プローブのアプローチ方向設定方法、形状測定装置プログラム及び記憶媒体
【課題】 プローブ軸部の一端から突出する接触部を有するプローブのアプローチ方向を正確に設定できるプローブのアプローチ方向設定方法を提供する。
【解決手段】 プローブ軸部から突出する接触部を有するプローブを用いて被測定物表面を測定するにあたり、接触部が被測定物表面の測定点に当接する方向であるアプローチ方向を設定する。接触部の向きを固定した状態でプローブ軸部の一端または接触部を真円の輪郭に複数点で当接させながら真円の一周分にわたって前記プローブを移動させる(真円測定工程ST100)。プローブ軸部の一端または接触部が真円の輪郭に当接した際のプローブ軸部の位置をプローブ軸部に直交する面内で検出する(検出工程ST110)。検出工程にて検出された検出データと真円とのずれに基づいてアプローチ方向を設定する(アプローチ方向設定工程ST200)。
【解決手段】 プローブ軸部から突出する接触部を有するプローブを用いて被測定物表面を測定するにあたり、接触部が被測定物表面の測定点に当接する方向であるアプローチ方向を設定する。接触部の向きを固定した状態でプローブ軸部の一端または接触部を真円の輪郭に複数点で当接させながら真円の一周分にわたって前記プローブを移動させる(真円測定工程ST100)。プローブ軸部の一端または接触部が真円の輪郭に当接した際のプローブ軸部の位置をプローブ軸部に直交する面内で検出する(検出工程ST110)。検出工程にて検出された検出データと真円とのずれに基づいてアプローチ方向を設定する(アプローチ方向設定工程ST200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブのアプローチ方向設定方法、形状測定装置プログラム及び記憶媒体
に関する。具体的には、被測定物表面を検出するプローブの接触部を被測定物表面に適切にアプローチさせるためのアプローチ方向を設定する方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物の形状や寸法を測定する測定機として三次元測定機、表面性状測定機、小穴測定機等が知られている。このような測定機は、被測定物表面に当接して被測定物表面を検出するプローブを備える(例えば、特許文献1、2)。
図12は、従来の一般的なプローブを示す図である。
従来のプローブ22は、図12に示されるように、プローブ軸部23と、このプローブ軸部23の先端に設けられた球状の接触部24と、を有する。そして、被測定物表面Sの測定にあたっては、接触部24を被測定物表面Sに当接させるようにプローブ22を移動させていき、接触部24が被測定物表面Sに当接した際の座標を所定の検出手段により検出する。すると、被測定物表面Sの位置が検出され、複数の測定点で被測定物表面Sの位置を検出することにより被測定物の表面形状あるいは寸法が測定される。
【0003】
従来のプローブ22は、接触部24が球状であるので、あらゆる方向から被測定物表面Sに接触しても適切に被測定物表面Sを検出することが可能となっている。しかしながら、例えば、図13に示されるように、奥側が逆テーパによって拡径する小孔30の形状を測定対象とする場合、接触部24が球状のプローブ22では対応できないという問題が生じる。すなわち、前記小孔30の形状を測定しようとした場合、接触部24が測定点に達する前にプローブ軸部23が小孔30の内壁に接触してしまう。その一方、接触部24を小孔30内に挿入するためには、接触部24の径を小孔30の入口径未満とする必要があるので、単純に接触部24の径を大きくするわけにもいかない。
【0004】
そこで、このような小孔30の形状を測定する場合には、図14に示されるように、接触部240の形状をプローブ軸部230から突出する嘴形状とする。すると、図15に示されるように、プローブ軸部230が小孔30の内壁に当接することなく小孔30の奥側に接触部24を当接させることができるので、小孔30の形状を測定することができる。
【0005】
【特許文献1】特開2002−39737号公報
【特許文献2】特開2004−61322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、プローブ軸部230から嘴形状に突出した接触部240を有するプローブ220を用いることにより小孔30の形状を測定でき、球状の接触部24では測定できない形状を測定することができる。
【0007】
ここで、被測定物表面Sを測定するにあたっては、この接触部240を被測定物表面Sの測定点に当接させなければならないが、接触部240はプローブ軸部23から所定の方向にのみ突出している。したがって、接触部240を測定点に当接させるためには、形状測定装置に接触部240が突出している方向をアプローチ方向として設定し、この設定されたアプローチ方向に従ってプローブ220を被測定物表面Sに向けてアプローチさせなければならない。
しかしながら、プローブ220を形状測定装置に取り付けたのちに、嘴型の接触部240をユーザーが目視で確認したうえで、この接触部240が突出している方向をアプローチ方向として手動で正確に設定入力することは非常に困難であり、正確にアプローチ方向を設定できなければ、接触部以外の部分で被測定物表面Sに接触することになるので測定誤差につながる。
【0008】
本発明の目的は、プローブ軸部の一端から突出する接触部を有するプローブのアプローチ方向を正確に設定できるプローブのアプローチ方向設定方法、および、形状測定装置プログラム及び記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のプローブのアプローチ方向設定方法は、プローブ軸部、および、このプローブ軸部の一端に設けられプローブ軸部に直交する一方向に向けて所定長さで突出する接触部を有するプローブを用いて被測定物表面を測定するにあたり、前記接触部が前記被測定物表面の測定点に当接する方向であるアプローチ方向を設定するプローブのアプローチ方向設定方法であって、前記接触部の向きを固定した状態で前記プローブ軸部の一端または前記接触部を真円の輪郭に複数点で当接させながら前記真円の一周分にわたって前記プローブを移動させる真円測定工程と、前記真円測定工程において前記プローブ軸部の一端または前記接触部が前記真円の輪郭に当接した際のプローブ軸部の位置をプローブ軸部に直交する面内で検出する検出工程と、前記検出工程にて検出された検出データと前記真円とのずれに基づいて前記アプローチ方向を設定するアプローチ方向設定工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
この構成において、プローブは、プローブ軸部から一方向に突出した接触部を有しているので、この接触部が測定点に当接する方向であるアプローチ方向でプローブを被測定物に当接させなければならない。そこで、このアプローチ方向を設定する。アプローチ方向を設定するにあたっては、まず、真円測定工程において、真円の一周分を複数点で測定する。このとき、プローブの向きは固定し、すなわち、接触部の向きは一定に固定したままで、プローブを真円の輪郭に当接させていく。すると、プローブ軸部から突出した接触部が真円の輪郭に当接する場合もあれば、プローブ軸部において接触部が設けられた側の反対である背面で真円に当接する場合もあり、プローブ軸部の側面で真円に当接する場合もある。このように、プローブが真円に当接したときのプローブ軸部の位置を検出していく(検出工程)。すると、真円に対してプローブの接触部で当接した場合とプローブ軸部が当接した場合等でプローブ軸部と真円とのギャップが異なってくるので、検出データとしては、真円からずれた楕円状のデータが得られることになる。そこで、この検出データが真円からずれたずれ量に基づいて接触部が設けられている方向を算出し、アプローチ方向として設定する(アプローチ方向設定工程)。
【0011】
このような構成によれば、一方向にのみ接触部が設けられているプローブの接触部の方向を求めてアプローチ方向として設定できるので、プローブをこのアプローチ方向に向けた状態でプローブを被測定物の測定点に移動させることにより、接触部を被測定物表面の測定点に当接させることができる。
ここで、プローブが非常に微細である場合には、接触部がどの方向であるかを肉眼で確認することは困難であり、その接触部が設けられている方向を正確に手動で設定入力することは不可能である。
この点、本発明では真円を測定した結果に基づいてアプローチ方向が設定されるので、たとえ肉眼では正確に視認できない微細なプローブであってもアプローチ方向として正確な方向を設定することができる。
また、アプローチ方向を設定するにあたっては、プローブの向きを固定した状態で真円を測定するだけであるので、非常に簡便である。
【0012】
本発明では、前記アプローチ方向設定工程は、前記検出工程にて検出されたプローブ軸部の位置の検出データに楕円をフィッティングする楕円フィッティング工程と、前記楕円フィッティング工程にて前記検出データにフィッティングされた楕円の長軸方向を算出する長軸方向算出工程と、前記長軸方向算出工程にて算出された長軸方向でいずれか一の方向に向かう方向を前記アプローチ方向として選択する長軸方向選択工程と、を備えることが好ましい。
【0013】
このような構成において、検出工程ではプローブの向きを固定した状態で真円を測定することにより真円からずれた検出データを得ているところ、まず、楕円フィッティング工程では、検出データを楕円とみて、検出データに楕円の式をフィッティングする。そして、長軸方向算出工程では、楕円の長軸方向を算出する。ここで、楕円の長軸方向は、検出データが真円から最もずれた方向であり、このずれは、一方側においてプローブが接触部の先端で基準球に当接し、その反対側においてプローブ軸部の背面で基準球に当接したことによって生じる。つまり、算出された長軸方向うちのいずれかに向かう方向は接触部が設けられている方向であり、すなわち、アプローチ方向である。そこで、長軸方向選択工程では、算出された長軸方向でいずれか一の方向に向かう方向を接触部が設けられている方向であるアプローチ方向として選択する。
