説明

ヘパリン結合活性を有する新規な抗微生物ペプチド

本発明は、ヘパリン結合活性を有し、ラミニンアイソフォーム、補体因子C3、ヒスチジンリッチ糖タンパク質、及びキニノーゲンから成る群から選択される、実質的に抗微生物活性を含まない内在性哺乳類タンパク質に由来し、そして10〜36のアミノ酸残基を有する抗微生物ペプチドであって、ここで当該抗微生物ペプチドが、K、R、及びHから成る群から選択される少なくとも4つのアミノ酸残基から成る抗微生物ペプチドに関する。また、本発明は、上記抗微生物ペプチドを含んで成る医薬組成物、並びに当該抗微生物ペプチド及び/又は抗微生物/医薬組成物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘパリン結合活性を有し、ラミニンアイソフォーム、補体因子C3、ヒスチジンリッチ糖タンパク質、及びキニノーゲンから成る群から選択される実質的に抗微生物活性を含まない内在性哺乳類タンパク質に由来し、そして10〜36のアミノ酸残基を有する抗微生物ペプチドであって、ここで当該抗微生物ペプチドが、K、R、及びHから成る群から選択される少なくとも4つのアミノ酸残基から成る抗微生物ペプチドに関する。また、本発明は、上記抗微生物ペプチドを含んで成る医薬組成物、並びに当該抗微生物ペプチド及び/又は抗微生物/医薬組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの感染は、哺乳類、例えば、ヒトの免疫系によりうまく駆除されている。しかしながら、いくらかの感染においては、細菌、真菌、又はウイルスが必ずしも駆除されるわけでははく、それは局在化又は一般化した急性の感染の原因となりうる。これは、出生時、火傷、又は集中治療室、及び免疫無防備状態の個体において深刻な問題である。他のケースにおいて、上皮表面における連続的な細菌残留は、慢性的疾患の原因又は悪化となり得る。ヒトにおいて、これは、慢性皮膚潰瘍、アトピー性皮膚炎、及び他の種類の湿疹、アクネ、又は尿生殖器感染といった例が挙げられる。
【0003】
症候性感染は多様な医薬により治療することができる。また、いくつかの疾患は、例えば、ワクチンにより駆除することができる。しかしながら、ワクチンは常に最良の治療選択ではなく、そして、一定の微生物に対しては利用できるワクチンが存在しない。しばしば当該治療は、抗生物質の使用により行われ、これは当該微生物を殺す。しかしながら、近年、いくらかの微生物が抗生物質に対して抵抗性となってきている。おそらく抵抗性の問題は近い将来増加するであろう。更に、いくつかの個体は、抗生物質に対してアレルギーを発生し、このため一定の抗生物質を有効的に使用する可能性が減少している。
【0004】
多様な生物の上皮表面は、連続的に細菌に暴露されている。近年、抗細菌ペプチドに基づく自然免疫系が、感染に対して感受性の高い生物学的境界において細菌の初期クリアランスに重要な役割を果たしてきている(Lehrer, R. I. , and Ganz, T. (1999) Curr Opin Immunol 11 : 23-27, Boman, H. G. (2000) Immunol. Rev. 173, 5-16)。抗微生物ペプチドは、細菌の膜に浸透することにより細菌を殺し、従って特異的な分子の標的微生物の欠如は抵抗性の発生を最小化する。
【0005】
本明細書に記載されているものとは無関係のいくつかの抗微生物ペプチド及びタンパク質は、当業界において既知である。
【0006】
米国出願第6,503, 881号は、抗微生物ペプチドとして使用されるインドリシジン類事態である陽イオン性ペプチドを開示する。当該陽イオン性ペプチドは、動物及び植物を含む異なる種に由来する。
【0007】
米国出願第5,912, 230号は、抗真菌及び抗細菌ヒスタチン型ペプチドを開示する。当該ペプチドは、天然のヒトヒスタチンのアミノ酸配列の限定部分、及び真菌及び細菌感染の治療方法に基づく。
【0008】
米国出願第5,717, 064号は、メチル化リジン−リッチ溶解性ペプチドを開示する。当該溶解性ペプチドは、トリプシン分解抵抗性、且つ非天然である。当該溶解性ペプチドは生体内投与に適当である。
【0009】
米国出願第5,646, 014号は、抗微生物ペプチドを開示する。当該ペプチドはカイコ血リンパ由来の抗微生物フラクションから単離された。当該ペプチドは、いくつかの細菌種、例えば、大腸菌(Escherichia coli)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)及びセレウス菌(Bacillus cereus)に対して優れた抗微生物活性を示す。
【0010】
McCabe et al., J. Biol. Chem. Vol 277: 27477-27488, 2002 は、ヘパリン結合コンセンサスモチーフである、XBBXBX、及びXBBBXXBXを含む、37kDaの抗微生物且つ走化性タンパク質であるアズロシジンを開示する。
【0011】
WO 2004016653 は、20〜44のアズロシジンの配列に基づくペプチドを開示する。当該ペプチドは、ジスルフィド架橋により連結されるループ構造を含む。
【0012】
米国出願第6495516号及び関連特許文献は、抗細菌/透過性増大タンパク質(BPI)である、抗細菌性の55KDaのタンパク質に基づくペプチドを開示する。当該ペプチドは、抗微生物効果を発揮し、そしてヘパリン及びLPS中和能力を有する。
【0013】
WO 01/81578 は、G−カップリングタンパク質レセプター関連ポリペプチドであって、多数の疾患に使用することができるポリペプチドをコードする多数の配列を開示する。
【0014】
WO 00/27415 は、血管形成の阻害に適当なペプチドを開示する。当該ペプチドは高分子量のキニノーゲン5の類似体である。BLASTpサーチは、異なる種、例えば、このような保存領域の機能、又はこれらが小ペプチドとしていずれの機能も全く有さないキニノーゲン中に類似性を保存し又は有する配列を示す。
【0015】
現在、セクロピン、デフェンシン、マガイニン、及びカテリシジン(cathelicidins)を含む、700以上の異なる抗微生物ペプチド配列が知られている(www. bbcm. univ. trieste. it/〜tossi/search. htm)。
【0016】
今日入手可能な大量の抗微生物ペプチドが存在するが、新たに改善した抗微生物ペプチドの必要性がいまだ増加している。抗微生物ペプチドは、抗生物質及び/又は他の抗微生物剤に対して抵抗性又は耐性がある微生物を駆除するために使用することができる。更に、哺乳類、例えば、ヒトに導入した場合に非アレルギー性である、新規な抗微生物ペプチドが必要である。細菌は、有意な抵抗性の誘導を伴わない進化の間に、内在的に産出された抗微生物ペプチドに遭遇してきた。
【発明の開示】
【0017】
第一の観点に従い、本発明は、ヘパリン結合活性を有し、ラミニンアイソフォーム、補体因子C3、ヒスチジンリッチ糖タンパク質、及びキニノーゲンから成る群から選択される実質的に抗微生物活性を含まない内在性哺乳類ペプチドに由来し、そして10〜36のアミノ酸残基を有する抗微生物ペプチドであって、ここで当該抗微生物ペプチドが、K、R、及びHから成る群から選択される少なくとも4つのアミノ酸残基から成る抗微生物ペプチドに関する。
【0018】
このような抗微生物ペプチドを供することにより、当該ペプチドが内在性タンパク質及び/又はペプチドに由来するという事実により、抗微生物ペプチドに対するアレルギー反応のリスクを低下することができる。より短いペプチドを使用することにより、長いペプチドと比較して当該ペプチドの安定性を向上させることがき、そして製造コストを減少することができ、従って本発明は経済的に有利となりうる。本発明は、本出願の優先日後に公表されたAndersson et al., Eur JBiochem, 2004,271 : 1219-1226により説明されるように、非抗微生物の内在性タンパク質由来のヘパリン結合モチーフを有するペプチドが抗微生物活性を示すことの発見から生じる。多様なタンパク質中のヘパリン結合に必須の構造及びヘパリン結合モチーフの存在は、一般的によく説明されている。当該分子群は、多様なラミニンアイソフォーム、フィブロネクチン、凝固因子、成長因子、ケモカイン、ヒスチジンリッチ糖タンパク質、キニノーゲン、及び多くの他のものを含む(Andersson et al. , (2004) Eur JBio- chem 271; 271: 1219-26 及びこの関連物を参照のこと)。これらは本質的に抗微生物性ではない。
