説明

ヘテロ構造非ZSM−48シーディングによるZSM−48結晶の合成

SiO/Al比約150/1未満を有し、ZSM−50およびケニヤイト、並びに繊維状形態の結晶を実質的に含まない純相高活性ZSM−48結晶が開示される。本結晶は更に、特定の交差形態を有してもよい。ZSM−48およびZSM−50シード以外のヘテロ構造ゼオライトシードを用いるこれらの結晶の調製方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、新規ZSM−48結晶およびその調製方法に関する。より詳しくは、本発明は、高活性ZSM−48結晶を調製するための、および交差形態(cross morphology)ZSM−48結晶を調製するための非ZSM−48シーディングの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライト物質は、天然および合成の両物質であってもよい。ゼオライト物質は、種々のタイプの炭化水素反応に対して触媒特性を示す。あるゼオライト物質は、明確な結晶質構造を有する規則多孔質結晶質アルミノシリケートである。これは、X線回折によって決定される。この構造内には、多数のより小さな空洞がある。これは、いくつかの更により小さな通路または細孔によって相互に連結されてもよい。これらの空洞および細孔は、特定のゼオライト物質内で、サイズが均一である傾向がある。これらの細孔の寸法は、ある寸法の吸着分子を受入れ、一方より大きな寸法のものを排除するようなものであることから、これらの物質は、「モレキュラーシーブ」として知られるようになった。これは、種々の方法で用いられて、これらの特性が利用される。
【0003】
ゼオライトは、典型的には、均一な細孔直径約3オングストローム〜約10オングストロームを有する。ゼオライトの化学組成は、幅広く異なることができる。それらは、典型的には、SiOからなり、その際シリカ原子のいくつかは、四価原子(TiまたはGeなど)、三価イオン(Al、B、Ga、Feなど)、または二価イオン(Beなど)によって、もしくは前記イオンの任意の組合せにもよって置換されてもよい。二価または三価イオンによって置換される場合には、Na、K、Ca、NH、またはHなどのカチオンがまた、存在する。
【0004】
ゼオライトには、幅広い種類の陽イオン含有結晶質アルミノシリケートが含まれる。これらのアルミノシリケートは、SiOおよびAlOの強固な三次元骨格として記載されることができる。その際、四面体は、(全アルミニウムおよびケイ素原子)/(酸素原子)比が1:2で、酸素原子を共有することによって架橋される。アルミニウムを含む四面体のイオン原子価は、カチオン(例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属カチオン、または第四アンモニウムカチオンなどの有機種)が結晶中に包含されることによってバランスが取られる。これは、アルミニウム/種々のカチオン数(Ca/2、Sr/2、Na、K、またはLi)の比率が、1に等しいと表されることができる。カチオンの一タイプは、従来方式のイオン交換技術を用いて、別タイプのカチオンによって、完全にかまたは部分的にかのいずれかで交換されてもよい。これらのカチオン交換によって、カチオンを適切に選択することによって所定のアルミノシリケートの特性を変化させることが可能であった。四面体間の空間は、通常、脱水の前には水の分子によって占められる。
【0005】
先行技術により、様々な種類の合成アルミノシリケートが形成された。これらのアルミノシリケートは、文字または他の好都合な記号によって表されるようになった。これは、若干の例を挙げれば、ゼオライトA(特許文献1)、ゼオライトX(特許文献2)、ゼオライトY(特許文献3)、ゼオライトZK−5(特許文献4)、ゼオライトZK−4(特許文献5)、ゼオライトZSM−5(特許文献6)、ゼオライトZSM−11(特許文献7)、およびゼオライトZSM−12(特許文献8)によって示される。
【0006】
所定のゼオライトのSiO/Al比は、しばしば変動する。例えば、ゼオライトXは、SiO/Al比約2〜約3、ゼオライトYは約3〜約6で合成されることができる。いくつかのゼオライトにおいては、SiO/Al比の上限は、限定されない。ZSM−5は、SiO/Al比が少なくとも5である例の一つである。特許文献9には、アルミニウムを実質的に含まず、かつZSM−5タイプのアルミノシリケートに特有のX線回折パターンを示す結晶質金属オルガノシリケートが開示される。特許文献10、特許文献11および特許文献12には、アルミナおよび金属含有量が異なる微細孔結晶質シリカまたはオルガノシリケートが記載される。