【0014】
このような構成によれば、検出データを楕円として楕円の式をフィッティングしたうえでこの楕円の長軸を算出するので、検出データにおいて真円からのずれが一番大きくなっている方向、つまり、接触部で真円に当接した方向を正確に求めることができる。よって、プローブが微細であって接触部が設けられている方向が肉眼では正しく認識できない場合でも、楕円の長軸方向に基づいて接触部が設けられている方向を極めて正確に求めることができる。
【0015】
本発明では、前記アプローチ方向設定工程は、前記検出データの内接円を算出する内接円算出工程を備え、前記長軸方向選択工程は、前記内接円算出工程にて算出された内接円の中心からみて前記楕円の長軸の端点のうち遠い方から前記内接円の中心点に向かう向きを前記アプローチ方向として選択することが好ましい。
【0016】
このような構成において、内接円算出工程では、検出データの内接円を算出する。
ここで、検出データは、真円に対してプローブがプローブ軸部の一端で当接するか接触部で当接するかによって真円からずれているが、検出データの内接円としては、このようなずれにあまり影響されずに、測定対象となった真円と同じ中心点を有する円になると考えられる。そして、長軸方向選択工程においては、楕円の長軸の端点のうちで遠い方から内接円の中心点に向かう向きをアプローチ方向として選択する。すなわち、内接円の中心点から遠い点は、真円とプローブ軸部との間に接触部が介在することにより中心点から遠い点(遠点)となっているところ、遠点の位置で接触部の先端が真円に当接していることになる。そこで、遠点から内接円の中心に向かう方向をアプローチ方向として選択することでアプローチ方向を設定することができる。このような構成によれば、内接円の中心と長軸方向の遠点との関係によってアプローチ方向を自動認識するので、アプローチ方向の設定が簡便かつ正確となる。
【0017】
本発明では、前記アプローチ方向設定工程は、前記楕円フィッティング工程にて前記検出データにフィッティングされた楕円および前記長軸方向算出手段にて算出された前記長軸方向を表示手段に表示する表示工程を備え、前記長軸方向選択工程では、前記表示手段に表示された前記楕円の形状を視認した際の判断に基づいて前記アプローチ方向が選択されることが好ましい。
【0018】
このような構成によれば、表示工程において表示手段に表示された楕円の形状からアプローチ方向を認識するので、例えば、検出データにノイズが多く、検出データに基づく自動認識が困難な場合であっても、オペレーターの判断に基づいて適切にアプローチ方向を設定することができる。
【0019】
本発明では、前記アプローチ方向設定工程は、前記真円測定工程で前記接触部の向きを固定した際に前記アプローチ方向が座標系上でプラス方向かマイナス方向かを予め設定する概略方向設定工程を備え、前記長軸方向選択工程は、前記概略方向設定工程にて設定された方向に従って前記長軸方向のいずれか一方を前記アプローチ方向として設定することが好ましい。
【0020】
このような構成によれば、概略方向設定工程において接触部の向きを予め設定しておくので、検出データにフィッティングされた楕円の長軸方向のうちアプローチ方向を簡単に選択することができる。
【0021】
本発明の形状測定装置は、プローブ軸部、および、このプローブ軸部の一端に設けられプローブ軸部に直交する一方向に向けて所定長さで突出する接触部を有するプローブを備え、前記接触部が被測定物表面に当接した際のプローブ位置に基づいて前記被測定物の表面形状を測定する形状測定装置であって、前記接触部の向きを固定した状態で前記プローブ軸部の一端または前記接触部を真円の輪郭に複数点で当接させながら前記真円の一周分にわたって前記プローブを移動させる真円測定手段と、前記プローブ軸部の一端または前記接触部が前記真円の輪郭に当接した際のプローブ軸部の位置をプローブ軸部に直交する面内で検出する検出手段と、前記検出手段にて検出された検出データと前記真円とのずれに基づいて前記アプローチ方向を設定するアプローチ方向設定手段と、を備えることを特徴とする。
【0022】
プローブのアプローチ方向設定プログラムは、プローブ軸部、および、このプローブ軸部の一端に設けられプローブ軸部に直交する一方向に向けて所定長さで突出する接触部を有するプローブを備え、前記接触部が被測定物表面に当接した際のプローブ位置に基づいて前記被測定物の表面形状を測定する形状測定装置にコンピュータを組み込んで、このコンピュータを、前記接触部の向きを固定した状態で前記プローブ軸部の一端または前記接触部を真円の輪郭に複数点で当接させながら前記真円の一周分にわたって前記プローブを移動させる真円測定手段と、前記プローブ軸部の一端または前記接触部が前記真円の輪郭に当接した際のプローブ軸部の位置をプローブ軸部に直交する面内で検出する検出手段と、前記検出手段にて検出された検出データと前記真円とのずれに基づいて前記アプローチ方向を設定するアプローチ方向設定手段と、して機能させることを特徴とする。
【0023】
本発明の記録媒体は、上記プローブのアプローチ方向設定プログラムを記録したことを特徴とする。
【0024】
このような構成によれば、上記発明と同様の作用効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
(第1実施形態)
本発明のプローブのアプローチ方向設定方法に係る第1実施形態について説明する。
まず、プローブのアプローチ方向設定方法について説明する前提として、プローブ220を備えた形状測定装置100の構成について説明する。
図1は、形状測定装置100の構成を示す図である。
形状測定装置100は、三次元測定機200と、手動操作するジョイスティック310を有する操作部300と、三次元測定機200の動作を制御するモーションコントローラ400と、モーションコントローラ400を介して三次元測定機200を動作させるとともに三次元測定機200によって取得した測定データを処理して被測定物Wの寸法や形状などを求めるホストコンピュータ500と、出力手段610と、入力手段620と、を備えている。
【0026】
三次元測定機200は、被測定物Wの表面Sを検出する加振型接触式センサ210と、この加振型接触式センサ210を三次元的に駆動させる駆動機構260と、被測定物が載置される定盤270と、を備えている。
【0027】
図2は、加振型接触式センサ210の構成を示す図である。
加振型接触式センサ210は、プローブ220と、このプローブ220を支持するプローブホルダ250と、このプローブホルダ250に設けられプローブ220を軸方向に振動させる圧電素子251と、この圧電素子251にプローブ220の固有振動数を有する信号(パルスあるいは正弦波信号など)を印加する加振回路252と、プローブ220の振動変化を電圧変化に変換する圧電素子253と、この圧電素子253からの電圧変化を検出して検出信号として出力する検出回路254と、を備える。
【0028】
プローブ220は、プローブ軸部230と、プローブ軸部230の一端に設けられた接触部240と、を備えている。
プローブ軸部230の断面形状は円形である。
接触部240は、プローブ軸部230の一端において、プローブ軸部230に直交する一方向へ向けて突出している。
また、接触部240の形状は嘴型であって先端241に行くに従って先き細る先細り形状であり、その先端241は被測定物表面Sと一点で接するとともに接触点を傷つけないように凸形の球面に仕上げられている。
ここで、接触部240の形状は、例えば画像測定機によって測定し、先端241の高さ(Z方向位置)を求めておく。
さらに、被測定物表面Sを測定するにあたっては、接触部240を被測定物表面Sに当接させなければならないところ、形状測定装置100に接触部240が突出している方向であるアプローチ方向を設定しなければならないが、この点については図4のフローチャートを参照して後述する。
【0029】
駆動機構260は、定盤270の両側端から定盤270に略垂直方向であるZm方向に高さを有するとともに定盤270の側端に沿ったYm軸方向へスライド可能に設けられた二本のビーム支持体261と、ビーム支持体261の上端に支持されてXm方向に長さを有するビーム262と、ビーム262にXm方向にスライド可能に設けられZm軸方向にガイドを有するコラム263と、コラム263内をZ軸方向にスライド可能に設けられ下端にて加振型接触式センサ210を保持するスピンドル264と、を備えている。そして、ビーム支持体261のYm軸方向移動量、コラム263のXm軸方向移動量、スピンドル264のZm軸方向移動量は所定の駆動センサにより検出される。
【0030】
なお、三次元測定機200の定盤270上には、真球である基準球280が配設されている。
【0031】
モーションコントローラ400は、駆動センサからの検出信号をカウントして加振型接触式センサ210の位置を検出するとともに、ホストコンピュータ500および操作部300からの指令に応じて駆動機構260を駆動制御する。
【0032】
ホストコンピュータ500は、予め設定された測定条件に基づいて三次元測定機200の動作指令を行うととともに、駆動センサによる検出信号に基づいて被測定物表面形状を形状解析する。また、ホストコンピュータ500は、加振型接触式センサ210を被測定物表面Sに向けて移動させる際に、接触部240が被測定物表面Sに当接する方向であるアプローチ方向に加振型接触式センサ210の向きを制御する。
このアプローチ方向はアプローチ方向制御部510に記憶されるところ、アプローチ方向制御部510にアプローチ方向を設定する工程については図4のフローチャートを参照して後述する。
【0033】
出力手段610としては表示手段およびプリンタが例示され、入力手段620としてはキーボードが例示される。
【0034】
このような構成の形状測定装置100によって被測定物表面Sを測定する動作について説明する。
被測定物表面Sを検出するにあたって、加振型接触式センサ210を被測定物表面Sに向けて移動させていく。
ただし、加振型接触式センサ210の向きとしては、接触部240が被測定物表面に当接する向き(アプローチ方向)にしておく。
