説明

ヘッド交換式切削工具の製造方法、および該製造方法に用いられる連結部材

【課題】工具本体と連結部材とを接合する際の作業性向上を図るとともに工具本体と連結部材とを確実に同軸に接合する。
【解決手段】硬質材料よりなる工具本体1に形成された内周面に凹部を有する取付孔1Dに、この硬質材料よりも硬度が低い金属材料よりなる連結部材2の円筒状の取付部2Aを挿入し、この取付部2Aのうち取付部2Aがなす円筒の中心線C方向の一部を拡径部3として拡径するように塑性変形させ、拡径部3の外周面を取付孔1Dの内周面と密着させて凹部と係合させることにより、これら工具本体1と連結部材2とを接合するのに際し、連結部材2の取付部2Aのうち拡径部3を除いた残りの部分に、拡径部3よりも大径で取付孔1Dの内周面に摺接可能な外径を有する段部4を形成し、この段部4を摺接させて取付部1Aを取付孔1Dに挿入した上で拡径部3を塑性変形させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刃部を有する切削ヘッドやこの切削ヘッドを保持するホルダのようなヘッド交換式切削工具の製造方法、およびこれら切削ヘッドとホルダとを連結するための該製造方法に用いられる連結部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このようなヘッド交換式切削工具として、例えば特許文献1には、超硬合金により一体形成された切削ヘッドの後端部に雄ねじ部が形成され、この雄ねじ部を、ホルダに形成された雌ねじ部にねじ込んで連結するようにしたものが提案されている。また、特許文献2には、超硬合金よりなるシャンク部に鋼部がろう付けにより固着され、この鋼部の切削ヘッドが装着される側よりも奥に、切削ヘッドを固定するための雌ねじ部が形成されたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−164234号公報
【特許文献2】特開2003−251540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたヘッド交換式切削工具のように、高硬度ではあるものの硬脆材でもある超硬合金よりなる切削ヘッドに雄ねじ部を直接形成したのでは、ねじ山に欠けが生じ易くなってホルダと確実に連結することができない。また、特許文献2のように超硬合金よりなるシャンク部と雌ねじ部が形成された鋼部とをろう付けによって固着したホルダでは、これらシャンク部と鋼部との接合部の強度を確保することが難しく、切削抵抗によって鋼部がシャンク部から外れてしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本発明の発明者等は、先に特願2010−72765や特願2010−218643において、切削ヘッドやホルダのようなヘッド交換式切削工具の超硬合金等の硬質材料によりなる工具本体に、所定の表面粗さの凹凸面のような凹部を内周面に有する取付孔を形成し、この取付孔に、上記硬質材料よりも硬度が低い金属材料よりなる連結部材の円筒状の取付部を挿入し、この取付部の内周部に、該取付部の内径よりも大きな外径の圧入部材を圧入することで取付部を拡径するように塑性変形させ、取付部の外周面を取付孔の内周面と密着させて上記凹部と係合させることにより、これら工具本体と連結部材とを接合することを提案している。
【0006】
従って、このようなヘッド交換式切削工具では、硬度が低い反面、靱性は高くて欠け難い上記金属材料よりなる連結部材に切削ヘッドやホルダの連結用のネジ部を形成することにより、これら切削ヘッドとホルダとを確実に連結することができる。また、取付部は圧入部材によって拡径するように塑性変形させられて、その外周面が取付孔内周面と密着するとともに凹部と係合させられているので、工具本体と連結部材との接合強度が高く、切削抵抗によってこれら工具本体と連結部材が外れて切削ヘッドが脱落してしまうようなこともない。
【0007】
ところで、このように切削ヘッドやホルダの工具本体を超硬合金のような粉末焼結材料によって形成する場合、プレス成形等によって成形された粉末素材を焼結する際には著しい収縮が生じ、その収縮率は焼結状態によって変化するとともに、取付孔の内周面に形成される凹部が上述のような凹凸面のときには内周面は無研磨の焼結肌のままとされるため、焼結後の工具本体における取付孔の内径寸法にはある程度の誤差が発生することが避けられない。ところが、その一方で、上述のように連結部材の取付部を塑性変形させて拡径する際の取付孔内周面とのクリアランスは、これが大きすぎると拡径した取付部の外周面が取付孔の内周面に十分に密着せずに必要な接合強度が得られなくなり、逆にクリアランスが小さすぎると工具本体に過大な引張り応力が作用して割れを生じてしまう。
【0008】
このため、連結部材は取付部の外径が異なるものを複数種用意しておき、焼結後の工具本体における取付孔の内径寸法を1つ1つ、外径の異なるピンゲージを順に取付孔に挿入することによって測定し、最適なクリアランスとなる外径の取付部を有する連結部材を選択して工具本体と接合するようにしなければならない。従って、複数種のピンゲージが必要となるのは勿論のこと、ピンゲージでの測定結果に対応した連結部材を複数種の連結部材の中から間違いなく選んで工具本体の取付孔に挿入しなければならず、作業が繁雑となってしまう。
【0009】
また、このように取付部が取付孔に挿入された状態で両者の間にクリアランスがあると、このクリアランスの範囲で取付部が取付孔に対して傾いたり偏心したりして挿入されてしまうおそれがある。そして、こうして取付部が傾いたり偏心したりした状態で圧入部材が圧入されて取付部が塑性変形させられると、そのままの状態で取付部外周面が取付孔内周面に密着させられて凹部と係合し、工具本体と連結部材が傾いたり偏心したりした状態で接合されてしまうおそれもある。
