説明

プロピレン系樹脂組成物およびその成形品

【課題】日本薬局方ポリプロピレン製水性注射剤容器の試験項目を満足し、かつ、優れた耐熱性、剛性、耐衝撃性、成形性およびオートクレーブ滅菌後も透明性を保持する医療用プロピレン系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】メルトフローレートが0.5〜100g/10分の、プロピレン単独重合体またはプロピレンと含有量が1重量%未満のα−オレフィンとからなるプロピレン系共重合体(A)75〜98重量%、
下記条件:
(B−i)メタロセン系触媒を用いて得られるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体である、
(B−ii)エチレン含有量が3〜17wt%、
(B−iii)メルトフローレートが0.5〜80g/10分
を満たすプロピレン系共重合体(B)2〜25重量%からなり、
固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、−60〜20℃の範囲において観測されるガラス転移を表すtanδ曲線のピークが0℃以下に単一のピークを示すことを特徴とする医療用プロピレン系樹脂組成物による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用プロピレン系樹脂組成物およびその成形品に関し、詳しくは医療用途向け薬剤、薬液保存容器のうち、特に、第15改正 日本薬局方 一般試験 45.プラスチック製医薬品容器試験法 1.ポリエチレン製又はポリプロピレン製水性注射剤容器の試験項目をすべて満足する医療用成形品に適した医療用プロピレン系樹脂組成物およびその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレン系重合体は、その優れた安全衛生性や成形加工性、力学特性、ガスバリヤー性の特徴を生かし、各種の医療器具に使用されている。特に近年、高レベルの安全衛生性が求められる薬剤や薬液の保存容器として、アンプルやバイアルの代替容器用材に活用が散見されるようになり、その用途向け材料開発が積極的に行なわれている(例えば、特許文献1参照。)。
このような保存容器には、蒸気滅菌時の耐熱性、耐失透性、耐添加剤抽出性、水蒸気や酸素のガスバリヤー性が維持されることや、使用添加剤が保存薬剤、薬液に相互作用を及ぼさないことが必要であり、具体的には第15改正 日本薬局方 一般試験 45.プラスチック製医薬品容器試験法 1.ポリエチレン製又はポリプロピレン製水性注射剤容器の試験項目をすべて満足することが必須要件である。
【0003】
また、プロピレン系重合体は、剛性や耐熱性、ガスバリヤー性の点ではプロピレン単独重合体が、透明性や耐衝撃性の点ではエチレンとのランダム共重合体が好適であり、状況に応じて適宜選択的に用いられているが、保存容器に用いる場合、プロピレン系重合体のみでは、透明性や剛性の点において十分な性能を発揮させることが困難であるため、造核剤や中和剤を種々組み合わせて、必須性能の最適化が試みられてきた。
【0004】
しかしながら、例えば、ソルビトール系透明造核剤を用いた場合には、耐添加剤抽出性や局方試験を満足せず、これらの用途には不適であった。また、アルミ系や有機リン酸系合成造核剤を添加したものは、透明性の発現が十分ではなかったり、添加量を増やすと局方試験の強熱残分に満足すべき結果が得られなかった。
局方試験に合格することを必須要件とする医療用途の例としては、薬液をあらかじめ充填してなるプレフィルドシリンジのようなキット製剤などが挙げられる。
この薬液をあらかじめ充填してなるキット製剤をポリプロピレンで製造することを検討し始めたのは、1980年代半ば頃からで(例えば、特許文献2参照。)、近年、プロピレン系重合体と、特定の核剤とからなる透明な注射筒又は透明な容器に薬剤液を充填してなる製剤(例えば、特許文献3参照。)に関する検討がなされている。
しかしながら未だ、滅菌後に高い透明性を有し、耐熱性および剛性に優れ、局方試験に合格し、薬剤、薬液の保存容器として満足し得る成形品が得られていないのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−178541号公報
【特許文献2】特開昭62−194866号公報
【特許文献3】特開平5−222078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、第15改正 日本薬局方 一般試験 45.プラスチック製医薬品容器試験法 1.ポリエチレン製又はポリプロピレン製水性注射剤容器の試験項目を満足し、かつ、優れた耐熱性、剛性、射出成形性、透明性を保持する医療用プロピレン系樹脂組成物およびその成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のプロピレン系重合体を特定量配合した樹脂組成物が、日本薬局方の試験項目を満足する医療用プロピレン系樹脂組成物を得ることができること、またさらに特定の造核剤を特定量用いることにより、さらに優れた医療用プロピレン系樹脂組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、
メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.5〜100g/10分の、プロピレン単独重合体またはプロピレンと含有量が1重量%未満のα−オレフィンとからなるプロピレン系共重合体(A)75〜98重量%、
下記条件(B−i)〜(B−iii):
(B−i)メタロセン系触媒を用いて得られるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体である、
(B−ii)エチレン含有量が3〜17wt%の範囲である、
(B−iii)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg)が0.5〜80g/10分の範囲である
を満たすプロピレン系共重合体(B)2〜25重量%からなり、
固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、−60〜20℃の範囲において観測されるガラス転移を表すtanδ曲線のピークが0℃以下に単一のピークを示すことを特徴とする医療用プロピレン系樹脂組成物が提供される。
【0009】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、プロピレン系共重合体(B)が、
メタロセン系触媒を用いて得られるエチレン含有量が7〜25重量%のプロピレン−エチレンランダム共重合体(B−1)30〜70重量%、および
メタロセン触媒を用いて得られ、α−オレフィン含有量が1〜5質量%、融解ピーク温度(Tm)が125〜145℃のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(B−2)30〜70重量%からなることを特徴とする医療用プロピレン系樹脂組成物が提供される。
【0010】
また、本発明の第3の発明によれば、第1または第2の発明において、さらに、造核剤を、前記(共)重合体(A)とプロピレン系共重合体(B)の合計100重量部に対し、0.01〜0.6重量部の範囲で含有することを特徴とする医療用プロピレン系樹脂組成物が提供される。
【0011】
また、本発明の第4の発明によれば、第3の発明において造核剤とその含有量が、下記一般式(1)で示される造核剤(a)0.01〜0.6重量部、下記一般式(2)で示される造核剤(b)0.005〜0.3重量部、下記一般式(3)で示される造核剤(c)0.005〜0.15重量部、下記一般式(4)で示される造核剤(d)0.005〜0.15重量部または下記一般式(5)で示される造核剤(e)0.005重量部以上で0.3重量部未満であることを特徴とする医療用プロピレン系樹脂組成物が提供される。
【0012】
【化1】

[式(1)中、nは、0〜2の整数であり、R〜Rは、同一または異なって、それぞれ水素原子もしくは炭素数が1〜20のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、カルボニル基、ハロゲン基およびフェニル基であり、Rは、炭素数が1〜20のアルキル基である。]
【0013】
【化2】

[式(2)中、Rは、直接結合、硫黄又は炭素数1〜9のアルキレン基又はアルキリデン基であり、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基であり、MはNaであり、nはMの価数である。]
【0014】
【化3】

[式(3)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を示し、Mは、周期律表第III族または第IV族の金属原子を示し、Xは、Mが周期律表第III族の金属原子を示す場合には、HO−を示し、Mが周期律表第IV族の金属原子を示す場合には、O=又は(HO)−を示す。]
【0015】
【化4】

[式(4)中、MおよびMは、同一または異なって、カルシウム、ストロンチウム、リチウムおよび一塩基性アルミニウムから選択される少なくとも1種の金属カチオンであり、R、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10は、同一または異なって、水素、C−Cアルキル(ここで、いずれか2つのビシナル(隣接炭素に結合)またはジェミナル(同一炭素に結合)アルキル基は、一緒になって6個までの炭素原子を有する炭化水素環を形成してもよい)、ヒドロキシ、C−Cアルコキシ、C−Cアルキレンオキシ、アミンおよびC−Cアルキルアミン、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素および沃素)並びにフェニルからなる群からそれぞれ選択される。]
【0016】
(CONHR …(5)
[式(5)中、Rは、炭素数2〜30の飽和若しくは不飽和の脂肪族ポリカルボン酸残基、炭素数4〜28の飽和若しくは不飽和の脂環族ポリカルボン酸残基、又は炭素数6〜18の芳香族ポリカルボン酸残基を表わす。Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、又は炭素数3〜46のシクロアルキル基若しくはシクロアルケニル基を表わす。aは、2〜6の整数を表す。]
【0017】
また、本発明の第5の発明によれば、第4の発明において、造核剤(a)が、下記一般式(6)で示される造核剤であることを特徴とする医療用プロピレン系樹脂組成物が提供される。
【化5】

