収およびその後の連行剤としてのトルエンの存在下での共沸蒸留による水の分離の残留物として得られた粗製(メタ)アクリル酸が組成物Zとして用いられ、残存する低沸点および高沸点の不純物は、更に蒸留工程を実施し、除去される。
【0036】
本発明によれば、さらに好ましくは、組成物Zは、95〜99.99重量%、好ましくは98〜99.98重量%、特に好ましくは99〜99.97重量%の(メタ)アクリル酸と、1〜2,000ppm、好ましくは1〜1,000ppm、特に好ましくは1〜500ppmのアルデヒド(例えば、ベンザルデヒド、アクロレインまたはフルフラール(アクリル酸の調整の場合))と、0.001〜1重量%、好ましくは0.01〜0.5重量%、特に好ましくは0.05〜0.2重量%の水と、1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、特に好ましくは0.2重量%の(メタ)アクリル酸ダイマーまたは(メタ)アクリル酸オリゴマーと、1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、特に好ましくは0.1重量%以下の別の不純物とからなる。
【0037】
工程i)において、組成物Zは10〜100℃、好ましくは10〜70℃、最も好ましくは20〜30℃(室温が最も好ましい)の温度、0.1〜10バール、好ましくは0.5〜5バール、最も好ましくは0.9〜2バール(大気圧が最も好ましい)の圧力下でアルデヒド捕捉剤と接触して、(メタ)アクリル酸と、アルデヒドおよびアルデヒド捕捉剤の好ましくは高沸点の反応生成物と、未反応のアルデヒド捕捉剤とを含む組成物Zを生成する。
【0038】
本発明において用いることができるアルデヒド捕捉剤は、上述の圧力および温度下でアルデヒドと反応して、好ましくは高沸点の反応生成物を形成する全ての化合物である。
【0039】
用いることができるアルデヒド捕捉剤としては、例えば、アミノグアニジン塩、ヒドラジン、アルキルおよびアリールヒドラジン、カルボン酸ヒドラジド、またはアミノフェノール等の少なくとも1つの第一級アミノ基を有する窒素化合物が挙げられる。しかし、本発明の方法の好ましい実施形態では、メルカプタン、好ましくはC〜C20のメルカプタン、特に好ましくはC〜C16のメルカプタンが用いられる。この場合、最も好ましいのはドデシルメルカプタンである。
【0040】
アルデヒド捕捉剤は、好ましくは粗製(メタ)アクリル酸に含まれるアルデヒドに対して過剰に用いられ、好ましくはアルデヒド1モル当たり1.1〜5モル、特に好ましくは1.5〜2.5モル用いられる。反応時間は、通常、10分〜72時間、好ましくは1〜50時間、より好ましくは1.1〜10時間に維持される。アルデヒド捕捉剤を用いた処理により、粗製(メタ)アクリル酸中の残留アルデヒド含有量は、20ppm未満、具体的には5ppm未満、特に好ましくは3ppm未満に減少することができる。
【0041】
組成物Zとアルデヒド捕捉剤との接触は、例えば、アルデヒド捕捉剤を、粗製(メタ)アクリル酸を更なる処理に供するため供給するのに用いられるパイプラインに直接導入することにより実施してもよい。また、更なる処理に供される前に粗製(メタ)アクリル酸を一時的に保存する滞留タンク内に、アルデヒド捕捉剤を加えることも考えられる。
【0042】
しかし、本発明の方法の特に好ましい実施形態において、組成物Zは、固定床反応器中でアルデヒド捕捉剤と接触する。固定床反応器は、好ましくは、反応室と、反応室中に設けられた固定充填床(多孔固定床)とを有する反応器である。この場合において、多孔固定床は、好ましくは、例えば、反応器中に配置されたフィルター等のように、ゆるく充填された状態で担体上に導入されている。好ましくは、多孔固定床は、ラシヒリング、バールサドル、インターロックスサドル、またはパールリング等のバルク充填材、または環状充填材であり、環状充填材が最も好ましい。これらの充填材が、イオン交換体、好ましくはゼオライト材料からなるものであることが更に好ましい。本発明の方法の特に好ましい実施形態によると、ふるいの上にゆるく充填された状態に集積されたイオン交換体ビーズを有する固定床反応器が用いられる。
工程ii)
【0043】
工程ii)では、(メタ)アクリル酸は、工程i)で得られ、(メタ)アクリル酸以外に、アルデヒド捕捉剤とアルデヒドとの反応により得られ、好ましくは高沸点の反応生成物と、未反応のアルデヒド捕捉剤とを含む組成物Zから、少なくともその一部が分離される。したがって、組成物Zは、Zと比べて(メタ)アクリル酸の含有量が低い点で、組成物Zとは大きく異なっている。この場合において、組成物Z中に含まれていた(メタ)アクリル酸のうち50重量%、好ましくは75重量%、より好ましくは95重量%、最も好ましくは99重量%を超える量が分離されることが好ましい。
