説明

プローブ

【課題】 大きなオーバードライブを確保し、かつ、スクラブ量を微細に制御可能とするプローブを提供すること。
【解決手段】 垂直方向に延びる垂直プローブと、垂直方向と交差する方向に延び直線又は曲線形状を有し、概略水平方向に延び、一端が固定端と接続し他端は前記垂直プローブと接続する1対の相対する水平梁とから構成されるリンク機構を含むプローブで、前記1対の相対する水平梁間距離が連続に又は不連続に変化するプローブにおいて、前記水平梁間距離が固定端近傍で最大となり、前記垂直プローブ近傍で最小となるようにしたプローブである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LSIなどの電子デバイスの製造工程において、ウエハ上に形成された複数のチップの回路検査に使用する接触子(プローブ)に関し、特にチップ上に配列される電極パッドに対しウエハ状態のままプローブを接触させ、一括してチップの電気的導通によりウエハに構成された回路検査を実施するプローブカードに搭載されるプローブ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体技術の進歩に伴って電子デバイスの集積度が向上し、半導体ウエハ上に形成される各半導体チップにおいても回路配線の占めるエリアが増加し、それ故、各半導体チップ上のパッド数の増加、パッド面積の縮小化、パッドピッチの狭小化が進んでいる。
【0003】
この半導体ウエハ上の半導体チップの検査手段としては、被検査半導体チップのパッドと検査装置との間に、外力に対して弾性変形部を有する複数の針状プローブを多数配列したプローブカードが用いられている。
【0004】
パッド配列が微細化及び狭ピッチ化したことで問題となるのは、半導体チップのパッドに接触させて電気的導通を得るためのプローブの構造を、パッド配列の微細化に合わせた小型で高密度なものとしなければならないことである。
【0005】
また、パッド面積が縮小化したことで問題となるのは、パッドがアルミ合金膜で形成されているメモリLSIやロジックLSI等において、パッド表面に存在する酸化皮膜をプローブ先端の水平方向の擦り(スクラブ)により破壊して電気的導通を得る必要があり、このスクラブ動作によりプローブ先端がパッドから外れることを防ぐためだけでなく、パッド面積に対するスクラブ痕面積が大きくなることによるワイヤボンディング不良を生じさせないため、スクラブ量を微細にコントロールしなければならないことである。
【0006】
プローブ構造として、片持梁のカンチレバー構造を有する針状のプローブが一般的である。従来のカンチレバーの構造においては、先端垂直方向変位量(オーバードライブ量)と先端水平方向変位量であるスクラブ量との間にはトレードオフの関係がある。
【0007】
すなわち、パッドに損傷を与えない適切な押圧力を確保し、かつ、同時に多数のパッドに対して一定以上の押圧力を確実に与えるための垂直方向寸法のばらつきを吸収するためには、比較的大きなオーバードライブ量が必要である。このためには、カンチレバーの梁長を大きくしなければならないため、高密度化に問題があった。
【0008】
反対に梁長を小さくし小型にすれば、大きなオーバードライブ量が確保できず、同時に多数のパッドに対して一定以上の押圧力を確実に与えることが困難であるという問題が生じていた。
【0009】
一方、より狭ピッチ化(20μm以下)が予測される液晶(LCD)ドライバ用LSIのパッドは、主として酸化皮膜が生じ難い金メッキ等により形成されている。このLCDドライバLSIのパッドに対して、上述のスクラブ設計されたプローブを使用することにより、パッド素材である金が削られてしまい、プローブ先端の定期的なクリーニングが必要となるだけでなく、金属屑の付着によるプローブの破損や導通不良等の原因となるという問題が生じる。
【0010】
上述したような背景により、プローブに対する技術的要求としては、
(1)パッド配列の狭ピッチ化へ対応した高密度プローブ、
(2)大きなオーバードライブの確保、
(3)スクラブ機能を含むプローブの接触部近傍における挙動の微細なコントロール(概ね2μm以下)
を同時に可能とすることにある。そのためこれまで本発明者等は、下記「特許文献1」及び「特許文献2」記載の提案を行ってきた。