【0007】
特許文献13(ロールマン(Rollmann)ら)には、炭素4〜12個を有するジアミンを指向剤として用いて、シリコ−結晶ZSM−48を合成するための方法が記載される。組成物は、シリコ−結晶と記載され、あるとしても非常に少ないアルミニウムを含む。
【0008】
特許文献14および特許文献15(チュ(Chu))にはまた、あるとしても非常に少ないアルミニウムを含むシリコ−結晶ZSM−48を合成するための方法が記載される。合成には、炭素2〜12個を有するアミンおよびテトラメチルアンモニウム化合物の混合物が、指向剤として用いられる。
【0009】
特許文献16(デグナン(Degnan)ら)には、有機線状ジ第四アンモニウム化合物をテンプレートとして用いて調製されたシリコ−結晶ZSM−48が記載される。結晶形態は、特許文献16の図3および4に示され、高シリカ/アルミナ比では小板状結晶形態を有するものとして、およびシリカ/アルミナ比200未満では小さな不規則形状の結晶の凝集体として記載される。特許文献16においては、これは、図1においてロールマン(Rollmann)ら(特許文献13)、および図2においてチュ(Chu)(特許文献14)の結晶形態と比較される。図1および2には、棒状または針状の結晶形態が示される。これは、ランダムであり、分散される。
【0010】
ZSM−48はまた、非特許文献1によって記載される。有機物は、ジクワット−6、ビス(N−メチルピリジル)エチリニウム、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,4,8,11−テトラ−アザ−ウンデカン、1,5,9,13−テトラ−アザ−ウンデカン、1,5,8,12−テトラ−アザ−ウンデカン、1,3−ジアミノプロパン、n−プロピルアミン/TMA、ヘキサン−ジアミン、およびトリエチルアミンとして記載される。
【0011】
特許文献17(ケネディ(Kennedy)ら)には、シリカ供給源、三価金属酸化物供給源、アルカリ金属酸化物、エチレンジアミン、および水からなる反応混合物を結晶化することによって、ZSM−48を作製するための方法が記載される。
【0012】
ZSM−48は、幅広い範囲のSiO/Al比で合成された。これは、一般に、約150/1〜約600/1の範囲である。より低いSiO/Al比を有する高活性非繊維状ZSM−48結晶の合成は、選択的オレフィン異性化触媒、近線状オレフィン触媒、および潤滑油脱ロウ触媒の開発に望ましい。
【0013】
しかし、一般に、SiO/Al比150/1未満で純相ZSM−48を成長させる先行の試みは、殆どの場合不成功であった。これは、不純物(ZSM−50、ケニヤイト(Kenyaite)など)を形成する。
【0014】
いくつかのゼオライトの結晶化は、シードの存在下のみで進行することが知られる。シード結晶を結晶化系に添加することにより、典型的には、結晶化速度が増大された。他の場合においては、シードの添加により、顕著に、結晶化ゼオライトのタイプが決定され、得られるゼオライトの組成が影響を及ぼされ、プロセスの動力学が変化される。また、純相ZSM−50およびZSM−23結晶は、ZSM−5、シリカライト、X、Y、およびモルデナイトを含むヘテロ構造シードを添加することによる熱水反応から合成されることができると知られる。これは、特許文献18、特許文献19および特許文献20に記載される。
【0015】
【特許文献1】米国特許第2,882,243号明細書
【特許文献2】米国特許第2,882,244号明細書
【特許文献3】米国特許第3,130,007号明細書
【特許文献4】米国特許第3,247,195号明細書
【特許文献5】米国特許第3,314,752号明細書
【特許文献6】米国特許第3,702,886号明細書
【特許文献7】米国特許第3,709,979号明細書
【特許文献8】米国特許第3,832,449号明細書
【特許文献9】米国特許第3,941,871号明細書
【特許文献10】米国特許第4,061,724号明細書
【特許文献11】米国特許第4,073,865号明細書
【特許文献12】米国特許第4,104,294号明細書
【特許文献13】米国特許第4,423,021号明細書