【0044】
本発明の好ましい実施形態においては、蒸留により分離を実施する。「蒸留により分離を実施する」という用語は、この場合において、単蒸留(凝縮液と蒸気との間で物質交換が殆ど起こらない蒸留)、および凝縮液の一部が上昇する蒸気と対向流をなす精密蒸留の両者を含むものとする。工程ii)における蒸留は、当業者に公知の蒸留装置を用いて実施することができる。
【0045】
工程ii)における蒸留では、一方では、目的生成物としての純粋な(メタ)アクリル酸が、留出物またはサイドストリーム(選択した蒸留方法の性質による)として得られ、他方では、残存する(メタ)アクリル酸以外に、アルデヒド捕捉剤とアルデヒドとの反応により得られ、好ましくは高沸点の反応生成物、および未反応のアルデヒド捕捉剤を含む組成物Zが、残留物として得られる。
【0046】
本発明による方法の特に好ましい実施形態において、組成物Zは、10〜99重量%、好ましくは40〜99重量%、特に好ましくは50〜99重量%の(メタ)アクリル酸と、2重量%以下、好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下のアルデヒドとアルデヒド捕捉剤との反応からの高沸点の反応生成物と、0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%、特に好ましくは1〜2重量%の未反応のアルデヒド捕捉剤と、1〜30重量%、好ましくは2〜20重量%、特に好ましくは5〜10重量%の(メタ)アクリル酸ダイマーまたは(メタ)アクリル酸オリゴマーと、0.5〜15重量%、好ましくは0.5〜10重量%、特に好ましくは1〜5重量%の別の不純物とからなる。
工程iii)およびiv)
【0047】
工程iii)において、未反応のアルデヒド捕捉剤は、プロトン性溶媒、好ましくは水相、特に好ましくは水によって、工程ii)で得られた残留物(組成物Z)から抽出される。
【0048】
この場合において、好ましくは、組成物Zは、組成物Zの重量に対して1〜75重量%、特に好ましくは2.5〜50重量%、最も好ましくは5〜25重量%の溶媒、好ましくは水相、特に好ましくは水と接触し、接触は、15〜50℃、特に好ましくは20〜30℃の温度、0.5〜5バール、特に好ましくは0.9〜2バールの絶対圧力下で実施される。
【0049】
組成物Zの溶媒、特に好ましくは水による抽出において、よりプロトン性が高く、好ましくは水相である第1の相Pと、好ましくは有機相であり、相Pに比べてプロトン性の低い第2の相Pが得られる。この場合において、本発明によると、アルデヒド捕捉剤が2つの相PまたはPの一方に濃縮されることが好ましい。「より濃縮される」とは、抽出前に、組成物Zに含まれる量のうち、50重量%、好ましくは60重量%、より好ましくは70重量%、最も好ましくは90重量%を上回る量の未反応のアルデヒド捕捉剤が、抽出後に第1の相Pまたは第2の相P、好ましくは第2の相P中に存在することを意味する。溶媒として水を用い、アルデヒド捕捉剤としてメルカプタンを用いる場合、未反応のメルカプタンの大部分は、抽出後に有機相P中に存在する。
【0050】
抽出物中に得られる、好ましくは第1水相Pは、好ましくは30〜95重量%、好ましくは40〜90重量%、特に好ましくは50〜85重量%の(メタ)アクリル酸、5〜40重量%と、好ましくは5〜30重量%、特に好ましくは15〜25重量%の水と、5重量%以下、好ましくは2重量%以下、特に好ましくは1重量%以下のアルデヒド捕捉剤と、0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%、特に好ましくは1〜3重量%の(メタ)アクリル酸ダイマーまたは(メタ)アクリル酸オリゴマーと、0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%、特に好ましくは1〜2重量%の別の不純物とからなる。
【0051】
抽出物中に得られる、好ましくは第2の有機相Pは、好ましくは15〜60重量%、好ましくは20〜50重量%、特に好ましくは25〜45重量%の(メタ)アクリル酸と、0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%、特に好ましくは0.1〜2重量%の水と、30〜95重量%、好ましくは40〜90重量%、特に好ましくは50〜85重量%のアルデヒド捕捉剤と、0〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%、特に好ましくは0.1〜1重量%の(メタ)アクリル酸ダイマーまたは(メタ)アクリル酸オリゴマーと、0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜5重量%、特に好ましくは1〜2重量%の別の不純物とからなる。