このとき、接触部240と被測定物表面Sとの位置関係により、図3に示されるような検出信号の変化が生じる。接触部240がフリーの状態(A)から接触部240が被測定物表面に接触を開始し(B)、所定の押込み量dで接触部240が被測定物表面に接触したとき(C)、接触部240の振動が束縛されて、検出信号が予め設定された参照値に達する。
ここで、参照値は、接触部240がフリーの状態(非接触の状態)で検出される検出信号値から接触部240が所定押込み量dで押込まれた際の信号変化分を減じたものとして予め設定されるものである。
【0035】
検出信号値が参照値となるように接触部240を被測定物表面Sに押し当てて、検出信号が参照値に達したときの加振型接触式センサ210の位置情報を駆動機構260のX、Y、Z軸スライド量からサンプリングする。
このような当接と離接を繰り返して被測定物表面を複数点で測定する。そして、サンプリングされた加振型接触式センサ210の位置情報から被測定物表面Sの形状を知ることができる。
【0036】
(アプローチ方向設定方法)
次に、接触部240が被測定物表面Sの測定点に当接する方向であるアプローチ方向をアプローチ方向制御部510に設定するアプローチ方向設定方法について図4のフローチャートを参照して説明する。
ここで、図5は、アプローチ方向制御部510の構成を示す図であり、アプローチ方向制御部510は、真円測定部520と、検出データ記憶部530と、アプローチ方向設定部540と、アプローチ方向記憶部550と、を備え、アプローチ方向設定部540は、楕円フィッティング部541と、長軸方向算出部542と、内接円算出部543と、長軸方向選択部544と、を備えている。
【0037】
加振型接触式センサ210をスピンドル264の先端に取り付けたのち、加振型接触式センサ210のアプローチ方向をアプローチ方向制御部510に設定記憶させる。
アプローチ方向を設定するにあたっては、まず、ST100において、真円測定工程が真円測定部520によって実行される。
この真円測定工程(ST100)では、図6に示されるように、基準球280の赤道部分である真円の輪郭に加振型接触式センサ210を複数点で接触させていく。
【0038】
このとき、接触部240の向きは固定しておく。すなわち、基準球280に加振型接触式センサ210を当接させるにあたって、スピンドル264を回転させることなく、駆動機構260のみを駆動させて加振型接触式センサ210を移動させ、プローブ軸部230の一端を基準球280に当接させていく。すると、一方側では接触部240の先端241が基準球280に当接することになるが、その反対側ではプローブ軸部230の背面が基準球280に接することになり、さらに別に位置では、プローブ軸部230の側面が基準球280に当接することになる。
【0039】
そして、加振型接触式センサ210が基準球280に当接してプローブ220の振動が拘束され、検出回路254からの検出信号が所定の参照値になったことが検出回路254にて検出されると、駆動センサによって加振型接触式センサ210の位置が検出される(検出工程ST110)。この検出データは、検出データ記憶部530に記憶されていく。
【0040】
ここで、検出回路254、駆動センサおよび検出データ記憶部530により検出手段が構成される。
【0041】
図7は、このようにして得られた検出データDの一例である。
加振型接触式センサ210の向きを一定にしているので、接触部240で基準球280に接したか、プローブ軸部230で基準球280に接したかによって、基準球280に当接したときのプローブ軸部230の位置が真円からずれる程度が異なる。そのため、検出データDは、基準球280の真円からずれた略楕円状になる。
すなわち、接触部240にて基準球280に当接した場合にそのプローブ軸部230の位置を検出すると、接触部240が基準球280とプローブ軸部230との間に介在する分だけ基準球280からのずれが大きくなる(図7中のA)。その一方、プローブ軸部230で基準球280に接していれば、基準球280からのずれが小さい検出データを得る(図7中のB)。
【0042】
基準球280の周囲にわたって加振型接触式センサ210を当接させて、一周分の測定が終了したところで(ST120:YES)、次に、検出データDと真円とのずれに基づいてアプローチ方向を設定するアプローチ方向設定工程(ST200)がアプローチ方向設定部540により実行される。
【0043】
アプローチ方向設定工程(ST200)においては、まず、ST210において、楕円フィッティング工程が、楕円フィッティング部541により実行される。
検出工程(ST110)にて得られた検出データDは、加振型接触式センサ210がプローブ軸部230と接触部240とのいずれで基準球280に接したかによって真円からずれた形状となっているところ、楕円フィッティング工程では、この検出データDを楕円と認識して検出データDに楕円Eの式をフィッティングする(図8参照)
【0044】
次に、ST220において、検出データDにフィッティングされた楕円Eの長軸方向Lを算出する長軸方向算出工程が長軸方向算出部542によって実行される。
これにより、楕円フィッティング工程(ST210)にて算出された楕円Eの式から長軸方向Lが算出される。
ここで、楕円Eの長軸方向は、検出データDが真円から最もずれた方向であり、このずれは、一方側において加振型接触式センサ210が接触部240の先端241で基準球280に当接し、その反対側においてプローブ軸部230の背面で基準球280に当接したことによって生じる。つまり、算出された長軸方向Lうちのいずれかに向かう方向は接触部240が設けられている方向であり、すなわち、アプローチ方向である。
【0045】
次に、ST230において、前記検出データDの内接円Cを算出する内接円算出工程が内接円算出部543により実行され、検出データDの内接円Cが算出される。例えば、図9に示されるように、検出データDの内接円Cが求められ、同時に、内接円Cの中心点Oが算出される。
【0046】
そして、ST240において、長軸方向算出工程(ST220)にて算出された長軸方向のいずれか一方向をアプローチ方向として選択する長軸方向選択工程が長軸方向選択部544にて実行される。
このとき、内接円算出工程(ST230)にて算出された内接円Cの中心からみて楕円Eの長軸Lの端点のうち遠い方(遠点B)から内接円Cの中心Oに向かう向きをアプローチ方向Vとして選択する。
例えば、図9において、長軸方向における楕円上の点として点Tと点Bが存在するところ、内接円Cの中心からみて遠い点Bから中心Oに向かう向きをアプローチ方向Vとして選択する。
【0047】
そして、ST300において、アプローチ方向をアプローチ方向記憶部550に設定記憶する。つまり、加振型接触式センサ210をスピンドル264に取り付けた現状において、接触部240が設けられている方向がアプローチ方向Vであることをアプローチ方向記憶部550に記憶する。
【0048】
実際に、加振型接触式センサ210によって被測定物表面Sを検出するにあたっては、まず、被測定物の設計データ等に基づいた被測定物の形状をホストコンピュータ500に設定入力しておく。さらに、この被測定物表面上において所定数の測定点を設定しておく。
そして、この測定点における被測定物表面Sの法線方向を加振型接触式センサ210の移動方向として加振型接触式センサ210を測定点に近づけていく。このとき、スピンドル264を回転させて、接触部240が測定点に向く方向にする。つまり、アプローチ方向Vを測定点に向ける。
このように接触部240が測定点に向く状態になったところで、駆動機構260によって加振型接触式センサ210を測定点に近づけていき、接触部240が当接して振動が拘束されたときの検出信号に基づいて接触部240と被測定物表面との接触を検出して、このときの加振型接触式センサ210の位置を駆動センサによって検出する。このようにして得られた検出データに基づいてホストコンピュータ500により被測定物表面の形状解析が行われる。
さらに、接触部240の形状が正確に分かっている場合には、プローブ軸位置から接触部の分を補正して、被測定物表面の座標を正確に算出してもよい。
【0049】
このような構成を備える第1実施形態によれば、次の効果を奏することができる。
(1)上記アプローチ方向設定方法によって一方向にのみ接触部240が設けられている加振型接触式センサ210の接触部240の方向を求めてアプローチ方向Vとして設定できるので、アプローチ方向を測定点に向けた状態で加振型接触式センサ210を被測定物Wの測定点に移動させることにより、接触部240を被測定物表面Sの測定点に当接させることができる。これにより、被測定物表面Sを検出することができる。例えば、従来の球状の接触部240では測定不可能であった小孔の形状なども測定することができる。
【0050】
(2)プローブ220が非常に微細であって、接触部240がどの方向であるかを肉眼で確認することは困難である場合でも、上記アプローチ方向設定方法では基準球280を測定した結果に基づいてアプローチ方向Vを設定することができるので、アプローチ方向Vとして正確な方向を設定することができる。また、アプローチ方向Vを設定するにあたっては、プローブ220の向きを固定した状態で基準球280を測定するだけであるので(真円測定工程ST100)、非常に簡便である。
【0051】
(3)検出データDを楕円Eとして楕円の式をフィッティングしたうえでこの楕円Eの長軸Lを算出するので(長軸方向算出工程ST220)、検出データDにおいて真円からのずれが一番大きくなっている方向、つまり、接触部240の先端241で基準球280に当接した方向を正確に求めることができる。よって、プローブ220が微細であって接触部240が設けられている方向が肉眼では正しく認識できない場合でも、楕円Eの長軸方向Lに基づいて接触部240が設けられている方向を極めて正確に求めることができる。
【0052】