【特許文献14】米国特許第4,397,827号明細書
【特許文献15】米国特許第4,448,675号明細書
【特許文献16】米国特許第5,075,269号明細書
【特許文献17】米国特許第5,961,951号明細書
【特許文献18】欧州特許出願公開第0 999 182A1号明細書
【特許文献19】米国特許第6,342,200B1号明細書
【特許文献20】米国特許第6,475,464号明細書
【非特許文献1】R.ショスタク(Szostak)著「モレキュラーシーブハンドブック」(Van Nostrand Rheinhold、New York、第551〜553頁、1992年)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、先行技術の上述した問題のいくつかを克服する。それは、繊維状形態の結晶およびいかなる他の不純物をも実質的に含まない純相高活性ZSM−48結晶を作製するための方法を提供する。本発明の一態様は、交差形態ZSM−48結晶、およびその作製方法を提供する。
【0017】
本発明は、純相高活性ZSM−48およびその調製方法に関する。本生成物は、シリカなどの四価元素供給源、三価金属酸化物、アルカリ金属酸化物、テンプレート(または指向剤)、並びにZSM−48およびZSM−50シード以外のヘテロ構造ゼオライトシードを、水を含む溶剤相中に含む反応混合物から調製することができる。前記混合物は、酸化物のモル比として表して、下記の組成:
XO/Y:20/1〜2500/1
OH/XO:0.1/1〜2.0/1
R/XO:0.001/1〜5.0/1
/XO:0/1〜2.0/1
O/XO:1/1〜500/1
(式中、Yは、三価金属であり、Mはアルカリ金属であり、Xは四価元素であり、Rは有機テンプレートである)
を有する。
【0018】
反応混合物が調製され、多孔質ZSM−48の結晶化に効果的な条件下で保持される。
【0019】
本方法は、ZSM−48およびZSM−50以外のヘテロ構造ゼオライトシードを、水熱反応で用いる。適切なシードの例には、ヘテロ構造ゼオライトZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ベータ、X、およびYゼオライト、並びにコロイド状BEAシードが含まれる。
【0020】
予期せずして、ヘテロ構造シードを反応で用いることにより、より多くのアルミニウムをZSM−48結晶の骨格構造中に組込むことが促進されることが見出された。それはまた、不純物および繊維状形態の結晶の形成を抑制する。得られる生成物は、SiO/Al比150/1未満、好ましくは約70/1未満、より好ましくは約50/1未満を有する高純度ZSM−48結晶を示す。生成物は、従来の方法を用いて調製される生成物中に典型的に見出されるZSM−50および/またはケニヤイト不純物などの不純物を実質的に含まない。それはまた、いかなる繊維状形態の結晶(他の先行技術の問題)も実質的に含まない。また、非ZSM−48シードがコロイド状BEAシードである場合には、本発明のZSM−48結晶は、交差形態を有することが見出された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
調製方法には、水性媒体中で、次のものを混合する工程が含まれる。即ち、アルカリまたはアルカリ土類金属M(好ましくはナトリウム)の供給源、少なくとも一種の四価元素X(好ましくはケイ素およびゲルマニウムから選択される)の少なくとも一種の供給源、少なくとも一種の三価元素Y(好ましくは、アルミニウム、ガリウム、ホウ素、鉄、チタン、バナジウムおよびジルコニウムから選択される)の少なくとも一種の供給源、少なくとも一種のテンプレート物質R(窒素含有有機化合物から選択される)、およびヘテロ構造非ZSM−48ゼオライトシードである。適切なシードの例は、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ベータ、XおよびYゼオライト、並びにコロイド状BEAである。種々の成分の有効量が添加されて、次のモル組成を有する反応混合物が形成される。
【0022】
【表1】

【0023】
シードは、反応混合物の全量を基準として、約0.01重量ppm〜約5重量%、好ましくは約0.01重量ppm〜約2重量%、より好ましくは約0.05重量ppm〜約1重量%の量で用いられてもよい。コロイド状BEAシードを用いる場合には、特に、それらを約0.01重量ppm〜約0.1重量%の範囲の量で用いることが好ましい。