【0011】
特許文献1においては、従来のカンチレバー構造の代わりに平行ばね構造によるプローブ構造を採用することにより、比較的大きなオーバードライブ量を確保しつつ、パッドとプローブの接触部近傍における水平方向挙動の微細なコントロールを可能としてきた。さらに、平行ばね構造の先端部に回転変形部を接続させることにより、スクラブ動作量を微細にコントロールできる構造が実現可能となった。
【0012】
特許文献2においては、平行ばね構造における水平梁の少なくとも1対の相対する平行梁間距離が、水平方向に沿って連続に又は不連続に変化することを特徴とすることにより、さらに水平方向挙動の微細なコントロールを可能とした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−122356号公報
【特許文献2】特開2009−036744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、LCDドライバLSI等におけるようなスクラブ動作を不要とするLSIに対しては、従来のようなスクラブ設計されたプローブを使用することにより、スクラブ動作が発生することによりパッド素材である金が削られてしまい、定期的なクリーニングが必要となるだけでなく、導通不良等の原因となるという問題が生じる。
【0015】
又、従来スクラブ動作を必要とするアルミ電極パッドにおいては、従来のスクラブ設計されたプローブを使用することにより、電極パッド表面の酸化皮膜を必要以上に剥離するだけでなく電極パッド素材も破壊するため、定期的なクリーニングが必要となり、又、ワイヤボンディング不良の原因となるという問題が生じる。
【0016】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、主として垂直移動のみの動作を行う平行ばね変形構造部と、垂直プローブ延長部に、平行ばね構造部の挙動により生じた水平方向変位を補正し、水平方向変位を限りなくゼロに近づける機能を有する小変形構造を形成することにより、スクラブ機能を極力排除し、かつ、最小限の接触力で電気的導通が得られるプローブの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1の発明は、垂直方向に延びる垂直プローブと、垂直方向と交差する方向に延び直線又は曲線形状を有し一端が固定端と接続し他端は前記垂直プローブと接続する1対の水平梁とから構成されるリンク機構を含むプローブで、前記1対の相対する水平梁間距離が連続に又は不連続に変化するプローブにおいて、前記水平梁間距離が固定端近傍で最大となり、前記垂直プローブ近傍で最小となることを特徴とするプローブである。このため、第2の変形部を設けずにオーバードライブの全動作範囲において前記垂直プローブ先端の水平方向変位を生じ難くするという作用を有する。
【0018】
第2の発明は、前記1対の水平梁のうち、前記垂直プローブ先端側(被検査電極パッド側)の水平梁の水平方向に対する初期角度(プローブ動作前の角度)が0度であることを特徴とするプローブである。このため、第2の変形部を設けずにオーバードライブの全動作範囲において前記垂直プローブ先端の水平方向変位を生じ難くするという作用を有する。
【0019】
第3の発明は、前記リンク機構の各部変位量が、以下に示すマトリクス解析法の各式に則って算出されるものであって、前記垂直プローブ先端座標変位のX方向変位量が概略0であることを特徴とするプローブである。

ただし、Fx:X方向荷重、Fy:Y方向荷重、δx:X方向変位、δy:Y方向変位、E:梁のヤング率、I:梁の断面2次モーメント、A:梁の断面積、L:梁の長さとする。
【発明の効果】
【0020】