(4)長軸方向算出工程(ST220)において楕円Eの長軸方向Lを算出したのち、さらに、内接円算出工程(ST230)にて算出した内接円Cの中心Oと長軸方向Lの遠点Bとの関係に基づいてアプローチ方向を自動認識するので、接触部240の方向が肉眼では正しく視認できない場合でも、簡便かつ正確にアプローチ方向を設定することができる。
【0053】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
上記実施形態では、長軸方向算出工程(ST220)にて長軸方向を算出したのち、さらに、内接円算出工程(ST230)で検出データの内接円を算出して、長軸方向Lの端点Bと内接円Cの中心Oとの関係からアプローチ方向Vを自動認識する場合について説明した。この他、例えば、長軸方向算出工程(ST220)にて長軸方向Lを算出したのち、この長軸方向Lのどちら向きがアプローチ方向Vとして設定されるかはオペレーターが判断して選択してもよい。この場合、例えば、楕円フィッティング工程(ST210)にて求められた楕円Eおよび長軸方向算出工程(ST220)にて算出された長軸Lを表示手段に表示したうえで、この表示画面上で楕円の偏心の様子からアプローチ方向をオペレータが選択してもよい。
【0054】
または、プローブ220の接触部240がどの方向に設けられているかを肉眼で確認できる場合には、予め、接触部240が設けられている方向を凡その範囲で設定しておいてもよい。例えば、接触部240が設けられている方向を座標系上のプラス側あるいはマイナス側のいずれであるかを入力しておく。そして、長軸方向算出工程(ST220)にて算出された長軸方向のうち予め入力された方向をアプローチ方向として設定してもよい。
【0055】
上記実施形態では、真円測定工程(ST100)にて測定する真円としては基準球280の輪郭である場合を例にして説明したが、真円であればよいので、例えば、円柱状であるピンゲージの側面を測定してもよいことはもちろんである。
または、真円に限らず、予め形状が既知である基準物であれば、プローブ220の向きを固定した状態でこの基準物の周囲を測定して、基準物の形状と検出データとのずれに基づいて接触部240の向きを決定してもよい。
【0056】
上記実施形態においては、プローブ軸部230の断面が円形である場合について説明したが、プローブ軸部230の断面形状は円形に限られない。例えば、プローブ軸部230の断面が多角形状、例えば図10に示されるようにプローブ軸部230の断面が四角形であってもよい。この場合、真円測定工程(ST100)においてプローブ220の向きを固定した状態で真円を測定すると、図11に示されるように、図5に示される検出データに比べて肩の部分が出たような形状になるが、この場合でも長軸方向を算出することが可能であるので、アプローチ方向を求めることができる。
【0057】
上記実施形態では、プローブ220を振動させて、プローブ220が被測定物表面Sに当接したときの検出信号の変化からプローブ220が被測定物表面Sに当接したことを検出する加振型接触式センサ210を例にして説明したが、プローブ220が被測定物表面Sに当接したことを検出する構成としては、上記実施形態に限定されない。
例えば、上記加振型接触式プローブ210で検出信号が参照値になるように接触部240を被測定物表面Sに押し当てながら被測定物表面Sに沿って接触部240を倣い移動させて被測定物表面Sを検出してもよい。
あるいは、プローブをスライド移動可能に保持するとともにプローブの押込量を検出可能な倣いプローブによってタッチトリガ測定してもよく、倣い測定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、形状測定装置に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】形状測定装置の構成を示す図。
【図2】加振型接触式センサの構成を示す図。
【図3】接触部の押込量と検出信号の関係を示す図。
【図4】アプローチ方向設定方法の処理手順を示すフローチャート。
【図5】アプローチ方向制御部の構成を示す図。
【図6】真円測定工程において基準球を測定する様子を示す図。
【図7】検出データの一例を示す図。
【図8】検出データにフィッティングした楕円を示す図。
【図9】検出データの内接円を示す図。
【図10】プローブ軸が四角柱状であるプローブを示す図。
【図11】プローブ軸が四角柱状である場合の検出データの一例を示す図。
【図12】接触部が球状である従来のプローブを示す図。
【図13】逆テーパで拡径する小孔を従来のプローブで測定する様子を示す図。
【図14】接触部が嘴型であるプローブを示す図。
【図15】接触部が嘴型であるプローブで小孔を測定する様子を示す図。
【符号の説明】
【0060】
22…プローブ、23…プローブ軸部、24…接触部、30…小孔、100…形状測定装置、200…三次元測定機、210…加振型接触式センサ、220…プローブ、230…プローブ軸部、240…接触部、241…接触部の先端、250…プローブホルダ、251…圧電素子、252…加振回路、253…圧電素子、254…検出回路、260…駆動機構、261…ビーム支持体、262…ビーム、263…コラム、264…スピンドル、270…定盤、280…基準球、300…操作部、310…ジョイスティック、400…モーションコントローラ、500…ホストコンピュータ、510…アプローチ方向制御部、520…真円測定部、530…検出データ記憶部、540…アプローチ方向設定部、541…楕円フィッティング部、542…長軸方向算出部、543…内接円算出部、544…長軸方向選択部、550…アプローチ方向記憶部、610…出力手段、620…入力手段。
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブのアプローチ方向設定方法、形状測定装置プログラム及び記憶媒体
に関する。具体的には、被測定物表面を検出するプローブの接触部を被測定物表面に適切にアプローチさせるためのアプローチ方向を設定する方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物の形状や寸法を測定する測定機として三次元測定機、表面性状測定機、小穴測定機等が知られている。このような測定機は、被測定物表面に当接して被測定物表面を検出するプローブを備える(例えば、特許文献1、2)。
図12は、従来の一般的なプローブを示す図である。
従来のプローブ22は、図12に示されるように、プローブ軸部23と、このプローブ軸部23の先端に設けられた球状の接触部24と、を有する。そして、被測定物表面Sの測定にあたっては、接触部24を被測定物表面Sに当接させるようにプローブ22を移動させていき、接触部24が被測定物表面Sに当接した際の座標を所定の検出手段により検出する。すると、被測定物表面Sの位置が検出され、複数の測定点で被測定物表面Sの位置を検出することにより被測定物の表面形状あるいは寸法が測定される。
【0003】
従来のプローブ22は、接触部24が球状であるので、あらゆる方向から被測定物表面Sに接触しても適切に被測定物表面Sを検出することが可能となっている。しかしながら、例えば、図13に示されるように、奥側が逆テーパによって拡径する小孔30の形状を測定対象とする場合、接触部24が球状のプローブ22では対応できないという問題が生じる。すなわち、前記小孔30の形状を測定しようとした場合、接触部24が測定点に達する前にプローブ軸部23が小孔30の内壁に接触してしまう。その一方、接触部24を小孔30内に挿入するためには、接触部24の径を小孔30の入口径未満とする必要があるので、単純に接触部24の径を大きくするわけにもいかない。
【0004】
そこで、このような小孔30の形状を測定する場合には、図14に示されるように、接触部240の形状をプローブ軸部230から突出する嘴形状とする。すると、図15に示されるように、プローブ軸部230が小孔30の内壁に当接することなく小孔30の奥側に接触部24を当接させることができるので、小孔30の形状を測定することができる。
【0005】
【特許文献1】特開2002−39737号公報
【特許文献2】特開2004−61322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、プローブ軸部230から嘴形状に突出した接触部240を有するプローブ220を用いることにより小孔30の形状を測定でき、球状の接触部24では測定できない形状を測定することができる。
【0007】
ここで、被測定物表面Sを測定するにあたっては、この接触部240を被測定物表面Sの測定点に当接させなければならないが、接触部240はプローブ軸部23から所定の方向にのみ突出している。したがって、接触部240を測定点に当接させるためには、形状測定装置に接触部240が突出している方向をアプローチ方向として設定し、この設定されたアプローチ方向に従ってプローブ220を被測定物表面Sに向けてアプローチさせなければならない。
しかしながら、プローブ220を形状測定装置に取り付けたのちに、嘴型の接触部240をユーザーが目視で確認したうえで、この接触部240が突出している方向をアプローチ方向として手動で正確に設定入力することは非常に困難であり、正確にアプローチ方向を設定できなければ、接触部以外の部分で被測定物表面Sに接触することになるので測定誤差につながる。
【0008】
本発明の目的は、プローブ軸部の一端から突出する接触部を有するプローブのアプローチ方向を正確に設定できるプローブのアプローチ方向設定方法、および、形状測定装置プログラム及び記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のプローブのアプローチ方向設定方法は、プローブ軸部、および、このプローブ軸部の一端に設けられプローブ軸部に直交する一方向に向けて所定長さで突出する接触部を有するプローブを用いて被測定物表面を測定するにあたり、前記接触部が前記被測定物表面の測定点に当接する方向であるアプローチ方向を設定するプローブのアプローチ方向設定方法であって、前記接触部の向きを固定した状態で前記プローブ軸部の一端または前記接触部を真円の輪郭に複数点で当接させながら前記真円の一周分にわたって前記プローブを移動させる真円測定工程と、前記真円測定工程において前記プローブ軸部の一端または前記接触部が前記真円の輪郭に当接した際のプローブ軸部の位置をプローブ軸部に直交する面内で検出する検出工程と、前記検出工程にて検出された検出データと前記真円とのずれに基づいて前記アプローチ方向を設定するアプローチ方向設定工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