【0024】
適切なテンプレート物質の例には、線状ジアミンアルカンなどの有機線状窒素化合物(その内、1,6ジアミノヘキサンおよび1,8ジアミノオクタンは、典型的な例である)、および線状ジ第四アルキルアンモニウム化合物(その内、ヘキサメトニウム塩は例である)が含まれる。
【0025】
反応混合物は、好ましい温度約212°F(100℃)〜約482°F(250℃)に加熱される。より好ましくは約302°F(150℃)〜約338°F(170℃)である。反応圧力は、好ましくは約1気圧〜約15気圧を保持される。より好ましくは約3気圧〜約8気圧である。加熱は、オートクレーブ、もしくはスタティックまたはロッキングボンベ反応器などのいかなる従来の槽(連続またはバッチタイプ)をも用いて行われることができる。好ましくは、混合物は、加熱工程中、従来の撹拌手段により撹拌される。十分な混合エネルギーが、用いられて、反応混合物の種々の成分が効果的に混合され、巨視的に均質な混合物が形成されてもよい。混合物は、ZSM−48結晶が形成されるまで、効果的な結晶化条件下で保持される。結晶化時間は、多数の要因に従って、数分〜多数時間で変動してもよい。典型的には約20〜約500時間、より典型的には約40〜約240時間、または反応が終わり、ゼオライト結晶が形成されるまでの時間である。
【0026】
生成物は、適切な従来のろ過手段を用いてろ過され、脱イオン水(DI)で洗浄される。続く運転には、乾燥、焼成、およびイオン交換が含まれてもよい。生成物のXRD分析では、いかなる不純物も実質的に含まない純相ZSM−48形態が示される。生成物の走査電子顕微鏡分析では、それが、平均結晶サイズ約0.01〜約1.0μm、より好ましくは約0.01〜約0.05μmを有する小結晶の凝集体からなることが示される。重要なことには、SEM分析では、生成物が検知不可レベルの繊維状形態の結晶を有することが示される。本方法は、更に、生成物結晶をその水素型に転化する工程を含んでもよい。例えば、これは、結晶を、好ましくは室温で硝酸アンモニウム溶液と接触させる工程、続いて乾燥および焼成工程によってなされることができる。乾燥および焼成工程には、従来の手段により、従来の温度まで加熱する工程が含まれる。好ましくは、本発明の生成物ZSM−48結晶は、典型的には約150/1未満、好ましくは約30〜150、より好ましくは約40〜90のXO/Yモル比を有する。特に、XがSiであり、YがAlであることが好ましい。
【0027】
本発明の一実施形態は、純相高活性ZSM−48結晶を作製するための方法に関する。本方法は、水、塩化ヘキサメトニウム、ultrasil PM、アルミン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム溶液、並びに非ZSM−48および非ZSM−50結晶シードの有効量を混合する工程を含む。種々の成分の有効量は、容易に当業者によって決定されて、所望の組成を有する混合物が形成されることができる。
【0028】
シードは、調製中のいかなる時点で導入されてもよい。それらは、ケイ素およびアルミニウム供給源、またはテンプレートと同時に導入されてもよい。それらはまた、最初に水性混合物中に導入されるか、またはそれらは、ケイ素およびアルミニウム供給源および/またはテンプレートの導入後に導入されてもよい。好ましくは、シードは、アルミニウムおよびケイ素供給源、並びにテンプレートを含む水性混合物を、少なくとも部分的に均質化した後に、添加されてもよい。
【0029】
シード粒子のサイズは、合成プロセスに影響を及ぼす場合がある。用語「シード粒子」とは、シード結晶、またはシード結晶の凝集体のいずれかを意味する。従って、ゼオライト物質の調製中に導入されるシード粒子の少なくとも主要部分のサイズは、約0.01〜約5.0の範囲、好ましくは約0.02〜約1.0μmの範囲にある。
【0030】
適切なケイ素供給源は、ゼオライト合成の場合に考えられる標準的な使用におけるいかなるものであってもよい。例えば、固体粉末シリカ、ケイ酸、コロイド状シリカ、または溶解シリカである。用いられることができる粉末シリカには、沈殿シリカ、特にはローヌ・プーラン社(Rhone−Poulenc)により製造される「Zeosil」または「Tixosil」などのアルカリ金属シリケート溶液からの沈殿によって得られるもの、デグッサ社(Degussa)により製造される「Aerosil」およびキャボット社(Cabot)により製造される「Cabosil」などのフュームドシリカ、並びにシリカゲルが含まれる。種々の粒度分析を有するコロイド状シリカが用いられることができる。登録商標「LUDOX」(デュポン社(Dupont))、および「SYTON」(モンサント社(Monsanto))で販売されるものなどである。