[但し、式(6)中、nは、0〜2の整数であり、R、R、R、Rは、水素原子であり、Rは、水素原子もしくは炭素数が1〜20のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、カルボニル基、ハロゲン基およびフェニル基であり、Rは、炭素数が1〜20のアルキル基である。]
【0018】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、さらに、滑剤を、前記(共)重合体(A)とプロピレン系共重合体(B)の合計100重量部に対し、0.001〜0.5重量部の範囲で含有することを特徴とする医療用プロピレン系樹脂組成物が提供される。
【0019】
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明の医療用プロピレン系樹脂組成物を用いた医療用成形品が提供される。
また、本発明の第8の発明によれば、第7の発明の医療用成形品がキット製剤であることを特徴とする医療用成形品が提供される。
さらに、本発明の第9の発明によれば、第8の発明において、キット製剤がプレフィルドシリンジであることを特徴とする医療用成形品が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の医療用プロピレン系樹脂組成物は、第15改正 日本薬局方 一般試験 45.プラスチック製医薬品容器試験法 1.ポリエチレン製又はポリプロピレン製水性注射剤容器の試験項目を満足し、かつ、優れた耐熱性、剛性、成形性および透明性を保持するものである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.5〜100g/10分の、プロピレン単独重合体またはプロピレンと含有量が1重量%未満のα−オレフィンとからなるプロピレン系共重合体(A)75〜98重量%、
下記条件(B−i)〜(B−iii):
(B−i)メタロセン系触媒を用いて得られるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体である、
(B−ii)エチレン含有量が3〜17wt%の範囲である、
(B−iii)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg)が0.5〜80g/10分の範囲である
を満たすプロピレン系共重合体(B)2〜25重量%からなり、
固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、−60〜20℃の範囲において観測されるガラス転移を表すtanδ曲線のピークが0℃以下に単一のピークを示すことを特徴とする医療用プロピレン系樹脂組成物であり、これより得られる成形品、特にキット製剤に有用である。
【0022】
以下、構成成分、組成物の製造方法、成形体等について詳細に説明する。
本発明の医療用プロピレン系樹脂組成物を構成する重合体組成物は、上記プロピレン系(共)重合体(A)75〜98重量%、上記プロピレン系共重合体(B)2〜25重量%からなる。
プロピレン系(共)重合体(A)の配合量は、ブレンドによりこの樹脂の特性を失うことの無い、75〜98重量%、具体的には、80重量%、90重量%、95重量%等の実施態様が例示できる。これに対して、該組成物を構成する、前記プロピレン系共重合体(B)は、2〜25重量%、具体的には、5重量%、10重量%、15重量%、20重量%等の実施態様が例示でき、これらの二成分系樹脂をそれぞれ配合して100重量%になるように調合する。
【0023】
本発明の医療用プロピレン系樹脂組成物を構成する重合体組成物は、下記の条件を満たすものである。
固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、−60〜20℃の範囲において観測されるガラス転移を表すtanδ曲線のピークが0℃以下に単一のピークを示す。
【0024】
本発明においては、相溶性を良好に保ち、透明性に維持するために、使用するプロピレン系(共)重合体(A)とプロピレン系共重合体(B)とが相分離していないことが必要である。相分離の条件は、エチレン含量のみならず、分子量や組成によっても影響を受けるため、上記のエチレン含量に関する規定に加えて、固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、tanδ曲線のピークに関する規定が必要となる。
プロピレン−エチレンブロック共重合体が相分離構造を取る場合には、プロピレン系(共)重合体(A)に含まれる非晶部のガラス転移温度とプロピレン系共重合体(B)に含まれる非晶部のガラス転移温度が各々異なるため、ピークは複数となる。逆に相溶性である場合には、両成分は分子のオーダーで混合しており、両成分のガラス転移温度の中間的な温度に単一のピークを有する。すなわち、相分離構造を取っているかどうかは、固体粘弾性測定における温度−tanδ曲線において判別可能であり、透明性を維持するためには、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有することが必要である。
【0025】
固体粘弾性測定とは、具体的には、短冊状の試料片に特定周波数の正弦歪みを与え、発生する応力を検知することで行う。ここでは、周波数は1Hzを用い測定温度は−60℃から段階状に昇温し、サンプルが融解して測定不能になるまで行う。また、歪みの大きさは0.1〜0.5%程度が推奨される。得られた応力から、公知の方法によって貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”を求め、これの比で定義される損失正接(=損失弾性率/貯蔵弾性率)を温度に対してプロットすると0℃以下の温度領域で鋭いピークを示す。一般に0℃以下でのtanδ曲線のピークは非晶部のガラス転移を観測するものであり、ここでは本ピーク温度をガラス転移温度Tg(℃)として定義する。
本発明において、tanδ曲線のピークが0℃以下に単一のピークを満たすようにするには、プロピレン系共重合体(B)のエチレン含有量を調整することにより達成することができる。プロピレン系(共)重合体(A)のエチレン含有量との差を少なくするほど、単一ピークが得られ易くなる。
【0026】
[1]組成物の構成成分
1.プロピレン系(共)重合体(A)
本発明の医療用プロピレン系樹脂組成物に用いられるプロピレン系(共)重合体(A)は、プロピレン単独重合体、またはプロピレンと含有量が1重量%未満のα−オレフィンとからなるプロピレン系共重合体、あるいはこれらの混合物であってもよい。
プロピレン系(共)重合体(A)は、オートクレーブ滅菌時などの耐熱性の観点では単独重合体が望ましく、透明性の観点ではプロピレンとα−オレフィンとからなるランダム共重合体が望ましい。共重合に用いられるα−オレフィンは、プロピレンを除く炭素数2〜20のα−オレフィンがあげられ、例えばエチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等を例示できる。プロピレンと共重合されるα−オレフィンは一種類でも二種類以上用いてもよい。このうちエチレン、ブテン−1が好適である。より好ましくはエチレンが好適である。また、これらプロピレン系重合体は、二種以上混合して使用してもよい。また、α−オレフィンの含有量が1重量%以上であると耐熱性の観点から、使用が困難になる。
プロピレン系共重合体の具体的な例としては、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ヘキセン−1共重合体、プロピレン−オクテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ヘキセン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1−オクテン−1共重合体などのような、共単量体を任意に若干量組み合わせた二元または三元共重合体が例示できる。
【0027】
医療用途では、滅菌処理されることが一般的で、具体的には、高圧蒸気滅菌処理、放射線滅菌処理、エチレンオキサイドガス(EOG)による滅菌処理、紫外線滅菌処理などが行なわれる。その際、121℃で20分間の高圧蒸気滅菌処理される場合は、プロピレン単独重合体やブロック共重合体、またはエチレン含有量が1%未満のランダム共重合体が好ましい。エチレン含有量の多いランダム共重合体を用いると高圧蒸気滅菌処理で変形してしまう不具合が発生する。また、高圧蒸気滅菌処理される場合は、滅菌前に比べ透明性が悪化しやすく、悪化しにくいものが良好である。
放射線滅菌処理を行う場合は、エチレン含有量の多いランダム共重合体が好ましく、プロピレン単独重合体を用いると放射線滅菌処理後の物性低下が著しく好ましくない。また、エチレン含有量の多いランダム共重合体に、分子量調整剤として過酸化物を添加した組成物は、放射線照射前後にて耐衝撃性が更に良好となる。
【0028】
プロピレン系(共)重合体(A)に用いられるα−オレフィン含量は、1重量%未満であり、0.5重量%未満が好ましい。α−オレフィンの含量が1重量%以上であると、剛性が低下し、オートクレーブ滅菌処理の際に変形を起こす恐れがある。
ここで、プロピレン及びα−オレフィンは、下記の条件の13C−NMR法によって計測される値である。
装置:日本電子社製 JEOL−GSX270
濃度:300mg/2mL
溶媒:オルソジクロロベンゼン
【0029】
また、本発明で用いられるプロピレン系(共)重合体(A)がプロピレン単独重合体の場合は、アイソタクチックペンタッド分率が0.90以上が好ましく、より好ましくは0.94〜0.98である。アイソタクチックペンタッド分率が0.90未満であると、剛性やバリアー性が満足できないおそれがある。
ここで、アイソタクチックペンタッド分率は、13C−NMRを用いたプロトンデカップリング法で測定する値である。
【0030】
本発明で用いられるプロピレン系(共)重合体(A)は、JIS K7120(230℃、2.16kg荷重)に準拠したメルトフローレート(MFR)が0.5〜100g/10分の範囲のものであり、1〜50g/10分が好ましく、2〜30g/10分がさらに好ましい。メルトフローレート(MFR)が0.5g/10分未満では、成形加工性の低下をきたし、製品として満足できるものが得られ難くなるおそれがある。また、100g/10分を超えると、機械的強度の低下が懸念される。
メルトフローレート(MFR)は、プロピレン系(共)重合体(A)の重合条件である温度や圧力を調節したり、水素等の連鎖移動剤を重合時に添加する水素添加量の制御により、容易に調整を行なうことができる。
ここで、MFRは、JIS K7210に準拠し、加熱温度230℃、荷重21.2Nで測定する値である。
【0031】
プロピレン系(共)重合体(A)の製造方法としては、特に限定されないが、立体規則性触媒を使用する重合法が好ましい。立体規則性触媒としては、チーグラー触媒やメタロセン触媒などが挙げられる。好ましくは、プロピレン系共重合体(B)と相溶性の良いメタロセン触媒を用いた方がより良い。
【0032】
チーグラー触媒としては、三塩化チタン、四塩化チタン、トリクロロエトキシチタン等のハロゲン化チタン化合物、前記ハロゲン化チタン化合物とハロゲン化マグネシウムに代表されるマグネシウム化合物との接触物等の遷移金属成分とアルキルアルミニウム化合物又はそれらのハロゲン化物、水素化物、アルコキシド等の有機金属成分との2成分系触媒、更にそれらの成分に窒素、炭素、リン、硫黄、酸素、ケイ素等を含む電子供与性化合物を加えた3成分系触媒が挙げられる。
【0033】
メタロセン触媒としては、(i)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物(いわゆるメタロセン化合物)と、(ii)メタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒と、必要により、(iii)有機アルミニウム化合物とからなる触媒であり、公知の触媒はいずれも使用できる。メタロセン化合物は、好ましくはプロピレンの立体規則性重合が可能な架橋型のメタロセン化合物であり、より好ましくはプロピレンのアイソ規則性重合が可能な架橋型のメタロセン化合物である。
【0034】
(i)メタロセン化合物としては、例えば、特開昭60−35007号、特開昭61−130314号、特開昭63−295607号、特開平1−275609号、特開平2−41303号、特開平2−131488号、特開平2−76887号、特開平3−163088号、特開平4−300887号、特開平4−211694号、特開平5−43616号、特開平5−209013号、特開平6−239914号、特表平7−504934号、特開平8−85708号の各公報に開示されているもの等が好ましく使用できる。
【0035】
更に、具体的には、メチレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン1,2−(4−フェニルインデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(4−メチルシクロペンタジエニル)(3−t−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(2−メチル−4−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(3’−t−ブチル−5’−メチル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[4−(1−フェニル−3−メチルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(フルオレニル)t−ブチルアミドジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス[1−(2−メチル−4,(1−ナフチル)−インデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−(3−フルオロビフェニリル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス[1−(2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス[1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリドなどのジルコニウム化合物が例示できる。