この構成において、プローブは、プローブ軸部から一方向に突出した接触部を有しているので、この接触部が測定点に当接する方向であるアプローチ方向でプローブを被測定物に当接させなければならない。そこで、このアプローチ方向を設定する。アプローチ方向を設定するにあたっては、まず、真円測定工程において、真円の一周分を複数点で測定する。このとき、プローブの向きは固定し、すなわち、接触部の向きは一定に固定したままで、プローブを真円の輪郭に当接させていく。すると、プローブ軸部から突出した接触部が真円の輪郭に当接する場合もあれば、プローブ軸部において接触部が設けられた側の反対である背面で真円に当接する場合もあり、プローブ軸部の側面で真円に当接する場合もある。このように、プローブが真円に当接したときのプローブ軸部の位置を検出していく(検出工程)。すると、真円に対してプローブの接触部で当接した場合とプローブ軸部が当接した場合等でプローブ軸部と真円とのギャップが異なってくるので、検出データとしては、真円からずれた楕円状のデータが得られることになる。そこで、この検出データが真円からずれたずれ量に基づいて接触部が設けられている方向を算出し、アプローチ方向として設定する(アプローチ方向設定工程)。
【0011】
このような構成によれば、一方向にのみ接触部が設けられているプローブの接触部の方向を求めてアプローチ方向として設定できるので、プローブをこのアプローチ方向に向けた状態でプローブを被測定物の測定点に移動させることにより、接触部を被測定物表面の測定点に当接させることができる。
ここで、プローブが非常に微細である場合には、接触部がどの方向であるかを肉眼で確認することは困難であり、その接触部が設けられている方向を正確に手動で設定入力することは不可能である。
この点、本発明では真円を測定した結果に基づいてアプローチ方向が設定されるので、たとえ肉眼では正確に視認できない微細なプローブであってもアプローチ方向として正確な方向を設定することができる。
また、アプローチ方向を設定するにあたっては、プローブの向きを固定した状態で真円を測定するだけであるので、非常に簡便である。
【0012】
本発明では、前記アプローチ方向設定工程は、前記検出工程にて検出されたプローブ軸部の位置の検出データに楕円をフィッティングする楕円フィッティング工程と、前記楕円フィッティング工程にて前記検出データにフィッティングされた楕円の長軸方向を算出する長軸方向算出工程と、前記長軸方向算出工程にて算出された長軸方向でいずれか一の方向に向かう方向を前記アプローチ方向として選択する長軸方向選択工程と、を備えることが好ましい。
【0013】
このような構成において、検出工程ではプローブの向きを固定した状態で真円を測定することにより真円からずれた検出データを得ているところ、まず、楕円フィッティング工程では、検出データを楕円とみて、検出データに楕円の式をフィッティングする。そして、長軸方向算出工程では、楕円の長軸方向を算出する。ここで、楕円の長軸方向は、検出データが真円から最もずれた方向であり、このずれは、一方側においてプローブが接触部の先端で基準球に当接し、その反対側においてプローブ軸部の背面で基準球に当接したことによって生じる。つまり、算出された長軸方向うちのいずれかに向かう方向は接触部が設けられている方向であり、すなわち、アプローチ方向である。そこで、長軸方向選択工程では、算出された長軸方向でいずれか一の方向に向かう方向を接触部が設けられている方向であるアプローチ方向として選択する。
【0014】
このような構成によれば、検出データを楕円として楕円の式をフィッティングしたうえでこの楕円の長軸を算出するので、検出データにおいて真円からのずれが一番大きくなっている方向、つまり、接触部で真円に当接した方向を正確に求めることができる。よって、プローブが微細であって接触部が設けられている方向が肉眼では正しく認識できない場合でも、楕円の長軸方向に基づいて接触部が設けられている方向を極めて正確に求めることができる。
【0015】
本発明では、前記アプローチ方向設定工程は、前記検出データの内接円を算出する内接円算出工程を備え、前記長軸方向選択工程は、前記内接円算出工程にて算出された内接円の中心からみて前記楕円の長軸の端点のうち遠い方から前記内接円の中心点に向かう向きを前記アプローチ方向として選択することが好ましい。
【0016】
このような構成において、内接円算出工程では、検出データの内接円を算出する。
ここで、検出データは、真円に対してプローブがプローブ軸部の一端で当接するか接触部で当接するかによって真円からずれているが、検出データの内接円としては、このようなずれにあまり影響されずに、測定対象となった真円と同じ中心点を有する円になると考えられる。そして、長軸方向選択工程においては、楕円の長軸の端点のうちで遠い方から内接円の中心点に向かう向きをアプローチ方向として選択する。すなわち、内接円の中心点から遠い点は、真円とプローブ軸部との間に接触部が介在することにより中心点から遠い点(遠点)となっているところ、遠点の位置で接触部の先端が真円に当接していることになる。そこで、遠点から内接円の中心に向かう方向をアプローチ方向として選択することでアプローチ方向を設定することができる。このような構成によれば、内接円の中心と長軸方向の遠点との関係によってアプローチ方向を自動認識するので、アプローチ方向の設定が簡便かつ正確となる。
【0017】
本発明では、前記アプローチ方向設定工程は、前記楕円フィッティング工程にて前記検出データにフィッティングされた楕円および前記長軸方向算出手段にて算出された前記長軸方向を表示手段に表示する表示工程を備え、前記長軸方向選択工程では、前記表示手段に表示された前記楕円の形状を視認した際の判断に基づいて前記アプローチ方向が選択されることが好ましい。
【0018】
このような構成によれば、表示工程において表示手段に表示された楕円の形状からアプローチ方向を認識するので、例えば、検出データにノイズが多く、検出データに基づく自動認識が困難な場合であっても、オペレーターの判断に基づいて適切にアプローチ方向を設定することができる。
【0019】
本発明では、前記アプローチ方向設定工程は、前記真円測定工程で前記接触部の向きを固定した際に前記アプローチ方向が座標系上でプラス方向かマイナス方向かを予め設定する概略方向設定工程を備え、前記長軸方向選択工程は、前記概略方向設定工程にて設定された方向に従って前記長軸方向のいずれか一方を前記アプローチ方向として設定することが好ましい。
【0020】
このような構成によれば、概略方向設定工程において接触部の向きを予め設定しておくので、検出データにフィッティングされた楕円の長軸方向のうちアプローチ方向を簡単に選択することができる。
【0021】
本発明の形状測定装置は、プローブ軸部、および、このプローブ軸部の一端に設けられプローブ軸部に直交する一方向に向けて所定長さで突出する接触部を有するプローブを備え、前記接触部が被測定物表面に当接した際のプローブ位置に基づいて前記被測定物の表面形状を測定する形状測定装置であって、前記接触部の向きを固定した状態で前記プローブ軸部の一端または前記接触部を真円の輪郭に複数点で当接させながら前記真円の一周分にわたって前記プローブを移動させる真円測定手段と、前記プローブ軸部の一端または前記接触部が前記真円の輪郭に当接した際のプローブ軸部の位置をプローブ軸部に直交する面内で検出する検出手段と、前記検出手段にて検出された検出データと前記真円とのずれに基づいて前記アプローチ方向を設定するアプローチ方向設定手段と、を備えることを特徴とする。
【0022】
プローブのアプローチ方向設定プログラムは、プローブ軸部、および、このプローブ軸部の一端に設けられプローブ軸部に直交する一方向に向けて所定長さで突出する接触部を有するプローブを備え、前記接触部が被測定物表面に当接した際のプローブ位置に基づいて前記被測定物の表面形状を測定する形状測定装置にコンピュータを組み込んで、このコンピュータを、前記接触部の向きを固定した状態で前記プローブ軸部の一端または前記接触部を真円の輪郭に複数点で当接させながら前記真円の一周分にわたって前記プローブを移動させる真円測定手段と、前記プローブ軸部の一端または前記接触部が前記真円の輪郭に当接した際のプローブ軸部の位置をプローブ軸部に直交する面内で検出する検出手段と、前記検出手段にて検出された検出データと前記真円とのずれに基づいて前記アプローチ方向を設定するアプローチ方向設定手段と、して機能させることを特徴とする。
【0023】
本発明の記録媒体は、上記プローブのアプローチ方向設定プログラムを記録したことを特徴とする。
【0024】
このような構成によれば、上記発明と同様の作用効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
(第1実施形態)
本発明のプローブのアプローチ方向設定方法に係る第1実施形態について説明する。
まず、プローブのアプローチ方向設定方法について説明する前提として、プローブ220を備えた形状測定装置100の構成について説明する。
図1は、形状測定装置100の構成を示す図である。
形状測定装置100は、三次元測定機200と、手動操作するジョイスティック310を有する操作部300と、三次元測定機200の動作を制御するモーションコントローラ400と、モーションコントローラ400を介して三次元測定機200を動作させるとともに三次元測定機200によって取得した測定データを処理して被測定物Wの寸法や形状などを求めるホストコンピュータ500と、出力手段610と、入力手段620と、を備えている。
【0026】