【0031】
用いられることができる適切な溶解シリカは、商業的に入手可能な可溶性ガラスまたはナトリウムシリケート(アルカリ金属酸化物1モル当たり、0.5〜6.0モル、好ましくは2.0〜4.0モルのSiOを含む)、およびシリケート(シリカを、水酸化アルカリ金属、ジ第四水酸化物、水酸化アンモニウム、ハロゲン化アンモニウム、またはそれらの混合物中に溶解することによって得られる)である。
【0032】
適切なアルミニウム供給源には、アルミン酸ナトリウム、アルミニウム塩(例えば塩化アルミニウム塩、硝酸アルミニウム塩、または硫酸アルミニウム塩)、アルミニウムアルコラート、または好ましくは水和または水和可能型のアルミナが含まれる。コロイド状アルミナ、プソイドベーマイト、ベーマイト、ガンマアルミナ、または三水和物などである。上に挙げられた供給源の混合物、同様にケイ素およびアルミニウムの組合せ供給源(非晶質シリカ−アルミナまたはある種のクレイなど)が用いられてもよい。
【0033】
本発明のZSM−48結晶は、脱ロウ、オレフィン異性化、または近線状オレフィン触媒系を含む多くの触媒用途で用いられることができる。その使用は、高活性、およびその小さな非繊維状の結晶形態の理由から好都合である。
【0034】
次の実施例は、本発明の方法および結晶を更に例証するために提供される。これは、本発明の範囲(添付される請求項に詳細に叙述される)を限定するものとして解されるべきではない。
【実施例】
【0035】
実施例1:ZSM−12でシーディングするZSM−48の調製
混合物を、水1100g、塩化ヘキサメトニウム(56%溶液)テンプレート32g、Ultrasil PM 225.5g、アルミン酸ナトリウム溶液(45%)14.2g、および50%水酸化ナトリウム溶液45.1gから調製した。次いで、ZSM−12シード(SiO/Al〜49.2)10gを、混合物に添加した。混合物は、次のモル組成を有した。
SiO/Al=89.9
O/SiO=18.75
OH/SiO=0.178
Na/SiO=0.178
テンプレート/SiO=0.019
【0036】
混合物を、2リットルオートクレーブ中で、320゜F(160℃)で、250RPMで攪拌しながら48時間反応させた。生成物を、ろ過し、脱イオン(DI)水で洗浄し、250゜F(120℃)で乾燥した。合成されたままの物質のX線回折(XRD)パターンは、純相ZSM−48形態を示す。合成されたままの物質の走査電子顕微鏡(SEM)は、試料が、小結晶(平均結晶サイズ約0.05μmを有する)および針状形態を有する微量の結晶の凝集体からなったことを示す。合成されたままの結晶を、室温で硝酸アンモニウム溶液を用いて二個のイオンを交換し、続いて250゜F(120℃)で乾燥し、1000゜F(540℃)で6時間焼成することによって、水素型に転換した。得られたZSM−48結晶は、SiO/Alモル比78/1を有した。
【0037】
実施例2:ZSM−11でシーディングするZSM−48の調製
混合物を、水1000g、塩化ヘキサメトニウム(56%溶液)テンプレート25g、Ultrasil PM 190g、アルミン酸ナトリウム溶液(45%)10g、および50%水酸化ナトリウム溶液33.33gから調製した。次いで、ZSM−11シード(SiO/Al〜27/1)10gを、混合物に添加した。混合物は、次のモル組成を有した。
SiO/Al=106
O/SiO=20.08
OH/SiO=0.165
Na/SiO=0.165
テンプレート/SiO=0.018
【0038】
混合物を、2リットルオートクレーブ中で、320゜F(160℃)で、250RPMで攪拌しながら48時間反応させた。生成物を、ろ過し、脱イオン(DI)水で洗浄し、250゜F(120℃)で乾燥した。合成されたままの物質のXRDパターンは、純相ZSM−48形態を示す。合成されたままの物質のSEMは、物質が、小結晶(平均結晶サイズ約0.05μmを有する)の凝集体からなったことを示す。合成されたままの結晶を、室温で硝酸アンモニウム溶液を用いて二個のイオンを交換し、続いて250゜F(120℃)で乾燥し、1000゜F(540℃)で6時間焼成することによって、水素型に転換した。得られたZSM−48結晶は、SiO/Alモル比78.8を有した。
