説明

ヘミシアニンスチリルチオール/ジスルフィド染料、この染料を含む染料組成物、この染料を使用するケラチン物質を明色化するための方法

【課題】ケラチン物質、特にヒトケラチン線維、特に毛髪を染色するための、既存の漂白方法の欠点を有さない新システムを提供すること。
【解決手段】本発明は、スチリルヒドロキシ(シクロ)アルキルアミノチオール/ジスルフィド蛍光染料を使用するケラチン物質の染色に関する。
本発明は、スチリルヒドロキシ(シクロ)アルキルアミノチオール/ジスルフィド蛍光染料を含む染料組成物に関し、特に毛髪などのケラチン物質に関する明色化効果を伴う、前記組成物を用いる染色方法に関する。本発明は、同様に、新規チオール/ジスルフィド蛍光染料およびケラチン物質を明色化することにおけるその使用に関する。
本組成物は、特に暗色のケラチン線維において耐久性がありかつ可視的である明色化効果を得ることを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチリルヒドロキシ(シクロ)アルキルアミノチオール/ジスルフィド蛍光染料を使用するケラチン物質の染色に関する。
【背景技術】
【0002】
ケラチン線維、特にヒトケラチン線維を、直接染色によって染色することは既知の慣行である。直接染色において従来使用されている方法は、線維への親和性を有する着色された分子または着色性分子である直接染料を、ケラチン線維に適用し、拡散させ、次いで線維をすすぐことを含む。
【0003】
従来使用されている直接染料は、例えば、ニトロベンゼンタイプの染料、アントラキノン染料、ニトロピリジン染料、あるいはアゾ、キサンテン、アクリジン、アジンまたはトリアリールメタンタイプの染料である。
【0004】
これら従来の直接染料を使用するケラチン線維の着色は、ケラチン線維を顕著に明色化することを可能にすることはない。
【0005】
暗色のケラチン線維の色の、任意選択でそのシェイドを変化させることによる、より明るいシェイドへの明色化は、重要な需要を構成する。
【0006】
従来、より明るい着色を得るために、化学的漂白方法が使用される。この方法は、毛髪などのケラチン線維を、一般にアルカリ性媒体中で場合により過酸塩と組み合わせた過酸化水素から一般になる強力な酸化システムで処理することを含む。
【0007】
この漂白システムは、ケラチン線維を損傷し、その美容特性に悪影響を与えるという欠点を有する。実際、線維は、ざらつくようになり、もつれを解くのがより難しく、より脆弱化する傾向がある。最終的に、酸化剤によるケラチン線維の明色化または漂白は、特に毛髪ストレート処理において、前記線維の形を変化させるための処理とは両立しない。
【0008】
別の明色化技術は、暗色の毛髪に、蛍光直接染料を適用することを含む。特に文献WO03/028685およびWO2004/091473に記載されているこの技術は、処理の間に、ケラチン線維の質を保持することを可能にする。しかし、これらの蛍光直接染料は、外部の作因に対して満足できる堅牢性を示さない。
【0009】
直接着色の堅牢性を増加させるために、ジスルフィド染料、特に、国際特許出願WO2005/097051または欧州特許出願EP1647580におけるアザイミダゾリウムクロモフォル染料および国際特許出願WO2006/134043および2006/136617におけるピリジニウム/インドリニウムスチリルクロモフォル染料を使用することは既知の慣行である。
【特許文献1】WO03/028685
【特許文献2】WO2004/091473
【特許文献3】国際特許出願WO2005/097051
【特許文献4】欧州特許出願EP1647580
【特許文献5】国際特許出願WO2006/134043
【特許文献6】国際特許出願WO2006/136617
【特許文献7】国際特許出願WO2007/039527
【特許文献8】仏国特許FR2586913
【非特許文献1】「Science des traitements capillaries」[Hair Treatment Sciences]、Charles Zviak、1998年、Masson出版、215頁および278頁
【非特許文献2】「Protective Groups in Organic Synthesis」、T.W.Greene、John Wiley & Sons編、NY、1981年、193〜217頁
【非特許文献3】「Protecting Groups」、P.Kocienski、Thieme、第3版、2005年、第5章
【非特許文献4】「Thiols and organic sulfides」、「Thiocyanates and isothiocyanates,organic」、Ullmann’s Encyclopedia、Wiley−VCH、Weinheim、2005年
【非特許文献5】Advanced Organic Chemistry、「Reactions,Mechanisms and Structures」、J.March、第4版、John Willey & Sons、NY、1992年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ケラチン物質、特にヒトケラチン線維、特に毛髪を染色するための、既存の漂白方法の欠点を有さない新システムを提供することである。
【0011】
特に、本発明の1つの目的は、特に生来または人工的に暗色のケラチン線維に対する明色化効果を得るための、連続的なシャンプー洗浄に対して耐久性があり、ケラチン線維を損傷することがなく、ケラチン線維の美容特性に悪影響を与えることのない、直接染色システムを提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、ケラチン物質を彩色的な、かつ外部からの攻撃に対して耐久性のある方法で染色することである。本発明の別の目的は、天然繊維であろうとパーマネント・ウェーブの繊維であろうと、根元と先端の間で選択的に弱く染色する、髪のようなケラチン繊維を染色する化合物を提供することである。
【0013】
これらの目的は、本発明により達成され、本発明の主題は、下記の式(I):
【0014】
【化1】