三次元測定機200は、被測定物Wの表面Sを検出する加振型接触式センサ210と、この加振型接触式センサ210を三次元的に駆動させる駆動機構260と、被測定物が載置される定盤270と、を備えている。
【0027】
図2は、加振型接触式センサ210の構成を示す図である。
加振型接触式センサ210は、プローブ220と、このプローブ220を支持するプローブホルダ250と、このプローブホルダ250に設けられプローブ220を軸方向に振動させる圧電素子251と、この圧電素子251にプローブ220の固有振動数を有する信号(パルスあるいは正弦波信号など)を印加する加振回路252と、プローブ220の振動変化を電圧変化に変換する圧電素子253と、この圧電素子253からの電圧変化を検出して検出信号として出力する検出回路254と、を備える。
【0028】
プローブ220は、プローブ軸部230と、プローブ軸部230の一端に設けられた接触部240と、を備えている。
プローブ軸部230の断面形状は円形である。
接触部240は、プローブ軸部230の一端において、プローブ軸部230に直交する一方向へ向けて突出している。
また、接触部240の形状は嘴型であって先端241に行くに従って先き細る先細り形状であり、その先端241は被測定物表面Sと一点で接するとともに接触点を傷つけないように凸形の球面に仕上げられている。
ここで、接触部240の形状は、例えば画像測定機によって測定し、先端241の高さ(Z方向位置)を求めておく。
さらに、被測定物表面Sを測定するにあたっては、接触部240を被測定物表面Sに当接させなければならないところ、形状測定装置100に接触部240が突出している方向であるアプローチ方向を設定しなければならないが、この点については図4のフローチャートを参照して後述する。
【0029】
駆動機構260は、定盤270の両側端から定盤270に略垂直方向であるZm方向に高さを有するとともに定盤270の側端に沿ったYm軸方向へスライド可能に設けられた二本のビーム支持体261と、ビーム支持体261の上端に支持されてXm方向に長さを有するビーム262と、ビーム262にXm方向にスライド可能に設けられZm軸方向にガイドを有するコラム263と、コラム263内をZ軸方向にスライド可能に設けられ下端にて加振型接触式センサ210を保持するスピンドル264と、を備えている。そして、ビーム支持体261のYm軸方向移動量、コラム263のXm軸方向移動量、スピンドル264のZm軸方向移動量は所定の駆動センサにより検出される。
【0030】
なお、三次元測定機200の定盤270上には、真球である基準球280が配設されている。
【0031】
モーションコントローラ400は、駆動センサからの検出信号をカウントして加振型接触式センサ210の位置を検出するとともに、ホストコンピュータ500および操作部300からの指令に応じて駆動機構260を駆動制御する。
【0032】
ホストコンピュータ500は、予め設定された測定条件に基づいて三次元測定機200の動作指令を行うととともに、駆動センサによる検出信号に基づいて被測定物表面形状を形状解析する。また、ホストコンピュータ500は、加振型接触式センサ210を被測定物表面Sに向けて移動させる際に、接触部240が被測定物表面Sに当接する方向であるアプローチ方向に加振型接触式センサ210の向きを制御する。
このアプローチ方向はアプローチ方向制御部510に記憶されるところ、アプローチ方向制御部510にアプローチ方向を設定する工程については図4のフローチャートを参照して後述する。
【0033】
出力手段610としては表示手段およびプリンタが例示され、入力手段620としてはキーボードが例示される。
【0034】
このような構成の形状測定装置100によって被測定物表面Sを測定する動作について説明する。
被測定物表面Sを検出するにあたって、加振型接触式センサ210を被測定物表面Sに向けて移動させていく。
ただし、加振型接触式センサ210の向きとしては、接触部240が被測定物表面に当接する向き(アプローチ方向)にしておく。
このとき、接触部240と被測定物表面Sとの位置関係により、図3に示されるような検出信号の変化が生じる。接触部240がフリーの状態(A)から接触部240が被測定物表面に接触を開始し(B)、所定の押込み量dで接触部240が被測定物表面に接触したとき(C)、接触部240の振動が束縛されて、検出信号が予め設定された参照値に達する。
ここで、参照値は、接触部240がフリーの状態(非接触の状態)で検出される検出信号値から接触部240が所定押込み量dで押込まれた際の信号変化分を減じたものとして予め設定されるものである。
【0035】
検出信号値が参照値となるように接触部240を被測定物表面Sに押し当てて、検出信号が参照値に達したときの加振型接触式センサ210の位置情報を駆動機構260のX、Y、Z軸スライド量からサンプリングする。
このような当接と離接を繰り返して被測定物表面を複数点で測定する。そして、サンプリングされた加振型接触式センサ210の位置情報から被測定物表面Sの形状を知ることができる。
【0036】
(アプローチ方向設定方法)
次に、接触部240が被測定物表面Sの測定点に当接する方向であるアプローチ方向をアプローチ方向制御部510に設定するアプローチ方向設定方法について図4のフローチャートを参照して説明する。
ここで、図5は、アプローチ方向制御部510の構成を示す図であり、アプローチ方向制御部510は、真円測定部520と、検出データ記憶部530と、アプローチ方向設定部540と、アプローチ方向記憶部550と、を備え、アプローチ方向設定部540は、楕円フィッティング部541と、長軸方向算出部542と、内接円算出部543と、長軸方向選択部544と、を備えている。
【0037】
加振型接触式センサ210をスピンドル264の先端に取り付けたのち、加振型接触式センサ210のアプローチ方向をアプローチ方向制御部510に設定記憶させる。
アプローチ方向を設定するにあたっては、まず、ST100において、真円測定工程が真円測定部520によって実行される。
この真円測定工程(ST100)では、図6に示されるように、基準球280の赤道部分である真円の輪郭に加振型接触式センサ210を複数点で接触させていく。
【0038】
このとき、接触部240の向きは固定しておく。すなわち、基準球280に加振型接触式センサ210を当接させるにあたって、スピンドル264を回転させることなく、駆動機構260のみを駆動させて加振型接触式センサ210を移動させ、プローブ軸部230の一端を基準球280に当接させていく。すると、一方側では接触部240の先端241が基準球280に当接することになるが、その反対側ではプローブ軸部230の背面が基準球280に接することになり、さらに別に位置では、プローブ軸部230の側面が基準球280に当接することになる。
【0039】
そして、加振型接触式センサ210が基準球280に当接してプローブ220の振動が拘束され、検出回路254からの検出信号が所定の参照値になったことが検出回路254にて検出されると、駆動センサによって加振型接触式センサ210の位置が検出される(検出工程ST110)。この検出データは、検出データ記憶部530に記憶されていく。
【0040】
ここで、検出回路254、駆動センサおよび検出データ記憶部530により検出手段が構成される。
【0041】
図7は、このようにして得られた検出データDの一例である。
加振型接触式センサ210の向きを一定にしているので、接触部240で基準球280に接したか、プローブ軸部230で基準球280に接したかによって、基準球280に当接したときのプローブ軸部230の位置が真円からずれる程度が異なる。そのため、検出データDは、基準球280の真円からずれた略楕円状になる。
すなわち、接触部240にて基準球280に当接した場合にそのプローブ軸部230の位置を検出すると、接触部240が基準球280とプローブ軸部230との間に介在する分だけ基準球280からのずれが大きくなる(図7中のA)。その一方、プローブ軸部230で基準球280に接していれば、基準球280からのずれが小さい検出データを得る(図7中のB)。
【0042】
基準球280の周囲にわたって加振型接触式センサ210を当接させて、一周分の測定が終了したところで(ST120:YES)、次に、検出データDと真円とのずれに基づいてアプローチ方向を設定するアプローチ方向設定工程(ST200)がアプローチ方向設定部540により実行される。
【0043】
アプローチ方向設定工程(ST200)においては、まず、ST210において、楕円フィッティング工程が、楕円フィッティング部541により実行される。
検出工程(ST110)にて得られた検出データDは、加振型接触式センサ210がプローブ軸部230と接触部240とのいずれで基準球280に接したかによって真円からずれた形状となっているところ、楕円フィッティング工程では、この検出データDを楕円と認識して検出データDに楕円Eの式をフィッティングする(図8参照)
【0044】
次に、ST220において、検出データDにフィッティングされた楕円Eの長軸方向Lを算出する長軸方向算出工程が長軸方向算出部542によって実行される。
これにより、楕円フィッティング工程(ST210)にて算出された楕円Eの式から長軸方向Lが算出される。
ここで、楕円Eの長軸方向は、検出データDが真円から最もずれた方向であり、このずれは、一方側において加振型接触式センサ210が接触部240の先端241で基準球280に当接し、その反対側においてプローブ軸部230の背面で基準球280に当接したことによって生じる。つまり、算出された長軸方向Lうちのいずれかに向かう方向は接触部240が設けられている方向であり、すなわち、アプローチ方向である。
【0045】
次に、ST230において、前記検出データDの内接円Cを算出する内接円算出工程が内接円算出部543により実行され、検出データDの内接円Cが算出される。例えば、図9に示されるように、検出データDの内接円Cが求められ、同時に、内接円Cの中心点Oが算出される。
【0046】
そして、ST240において、長軸方向算出工程(ST220)にて算出された長軸方向のいずれか一方向をアプローチ方向として選択する長軸方向選択工程が長軸方向選択部544にて実行される。