【0019】
本発明に従う抗微生物ペプチド及び対応する抗微生物/医薬組成物は、微生物の有効な予防、減少又は除去を促進するペプチドを供する。これにより、抗生物質に対して抵抗性又は耐性である微生物を駆除する能力を向上することができる。更に、商業的に入手可能な抗微生物剤に対してアレルギー性である哺乳類を治療することができる。内在性タンパク質由来の抗微生物/医薬組成物を供することにより、哺乳類がこれらの特異的なペプチドに対してアレルギーを生じる可能性を減少させることができ、又は除去することができる。これは、抗微生物/医薬組成物が哺乳類と接触するいくつかの投与に有用な抗微生物/医薬組成物を、感染を防止するための医薬又は添加剤とする。
【0020】
更に、短いペプチドの使用は、生物学的利用能を向上させる。更に、グラム陰性及びグラム陽性菌、又は真菌において特異的又は好ましい作用を有する構造的に異なるヘパリン結合抗微生物ペプチドの使用は、多様な微生物の特異的なターゲッティングを可能にし、従って、抵抗性の発生及び生態学的問題を最小化する。すでに哺乳類中に存在するペプチドを補うことにより、新規な抗生物質による追加的な生態学的圧力のリスクは更に減少される。最後に、これらの製剤はまた、内在性抗微生物ペプチドの効果を増強することができる。
【0021】
二番目の観点に従い、本発明は、上述のような1又は複数の抗微生物ペプチド、及び医薬的に受容可能なバッファー、希釈剤、担体、アジュバント、又は賦形剤を含んで成る抗微生物/医薬組成物に関する。
【0022】
三番目の観点に従い、本発明は、以下に示すように、抗微生物ペプチド及び/又は抗微生物/医薬組成物の使用に関する。
【0023】
本発明の抗微生物ペプチドは、制限することなく哺乳類、例えば、ヒトに侵入又は感染するものを含む全ての種類の適用における微生物の予防、減少、又は除去のための選択を助ける、抗微生物剤のリストを増加させる。
【0024】
発明の詳細な説明
定義
本出願及び発明の文脈において、以下の定義を適用する:
【0025】
「ヌクレオチド配列」の語は、2又は複数のヌクレオチドの配列を意味することを意図する。当該ヌクレオチドは、ゲノムDNA、cDNA、RNA、半合成若しくは合成起源又はこれらの混合物であってよい。当該語は、DNA又はRNAの一本鎖又は二本鎖形態を含む。
【0026】
「抗微生物ペプチド」の語は、約10〜約36のアミノ酸残基を含んで成り、抗微生物及びヘパリン結合活性を有し、そして本質的に抗微生物効果を有さない内在性哺乳類由来であるペプチドを意味することを意図する。「抗微生物ペプチド」は、微生物を予防し、抑制し、減少し、又は駆除する。当該抗微生物活性は、例えば、実施例2、4、又は5における方法により測定することができる。
【0027】
「ヘパリン結合アフィニティー」の語は、ヘパリンに直接的に又は間接的に結合するペプチドを意味することを意図する。当該ヘパリン結合活性は、例えば、実施例7における方法により測定することができる。ヘパリンに親和性を示す本発明の抗微生物ペプチドはまた、内在性グリコサミノグリカンであるデルマタンの表面と相互作用する。
【0028】
「両親媒性」の語は、分子のある面が主に帯電し、そして他の面が主に親水性である、α−ヘリックス構造、β−ストランド、直線、円形、又は他の二次構造の面に対する親水性及び疎水性アミノ酸残基の分布を意味することを意図する。ペプチドの両親媒性の程度は、多様なウェブ型アルゴリズムによるアミノ酸残基の配列、例えば、http://us. expasy. org/cgi-bin/protscale. pl.において見つかるものをプロッティングすることによりアッセイすることができる。疎水性残基の分布は、らせん状ホイールダイアグラムにより視覚化することができる。二次構造予測アルゴリズム、例えば、GORIVは、www. expasy. com.において見つけることができる。
【0029】
「陽イオン性」の語は、約4〜約12のpH範囲中で、正味正の帯電を有する分子を意味することを意図する。
【0030】
「微生物」の語は、いずれかの生きている微生物を意味することを意図する。微生物の例は、細菌、真菌、ウイルス、寄生虫、及び酵母である。
【0031】
「抗微生物剤」の語は、微生物を予防、抑制、又は駆除するいずれかの薬剤を意味することを意図する。抗微生物剤の例は、The Sanford Guide to Antimicrobial Therapy (32nd edition, Antimicrobial Therapy, Inc, US)において見つけることができる。
【0032】
本文脈において、アミノ酸名及び原子名は、IUPAC命名法(アミノ酸及びペプチドのためのIUPAC命名法)及びシンボル(残基名、原子名等), Eur J Biochem. , 138,9-37 (1984) together with their corrections in Eur J Biochem., 152,1 (1985)に基づき、プロテインデータバンク (PNB) (www. pdb. ors)により定義されるとおり使用される。「アミノ酸」の語はアラニン(Ala又はA)、システイン(Cys又はC)、アスパラギン酸(Asp又はD)、グルタミン酸(Glu又はE)、フェニルアラニン(Phe又はF)、グリシン(Gly又はG)、ヒスチジン(His又はH)、イソロイシン(Ile又はI)、リジン(Lys又はK)、ロイシン(Leu又はL)、メチオニン(Met又はM)、アスパラギン(Asn又はN)、プロリン(Pro又はP)、グルタミン(Gln又はQ)、アルギニン(Arg又はR)、セリン(Ser又はS)、トレオニン(Thr又はT)、バリン(Val又はV)、トリプトファン(Trp又はW)、及びチロシン(Tyr又はY)、又はこれらの誘導体から成る群由来のアミノ酸を示すことを意図する。
【0033】
説明
抗微生物ペプチド
本発明は、ヘパリン結合活性を有し、実質的に抗微生物活性を含まない内在性哺乳類タンパク質に由来し、そして10〜36のアミノ酸残基を有する抗微生物ペプチドであって、ここで当該抗微生物ペプチドがK、R、及びHから成る群から選択される少なくとも4つのアミノ酸残基から成る抗微生物ペプチドに関する。当該2つのアミノ酸残基は隣接していてもよい。
Margalit et al., 1993 JBiol Chem 268, 19228-31により報告されているように、Bアミノ酸残基間の〜20オングストロングの距離は、ペプチドの高次構造に無関係なヘパリン結合の必要条件を構成する。短いペプチドの使用は、長いペプチド又はタンパク質と比較して、例えば、向上した皮膚浸透能を介してより短いペプチドの生物利用能を向上させ、並びに当該製造及び精製コストを減少する。当該抗微生物ペプチドは、今日商業的に入手可能であり、入手可能な抗微生物剤に対して耐性及び/又は抵抗性である微生物を駆除する能力を向上させるこれらの抗微生物ペプチドの補体である。新規な抗微生物ペプチドが内在性の非抗微生物タンパク質に由来することにより、当該ペプチドが基づく哺乳類に対して非アレルギー性の新規なペプチドを同定することが可能である。
【0034】
更に、ペプチド作用の増加した知見、及び多様な塩及びイオン性環境の依存性は、ペプチドの効果を増強及び制御する特異的な組成物のデザインを可能にする。真菌における作用に切り取られたペプチドは、特異的な疾患、例えば、粘膜における酵母感染のターゲッティングにおいて、これらの部位における細菌生態学に有意に影響することなく、有利となるであろう。抗微生物ペプチドが細菌膜において作用するという事実は、これらが抗生物質と相乗的に作用できることを示唆する。このため、抗生物質とペプチドの組み合わせは治療的な有利性を有することができる。最後にまた、低コストで、かつ微生物の成長を防ぐために必要な異なる種の生成物の使用に非アレルギー性である抗微生物剤の必要性が存在する。
【0035】