本発明のプローブによれば、第1の変形部の先端に、第1の変形部の挙動により生じた水平方向変位又は回転移動に伴う水平方向変位を補正し、水平方向変位すなわちスクラブ量を2μm以下のレベルまで微細に制御可能な機能を有する第2の変形部である小変形構造を形成することにより、LCDドライバLSI等におけるようなスクラブ動作を不要とするLSIに対しては、従来のスクラブ動作による電極パッド素材が削られてしまうことがなく、又、従来スクラブ動作を必要とする電極パッドにおいては、適切なスクラブ量の確保により、電極パッド表面の酸化皮膜を剥離することなく突き破り電極パッドとの電気的導通を行うことができるため、定期的なクリーニングが不要となり、検査コストを低減できるという効果が生じる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】 本発明の実施の形態1であるプローブの基本構造を示す説明図である。
【図2】 本発明の実施の形態1であるプローブ構造の動作を説明する図である。
【図3】 本発明の実施の形態2であるプローブ構造及び動作を説明する図である。
【図4】 本発明の実施の形態3であるプローブ構造及び動作を説明する図である。
【図5】 本発明の実施の形態3であるプローブ構造のプローブ動作関係を説明する図である。
【図6】 本発明の実施の形態4を示すプローブ先端形状を説明する図である。
【図7】 本発明の実施の形態5を示すプローブ動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0023】
(実施の形態1)
以下に図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の実施形態に係るプローブ構造の基本的な説明図である。図1において、11は垂直プローブ、12は固定端、13及び14は水平梁であり、垂直プローブ11、固定端12、水平梁13及び水平梁14によりリンク機構を原理とする概略平行四辺形型ばねを形成している。本構成を第1の変形部1と称する。
【0024】
垂直プローブ11の片端に直列に第2の変形部2が構成されている。第2の変形部2は、垂直プローブ11の下端15より垂直方向にL21の長さの垂直部21を有し、連続して固定端12方向に向かってL22の長さの水平梁部22を有し、さらに連続して垂直方向にL23の長さの垂直部23を有する。図1においてL21、L22、L23の長さは、概ねL21≒L22≒L23の関係で図示しているが、これに限定するものではない。
【0025】
次に図1の例におけるプローブの動作について図2を用いて説明する。図2では、図1に示す梁形状を簡略化した形状に置き換えたものである。また、図2(a)〜(d)は本発明の形態であるプローブ構造を示し、図2(a´)〜(c´)は同一の第1の変形部1において第2の変形部を設けず、第2の変形部2と同じ垂直方向長さの垂直延長部25を設けたものであり、両者の比較で説明する。
【0026】
後述する従来型カンチレバー構造では、オーバードライブに伴う+Z方向荷重Pに対して水平梁のY軸まわりの曲げモーメントによる曲げ変形が支配的となるのに対し、平行四辺形型ばね構造では、2つの水平梁13、14のせん断変形が加わるため曲げ変形が微小であるため,Z方向の大きな変位に対しても垂直プローブ11の回転移動が極めて小さいことが知られている。したがって,多数のプローブ組立後のプローブ先端位置ばらつきを吸収するために十分な大きさのオーバードライブ量を想定したプローブの挙動としては,平行四辺形型カンチレバー構造が適している。
【0027】
これらの変位量は、水平梁13,14の長さL13、L14及び幅D13、D14、水平梁の水平方向に対する初期確度、水平梁間距離W等をパラメータとすることにより決定される。
【0028】
図2においてまず、第1の変形部1の動作を説明する。パッド6が相対的に垂直方向(+Z方向)に移動し垂直プローブ先端部24に接触するまでは、プローブの水平梁13及び14は概略水平を維持した状態にある〔図2(a)及び(a´)〕。
【0029】
次に、パッド6が垂直プローブ先端部24と接触を開始し、ある一定量だけ垂直方向に押し上げるオーバードライブが作用すると、2つの平行梁13、14がせん断変形と−θy方向の微小曲げモーメントM11の合成により概略平行に回転移動し、それに伴い垂直プローブ11が垂直方向に移動すると共に微小角度Δθ1(i)だけ回転移動する〔図2(b)〕。このとき、図2(b´)において、垂直延長部25は垂直プローブと共に回転移動し、その結果先端部24はΔS1´(i)だけ+X方向に水平移動、すなわちスクラブ動作が行われる。
【0030】