【0015】
の染料、有機または無機酸塩、光学異性体および幾何異性体、ならびに水和物などの溶媒和物、から選択される少なくとも1つのジスルフィドまたはチオール蛍光染料を適切な化粧用媒体中に含む染料組成物を、ケラチン物質に適用することを含む、ケラチン物質、特にケラチン線維、特に毛髪などのヒトケラチン線維、より特に暗色の毛髪を染色するための方法である:
[ここで式(I)において:
・ Rは、1つもしくは複数のヒドロキシル基、特には単一のヒドロキシル基あるいは−C(O)OR’基(ここでR’は水素原子、C〜Cアルキル基、または−C(O)−O基を表し、この場合、アニオン性対イオンAnは存在せず;Rは1つもしくは複数のヒドロキシル基で置換されていてもよいC1~Cのアルキル基を特に表す)で置換されたC1~Cのアルキル基を表し、
・ Rは、1つもしくは複数のヒドロキシル基で置換されていてもよいC1~Cのアルキル基を表し、
・ あるいは基R及びRは、それらを有する窒素と一緒になって、少なくともヒドロキシル、(ポリ)ヒドロキシ(C〜C)アルキル、及び/または−C(O)OR’基
で置換される飽和複素環式基を形成し(ここでR’は水素原子、C〜Cアルキル基、または−C(O)−O基を表し、この場合、アニオン性対イオンAnは存在せず;例えばピロリジニルやピペリジルなどである)、
・ Rは、水素原子または−C(O)OR”基を表し(ここでR”は水素原子、アルカリ金属またはC1~Cのアルキル基を表す)、あるいはRは−C(O)−O基を表し、この場合、アニオン性対イオンAnは存在せず、
・ Zは、2価のアミドである−C(O)−N(R)−もしくは−N(R)−C(O)−基、あるいはアミドである−C(O)−N(R)−もしくは−N(R)−C(O)−基(例えば−(CHn’−C(O)−N(R)−(CH−もしくは−(CHn”−N(R)−C(O)−(CH−など)で中断される2価のC〜C10アルキレン基を表し(ここでn’は0と3との間の境界値を含む整数を表し、好ましくはn’は0、2または3であり;pは0と4との間の境界値を含む整数を表し、n”は0と3との間の境界値を含む整数を表し、特にn’=n”=p=0であり、Rは水素原子もしくはC1~Cのアルキル基を表す)、
・ nは1または2であり;
・ mは0または1であり;
・ Anはアニオン性対イオンを表し、
・ Yは:i)水素原子、ii)アルカリ金属、iii)アルカリ土類金属、iv)アンモニウム基:Nαβγδ、ホスホニウム基:Pαβγδ(ここでRα、Rβ、RγおよびRδは同一でも異なっていてもよく、水素原子または(C〜C)アルキル基を表す)、あるいはv)チオール−官能基−保護基を表し、
− ピリジニウム環の間の結合及びスチリル基の2重結合は、ピリジニウムに関して2位(2−position)もしくは4位に位置し、
− n=1、m=1である場合にはY=Hもしくはチオール−官能基−保護基であり、n=2である場合にはm=0であり、
− 式(I)の化合物が他のカチオン性部分を含有する場合、1つまたは複数のアニオン性対イオンと結合するため、式(I)は電気的中性を達成できる、
ことが理解される]。
【0016】
本発明の別の主題は、適切な化粧用媒体中に、上記に定義の式(I)の少なくとも1つのチオール/ジスルフィド蛍光染料および任意選択で還元剤を含む染料組成物である。
【0017】
本発明の主題はまた、上記に定義の式(I)の新規のチオール/ジスルフィド蛍光染料でもある。
【0018】
本発明の染色方法は、暗色のケラチン物質、特に暗色のヒトケラチン線維、特に暗色の毛髪を、可視的に着色することを可能にする。
【0019】
さらに、本発明の方法は、毛髪を損傷することなく、シャンプー作業、通常の攻撃(日光、発汗)および毛髪の処理に対して耐久性のあるケラチン物質、特にヒトケラチン繊維、特に毛髪の着色を得ることを可能にする。本発明の方法はまた、ケラチン線維などのケラチン物質、特に暗色のケラチン線維、より特に暗色の毛髪の明色化を得ることを可能にする。
【0020】
本発明の新しい染料は、非常に満足できる光安定性および化学的安定性を有する。これらの染料は、毛髪染料に適した化粧用媒体、最も特に水/エタノール混合物に可溶である。これらの染料は、使用できる色の範囲の拡大(黄色、オレンジ色、赤色)を可能にし、その一方で得られた着色を除去することを可能にする。
【0021】
ケラチン繊維に塗布した後、式(I)の染料は、外部からの攻撃に対して抵抗性を有する態様で彩色的にケラチン物質を染色し、様々なタイプの繊維に関して、根元と先端の間で選択的に弱く染色する。
【0022】
本発明の目的において、用語「暗色のケラチン物質」は、C.I.E.L*a*b*システムで測定して、45以下の明度L*、さらに、L*=0が黒に相当し、L*=100が白に相当することを考慮に入れれば、好ましくは40以下の明度L*を示すことを意味するよう意図される。
【0023】
本発明の目的において、表現「生来または人工的に暗色の毛髪」は、そのトーンハイト(色調の高さ)が6以下(ダークブロンド)、好ましくは4以下(チェスナットブラウン)であることを意味するよう意図される。
【0024】
毛髪の明色化は、式(I)の化合物の適用前および適用後の「トーンハイト(tone height)」の変化により評価される。「トーン」の概念は、ナチュラルシェイドの分類に基づいており、1つのトーンは各シェイドをそのすぐ次またはすぐ前のシェイドと区別する。この定義およびナチュラルシェイドの分類は、ヘアスタイリング専門家によく知られており、著作「Science des traitements capillaries」[Hair Treatment Sciences]、Charles Zviak、1998年、Masson出版、215頁および278頁、において発表されている。
【0025】
トーンハイト(色調の高さ)は1(ブラック)から10(ベリーライトブロンド)までの範囲を有し、1つのユニットが1つのトーンに相当する;数字が大きくなるほど、シェイドは明るくなる。
【0026】
人工的に着色された毛髪は、染色処理、例えば、直接染料または酸性染料による染色により、その色を変えられた毛髪である。
【0027】
本発明の目的において、用語「漂白された毛髪」は、トーンハイトが6超、好ましくは7超の毛髪を意味するものと意図される。
【0028】
本発明の目的において、用語ケラチン線維の着色を「除去する」は、毛髪を本来の色に戻すことができる化学的または物理的誘導剤の適用を含む方法を意味するものと意図される。例証として、除去は、ややアルカリ性のpH、すなわち7と12との間、好ましくは8と10.5との間のpHにおいて、過酸化水素、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムまたは過硫酸アンモニウムをベースとする酸化組成物を適用することにより得られる。
【0029】
本発明の蛍光染料の適用後に毛髪に付与される明色化効果を測定する1つの手段は、毛髪の反射率という現象を利用することである。
【0030】
好ましくは組成物は、暗色の毛髪に適用した後に下記の結果をもたらすべきである。
− 400から700ナノメートルの波長範囲の可視光線を前記毛髪に照射するとき、毛髪の反射性能レベルに関心を集中する。
− 次いで、本発明の組成物で処理した毛髪と非処理の毛髪について、波長の関数としての反射率曲線を比較する。
− 処理毛髪に対応する曲線は、500から700ナノメートルの波長範囲において、非処理毛髪に対応する曲線よりも高い反射率を示すべきである。
− このことは、540から700ナノメートルの波長範囲において、処理毛髪に対応する反射率曲線が、非処理毛髪に対応する反射率曲線よりも高い、少なくとも1つの範囲が存在することを意味する。用語「より高い」は、反射率において少なくとも0.05%、好ましくは少なくとも0.1%の差を意味するものと意図される。同様に、540から700ナノメートルの波長範囲において、処理毛髪に対応する反射率曲線が、非処理毛髪に対応する反射率曲線と重なり合うことができるかまたはそれよりも低い少なくとも1つの範囲が存在し得る。
【0031】
好ましくは、処理毛髪の反射率曲線と非処理毛髪の反射曲線との差が最大である波長は、500から650ナノメートルの波長範囲内、好ましくは550から620ナノメートルの波長範囲内にある。
【0032】
本発明の目的において、他に記述がない限り:
− 「アリール」または「ヘテロアリール」基あるいは基のアリールまたはヘテロアリール部分は、下記から選択される少なくとも1つの炭素原子を有する置換基によって置換されていてもよい:
・ 基:ヒドロキシル、C〜Cアルコキシ、C〜C(ポリ)ヒドロキシアルコキシ、アシルアミノおよび、同一であっても異なっていてもよい2つのC〜Cアルキル基で置換された、任意選択で少なくとも1つのヒドロキシル基を有するアミノ、または場合によりそれが結合している窒素原子とともに、窒素とは同一であっても異なっていてもよい他のへテロ原子を任意選択で含む、飽和または不飽和の、任意選択で置換された5から7員、好ましくは5または6員の複素環を形成し得る2つの基で置換されたアミノ
から選択される1つまたは複数の基により任意選択で置換されたC〜C16、好ましくはC〜C、アルキル基;
・ 塩素、フッ素または臭素などのハロゲン原子;
・ ヒドロキシル基;
・ C〜Cアルコキシ基;
・ C〜Cアルキルチオ基;
・ C〜C(ポリ)ヒドロキシアルコキシ基;
・ アミノ基;
・ 5または6員のヘテロシクロアルキル基;
・ 任意選択でカチオン性の5または6員のヘテロアリール基、任意選択でC〜Cアルキル基、好ましくはメチルにより置換された、好ましくはイミダゾリウム;
・ 同一でも異なっていてもよい1つまたは2つのC〜Cアルキル基で置換された、任意選択で少なくとも:
i)1つのヒドロキシル基、
ii)1つまたは2つの任意選択で置換されたC〜Cアルキル基によって任意選択で置換された1つのアミノ基であって、前記アルキル基は場合により、それが結合している窒素原子とともに、窒素とは異なっていてもいなくてもよい少なくとも1つの他のへテロ原子を任意選択で含む、飽和または不飽和の、任意選択で置換された5から7員の複素環を形成し得る
を有するアミノ基、
・ −NR−COR’、式中、R基は水素原子または任意選択で少なくとも1つのヒドロキシル基を有するC〜Cアルキル基であり、R’基はC〜Cアルキル基である;
・ (R)N−CO−、式中、R基は同一でも異なっていてもよく、水素原子または任意選択で少なくとも1つのヒドロキシル基を有するC〜Cアルキル基を表す;
・ R’SO−NR−、式中、R基は、水素原子または任意選択で少なくとも1つのヒドロキシル基を有するC〜Cアルキル基を表し、R’基はC〜Cアルキル基またはフェニル基を表す;
・ (R)N−SO−、式中、R基は同一でも異なっていてもよく、水素原子または任意選択で少なくとも1つのヒドロキシル基を有するC〜Cアルキル基を表す;
・ (好ましくはアルカリ金属またはアンモニウムを有する、飽和または不飽和の)酸または塩の形態のカルボキシル基;
・ シアノ基;
・ 同一でも異なっていてもよい1から6個の炭素原子および1から6個のハロゲン原子を含むポリハロアルキル基;前記ポリハロアルキル基は、例えばトリフルオロメチルである;
− 非芳香族基の環式または複素環式部分は、下記の基から選択される少なくとも1つの炭素原子を有する置換基によって置換されていてもよい:
・ ヒドロキシル;
・ C〜Cアルコキシ;
・ C〜C(ポリ)ヒドロキシアルコキシ;
・ C〜Cアルキルチオ基;
・ RCO−NR’−、式中、R’基は水素原子、または任意選択で少なくとも1つのヒドロキシル基を有するC〜Cアルキル基であり、R基はC〜Cアルキル基または、同一であっても異なっていてもよい2つのC〜Cアルキル基で置換された、任意選択で少なくとも1つのヒドロキシル基を有するアミノ基である;
・ RCO−O−、式中、R基はC〜Cアルキル基、または同一であっても異なっていてもよい1つまたは2つのC〜Cアルキル基で置換された、任意選択で少なくとも1つのヒドロキシル基を有するアミノ基であって、前記アルキル基は場合により、それが結合している窒素原子とともに、窒素とは異なっていてもいなくてもよい少なくとも1つの他のへテロ原子を任意選択で含む、飽和または不飽和の、任意選択で置換された5から7員の複素環を形成し得る;
・ RO−CO−、式中、R基は、任意選択で少なくとも1つのヒドロキシル基を有するC〜Cアルキル基である;