このとき、内接円算出工程(ST230)にて算出された内接円Cの中心からみて楕円Eの長軸Lの端点のうち遠い方(遠点B)から内接円Cの中心Oに向かう向きをアプローチ方向Vとして選択する。
例えば、図9において、長軸方向における楕円上の点として点Tと点Bが存在するところ、内接円Cの中心からみて遠い点Bから中心Oに向かう向きをアプローチ方向Vとして選択する。
【0047】
そして、ST300において、アプローチ方向をアプローチ方向記憶部550に設定記憶する。つまり、加振型接触式センサ210をスピンドル264に取り付けた現状において、接触部240が設けられている方向がアプローチ方向Vであることをアプローチ方向記憶部550に記憶する。
【0048】
実際に、加振型接触式センサ210によって被測定物表面Sを検出するにあたっては、まず、被測定物の設計データ等に基づいた被測定物の形状をホストコンピュータ500に設定入力しておく。さらに、この被測定物表面上において所定数の測定点を設定しておく。
そして、この測定点における被測定物表面Sの法線方向を加振型接触式センサ210の移動方向として加振型接触式センサ210を測定点に近づけていく。このとき、スピンドル264を回転させて、接触部240が測定点に向く方向にする。つまり、アプローチ方向Vを測定点に向ける。
このように接触部240が測定点に向く状態になったところで、駆動機構260によって加振型接触式センサ210を測定点に近づけていき、接触部240が当接して振動が拘束されたときの検出信号に基づいて接触部240と被測定物表面との接触を検出して、このときの加振型接触式センサ210の位置を駆動センサによって検出する。このようにして得られた検出データに基づいてホストコンピュータ500により被測定物表面の形状解析が行われる。
さらに、接触部240の形状が正確に分かっている場合には、プローブ軸位置から接触部の分を補正して、被測定物表面の座標を正確に算出してもよい。
【0049】
このような構成を備える第1実施形態によれば、次の効果を奏することができる。
(1)上記アプローチ方向設定方法によって一方向にのみ接触部240が設けられている加振型接触式センサ210の接触部240の方向を求めてアプローチ方向Vとして設定できるので、アプローチ方向を測定点に向けた状態で加振型接触式センサ210を被測定物Wの測定点に移動させることにより、接触部240を被測定物表面Sの測定点に当接させることができる。これにより、被測定物表面Sを検出することができる。例えば、従来の球状の接触部240では測定不可能であった小孔の形状なども測定することができる。
【0050】
(2)プローブ220が非常に微細であって、接触部240がどの方向であるかを肉眼で確認することは困難である場合でも、上記アプローチ方向設定方法では基準球280を測定した結果に基づいてアプローチ方向Vを設定することができるので、アプローチ方向Vとして正確な方向を設定することができる。また、アプローチ方向Vを設定するにあたっては、プローブ220の向きを固定した状態で基準球280を測定するだけであるので(真円測定工程ST100)、非常に簡便である。
【0051】
(3)検出データDを楕円Eとして楕円の式をフィッティングしたうえでこの楕円Eの長軸Lを算出するので(長軸方向算出工程ST220)、検出データDにおいて真円からのずれが一番大きくなっている方向、つまり、接触部240の先端241で基準球280に当接した方向を正確に求めることができる。よって、プローブ220が微細であって接触部240が設けられている方向が肉眼では正しく認識できない場合でも、楕円Eの長軸方向Lに基づいて接触部240が設けられている方向を極めて正確に求めることができる。
【0052】
(4)長軸方向算出工程(ST220)において楕円Eの長軸方向Lを算出したのち、さらに、内接円算出工程(ST230)にて算出した内接円Cの中心Oと長軸方向Lの遠点Bとの関係に基づいてアプローチ方向を自動認識するので、接触部240の方向が肉眼では正しく視認できない場合でも、簡便かつ正確にアプローチ方向を設定することができる。
【0053】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
上記実施形態では、長軸方向算出工程(ST220)にて長軸方向を算出したのち、さらに、内接円算出工程(ST230)で検出データの内接円を算出して、長軸方向Lの端点Bと内接円Cの中心Oとの関係からアプローチ方向Vを自動認識する場合について説明した。この他、例えば、長軸方向算出工程(ST220)にて長軸方向Lを算出したのち、この長軸方向Lのどちら向きがアプローチ方向Vとして設定されるかはオペレーターが判断して選択してもよい。この場合、例えば、楕円フィッティング工程(ST210)にて求められた楕円Eおよび長軸方向算出工程(ST220)にて算出された長軸Lを表示手段に表示したうえで、この表示画面上で楕円の偏心の様子からアプローチ方向をオペレータが選択してもよい。
【0054】
または、プローブ220の接触部240がどの方向に設けられているかを肉眼で確認できる場合には、予め、接触部240が設けられている方向を凡その範囲で設定しておいてもよい。例えば、接触部240が設けられている方向を座標系上のプラス側あるいはマイナス側のいずれであるかを入力しておく。そして、長軸方向算出工程(ST220)にて算出された長軸方向のうち予め入力された方向をアプローチ方向として設定してもよい。
【0055】
上記実施形態では、真円測定工程(ST100)にて測定する真円としては基準球280の輪郭である場合を例にして説明したが、真円であればよいので、例えば、円柱状であるピンゲージの側面を測定してもよいことはもちろんである。
または、真円に限らず、予め形状が既知である基準物であれば、プローブ220の向きを固定した状態でこの基準物の周囲を測定して、基準物の形状と検出データとのずれに基づいて接触部240の向きを決定してもよい。
【0056】
上記実施形態においては、プローブ軸部230の断面が円形である場合について説明したが、プローブ軸部230の断面形状は円形に限られない。例えば、プローブ軸部230の断面が多角形状、例えば図10に示されるようにプローブ軸部230の断面が四角形であってもよい。この場合、真円測定工程(ST100)においてプローブ220の向きを固定した状態で真円を測定すると、図11に示されるように、図5に示される検出データに比べて肩の部分が出たような形状になるが、この場合でも長軸方向を算出することが可能であるので、アプローチ方向を求めることができる。
【0057】
上記実施形態では、プローブ220を振動させて、プローブ220が被測定物表面Sに当接したときの検出信号の変化からプローブ220が被測定物表面Sに当接したことを検出する加振型接触式センサ210を例にして説明したが、プローブ220が被測定物表面Sに当接したことを検出する構成としては、上記実施形態に限定されない。
例えば、上記加振型接触式プローブ210で検出信号が参照値になるように接触部240を被測定物表面Sに押し当てながら被測定物表面Sに沿って接触部240を倣い移動させて被測定物表面Sを検出してもよい。
あるいは、プローブをスライド移動可能に保持するとともにプローブの押込量を検出可能な倣いプローブによってタッチトリガ測定してもよく、倣い測定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、形状測定装置に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】形状測定装置の構成を示す図。
【図2】加振型接触式センサの構成を示す図。
【図3】接触部の押込量と検出信号の関係を示す図。
【図4】アプローチ方向設定方法の処理手順を示すフローチャート。
【図5】アプローチ方向制御部の構成を示す図。
【図6】真円測定工程において基準球を測定する様子を示す図。
【図7】検出データの一例を示す図。
【図8】検出データにフィッティングした楕円を示す図。
【図9】検出データの内接円を示す図。
【図10】プローブ軸が四角柱状であるプローブを示す図。
【図11】プローブ軸が四角柱状である場合の検出データの一例を示す図。
【図12】接触部が球状である従来のプローブを示す図。
【図13】逆テーパで拡径する小孔を従来のプローブで測定する様子を示す図。
【図14】接触部が嘴型であるプローブを示す図。
【図15】接触部が嘴型であるプローブで小孔を測定する様子を示す図。
【符号の説明】
【0060】
22…プローブ、23…プローブ軸部、24…接触部、30…小孔、100…形状測定装置、200…三次元測定機、210…加振型接触式センサ、220…プローブ、230…プローブ軸部、240…接触部、241…接触部の先端、250…プローブホルダ、251…圧電素子、252…加振回路、253…圧電素子、254…検出回路、260…駆動機構、261…ビーム支持体、262…ビーム、263…コラム、264…スピンドル、270…定盤、280…基準球、300…操作部、310…ジョイスティック、400…モーションコントローラ、500…ホストコンピュータ、510…アプローチ方向制御部、520…真円測定部、530…検出データ記憶部、540…アプローチ方向設定部、541…楕円フィッティング部、542…長軸方向算出部、543…内接円算出部、544…長軸方向選択部、550…アプローチ方向記憶部、610…出力手段、620…入力手段。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブ軸部、および、このプローブ軸部の一端に設けられプローブ軸部に直交する一方向に向けて所定長さで突出する接触部を有するプローブを用いて被測定物表面を測定するにあたり、前記接触部が前記被測定物表面の測定点に当接する方向であるアプローチ方向を設定するプローブのアプローチ方向設定方法であって、
前記接触部の向きを固定した状態で前記プローブ軸部の一端または前記接触部を真円の輪郭に複数点で当接させながら前記真円の一周分にわたって前記プローブを移動させる真円測定工程と、