更に、グラム陰性菌及びグラム陽性菌、又は真菌において特異的又は好ましくは作用を有する構造的に異なるヘパリン結合性の短い抗微生物ペプチドの使用は、多様な微生物の特異的なターゲッティングを可能し、従って抵抗性及び生態学的問題を最小化する。生物にすでに生じているペプチドを補うことにより、新規な抗生物質による追加的な生体学的圧力のリスクが更に減少される。ペプチドの効果を増強する特異的な製剤の導入は、更にペプチドの副作用のリスク、例えば、処置部外への抵抗性の導入を最小化する外来性ペプチドを局在化及び増強する。最後に、また、これらの製剤は、内在性抗微生物ペプチドの効果も増強することができる。抗微生物ペプチドがヒト中の微生物を駆除するために使用されるように開発される場合、当該内在性抗微生物ペプチドはヒト内在性タンパク質に由来する。同じものは他の動物、例えば、ウマ、乳牛、ブタ、又は家禽に適用される。抗微生物ペプチドは血漿、血液、結合組織、及び構成細胞に存在するペプチド及び/又は
タンパク質の構造に基づいてよく、そしてヘパリン結合タンパク質;ラミニンアイソフォーム、フォンウィルブランド因子、ビトロネクチン、プロテインC阻害因子、フィブロネクチン、凝固因子、成長因子、ケモカイン、ヒスチジンリッチ糖タンパク質、キニノーゲン、又は補体因子C3から成る群から選択することができる。
【0036】
本発明の抗微生物ペプチドは、約10nM〜約20μMのヘパリンに対する結合アフィニティー(Kd)を有する。
【0037】
上記ペプチドは、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、又は36のアミの酸残基のサイズを有する。当該ペプチドの長さ及び配列は、抗微生物ペプチドの起源、及びどのような微生物を駆除するか、ペプチドが微生物を防止、抑制、減少又は駆除するために使用される場合、微生物がどのような環境に存在するか、及び抗微生物ペプチドを投与後に、どのような環境において遭遇するかに基づく。
【0038】
第一の態様に従い、本発明は、キニノーゲンタンパク質又はヒスチジンリッチ糖タンパク質に基づき、少なくとも20%のアミン酸残基がHである抗微生物ペプチドに関する。当該抗微生物ペプチドは30、40、又は50%以上のH、R及び/又はKアミノ酸残基を含んで成る。具体的な実施例1、2、3、4、5、又は6において、アミノ酸残基はHである。例えば、当該抗微生物ペプチドは、配列番号1、2、3、及び4から成る群から選択することができる。これらのペプチドは、それぞれ非抗微生物タンパク質であるキニノーゲン及びヒスチジンリッチ糖タンパク質のヘパリン結合ドメインに由来し、H残基においてリッチである。
【0039】
他の態様に従い、本発明は、補体因子タンパク質に基づく抗微生物ペプチドに関する。例えば、当該抗微生物ペプチドは、配列番号5、6、及び7から成る群から選択することができる。配列番号5、6、及び7のペプチドは補体因子C3分子の明確に定義されたらせん状セグメントに由来する。Hugliら(Chazin et al. , (1988) Biochemistry 27,9139-48, Hugli, Current topics in Microbi- ology and Immunology, 1989,153, 181-208) により示されるように、C3由来のC3a分子のらせん領域は、セグメント19〜28(配列番号5により示される)、及び47〜70(配列番号6及び7により示される)により定義される。ホロタンパク質C3は、抗微生物効果を発揮しない。C3由来のペプチドセグメントのヘパリン結合及び抗微生物能は、最近開示された(Andersson et al., Eur J Biochem, 2004,271 ; 271: 1219-1226)。
【0040】
第三の態様に従い、本発明は、ラミニンタンパク質群に由来する抗微生物ペプチドに関する。例えば、当該抗微生物ペプチドは、配列番号8、9、10、11、12、13、14、15、及び16から成る群から選択することができる。ラミニンα−チェーンLG−ドメインは、ヘパリン及び他の細胞表面レセプターの結合部位として同定された(Timpl. , et al., Matrix Biol, 2000,19, 309-317)、5つの(1〜5)LG−モジュールから構成される。これらのモジュラータンパク質は、開発プロセス、例えば、創傷治癒の間に合成され、LG−モジュールのタンパク質分解性のプロセッシングがこれらの現象間に発生することが説明されている。先に開示されていないLG−モジュールのヘパリン結合エピトープの抗微生物機能は、最近説明された(Andersson et al., Eur JBiochem, 2004, 271 ; 271: 1219-1226)。
【0041】
当該ペプチドが内在性タンパク質に由来しても、これらは半合成又は合成ペプチドとして、並びに微生物中で産出することができる。
【0042】
抗微生物ペプチドは、1又は複数のアミノ酸残基、例えば、1〜100のアミノ酸残基、5〜50のアミノ酸残基、又は6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、及び30のアミノ酸残基により伸長することができる。このような追加的アミノ酸は、非抗微生物タンパク質由来の抗微生物ペプチドの配列に近接する配列を複製することができる。追加すべき数は、当該ペプチドの安定性、毒性、治療すべき哺乳類を含む、いずれの微生物が駆除されるか、またはいずれの生成物に当該ペプチドが存在すべきか、そして抗微生物ペプチドが基づくものはいずれのペプチド構造であるかに依存する。当該ペプチドに付加するアミノ酸残基の数はまた、生成物の選択、例えば、発現ベクター及び発現宿主、及び抗微生物/医薬組成物の製造の選択に依存する。当該伸長は、当該ペプチドの抗微生物効果を破壊しない限り、N−又はC−末端部、又は抗微生物ペプチドの両方の部分におけるものでよい。また、当該抗微生物ペプチドは、抗微生物ペプチドが他のペプチドと融合される、融合タンパク質でもよい。
【0043】
更に、上記抗微生物ペプチドは、他の既知の抗微生物ペプチド又は他の物質、例えば、他のペプチド、タンパク質、オリゴサッカライド、ポリサッカライド、他の有機化合物、又は無機物質と連結することができる。例えば、抗微生物ペプチドは、抗微生物ペプチドが微生物を抑制、予防、又は駆除する前に、哺乳類中で分解する抗微生物ペプチドを保護する物質とカップリングしてもよい。
【0044】
従って、上記抗微生物ペプチドは、アミド化又はエステル化によりC−末端部において、及びアシル化、アセチル化、PEG化、アルキル化等によりN−末端部において修飾されてもよい。
【0045】
あるいは、非抗微生物性ホロタンパク質の機能的抗微生物セグメントに由来するペプチドは、1〜6のアミノ酸の置換により修飾することができる。
【0046】
抗微生物ペプチドにより抑制、予防、又は駆除される微生物の例は、グラム陽性菌及びグラム陰性菌の両方の細菌、例えば、腸球菌(Enterococcus faecalis)、大腸菌(Eschericia coli)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、ミラビリス変形菌(Proteus mirabilis)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、ウイルス、寄生虫、真菌、並びに酵母、例えば、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)及びカンジダ・パラプシロシス(Candida parapsilosis)である。
【0047】
上記抗微生物ペプチドは、天然源、例えば、ヒト細胞、cDNA、ゲノムクローンから得ることがき、化学合成、又は細胞源由来の発現生成物として組換えDNA技術により得ることができる。
【0048】