さらに、平行梁13、14の弾性限界内における最大のオーバードライブ量ODmaxまで垂直プローブ先端部24が垂直方向に押し上げられたとき、垂直プローブ11はさらに垂直移動と角度Δθ1(ii)の回転移動を行うことになる〔図2(c)〕。このとき、図2(c´)において、垂直延長部25は垂直プローブと共に回転移動し、その結果先端部24はΔS1´(ii)だけ+X方向に水平移動する。
【0031】
この回転移動量Δθ1は、平行ばねにおける各梁の長さL13、L14、各梁の幅D13、D14、金属箔の厚さT、梁間距離Wおよび材質に伴うばね定数kをパラメータとすることにより任意に設定することができる。
【0032】
さらに図2(a)〜(d)において第2の変形部2の動作を説明する。第2の変形部2は、垂直プローブ11の片端15を固定端とし、水平梁部22を梁とした微小カンチレバーと見做すことが出来る。
【0033】
図2(d)に示すように、第2の変形部2の片端を固定部とした場合の単独動作において、パッド6が垂直プローブ先端部24と接触を開始しオーバードライブが作用すると、梁部21、22、23が+θy方向の曲げモーメントM12の作用により実線に示す如く回転移動し、その結果、垂直プローブ先端部24が水平方向に微小距離ΔS1r移動する。この水平方向距離ΔS1rは、各梁長さL21、L22、L23、梁の幅D21、D22、D23をパラメータとして決定される。
【0034】
一方、第1の変形部1における垂直プローブ11の回転移動に伴い、第2の変形部2が、既に回転角度Δθ1の回転移動を生じていることになる。したがって、第2の変形部2は全体の回転移動Δθ1を生じるとともに、さらに、微小カンチレバーとして垂直プローブ先端24が相対的に−X方向へ水平移動を生じることになる。ここで、実際に使用するプローブ動作範囲においては、Δθ1が微小であるため、図2(d)における水平方向移動距離ΔS1rは、図2(b)、(c)における第2の変形部2の回転移動時に生じる相対的水平移動距離ΔS1と概略等しいものと見做すことができる。
【0035】
したがって、第1の変形部1に加わる曲げモーメントM11に伴う第2の変形部2全体の回転移動を相殺する方向に、第2の変形部2の梁22、23に曲げモーメントM12を作用させ、第2の変形部2の回転移動時に生じる相対的水平移動距離ΔS1が、図2(a´)〜(c´)にて説明した第2の変形部を設けない場合の先端部24の水平移動距離ΔS1´と同一になるように各パラメータを決定することにより、垂直プローブ先端部24の水平方向の移動距離を2μm以下のレベルまで微小に制御することが可能となる。
【0036】
(実施の形態2)
実施形態2について図3を用いて説明する。図3において、第1の変形部1が従来型カンチレバーであり、第2の変形部2が前記カンチレバーの開放端から−Z方向に概略垂直に接続されていることを特徴とするプローブである。また、図3(a)〜(c)は本発明の形態であるプローブ構造を示し、図3(a´)〜(c´)は同一の第1の変形部において第2の変形部を設けず、第2の変形部と同じ垂直方向長さの垂直延長部25を設けたものであり、両者の比較で説明する。
【0037】
従来型カンチレバー構造では、オーバードライブに伴う+Z方向荷重に対して水平梁のY軸まわりのモーメントによる曲げ変形が支配的となるため,Z方向の変位が増加するにつれて接触部である垂直プローブ先端の回転確度Δθ2が増加してくる.この増加は,第2の変形部2の垂直方向長さが長く,または水平梁33の長さL33が短いほど顕著であることは容易に予測される。
【0038】
図3においてまず、第1の変形部1の動作を説明する。パッド6が相対的に垂直方向(+Z方向)に移動し垂直プローブ先端部24に接触するまでは、カンチレバーの水平梁33は概略水平を維持した状態にある〔図3(a)及び(a´)〕。
【0039】
次に、パッド6が垂直プローブ先端部24と接触を開始し、さらにある一定量だけ垂直方向に押し上げるオーバードライブが作用すると、カンチレバーの水平梁33が−θy方向の曲げモーメントM21により回転移動し、カンチレバー開放端31が微小角度Δθ1(i)だけ回転移動する〔図3(b)〕。このとき、図3(b´)において、垂直延長部25はカンチレバー開放端31と共に回転移動し、その結果先端部24はΔS2´(i)だけ+X方向に水平移動、すなわちスクラブ動作が行われる。