前記真円測定工程において前記プローブ軸部の一端または前記接触部が前記真円の輪郭に当接した際のプローブ軸部の位置をプローブ軸部に直交する面内で検出する検出工程と、
前記検出工程にて検出された検出データと前記真円とのずれに基づいて前記アプローチ方向を設定するアプローチ方向設定工程と、を備える
ことを特徴とするプローブのアプローチ方向設定方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプローブのアプローチ方向設定方法において、
前記アプローチ方向設定工程は、
前記検出工程にて検出されたプローブ軸部の位置の検出データに楕円の式をフィッティングする楕円フィッティング工程と、
前記楕円フィッティング工程にて前記検出データにフィッティングされた楕円の長軸方向を算出する長軸方向算出工程と、
前記長軸方向算出工程にて算出された長軸方向でいずれか一の方向に向かう方向を前記アプローチ方向として選択する長軸方向選択工程と、を備える
ことを特徴とするプローブのアプローチ方向設定方法。
【請求項3】
請求項2に記載のプローブのアプローチ方向設定方法において、
前記アプローチ方向設定工程は、
前記検出データの内接円を算出する内接円算出工程を備え、
前記長軸方向選択工程は、前記内接円算出工程にて算出された内接円の中心からみて前記楕円の長軸の端点のうち遠い方から前記内接円の中心点に向かう向きを前記アプローチ方向として選択する
ことを特徴とするプローブのアプローチ方向設定方法。
【請求項4】
請求項2に記載のプローブのアプローチ方向設定方法において、
前記アプローチ方向設定工程は、前記楕円フィッティング工程にて前記検出データにフィッティングされた楕円および前記長軸方向算出手段にて算出された前記長軸方向を表示手段に表示する表示工程を備え、
前記長軸方向選択工程では、前記表示手段に表示された前記楕円の形状を視認した際の判断に基づいて前記アプローチ方向が選択される
ことを特徴とするアプローチ方向設定方法。
【請求項5】
請求項2に記載のプローブのアプローチ方向設定方法において、
前記アプローチ方向設定工程は、
前記真円測定工程で前記接触部の向きを固定した際に前記アプローチ方向が座標系上でプラス方向かマイナス方向かを予め設定する概略方向設定工程を備え、
前記長軸方向選択工程は、前記概略方向設定工程にて設定された方向に従って前記長軸方向のいずれか一方を前記アプローチ方向として設定する
ことを特徴とするプローブのアプローチ方向設定方法。
【請求項6】
プローブ軸部、および、このプローブ軸部の一端に設けられプローブ軸部に直交する一方向に向けて所定長さで突出する接触部を有するプローブを備え、前記接触部が被測定物表面に当接した際のプローブ位置に基づいて前記被測定物の表面形状を測定する形状測定装置であって、
前記接触部の向きを固定した状態で前記プローブ軸部の一端または前記接触部を真円の輪郭に複数点で当接させながら前記真円の一周分にわたって前記プローブを移動させる真円測定手段と、
前記プローブ軸部の一端または前記接触部が前記真円の輪郭に当接した際のプローブ軸部の位置をプローブ軸部に直交する面内で検出する検出手段と、
前記検出手段にて検出された検出データと前記真円とのずれに基づいて前記アプローチ方向を設定するアプローチ方向設定手段と、を備える
ことを特徴とする形状測定装置。
【請求項7】
プローブ軸部、および、このプローブ軸部の一端に設けられプローブ軸部に直交する一方向に向けて所定長さで突出する接触部を有するプローブを備え、前記接触部が被測定物表面に当接した際のプローブ位置に基づいて前記被測定物の表面形状を測定する形状測定装置にコンピュータを組み込んで、このコンピュータを、
前記接触部の向きを固定した状態で前記プローブ軸部の一端または前記接触部を真円の輪郭に複数点で当接させながら前記真円の一周分にわたって前記プローブを移動させる真円測定手段と、
前記プローブ軸部の一端または前記接触部が前記真円の輪郭に当接した際のプローブ軸部の位置をプローブ軸部に直交する面内で検出する検出手段と、
前記検出手段にて検出された検出データと前記真円とのずれに基づいて前記アプローチ方向を設定するアプローチ方向設定手段と、して機能させることを特徴とするコンピュータ読取可能なプローブのアプローチ方向設定プログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のプローブのアプローチ方向設定プログラムを記録した記録媒体。
【請求項1】
プローブ軸部、および、このプローブ軸部の一端に設けられプローブ軸部に直交する一方向に向けて所定長さで突出する接触部を有するプローブを用いて被測定物表面を測定するにあたり、前記接触部が前記被測定物表面の測定点に当接する方向であるアプローチ方向を設定するプローブのアプローチ方向設定方法であって、
前記接触部の向きを固定した状態で前記プローブ軸部の一端または前記接触部を真円の輪郭に複数点で当接させながら前記真円の一周分にわたって前記プローブを移動させる真円測定工程と、
前記真円測定工程において前記プローブ軸部の一端または前記接触部が前記真円の輪郭に当接した際のプローブ軸部の位置をプローブ軸部に直交する面内で検出する検出工程と、
前記検出工程にて検出された検出データと前記真円とのずれに基づいて前記アプローチ方向を設定するアプローチ方向設定工程と、を備える
ことを特徴とするプローブのアプローチ方向設定方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプローブのアプローチ方向設定方法において、
前記アプローチ方向設定工程は、
前記検出工程にて検出されたプローブ軸部の位置の検出データに楕円の式をフィッティングする楕円フィッティング工程と、
前記楕円フィッティング工程にて前記検出データにフィッティングされた楕円の長軸方向を算出する長軸方向算出工程と、
前記長軸方向算出工程にて算出された長軸方向でいずれか一の方向に向かう方向を前記アプローチ方向として選択する長軸方向選択工程と、を備える
ことを特徴とするプローブのアプローチ方向設定方法。
【請求項3】
請求項2に記載のプローブのアプローチ方向設定方法において、
前記アプローチ方向設定工程は、
前記検出データの内接円を算出する内接円算出工程を備え、
前記長軸方向選択工程は、前記内接円算出工程にて算出された内接円の中心からみて前記楕円の長軸の端点のうち遠い方から前記内接円の中心点に向かう向きを前記アプローチ方向として選択する
ことを特徴とするプローブのアプローチ方向設定方法。
【請求項4】
請求項2に記載のプローブのアプローチ方向設定方法において、
前記アプローチ方向設定工程は、前記楕円フィッティング工程にて前記検出データにフィッティングされた楕円および前記長軸方向算出手段にて算出された前記長軸方向を表示手段に表示する表示工程を備え、
前記長軸方向選択工程では、前記表示手段に表示された前記楕円の形状を視認した際の判断に基づいて前記アプローチ方向が選択される
ことを特徴とするアプローチ方向設定方法。
【請求項5】
請求項2に記載のプローブのアプローチ方向設定方法において、
前記アプローチ方向設定工程は、
前記真円測定工程で前記接触部の向きを固定した際に前記アプローチ方向が座標系上でプラス方向かマイナス方向かを予め設定する概略方向設定工程を備え、
前記長軸方向選択工程は、前記概略方向設定工程にて設定された方向に従って前記長軸方向のいずれか一方を前記アプローチ方向として設定する
ことを特徴とするプローブのアプローチ方向設定方法。
【請求項6】
プローブ軸部、および、このプローブ軸部の一端に設けられプローブ軸部に直交する一方向に向けて所定長さで突出する接触部を有するプローブを備え、前記接触部が被測定物表面に当接した際のプローブ位置に基づいて前記被測定物の表面形状を測定する形状測定装置であって、
前記接触部の向きを固定した状態で前記プローブ軸部の一端または前記接触部を真円の輪郭に複数点で当接させながら前記真円の一周分にわたって前記プローブを移動させる真円測定手段と、
前記プローブ軸部の一端または前記接触部が前記真円の輪郭に当接した際のプローブ軸部の位置をプローブ軸部に直交する面内で検出する検出手段と、
前記検出手段にて検出された検出データと前記真円とのずれに基づいて前記アプローチ方向を設定するアプローチ方向設定手段と、を備える
ことを特徴とする形状測定装置。
【請求項7】
プローブ軸部、および、このプローブ軸部の一端に設けられプローブ軸部に直交する一方向に向けて所定長さで突出する接触部を有するプローブを備え、前記接触部が被測定物表面に当接した際のプローブ位置に基づいて前記被測定物の表面形状を測定する形状測定装置にコンピュータを組み込んで、このコンピュータを、
前記接触部の向きを固定した状態で前記プローブ軸部の一端または前記接触部を真円の輪郭に複数点で当接させながら前記真円の一周分にわたって前記プローブを移動させる真円測定手段と、
前記プローブ軸部の一端または前記接触部が前記真円の輪郭に当接した際のプローブ軸部の位置をプローブ軸部に直交する面内で検出する検出手段と、
前記検出手段にて検出された検出データと前記真円とのずれに基づいて前記アプローチ方向を設定するアプローチ方向設定手段と、して機能させることを特徴とするコンピュータ読取可能なプローブのアプローチ方向設定プログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のプローブのアプローチ方向設定プログラムを記録した記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−313120(P2006−313120A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−136222(P2005−136222)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】
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