上記抗微生物ペプチドは、自動化方法による合成を含む、標準的な化学法により合成することができる。一般的に、類似体は、カップリング剤として、HATU(N−[ジメチルアミノ−1H−1.2.3.−トリアゾロ[4,5−B]ピリジン−1−イルメチレン]−N−メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスファテン−オキシド)、又は他のカップリング剤、例えば、HOAt−1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾールを伴う標準的な固相Fmoc保護法に基づき合成される。当該ペプチドは、適当なスカベンジャーを含むトリフルオロ酢酸で固相樹脂から切断される、また、それは側鎖官能基を脱保護する。更に、粗ペプチドは調製用逆相クロマトグラフィーを使用して精製される。他の精製方法、例えば、分配クロマトグラフィー、ゲルろ過、ゲル電気泳動、又はイオン交換クロマトグラフィーも使用できる。当業界において既知な他の合成技術、例えば、tBoc保護法、又は異なるカップリング試薬等の使用が相当するペプチドを産出するために利用することができる。
【0049】
あるいは、ペプチドは組換え生成により合成することができる(例えば、米国特許第5,593, 866号を参照のこと)。宿主系の変種は、ペプチド類似体の産出に適当であり、細菌、例えば、大腸菌(E.coli)、酵母、例えば、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)又はピチア(pichia)、昆虫、例えば、Sf9、及び哺乳類細胞、例えば、CHO又はCOS−7を含む。各宿主に使用することができる多くの発現ベクターが存在し、当該ベクター及び宿主が、抗微生物ペプチドを産出することができる限り、本発明はこれらのいずれかに制限されない。大腸菌(E.coli)におけるクローニング及び発現ベクターのためのベクター及び方法は、例えば、Sambrookら(Molecu- lar Cloning.: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N. Y. , 1987) 及びAusubelら(Current Protocols in Molecular Bi- ology, Greene Publishing Co. , 1995)において見つけることができる。
【0050】
最後に、上記ペプチドは、血漿、血液、多様な組織等から精製することができる。当該ペプチドは内在性であってよく、又は精製タンパク質の酵素的若しくは化学的分解後に産出することができる。例えば、ヘパリン結合タンパク質は、トリプシンにより消化することができ、そして大規模において更に単離された抗微生物ペプチドを生じる。
【0051】
抗微生物ペプチドをコードするDNA配列は、宿主に適した適当な発現ベクターに導入される。好ましい態様において、当該遺伝子は、融合タンパク質を作製するためにクローン化される。当該ペプチド配列の単離を促進するために、化学的切断(例えば、CNBr)、又は酵素的切断(例えば、V8プロテアーゼ、トリプシン)に感受性のアミノ酸が、当該ペプチドと融合パートナーを架橋するように使用される。大腸菌(E.coli)中での発現のために、融合パートナーは、好ましくは、発現を身体形成に誘導する細胞内タンパク質に中で正常である。かかる場合、最終生成物を放出するための後の切断において、当該タンパク質の再生の必要性はない。本発明において、融合パートナー及びペプチド遺伝子を含んで成るDNAカセットは、発現ベクター中に挿入することができる。好ましくは、当該発現ベクターは、宿主に挿入されたDNA配列の有効な転写を促進するための誘導又は構成プロモーターを含むプラスミドである。
【0052】
上記発現ベクターは、慣習的な形質転換技術、例えば、カルシウム媒介技術、電気穿孔法、又は当業者に周知な他の方法により、宿主に導入することができる。抗微生物ペプチドをコードする配列は、天然源、例えば、哺乳類細胞、現存cDNA、又はゲノムクローンに由来することができ、あるいは合成することができる。使用することができる1つの方法は、抗微生物DNA鋳型の5’及び3’末端に由来する増幅プライマーを使用するPCRの助けによる抗微生物ペプチドの増幅であり、そして典型的にはベクターのクローニング部位に関して選択された制限部位に組み込みこむ。必要ならば、転写開始及び終止コドンをプライマー配列中に設計することができる。当該抗微生物ペプチドをコードする配列は、コドンの選択が、治療すべき最終的な哺乳類に関して作製される限り、特異的な宿主中での発現を促進するために最適化されたコドンであってよい。従って、例えば、抗微生物ペプチドが細菌中で発現される場合、当該コドンは細菌に最適化される。
【0053】
上記発現ベクターは、導入された抗微生物ペプチドの発現を促進するためのプロモーター配列を含むべきである。必要であれば、制御配列も含むことができる。例えば、1又は複数のエンハンサー、リボソーム結合部位、転写終了シグナル配列、分泌シグナル配列、複製の開始点、選択マーカー等である。当該制御配列は、転写、及び続く翻訳を許容するように互いに接合することができる。抗微生物ペプチドが細菌中で発現される場合、当該制御配列は、細菌中で使用するために設計され、且つ当業者に周知なものである。適当なプロモーター、例えば、構成及び誘導プロモーターは広く利用することができ、そしてT5、T7、T3、又はSP6ファージ由来のプロモーター、及びtrp、lpp、及びlacオペロンを含む。
【0054】
抗微生物ペプチドを含むベクターが細菌中で発現される場合、開始点の例は、高コピー数を生じるもの、又は低コピーを生じるもの、例えば、fl−複製起点、及びcol El複製起点のいずれかである。
【0055】
好ましくは、プラスミドは、形質転換細胞を同定、及び/又は選択的に成長させることを許容する、宿主中で機能的な少なくとも1つの選択マーカーを含む。細菌宿主に適当な選択マーカー遺伝子は、アンピリシン耐性遺伝子、クロロアンフェニコール耐性遺伝子、テトラシクリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、及び当業界において既知な他のものを含む。
【0056】
細菌中での発現のためのプラスミドの例は、pET発現ベクターである、pET3a、pET11a、pET12a−c、及びpET15bを含む(Novagen, Madi- son, Wis. から入手可能)。低コピー数のベクター(例えば、pPD100)は、大腸菌(E.coli)宿主に有害なペプチドの有用な過剰産出のために使用することができる(Dersch et al. , FEMS Micro- biol. Lett. 123: 19,1994)。
【0057】
適当な宿主の例は、細菌、酵母、昆虫、哺乳類細胞である。しかしながら、多くの場合いずれかの細菌、例えば、大腸菌(E.coli)が使用される。
【0058】
発現された抗微生物ペプチドは、慣習的な単離技術、例えば、アフィニティー、サイズ除外、又はイオン交換クロマトグラフィー、HPLCにより単離される。異なる精製技術は、A Biologist's Guide to Principles and Techniques of Practical Biochemistry (eds. Wilson and Golding, Edward Arnold, London, 又はCurrent Protocols in Molecular Biology (John Wiley & Sons, Inc)において見つけることができる。
【0059】
抗微生物/医薬組成物
更に、本発明は、前述の抗微生物ペプチド及び医薬的に受容可能なバッファー、希釈剤、担体、アジュバント、又は賦形剤を含んで成る抗微生物/医薬組成物に関する。追加的な化合物を当該組成物中に含んでもよい。これらは、例えば、キレート化剤、例えば、EDTA、EGTA又はグルタチオンを含む。当該抗微生物/医薬組成物は、十分に保存安定性で、且つヒト及び動物に対する投与に適当である、当業界に既知の方法において調製することができる。当該医薬組成物は、例えば、フリーズドライング、スプレードライイング、又はスプレークーリングを介して凍結乾燥されていてもよい。
【0060】
「医薬的に受容可能」は、活性成分、すなわち抗微生物ペプチドの生物活性の有効性を干渉しない無毒性物質を意味する。このような医薬的に受容可能なバッファー、担体、又は賦形剤は、当業界において既知である(Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th edition, A. R Gennaro, Ed. , Mack Publishing Company (1990) 及びPharmaceutical Excipientsのハンドブック, 3rd edition, A. Kibbe, Ed. , Pharmaceutical Press (2000)を参照のこと)。