− 環式または複素環式基またはアリールまたはヘテロアリール基の非芳香族部分はまた、1つまたは複数のオキソまたはチオキソ基によって置換されてよい:
− 「アリール」基は、6から22個の炭素原子を含む、炭素系の縮合または非縮合の、その少なくとも1つの環が芳香族である、単環式または多環式基を表す;好ましくは、アリール基はフェニル、ビフェニル、ナフチル、インデニル、アントラセニルまたはテトラヒドロナフチルである;
− 「ジアリールアルキル」基は、アルキル基の同一の炭素原子上に、同一でも異なっていてもよい2つのアリール基、例えばジフェニルメチルまたは1,1−ジフェニルエチルなどを含む、基を表す;
− 「ヘテロアリール基」は、5から22員であり、窒素、酸素、イオウおよびセレニウム原子から選択される1から6個のヘテロ原子を含み、その少なくとも1つの環が芳香族である、任意選択でカチオン性の、縮合または非縮合の、単環式または多環式基を表す;好ましくは、ヘテロアリール基は、アクリジニル、ベンズイミダゾイル、ベンゾビストリアゾイル、ベンゾピラゾリル、ベンゾピリダジニル、ベンゾキノリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ピリジニル、テトラゾリル、ジヒドロチアゾリル、イミダゾピリジニル、イミダゾリル、インドリル、イソキノリル、ナフトイミダゾリル、ナフトオキサゾリル、ナフトピラゾリル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾロピリジル、フェナジニル、フェノオキサゾリル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリリル、ピラゾイルトリアジル、ピリジル、ピリジノイミダゾリル、ピロリル、キノリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、チアゾロピリジニル、チアゾイルイミダゾリル、チオピリリル、トリアゾリル、キサンチリルおよびそのアンモニウム塩から選択される;
− 「ジヘテロアリールアルキル」基は、アルキル基の同一の炭素原子上に、同一でも異なっていてもよい2つのヘテロアリール基、例えばジフリルメチル、1,1−ジフリルエチル、ジピロリルメチルまたはジチエニルメチルなどを含む、基を表す;
− 「環式基」は、縮合または非縮合の、単環式または多環式の、5から22個の炭素原子を含む非芳香族シクロアルキル基であり、場合により1つまたは複数の不飽和を含む;特に、環式基は、シクロへキシルである;
− 「立体的に妨害された環式」基は、架橋されていてもよい6から14員からなる、置換または非置換の、芳香族または非芳香族の、立体効果または拘束により妨害された環式基である;立体的に妨害された基として、ビシクロ[1.1.0]ブタン、1,3,5−トリメチルフェニル、1,3,5−トリ−tert−ブチルフェニル、1,3,5−イソブチルフェニル、1,3,5−トリメチルシリルフェニルおよびアダマンチルなどのメシチルを挙げることができる;
− 「複素環式基または複素環」は、窒素、酸素、イオウおよびセレニウムから選択される1から6個のヘテロ原子を含む、縮合または非縮合の、単環式または多環式の、5から22員の非芳香族基であって;特に複素環式基は少なくとも1つのヘテロ原子が窒素原子である、窒素、酸素、イオウから選択される1もしくは2個のヘテロ原子の、5から7員環を含み、単環式であって;より特には、複素環式基はピロリジニル及びピペリジルから選択される;
− 「アルキル基」は、直鎖状、または分枝状の、C〜C16、好ましくはC〜Cの炭化水素ベースの基である;
− アルキル基に付けられた表現「任意選択で置換された」は、前記アルキル基が、下記の基:i)ヒドロキシル;ii)C〜Cアルコキシ;iii)アシルアミノ;iv)同一でも異なっていてもよい1つまたは2つのC〜Cアルキル基によって任意選択で置換されたアミノであって、前記アルキル基は場合により、それらを有している窒素原子とともに、窒素とは異なっていてもいなくてもよい他のへテロ原子を任意選択で含む、5から7員の複素環を形成し得る、アミノ;v)あるいは第4級アンモニウム基−NR’R”R”’、M、ここで、R’、R”、R”’は同一でも異なっていてもよく、水素原子またはC〜Cアルキル基を表し、あるいは−NR’R”R”’は、任意選択でC〜Cアルキル基により置換されたイミダゾリウムなどのヘテロアリールを形成し、Mは対応する有機酸、無機酸またはハロゲン化物の対イオンを表す
から選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよいことを含意する;
− 「アルコキシ基」は、アルキルオキシまたはアルキル−O−基であり、ここで、アルキル基は、直鎖状、または分枝状の、C〜C16、好ましくはC〜Cの炭化水素ベースの基である;
− 「アルキルチオ基」は、アルキル−S−基であり、ここで、アルキル基は、直鎖状、または分枝状の、C〜C16、好ましくはC〜Cの炭化水素ベースの基である;アルキルチオ基が任意選択で置換されているとき、それはアルキル基が上記に定義のように任意選択で置換されていることを含意する;
− 値の範囲の限度を定める境界値は、この値の範囲に含まれる;
− 「有機または無機酸の塩」は、より特に:i)塩酸HCl;ii)臭化水素酸HBr;iii)硫酸HSO;iv)メチルスルホン酸およびエチルスルホン酸などのアルキルスルホン酸:Alk−S(O)OH;v)ベンゼンスルホン酸およびトルエンスルホン酸などのアリールスルホン酸:Ar−S(O)OH;vi)クエン酸;vii)コハク酸;viii)酒石酸;ix)乳酸;x)メトキシスルフィン酸およびエトキシスルフィン酸などのアルコキシスルフィン酸:Alk−O−S(O)OH;xi)トルエンオキシスルフィン酸およびフェノキシスルフィン酸などのアリールオキシスルフィン酸;xii)リン酸HPO;xiii)酢酸CHCOOH;xiv)トリフルオロメタンスルホン酸CFSOHならびにxv)テトラフルオロホウ酸HBFから誘導される塩から選択される;
− 「アニオン性対イオン」は、染料のカチオン電荷に付随するアニオンまたはアニオン性基である;より特に、アニオン性対イオンは:i)塩化物または臭化物などのハロゲン化物;ii)ナイトレート;iii)スルホネート、中でも、メチルスルホネートまたはメシレートおよびエチルスルホネートなどのC〜Cアルキルスルホネート:Alk−S(O);iv)ベンゼンスルホネートおよびトルエンスルホネートまたはトシレートなどのアリールスルホネート:Ar−S(O);v)シトレート;vi)サクシネート;vii)タータレート;viii)ラクテート;ix)メチルサルフェートおよびエチルサルフェートなどのアルキルサルフェート:Alk−O−S(O)O;x)ベンゼンサルフェートおよびトルエンサルフェートなどのアリールサルフェート:Ar−O−S(O)O;xi)メトキシサルフェートおよびエトキシサルフェートなどのアルコキシサルフェート:Alk−O−S(O);xii)アリールオキシサルフェート:Ar−O−S(O);xiii)ホスフェート;xiv)アセテート;xv)トリフレート;およびxvi)テトラフルオロボレートなどのボレートから選択される;
− 「溶媒和物」は、水和物ならびにエタノール、イソプロパノールまたはn−プロパノールなどの直鎖状、または分枝状の、C〜Cアルコールとの会合物も表す。
【0033】
本発明の主題の1つは、式(I)のチオール/ジスルフィド蛍光染料に関する。
【0034】
式(I)のチオール/ジスルフィド蛍光染料は、UV放射または可視光範囲において250nmと800nmとの間の波長γabsで吸収することができ、400nmと800nmとの間の発光波長γemにおいて可視光範囲における再放出ができる化合物である。
【0035】
好ましくは、本発明の式(I)の蛍光化合物は、400nmと800nmとの間の可視光範囲γabsにおいて吸収し、400nmと800nmとの間の可視光範囲γemにおいて再放出することができる染料である。より好ましくは、式(I)の染料は、420nmと550nmとの間のγabsにおいて吸収することができ、470nmと600nmとの間のγemで可視光範囲において再放出することができる染料である。
【0036】
本発明の式(I)のチオール蛍光化合物は、nおよびmが1のとき、SY基を含み、SY基は、Yの性質および媒体のpHに応じて、共有結合形態−S−Yまたはイオン形態−Sであってよい。
【0037】
本発明の化合物が複数のアニオン性対イオンAnを含む場合、前記対イオンは同一でも異なっていてもよい。
【0038】
特定の一実施形態は、式中nおよびmが1であり、Yが水素原子またはアルカリ金属を表すSY基を含む、式(II)のチオール蛍光染料に関する。有利には、Yは水素原子を表す。
【0039】
本発明の別の特定の実施形態によれば、前記の式(I)において、Yは当業者に既知の保護基、例えば著作「Protective Groups in Organic Synthesis」、T.W.Greene、John Wiley & Sons編、NY、1981年、193〜217頁;「Protecting Groups」、P.Kocienski、Thieme、第3版、2005年、第5章に記載されているものである。保護基としてのYは、それが結合しているイオウ原子とともにジスルフィド染料を構成することはできない、すなわち、式中m=2、n=0である式(I)を構成することはできないということが理解される。保護基としてのYは、別の酸化されていないイオウ原子を介して、式(I)のイオウ原子と直接結合する基を表すことはできない。
【0040】
特に、Yがチオール−官能基−保護基を表すとき、Yは下記の基から選択される:
・ (C〜C)アルキルカルボニル;
・ (C〜C)アルキルチオカルボニル;
・ (C〜C)アルコキシカルボニル;
・ (C〜C)アルコキシチオカルボニル;
・ (C〜C)アルキルチオチオカルボニル;
・ (ジ)(C〜C)(アルキル)アミノカルボニル;
・ (ジ)(C〜C)(アルキル)アミノチオカルボニル;
・ アリールカルボニル、例えばフェニルカルボニルなど;
・ アリールオキシカルボニル;
・ アリール(C〜C)アルコキシカルボニル;
・ (ジ)(C〜C)(アルキル)アミノカルボニル、例えばジメチルアミノカルボニルなど;
・ (C〜C)(アルキル)アリールアミノカルボニル;
・ SO;M、ここで、Mは、ナトリウムまたはカリウムなどのアルカリ金属を表し、あるいは式(I)のAn 、及びMは存在しない;
・ 任意選択で置換されたアリール、例えば、フェニル、ジベンゾスベリルまたは1,3,5−シクロヘプタトリエニルなど;
・ 任意選択で置換されたヘテロアリール;特に、カチオン性または非カチオン性の1から4個のヘテロ原子を含む下記のヘテロアリール:
i)5、6または7員の単環式、例えばフラニルまたはフリル、ピロリルまたはピリル、チオフェニルまたはチエニル、ピラゾリル、オキサゾリル、オキサゾリウム、イソオキサゾリル、イソオキサゾリウム、チアゾリル、チアゾリウム、イソチアゾリル、イソチアゾリウム、1,2,4−トリアゾリル、1,2,4−トリアゾリウム、1,2,3−トリアゾリル、1,2,3−トリアゾリウム、1,2,4−オキサゾリル、1,2,4−オキサゾリウム、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリウム、ピリリウム、チオピリジル、ピリジニウム、ピリミジニル、ピリミジニウム、ピラジニル、ピラジニウム、ピリダジニル、ピリダジニウム、トリアジニル、トリアジニウム、テトラジニル、テトラジニウム、アセピン、アゼピニウム、オキサゼピニル、オキサゼピニウム、チエピニル、チエピニウム、イミダゾリル、イミダゾリウムなど;
ii)8から11員の二環式、例えば、インドリル、インドリニウム、ベンゾイミダゾリル、ベンゾイミダゾリウム、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサゾリウム、ジヒドロベンゾオキサゾリニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアゾリウム、ピリドイミダゾリル、ピリドイミダゾリウム、チエノシクロヘプタジエニルなど、これらの単環式または二環式基は、(C〜C)アルキル、例えばメチル、またはポリハロ(C〜C)アルキル、例えばトリフルオロメチルなどの1つまたは複数の基によって、任意選択で置換されている;
iii)あるいは下記の三環式ABC:
【0041】
【化2】