【0036】
上記において、ジルコニウムをチタニウム、ハフニウムに置き換えた化合物も同様に使用できる。また、ジルコニウム化合物とハフニウム化合物等の混合物を使用することも好ましい。また、クロリドは他のハロゲン化合物、メチル、イソブチル、ベンジル等の炭化水素基、ジメチルアミド、ジエチルアミド等のアミド基、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシド基、ヒドリド基等に置き換えることが出来る。
これらの内、インデニル基あるいはアズレニル基を珪素あるいはゲルミル基で架橋したメタロセン化合物が特に好ましい。
【0037】
また、メタロセン化合物は、無機または有機化合物の担体に担持して使用してもよい。該担体としては、無機または有機化合物の多孔質化合物が好ましく、具体的には、イオン交換性層状珪酸塩、ゼオライト、SiO、Al、シリカアルミナ、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThO、等の無機化合物、多孔質のポリオレフィン、スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、オレフィン・アクリル酸共重合体等からなる有機化合物、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0038】
(ii)メタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒としては、有機アルミニウムオキシ化合物(たとえば、アルミノキサン化合物)、イオン交換性層状珪酸塩、ルイス酸、ホウ素含有化合物、イオン性化合物、フッ素含有有機化合物等が好ましく挙げられる。
【0039】
(iii)有機アルミニウム化合物としては、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムセスキハライド、アルキルアルミニウムジハライド、アルキルアルミニウムハイドライド、有機アルミニウムアルコキサイド等が好ましく挙げられる。
【0040】
プロピレン系(共)重合体(A)の製造方法としては、上記触媒の存在下に、不活性溶媒を用いたスラリー法、溶液法、実質的に溶媒を用いない気相法や、あるいは重合モノマーを溶媒とするバルク重合法等が挙げられる。
例えば、スラリー重合法の場合には、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の不活性炭化水素又は液状モノマー中で行うことができる。重合温度は、通常−80〜150℃であり、好ましくは40〜120℃である。重合圧力は、1〜60気圧が好ましく、また得られるプロピレン系(共)重合体(A)の分子量の調節は、水素もしくは他の公知の分子量調整剤で行うことができる。
重合は連続式又はバッチ式反応で行い、その条件は通常用いられている条件でよい。さらに重合反応は一段で行ってもよく、多段で行ってもよい。
【0041】
本発明で用いられるプロピレン系共重合体(B)とは、下記条件(B−i)〜(B−iii)を満たすプロピレン系共重合体である。
(B−i)メタロセン系触媒を用いて得られるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体である。
(B−ii)エチレン含有量が3〜17wt%範囲である。
(B−iii)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg)が0.5〜80g/10分の範囲である。
本発明で用いられるプロピレン系共重合体(B)のエチレン含有量が3wt%未満であると耐衝撃性が不十分となり、17wt%を超えると相分離がおこる事による透明性の悪化が懸念される。
【0042】
本発明で用いられるプロピレン系共重合体(B)のメルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg)が0.5g/10分未満であると成形が困難となり、80g/10分を超えると耐衝撃性が不十分になる可能性がある。
メルトフローレート(MFR)は、プロピレン系共重合体(B)の重合条件である温度や圧力を調節したり、水素等の連鎖移動剤を重合時に添加する水素添加量の制御により、容易に調整を行なうことができる。
ここで、MFRは、JIS K7210に準拠し、加熱温度230℃、荷重21.2Nで測定する値である。
【0043】
プロピレン系共重合体(B)の共重合に用いられるα−オレフィンは、プロピレンを除く炭素数2〜20のα−オレフィンがあげられ、例えばエチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等を例示できる。プロピレンと共重合されるα−オレフィンは一種類でも二種類以上用いてもよい。このうちエチレン、ブテン−1が好適である。より好ましくはエチレンが好適である。また、これらプロピレン系重合体は、二種以上混合して使用してもよい。
プロピレン系共重合体(B)の具体的な例としては、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ヘキセン−1共重合体、プロピレン−オクテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ヘキセン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1−オクテン−1共重合体などのような、共単量体を任意に若干量組み合わせた二元または三元共重合体が例示できる。
【0044】
プロピレン系共重合体(B)の製造方法としては、メタロセン触媒を用いていれば、特に限定はなく、通常、プロピレン系共重合体を製造するためのあらゆる方法を用いてよい。メタロセン触媒としては、前述に挙げられたものと同一のものである。
プロピレン系共重合体(B)の製造方法において、メタロセン触媒以外の触媒、例えば、チーグラー触媒を用いると得られるプロピレン系共重合体はベタツキが激しく成形性が悪く、製品としてもブリードなどが懸念される。
プロピレン系共重合体(B)としては、市販のものを用いることもでき、例えば、Dow社製の商品名Versifyやエクソンモービル社製の商品名ビスタマックスなどを挙げることができる。
【0045】
また、本発明で用いられるプロピレン系共重合体(B)は、
メタロセン系触媒を用いて得られるエチレン含有量が7〜25重量%のプロピレン−エチレンランダム共重合体(B−1)30〜70重量%、および
メタロセン触媒を用いて得られ、α−オレフィン含有量が1〜5質量%、融解ピーク温度(Tm)が125〜145℃のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(B−2)30〜70重量%とからなることが好ましい。
【0046】
プロピレン系共重合体(B)を好ましく構成する成分であるプロピレン−エチレンランダム共重合体(B−1)の配合量が30wt%未満であると耐衝撃性が不十分となる可能性があり、70wt%を超えると剛性不足などが懸念される。好ましくは30〜60wt%であり、より好ましくは40〜60wt%である。
プロピレン−エチレンランダム共重合体(B−1)のエチレン含有量が7wt%未満であると耐衝撃性が不十分となる可能性があり、25wt%を超えると相分離により透明性が悪化する懸念がある。好まし7〜20wt%であり、より好ましくは8〜15wt%である。
【0047】
プロピレン−エチレンランダム共重合体(B−1)の製造方法としては、メタロセン触媒を用いていれば、特に限定はなく、通常、プロピレン−エチレンランダム共重合体を製造するためのあらゆる方法を用いてよい。メタロセン触媒としては、前述に挙げられたものと同一のものである。
プロピレン−エチレンランダム共重合体(B−1)の製造方法において、メタロセン触媒以外の触媒、例えば、チーグラー触媒を用いると得られるプロピレン−エチレンランダム共重合体の低分子量成分が増加する恐れがある。
このようなプロピレン−エチレンランダム共重合体(B−1)としては、市販のものを用いることもでき、例えば、Dow社製の商品名Versifyやエクソンモービル社製の商品名ビスタマックスなどを挙げることができる。
【0048】
プロピレン系共重合体(B)を好ましく構成する成分であるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(B−2)の配合量が30wt%未満であると更なる耐衝撃性の向上が期待できなくなり、70wt%を超えると(α)成分の低下による耐衝撃性の低下が懸念される。好ましくは40〜70wt%であり、より好ましくは40〜60wt%である。
プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(B−2)の融解ピーク温度(Tm)が125℃未満であると剛性不足や成形性の悪化が懸念され、145℃を超えると更なる耐衝撃性の向上が期待できなくなる。好ましくは125〜140℃であり、より好ましくは130〜140℃である。
融解ピーク温度(Tm)の具体的測定は、示差走査熱量計(DSC)を用い、サンプル量5mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温速度で結晶化させ、更に10℃/分の昇温速度で融解させたときに描かれる曲線のピーク位置を、融解ピーク温度Tm(℃)とする。
【0049】
プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(B−2)のエチレン含有量が1wt%未満であると更なる耐衝撃性の向上が期待できなくなり、5wt%を超えると剛性不足が懸念される。好ましくは2〜4wt%であり、より好ましくは2〜3wt%である。
プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(B−2)の共重合に用いられるα−オレフィンは、プロピレンを除く炭素数2〜20のα−オレフィンがあげられ、例えばエチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等を例示できる。プロピレンと共重合されるα−オレフィンは一種類でも二種類以上用いてもよい。このうちエチレン、ブテン−1が好適である。より好ましくはエチレンが好適である。また、これらプロピレン系重合体は、二種以上混合して使用してもよい。
【0050】
プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(B−2)の具体的な例としては、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ヘキセン−1共重合体、プロピレン−オクテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ヘキセン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1−オクテン−1共重合体などのような、共単量体を任意に若干量組み合わせた二元または三元共重合体が例示できる。
【0051】
プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(B−2)の製造方法としては、メタロセン触媒を用いていれば、特に限定はなく、通常、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体を製造するためのあらゆる方法を用いてよい。メタロセン触媒としては、前述に挙げられたものと同一のものである。
プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(B−2)の製造方法において、メタロセン触媒以外の触媒、例えば、チーグラー触媒を用いると得られるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体の低分子量成分が増加する恐れがある。
【0052】
このようなプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(B−2)としては、市販のものを用いることもでき、例えば、日本ポリプロ社製の商品名WINTECなどを挙げることができる。
【0053】
2.造核剤
本発明の医療用プロピレン系樹脂組成物には、造核剤を配合することが好ましく、造核剤の配合量は、上記(共)重合体(A)とプロピレン系共重合体(B)の合計100重量部に対し、0.01〜0.6重量部の範囲で用いられる。0.01重量部未満では透明性が発現されない可能性があり、0.6重量部を超えると、第15改正日本薬局方一般試験 45.プラスチック製医薬品容器試験法 1.ポリエチレン製又はポリプロピレン製水性注射剤容器の試験に不合格になる可能性があるだけでなく添加量見合いの性能向上が期待できず経済的にも好ましくない。
【0054】
造核剤としては、以下に示す造核剤(a)〜(e)を使用することが望ましい。この造核剤(a)〜(e)以外のものでは、第15改正日本薬局方一般試験 45.プラスチック製医薬品容器試験法 1.ポリエチレン製又はポリプロピレン製水性注射剤容器の試験に不合格になる可能性が高い。
【0055】
造核剤(a)は、下記一般式(1)で示される化合物であり、中でも、下記一般式(6)で示される化合物が好ましく、下記化学構造式(7)で示される化合物がより好ましい。
【0056】
【化6】