【0061】
「バッファー」の語は、pHを安定させる目的を有する酸−塩基混合物を含有する水溶液を意味することを意図する。バッファーの例は、トリズマ(Trizma)、ビシン(Bicine)、トリシン(Tricine)、MOPS、MOPSO、MOBS、トリス(Tris)、ヘペス(Hepes)、HEPBS、MES、リン酸塩、炭酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、グリコール塩、乳酸塩、ホウ酸塩、ACES、ADA、酒石酸塩、AMP、AMPD、AMPSO、BES、CABS、カコジル酸塩、CHES、DIPSO、EPPS、エタノールアミン、グリシン、HEPPSO、イミダゾール、イミダゾール乳酸、PIPES、SSC、SSPE、POPSO、TAPS、TABS、TAPSO、TES、トリシンである。
【0062】
「希釈剤」の語は、医薬調製物においてペプチドを希釈する目的を有する水性又は非水性溶液を意味することを意図する。当該希釈剤は1又は複数の生理食塩水、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、又は油(例えば、ベニバナ油、コーン油、ピーナッツ油、綿実油、又はゴマ油)であってよい。
【0063】
『アジュバント」の語は、上記ペプチドの生物学的効果を向上させるために当該製剤に添加されるいずれかの化合物を意味することを意図する。当該アジュバントは、1又は複数の異なるアニオンを伴う亜鉛、銅、又は銀塩、例えば、制限することなく異なるアシル組成物のフッ化物、塩素化物、臭化物、ヨウ素化物、チオシアネート、亜硫酸塩、水酸化物、リン酸塩、炭酸塩、乳酸塩、グリコール酸塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、酒石酸塩、及び酢酸塩であってよい。
【0064】
上記賦形剤は、1又は複数の炭水化物、ポリマー、脂質、及びミネラルであってよい。炭水化物の例は、例えば、凍結乾燥を促進するために組成物に添加されるラクトース、スクロース、マンニトール、及びシクロデキストリンを含む。ポリマーの例は、例えば、粘度調製のため、生物接着を達成するため、又は化学的及びタンパク質分解性の分解由来の脂質を保護するために組成物に添加される、全ての異なる分子量のスターチ、セルロースエーテル、セルロースカルボキシメチルセルロース、カラゲナン、ヒアルロン酸、ポリアクリル酸、ポリスルホネート、ポリエチレングリコール/ポリエチレンオキシド、異なる加水分解度のポリビニルアルコール/ポリビニルアセテート、及びポリビニルピロリドンである。脂質の例は、ポリマーに似た理由により組成物に添加される、全ての異なるアシル鎖の長さ及び飽和度の脂肪酸、リン脂質、モノ−、ジ−、及びトリグリセリド、セラミド、スフィンゴ脂質、及び糖脂質、卵レシチン、大豆レシチン、水素化卵及び大豆レシチンである。ミネラルの例は、利点、例えば、液体の蓄積の減少、又は有利な色素特性を得るために組成物に添加されるタルク、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、及び酸化チタンである。
【0065】
担体の特徴は、投与経路に依存する。1つの投与経路は、局所的投与である。例えば、局所的投与のために好ましい担体は、活性ペプチドを含んで成る乳化クリームであるが、他の一般的な担体、例えば、一定のワセリン/ミネラル型及び植物型軟膏剤、並びに、ポリマーゲル、液晶フェーズ及び微小乳剤もまた使用することができる。
【0066】
抗微生物/医薬組成物は、抗微生物/医薬組成物中に1又は複数の、例えば、1、2、3、又は4の異なるペプチドを含んで成ってよい。異なるペプチドの組み合わせを使用することにより、抗微生物効果を向上させ、並びに駆除すべき微生物が抗微生物剤に対して抵抗性及び/又は耐性であるという能力を低下させることができる。
【0067】
特に短いペプチドとして、ヒスチジンリッチ及び/又はキニノーゲン型ペプチドは制限された抗微生物活性を有する。しかしながら、これらのペプチドが塩及び/又は約5.0〜7.0のpHを含んで成る組成物中に存在する場合、当該ペプチドは活性である。すなわち塩の添加及び/又は特定のpH範囲の選択により増強された効果が得られる。
【0068】
塩としてのペプチドは、無機酸、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、臭化水素酸、リン酸、過塩素酸、チオシアン酸、ホウ酸等、又は有機酸、例えば、ギ酸、酒石酸、コハク酸、グルコンさん、乳酸、マロン酸、フマル酸、アントラニル酸、安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、スルファニル酸等を伴う酸付加物であってよい。無機塩は、例えば、全て対応するアニオンを伴う一価のナトリウム、カリウム、又は二価の亜鉛、マグネシウム、銅、カルシウムは、抗微生物組成物の生物活性を改善するために加えることができる。キニノーゲン基づく抗微生物的なH−リッチペプチド、及びヒスチジン−リッチ糖タンパク質は、加えた抗微生物ペプチドの効果を増強するために、制限された溶液、例えば、pHが規定され及び調整された(例えば、pH5.5〜6.0)ゲルにおいて使用することができる。例えば、約5.0〜約7.0、例えば、イオン性の環境を伴う又は伴わない約5.5〜6.0に規定されたpHを伴うゲル、軟膏、又は絆創膏は、抗微生物ペプチドの機能を増強し、制御し、そして局在化するであろう。
【0069】
本発明の抗微生物/医薬組成物はまた、ミセル、不溶性単層、及び液晶として凝集形態において存在する上記ペプチド、更に他の医薬的に受容可能な担体と両親媒性薬剤、例えば、脂質と組み合わされたリポソームの形態であってよい。リポソーム製剤のために安定な脂質は、制限することなく、モノグリセリド、ジグリセリド、スルファチド、リゾレシチン、リン脂質、サポニン、胆汁酸等を含む。このようなリポソーム製剤の調製は、例えば、米国出願第4, 235, 871号において見つけることができる。
【0070】
また、本発明の抗微生物/医薬組成物は、生分解性微粒子形態であってよい。脂肪性ポリエステル、例えば、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、PLAとPGAのコポリマー(PLGA)、又はポリ(カルプロラクトン)(PCL)、及びポリ無水物は、微粒子の生成物における生分解性ポリマーとして広く使用されてきた。このような微粒子の調製物は、米国出願第5,851, 451号 及びEP 0213303 において見つけることができる。
【0071】
あるいは、上記抗微生物ペプチドは、生理食塩水、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、又は油(例えば、ベニバナ油、コーン油、ピーナッツ油、綿実油、又はゴマ油)、トラガカントゴム、及び/又は多様なバッファー中に溶かしてもよい。また、上記医薬組成物は、抗微生物ペプチドの作用の増強のために、イオン及び規定されたpHを含んでもよい。
【0072】
抗微生物/医薬組成物は、慣習的な医薬的操作、例えば、無菌化に供することができ、及び/又は慣習的なアジュバント、例えば、本明細書のいずれかに記載の防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、バッファー、賦形剤等を含んでよい。
【0073】
本発明に従う抗微生物/医薬組成物は、局所的に又は全身的に投与することができる。投与経路は、局所、眼球、経鼻、肺、頬側、非経口(静脈内、皮下、及び筋肉内)、経口、非経口、膣、及び直腸を含む。またインプラントからの投与も可能である。適当な抗微生物調製形態は、例えば、顆粒、粉末、タブレット、コーティングタブレット、(微小)カプセル、座薬、シロップ、乳化剤、微小乳化剤、水、油、及び界面活性剤、長い範囲のオーダーであるが短い範囲のディスオーダーにより特徴づけられる任意的な等方性の熱力学的に安定な系として定義される液晶相(例は、水−又は油持続性である層状、六方形及び立方相を含む)、又は分散対応物、ゲル、軟膏、懸濁液、クリーム、エアロゾル、液滴、又はアンプル形態における注射用溶液、及び活性化合物の徐放を伴う調製物であり、これらの調製賦形剤、希釈剤、アジュバント、又は担体は一般的に上述のとおり使用される。