【0039】
実施例3:ベータ結晶でシーディングするZSM−48の調製
混合物を、水1000g、塩化ヘキサメトニウム(56%溶液)テンプレート25g、Ultrasil PM(デグッサ社(Degussa)から製造された沈殿シリカ粉末)190g、アルミン酸ナトリウム溶液(45%)10g、および50%水酸化ナトリウム溶液33.33gから調製した。次いで、ベータシード(SiO/Al〜35/1)10gを、混合物に添加した。混合物は、次のモル組成を有した。
SiO/Al=106
O/SiO=20.8
OH/SiO=0.165
Na/SiO=0.165
テンプレート/SiO=0.018
【0040】
混合物を、2リットルオートクレーブ中で、320゜F(160℃)で、250RPMで攪拌しながら48時間反応させた。生成物を、ろ過し、脱イオン(DI)水で洗浄し、250゜F(120℃)で乾燥した。合成されたままの物質のXRDパターンは、ZSM−48形態の純相を示す。合成されたままの物質のSEMは、物質が、小結晶(平均結晶サイズ約0.05μmを有する)の凝集体からなったことを示す。合成されたままの結晶を、室温で硝酸アンモニウム溶液を用いて二個のイオンを交換し、続いて250゜F(120℃)で乾燥し、1000゜F(540℃)で6時間焼成することによって、水素型に転換した。得られたZSM−48結晶は、SiO/Alモル比87.2を有した。
【0041】
実施例4:ベータ結晶でシーディングするZSM−48の調製
混合物を、水11000g、塩化ヘキサメトニウム(56%溶液)テンプレート320g、Ultrasil PM 2255g、アルミン酸ナトリウム溶液(45%)126g、および50%水酸化ナトリウム溶液421gから調製した。ベータシード(SiO/Al〜35/1)100gを、次いで混合物に添加した。混合物は、次のモル組成を有した。
SiO/Al=100.4
O/SiO=18.73
OH/SiO=0.175
Na/SiO=0.175
テンプレート/SiO=0.019
【0042】
混合物を、5ガロンオートクレーブ中で、320゜F(160℃)で、250RPMで攪拌しながら28時間反応させた。生成物を、ろ過し、脱イオン(DI)水で洗浄し、250゜F(120℃)で乾燥した。合成されたままの物質のXRDパターンは、純相ZSM−48形態を示す。合成されたままの物質のSEMは、物質が、小結晶(平均結晶サイズ約0.05μmを有する)の凝集体からなったことを示す。合成されたままの結晶を、室温で硝酸アンモニウム溶液を用いて二個のイオンを交換し、続いて250゜F(120℃)で乾燥し、1000゜F(540℃)で6時間焼成することによって、水素型に転換した。得られたZSM−48結晶は、SiO/Alモル比81.32を有した
【0043】
実施例5:ベータシードからのZSM−48の調製
混合物を、水1200g、塩化ヘキサメトニウム(56%溶液)テンプレート40g、Ultrasil PM 228g、アルミン酸ナトリウム溶液(45%)16g、98%HSO溶液1.3g、および50%水酸化ナトリウム溶液40gから調製した。ベータシード(SiO/Al〜35/1)10gを、次いで混合物に添加した。混合物は、次のモル組成を有した。
SiO/Al=81
O/SiO=20
OH/SiO=0.172
Na/SiO=0.165
テンプレート/SiO=0.022
【0044】
混合物を、2リットルオートクレーブ中で、320゜F(160℃)で、250RPMで攪拌しながら72時間反応させた。生成物を、ろ過し、脱イオン(DI)水で洗浄し、250゜F(120℃)で乾燥した。合成されたままの物質のXRDパターンは、典型的な純相ZSM−48形態を示す。合成されたままの物質のSEMは、物質が、混合針状および小不規則結晶の凝集体からなって成形されたことを示す。合成されたままの結晶を、室温で硝酸アンモニウム溶液を用いて二個のイオンを交換し、続いて250゜F(120℃)で乾燥し、1000゜F(540℃)で6時間焼成することによって、水素型に転換した。得られたZSM−48結晶は、SiO/Alモル比67.7を有した。
【0045】
実施例6(比較例):ベータシードを添加しないZSM−48の調製