【0010】
本発明は、このような背景の下になされたもので、工具本体と連結部材とを接合する際の作業性の向上を図るとともに、これら工具本体と連結部材とを確実に同軸に接合することが可能なヘッド交換式切削工具の製造方法および該製造方法に用いられる連結部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明のヘッド交換式切削工具の製造方法は、硬質材料よりなる工具本体に形成された内周面に凹部を有する取付孔に、上記硬質材料よりも硬度が低い金属材料よりなる連結部材の円筒状の取付部を挿入し、この取付部のうち該取付部がなす円筒の中心線方向の一部を拡径部として拡径するように塑性変形させ、該拡径部の外周面を上記取付孔の内周面と密着させて上記凹部と係合させることにより、これら工具本体と連結部材とを接合するヘッド交換式切削工具の製造方法において、上記連結部材の取付部のうち上記拡径部を除いた残りの部分に、該拡径部よりも大径で上記取付孔の内周面に摺接可能な外径を有する段部を形成し、この段部を摺接させて上記取付部を上記取付孔に挿入した上で、上記拡径部を塑性変形させることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の連結部材は、このようなヘッド交換式切削工具の製造方法に用いられる連結部材であって、円筒状の取付部を有し、この取付部がなす円筒の中心線方向における一部を拡径部として、この拡径部を除いた残りの部分に、該拡径部よりも大径で上記工具本体の取付孔に摺接可能な外径の段部が形成されていることを特徴とする。
【0013】
このようなヘッド交換式切削工具の製造方法および該製造方法に用いられる連結部材においては、この連結部材の取付部の塑性変形させられて拡径する拡径部を除いた残りの部分、すなわち塑性変形させられない部分に、上記拡径部より大径でヘッド交換式切削工具の工具本体とされる切削ヘッドやホルダの取付孔に摺接可能な段部が形成されており、この段部の外径が異なり、かつ拡径部との外径の差は一定とされた複数種の連結部材を用意しておくことにより、ピンゲージ等を要することなく連結部材自体を使用して工具本体の取付孔の内径を確認することができる。
【0014】
すなわち、段部との外径の差が、取付孔との所定のクリアランスに等しくなるように拡径部の外径を設定しておき、上記複数種の連結部材を例えば外径の小さな順に取付孔に挿入していって、段部が取付孔に引っ掛かって挿入できなくなったときには、その1つ前の連結部材の取付部の外径が取付孔とのクリアランスが最適なものと判断することができる。そこで、この1つ前の連結部材を取付孔に挿入し直して、取付部の内周部に圧入部材を圧入することなどにより拡径部を塑性変形させて拡径すれば、工具本体に割れなどを生じることなく十分な強度で確実に連結部材を接合することが可能となる。
【0015】
また、この段部の外周面と塑性変形させられる拡径部の外周面、および円筒状の取付部の内周部とを同軸に形成しておけば、段部が取付孔に摺接させられることによって取付部が取付孔とも同軸に位置決めされる。従って、取付孔に外周面が密着して凹部に係合させられる上記取付部の拡径部が傾いたり偏心したりすることもなく、全周に亙って満遍なく均等に取付部を取付孔に接合することができる。
【0016】
ここで、取付部において上記段部を塑性変形させずに拡径部のみを拡径させるには、一つに、段部を取付部の取付孔への挿入方向における前方側に形成し、この段部を摺接させて取付部を取付孔に挿入した上で、上記拡径部における取付部の内径よりも大きな外径の圧入部材を上記挿入方向に向けて取付部の内周に圧入して段部の手前で止めるようにすればよい。
【0017】
この場合には、圧入部材が段部の手前で止められるので、取付孔と摺接した段部が拡径して工具本体に割れを生じるようなことはない。また、段部が取付部の挿入方向先端側に形成されているので、段部の外径が取付孔内径より大きな連結部材は初めから段部が引っ掛かって取付部を取付孔に挿入することができず、最適なクリアランスの確認を速やかに行うことができる。
【0018】
また、他の一つとして、上記段部を取付部の取付孔への挿入方向後方側に形成するとともに、この段部における取付部の内径を上記拡径部における該取付部の内径よりも大きくし、段部を摺接させて取付部を取付孔に挿入した上で、上記拡径部における取付部の内径よりも大きな外径で段部における取付部の内径よりは小さな外径の圧入部材を上記挿入方向に向けて取付部の内周に圧入することにより、上記拡径部を塑性変形させるようにしてもよい。
【0019】
この場合にも、段部の位置における取付部の内径が、取付部の上記拡径部を塑性変形させる圧入部材の外径より大きくされているので、この段部が塑性変形して拡径することはない。また、段部が取付孔の上記挿入方向後方側すなわち開口部側で該取付孔と摺接して取付部が位置決めされ、この開口部側から圧入部材が圧入されて上記拡径部が拡径させられるので、取付部の傾き等を一層確実に防ぐことができる。
【0020】
なお、上記工具本体は、先端部に切刃部が形成されるとともに後端部に上記取付孔が形成されたヘッド交換式切削工具の切削ヘッドのヘッド本体であってもよく、また、先端部に上記取付孔が形成されるとともに後端部がシャンク部とされるヘッド交換式切削工具のホルダのホルダ本体であってもよい。勿論、これら切削ヘッドとホルダの双方が上記製造方法によって製造され、また上記連結部材が接合されたものであってもよい。
【0021】