【0052】
工程iv)において、好ましくは水相である第1の相Pは、好ましくは有機相である第2の相Pから分離される。
【0053】
工程ii)で得られた組成物Zの、工程iii)での水による抽出、およびこのようにして得られた2つの相の工程iv)での分離は、抽出およびそれに続く一連の抽出で得られた相の分離を可能にする任意の装置を用いて実施することができる。
【0054】
本発明で用いられる場合、「抽出」とは、出発相(組成物Z)から、溶解または懸濁していた他の化合物を、他の液体相(第2の有機相P)に濃縮する任意の方法を意味すると理解される。不連続操作手順の場合には、振とうによる抽出も意味し、連続操作手順の場合には、パーフォレーションも意味する。
【0055】
好ましくは水相である第1の相Pの、好ましくは有機相である第2の相Pからの分離は、通常の抽出法に関して当業者に公知の方法を用いて実施される。分離は、分液漏斗等の、分離に好適な装置を用いて特に単純な方法で行ってもよい。抽出の一般的な手順に関しては、Thornton J.D.,“ScienceおよびPracticeのLiquid−Liquid Extraction”,第I巻および第II巻,オックスフォード,Oxford University Press,1992年、Lo T.−C.,Baird M.H.I,およびHanson C.,“HandbookのSolvent Extraction”,ニューヨーク,John Wiley & Sons,1983年、“Perry’s Chemical Engineering Handbook”,Perry R.H.、およびGreen D.W.,ニューヨーク,McGraw Hill,1997年の第15章に収録された、Robbins G. M.、およびCusack R.W.,“Liquid−Liquid Extraction OperationsおよびEquipment”を参照のこと。液−液抽出の一般的操作手順に関するこれらの文献の開示は、参照として組み込まれ、本明細書の開示の一部をなす。
【0056】
更に、工程iii)における抽出は、少量の水を併用して高い抽出効果を達成するために、例えば、混合装置と分離装置の組み合わせ、好ましくはカスケード接続された混合−分離装置、または抽出塔の使用等の大規模な工業スケールでの多段抽出方法を用いて行ってもよい。
【0057】
本発明の方法の特に好ましい実施形態では、工程iv)における分離後に得られる、好ましくは有機相である第2の相Pは、場合によっては、高沸点物質、オリゴマーまたはポリマー等の不純物をろ過または蒸留により除去した後、工程iv)に続く工程v)において、工程i)へ再利用される。この方法および手順によれば、未反応のアルデヒド捕捉剤を、アルデヒドの高沸点化合物への変換のために再度用いることができる。工程iv)における分離後に得られる、好ましくは水相である第1の相Pは、例えば、粗製(メタ)アクリル酸を調製する方法の工程b)、具体的には、生成ガス混合物を水に吸収させる工程b)において更に再利用することができる。
【0058】
上記目的の達成によって、(メタ)アクリル酸を調製する装置であって、流体輸送ラインによって互いに接続される装置要素として、(δ1)(メタ)アクリル酸反応器と、(δ2)(メタ)アクリル酸反応器(δ1)に接続されるクエンチ装置、または、(メタ)アクリル酸反応器(δ1)に接続される濃縮装置と、(δ3)クエンチ装置(δ2)に接続され、低沸点および/または高沸点の物質を分離する任意の1つ以上の蒸留装置、または、濃縮装置(δ2)に接続される結晶化装置と、(δ4)クエンチ装置(δ2)または蒸留装置(δ3)もしくは結晶化装置(δ3)に接続される反応器、好ましくは固定床反応器(δ3)であって、(δ4_1)アルデヒドを含む組成物の供給ラインと、(δ4_2)アルデヒド捕捉剤の供給ラインと、(δ4_3)再利用される)アルデヒド捕捉剤の供給ラインと、(δ4_3)アルデヒドとアルデヒド捕捉剤との反応からの反応生成物ならびに未反応のアルデヒド捕捉剤を含む組成物の除去ラインとを含む反応器(δ3)と、(δ5)反応器(δ4)に接続される別の蒸留装置と、(δ6)別の蒸留装置(δ5)の底部に接続される抽出装置であって、(δ6_1)アルデヒドおよびアルデヒド捕捉剤の反応からの反応物ならびに未反応のアルデヒド捕捉剤を含む組成物の供給ラインと、(δ6_2)溶媒の供給ラインと、(δ6_3)第1の水相Pの第1の除去ラインと、(δ6_4)第2の水相Pの第2の除去ラインを含む抽出装置を含み、第2の除去ライン(δ6_4)が、反応器(δ4)に接続され、任意に第1の除去ライン(δ6_3)が、クエンチ装置(δ2)または濃縮装置(δ2)に接続される装置が提供される。