[式(1)中、nは、0〜2の整数であり、R〜Rは、同一または異なって、それぞれ水素原子もしくは炭素数が1〜20のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、カルボニル基、ハロゲン基およびフェニル基であり、Rは、炭素数が1〜20のアルキル基である。]
【0057】
【化7】

[式(6)中、nは、0〜2の整数であり、R、R、R、Rは水素原子であり、Rは、水素原子もしくは炭素数が1〜20のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、カルボニル基、ハロゲン基およびフェニル基であり、Rは、炭素数が1〜20のアルキル基である。]
【0058】
【化8】

【0059】
このような造核剤としては、市販のものを用いることができる。具体的には、ミリケン(株)社製商品名NX8000を挙げることができる。
【0060】
本発明に用いられる造核剤(a)は、得られる成形品に優れた透明性を与え、溶出性が極めて少ないという特性を有し、合格基準の厳しい第15改正日本薬局方試験に合格し得る数少ない造核剤である。
【0061】
造核剤(a)の配合量は、重合体組成物100重量部に対し、0.01〜0.6重量部の範囲で用いられる。0.01重量部未満では十分な効果が得られ難く、0.6重量部を超えて用いると、さらなる性能の向上が期待できず不経済であるばかりか第15改正日本薬局方試験の溶出物試験の「泡立ち」や「紫外吸収スペクトル」などの項目で不合格となる。0.1〜0.4重量部が好ましく、0.2〜0.35重量部がさらに好ましい。
【0062】
また、本発明の造核剤は、一般式(2)〜(5)で示される造核剤(b)〜(e)でも良く、それぞれ造核剤(a)〜(e)を単独、または複数併用させることにより透明性や剛性、成形性(結晶化温度の上昇)などをさらに向上させることができる。
【0063】
本発明の医療用プロピレン系樹脂組成物において、選択的に用いられる造核剤(b)は、一般式(2)で示される有機リン酸金属塩化合物である。
【0064】
【化9】

[式(2)中、Rは、直接結合、硫黄又は炭素数1〜9のアルキレン基又はアルキリデン基であり、R及びRは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基であり、MはNaであり、nはMの価数である。]
【0065】
一般式(2)で表される有機リン酸金属塩化合物の具体例としては、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−エチリデン−ビス−(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−エチリデン−ビス−(4−i−プロピル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−ブチリデン−ビス−(4,6−ジメチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−ブチリデン−ビス−(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−t−オクチルメチレン−ビス−(4,6−メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−t−オクチルメチレン−ビス−(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム(4,4’−ジメチル−6,6’−ジ−t−ブチル−2,2’−ビフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−エチリデン−ビス−(4−s−ブチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−エチルフェニル)フォスフェート、およびこれらの2種以上の混合物を例示することができる。これらのうち特に、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートが好ましい。
この様な造核剤としては、市販のものを用いることができる。具体的には、(株)ADEKA製NA−11等を挙げることができる。
【0066】
本発明の医療用プロピレン系樹脂組成物に選択的に用いられる造核剤(b)の配合量は、重合体組成物100重量部に対し、0.005〜0.3重量部の範囲が好ましく、0.01〜0.2重量部の範囲がより好ましい。0.005重量部未満では効果が得られず、0.3重量部を超える範囲は、更なる効果が得られないばかりか経済的にも好ましくない。
【0067】
本発明の医療用プロピレン系樹脂組成物において、選択的に用いられる造核剤(c)は、下記一般式(3)で示される芳香族燐酸エステル類である。
【0068】
【化10】

