説明

ヘッド機構、光アシスト式磁気記録装置、および光記録装置

【課題】光源と記録用ヘッドとを離隔させるとともに、光源を高精度に配置させつつ、光アシスト式磁気記録装置の薄型化を図ることができるヘッド機構、光アシスト式磁気記録装置、および光記録装置を提供する。
【解決手段】ヘッドスライダと近接してサスペンションに取り付けられ、レーザ光を出射するとともに、記録媒体上をヘッドスライダとは離隔して浮上走行するための光源部をヘッド機構が備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッド機構、光アシスト式磁気記録装置、および光記録装置に関するものであり、例えば、情報記録に磁界または光を利用するヘッド機構、それを備える光アシスト式磁気記録装置、および光記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスク装置等に使用される記録媒体において記録密度を高めるための技術開発が進められている。記録密度を向上させるためには、1ビットの記録サイズを小さくする必要がある。しかし、磁気記録方式において、記録ビットサイズを小さくすると、記録情報を保持している磁化状態が、熱エネルギーによって不安定となり、熱揺らぎによって記録情報が消えてしまうので、安定に記録することができなくなる。そのため高い保持力を有する記録媒体が必要になるが、そのような記録媒体を使用すると記録時に必要な磁界も大きくなる。また、記録ヘッドによって発生する磁界は飽和磁束密度によって上限が決まるが、この値は材料限界に近づいており飛躍的な増大は望めない。そこで、記録時に局所的に加熱して磁気軟化を生じせしめ、保持力が小さくなった状態で記録し、その後に加熱を止めて自然冷却することで記録した磁気ビットの安定性を保証する方式が提案されている。この方式は熱アシスト磁気記録方式と呼ばれている。
【0003】
この熱アシスト磁気記録方式では、記録媒体の加熱を瞬間的に行うことが望ましく、加熱する機構と記録媒体とが接触することは許されない。このため、加熱は光の吸収を利用して行われるのが一般的であり、加熱に光を用いる方式は光アシスト式と呼ばれている。そして、光アシスト式の磁気記録ヘッドとして、集光機能付きプラナー導波路を有する光学ヘッド部分と、その光学ヘッド部分からの射出光で照射された部分に磁気記録を行う磁気ヘッド部分とを備えたものが提案されている(例えば、特許文献1など)。
【0004】
また、光アシスト式によって超高密度記録を行うためには、記録媒体に照射する光のスポット径を例えば20nm程度の超微小なものにする必要がある。しなしながら、通常の光学系では回折限界の存在により光を超微小なものにまで集光することは難しい。そこで、非伝搬光であるいわゆる近接場光を用いて加熱を行う方式が提案されている(例えば、非特許文献1など)。なお、近接場光を発生させる光ヘッドおよび記録再生装置については、その他の種々の提案がなされている(例えば、特許文献2,3など)。
【0005】
【特許文献1】米国特許第6944112号明細書
【特許文献2】特開2000―149317号公報
【特許文献3】特開2000―353336号公報
【非特許文献1】シャープ技報第91号26頁―30頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1および非特許文献1で提案された技術では、光源の配置およびその光線のヘッドまでの導光方法が明らかでない。また、上記特許文献2で提案された技術では、光ヘッドに光源が搭載されているため、光源の加熱による光ヘッドの熱膨張に起因して記録精度が低下する虞があるとともに、斜め方向からの光線の導入や複雑な集光用の光学系の配置により光ヘッドの大型化を招いてしまう。
【0007】