【0059】
本発明によると、流体輸送とは、ライン、好ましくはパイプラインが、気体、液体、超臨界流体、液体中に懸濁した固体、またはこれらの2以上を導くことができるように構築および構成されていることを意味すると理解される。
【0060】
本発明の装置の好ましい実施形態では、反応器(δ5)は、好ましくは本発明の方法の説明との関連で上述した点を特徴とする固定床反応器である。
【0061】
抽出装置(δ6)は、混合ユニットと、物質を分離するためのユニットとを含む装置である。物質を混合および分離するためのこれらのユニットは、個々の装置要素が流体輸送ラインで接続された、例えばこの場合において好ましいカスケード接続された分離−混合装置等であってもよい。しかし、この場合において、蒸留塔等のように、これらの2つの装置ユニットを1つの装置要素にまとめたものであってもよい。
【0062】
更に、本発明の装置の特に好ましい実施形態において、第1の除去ライン(δ6_3)は、クエンチ装置(δ2)に接続されている。
【0063】
本発明はまた、上述の装置を用いた(メタ)アクリル酸の調製方法に関する。
【0064】
更に本発明は、上述した本発明の方法により得られる(メタ)アクリル酸を原料とする発泡体、成形体、繊維、ホイル、フィルム、ケーブル、封止材、超吸収体、液体吸収性衛生用品、植物および真菌類の増殖調節組成物の担体、包装材料、土壌添加剤または建築材料に関する。この場合において、これらは少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも25重量%、最も好ましくは少なくとも50重量%の範囲内の該(メタ)アクリル酸を含んで構成される。
【0065】
本発明は更に、本発明の方法により得られる(メタ)アクリル酸の、発泡体、成形体、ホイル、フィルム、ケーブル、封止材、超吸収体、液体吸収性衛生用品、植物および真菌類の増殖調節組成物の担体、包装材料、活性化合物の放出制御のための土壌添加剤または建築材料としての使用に関する。
【0066】
本発明を限定しない図および実施例により、本発明をより具体的に説明する。
【0067】
図1は、(メタ)アクリル酸を調製するための本発明の方法および本発明の装置を示し、生成ガス混合物は、クエンチ塔内で水に吸収され、水はその後蒸留塔内で分離される。
【0068】
気体状の出発化合物(アクリル酸の調製の場合は、プロペン、酸素、水蒸気、および窒素の気体混合物)は、供給ライン0を介して反応器1に導入され、そこで、場合によっては2段階で、アクリル酸および他の気体状の反応生成物に変換される。反応器1で得られた生成ガス混合物は、クエンチ塔2に移送され、次いで、アクリル酸および他の副生成物は水に吸収され、アクリル酸水溶液を生成する。クエンチ塔の底部で得られたアクリル酸水溶液は、蒸留塔に導入され、水は、トルエンの存在下で共沸蒸留によって除去される。蒸留塔3中の残留物(粗製アクリル酸)は、好ましくは固定床反応器である反応器4に導入される。蒸留塔3で得られた残留物を、まず、再び蒸留を行って更に精製し、その後反応器4に導入することも考えられる(図示せず)。アルデヒド捕捉剤を、供給ライン6を介して反応器4に導入し、残留物と接触させて、アルデヒド捕捉剤と、残留物中に残存するアルデヒドとの反応により高沸点の反応生成物を形成させる。このようにして得られる組成物を、除去ライン7を介して再蒸留装置8に導入し、純粋なアクリル酸を留分として取り出す。再蒸留装置8において得られる残留物は、供給ライン10を介して抽出装置9に移送される。本発明の方法の特定の実施形態において、高沸点物質、オリゴマーまたはポリマー等の不純物は、蒸留装置またはろ過装置等の分離装置を用いて、このようにして得られた残留物を抽出装置9に移す前に除去される(図示せず)。供給ライン11を介して、抽出剤として水を抽出装置9に導入する。抽出後、抽出装置9内に、2つの相PおよびPが形成され、そのうち、比重が小さく、上述した未反応のアルデヒド捕捉剤の全量を含む有機相Pは、反応器4に接続された除去ライン13を介して、反応器4に再利用される。この場合において、高沸点物質、オリゴマーまたはポリマー等の不純物は、分離装置14を用いて、反応器4に再利用される前に有機相Pから除去される。不純物、特に好ましくは固体状の不純物が、有機相Pから反応器4へ再利用される前、および蒸留塔8で得られた残留物を抽出装置9に移送する前の双方において、分離装置、好ましくは分離装置としてのろ過器を用いて除去されることは特に有利である。抽出装置9で得られた第1の水相Pを、除去ライン12を介してクエンチ塔2に再利用してもよい。