【0040】
さらに、水平梁33の弾性限界内における最大のオーバードライブ量ODmaxまで押し上げられたとき、さらに回転移動し、その結果カンチレバー開放端31が回転角度Δθ2(ii)だけ回転移動することになる〔図3(c)〕。このとき、図3(c´)において、垂直延長部25はカンチレバー開放端31と共に回転移動し、その結果先端部24はΔS1´(ii)だけ+X方向に水平移動する。
【0041】
この回転方向移動量Δθ2は、カンチレバーにおける水平梁の長さL33、梁の幅D33、材料の厚さT、及び材質に伴うばね定数kをパラメータとすることにより任意に設定することができる。
【0042】
図3(a)〜(d)において第2の変形部2の動作を説明する。第2の変形部は、カンチレバー開放端31を固定端とし、水平梁部22を梁とした微小カンチレバーと見做すことが出来る。
【0043】
図3(d)に示すように、第2の変形部2の片端を固定部とした場合の単独動作において、パッド6が垂直プローブ先端部24と接触を開始しオーバードライブが作用すると、梁部21、22、23が+θy方向の曲げモーメントM22により回転移動し、その結果、垂直プローブ先端部24が水平方向に微小距離ΔS2r移動することになる。この水平方向距離ΔS2rは、各梁長さL21、L22、L23、梁の幅D21、D22、D23をパラメータとして決定される。
【0044】
一方、第1の変形部1における水平梁33の回転方向移動に伴い、第2の変形部2が、既に回転角度Δθ2の回転移動を生じている。したがって、第2の変形部2は全体の回転移動Δθ2を生じるとともに、さらに、微小カンチレバーとして垂直プローブ先端24が相対的に−X方向へ水平移動を生じることになる。ここで、実際に使用するプローブ動作範囲においては、Δθ2が微小であるため、図3(d)における水平方向移動距離ΔS2dは、図3(b)、(c)における第2の変形部2の回転移動時に生じる相対的水平移動距離ΔS2と概略等しいものと見做すことができる。
【0045】
したがって、第1の変形部1に加わる曲げモーメントM21に伴う第2の変形部2全体の回転移動を相殺する方向に、第2の変形部2の梁22、23に曲げモーメントM22を作用させることにより、第2の変形部2の回転移動時に生じる相対的水平移動距離ΔS2が、図3(a´)〜(c´)にて説明した第2の変形部を設けない場合の先端部24の水平移動距離ΔS2´と同一になるように各パラメータを決定することにより、垂直プローブ先端部24の水平方向の移動距離を2μm以下のレベルまで微小に制御することができる。
【0046】
(実施の形態3)
実施形態3について図4を用いて説明する。図4において、41は垂直プローブ、42は固定端、43及び44は水平梁、45はプローブ先端部、6は被検査電極パッドであり、垂直プローブ41、固定端42、水平梁43及び44によりリンク機構を原理とする平行ばねを形成している。本実施例では水平梁43と水平梁44との距離Wが水平方向に沿って異なる例を示したものである。
【0047】
また本実施形態は、実施の形態1で前述した平行四辺形ばね構造において、水平梁43に初期角度θhを設けた実施例である。
【0048】
図4の例においてその動作を説明する。相対的にパッド6が垂直方向(+Z方向)に移動し垂直プローブ先端部45に接触するまでは、プローブの水平梁43及び44は概略水平(図示の実線)を維持した状態にある。次に、パッド6が垂直プローブ先端部45と接触を開始し、さらにある一定量だけ垂直方向に押し上げるオーバードライブが作用すると、プローブの二つの水平梁43、44が各々回転移動し、それに伴い垂直プローブ41が移動する。このとき水平梁43及び44は平行でなく初期角度を有するため回転移動の軌跡も異なり、その結果、図示の点線に示すように垂直プローブ41は水平梁43、44が平行の場合とは異なる軌跡をたどることになる。
【0049】
次に、実施の形態3における動作を具体的数値で説明する。図4において、水平方向全長1.3mm、垂直プローブ41の幅0.07mm、水平梁43及び44の幅0.03mm、垂直プローブ41の水平梁間距離0.17mmとし、材質は板厚0.02mmのベリリウム銅とした。その他の寸法値は図示のとおりである。また、水平梁44の水平方向に対する角度を0°とし、水平梁43の水平方向に対する角度θhを可変とした。