記録装置では、狭い空間に記録ディスクや記録用ヘッドなどを配置する必要があり、記録用ヘッドの大型化は好ましくない。特に、磁気記録方式では、高密度で大量の情報を記録させる場合、狭い空間に複数枚の記録ディスクを微小距離(例えば、1mm以下)だけ相互に離隔して配置することが要求される。このような場合には、記録用ヘッドの厚みが制限される。なお、上記特許文献3で提案された技術では、光源から記録用ヘッドまで光線を導くための光学系が複雑であり、狭い空間に記録ディスクと記録用ヘッドとを配置することができない。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、光源と記録用ヘッドとを離隔させるとともに、光源を高精度に配置させつつ、光アシスト式磁気記録装置の薄型化を図ることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、記録媒体上を浮上走行して情報の記録を行うためのヘッドスライダと、前記ヘッドスライダを保持するサスペンションと、前記サスペンションを保持するアームと、前記ヘッドスライダと近接して前記サスペンションに取り付けられ、レーザ光を出射するとともに、前記ヘッドスライダに対応した形状を有することで前記記録媒体上を前記ヘッドスライダとは離隔して浮上走行するための光源部と、を備え、前記ヘッドスライダは、前記レーザ光を集光して前記記録媒体に光を照射するための集光部を有することを特徴とするヘッド機構である。
【0010】
また請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のヘッド機構であって、前記サスペンションは、前記アーム部に取り付けられた一端と、該一端側から第1および第2方向に分岐して延設される第1および第2腕部とを有し、前記第1腕部に前記光源部が取り付けられるとともに、前記第2腕部に前記ヘッドスライダが取り付けられることを特徴とする。
【0011】
また請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のヘッド機構であって、前記光源部から出射されたレーザ光が前記サスペンションの表面で反射されて前記集光部に入射されるように、前記ヘッドスライダと前記光源部とが前記サスペンションに取り付けられていることを特徴とする。
【0012】
また請求項4に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のヘッド機構であって、前記光源部から出射されたレーザ光が前記記録媒体の表面で反射されて前記集光部に入射されるように、前記ヘッドスライダと前記光源部とが前記サスペンションに取り付けられていることを特徴とする。
【0013】
また請求項5に記載の発明は、記録媒体上を浮上走行して情報の記録を行うためのヘッドスライダと、レーザ光を出射するとともに、前記ヘッドスライダに対応した形状を有することで前記記録媒体上を前記ヘッドスライダとは離隔して浮上走行するための光源部と、前記ヘッドスライダを保持する第1サスペンションと、前記光源部を保持する第2サスペンションと、前記第1および第2サスペンションを保持するアームと、を備え、前記ヘッドスライダは、前記レーザ光を集光して前記記録媒体に光を照射するための集光部を有することを特徴とするヘッド機構である。
【0014】
また請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5の何れかに記載のヘッド機構を備えるとともに、前記記録媒体に前記集光部から光を照射することにより、前記記録媒体の一部領域を加熱昇温させた状態で前記一部領域に対して情報の磁気的な記録を行うことを特徴とする光アシスト式磁気記録装置である。
【0015】
また請求項7に記載の発明は、請求項1から5の何れかに記載のヘッド機構を備えるとともに、前記記録媒体に前記集光部から光を照射することによって、前記記録媒体の一部領域に光スポットを形成させて、該光スポットによって前記一部領域に対して情報の記録を行う光記録装置である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1から7の何れに記載の発明によっても、光源部とヘッドスライダとを離隔させるとともに、ヘッドスライダに対して所望の位置に精密な角度で光を照射できるように、光源部を容易に配置することが可能となるので、光源部を高精度に配置させつつ、光アシスト式磁気記録装置の薄型化を図ることができる。
【0017】
請求項2および請求項5の何れに記載の発明によっても、光源部とヘッドスライダの配置の自由度を上げることが可能となる。
【0018】
請求項3および請求項4の何れに記載の発明によっても、レーザ光の最適な入射角度の設定が容易になる。
【0019】
請求項6および請求項7の何れに記載の発明によっても、請求項1〜5の何れかに記載の発明と同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るヘッド機構10とそれを備えた光アシスト式磁気記録装置100の概略構成例を示す図である。図1および図1以降の図には、方位関係を明確化するためにXYZの直交する3軸が適宜付されている。