【0042】
式中、2つの環A、Cは、任意選択でヘテロ原子を含み、環Bは、5、6または7員、特に6員の環であり、少なくとも1つのヘテロ原子、例えばピペリジルまたはピラニル
を含む;
・ 任意選択でカチオン性の、任意選択で置換されたヘテロシクロアルキルであって、このヘテロシクロアルキル基は、特に、飽和または部分的に飽和の、酸素、イオウおよび窒素から選択される1から4個のヘテロ原子を含む5、6または7員の単環式基、例えば、ジ/テトラヒドロフラニル、ジ/テトラヒドロチオフェニル、ジ/テトラヒドロピロリル、ジ/テトラヒドロピラニル、ジ/テトラ/ヘキサヒドロチオピラニル、ジヒドロピリジル、ピペラジニル、ピペリジニル、テトラメチルピペリジニル、モルホリニル、ジ/テトラ/ヘキサヒドロアゼピニルまたはジ/テトラヒドロピリミジニルなどを表し、これらの基は、(C〜C)アルキル、オキソまたはチオキソなどの1つまたは複数の基によって、任意選択で置換されている;あるいは複素環は下記の基を表す:
【0043】
【化3】

【0044】
式中、R’、R’、R’、R’、R’およびR’は、同一でも異なっていてもよく、水素原子または(C〜C)アルキル基を表し、あるいは2つの基R’とR’、および/またはR’とR’がオキソまたはチオキソ基を形成するか、あるいはR’がR’と、一緒になってシクロアルキルを形成し;vが1と3との間の、境界値を含む整数を表し;好ましくはR’からR’が水素原子を表し;An’はアニオン性対イオンを表す;
・ イソチオウロニウム;
・ −C(NR’R’)=NR’R’;An、ここで、R’、R’、R’およびR’は、同一でも異なっていてもよく、水素原子または(C〜C)アルキル基を表し、好ましくはR’からR’が水素原子を表し;An’は対イオンを表す;
・ イソチオ尿素;
・ −C(NR’R’)=NR’;An、ここで、R’、R’、R’及びAnは、上記に定義の通りである;
・ 任意選択で置換された(ジ)アリール(C〜C)アルキル、例えば、(C〜C)アルキル、メトキシ、ヒドロキシル、アルキルカルボニルなどの(C〜C)アルコキシ、およびジメチルアミノなどの(ジ)(C〜C)(アルキル)アミノから特に選択される1つまたは複数の基によって任意選択で置換された9−アントラセニルメチル、フェニルメチルまたはジフェニルメチルなど;
・ 任意選択で置換された(ジ)ヘテロアリール(C〜C)アルキルであって、このヘテロアリール基は特に、カチオン性または非カチオン性で、窒素、酸素およびイオウから選択される1から4個のヘテロ原子を含む5または6員の単環式基であり、例えば、アルキル、特にメチルなどの1つまたは複数の基によって、任意選択で置換された、ピロリル、フラニル、チオフェニル、ピリジル、4−ピリジルまたは2−ピリジルN−オキシドなどのピリジルN−オキシド、ピリリウム、ピリジニウムまたはトリアジニルなどであり、有利には、(ジ)ヘテロアリール(C〜C)アルキルは、(ジ)ヘテロアリールメチルまたは(ジ)ヘテロアリールエチルである;
・ −CR、ここで、R、RおよびRは、同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子または:
i)(C〜C)アルキル;
ii)(C〜C)アルコキシ;
iii)任意選択で置換されたアリール、例えば、(C1〜C4)アルキル、(C1〜C4)アルコキシまたはヒドロキシルなどの1つまたは複数の基によって任意選択で置換されたフェニルなど;
iv)任意選択で置換されたヘテロアリール、例えば、(C〜C)アルキル基によって任意選択で置換されたチオフェニル、フラニル、ピロリル、ピラニルまたはピリジル;
v)P(Z)R’R’R’、ここで、R’およびR’は、同一でも異なっていてもよく、ヒドロキシル、(C〜C)アルコキシまたはアルキル基を表し、R’はヒドロキシルまたは(C〜C)アルコキシ基を表し、Zは酸素またはイオウ原子を表す;
から選択される基を表す;
・ 立体的に妨害された環式基;および
・ 任意選択で置換されたアルコキシアルキル、例えば、メトキシメチル(MOM)、エトキシエチル(EOM)またはイソブトキシメチルなど。
【0045】
特定の一実施形態によれば、mおよびnが1である式(I)の被保護(protected)チオール蛍光染料は、i)酸素、イオウおよび窒素から選択される1から4個のヘテロ原子を含むカチオン性の芳香族5または6員単環式ヘテロアリール基、例えばオキサゾリウム、イソオキサゾリウム、チアゾリウム、イソチアゾリウム、1,2,4−トリアゾリウム、1,2,3−トリアゾリウム、1,2,4−オキサゾリウム、1,2,4−チアジアゾリウム、ピリリウム、ピリジニウム、ピリミジニウム、ピラジニル、ピラジニウム、ピリダジニウム、トリアジニウム、テトラジニウム、オキサゼピニウム、チエピニル、チエピニウムまたはイミダゾリウムなど;ii)カチオン性の8または11員二環式ヘテロアリール基、例えばインドリニウム、ベンゾイミダゾリウム、ベンゾオキサゾリウムまたはベンゾチアゾリウムなどであって、これらの単環式または二環式ヘテロアリール基は、アルキル、例えばメチル、またはポリハロ(C〜C)アルキル、例えばトリフルオロメチルなどの1つまたは複数の基によって任意選択で置換されている;iii)または下記の複素環式基:
【0046】
【化4】