【0074】
上記医薬組成物は、医薬的に有効な用量において投与されるであろう。「医薬的に有効な容量」は、投与される状態に関する所望される効果を生じるのに十分な用量を意味する。正確な用量は、化合物の活性、投与方法、疾患の性質及び重篤度、患者の年齢及び体重に依存し、異なる用量が必要とされる。当該用量の投与は、個々の用量単位の形態、又はいくつかのより少量単位において単回投与により、及び一定の間隔で細分した用量の複数回投与により行うことができる。
【0075】
本発明の医薬組成物は、単独で、又は他の治療剤、例えば、抗生物質又は消毒薬、例えば、抗細菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、及び抗寄生虫剤との組み合わせにおいて投与することができる。例は、ペニシリン、セファロスポリン、カルバセフェム、セファマイシン、カルバペネム、モノバクタム、アミノグリコシド、糖ペプチド、キノロン、テトラシクリン、マクロライド、及びフルオロキノロンである。消毒薬は、ヨウ素、銀、銅、クロルヘキシジン、ポリヘキサニド、及び他のビグアナイド、キトサン、酢酸、大過酸化水素である。これらの薬剤は、同医薬組成物の一部として組み込むことができ、又は別々に投与することもできる。
【0076】
本発明は、ヒト及び他の動物、例えば、ウマ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ラクダ等に関する。従って、当該方法は、ヒトの治療及び獣医学的適用の両方に適用することができる。このような治療に適当な対象は、明確な感染の証拠、例えば、熱、脈動、生物の培養等により確認することができる。抗微生物ペプチドで治療できる感染は、微生物により、又は微生物が原因で生じるものを含む。微生物の例は、細菌(例えば、グラム陽性、グラム陰性)、真菌(例えば、酵母及びカビ)、寄生虫(例えば、原虫、線虫、条虫、及び吸虫)、ウイルス、及びプリオンを含む。これらの種類の具体的な生物は周知である(例えば、Davis et al., Microbiology, 3. sup. rd edition, Harper & Row, 1980を参照のこと)。感染は、制限することなく、慢性皮膚潰瘍、感染型急性創傷、及び火傷、感染型湿疹、膿痂疹、アトピー性皮膚炎、アクネ、外耳炎、膣感染、脂漏性皮膚炎、経口感染、及び歯周炎、カンジダ間擦疹、結膜炎及び他の眼球感染、及び肺炎を含む。
【0077】
従って、上記抗微生物/医薬組成物は、火傷、手術後及び皮膚外傷後の予防的な治療のために使用することができる。当該医薬組成物はまた、人体と接触する外部物質、例えば、コンタクトレンズ、整形インプラント、及びカテーテルの保存及び処置を意図する溶液中に含まれてよい。
【0078】
更に、抗微生物/医薬組成物は、アトピー性皮膚炎、膿痂疹、慢性皮膚潰瘍、感染型急性創傷、及び火傷、アクネ、外耳炎、真菌感染、肺炎、脂漏性皮膚炎、カンジダ間擦疹、口咽頭カンジダ症、眼球感染(細菌性結膜炎)、及び経鼻感染(MRSA輸送を含む)のために使用できる。
【0079】
抗微生物/医薬組成物はまた、洗浄溶液、例えば、レンズ消毒液、及び保存溶液として使用することができ、又は泌尿器カテーテルの使用若しくは中心静脈カテーテルの使用に関して細菌感染を防ぐために使用することができる。
【0080】
更に、抗微生物組成物は、プラスター、接着剤、縫合における手術後の感染を防止するために使用することができ、あるいは包帯剤に組み入れることができる。
【0081】
また、抗微生物ペプチドは、抗微生物表面を作るためにポリマー、織物等において使用することができ、又は化粧品及びパーソナルケア用品(石鹸、シャンプー、歯磨き粉、抗にきび薬、日焼けクリーム、タンポン、オムツ等)は、抗微生物/医薬組成物で補足することができる。
【0082】
抗微生物性ヒトペプチド及び/又はタンパク質を同定するための方法
また、本発明は、哺乳類、例えば、ヒトに低アレルギー性を有し、且つ哺乳類に侵入する微生物に対して有効な抗微生物ペプチドの新規なセットを供することを可能にする、1又は複数の新規な抗微生物ペプチドを同定するための方法に関する。このような方法により、市場において入手可能な抗微生物剤に対して今日一般的な抵抗性及び/又は耐性の問題を低下、又は除去する抗微生物剤の大きな収集を供する新規な改良された抗微生物ペプチドが利用できるであろう。
【0083】
内在性ペプチド及び/又はタンパク質を供する工程、ヘパリンを供する工程、ペプチド及び/又はタンパク質ヘパリン複合体を作製する内在性ペプチド及び/又はタンパク質とヘパリンを混合する工程、当該ペプチド及び/又はタンパク質ヘパリン複合体を検出する工程、及び抗微生物性ヒト内在性ペプチド及び/又はタンパク質を同定する工程を含んで成る方法。更に、ニッケル、例えば、ニッケルセファロースをヘパリンの代わりに使用することもできる。ヘパリンは溶液中に存在することができ、又はマトリックスと結合することができる。後者の場合、これは、分離目的(h.p.l.c又はf.p.l.c)又はバイオコア分析に適当である。ヘパリン−セファロース、又は類似した媒体を使用することもできる。また、抗微生物ペプチドは、他のグリコサミノグリカンとも相互作用するため、新規な抗微生物ペプチドの精製のためにこれらの分子、例えば、デルマタン、又はヘパランスルフェートを使用することが可能である。ヘパリン、ヘパランスルフェート、及びデルマタンスルフェートは、分散型で、空間的に限定されたスルホ−又はカルボキシル基を含む。原則として、これらのグリコサミノグリカンのような類似した相互作用能のいずれかの他の重合体化合物は、抗微生物ペプチドの特異的な結合のために使用することができる。更に、H−リッチペプチドは、ニッケル−セファロース、又は類似した媒体において、単独又はヘパリン−クロマトグラフィーと組み合わせて精製することができる。
【0084】
以下の実施例は、明示的に又は暗黙的に、制限することなくいずれかの方法、形状、又は形態本発明を説明することを意図する。
【実施例】
【0085】
微生物
慢性静脈潰瘍から最初に得られた腸球菌(Enterococcus faecalis)2374、大腸菌(Escherichia coli)37.4、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)27.4、及びアトピー性皮膚炎を有する患者から得られた真菌類であるカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)BM4435を、実験に使用した。
【0086】
実施例1
抗微生物ペプチド
配列表及び以下の表1に示された抗微生物ペプチドは、Innovagen AB, Ideon, SE-22370, Lund, Swedenにより合成された。これらのペプチドの純度及び分子量は、マススペクトル分析(MALDI. TOF Voyager)により確認した。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【0089】
実施例2
アルギニン及びリジンリッチペプチドの抗微生物効果