ただし、これら切削ヘッドとホルダの連結部材を雌雄ねじ部の螺合によって連結する場合には、工具本体が切削ヘッドのヘッド本体のときにはホルダ本体と比べて短いため、連結部材の取付部に工具本体との必要な接合長さを確保しつつ雌ねじ部を形成するのは困難となる。従って、切削ヘッドのヘッド本体に接合される連結部材には、上記取付部よりも後端側に雄ねじ部が形成されるのが望ましく、逆にホルダのホルダ本体に接合される連結部材の内周面には、拡径部が塑性変形させられた後に雌ねじ部が形成されるのが、この雌ねじ部とホルダ本体との同軸性を確保することができて、望ましい。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、工具本体の取付孔に最適なクリアランスで挿入されて拡径させられる取付部を有する連結部材を、ピンゲージ等を用いることなく、連結部材自体を挿入する操作で判断することができ、連結部材の選択作業が容易となって作業効率の向上を図ることができる。また、取付部を取付孔に確実に同軸に位置決めして拡径させることができるので、製造後のヘッド交換式切削工具における連結部材の接合強度や取付安定性も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1、第2の実施形態により製造されるヘッド交換式切削工具である切削ヘッドの側面図である。
【図2】図1に示す実施形態の工具本体であるヘッド本体の側断面図である。
【図3】本発明の連結部材の第1の実施形態を示す(a)側面図、(b)側断面図である。
【図4】図3に示した第1の実施形態の連結部材を用いた本発明のヘッド交換式切削工具の製造方法の第1の実施形態を説明する(a)取付部を挿入した状態の側断面図、(b)連結部材を工具本体に接合した状態を示す側断面図である。
【図5】本発明の連結部材の第2の実施形態を示す(a)側面図、(b)側断面図である。
【図6】図5に示した第2の実施形態の連結部材を用いた本発明のヘッド交換式切削工具の製造方法の第2の実施形態を説明する(a)取付部を挿入した状態の側断面図、(b)連結部材を工具本体に接合した状態を示す側断面図である。
【図7】本発明の第3、第4の実施形態の工具本体であるホルダ本体の側断面図である。
【図8】本発明の連結部材の第3の実施形態を示す側面図である。
【図9】図8に示した第3の実施形態の連結部材を用いた本発明のヘッド交換式切削工具の製造方法の第3の実施形態を説明する(a)取付部を挿入した状態の側断面図、(b)連結部材を工具本体に接合した状態を示す側断面図、(c)取付孔に雌ねじ部を形成した状態を示す側断面図である。
【図10】本発明の連結部材の第4の実施形態を示す側面図である。
【図11】図10に示した第4の実施形態の連結部材を用いた本発明のヘッド交換式切削工具の製造方法の第4の実施形態を説明する(a)取付部を挿入した状態の側断面図、(b)連結部材を工具本体に接合した状態を示す側断面図、(c)取付孔に雌ねじ部を形成した状態を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1ないし図4は、本発明の第1の実施形態を示すものであり、この第1の実施形態と後述する第2の実施形態とは、本発明をヘッド交換式切削工具の切削ヘッドの製造方法に適用したものである。この切削ヘッドは、超硬合金やサーメット、セラミックス等の硬質材料により一体形成された本実施形態における工具本体としてのヘッド本体1と、このヘッド本体1を形成する上記硬質材料よりも硬度が低いステンレス鋼やダイス鋼等の鋼材のような塑性変形可能な金属材料よりなる連結部材2とから構成されている。
【0025】
ヘッド本体1は、図1および図2に示すように先端側(図1〜図11において共通して左側)から後端側(図1〜図11において共通して右側)に向けて順に、切刃が形成される刃部1Aと、切削ヘッドの交換の際にレンチ等が係合させられる係合部1Bと、これら刃部1Aおよび係合部1Bよりも外径が一段小さく、しかもこの外径が後端側に向かうに従い漸次小さくなるようにされた、ヘッド本体1の中心線Oを中心とする円錐台状のテーパ軸部1Cとから構成されている。ただし、刃部1Aにおいて切刃は図示が省略され、さらに図2および図4では係合部1Bも図示が略されている。なお、このテーパ軸部1Cの外周面が中心線Oに対してなす傾斜角度は1°〜20°の範囲内とされるのが望ましく、より望ましくは1°〜5°の範囲内、さらに望ましくは1°〜3°の範囲内とされて、本実施形態では2°とされている。
【0026】
また、テーパ軸部1Cの後端面から先端側に向けては、断面が一定の径の円形をなす取付孔1Dが、図2に示すように上記中心線Oと同軸となるように、該中心線O方向において刃部1Aと係合部1Bとの境界のあたりまで形成されている。この取付孔1Dの内周面は研磨等を施されることなく、ヘッド本体1を形成する上記超硬合金等の粉末焼結材料を焼結したときの焼結肌のままとされていて、例えばJIS B 0601:2001(ISO 4287:1997)に規定された最大高さ粗さRzで5μm〜200μmの範囲内の表面粗さ(ただし、基準長さ0.8mm、カットオフ値λs=0.0025mm、λc=0.8mm)の凹凸面とされ、この内周面自体が取付孔1Dの凹部とされている。
【0027】
連結部材2は、図3(a)に示すように先端側に中心線Cを中心とした略円筒状の取付部2Aが形成されるとともに後端側にはこの取付部2Aよりも大径の雄ねじ部2Bが同軸に形成されたものであり、円筒状の取付部2Aの内周部は図3(b)に示すようにこの雄ねじ部2Bをも貫通して連結部材2の後端面に開口させられている。ただし、この連結部材2の内周部は、上記取付部2Aの部分では内径が小径とされた小径部2Cとされるとともに、雄ねじ部2Bの部分においてはこれより一段拡径した大径部2Dとされている。なお、この雄ねじ部2Bの捩れの向きは、当該ヘッド交換式切削工具がエンドミル等の転削工具の場合には、切削加工の際の回転方向に対して反対向きとされる。
【0028】