【0047】
式中、R’およびR’は、同一でも異なっていてもよく、水素原子または(C〜C)アルキル基を表し;好ましくはR’からR’は、メチルなどの(C〜C)アルキル基を表し;An’は、アニオン性対イオンを表す、である基Yを含む。
【0048】
特に、Yはオキサゾリウム、イソオキサゾリウム、チアゾリウム、イソチアゾリウム、1,2,4−トリアゾリウム、1,2,3−トリアゾリウム、1,2,4−オキサゾリウム、1,2,4−チアジアゾリウム、ピリリウム、ピリジニウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、トリアジニウムおよびイミダゾリウム、ベンゾイミダゾリウム、ベンゾオキサゾリウム、ベンゾチアゾリウム、から選択される基を表し、これらの基は1つまたは複数の(C〜C)アルキル基、特にメチルによって任意選択で置換されている。
【0049】
特に、Yはアルカリ金属または:
・ (C〜C)アルキルカルボニル、例えばメチルカルボニルまたはエチルカルボニルなど;
・ アリールカルボニル、例えばフェニルカルボニルなど;
・ (C〜C)アルコキシカルボニル;
・ アリールオキシカルボニル;
・ アリール(C〜C)アルコキシカルボニル;
・ (ジ)(C〜C)(アルキル)アミノカルボニル、例えば、ジメチルアミノカルボニルなど;
・ (C〜C)(アルキル)アリールアミノカルボニル;
・ 任意選択で置換されたアリール、例えばフェニルなど;
・ 5または6員の単環式ヘテロアリール、例えばイミダゾリルまたはピリジルなど;
・ 5または6員のカチオン性単環式ヘテロアリール、例えば、ピリリウム、ピリジニウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、トリアジニウムまたはイミダゾリウムなど;これらの基は、1つまたは複数の、同一のまたは異なる(C〜C)アルキル基、例えばメチルなど、によって任意選択で置換されている;
・ 8から11員のカチオン性二環式ヘテロアリール、例えば、ベンゾイミダゾリウムまたはベンゾオキサゾリウムなど;これらの基は、1つまたは複数の、同一のまたは異なる(C〜C)アルキル基、例えばメチルなど、によって任意選択で置換されている;
・ 下記の式:
【0050】
【化5】