[式(3)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R及びRは、水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を示し、Mは、周期律表第III族または第IV族の金属原子を示し、Xは、Mが周期律表第III族の金属原子を示す場合には、HO−を示し、Mが周期律表第IV族の金属原子を示す場合には、O=又は(HO)−を示す。]
【0069】
一般式(3)で表される芳香族燐酸エステル類の具体例としては、例えば、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジメチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジメチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジエチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジエチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、およびヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4−i−プロピル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4−i−プロピル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]等が挙げられ、好ましくは、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、およびヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、およびこれらの2種以上の混合物を例示することができる。
【0070】
一般式(3)で表される芳香族燐酸エステル類は、有機アルカリ金属塩と併用させることが効果的である。
該有機アルカリ金属塩とは、アルカリ金属カルボン酸塩、アルカリ金属β−ジケトナート及びアルカリ金属β−ケト酢酸エステル塩からなる群より選択される少なくとも一種の有機アルカリ金属塩を示すことができる。有機アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
【0071】
上記アルカリ金属カルボン酸塩を構成するカルボン酸としては、例えば酢酸、プロピオン酸、アクリル酸、オクチル酸、イソオクチル酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、メリシン酸、β−ドデシルメルカプト酢酸、β−ドデシルメルカプトプロピオン酸、β−N−ラウリルアミノプロピオン酸、β−N−メチル−ラウロイルアミノプロピオン酸等の脂肪族モノカルボン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、クエン酸、ブタントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸、ナフテン酸、シクロペンタンカルボン酸、1−メチルシクロペンタンカルボン酸、2−メチルシクロペンタンカルボン酸、シクロペンテンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、1−メチルシクロヘキサンカルボン酸、4−メチルシクロヘキサンカルボン酸、3,5−ジメチルシクロヘキサンカルボン酸、4−ブチルシクロヘキサンカルボン酸、4−オクチルシクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキセンカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸等の脂環式モノ又はポリカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、キシリル酸、エチル安息香酸、4−t−ブチル安息香酸、サリチル酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族モノ又はポリカルボン酸等が挙げられる。
【0072】
上記アルカリ金属β−ジケトナートを構成するβ−ジケトン化合物としては、例えば、アセチルアセトン、ピバロイルアセトン、パルミトイルアセトン、ベンゾイルアセトン、ピバロイルベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン等が挙げられる。
また、上記アルカリ金属β−ケト酢酸エステル塩を構成するβ−ケト酢酸エステルとしては、例えば、アセト酢酸エチル、アセト酢酸オクチル、アセト酢酸ラウリル、アセト酢酸ステアリル、ベンゾイル酢酸エチル、ベンゾイル酢酸ラウリル等が挙げられる。
【0073】
該有機アルカリ金属塩の成分であるアルカリ金属カルボン酸塩、アルカリ金属β−ジケトナート又はアルカリ金属β−ケト酢酸エステル塩は、各々上記アルカリ金属とカルボン酸、β−ジケトン化合物又はβ−ケト酢酸エステルとの塩であり、従来周知の方法で製造することができる。また、これら各アルカリ金属塩化合物の中でも、アルカリ金属の脂肪族モノカルボン酸塩、特に、リチウムの脂肪族カルボン酸塩が好ましく、とりわけ炭素数8〜20の脂肪族モノカルボン酸塩が好ましい。
【0074】
このような造核剤としては、市販のものを用いることができる。具体的には、(株)ADEKA製商品名NA−21を挙げることができる。
【0075】
造核剤(c)の配合量は、重合体組成物100重量部に対し、0.005〜0.15重量部の範囲が好ましく、0.01〜0.1重量部の範囲がより好ましい。0.005重量部未満では効果が得られず、0.15重量部を超える範囲は、更なる効果が得られないばかりか経済的にも好ましくない。
【0076】
本発明の医療用プロピレン系樹脂組成物において、選択的に用いられる造核剤(d)は、下記一般式(4)で示される造核剤である。
【0077】
【化11】

[式(4)中、MおよびMは、同一または異なって、カルシウム、ストロンチウム、リチウムおよび一塩基性アルミニウムから選択される少なくとも1種の金属カチオンであり、R、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10は、同一または異なって、水素、C−Cアルキル(ここで、いずれか2つのビシナル(隣接炭素に結合)またはジェミナル(同一炭素に結合)アルキル基は、一緒になって6個までの炭素原子を有する炭化水素環を形成してもよい)、ヒドロキシ、C−Cアルコキシ、C−Cアルキレンオキシ、アミンおよびC−Cアルキルアミン、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素および沃素)並びにフェニルからなる群からそれぞれ選択される。]
【0078】
ここで、「一塩基性アルミニウム」なる用語は周知であり、2つのカルボン酸基が結合した単一カチオンとしてアルミニウムヒドロキシド基を含むことを意図している。さらに、これら可能な塩のそれぞれにおいて、非対称炭素原子の立体配置は、シスまたはトランスのいずれでもよいが、シスが好ましい。
【0079】
一般式(4)で表される造核剤は、凝集等を防止する目的で、他の化合物を混合して用いても差し支えない。
このような造核剤としては、市販のものを用いることができる。具体的には、メリケン(株)社製商品名ハイパフォームHPN68Lを挙げることができる。ハイパフォームHPN68Lの造核剤成分の構造を下記に示す。
【0080】
【化12】

【0081】
造核剤(d)の配合量は、重合体組成物100重量部に対し、0.005〜0.15重量部の範囲が好ましく、0.01〜0.1重量部の範囲がより好ましい。0.005重量部未満では効果が得られず、0.15重量部を超える範囲は、局方試験に不合格になる場合がある。
【0082】
本発明の医療用プロピレン系樹脂組成物において、選択的に用いられる造核剤(e)は、下記一般式(5)で示される造核剤である。
(CONHR …(5)
[式(5)中、Rは、炭素数2〜30の飽和若しくは不飽和の脂肪族ポリカルボン酸残基、炭素数4〜28の飽和若しくは不飽和の脂環族ポリカルボン酸残基、又は炭素数6〜18の芳香族ポリカルボン酸残基を表わす。Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、又は炭素数3〜46のシクロアルキル基若しくはシクロアルケニル基を表わす。aは、2〜6の整数を表す。]
【0083】
造核剤(e)は、好ましくは、下記一般式(8)で示される造核剤であり、より好ましくは、下記一般式(9)で示される造核剤である。
【化13】

[式(8)中、Rは、炭素数3〜10の3価の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数4〜10の4価の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数5〜15の3価もしくは4価の飽和脂環族炭化水素基、又は炭素数6〜15の3価もしくは4価の芳香族炭化水素基を表す。Rは、同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す。aは、3又は4の整数を表す。]
【0084】
【化14】