そして、取付部2Aにおいては、その中心線C方向における一部が塑性変形させられて拡径する拡径部3とされる一方、この拡径部3を除いた残りの部分に、該拡径部3の外径よりも僅かに大径で、ヘッド本体1の上記取付孔1Dの内周面に摺接可能な外径を有する段部4が形成されている。ここで、本第1の実施形態では、この段部4は、取付部2Aを取付孔1Dに挿入する際の挿入方向側であるその先端部に形成されている。また、拡径部3から段部4に亙って取付部2A全長で小径部2Cの内径は一定とされている。
【0029】
従って、段部4の外径は取付孔1Dの内径と略等しく、嵌め合い公差の範囲で僅かに小さい程度とされる。一方、この段部4を除いた上記拡径部3の外径は、この拡径部3が段部4と略等しい外径となるように塑性変形させられて拡径することにより、その外周面が取付孔1Dの内周面に密着したときに、該外周面が上記凹部(凹凸面)と係合して連結部材2が確実にヘッド本体1に接合され、かつヘッド本体1には過大な引張り応力が作用しないように、取付部2Aを取付孔1Dに挿入した際に拡径部3の外周面と取付孔1Dの内周面との間に、直径において例えば0.1mm〜0.5mmの範囲内の最適なクリアランスが形成されるように設定されている。
【0030】
次に、このような連結部材2を用いた本発明のヘッド交換式切削工具(切削ヘッド)の製造方法の第1の実施形態について説明すると、まずヘッド本体1の取付孔1Dの設計上の内径に対して、段部3の外径が、この設計上の内径の取付孔1Dに摺接可能なものと、これとは僅かの差ずつ大小に異なるものとの複数種の上記構成の連結部材2を用意する。ここで、これらの連結部材2では、いずれも拡径部3の外径が上述のように取付孔1Dの内周面との間に最適なクリアランスが形成されるように設定されるので、取付孔1Dの内径と略等しい外径とされた段部4に対するこの拡径部3の外径の差は、複数種の連結部材2同士で互いに等しくされている。
【0031】
そして、これらの連結部材2の取付部2Aを段部4の外径の小さいものから順に取付孔1Dに挿入してゆき、段部4が取付孔1Dの開口部に引っ掛かって取付部2Aを取付孔1Dに挿入できなくなったとき、その1つ前の連結部材2が、上述のような最適なクリアランスが取付孔1Dの内周面と拡径部3の外周面との間に形成されるものと判断することができる。なお、段部4の外径の大きい連結部材2から順に取付部2Aを取付孔1Dに挿入していってもよいが、その場合には上記最適なクリアランスのものが挿入されるまで、連結部材2の段部4が取付孔1Dの開口部に引っ掛かり続けてしまうため、この開口部に欠けを生じたりするおそれがあるので上述のように外径の小さいものから挿入してゆくのが望ましい。
【0032】
こうして最適なクリアランスが形成される連結部材2が決定したなら、図4(a)に示すように取付部2Aを取付孔1Dに挿入して雄ねじ部2Bをヘッド本体1のテーパ軸部1C後端面に当接させる。このとき、段部4は取付孔1Dに摺接可能な大きさとされているので、連結部材2はその中心線Cがヘッド本体1の中心線Oと同軸となるように位置決めされる。なお、こうして取付部2Aを挿入した状態で、段部4は同図4(a)に示すように中心線O方向においてヘッド本体1の大径の係合部1Bの位置に、取付孔1Dの底面と間隔をあけて配置される。
【0033】
しかる後、図示されない圧入部材(パンチ)を後端側から連結部材2の内周部に圧入して拡径部3を塑性変形させて拡径させる。この圧入部材は、その先端部が砲弾状とされるとともに、この先端部に続く圧入部で最大外径となり、その後は後端側に向かうに従い外径が僅かに縮径されるテーパ状とされた軸状のものであり、この圧入部における最大外径は、連結部材2内周部の上記小径部2Cの内径よりも例えば直径で0.2mm〜1.0mm大きく、大径部2Dの内径よりは僅かに小さくされている。
【0034】
従って、このような圧入部材を連結部材2の小径部2Cに圧入すると、上記圧入部によって取付部2Aの拡径部3が塑性変形させられて外周側に拡径させられ、これによって拡径部3の外周面が取付孔1Dの内周面に密着し、さらにこの内周面に形成された凹部(凹凸面)に倣うように拡径部3の外周面が変形して凹部に喰い込み、図4(b)に示すように連結部材2が切削ヘッド1に接合される。また、このとき拡径部3はヘッド本体1の先端側に向けても塑性変形し、これに伴い取付部2Aの先端は取付孔1Dの孔底側に僅かに押し出される。
【0035】
ただし、こうして圧入部材によって取付部2Aを拡径させる際に、取付孔1Dの内径と略等しい外径とされて該取付孔1Dに摺接可能とされた段部4は拡径しないように、この段部4が取付部2Aの先端部に形成された第1の本実施形態の連結部材2を用いた製造方法では、圧入部材を、その圧入部がこの段部4に達する手前で圧入を止める。従って、この第1の実施形態の製造方法により製造されたヘッド交換式切削工具(切削ヘッド)では、図4(b)に示すように連結部材2の段部4と拡径した拡径部3との間に、圧入部が段部4の手前で止められることによって拡径部3が拡径しきれなかったことによる凹所5が形成される。
【0036】
このように連結部材2がヘッド本体1に接合されて製造された切削ヘッドは、例えば後述する第3、第4の実施形態により製造されるヘッド交換式切削工具としてのホルダに、連結部材2の上記雄ねじ部2Bがねじ込まれることによって取り付けられ、硬質材料によりなる工具本体としてのヘッド本体1の刃部1Aに形成された切刃によって被削材を切削してゆく。また、こうして雄ねじ部2Bが形成される連結部材2は、ヘッド本体1よりは低硬度で靱性の高い金属材料によって形成されているので、ねじ山に欠けが生じたりすることはない。
【0037】
そして、上記構成の連結部材2および該連結部材2を用いた製造方法では、この連結部材2自体をピンゲージ等の代わりとして直接ヘッド本体1の取付孔1Dの内径を確認することができるので、ヘッド本体1が上述のような硬質の粉末焼結材料によって形成されていて、焼結状態によって取付孔1Dの内径に誤差が生じ易い場合であっても、この内径に対して最適なクリアランスを形成する拡径部3を有する連結部材2を確実に選択することができる。