実施例5と同じ反応体および手順を、用いた。但し、ベータ結晶をシーディング剤として全く添加しなかった。合成されたままの物質のXRDパターンは、典型的なZSM−48形態、および微量のZSM−50不純物が確認されたことを示す。
【0046】
上記の実施例は、(SiO/Al<150/1)を有する純相高活性ZSM−48結晶が、水熱反応において、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ベータゼオライトなどのヘテロ構造非ZSM−48シード結晶を添加することによって調製されることができたことを示す。これらの添加されたシーディング結晶は、結晶化プロセスの動力学を変え、所望のZSM−48構造の結晶化を促進し、一方ZSM−50などの不純物の形成を抑制すると考えられる。また、繊維状形態を有する結晶の実質的検知不能量が、合成された生成物中に観察された。結晶形態は、SiO/Al比に基づいて変動した。比率約70/1〜約150/1を有する結晶については、小不規則形状の結晶の凝集体が観察された。SiO/Al比70未満では、混合針状および小不規則形状の結晶の凝集体が製造された。
【0047】
実施例7:交差形態ZSM−48結晶の調製
コロイド状BEAスラリーを、水酸化テトラエチルアンモニウム(40%溶液)210.8g、Al(NO9HO 13.88g、およびシリカ酸(水10.2%)68.66gを組み合わせることによって調製した。混合物を、10分間沸騰させ、次いで70℃で37日間加熱した。生成物を、水で、最終洗浄水のpH 11.2まで洗浄した。洗浄後、結晶を、脱ミネラル水中に再分散し、そのまま貯蔵した。シードとして使用する前に、スラリーを、新規に水で希釈した。
【0048】
交差形態を有するZSM−48結晶を、三種の異なる運転で、コロイド状BEAシードの非常に小さな異なるシーディングレベルを用いて調製した。合成混合物の組成は、次のようであった。
0.71NaO/3R/10SiO/376H
[但し、テンプレートRは、1,6ジアミノヘキサンである]
異なるシーディングレベル、および用いられた合成時間は、次の表に示されるように、異なるサイズの結晶をもたらした。比較の目的で、BEAシーディングをしない運転を行い、これを表に含めた。
【0049】
【表2】

【0050】
図4および5は、ZSM−48結晶の交差形態を示す。
【0051】
実施例8:交差形態ZSM−48結晶の調製
交差形態を有するZSM−48結晶の三種の異なるバッチを、NaOH 10.51g、Al(SO18HO 2.26g、Ludox AS−40(40%SiO/水)252.27g、1,8ジアミノオクタンテンプレート76.75g、およびHO 358.8gから調製された混合物を用いて調製した。次いで、実施例7で調製されたコロイド状BEAスラリーを、新規に水で希釈し、実施例7におけると同量で添加した。約5分間の混合後、ゲルを、オートクレーブ中で、室温から150℃まで2時間で加熱し、次いでその温度で20時間保持した。室温に冷却した後、生成物を、水で、洗浄水がpH約9.5を有するまで洗浄した。洗浄された生成物を、次いで、120℃で乾燥した。XRDは、優れた結晶性を示した。また、結晶サイズは、用いられたコロイド状シードの量に従って、実施例7におけるように異なった。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態に従って調製されたZSM−48のX線回折パターンである。
【図2】SiO/Al比約70/1〜約150/1を有するZSM−48生成物のSEMである。生成物は、小さな不規則形状の結晶の凝集体である。
【図3】SiO/Al比<70/1を有するZSM−48生成物のSEMである。生成物は、混合針状および小結晶の凝集体である。
【図4】本発明の実施形態に従って調製された交差形態ZSM−48結晶のSEMである。
【図5】図4に示される交差形態ZSM−48結晶について、大倍率で示されたSEMである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
XO/Y比150/1未満を有し、ZSM−50およびケニヤイト不純物を実質的に含まず、直径1μm未満を有し、繊維状形態を実質的に含まないことを特徴とする純相高活性ZSM−48結晶。
【請求項2】
XO/Y比40/1〜150/1を有することを特徴とする請求項1に記載の純相高活性ZSM−48結晶。
【請求項3】