[式(9)中、Rは、1,2,3−プロパントリカルボン酸又は1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸から全てのカルボンキシル基を除いて得られる残基を表す。3個又4個のRは、互いに同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す。aは、3又は4の整数を表す。]
【0085】
下記一般式(5)で示される造核剤の具体例としては、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリシクロヘキシルアミド、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−エチルシクロヘキシルアミド)1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、 1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−n−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−ペンチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−ヘキシルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−ヘプチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−オクチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ[4−(2−エチルヘキシル)シクロヘキシルアミド]、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−ノニルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−デシルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸[(シクロヘキシルアミド)ジ(2−メチルシクロヘキシルアミド)]、1,2,3−プロパントリカルボン酸[ジ(シクロヘキシルアミド)(2−メチルシクロヘキシルアミド)]、
【0086】
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラシクロヘキシルアミド、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−エチルシクロヘキシルアミド)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−n−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−n−ペンチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−n−ヘキシルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−n−ヘプチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−n−オクチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ[4−(2−エチルヘキシル)シクロヘキシルアミド]、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−n−ノニルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−n−デシルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸[ジ(シクロヘキシルアミド)ジ(2−メチルシクロヘキシルアミド)]等が挙げられる。
【0087】
上記アミド系化合物の中でも、特に造核作用(核剤効果)の観点から、一般式(8)もしくは(9)におけるRが水素原子又は炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基であるアミド系化合物が好ましい。
【0088】
具体的には、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリシクロヘキシルアミド、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−エチルシクロヘキシルアミド)1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、 1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−n−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、
【0089】
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(シクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−エチルシクロヘキシルアミド)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−n−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)等が挙げられる。
【0090】
これら好ましいアミド系化合物の中でも、特に透明性・剛性のバランス及び原料入手の容易性の観点から、一般式(8)もしくは(9)におけるRが水素原子又はメチル基であるアミド系化合物が特に好ましい。
具体的には、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリシクロヘキシルアミド、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラシクロヘキシルアミド、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−メチルシクロヘキシルアミド)などが例示される。
【0091】
また、透明性の改良効果を重視する場合には、一般式(5)、(8)もしくは(9)におけるRが1,2,3−プロパントリカルボン酸から全てのカルボンキシル基を除いて得られる残基であるアミド系化合物が特に好ましい。具体的には、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリシクロヘキシルアミド、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−メチルシクロヘキシルアミド)などが挙げられる。
【0092】
上記したアミド系化合物は、単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
造核剤(e)の結晶形態は、本発明の効果が得られる限り特に限定されず、六方晶、単斜晶、立方晶等の任意の結晶形態が使用できる。これらの結晶も公知であるか又は公知の方法に従い製造できる。
【0093】
造核剤(e)は、実質的に純度100%のものが好ましいが、若干不純物を含むものであってもよい。不純物を含有する場合であっても、造核剤(e)の純度は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、特に97重量%以上が推奨される。不純物としては、反応中間体又は未反応体由来のモノアミドジカルボン酸若しくはそのエステル化合物、ジアミドモノカルボン酸若しくはそのエステル化合物、副反応体由来のイミド化合物などが例示される。
【0094】
造核剤(e)の製造方法は、特に限定はなく目的の造核剤(e)が得られればよい。例えば、特定の脂肪族ポリカルボン酸成分と特定の脂環式モノアミン成分とから従来公知の方法(例えば、特開2006−298881号、特開2007−291029号、PCT/JP2006/307246号、特開平7−242610号の各公報など)に従って製造することができる。
【0095】
上記脂肪族ポリカルボン酸成分としては、1,2,3−プロパントリカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、該ポリカルボン酸の酸塩化物や無水物、該ポリカルボン酸と炭素数1〜4の低級アルコールとのエステル等の誘導体等が例示される。これら脂肪族ポリカルボン酸成分は、単独で又は2種を混合してアミド化に供することができる。
【0096】
上記脂環式モノアミン成分は、シクロヘキシルアミン及び炭素数1〜10(好ましくは炭素数1〜4)の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基で置換されたシクロヘキシルアミンからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、単独で又は2種以上を混合してアミド化に供することができる。
具体的には、シクロヘキシルアミン、2−メチルシクロヘキシルアミン、3−メチルシクロヘキシルアミン、4−メチルシクロヘキシルアミンのメチルシクロヘキシルアミン、2−エチルシクロヘキシルアミン、2−n−プロピルシクロヘキシルアミン、2−iso−プロピルシクロヘキシルアミン、2−n−ブチルシクロヘキシルアミン、2−iso−ブチルシクロヘキシルアミン、2−sec−ブチルシクロヘキシルアミン、2−tert−ブチルシクロヘキシルアミンなどが挙げられる。
【0097】
上記のアルキル基で置換されたシクロヘキシルアミンは、シス体、トランス体及びこれら立体異性体の混合物のいずれであってもよい。好ましいシス体:トランス体の比率としては、50:50〜0:100の範囲が好ましく、特に35:65〜0:100の範囲が好ましい。
【0098】
本発明に選択的に用いられる造核剤(e)の粒径は、本発明の効果が得られる限り特に限定されないが、溶融プロピレン系重合体に対する溶解速度(又は溶解時間)の観点から、できる限り粒径の小さいものが好ましい。レーザー回折光散乱法で得られる粒径の測定値を採用した場合、造核剤(e)の粒径としては、その最大粒径が200μm以下、好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm、特に10μm以下が推奨される。
【0099】
最大粒径を上記範囲内に調製する方法としては、この分野で公知の粉砕装置を用いる方法が一般的であり、必要に応じて公知の分級装置を用いることもできる。具体的には、粉砕装置として流動層式カウンタージェットミル100AFG(商品名、ホソカワミクロン社製)、超音速ジェットミルPJM−200(商品名、日本ニューマチック社製)、ピンミル等、分級装置として振動篩、乾式分級機(サイクロン、ミクロンセパレーターなど)等が例示される。
【0100】
造核剤(e)の配合量は、重合体組成物100重量部に対し、0.005〜0.3重量部の範囲が好ましく、0.05〜0.2重量部の範囲がより好ましい。0.005重量部未満では効果が得られず、0.3重量部を超える範囲は、第15改正日本薬局方一般試験
45.プラスチック製医薬品容器試験法 1.ポリエチレン製又はポリプロピレン製水性注射剤容器の試験(局方試験)に不合格になる場合がある。
【0101】
本発明の医療用プロピレン系樹脂組成物には、造核剤(a)〜(e)以外に、他の造核剤として、ソルビトール系造核剤、有機リン酸塩系造核剤および芳香族燐酸エステル類、タルクなど既知の造核剤を本発明の効果を大きく阻害しない範囲で添加することができる。
【0102】
(A)プロピレン系(共)重合体および(B)プロピレン−エチレン共重合体からなる二成分系樹脂混合物(樹脂混合物)に併用する造核剤(a)〜(e)を、任意に添加して標準的に実施する実施態様を示すと以下のようになる。
1)造核剤(a)〜(e)を所定量単独使用の実施態様
(1)樹脂混合物+造核剤(a)
(2)樹脂混合物+造核剤(b)
(3)樹脂混合物+造核剤(c)
(4)樹脂混合物+造核剤(d)
(5)樹脂混合物+造核剤(e)
【0103】
2)2種類の造核剤を所定量併用する実施態様
(1)樹脂混合物+造核剤(a)+造核剤(b)又は造核剤(c)
(2)樹脂混合物+造核剤(a)+造核剤(d)又は造核剤(e)
(3)樹脂混合物+造核剤(b)+造核剤(c)又は造核剤(d)
(4)樹脂混合物+造核剤(c)+造核剤(d)又は造核剤(e)
(5)樹脂混合物+造核剤(d)+造核剤(e)
の様な造核剤(a)〜(e)の各化合物を任意に2種類併用した実施態様である。
【0104】
3)3種類の造核剤を所定量併用する実施態様
(1)樹脂混合物+造核剤(a)+造核剤(b)+造核剤(c)
(2)樹脂混合物+造核剤(a)+造核剤(d)+造核剤(e)
(3)樹脂混合物+造核剤(b)+造核剤(c)+造核剤(d)
(4)樹脂混合物+造核剤(c)+造核剤(d)+造核剤(e)
(5)樹脂混合物+造核剤(d)+造核剤(e)+造核剤(b)
の様な造核剤(a)〜(e)の各化合物を任意に3種類併用した実施態様である。
【0105】
4)4種類の造核剤を所定量併用する実施態様
(1)樹脂混合物+造核剤(a)+造核剤(b)+造核剤(c)+造核剤(d)
(2)樹脂混合物+造核剤(b)+造核剤(c)+造核剤(d)+造核剤(e)
(3)樹脂混合物+造核剤(c)+造核剤(d)+造核剤(e)+造核剤(a)
(4)樹脂混合物+造核剤(d)+造核剤(e)+造核剤(a)+造核剤(b)
の様な造核剤(a)〜(e)の各化合物を任意に4種類併用した実施態様である。
【0106】
5)5種類の造核剤を所定量併用した実施態様
(1)二成分系樹脂混合物+造核剤(a)+造核剤(b)又は造核剤(c)
+造核剤(d)+造核剤(e)
【0107】
このように、プロピレン系(共)重合体(A)およびプロピレン系共重合体(B)からなる二成分系樹脂混合物の仕様の違いにより、若干の造核剤の機能に違いが生ずることも予測され、一方で、医療用プロピレン系樹脂組成物の医療用の具体的な器具を含む用途に適合する性質を発現する為に、上記1)〜5)の仕様からなる実施態様のどれが適合するかを決めることができる。いずれにせよ、(A)プロピレン系(共)重合体および(B)プロピレン−エチレンブロック共重合体からなる二成分系樹脂混合物において、本発明の特定の造核剤(a)〜(e)に示される、1)〜5)の特定の仕様が、医療用に適合する所定の造核剤機能を発現されることができるということは本発明者らの知見に基づくものである。
【0108】
3.中和剤
本発明の医療用プロピレン系樹脂組成物においては、中和剤を配合することが望ましい。中和剤の具体例としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの金属脂肪酸塩、ハイドロタルサイト(商品名:協和化学工業(株)の下記一般式(10)で表されるマグネシウムアルミニウム複合水酸化物塩)、ミズカラック(下記一般式(11)で表されるリチウムアルミニウム複合水酸化物塩)などが挙げられる。特に、プレフィルドシリンジ、キット製剤、輸液バッグなど長期接液する部材として用いる場合には、接触する液体に溶出しないハイドロタルサイトやミズカラックが有利である。
【0109】
Mg1−xAl(OH)(COx/2・mHO …(10)
[式(10)中、xは、0<x≦0.5であり、mは3以下の数である。]
【0110】
[AlLi(OH)X・mHO …(11)
[式(11)中、Xは、無機または有機のアニオンであり、nはアニオン(X)の価数であり、mは3以下である。]
【0111】
本発明の医療用プロピレン系樹脂組成物に選択的に用いられる中和剤の配合量は、(共)重合体(A)と共重合体(B)の合計100重量部に対し、0.005〜0.2重量部の範囲が好ましく、0.01〜0.05重量部の範囲がより好ましい。
【0112】
4.滑剤
本発明の医療用プロピレン系樹脂組成物においては、滑剤を配合することが望ましい。滑剤としては、既知の滑剤が挙げられるが、ステアリン酸ブチルやシリコーンオイルが好ましく、特にシリコーンオイルが良い。
具体的なシリコーンオイルとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルヒドロジエンポリシロキサン、α−ωビス(3−ヒドロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、ポリオキシアルキレン(C〜C)ジメチルポリシロキサン、ポリオルガノ(C〜Cのアルキル基および/またはフェニル基)シロキサンとポリアルキレン(C〜C)グリコールの縮合物などが挙げられる。この中でもジメチルポリシロキサンとメチルフェニルポリシロキサンが好ましい。該滑剤は単独、又は複数用いても構わない。尚、シリコーン(C)の粘度は、低い方が離型性効果に優れるが、粘度が低く過ぎると溶出しやすくなるため、25℃において、50mm/s(cst)以上が良く、100mm/s(cst)以上が更に良く、1000mm/s(cst)以上のものがより好ましい。更には薬機第327号(平成7年12月20日)医療用具用潤滑剤シリコーン油基準(1)(2)に適合するものがより好ましい。
ジメチルポリシロキサンなどのシリコーンを添加した場合、成形時に発生する傷を防止するだけでなく、シリンダー内やホットランナー内で発生する焼けを防止することができる。
【0113】
本発明の医療用プロピレン系樹脂組成物に選択的に用いられる滑剤の配合量は、重合体組成物100重量部に対し、0.001〜0.5重量部が好ましく、0.01〜0.15重量部がより好ましく、0.03〜0.1重量部が特に好ましい。0.001重量部未満では効果が期待できず、0.5重量部を超えると更なる効果が期待できないばかりか経済的に好ましくない。
【0114】
5.その他の添加剤
本発明の医療用プロピレン系樹脂組成物においては、上述した成分に加えて、プロピレン系重合体の安定剤などとして使用されている各種酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を配合することができる。
【0115】
具体的には、酸化防止剤としては、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、ジ−ステアリル−ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−フォスフォナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−フォスフォナイト等のリン系酸化防止剤、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ハイドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ハイドロキシベンジル)イソシアヌレート等のフェノール系酸化防止剤、ジ−ステアリル−ββ’−チオ−ジ−プロピオネート、ジ−ミリスチル−ββ’−チオ−ジ−プロピオネート、ジ−ラウリル−ββ’−チオ−ジ−プロピオネート等のチオ系酸化防止剤等が挙げられる。
【0116】
紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等の紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0117】
光安定剤としては、n−ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピぺリジル)セバケート、コハク酸ジメチル−2−(4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジル)エタノール縮合物、ポリ{[6−〔(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ〕−1,3,5−トリアジン−2,4ジイル]〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕}、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス〔N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ〕−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物等の光安定剤を挙げることができる。
【0118】
さらに、放射線処理で変色がなく耐NOxガス変色性が良好な下記一般式(12)や下記一般式(13)で表されるアミン系酸化防止剤、5,7−ジ−t−ブチル−3−(3,4−ジ−メチル−フェニル)−3H−ベンゾフラン−2−ワン等のラクトン系酸化防止剤、下記一般式(14)等のビタミンE系酸化防止剤を挙げることができる。
【0119】
【化15】