【0038】
このため、ピンゲージ等を必要とすることが無くなって管理が容易となるのは勿論、上述のような複数種の連結部材2において、その拡径部3および段部4の外径の大きさ順に取付部2Aを取付孔1Dに挿入してゆくようにすることで最適な連結部材2を選択することができ、ピンゲージ等による測定結果に対応した外径の拡径部を有する連結部材を選択するのと比べて、選択作業が容易になって作業効率の向上を図ることができるとともに、連結部材2の選択間違いが生じたりするのも防ぐことができる。
【0039】
また、連結部材2の取付部2Aにおける段部4は、切削ヘッド1の取付孔1Dに摺接可能な外径とされているので、この段部4と取付部2Aの拡径部3とを同軸に形成しておけば、取付部2Aを挿入するだけで取付孔1Dに対してもこの拡径部3を同軸に位置決めすることができる。従って、これら取付孔1Dと拡径部3との間に、その全周に亙って上記最適なクリアランスを均一に形成することができ、拡径部3を塑性変形させて拡径した際にも取付部2Aを取付孔1Dに全周に亙って満遍なく均等に接合することができるので、製造された切削ヘッドにおける連結部材2の接合強度やホルダへの取付安定性も向上させることができる。
【0040】
さらに、本実施形態では、この段部4が、取付部2Aの取付孔1Dへの挿入方向側である該取付部2Aの先端部に形成されており、従って上述のようにこの段部4の外径が異なる複数種の連結部材2の取付部2Aを順に取付孔1Dに挿入してゆく際に、取付部2Aを取付孔1Dに挿入しきらないでも、この先端部の段部4が取付孔1Dの開口部に引っ掛かったところで、段部4および拡径部3の外径が最適なクリアランスを形成する外径より大きいことが確認できるので、連結部材2の選択作業を一層効率化することができる。
【0041】
また、こうして取付部2Aの先端部に段部4が形成されていても、第1の実施形態の製造方法では、この段部4の手前で圧入部材の圧入部が止められるようにされており、段部4までが拡径してヘッド本体1に過大な引張り応力が作用してしまうようなこともない。さらに、本実施形態では、取付孔1Dがヘッド本体1において外径の大きな係合部1Bにまで穿設されていて、接合時に取付部2Aを取付孔1Dに挿入したときにはこの係合部1Bの位置に段部4が配設されるので、圧入部材の圧入部が万一この段部4にまで達しても、ヘッド本体1に作用する引張り応力をこの大径の係合部1Bで受け止めて割れなどが生じるのを防ぐことができる。
【0042】
ただし、このように段部4を取付部2Aの挿入方向側の先端部に形成するのに代えて、図5および図6に示す本発明の第2の実施形態の連結部材2および該連結部材2を用いたヘッド交換式切削工具(切削ヘッド)の製造方法の第2の実施形態のように、段部4を取付部2Aの取付孔1Dへの挿入方向後方側の後端部に形成するようにしてもよい。なお、この第2の実施形態において、第1の実施形態と共通する部分には同一の符号を配して説明を簡略化する。
【0043】
この第2の実施形態では、図5(a)に示すように連結部材2において段部4が雄ねじ部2Bの先端側に連続するように形成されており、この段部4よりも先端側の取付部2Aは先端までが全て拡径部3とされている。また、連結部材2の内周部は、図5(b)に示すようにこの拡径部3までが圧入部材の圧入部外径より小径とされた小径部2Cとされ、中心線C方向において段部4と雄ねじ部2Bの内周部は、この圧入部材の圧入部外径より僅かに大径とされた大径部2Dとされている。
【0044】
このような第2の実施形態においても、拡径部3と段部4の外径が異なる複数種の連結部材2を用意しておいて、例えば外径の小さいものから順にその取付部2Aをヘッド本体1の取付孔1Dに挿入してゆき、段部4が取付孔1Dの開口部に引っ掛かった連結部材2の1つ前の連結部材2が、取付孔1Dとの間に最適なクリアランスを形成するものと判断することができる。従って、第1の実施形態と同様にピンゲージ等を用いることなく、効率的に最適なクリアランス形成する連結部材2を選択することができる。
【0045】
そして、図6(a)に示すようにこの連結部材2の取付部2Aを取付孔1Dに挿入して圧入部材を後端側から連結部材2の内周部に挿入すると、大径部2Dが段部4にまで延びているのでこの段部4は拡径することはなく、圧入部が小径部2Cに達したところで拡径部3が塑性変形して拡径し、図6(b)に示すようにその外周面が取付孔1Dの内周面に密着して凹部と係合する。従って、やはり第1の実施形態と同様にヘッド本体1に過大な引張り応力が作用して割れが生じるのを避けることができる。
【0046】
また、この第2の実施形態では、こうして段部4が取付部2Aの後端部に形成されているので、第1の実施形態のように段部4の手前で圧入部が止まるように圧入部材の圧入を制御したりする必要がない。しかも、このように段部4が取付部2Aの後端部に形成されることによって取付孔1Dとはその開口部側で摺接することになり、この段部4の摺接によって位置決めされた取付部2Aの後端側から圧入部材が圧入されて拡径部3が拡径させられるので、この第2の実施形態においては拡径部3を取付孔1Dに対して同軸に維持したまま拡径させ易く、取付部2Aの傾き等を一層確実に防いで拡径部3をより均等に取付孔1Dに接合することが可能となる。
【0047】
次に、図7ないし図9は本発明の第3の実施形態を示すものであり、また図7、図10および図11は本発明の第4の実施形態を示すものであって、これら第3、第4の実施形態は、本発明をヘッド交換式切削工具のホルダの製造方法に適用したものである。このホルダは、超硬合金やサーメット、セラミックス等の硬質材料により一体形成された本実施形態における工具本体としてのホルダ本体11と、このホルダ本体11を形成する上記硬質材料よりも硬度が低いステンレス鋼やダイス鋼等の鋼材のような塑性変形可能な金属材料よりなる連結部材12とから構成されている。