【0050】
以上説明したようなモデルについて、プローブ先端部45に図のZ方向に接触荷重Pを負荷し、水平梁43の水平方向に対する角度θhの変化に対するプローブ先端部45のスクラブ量を有限要素法により算出した結果を図5に示す。図5に示すように、接触荷重Pの大きさに係らずθhの値が−2°近辺にていずれもスクラブ量がほぼ0となった。
【0051】
このことから、垂直方向に延びる垂直プローブと、垂直方向と交差する方向に延び直線又は曲線形状を有し一端が固定端と接続し他端は前記垂直プローブと接続する1対の水平梁とから構成されるリンク機構を含むプローブで、前記1対の相対する水平梁間距離が連続に又は不連続に変化するプローブにおいて、前記水平梁間距離が固定端近傍で最大となり、前記垂直プローブ近傍で最小とすることができることが明らかとなる。また、上記1対の水平梁のうち、前記垂直プローブ先端側(被検査電極パッド側)の水平梁の水平方向に対する初期角度(プローブ動作前の角度)が0度とすることができることも明らかになる。また、前記リンク機構の各部変位量が、以下に示すマトリクス解析法の各式に則って算出されるものであって、前記垂直プローブ先端座標変位のX方向変位量が概略0にすることも可能であることも明らかとなる。

ただし、
Fx:X方向荷重、
Fy:Y方向荷重、
δx:X方向変位、
δy:Y方向変位、
E:梁のヤング率、
I:梁の断面2次モーメント、
A:梁の断面積、
L:梁の長さ
である。
【0052】
(実施の形態4)
実施形態4について図6を用いて説明する。図6において、51は垂直プローブ先端部、52は垂直プローブ先端面、53は垂直プローブ片端である。垂直プローブ先端面52は概略平面を成しており、電極パッド6の接触面61とθpの角度をもって電極パッドと接触する例を示している。一方、電極パッド6と接触を開始する垂直プローブ先端面の片端53は曲率半径Rpを有している。
【0053】
プローブカードの検査において、電極パッドとの接触回数は約10万回にも及ぶため、プローブ先端部の磨耗、変形が懸念される。実施の形態1乃至実施の形態3にて述べたように、本発明のプローブ構造によればスクラブ動作を限りなく排除することが可能である。したがって、垂直プローブ先端51と電極パッド6との接触部は常に同一箇所となる。
【0054】
そのため、垂直プローブ先端面52が電極パッドの接触面61と常にθpの角度を保持し、かつ、電極パッド6と接触を開始する垂直プローブ先端面の片端53の曲率半径Rpを極力小さくすることにより、プローブ接触部53が磨耗しても常に微小範囲で電極パッドと接触することが可能となる。具体的な数値としては実験により、θp=8°近辺、曲率半径Rp=2μm以下であることが望ましい。
【0055】
(実施の形態5)
実施形態5について図7を用いて説明する。図7において、53は垂直プローブ先端部、62は電極パッド6の表面に生じた酸化皮膜、63は電極パッド素材(例えばアルミ)である。
【0056】
実施形態1乃至4にて説明した方法により、スクラブ動作を限りなく排除し、プローブ先端部の微小部分のみを電極パッドとの接触部とすることが可能であることを説明した。
【0057】
図7において、一般的に電極パッドの酸化皮膜(酸化アルミ等)62は、おおよそ20nm前後の薄膜で形成されている。この酸化皮膜62を垂直プローブ先端部53が突き破り、垂直プローブ先端部53と電極パッド素材63が接触することで電気的導通を得ることができる。
【0058】
このとき、大きなスクラブが作用したり、必要以上に大きい荷重Pが作用したりした場合、酸化皮膜62が剥離しプローブ先端に付着するため、常にプローブ先端部のクリーニングが必要となる。そのため、荷重Pは必要最小限の値でなければならない。
【0059】
このときの動作について図7を用いて説明する。図7(a)は相対的にパッド6が垂直方向(+Z方向)に移動し垂直プローブ先端部53に接触するまでの状態を示す。次に、パッド6が垂直プローブ先端部53と接触を開始し、オーバードライブが作用し、最適な最大荷重Pmaxが負荷されたとき、図7(b)に示すように、パッド表面の酸化皮膜62が破壊され、垂直プローブ先端部53とパッド素材63が接触し、電気的導通が得られる。