【0120】
【化16】

(式(13)中、R1とR2は、炭素数14〜22のアルキル基を示す。)
【0121】
【化17】

【0122】
さらに、その他に、帯電防止剤、スリップ剤、脂肪酸金属塩等の分散剤、染料、顔料、ポリエチレン、オレフィン系エラストマー等を本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0123】
本発明の医療用プロピレン系樹脂組成物の性質、機能、透明性などの特性を損なわない範囲で、他の重合体、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリレート共重合体、アクリレート重合体、のような一元、二元、三元共重合体を、1〜30重量部を任意に添加することができる。同様に、天然ゴム、ブチルゴム、ジエン系ゴム、EPR、EPDMのような、エラストマーも1〜30重量部をブレンドすることも可能である。さらに、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、石膏、マイカ、のような汎用の無機フィラーを併用することも可能である。
【0124】
[2]医療用プロピレン系樹脂組成物の製造方法
本発明の医療用プロピレン系樹脂組成物は、(共)重合体(A)と共重合体(B)、選択的に用いられる造核剤(a)〜(e)の少なくとも1種の混合物、および、必要に応じて他の添加剤とを、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、リボンブレンダー等に投入して混合した後、通常の単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、プラベンダー、ロール等で190〜260℃の温度範囲で溶融混練することにより得ることができる。
【0125】
[3]医療用成形品
本発明の医療用成形品は、上記の医療用プロピレン系樹脂組成物を、公知の方法である射出成形法、押出成形法、ブロー成形法など各種成形法によって成形することにより得られるが、寸法精度が高く複雑な形状を作りやすい射出成形法が望ましい。
【0126】
また、本発明の医療用成形品は、キット製剤として有用であり、薬剤液を充填してなる注射筒および保存容器などに適しており、特に、プレフィルドシリンジに好適である。プレフィルドシリンジとは、薬液や薬剤があらかじめ充填されているシリンジ形状の製剤であり、1種類の液が充填されたシングルチャンバータイプのものと、2種の薬剤が充填されたダブルチャンバータイプがある。ほとんどのプレフィルドシリンジはシングルチャンバータイプであるが、ダブルチャンバータイプについては、粉末とその溶解液からなる液・粉タイプの製剤と2種類の液からなる液・液タイプの製剤がある。シングルチャンバータイプの内溶液の例としては、ヘパリン溶液などが挙げられる。
なお、医療用成形品は、オートクレーブ滅菌、放射線滅菌、EOG滅菌、紫外線滅菌、マイクロ波、煮沸水、スチームなど公知の滅菌処理を行っても良い。本発明は特にオートクレーブ滅菌に対して有効である。
【実施例】
【0127】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの記載により何ら限定されるものではない。
【0128】
各実施例及び比較例において、用いた物性測定は以下の方法で行った。
(1)固体粘弾性測定
試料は下記条件により射出成形した厚さ2mmのシートから、10mm幅×18mm長×2mm厚の短冊状に切り出したものを用いた。装置はレオメトリック・サイエンティフィック社製のARESを用いた。周波数は1Hzである。測定温度は−60℃から段階状に昇温し、試料が融解して測定不能になるまで測定を行った。歪みは0.1〜0.5%の範囲で行った。
(試験片の作成)
規格番号:JIS−7152(ISO294−1)
成形機:東洋機械金属社製TU−15射出成形機
成形機設定温度:ホッパ下から 80,80,160,200,200,200℃
金型温度:40℃
射出速度:200mm/s(金型キャビティー内の速度)
射出圧力:800kgf/cm
保持圧力:800kgf/cm
保圧時間:40秒
金型形状:平板(厚さ2mm 幅30mm 長さ90mm)
【0129】
(2)重合体の各成分量の算出
TREFを用いて、算出した。
(3)エチレン含有量の算出
13C−NMRにより組成を検定したエチレン・プロピレンランダムコポリマーを基準物質として733cm−1の特性吸収体を用いる赤外分光法により、ランダムコポリマー中のエチレン含量を測定した。ペレットをプレス成形により約500ミクロンの厚さのフィルムとしたものを用いた。
【0130】
(4)tanδ曲線のピーク
固有粘弾性測定により測定した。
(5)MFR
JIS K7210に準じて加熱温度230℃、荷重21.2Nにて測定した。
(6)ヘイズ値
厚さ1mmのシート片を用いて、JIS K7105に準拠して滅菌前の値を測定した。また、オートクレーブ滅菌(高圧蒸気滅菌)をアルプ(株)製レトルト高圧蒸気殺菌・冷却装置RKZ−30L型を用い、121℃で20分間の滅菌処理を行い、滅菌処理の1週間後にJIS K7105に準拠して測定した値を滅菌後の値とした。
【0131】
(7)第15改正 日本薬局方試験
45.プラスチック製薬品容器試験法(プラスチック製水性注射剤容器)の1.ポリエチレン製又はポリプロピレン製水性注射剤容器の項の試験法に従って、透明性、重金属、鉛、カドミウム、強熱残分、泡立ち、PH、過マンガン酸カリウム還元性物質、紫外吸収スペクトル、蒸発残留分を測定した。但し、試料調製は、0.5ミリ厚で表面積1200cmに相当する重量のペレットを秤量し、220℃でプレスしてシート片として、長さ約5センチ、幅約0.5センチの大きさに細断し、水で洗った後、室温で乾燥した。これを内容積約300mlの硬質ガラス製容器に入れ、水200mlを正確に加え、適当な栓で密封した後、高圧蒸気滅菌器を用いて121℃で1時間加熱した後、室温になるまで放置し、この内溶液を試験液とし、別に水につき、同様の方法で空試験液を調製した。
【0132】
(8)曲げ弾性率
JIS K7203の「硬質プラスチックの曲げ試験方法」に準拠して23℃で測定した。
(9)アイゾット(IZOD)衝撃値
ノッチ付き試験片を用い、JIS K7110:1999に準拠して23℃で測定した。
【0133】
(10)成形性
各ペレットを射出成形機により、樹脂温度240℃、射出圧力900kg/cm及び金型温度40℃で射出成形し、成形性評価用の成形品(12cm×12cm×2.5mm板上に、厚み1mmの25mm×20mm×20mmの箱型が3×4並んでいる形状)を作成し、この射出成形によって得られた成形品を目視で観察し、造核剤やその他添加剤、および反応物質などが成形時金型に析出・付着した為に発生する傷の有無を確認し、次の2段階で評価した。
傷有:多数成形しても、細かい傷がほとんど発生しない。
傷無:多数成形すると成形品に細かい傷が発生する。
(11)HDT(熱変形温度)
JIS K7207に準拠して測定した。
【0134】
プロピレン系重合体、造核剤及び他の添加剤(中和剤、滑剤)としては、以下のものを使用した。
(1)プロピレン系(共)重合体(A)
(i)MA3U
日本ポリプロ(株)ホモポリプロピレン (JIS K7210、230℃、2.16kg荷重)15g/10分、チーグラー触媒品、融点:167℃。
(ii)WMG03
日本ポリプロ(株)ランダムポリプロピレン (JIS K7210、230℃、2.16kg荷重)30g/10分、メタロセン触媒品、エチレン含有量0.9重量%、融点:141℃。
(iii)WSX02
日本ポリプロ(株)ランダムポリプロピレン (JIS K7210、230℃、2.16kg荷重)25g/10分、メタロセン触媒品、エチレン含有量3.5重量%、融点:125℃。
【0135】
(2)プロピレン系共重合体(B)
(i)Versify2400(Dow製商品名)
(JIS K7210、230℃、2.16kg荷重)4g/10分、メタロセン触媒品、密度0.859、エチレン含有量15 重量%。
(ii)Versify4301 Dow製商品名
(JIS K7210、230℃、2.16kg荷重)50g/10分、メタロセン触媒品、密度0.867、エチレン含有量 12重量%。
(iii)VM6202 エクソンモービル製商品名
(JIS K7210、230℃、2.16kg荷重)20g/10分、メタロセン触媒品、密度0.861、エチレン含有量 15重量%。
【0136】
(3)ポリエチレン
メタロセン系低密度ポリエチレン
日本ポリエチ(株)社製商品名カーネルKS571)
密度(JIS K7112)0.907g/cm、MFR(JIS K7210、190℃、2.16kg荷重)12.5g/10分。
【0137】
(4)造核剤
(i)ミラッドNX8000(ミリケン・アンド・カンパニー社製商品名)
造核剤(a)相当品
(ii)有機リン酸金属塩化合物系造核剤
アデカスタブNA−11((株)ADEKA製商品名):造核剤(b)相当品
(iii)有機リン酸金属塩化合物系造核剤
アデカスタブNA−21((株)ADEKA社製商品名):造核剤(c)相当品
(iv)ハイパフォームHPN68L
(ミリケン・アンド・カンパニー社製商品名):造核剤(d)相当品
(v)1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−メチルシクロヘキシルアミド)
造核剤(e)に相当
(vi)ソルビトール系造核剤
ゲルオールMD(新日本理化(株)製商品名)
造核剤(a)〜(e)のいずれにも相当しない造核剤
【0138】
(5)中和剤
(i)DHT−4C:ハイドロタルサイト(協和化学工業(株)製商品名)
(6)滑剤
(i)シリコーンオイル:
Dowcorning360Medical Fluid−1000(M360−1000) 東レ・ダウコーニング(株)製商品名
【0139】
(7)過酸化物
(i)PHA25B:パーヘキサ25B 日本油脂製商品名
(8)酸化防止剤
(i)ヒンダードフェノール系酸化防止剤:
イルガノックス1010(チバ・スペシャルティズ社製商品名)
テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシルフェニル)プロピオネート]メタン
(ii)リン系酸化防止剤:イルガフォス168(チバ・スペシャルティズ社製商品名)
トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェノール)フォスファイト
【0140】
(実施例1〜11、比較例1〜5、参考例1)
プロピレン系重合体、造核剤及び他の添加剤(酸化防止剤、中和剤など)を、以下の表に記載の配合割合(重量部)で準備し、スーパーミキサーでドライブレンドした後、35ミリ径の2軸押出機を用いて溶融混練した。ダイ出口部温度230℃でダイから押し出しペレット化した。
得られたペレットを射出成形機により、樹脂温度230℃、射出圧力600kg/cm及び金型温度40℃で射出成形し、試験片を作成した。得られた試験片を用い、物性を測定した。その結果を表に示す。
【0141】
【表1】