【0048】
これら第3、第4の実施形態において、ホルダ本体11は共通して、図7に示すように中心線Xを中心とした外形略多段円柱軸状をなし、後端側の大部分は大径のシャンク部11Aとされるとともに先端側はこのシャンク部11Aより僅かに小径とされたネック部11Bとされている。また、ホルダ本体11の先端面からは後端側に向けて順に、面取り部11Cと、後端側に向かうに従い漸次縮径するテーパ孔部11Dと、このテーパ孔部11Dの後端と同径の一定内径とされた収容孔部11Eと、この収容孔部11Eより僅かに小径の一定内径とされた取付孔11Fと、この取付孔11Fよりさらに小径とされてホルダ本体11の後端面にまで貫通する貫通孔部11Gとが、上記中心線Xと同軸となるように形成されている。
【0049】
このうち、上記テーパ孔部11Dは、例えば第1、第2の実施形態により製造されるヘッド交換式切削工具としての切削ヘッドのヘッド本体1におけるテーパ軸部1Cがテーパ嵌合可能とされたものであって、その内周面が上記中心線Xに対してなすテーパ角はヘッド本体1のテーパ軸部1Cの外周面がその中心線Oに対してなすテーパ角と等しくされるとともに、その内径は、このテーパ軸部1Cの外周面をテーパ孔部11Dの内周面に密着させて後述するように切削ヘッドをホルダに取り付けた状態で、ヘッド本体1の係合部1Bの後端面がホルダ本体11の先端面と当接するように設定されている。
【0050】
また、取付孔11Fの内周面は、第1、第2の実施形態の取付孔1Dの内周面と同様に研磨等を施されることなく、ホルダ本体11を形成する上記超硬合金等の粉末焼結材料を焼結したときの焼結肌のままとされていて、例えばJIS B 0601:2001(ISO 4287:1997)に規定された最大高さ粗さRzで5μm〜200μmの表面粗さ(ただし、基準長さ0.8mm、カットオフ値λs=0.0025mm、λc=0.8mm)の凹凸面とされ、この内周面自体が取付孔11Fの凹部とされている。
【0051】
このようなホルダ本体11に取り付けられる連結部材12は、これら第3、第4の実施形態では図8および図10に示されるような中心線Cを中心とした略多段円筒状をなす連結部材12の素材13がホルダ本体11の先端側から取付孔11Fに挿入されて該ホルダ本体11に接合された上で、その内周部に図9(c)および図11(c)に示されるように雌ねじ部12Aが形成されたものである。
【0052】
この連結部材12の素材13は、第3、第4の実施形態に共通して図8および図10に示すように、先端部が上記収容孔部11Eの内径より小径で取付孔11Fの内径より大径の外径を有するとともに中心線C方向の長さが収容孔部11Eの中心線X方向の深さよりも小さくされた鍔部13Aとされる一方、後端部は中心線C方向の長さが取付孔11Fの中心線X方向の深さよりも小さくされた取付部13Bとされている。
【0053】
そして、この取付部13Bのうち中心線X方向の一部が取付孔11Fの内径よりも小径の拡径部14とされるとともに、この拡径部14を除いた残りの部分に、該拡径部14よりも大径で取付孔11Fの内周面に摺接可能な外径を有する段部15が形成されている。なお、これら第3、第4の実施形態においても、段部15の外径は取付孔11Fの内径と略等しく、嵌め合い公差の範囲で僅かに小さい程度とされる一方、この段部15に対するこの拡径部14の外径の差は、直径において例えば0.1mm〜0.5mmの範囲内の一定の差とされる。
【0054】
このうち、図8に示す第3の実施形態の素材13では、段部15が、第1の実施形態と同様に素材13の取付孔11Fへの挿入方向前方側である取付部13Bの中心線C方向後端部に形成されていて、この段部15と鍔部13Aとの間の取付部13B部分が拡径部14とされている。また、素材13の内周部は、中心線C方向において鍔部13Aの部分が大径部13Cとされるとともに取付部13B部分全体が大径部13Cよりも小さな一定内径の小径部13Dとされている。
【0055】
一方、図10に示す第4の実施形態の素材13では、段部15は、第2の実施形態と同様に素材13の取付孔11Fへの挿入方向後方側である取付部13Bの中心線C方向先端部に鍔部13Aから連続するように形成されていて、この段部15から後端側(挿入方向前方側)の取付部13B全体が拡径部14とされている。また、この第4の実施形態の素材13の内周部は、中心線C方向において鍔部13Aから段部15までの部分が大径部13Cとされ、これよりも後端側の拡径部14部分が大径部13Cよりも小さな一定内径の小径部13Dとされている。
【0056】
このような第3、第4の実施形態の連結部材12を用いた本発明のヘッド交換式切削工具(ホルダ)の製造方法の第3、第4の実施形態でも、まずホルダ本体11の取付孔11Fの設計上の内径に対して、段部15の外径が摺接可能な寸法のものと、これとは僅かの差ずつ大小に異なる外径のものとの複数種の連結部材12の素材13を用意する。なお、これらの素材13においても、段部15に対する拡径部14の外径差は上記範囲内で互いに等しくされる。
【0057】
そして、これらの連結部材12の素材13における取付部13Bを、例えば段部15の外径の小さいものから順に取付孔11Fに挿入してゆき、段部15が取付孔11Fの開口部に引っ掛かって取付部13Bを取付孔11Fに挿入できなくなったとき、その1つ前の連結部材12の素材13が、取付孔11Fの内周面と拡径部14の外周面との間に最適なクリアランスを形成するものと判断して、図9(a)および図11(a)に示すようにこの素材13の取付部13Bを取付孔11Fに挿入するとともに鍔部13Aを収容孔部11Eの孔底に当接させて収容し、素材13の内周部に圧入部材(パンチ)を圧入する。