【0051】
のカチオン性複素環;
・ イソチオウロニウム−C(NH)=N;An”’
・ イソチオ尿素−C(NH)=NH;
・ SO、M、ここで、Mは、ナトリウムまたはカリウムなどのアルカリ金属を表し、あるいは式(I)のAn、およびMは存在しない;
などの保護基を表す。
【0052】
本発明の特定の一実施形態によれば、式(I)のジスルフィド蛍光染料は、n=2かつm=0であるジスルフィド染料である場合、中心のジスルフィド基の2つのイオウ原子の間に対称なC2軸を有する。
【0053】
本発明の特定の一実施形態によれば、以下の2つの式(Ia)及び(Ib)の1つに属する本発明の染料:
【0054】
【化6】

【0055】
、これらの有機または無機酸塩、光学異性体および幾何異性体、ならびに水和物などの溶媒和物
[式(Ia)及び(Ib)において:
・ R’は、1つもしくは複数のヒドロキシル基、特には単一のヒドロキシル基あるいは−C(O)−Oで置換されたC1~Cのアルキル基を表し、好ましくは、R’は、1つもしくは複数のヒドロキシル基で置換されていてもよいC1~Cのアルキル基を表し、
・ R’は、1つもしくは複数のヒドロキシル基で置換されていてもよいC1~Cのアルキル基、特に単一のヒドロキシル基を表し、より特には、R’とR’が同一であり、
・ R’とR’は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、ヒドロキシル基、ヒドロキシ(C〜C)アルキル基または−C(O)OR’基を表し(ここでR’は水素原子またはC〜Cアルキル基を表す)、あるいは−C(O)−O基を表し、この場合、アニオン性対イオンAnは存在せず、これら2つの基R’またはR’の一つがただ水素原子を表し得ると理解され、
・ Rは水素原子または−C(O)OR”基を表し(ここでR”は水素原子またはC〜Cアルキル基を表す)、あるいはRは−C(O)−O基を表し、この場合、アニオン性対イオンAnは存在せず、
・ nは1または2であり、
・ mは0または1であり、
・ tは1または2であり、
・ Anはアニオン性対イオンを表し、
・ Yは:i)水素原子、ii)アルカリ金属、iii)アルカリ土類金属、iv)アンモニウム基:Nαβγδ、Anまたはホスホニウム基:Pαβγδ、An(ここでRα、Rβ、RγおよびRδは同一でも異なっていてもよく、水素原子または(C〜C)アルキル基を表し、Anは上記の通りであり)、あるいはv)チオール−官能基−保護基を表し、
− ピリジニウム環の間の結合及びスチリル基の2重結合は、ピリジニウムに関して2位もしくは4位に位置し、
− n=1、m=1である場合にはY=Hもしくはチオール−官能基−保護基であり、n=2である場合にはm=0である、
と理解される]。
【0056】
例証として、下記の式(I)、(Ia)または(Ib)に属する蛍光染料を挙げることができる:
【0057】
【化7A】

【0058】
【化7B】

【0059】
【化7C】

【0060】
【化7D】

【0061】
【化7E】

【0062】
【化7F】

【0063】
Anはアニオン性対イオンを表す。
【0064】
本発明のチオール/ジスルフィド蛍光染料を調製するために、以下の一般的な経路を挙げ得る。
【0065】
式(II’)の被保護チオール染料は、2つの段階で合成され得る。第1の段階は、当業者に既知の方法、例えば、「Thiols and organic sulfides」、「Thiocyanates and isothiocyanates,organic」、Ullmann’s Encyclopedia、Wiley−VCH、Weinheim、2005年、に基づき、非保護のチオール染料(II”)を調製することを本質とする。さらに、第2のステップは、式(II’)の被保護チオール染料を生成するために当業者に既知の従来の方法に基づきチオール官能基を保護することを本質とする。例証として、チオール染料のチオール官能基−SHを保護するために、著作「Protective Groups in Organic Synthesis」、T.W.Greene、John Willey & Sons編、NY、1981年、193〜217頁;「Protecting Groups」、P.Kocienski、Thieme、第3版、2005年、第5章の方法を使用することができる。
【0066】
この方法は、i)(I’)などのジスルフィド官能基−S−S−を有する、複素環式の二−発色団蛍光染料の還元により、式(II”)のチオール蛍光染料を生成すること、およびii)式(II’)の被保護チオール蛍光染料を得るために、従来の方法に基づき、反応物質7 Y’Rにより、前記(II”)のチオール官能基を保護することを本質とする方法により例証され得る。チオール化合物(II”)はまた、式(II”’)のチオレート蛍光染料を生成するように、アルカリ金属またはアルカリ土類金属Metによって金属化されてもよい。
【0067】
【化8】