【0022】
図1で示すように、光アシスト式磁気記録装置100は、光アシスト式の磁気記録用ヘッドを含むスライダ部3を搭載した磁気記録装置として構成され、例えば、ハードディスク装置などに適用される。この光アシスト式磁気記録装置100は、略直方体状の筐体1と、該筐体1内に配置された3枚の記録用ディスク(磁気記録媒体)2およびヘッド機構10とを備えている。
【0023】
記録用ディスク2は、円盤状の記録媒体であり、相互に所定の微小距離(例えば、1mm以下)だけ離隔されて盤面が略平行となるように配置される。具体的には、上方から(+Z方向から−Z方向に沿って)3枚の記録用ディスク2が空間順次に配置されており、筐体1に対して所定の回転軸およびモータによって回転可能に支持されている。
【0024】
ヘッド機構10は、3つのスライダ部3と、3本のサスペンション部4と、3本のアーム部5と、回転軸6とを備えている。
【0025】
3本のサスペンション部4は、それぞれ同様な形状を有するとともに、それぞれ可撓性を有するように薄板状で且つ長細い形状を有し、相互に略平行に配置されている。具体的には、上方から(+Z方向から−Z方向に沿って)3本のサスペンション部4が空間順次に配置されている。
【0026】
3本のアーム部5は、一端側(ここでは、−X方向の端部)において回転軸6によって相互に連結されるとともに、該回転軸6を支点として、矢符mA方向(トラッキング方向)に筐体1に対して回転可能に支持されている。各アーム部5は、それぞれ1本のサスペンション部4を保持しており、アクチュエータ8による回転軸6の回転により、各アーム部5に保持された各サスペンション部4が、回転軸6を支点として矢符mA方向に回転する。
【0027】
3つのスライダ部3は、それぞれ同様な構成を有するとともに、光アシスト式の磁気記録ヘッドを保持する。そして、1本のサスペンション部4ごとに、1つのスライダ部3が取り付けられている。具体的には、スライダ部3が、サスペンション部4のうちの回転軸6に連結されている一端側とは異なる他端側の下面に対して、記録用ディスク2の一方主面(ここでは上面)に対向するように設けられている。なお、ここでは、記録用ディスク2を矢符mB方向に回転させるモータ(不図示)が筐体1内に設けられており、スライダ部3が、記録用ディスク2上で浮上しながら相対的に移動し得るように構成されている(図2中の矢符mC方向)。
【0028】
図2は、スライダ部3の構成例を示す断面図である。図2で示すように、スライダ部3は、記録用ディスク2に対する情報記録に光を利用する記録用ヘッド(ここでは、磁気記録用ヘッド)を有する。そして、スライダ部3は、例えば、セラミック製などの基板50を用いて構成されており、基板50の内部には、記録用ディスク2の被記録部分の流入側から流出側にかけて順に(矢符mC)、光アシスト部51、磁気記録部52、および磁気再生部53が形成されている。
【0029】
光アシスト部51は、レーザ光を集光して記録用ディスク2に光を照射する集光部として機能する導波路60(図3参照)を有している。この導波部60は、記録用ディスク2の一部領域(すなわち被記録部分)を近赤外レーザ光によってスポット加熱するためのものである。なお、導波路60の構成については、後述する。
【0030】
磁気記録部52は、記録用ディスク2の被記録部分に対して磁気情報の書き込みを行う磁気記録素子によって形成されている。具体的には、記録用ディスク2に対して光アシスト部51の集光部によって光を照射することにより、記録用ディスク2の被記録部分を加熱昇温させた状態で、磁気記録部52により被記録部分に対して情報の磁気的な記録が行われる。
【0031】
磁気再生部53は、記録用ディスク2に記録されている磁気情報の読み取りを行う磁気再生素子によって形成されている。
【0032】
図3は、導波路60を有する光アシスト部51の構成例を示す図である。導波路60としては、例えば、上記特許文献1で提案されたものを適用することができる。この導波路60は、平面型導波路であり、厚みが薄く、幅が上部から下部に向かって徐々に狭まるような放物線状の内面70,72を有する。そして、導波路60の上部の側面に配設された回折格子部68(具体的には、太破線部内のレーザ照射領域)にレーザ光が照射されて、導波路60にレーザ光が導入されると、矢符64で示すようにレーザ光が内面70,72で反射して、導波路60の最下部の焦点Fにレーザ光が集光し、記録用ディスク2に向けて電磁波が発生して、記録用ディスク2の微小領域が加熱される。なお、図2では、光アシスト部51に照射されるレーザ光の光路の外縁が一点鎖線で例示されている。