【0058】
この圧入部材も、第1、第2の実施形態と同様に、その先端側の圧入部が最大外径となるようにされた軸状のものであって、この最大外径は連結部材12内周部の上記小径部13Dの内径よりも例えば直径で0.2mm〜1.0mm大きく、大径部13Cの内径よりは僅かに小さくされており、このような圧入部材を圧入することによって素材13の拡径部14が拡径し、その外周面が取付孔11Fの内周面に密着して凹部と係合し、図9(b)および図11(b)に示すように素材13がホルダ本体11に接合される。
【0059】
ここで、図9に示した第3の実施形態では、第1の実施形態と同様に圧入部材の圧入部が素材13の取付部13B後端部の段部15に達する手前で止まるように圧入が制御され、これによって段部15と拡径した拡径部14との間には凹所16が形成される。一方、図11に示した第4の実施形態では、このような制御は行わずに、圧入部材が取付孔11Fの孔底に衝突しない範囲で圧入部が素材13の取付部13B後端側の拡径部14略全体を拡径させるようにすればよい。
【0060】
こうして素材13が接合された後に、図9(c)および図11(c)に示すように素材13の内周部に上記雌ねじ部12Aを形成することにより、この素材13をホルダ側の連結部材12として、第1、第2の実施形態により製造された切削ヘッドの連結部材2と雌雄ねじ部2B、12Aの螺合によって連結可能なホルダを製造することができる。なお、このように連結部材2、12の連結によって切削ヘッドがホルダに取り付けられる際には、上述のようにヘッド本体1のテーパ軸部1Cがホルダ本体11のテーパ孔部11Dに密着するとともに係合部1B後端面がホルダ本体11先端面と当接した状態とされる。
【0061】
従って、このような第3、第4の実施形態においても、第1、第2の実施形態と同様に雌ねじ部12Aは靱性の高い連結部材12に形成されるので、ねじ山に欠けが生じたりすることはない。その一方で、ホルダ本体11は高硬度で剛性の高い超硬合金等の硬質材料により形成されるため、切削ヘッドを強固に支持して安定した切削加工を促すことが可能となる。
【0062】
そして、このホルダ本体1に接合される連結部材12は、上記複数種の素材13のうちから拡径部14と取付孔11Fとのクリアランスが最適なものが、この素材13自体の取付部13Bを取付孔11Fに挿入することによって選択されてホルダ本体11に接合され、この素材13に雌ねじ部12Aを形成したものであるので、ピンゲージ等が不要となるとともに選択作業の効率化を図ることができる。また、段部15が取付孔11Fに摺接することによって拡径部14と取付孔11Fとの同軸性も確保することができて、上記クリアランスを取付孔11Fと拡径部14との間に全周に亙って均一に形成することができ、従って拡径部14を塑性変形させて拡径したときにもその外周面を均等に取付孔11Fの内周面に密着させて凹部と係合させ、安定的な接合を図ることができる。
【0063】
さらに、素材13の取付孔11Fへの挿入方向前方側である取付部13Bの後端側に段部15が形成された第3の実施形態では、第1の実施形態と同様にこの段部15から取付部13Bが取付孔11Fに挿入されるので、段部15が取付孔11Fに摺接可能か否かを速やかに確認することができる。一方、段部15が上記挿入方向の後方側である取付部13Bの先端側に形成された第4の実施形態では、第3の実施形態のように段部15の手前で圧入部が止まるように制御したりする必要がなく、しかも拡径部14と取付孔11Fとの同軸性を維持したまま拡径部14を拡径させ易くて一層均等に取付孔1Fに接合することが可能となる。
【0064】
なお、これら第1ないし第4の実施形態では、第1、第2の実施形態の連結部材2のように切削ヘッド側に雄ねじ部2Bを、また第3、第4の実施形態のようにホルダ側に雌ねじ部12Aを形成しているが、これらは逆であってもよい。ただし、通常、切削ヘッドのヘッド本体1はホルダ本体11よりも中心線O方向の長さが短く、そのようなヘッド本体1に、必要な接合長さを確保しつつ連結部材を接合した上で雌ねじ部を形成するのは困難であり、特に第1、第2の実施形態における切削ヘッドのようにヘッド本体1に形成された小径のテーパ軸部1Cに取付孔1Dが形成されている場合には、この取付孔1Dに接合される連結部材の内周部に雌ねじ部を形成するのは一層困難となるため、上記実施形態のように切削ヘッド側に雄ねじ部2Bを、従ってホルダ側に雌ねじ部12Aを形成するのが望ましい。
【0065】
さらに、こうしてホルダ側に雌ねじ部12Aを形成する場合には、上記第3、第4の実施形態の製造方法のように連結部材12の素材13において拡径部14を塑性変形させて拡径した後に、この素材13の内周部に雌ねじ部12Aを形成して連結部材12とするのが望ましい。これにより、ホルダ本体11の中心線Xを基準としてこの雌ねじ部12Aを形成することが可能となって、該雌ねじ部12Aをシャンク部11Aやテーパ孔部11Dと精度よく同軸に形成することができる。
【0066】
また、こうして形成される雌ねじ部12Aは、図9(c)や図11(c)に示したように連結部材12の素材13における拡径部14が拡径させられて取付孔11Fの内周面に密着した範囲と、中心線X方向において重なり合うようにされるのが望ましく、これにより、取付孔11Fの内周面に形成された凹部(凹凸面)と係合した連結部材12の直ぐ内周側で、切削ヘッドの雄ねじ部2Bに作用する切削力を受け止めることができる。そして、このように雌ねじ部12Aを形成するためにも、該雌ねじ部12Aは素材13における拡径部14を塑性変形させて拡径した後に形成されるのが望ましい。
【0067】