【0068】
ここで、Y’は、チオール−官能基−保護基を表し;Metは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、特にナトリウムまたはカリウムを表し、金属がアルカリ土類金属であるとき、チオレート−S官能基を含む2個の発色団(chromophore)は、1個のMetal2+と会合することができ;ここで、R、R、R、R、m、n、G及びAnは、上記に定義の通りであり;Y’はチオール−官能基−保護基を表し;Rは、ヌクレオフュージ(nucleofuge)離脱基、例えばメシレート、トシレート、トリフレートまたはハロゲン化物を表すことが理解される。
【0069】
別の可能性によれば、上述の書籍に記載されている手順の1つに従って調製される、上記で定義した保護基Y’により保護された、少なくとも1つの求核官能基を含むチオール化合物(b)は、十分な、好ましくは等モル量の「反応性蛍光発色団」またはそのような「反応性蛍光発色団」を含む化合物(a)を含む化合物と反応し得る。言い換えれば(a)は、蛍光染料(II’)のサブセット(subset)である式(II’a)の蛍光染料の調製において、以下で概略的に示されるように、Σ共有結合を形成するように求電子基を含む:
【0070】
【化9】

【0071】
ここで、R、R、Y’及びAは上記に定義の通りであり;R’、R’、R’、R’は、カルボン酸基、カルボン酸塩、エステル官能基または水素基で置換されていてもよいC〜Cのアルキル鎖を表し、m及びnは1と4との間の整数であり、Nuは、アミンタイプの求核基を表し;Eは、求電子基を表し;Σは、求核剤または求電子剤による攻撃を受けた後に生成される結合基を表す。
【0072】
例証として、生成され得るΣ結合を、求核剤に対する求電子剤の縮合に基づき下記の表に列挙する:
【0073】
【表1】

【0074】
チオール反応物質(α)を使用することもまた可能である:上記に定義のY’基を含むY’−SH、その求核性のSH官能基は、式(II’)の非保護チオール蛍光染料を生成するように、蛍光発色団が有するハロゲン原子に関してα−位にある炭素原子と反応することができる:
【0075】
【化10】

【0076】
ここで、R、R、R、Z、Y’、(II’)及びAは上記に定義の通りであり、Halは、臭素、ヨウ素および塩素などのヌクレオフュージハロゲン原子を表す。
【0077】
より特に、ヌクレオフュージ離脱基は、イソチオウロニウムを生成するように、チオ尿素(S=C(NRR)NRR)の誘導体の基またはチオ尿素によって置換されてよい。例えば、もしチオ尿素基がチオイミダゾリニウム(β)である場合、反応スキームは以下である:
【0078】
【化11】

【0079】
ここで、R、R、R、Z、Hal及びAnは上記に定義の通りであり、R’及びR’はC〜Cのアルキル基を表し、(II””)は式(II’)のサブセットである染料を表す。
【0080】
別の変形例は、環式であるイミダゾリンタイプのチオ尿素(b’)を使用すること、およびそれに続いての、式中、Lgが塩化物、臭化物、トシレートまたはメシレートなどの離脱基であるR’d−Lgを使用する前記イミダゾリンのアルキル化によって、特定の化合物(II’)を得ることを可能にし得る:
【0081】
【化12】

【0082】
ここでR、R、R、Z、R’、R’、(II’)、Hal及びAnは上記に定義の通りである。
【0083】
変形例は、蛍光発色団(a’)を含むハロゲン化物の代わりに、トシレートまたはメシレートなどの別のタイプのヌクレオフュージを含む発色団を使用することである。
【0084】
別の可能性に従って、被保護チオール化合物を、活性化されたカルボン酸官能基を有する化合物と、従来の方法(例えば、カルボジイミドまたはチオニルクロライドとの反応)に基づき反応させることにより、ある種の被保護チオール蛍光染料(II’a)を得ることができる。得られた生成物(d)はその後、第1級または第2級アミンタイプの求核官能基(c)を有する蛍光発色団と反応する。
【0085】
【化13】

【0086】
ここでR、R、R’、R’、An、R’、R’、R’、R’、Y’、m、n、E、Nu及び(II’a)は上記に定義の通りである。
【0087】
別の変形例は、下記のスキーム:
【0088】
【化14】

【0089】
で表されるチオラクトン誘導体を使用することであって、ここで、R、R、R’、R’、Y’、Met、m、n及びAnは上記に定義の通りである。チオラクトン誘導体は、好ましくはn=3という条件で選択される。
【0090】
ある合成変形例は、前記経路を第1の経路と組み合わせることであって、すなわち、2当量の求核反応物質(c)を求二電子(dielectrophilic)ジスルフィド反応物質(i)と共に用いることであり、縮合後に、二発色団の(dichromophoric)ジスルフィド生成物(I)を生成することが可能であり、複素環式蛍光チオール染料(II”a)を生成するように後者を還元させることが可能であるが、順に、染料(II”a)は、(II’a)における非保護チオール蛍光染料を生成するように保護されても、または金属化された複素環式チオール蛍光染料(II”’a)を生成するようにアルカリ金属で金属化させてもどちらでもよい:
【0091】
【化15】

【0092】
別の可能性に従って、Y’基により保護されたチオール基およびハロゲン化基(塩化物、臭化物)のような離脱基Lgを含む化合物d’、あるいは例えばメシレート、トシレート、トリフレートまたはハロゲン化物のようなヌクレオフュージ離脱基によって前もって活性化されたヒドロキシル基(d’)をスチリルピリジン発色団(c’)と反応させることにより、式(II”)の被保護チオール蛍光染料を得ることができる。
【0093】
【化16】

【0094】
ここで、R、R、R、Z、Y’及び(II’)は上記に定義の通りである。
【0095】
別の可能性に従って、本発明の式(I)のチオール蛍光染料は、上記に定義の基Yによって保護されるチオール基及び求電子基(f)を含む化合物を、求核基を含むピリジニウム化合物と反応させることによって得ることができる。例証として、G’が酸素またはイオウ原子を表す場合のアルデヒドまたはチオアルデヒドは、エチレン結合>C=C<を生成するように、アルキルピリジニウム(e)などの「活性化メチレン」と縮合されてよい。この反応は、一般に、「クネーフェナーゲル(Knoevenagel)」縮合と称される。用語「活性化メチレン」は、ピリジニウム基に関して2位または4位の位置で、メチレン基CH3−を含むものとして意図される:
【0096】
【化17】