【0033】
図2を参照して、スライダ部3は、例えばAlTiC(アルミナ・チタン・カーバイド)からなる基板50上に、公知の薄膜形成、フォトリソグラフィの技術で、光アシスト部51、磁気記録部52、および磁気再生部53が形成される。そして、ダイシング、イオンミリング等の加工法によって、記録用ディスク2の上方を該記録ディスク2と極微小な距離だけ離間して浮上走行可能な形状(スライダ形状)となるように切断加工される。なお、ここでは、「浮上走行」する状態とは、記録用ディスク2の回転およびその回転によって生じる気流により、スライダ部3および半導体レーザー素子7が、記録用ディスク2の盤面を基準として所定距離だけ離れた位置まで浮き上がった状態で、該記録用ディスク2の盤面に対して相対的に移動する状態のことを示している。
【0034】
以下、ヘッド機構10の構成について、更に詳述する。
【0035】
<ヘッド機構>
図4および図5は、本発明の第1実施形態に係るヘッド機構10の構成例を示す模式図である。図4は、ヘッド機構10およびその周辺の構成を上方(+Z側)から見た模式図であり、図4では、サスペンション部4に対する半導体レーザ素子7およびスライダ部3の配置関係が破線で示されている。また、図5は、ヘッド機構10およびその周辺の構成を側方(+Y側)から見た断面模式図である。なお、図4および図5では、レーザ光が通過する光路が示されている。
【0036】
アーム部5は、サスペンション部4と比較して、厚みが厚く且つ剛性が高い素材で構成され、サスペンション部4は、可撓性を有する素材で構成されており、アーム部5とサスペンション部4の延設方向は略同一となっている。そして、アーム部5の一端(−X側の端部)が回転軸6に固設され、アーム部5の他端(+X側の端部)の下面(−Z側の面)にサスペンション部4の一端の上面(+Z側の面)が連結されている。
【0037】
また、スライダ部3は、サスペンション部4のうちのアーム部5に対して連結されている一端とは逆の他端近傍の下面に対して、バネ部材からなる懸架部9を介して取り付けられている。
【0038】
光源部である半導体レーザ素子7は、サスペンション部4の下面に対してバネ部材からなる懸架部11を介し、所定の最適な位置にスライダ部3と近接して取り付けられている。つまり、1本のサスペンション部4に対して、スライダ部3と半導体レーザ素子7とが所定距離だけ離隔して取り付けられている。ここで言う所定距離としては、例えば、半導体レーザ素子7の発光点を1μm、スライダ部3の受光領域(例えば、図3の太破線部で示したレーザ照射領域)を50μmとした場合には、100μm程度の距離に設定されれば好適である。
【0039】
また、半導体レーザ素子7は、レーザ光を出射する光源部として機能し、ヘッドスライダに対応した形状を有する。このため、半導体レーザ素子7は、記録用ディスク2の回転により、記録用ディスク2上をスライダ部3とは離隔した状態で、同時期に浮上走行する。そして、半導体レーザ素子7から出射されるレーザ光は、スライダ部3に対して集光するように照射される。
【0040】
また、半導体レーザ素子7を構成する素材としては、例えば、GaAs、AlGaAs、InGaAs、AlGaInP、InAlGaN、InGaN、GaN、GaInNAs、GaNAsP、AlGaNAsなどの公知の素材のうちの何れかを用いれば良い。そして、例えば、ウエハ上に発光に必要な層を適宜積層させ、所望の位置を切断することで端面から発光するように半導体レーザ素子7を形成すれば良い。
【0041】
更に、半導体レーザ素子7の形状は、半導体レーザ素子7とスライダ部3の重量および密度が同等である場合には、スライダ部3に対応させて、該スライダ部3と略同一の形状とされる。なお、レーザ素子7の形状をスライダ部3の形状に対応したものとするためには、例えば、スライダ部3と同様に、ダイシング、イオンミリング等の加工法によって、記録用ディスク2の上方を該記録ディスク2と極微小な距離だけ離間して浮上走行可能な形状(スライダ形状)に切断加工されれば良い。
【0042】