【実施例】
【0069】
アルデヒド捕捉剤としてドデシルメルカプタンを含む、高沸点物質の分離塔の残留物200gと、表1に示した量の水とを、250mlの分液漏斗中で、大気圧下、室温で混合する。3分間激しく振とうした後、相を分離させるために、8〜10時間の沈降時間を置いた。その後、2つの相を排出し、重量を測定した。分析のため、試料を4000rpmで遠心分離し、わずかな濁りを除去した後、分析を行った。全混合物中に9%の水分が含まれる場合、9.9gの上相と209.6gの下相とが得られた。この結果は、ドデシルメルカプタンの回収率56%に相当する。全混合物中の水分含量が17%の場合、15.5gの上相と223.9gの下相とが得られた。この結果は、ドデシルメルカプタンの回収率85%に相当する。
【0070】
分析は、熱伝導検出器を装着したガスクロマトグラフィーを用いて行った(数字は全て重量%単位である)。
【表1】

1)アクリル酸2)ドデシルメルカプタン3)プロピオン酸4)メチルヒドロキノン5)ジメチルアクリル酸6)プロトアネモニン7)分離できる残留物8)マレイン酸/無水マレイン
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】(メタ)アクリル酸を調製するための本発明の方法および本発明の装置を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
0 反応ガスの供給
1 (メタ)アクリル酸反応器
2 クエンチ塔
3 蒸留塔
4 アルデヒドを高沸点化合物に変換する反応器
5 蒸留塔3から反応器4へ残留物を供給
6 反応器4へアルデヒド捕捉剤を供給
7 別の蒸留塔8に輸送できる、アルデヒドとアルデヒド捕捉剤との反応からの高沸点の反応生成物および未反応のアルデヒド捕捉剤を含む組成物の除去ライン
8 更なる蒸留塔
9 抽出装置
10 蒸留塔8から抽出装置への残留物の供給ライン
11 水の供給ライン
12 第1の水相の除去ライン
13 反応器4に再利用される第2の有機相の除去ライン
14 不純物を流水除去する装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸を調製する方法であって、
i)(メタ)アクリル酸およびアルデヒドを含む組成物Zを10〜100℃、圧力が0.1〜10バールの状態でアルデヒド捕捉剤と接触させて、組成物Zを得る工程であって、Zが、Za(メタ)アクリル酸と、Zbアルデヒドおよびアルデヒド捕捉剤の反応生成物と、Zc未反応のアルデヒド捕捉剤とを含む工程と、
ii)(メタ)アクリル酸を前記組成物Zから少なくとも部分的に分離させて、組成物Zを得る工程であって、Zが、Za アルデヒドおよびアルデヒド捕捉剤の反応生成物と、Zb 未反応のアルデヒド捕捉剤とを含む工程と、
iii)好ましくは水相、特に好ましくは水を有する極性溶媒によって組成物Zから未反応のアルデヒド捕捉剤を抽出する工程であって、極性が高い第1相Pと、前記相Pより極性が低い第2相Pが得られる工程と、
iv)第2相Pから第1相Pを分離する工程と含む方法。
【請求項2】
工程i)で用いられる組成物Zが、
a)C〜C炭化水素類を酸素で触媒気相酸化して(メタ)アクリル酸を含む生成ガス混合物を得る工程であって、前記生成ガス混合物が、副生成物としてアルデヒドを含む工程と、
b)前記生成ガス混合物を溶媒に吸収させ、次いで、前記溶媒を分離して組成物Zを得るか、あるいは、前記生成ガス混合物を分別凝集して組成物Zを分離する工程とを含む方法によって得られたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程iv)で得られる前記第2相Pが、工程i)に再利用される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルデヒド捕捉剤が、メルカプタン化合物である、請求項1から3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記メルカプタン化合物が、C〜C20のメルカプタン、好ましくはC〜C16のメルカプタン、特