図1は、腸球菌(Enterococcus faecalis)におけるアルギニン及びリジン−リッチペプチド(配列表)の抗細菌効果を示す。細菌はトッド−ヒューイット(TH)培地において、中対数期(mid-logarithmic phase)まで成長させた。細菌を洗浄し、そして5mMのグルコースを含む10mMのトリス、pH7.4で洗浄した。細菌(50μl;2×106cfu/ml)を、0.03〜60μMの上昇濃度の合成ペプチドとともに37℃で2時間インキュベートした。殺菌活性を定量するために、インキュベート混合物の連続希釈を、TH寒天に置き、続いて37℃で一昼夜インキュベートし、そしてコロニー形成ユニットの数を測定した。2×106のコロニー形成ユニット(CFU)×ml-1の腸球菌(E. faecalis)(単離2374)を、約0.03〜60μMの範囲の濃度におけるペプチドとともに50μlでインキュベートした。(A)ラミニン由来の合成ペプチド。α5鎖(PPP25:配列番号:13,LGT25:配列番号:12,RLR22:配列番号:14,PGR11:配列番号:15)、及びα1鎖(SRN16:配列番号:8,SRN29:配列番号:9,KDF15:配列番号:10,SAV15:配列番号:11)のLG−ドメイン由来のペプチドの効果を示す。1つのペプチド(RIQ18:配列番号:16)はβ1鎖に由来している。(B)3つのペプチドは補体因子C3(LRK26:配列番号:5,LGE27:配列番号:6、及びCNY21:配列番号:7)に由来し、AKK15はビトロネクチン、SEK20:配列番号:19はプロテインC阻害因子、QPP18:配列番号:17はフィブロネクチン、及びYIG23:配列番号:18はウィルブランド因子に由来する。(C)ヘパリン結合コンセンサス配列(AKKARA)n(n=1〜4)、及び(ARKKAAKA)n(n=1〜3)の抗微生物効果。n=1のペプチドは抗微生物効果を発揮しなかった。ヘパリンと相互作用しないペプチド;GHRPLDKKREEAPSLRPA、LVTSKGDKELRTGKEKVTS、及びKNNQKSEPLIGRKKT(Andersson et al. , Eur J Biochem, 2004,271 ; 271: 1219-1226)は、抗微生物性ではなかった。
【0090】
実施例3
抗微生物ペプチドの放射拡散アッセイ分析(表2)
放射拡散アッセイ(RDA)は、先に説明されるとおり(Andersson et al., Eur JBiochem, 2004,271 : 1219-1226)、基本的に行った。端的には、細菌(大腸菌(E.coli))又は真菌(カンジダ・アルビカンス(C. albicans)を、10mlの全強(3%w/v)のトリプチケース・ソイ・ブロス(TSB)(Becton-Dickinson, Cockeysville, MD)中で中対数期(mid-logarithmic phase)まで成長させた。当該微生物を10mlのトリス、pH7.4で1回洗浄した。4×106cfuの細菌、又は1×10cfuの真菌を、0.03%(w/v)TBS、1%(w/v)低−電気浸透型(Low−EEO)アガロース(Sigma, St Louise MO)、及び最終濃度0.02%(w/v)トゥイーン20(Sigma)を含む5mlの下層アガロースゲルに添加した。当該下層は、Φ85mmのペトリ皿に流した。アガロースを凝固させた後、4mmの直径のウェルをあけ、そして6μlの試験試料を各ウェルに添加した。当該プレートは37℃で3時間インキュベートし、ペプチドを拡散させた。それから下層ゲルを5mlの溶融オーバレイ(dH2O中の6%TSB、及び1%Low−EEOアガロース)で覆った。ペプチドの抗微生物活性を、18〜24時間の37℃でのインキュベート後に、各ウェルの周りのクリアーゾーンにより視覚化した。既知のペプチドLL−37と比較した抗微生物効果を測定するために、100μMの濃度において合成ペプチドを試験した。実験間の変動を最小とするために、LL−37スタンダード(100μM)を各プレートに入れた。当該ペプチドの活性は、放射拡散単位において示された(ミリメーターにおけるクリアーゾーンの直径−ウェルの直径)×10)。当該結果は以下の表2に示す。
【0091】
【表3】

【0092】
実施例4
大腸菌(E.coli)及びカンジダ・アルビカンス(C. albicans)に対するペプチドの放射拡散アッセイ(図2)
図2は、抗微生物ペプチドのセットを使用する放射拡散アッセイを示す。当該アッセイは上述のように行った。ペプチドの抗微生物効果は、腸球菌(E. faecalis)は37℃で、及びカンジダ・アルビカンス(C. albicans)は25℃で18〜24時間のインキュベート後に、各ウェルの周りのクリアーゾーンとして視覚化した(パネルB)。
【0093】
実施例5
ヒスチジン−リッチペプチドの抗微生物効果
図3は、ヒスチジン−リッチペプチドの抗微生物ペプチドの抗微生物効果を示す。腸球菌(E. faecalis)細菌を、トッド−ヒューイット(TH)培地において、中対数期(mid-logarithmic phase)まで成長させた。細菌を洗浄し、そして50μMのZnClを伴う又は伴わない5mMのグルコースを含む10mMのトリス、pH7.4、又は10mMのMES−バッファー、5mMのグルコース、pH5.5で希釈した。細菌(50μl;2×106cfu/ml)を、0.03〜60μM(亜鉛を伴う又は伴わないトリスバッファー)、又は30及び60μM(トリス及びMESバッファー)の範囲の合成ペプチドとともに37℃で2時間インキュベートした。殺菌活性を定量するために、インキュベート混合物の連続希釈を、TH寒天に置き、続いて37℃で一昼夜インキュベートし、そしてコロニー形成ユニットの数を測定した。(A):50μMのZnClの存在、又は不存在中におけるヒスチジン−リッチ糖タンパク質(GHH20:配列番号4)及びキニノーゲン(KHN20:配列番号3,GGH20:配列番号2、及びHKH20:配列番号1)のヘパリン結合ドメイン由来のペプチドの効果を示す。(B):5mMのグルコースを含む10mMのトリス、pH7.4、又は10mMのMES−バッファー、5mMのグルコース、pH5.5中のペプチド(30及び60μM)の効果。数字は100%をコントロール(ペプチド無し)とした場合の%生存率を示す。(C):固定ペプチド/亜鉛モル比(1:100)の存在下における腸球菌(E. faecalis)におけるペプチド、AHH24:1、及びAHH24:2の効果。亜鉛を伴わないペプチドは抗微生物効果を発揮しなかった。
【0094】
実施例6
ペプチド効果の電子顕微鏡観察による分析
図4は、抗微生物ペプチドに供した緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)細菌の電子顕微鏡観察分析を示す。(A)コントロール。(B〜H)〜50%の所望された抗微生物濃度におけるペプチドで処理した細菌の分析。また、NKH20は200%において分析した。(B)LL−37、(C)ARK24、(D)SEK20、(E)AKK24、(F)LGT25(G)HKH20、(H)200%の抗微生物濃度におけるHKH20。バーはG及びH(0.5μm)を除き1μmを示す。ペプチドで処理した細菌の電子顕微鏡観察分析は、コントロールで処置された細菌の形態と比較して顕著な相違を示した。カテリシジンLL−37は局所的な摂動を生じさせ、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の細胞膜を破壊し、しばしば細胞内物質が細胞外で発見され、そして明細書に開示した内在性抗微生物ペプチドで類似した発見が得られた。
【0095】
実施例7
内在性抗微生物ペプチドのヘパリン結合(図5)
ペプチドはヘパリン結合活性のために試験された。ペプチドは、ニトロセルロース膜(Hybond, Amersham Biosciences)に適用された。膜は1時間ブロックされ(PBS、pH7.4、0.25%トゥイーン20、3%ウシ血清アルブミン)、放射標識されたヘパリンとともに同じバッファー中で1時間インキュベートした。ヒスチジン−リッチペプチドは、50μMのZnClの存在下又は不存在下におけるヘパリン結合のために試験した。ヘパリンの放射ヨウ素標識は、先に説明されたように行った(Anders- son et al., Eur JBioche7n, 2004, 271 ; 271: 1219-1226)。標識していないポリサッカライド(2mg/ml)を結合の比較のために添加した。当該膜を洗浄した(PBS、pH7.4、0.25%トゥイーン20中で3×10分)。バス200ラジオイメージングシステム(Fuji)を放射活性の視覚化のために使用した。標識されていないヘパリン(6mg/ml)は125I−ヘパリンのC3由来ペプチドLRK26及びLGE27及びLL−37(上部)に対する結合を阻害した。
【0096】
実施例8
ニッケル−セファロースにおけるヒスチジン含有抗微生物フラグメントの精製(図6)