以上のように、本発明の第1実施形態に係る光アシスト式磁気記録装置100では、スライダ部3と半導体レーザ素子7とが同一のサスペンション部4に近接して取り付けられている。このため、半導体レーザ素子7とスライダ部3とを離隔させるとともに、スライダ部3に対して所望の位置に精密な角度で光を照射できるように、半導体レーザ素子7を容易かつ簡単な構成で配置することが可能となる。したがって、光源である半導体レーザ素子7を高精度に配置させつつ、光アシスト式磁気記録装置の薄型化を図ることができる。
【0043】
<第2実施形態>
上記第1実施形態に係る光アシスト式磁気記録装置100では、1本のサスペンション部4に対し、該サスペンション部4の延設方向に沿って、スライダ部3と半導体レーザ素子7とが所定距離だけ離隔して取り付けられていたが、第2実施形態に係る光アシスト式磁気記録装置では、サスペンション部4の形状、ならびにスライダ部3および半導体レーザ素子7の配置および形態が変更されたものとなっている。なお、この相違点の他は、第1実施形態に係る光アシスト式磁気記録装置100と同様な構成を有するため、以下では、相違する点について主に説明し、同様な部分については同じ符号を付して適宜説明を省略する。
【0044】
図6は、本発明の第2実施形態に係るヘッド機構10Aおよびその周辺の構成を上方(+Z方向)から見た模式図であり、図6では、半導体レーザ素子7Aおよびスライダ部3Aのサスペンション部4Aに対する配置関係が破線で示されている。
【0045】
図6で示すように、サスペンション部4Aが、分岐したものとなっている。具体的には、サスペンション部4Aは、一端がアーム部5に取り付けられ、該一端から+X方向に所定距離だけ延設される部分と、XY平面上でX軸から所定角度ずつ傾いた第1方向および第2方向に分岐して延設される第1腕部4Aaおよび第2腕部4Abとを有して構成される。なお、ここで言う所定角度は、第1腕部4Aaの先端部と第2腕部4Abの先端部とが離れすぎない所定距離となるように設定される。なお、ここで言う所定距離としては、例えば、上記第1実施形態で述べたように、100μm程度の距離と設定されれば好適である。
【0046】
半導体レーザ素子7Aとスライダ部3Aとは、第1実施形態に係る半導体レーザ素子7とスライダ部3と同様な構成を有するが、半導体レーザ素子7およびスライダ部3と比較して、半導体レーザ素子7Aにおけるレーザ光の出射方向、ならびにスライダ部3Aにおける導波路の取付位置が異なっている。
【0047】
そして、半導体レーザ素子7Aとスライダ部3Aとが、分岐したサスペンション部4Aの各先端近傍に取り付けられている。具体的には、第1腕部4Aaの先端近傍の裏面(−Z側の面)に半導体レーザ素子7Aが取り付けられ、第2腕部4Abの先端近傍の裏面(−Z側の面)にスライダ部3Aが取り付けられている。より具体的には、半導体レーザ素子7Aおよびスライダ部3Aは、近接した第1腕部4Aaおよび第2腕部4Abの各先端近傍にそれぞれ取り付けられている。つまり、第1腕部4Aaおよび第2腕部4Abに対して、半導体レーザ素子7Aおよびスライダ部3Aが所定距離だけ離隔して取り付けられている。
【0048】
以上のように、第2実施形態に係るヘッド機構10Aを採用した場合であっても、上記第1実施形態と同様に、半導体レーザ素子7Aからスライダ部3Aの所望の位置に対してレーザ光を照射することができるとともに、光アシスト式磁気記録装置の薄型化を図ることができる。また、半導体レーザ素子とヘッドスライダの配置の範囲の自由度を上げることが可能となる。
【0049】
<変形例>
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は上記説明した内容のものに限定されるものではない。本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【0050】
◎上記第1および第2実施形態に係る光アシスト式磁気記録装置では、半導体レーザ素子7,7Aから射出されるレーザ光が、スライダ部3,3Aに対して直接入光されたが、これに限られない。例えば、半導体レーザ素子7,7Aから射出されるレーザ光を一旦他の部材において反射させて、スライダ部3B,3Cに一定の角度で入光させても構わない。
【0051】
例えば、第1実施形態に係る光アシスト式磁気記録装置1については、サスペンション部4または記録用ディスク2にレーザ光を反射させる態様が考えられる。また、第2実施形態に係る光アシスト式磁気記録装置については、記録用ディスク2にレーザ光を反射させる態様が考えられる。このような構成を採用すれば、レーザ光の最適な入射角度の設定が容易になる。