【0142】
【表2】

【0143】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明の医療用プロピレン系樹脂組成物は、第15改正 日本薬局方 一般試験 45.プラスチック製医薬品容器試験法 1.ポリエチレン製又はポリプロピレン製水性注射剤容器の試験項目を満足し、かつ、優れた耐熱性、剛性、耐衝撃性、成形性およびオートクレーブ滅菌後も透明性を保持するものであり、それを用いた本発明のキット製剤は、透明性が良く第15改正日本薬局方一般試験に合格する優れた成形品を得るのに非常に有用であることが判り、注射筒、医療用器具および医療用容器として、薬剤液を充填してなる保存容器やプレフィルドシリンジのようなキット製剤に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.5〜100g/10分の、プロピレン単独重合体またはプロピレンと含有量が1重量%未満のα−オレフィンとからなるプロピレン系共重合体(A)75〜98重量%、
下記条件(B−i)〜(B−iii):
(B−i)メタロセン系触媒を用いて得られるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体である、
(B−ii)エチレン含有量が3〜17wt%の範囲である、
(B−iii)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg)が0.5〜80g/10分の範囲である
を満たすプロピレン系共重合体(B)2〜25重量%からなり、
固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、−60〜20℃の範囲において観測されるガラス転移を表すtanδ曲線のピークが0℃以下に単一のピークを示すことを特徴とする医療用プロピレン系樹脂組成物。
【請求項2】
プロピレン系共重合体(B)が、
メタロセン系触媒を用いて得られるエチレン含有量が7〜25重量%のプロピレン−エチレンランダム共重合体(B−1)30〜70重量%、および
メタロセン触媒を用いて得られ、α−オレフィン含有量が1〜5質量%、融解ピーク温度(Tm)が125〜145℃のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(B−2)30〜70重量%
からなることを特徴とする請求項1に記載の医療用プロピレン系樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、造核剤を、前記(共)重合体(A)とプロピレン系共重合体(B)の合計100重量部に対し、0.01〜0.6重量部の範囲で含有することを特徴とする請求項1または2に記載の医療用プロピレン系樹脂組成物。
【請求項4】
造核剤とその含有量が、下記一般式(1)で示される造核剤(a)0.01〜0.6重量部、下記一般式(2)で示される造核剤(b)0.005〜0.3重量部、下記一般式(3)で示される造核剤(c)0.005〜0.15重量部、下記一般式(4)で示される造核剤(d)0.005〜0.15重量部または下記一般式(5)で示される造核剤(e)0.005重量部以上で0.3重量部未満であることを特徴とする請求項3に記載の医療用プロピレン系樹脂組成物。
【化1】

[式(1)中、nは、0〜2の整数であり、R〜Rは、同一または異なって、それぞれ水素原子もしくは炭素数が1〜20のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、カルボニル基、ハロゲン基およびフェニル基であり、Rは、炭素数が1〜20のアルキル基である。]
【化2】

[式(2)中、Rは、直接結合、硫黄又は炭素数1〜9のアルキレン基又はアルキリデン基であり、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基であり、MはNaであり、nはMの価数である。]
【化3】

[式(3)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を示し、Mは、周期律表第III族または第IV族の金属原子を示し、Xは、Mが周期律表第III族の金属原子を示す場合には、HO−を示し、Mが周期律表第IV族の金属原子を示す場合には、O=又は(HO)−を示す。]
【化4】

[式(4)中、MおよびMは、同一または異なって、カルシウム、ストロンチウム、リチウムおよび一塩基性アルミニウムから選択される少なくとも1種の金属カチオンであり、R、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10は、同一または異なって、水素、C−Cアルキル(ここで、いずれか2つのビシナル(隣接炭素に結合)またはジェミナル(同一炭素に結合)アルキル基は、一緒になって6個までの炭素原子を有する炭化水素環を形成してもよい)、ヒドロキシ、C−Cアルコキシ、C−Cアルキレンオキシ、アミンおよびC−Cアルキルアミン、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素および沃素)並びにフェニルからなる群からそれぞれ選択される。]
(CONHR …(5)
[式(5)中、Rは、炭素数2〜30の飽和若しくは不飽和の脂肪族ポリカルボン酸残基、炭素数4〜28の飽和若しくは不飽和の脂環族ポリカルボン酸残基、又は炭素数6〜18の芳香族ポリカルボン酸残基を表わす。Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、又は炭素数3〜46のシクロアルキル基若しくはシクロアルケニル基を表わす。aは、2〜6の整数を表す。]
【請求項5】
造核剤(a)が、下記一般式(6)で示される造核剤であることを特徴とする請求項4に記載の医療用プロピレン系樹脂組成物。
【化5】

[但し、式(6)中、nは、0〜2の整数であり、R、R、R、Rは、水素原子であり、Rは、水素原子もしくは炭素数が1〜20のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、カルボニル基、ハロゲン基およびフェニル基であり、Rは、炭素数が1〜20のアルキル基である。]
【請求項6】
さらに、滑剤を、前記(共)重合体(A)とプロピレン系共重合体(B)の合計100重量部に対し、0.001〜0.5重量部の範囲で含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の医療用プロピレン系樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の医療用プロピレン系樹脂組成物を用いた医療用成形品。
【請求項8】
請求項7に記載の医療用成形品が、キット製剤であることを特徴とする医療用成形品。
【請求項9】
請求項8記載のキット製剤が、プレフィルドシリンジであることを特徴とする医療用成形品。

【公開番号】特開2012−46692(P2012−46692A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192202(P2010−192202)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】