Xは、SiおよびGeからなる群から選択される少なくとも一種であり、Yは、Al、Ga、B、Fe、Ti、VおよびFrからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の純相高活性ZSM−48結晶。
【請求項4】
XはSiであり、YはAlであることを特徴とする請求項1に記載の純相高活性ZSM−48。
【請求項5】
ZSM−48結晶の製造方法であって、
ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、コロイド状BEA、ベータ、XおよびYゼオライトからなる群から選択されるヘテロ構造ゼオライトシード、少なくとも一種の四価元素Xの供給源、少なくとも一種の三価元素Yの供給源、アルカリまたはアルカリ土類金属Mおよび少なくとも一種の有機テンプレート物質Rの有効量を混合して、酸化物のモル比として表して下記の組成:
XO/Y 20/1〜2500/1
OH/XO 0/1〜2.0/1
O/XO 1/1〜500/1
/XO 0/1〜2.0/1
R/XO 0.001/1〜5.0/1
を有する反応混合物を形成する工程;および
前記反応混合物を、効果的な結晶化条件下で、ZSM−48結晶を形成するのに十分な時間保持する工程
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項6】
前記有機テンプレートは、有機線状ジ四級アルキルアンモニウム化合物および線状ジアミノアルカンからなる群から選択されることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
非ZSM−48シードの前記有効量は、反応混合物の全重量を基準として0.01重量ppm〜5重量%の範囲にあることを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ヘテロ構造ゼオライトシードは、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ベータ、XおよびYゼオライト並びにそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記非ZSM−48シードは、0.01重量ppm〜0.1重量%の範囲の量のコロイド状BEAシードであり、それにより前記ZSM−48結晶は、交差形態および結晶サイズ1〜15μmを有することを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項10】
純相高活性ZSM−48の調製方法であって、
(a)シリカ供給源、アルミナ供給源、アルカリ金属またはアルカリ土類金属(M)、水、有機テンプレート(R)、並びにZSM−48およびZSM−50シード以外のヘテロ構造ゼオライトシードを含む反応混合物を調製する工程であって、前記混合物は、酸化物のモル比として表して、下記の組成:
SiO/Al:30/1〜500/1
/SiO:0.02/1〜0.8/1
OH/SiO:0.02/1〜0.5/1
O/SiO:10/1〜100/1
R/SiO=0.005/1〜1.0/1
(式中、Mは、アルカリ金属であり、Rは、線状ジ四級アンモニウム化合物などの有機構造剤源である)
を有する工程;および
(b)前記混合物を、効果的な結晶化条件下で、前記ZSM−48の結晶が形成されるまで保持する工程
を含むことを特徴とする調製方法。
【請求項11】
前記混合物は、下記の組成範囲:
SiO/Al:40/1〜200/1
/SiO:0.1/1〜0.6/1
OH/SiO:0.1/1〜0.5/1
O/SiO:15/1〜60/1
R/SiO=0.01/1〜0.5/1
を有することを特徴とする請求項10に記載の調製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−526870(P2007−526870A)
【公表日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501800(P2007−501800)
【出願日】平成17年2月11日(2005.2.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/004383
【国際公開番号】WO2005/092792
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】