【0052】
このような構成について、以下、ヘッド機構の具体例(具体的には、具体例1,2)を示して説明する。
【0053】
○具体例1:
図7は、具体例1に係るヘッド機構10Bの構成例を示す模式図であり、ヘッド機構10Bおよびその周辺の構成を側方(+Y方向)から見た断面模式図である。
【0054】
図7で示すように、半導体レーザ素子7Bとスライダ部3Bとが、所定距離だけ離隔配置され、サスペンション部4に対して所定角度を成すように取り付けられている。そして、記録用ディスク2が回転して、半導体レーザ素子7Bとスライダ部3Bとが記録用ディスク2の上方で浮上走行した状態で、半導体レーザ素子7Bから出射されるレーザ光は、サスペンション部4の表面で反射した後にスライダ部3Bに入光するように設定されている。
【0055】
○具体例2:
図8は、具体例2に係るヘッド機構10Cの構成例を示す模式図であり、ヘッド機構10Cおよびその周辺の構成を側方(+Y方向)から見た断面模式図である。
【0056】
図8で示すように、半導体レーザ素子7Cとスライダ部3Cとが、所定距離だけ離隔配置され、サスペンション部4に対して所定角度を成すように取り付けられている。そして、記録用ディスク2が回転して、半導体レーザ素子7Cとスライダ部3Cとが記録用ディスク2の上方で浮上走行した状態で、半導体レーザ素子7Cから出射されるレーザ光は、記録用ディスク2の表面で反射した後にスライダ部3Cに入光するように設定されている。
【0057】
なお、上述した具体例1,2に係るヘッド機構10B,Cを採用した場合であっても、レーザ光のスライダ部3B,3Cへの入射角度が、所定の角度(例えば45°)となるように、半導体レーザ素子7B,7Cおよびスライダ部3B,3Cの導波路に配設された回折格子部の配置が調節される。
【0058】
◎また、上記第2実施形態では、1本のアーム部5に分岐したサスペンション部4Aを連結したが、これに限られない。例えば、1本のアーム部5に2本のサスペンション部を連結して、一方のサスペンション部にスライダ部を取り付けるとともに、他方のサスペンション部に半導体レーザを取り付けても良い。このような構成であっても、第2実施形態と同様な効果が得られる。また、アーム部を2本設けて、一方のアーム部にサスペンション部とスライダ部とを設け、他方のアーム部にサスペンション部と半導体レーザとを設けることによっても、同様の効果が得られる。
【0059】
◎また、上記実施形態では、点発光を行う半導体レーザ素子7,7A〜7Cが用いられたが、これに限られず、いわゆるフォトニック結晶レーザなどの異なる半導体レーザ素子からなる光源を適用しても良い。このフォトニック結晶レーザでは、光束の外縁が略平行な光(光束の断面が略一定の光)が射出される。このため、スライダ部および半導体レーザ素子の間隔を任意の距離に容易に設定できる。
【0060】
◎なお、上記実施形態では、半導体レーザ素子から射出されるレーザ光を収束させるための光学レンズについては特に説明しなかったが、マイクロレンズを半導体レーザ素子において一体的に組み込むことも可能である。このように、光源部に対して光学レンズを一体的に形成することによって、光学レンズを別個に精度良く配設するプロセスが不要となる。したがって、光源からスライダ部への光路上において、光学系を容易かつ精度良く配置することができ、製造工程の簡略化が図られる。また、スライダ部および半導体レーザ素子の間隔を任意の距離に容易に設定できる。
【0061】
◎また、上記実施形態では、記録媒体である記録用ディスク2に対して光で熱を付与しつつ、磁気で情報を記録および再生を行ったが、これに限られない。例えば、本発明を、磁気を用いることなく、記録媒体である光ディスク上にスライダの集光部から光を照射することによって、光ディスクの一部領域に光スポットを形成させて、光スポットによって一部領域に対して情報の記録を行う光記録装置に適用してもよい。
【0062】
◎また、上記実施形態では、近赤外レーザ光によって記録媒体をスポット照射したが、近接場光を発生させて照射してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るヘッド機構とそれを備えた光アシスト式磁気記録装置100の概略構成例を示す図である。