【0060】
検査が終了し、荷重Pが解除され垂直プローブ先端部53がパッド6から離れたとき、最適な最大荷重であれば、図7(c)に示すように、破壊された酸化皮膜64が垂直プローブ先端部53に付着することなく検査を終了することができる。この荷重Pの最適値は実験により20mN以下、とりわけ10mN乃至20mNであることが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のプローブによれば、第1の変形部の先端に、第1の変形部の挙動により生じた水平方向変位又は回転移動に伴う水平方向変位を補正し、水平方向変位すなわちスクラブ量を2μm以下のレベルまで微細に制御可能な機能を有する第2の変形部である小変形構造を形成することにより、LCDドライバLSI等におけるようなスクラブ動作を不要とするLSIに対しては、従来のスクラブ動作による電極パッド素材が削られてしまうことがなく、又、従来スクラブ動作を必要とする電極パッドにおいては、適切なスクラブ量の確保により、電極パッド表面の酸化皮膜を剥離することなく突き破り電極パッドとの電気的導通を行うことができるため、定期的なクリーニングが不要となり、検査コストを低減したプローブカードを提供することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 第1の変形部
2 第2の変形部
6 パッド
11 垂直プローブ
12 固定端
13 水平梁
14 水平梁
15 垂直プローブ片端
21 垂直部
22 水平梁
23 垂直部
24 垂直プローブ先端部
25 垂直延長部
31 カンチレバー開放端
32 固定端
33 水平梁
41 垂直プローブ
42 固定端
43 水平梁
44 水平梁
45 垂直プローブ先端
51 垂直プローブ先端部
52 垂直プローブ先端面
53 先端面片端
61 電極パッド接触面
62 酸化皮膜
63 電極パッド素材
64 酸化皮膜破壊部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直方向に延びる垂直プローブと、垂直方向と交差する方向に延び直線又は曲線形状を有し一端が固定端と接続し他端は前記垂直プローブと接続する1対の水平梁とから構成されるリンク機構を含むプローブで、前記1対の相対する水平梁間距離が連続に又は不連続に変化するプローブにおいて、
前記水平梁間距離が固定端近傍で最大となり、前記垂直プローブ近傍で最小となることを特徴とするプローブ。
【請求項2】
前記1対の水平梁のうち、前記垂直プローブ先端側(被検査電極パッド側)の水平梁の水平方向に対する初期角度(プローブ動作前の角度)が0度であることを特徴とする請求項1に記載のプローブ。
【請求項3】
前記リンク機構の各部変位量が、以下に示すマトリクス解析法の各式に則って算出されるものであって、前記垂直プローブ先端座標変位のX方向変位量が概略0であることを特徴とする請求項2に記載のプローブ。


ただし、
Fx:X方向荷重、
Fy:Y方向荷重、
δx:X方向変位、
δy:Y方向変位、
E:梁のヤング率、
I:梁の断面2次モーメント、
A:梁の断面積、
L:梁の長さ
である。
【請求項4】
被検査パッドと接触する垂直プローブの先端が概略平面であり、前記先端平面の水平方向(被検査電極パッド面方向)に対する角度が、5度乃至10度の範囲であり、かつ、被検査パッドと接触する鋭角側の曲率半径が2μm以下であることを特徴とする請求項3に記載のプローブ。
【請求項5】
前記垂直プローブ先端の水平方向変位(スクラブ)が2μm以下であることを特徴とする請求項3に記載のプローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−108965(P2013−108965A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−268349(P2011−268349)
【出願日】平成23年11月19日(2011.11.19)
【出願人】(391018662)
【Fターム(参考)】