に好ましくはドデシルメルカプタンである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程ii)において、前記組成物Zが、前記組成物Zの重量に対して2.5〜50重量%の溶媒で抽出される、請求項1から5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程iii)およびiv)における前記抽出および分離が、少なくとも1つの混合−分離装置、好ましくはカスケード接続された混合−分離装置、または抽出塔によって実施される、請求項1から6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
(メタ)アクリル酸を調製する装置であって、流体輸送ラインによって互いに接続される装置要素として、
(δ1) (メタ)アクリル酸反応器(1)と、
(δ2) 前記(メタ)アクリル酸反応器(δ1)に接続されるクエンチ装置(2)、または、前記(メタ)アクリル酸反応器(δ1)に接続される濃縮装置(2)と、
(δ3)前記クエンチ装置(δ2) (2)に接続され、低沸点および/または高沸点の物質を分離する任意の1つ以上の蒸留装置(3)、または、前記濃縮装置(δ2) (2)に接続される結晶化装置(3)と、
(δ4)前記クエンチ装置(δ2)(2)または前記蒸留装置(δ3)(3)もしくは前記結晶化装置(δ3) (3)に接続される反応器(4)であって、
(δ4_1)アルデヒドを含む組成物の供給ライン(5)と、
(δ4_2)アルデヒド(6)捕捉剤の供給ラインと、
(δ4_3)アルデヒドおよびアルデヒド捕捉剤の反応からの反応生成物ならびに未反応のアルデヒド捕捉剤を含む組成物の除去ライン(7)とを含む反応器(4)と、
(δ5)前記反応器(δ4)(4)に接続される別の蒸留装置(8)と、
(δ6)前記別の蒸留装置(δ5)(8)の底部に接続される抽出装置(9)であって、
(δ6_1)アルデヒドおよびアルデヒド捕捉剤の反応からの反応物ならびに未反応のアルデヒド捕捉剤を含む組成物の供給ライン(10)と、
(δ6_2)溶媒の供給ラインと、
(δ6_3)前記第1相Pの第1の除去ライン(12)と、
(δ6_4)前記第2相Pの第2の除去ライン(13)とを含む抽出装置(9)とを含み、
前記第2の除去ライン(δ6_4)(13)が、前記反応器(δ4) (4)に接続される装置。
【請求項9】
前記反応器(δ4)(4)が、固定床反応器である、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記第1の除去ライン(δ6_3)が、前記クエンチ装置(δ2)に接続される、請求項8または9に記載の装置
【請求項11】
請求項7から請求項10のいずれか1項に記載の装置を用いる、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から請求項6または請求項11のいずれか1項に記載の方法によって得られる、(メタ)アクリル酸を原料とする発泡体、成形体、繊維、ホイル、フィルム、ケーブル、封止材、超吸収体、液体吸収性衛生用品、植物および真菌類の増殖調節組成物の担体、包装材料、土壌添加剤または建築材料。
【請求項13】
発泡体、成形体、繊維、ホイル、フィルム、ケーブル、封止材、超吸収体、液体吸収性衛生用品、植物および真菌類の増殖調節組成物の担体、包装材料、土壌添加剤または建築材料における、請求項1から請求項6または請求項11のいずれか1項に記載の方法によって得られる(メタ)アクリル酸の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2008−529988(P2008−529988A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553567(P2007−553567)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【国際出願番号】PCT/EP2006/001077
【国際公開番号】WO2006/084667
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(500001596)シュトックハウゼン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (7)
【氏名又は名称原語表記】Stockhausen GmbH
【住所又は居所原語表記】Baekerpfad 25, D−47805 Krefeld, Germany
【Fターム(参考)】