【図2】スライダ部3の構成例を示す断面図である。
【図3】導波路60を有する光アシスト部51の構成例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係るヘッド機構10の構成例を示す模式図である。
【図5】本発明の実施形態に係るヘッド機構10の構成例を示す模式図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るヘッド機構10Aおよびその周辺の構成を上方(+Z方向)から見た模式図である。
【図7】具体例1に係るヘッド機構10Bの構成例を示す模式図である。
【図8】具体例2に係るヘッド機構10Cの構成例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0064】
1 筐体
2 記録用ディスク
3,3A,3B,3C,17,23 スライダ部
4,4A,14,24,34 サスペンション部
5,15 アーム部
7,7A,7B,7C,13 半導体レーザ素子
10,10A,10B,10C,20,30 ヘッド機構
51 光アシスト部
60 導波路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上を浮上走行して情報の記録を行うためのヘッドスライダと、
前記ヘッドスライダを保持するサスペンションと、
前記サスペンションを保持するアームと、
前記ヘッドスライダと近接して前記サスペンションに取り付けられ、レーザ光を出射するとともに、前記記録媒体上を前記ヘッドスライダとは離隔して浮上走行するための光源部と、
を備え、
前記ヘッドスライダは、前記レーザ光を集光して前記記録媒体に光を照射するための集光部を有することを特徴とするヘッド機構。
【請求項2】
請求項1に記載のヘッド機構であって、
前記サスペンションは、前記アーム部に取り付けられた一端と、該一端側から第1および第2方向に分岐して延設される第1および第2腕部とを有し、
前記第1腕部に前記光源部が取り付けられるとともに、前記第2腕部に前記ヘッドスライダが取り付けられることを特徴とするヘッド機構。
【請求項3】
請求項1に記載のヘッド機構であって、
前記光源部から出射されたレーザ光が前記サスペンションの表面で反射されて前記集光部に入射されるように、前記ヘッドスライダと前記光源部とが前記サスペンションに取り付けられていることを特徴とするヘッド機構。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のヘッド機構であって、
前記光源部から出射されたレーザ光が前記記録媒体の表面で反射されて前記集光部に入射されるように、前記ヘッドスライダと前記光源部とが前記サスペンションに取り付けられていることを特徴とするヘッド機構。
【請求項5】
記録媒体上を浮上走行して情報の記録を行うためのヘッドスライダと、
レーザ光を出射するとともに、前記記録媒体上を前記ヘッドスライダとは離隔して浮上走行するための光源部と、
前記ヘッドスライダを保持する第1サスペンションと、
前記光源部を保持する第2サスペンションと、
前記第1および第2サスペンションを保持するアームと、
を備え、
前記ヘッドスライダは、前記レーザ光を集光して前記記録媒体に光を照射するための集光部を有することを特徴とするヘッド機構。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れかに記載のヘッド機構を備えるとともに、前記記録媒体に前記集光部から光を照射することにより、前記記録媒体の一部領域を加熱昇温させた状態で前記一部領域に対して情報の磁気的な記録を行うことを特徴とする光アシスト式磁気記録装置。
【請求項7】
請求項1から5の何れかに記載のヘッド機構を備えるとともに、前記記録媒体に前記集光部から光を照射することによって、前記記録媒体の一部領域に光スポットを形成させて、該光スポットによって前記一部領域に対して情報の記録を行う光記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−277285(P2009−277285A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127007(P2008−127007)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】