なお、上記第1、第3の実施形態では、段部4、15を取付部2A、13Bの取付孔1D、11Fへの挿入方向における前方側に形成し、また上記第2、第4の実施形態では、段部4、15を取付部2A、13Bの取付孔1D、11Fへの挿入方向における後方側に形成しているが、この段部4、15は取付部2A、13Bの中心線C方向中央部にあってもよい。この場合には、段部4、15の位置で、連結部材2や素材13の内周部を大径部2D、13Cとすればよい。また、段部4、15を例えば取付部2A、13Bの取付孔1D、11Fへの挿入方向における前方側と後方側の2箇所に設けるなど、複数箇所に形成してもよい。
【0068】
さらに、これら第1ないし第4の実施形態では、段部4、15が中心線Cを中心として取付部2A、13Bの全周に延びる環状に形成されているが、中心線Cから外周面までの半径が拡径部3、14よりも大径となる段部を、例えば周方向に等間隔をあけて3箇所あるいはそれ以上の箇所に形成して、これらの段部の外周面を摺接させて取付部2A、13Bを取付孔1D、11Fに挿入した上で、拡径部3、14を塑性変形させるようにしてもよい。
【0069】
一方、段部4、15を取付部2A、13Bの取付孔1D、11Fへの挿入方向における前方側に形成した第1、第3の実施形態では、この段部4、15の位置で連結部材2や素材13の内周部は小径部2C、13Dとして、上述のように圧入部材を挿入方向に向けて取付部2A、13Bの内周に圧入して圧入部を段部4、15の手前で止めることにより、拡径部3、14を塑性変形させるとともに段部4、15は変形しないようにしているが、こうして段部4、15が挿入方向前方側に形成された場合でも、第2、第4の実施形態のように段部4、15の位置で連結部材2や素材13の内周部を大径部2D、13Cとし、その手前で圧入部を止めずに内周部を貫通させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 ヘッド本体
1A 刃部
1B 係合部
1C テーパ軸部
1D、11F 取付孔
2、12 連結部材
2A、13B 取付部
2B 雄ねじ部
3、14 拡径部
4、15 段部
11 ホルダ本体
11A シャンク部
11D テーパ孔部
13 連結部材12の素材
C 連結部材2、12および素材13の取付部2A、13Bの中心線
O ヘッド本体1の中心線
X ホルダ本体11の中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質材料よりなる工具本体に形成された内周面に凹部を有する取付孔に、上記硬質材料よりも硬度が低い金属材料よりなる連結部材の円筒状の取付部を挿入し、この取付部のうち該取付部がなす円筒の中心線方向の一部を拡径部として拡径するように塑性変形させ、該拡径部の外周面を上記取付孔の内周面と密着させて上記凹部と係合させることにより、これら工具本体と連結部材とを接合するヘッド交換式切削工具の製造方法において、上記連結部材の取付部のうち上記拡径部を除いた残りの部分に、該拡径部よりも大径で上記取付孔の内周面に摺接可能な外径を有する段部を形成し、この段部を摺接させて上記取付部を上記取付孔に挿入した上で、上記拡径部を塑性変形させることを特徴とするヘッド交換式切削工具の製造方法。
【請求項2】
上記段部を上記取付部の上記取付孔への挿入方向における前方側に形成し、この段部を摺接させて上記取付部を上記取付孔に挿入した上で、上記拡径部における上記取付部の内径よりも大きな外径の圧入部材を上記挿入方向に向けて上記取付部の内周に圧入して上記段部の手前で止めることにより、上記拡径部を塑性変形させることを特徴とする請求項1に記載のヘッド交換式切削工具の製造方法。
【請求項3】
上記段部を上記取付部の上記取付孔への挿入方向後方側に形成するとともに、この段部における上記取付部の内径を上記拡径部における該取付部の内径よりも大きくし、上記段部を摺接させて上記取付部を上記取付孔に挿入した上で、上記拡径部における上記取付部の内径よりも大きな外径で上記段部における上記取付部の内径よりは小さな外径の圧入部材を上記挿入方向に向けて上記取付部の内周に圧入することにより、上記拡径部を塑性変形させることを特徴とする請求項1に記載のヘッド交換式切削工具の製造方法。
【請求項4】
上記工具本体は、先端部に切刃部が形成されるとともに後端部に上記取付孔が形成されたヘッド交換式切削工具の切削ヘッドのヘッド本体であり、上記連結部材には、上記取付部よりも後端側に雄ねじ部が形成されることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載のヘッド交換式切削工具の製造方法。
【請求項5】
上記工具本体は、先端部に上記取付孔が形成されるとともに後端部がシャンク部とされるヘッド交換式切削工具のホルダのホルダ本体であり、上記連結部材の内周部には、上記拡径部が塑性変形させられた後に雌ねじ部が形成されることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載のヘッド交換式切削工具の製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載のヘッド交換式切削工具の製造方法に用いられる連結部材であって、円筒状の取付部を有し、この取付部がなす円筒の中心線方向における一部を拡径部として、この拡径部を除いた残りの部分に、該拡径部よりも大径で上記工具本体の取付孔に摺接可能な外径の段部が形成されていることを特徴とする連結部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−206180(P2012−206180A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71365(P2011−71365)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】