ペプチドエピトープであるKHN20、GGH20、及びHILE20を含むヒトキニノーゲンのドメインD5は、大腸菌(Escherichia coli)株中で発現された。タンパク質生成物は、1mMのイソプロピル−チオ−β−D−ガラクトシドを指数関数的に増殖している細菌に添加することにより誘導された。3時間のインキュベート後、当該細菌を遠心分離により回収した。当該ペレットを、50mMのリン酸塩、300mMのNaCl、pH8.0(バッファーA)に再懸濁し、そして細菌を冷凍−解凍の反復サイクルにより溶解した。それから当該溶菌液を29000gで30分間遠心分離した。当該懸濁液を、ニッケルを充填した2mlのNiNTA−セファロースと混合し、そしてバッファーAで平衡化した。当該セファロースをカラムに充填し、そして0.1%トリトンX−100を伴う10mlのバッファーA、10mlのバッファーA、1MのNaClを伴う5mlのバッファー、5mlのバッファーA、10mlの20%エタノール、5mMのイミダゾールを伴う10mlのバッファーA、及び30mMのイミダゾールを伴うバッファーAで洗浄した。タンパク質(矢印)は500mMのイミダゾール中に溶出した。当該ドメインは、放射拡散アッセイにおいて大腸菌(Escherichia coli)に対する抗微生物効果を発揮した。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】A〜Cは、腸球菌(Enterococcus faecalis)におけるペプチドの抗微生物効果を示すダイアグラムである。
【図2】A〜Bは、高活性ペプチドのセットを使用する放射拡散アッセイを示すペトリ皿である。
【図3】A〜Cは、ヒスチジン−リッチペプチドの抗微生物効果を示すダイアグラム及び表である。
【図4】A〜Hは、抗微生物ペプチドに供した緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の分析を示す、電子顕微鏡写真である。
【図5】A〜Cは、補体C3、ヒスチジン−リッチ糖タンパク質、及びキニノーゲンに由来するペプチドのヘパリン結合活性を示す写真である。
【図6】図6は、ニッケル−セファロースにおけるヒスチジン含有抗微生物フラグメントの精製を示す写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘパリン結合活性を有し、ラミニンアイソフォーム、補体因子C3、ヒスチジンリッチ糖タンパク質、及びキニノーゲンから成る群から選択される実質的に抗微生物活性を含まない内在性哺乳類タンパク質に由来し、そして10〜36のアミノ酸残基を有する、抗微生物ペプチドであって、ここで当該抗微生物ペプチドが、K、R、及びHから成る群から選択される少なくとも4つのアミノ酸残基から成る抗微生物ペプチド。
【請求項2】
上記抗微生物ペプチドが、キニノーゲンタンパク質、又はヒスチジンリッチ糖タンパク質に基づき、且つ少なくとも30%のアミノ酸残基がHである、請求項1に記載の抗微生物ペプチド。
【請求項3】
少なくとも50%の抗微生物ペプチドが、H、K、及び/又はRのアミノ酸残基を含んで成る、請求項2に記載の抗微生物ペプチド。
【請求項4】
上記抗微生物ペプチドが、配列番号1、2、3、及び4から成る群から選択される、請求項2〜3のいずれか一項に記載の抗微生物ペプチド。
【請求項5】
上記抗微生物ペプチドが、補体因子タンパク質に基づく、請求項1に記載の抗微生物ペプチド。
【請求項6】
上記抗微生物ペプチドが、配列番号5、6、及び7から成る群から選択される、請求項5に記載の抗微生物ペプチド。
【請求項7】
上記抗微生物ペプチドが、ラミニンタンパク質に基づく、請求項1に記載の抗微生物ペプチド。
【請求項8】
上記抗微生物ペプチドが、配列番号8、9、10、11、12、13、14、15、及び16から成る群から選択される、請求項7に記載の抗微生物ペプチド。
【請求項9】
上記ペプチドが、内在的、合成的、又は半合成的である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の抗微生物ペプチド。
【請求項10】
上記ペプチドが、1又は複数の抗微生物ペプチド、又は他の物質に結合する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の抗微生物ペプチド。
【請求項11】
上記ペプチドが、アミド化、エステル化、アシル化、アセチル化、PEG化、又はアルキル化により修飾される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の抗微生物ペプチド。
【請求項12】
a)請求項1〜11のいずれか一項に記載の抗微生物ペプチド、及び、
b)医薬的に受容可能なバッファー、希釈剤、担体、アジュバント、又は賦形剤、
を含んで成る、抗微生物/医薬組成物。
【請求項13】
塩を含んで成る、請求項12に記載の抗微生物/医薬組成物。
【請求項14】
上記塩が、一価のナトリウム、カリウム、又は二価の亜鉛、マグネシウム、銅、カルシウムから成る群から選択することができる、請求項13に記載の抗微生物/医薬組成物。
【請求項15】
上記塩が、二価の亜鉛である、請求項14に記載の抗微生物/医薬組成物。
【請求項16】
上記組成物が、約5.0〜約7.0のpHを有する、請求項13〜15のいずれか一項に記載の抗微生物/医薬組成物。
【請求項17】
上記組成物が、1、2、3、又は4つの異なるポリペプチドの混合物を含んで成る、請求項12〜16のいずれか一項に記載の抗微生物/医薬組成物。
【請求項18】
上記抗微生物/医薬組成物が、1又は複数の抗生物質、及び/又は消毒薬を含んで成る、請求項12〜17のいずれか一項に記載の抗微生物/医薬組成物。
【請求項19】
上記抗微生物/医薬組成物が、顆粒、粉末、タブレット、コーティング化タブレット、カプセル、座薬、シロップ、乳濁液、ゲル、軟膏、懸濁液、クリーム、エアロゾル、液滴、又は注射用形態の形態における、請求項12〜18のいずれか一項に記載の抗微生物/医薬組成物。
【請求項20】
細菌、ウイルス、寄生虫、真菌、及び酵母から成る群から選択される微生物を、予防、抑制、減少、又は駆除するための、請求項1〜11のいずれか一項に記載の抗微生物ペプチド、又は請求項12〜19のいずれか一項に記載の抗微生物/医薬組成物の使用。
【請求項21】
治療又は診断における、請求項20に記載の抗微生物ペプチド又は抗微生物/医薬組成物の使用。
【請求項22】
細菌、ウイルス、寄生虫、真菌、及び酵母から成る群から選択される微生物により引き起こされる疾患の抗微生物的治療のための医薬の製造のための、請求項1〜11のいずれか一項に記載の抗微生物ペプチド、又は請求項12〜19のいずれか一項に記載の抗微生物/医薬組成物の使用。
【請求項23】
腸球菌(Enterococcus faecalis)、大腸菌(Eschericia coli)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、ミラビリス変形菌(Proteus mirabilis)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)から成る群から選択される微生物により引き起こされる疾患の治療のための、請求項20〜22のいずれか一項に記載の抗微生物ペプチド、又は抗微生物/医薬組成物の使用。
【請求項24】
カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、及びカンジダ・パラプシロシス(Candida parapsilosis)から成る群から選択される微生物により引き起こされる疾患の治療のための、請求項20〜22のいずれか一項に記載の抗微生物ペプチド、又は抗微生物/医薬組成物の使用。
【請求項25】
患者に対して治療的有効量の請求項12〜19のいずれか一項に記載の医薬組成物を投与することを含んで成る、微生物感染を有する哺乳類の治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−531691(P2007−531691A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517016(P2006−517016)
【出願日】平成16年5月19日(2004.5.19)
【国際出願番号】PCT/SE2004/000797
【国際公開番号】WO2005/061535
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(505429005)デルマゲン アクティエボラーグ (5)
【Fターム(参考)】