【0097】
ここで、R、R、R、Z、Y’及びAnは上記に定義の通りであり、Gは酸素またはイオウ原子を表す。
【0098】
著作Advanced Organic Chemistry、「Reactions,Mechanisms and Structures」、J.March、第4版、John Willey & Sons、1992年、または上記に記載の方法で使用される操作条件のより詳細についてはT.W.Greene、「Protective Groups in Organic Synthesis」を参照することができる。
【0099】
形成されたチオール蛍光染料は、従来の保護基を用いて−SHチオールを保護することにより、−S Y’被保護チオール蛍光染料に変換することができる。チオール蛍光染料は、また、当業者に既知の従来の方法、例えば、Advanced Organic Chemistry、「Reactions,Mechanisms and Structures」、J.March、第4版、John Willey & Sons、NY、1992年に記載のものなどを使用して金属化される。
【0100】
被保護チオール染料は、従来の経路、例えば、著作「Protective Groups in Organic Synthesis」、T.W.Greene、John Wiley & Sons編、NY、1981年;「Protecting Groups」、P.Kocienski、Thieme、第3版、2005年に記載のものなど、により脱保護されてよい。
【0101】
出発反応物質は、市販されているかまたは当業者に既知の従来の方法により入手することができる。例証として、2当量のピリジン誘導体1及び2つの離脱基Lgを含む1当量のジスルフィド反応物質を用いて反応物質(I’)を合成することにより、ジピリジニウムジスルフィド塩3を生成することが可能であるが、順に、ジピリジニウムジスルフィド塩3は、アルデヒド/チオアルデヒド基4を含む2当量のアリール化合物で縮合することにより5を生成することができる。
【0102】
【化18】

【0103】
ここで、Lgは例えばメシレート、トシレート、トリフレートまたはハロゲン化物のようなヌクレオフュージ離脱基を表す。前記化合物(I’)の対イオンLgは、特にイオン交換樹脂により、当業者に周知の方法を用いて他の性質を有する対イオンAnで置換し得る。
【0104】
上記に記載の方法で使用される操作条件のより詳細については、著作Advanced Organic Chemistry、「Reactions,Mechanisms and Structures」、J.March、第4版、John Willey & Sons、1992年または「Protective Groups in Organic Synthesis」、T.W.Greeneを参照することができる。
【0105】
形成されるチオール蛍光染料は、従来的な保護基を用いて−SHチオールの保護により、−SY’被保護チオール蛍光染料に変換し得る。チオール蛍光染料は当業者に周知の従来的な方法をも用いて金属化されるが、それは例えば、Advanced Organic Chemistry、「Reactions,Mechanisms and Structures」、J.March、第4版、John Willey & Sons、1992年に記載されている。
【0106】
被保護チオール染料は従来的な経路により脱保護し得るが、それは例えば、「Protective Groups in Organic Synthesis」、T.W.Greene、John Wiley &Sons編、NY、1981年、「Protecting Groups」、P.Kocienski、Thieme、第3版、2005年などに記載されている。
【0107】
本発明の別の課題は、少なくとも1つの式(I)のチオール/ジスルフィド蛍光染料を含む、ケラチン物質を染色するための染料組成物に関する。少なくとも1つの式(I)の蛍光染料の存在に加えて、本発明の組成物は還元剤をも含んでよい。
【0108】
この還元剤は、チオール、例えばシステイン、ホモシステインまたはチオ乳酸、これらチオールの塩、ホスフィン、亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、チオグリコール酸、ならびにそのエステル、特にグリセリルモノチオグリコレート、およびチオグリセロールから選択されてよい。この還元剤はまた、ボロハイドライドおよびこれらの誘導体、例えばボロハイドライドの塩、シアノボロハイドライドの塩、トリアセトキシボロハイドライドの塩またはトリメトキシボロハイドライドの塩:ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、第4級アンモニウム(テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウムまたはベンジルトリエチルアンモニウム)塩;ならびにカテコールボランから選択されてもよい。
【0109】
本発明において使用されてよい染料組成物は、一般に、組成物の全重量に対して、0.001%と50%との間の、式(I)の蛍光染料の量を含む。好ましくは、この量は、組成物の全重量に対して、0.005重量%と20重量%との間、さらにより好ましくは0.01重量%と5重量%との間である。
【0110】
染料組成物はまた、追加の直接染料を含んでもよい。これらの直接染料は、例えば、中性、酸性またはカチオン性ニトロベンゼン直接染料、中性、酸性またはカチオン性アゾ直接染料、テトラアザペンタメチン染料、中性、酸性またはカチオン性キノン、特にアントラキノン染料、アジン直接染料、トリアリールメタン直接染料、インドアミン直接染料および天然直接染料から選択される。
【0111】
天然直接染料の中で、ローソン、ジュグロン、アリザリン、パープリン、カルミン酸、ケルメス酸、パープロガリン、プロトカテクアルデヒド、インジゴ、イサチン、クルクミン、スピヌロシンおよびアピゲニジンを挙げることができる。これらの天然染料を含む抽出物または煎出物、特にパップ(poultice)またはヘナをベースとする抽出物をもまた使用してよい。
【0112】
染料組成物は、1つまたは複数の酸化塩基および/またはケラチン線維を染色するために従来使用されている1つまたは複数のカップラー(coupler)を含んでよい。
【0113】
酸化塩基の中で、パラ−フェニレンジアミン、ビスフェニルアルキレンジアミン、パラアミノフェノール、ビス−パラ−アミノフェノール、オルト−アミノフェノール、複素環式塩基類およびこれらの付加塩を挙げることができる。
【0114】
これらのカップラーの中で、メタ−フェニレンジアミン、メタ−アミノフェノール、メタ−ジフェノール、ナフタレンカップラー、複素環式カップラーおよびこれらの付加塩を、特に挙げることができる。
【0115】
カップラーは、それぞれ一般に、染料組成物の全重量の0.001重量%と10重量%との間、好ましくは0.005重量%と6重量%との間の量で存在する。
【0116】
染料組成物中に存在する酸化塩基は、一般に、染料組成物の全重量の0.001重量%と10重量%との間、好ましくは0.005重量%と6重量%との間の量で、それぞれ存在する。
【0117】
一般に、本発明の文脈において使用することができる酸化塩基およびカップラーの付加塩は、特に、酸との付加塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、トシレート、ベンゼンスルホン酸塩、リン酸塩および酢酸塩など、ならびに塩基との付加塩、ナトリウムまたはカリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、アンモニア水、アミンまたはアルカノールアミンなど、から選択される。
【0118】
染料担体とも呼ばれる、染色に適した媒体は、一般に、水、または水および少なくとも1つの有機溶媒の混合物を構成要素とする化粧用媒体である。有機溶媒として、例えば、エタノールおよびイソプロパノールなどのC〜C低級アルカノール;ポリオールおよびポリオールエーテル、例えば2−ブトキシエタノール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルおよびジエチレングリコールモノメチルエーテル、ならびにベンジルアルコールまたはフェノキシエタノールなどの芳香族アルコール、ならびにこれらの混合物を挙げることができる。
【0119】
水以外の溶媒は、存在する場合には、好ましくは染料組成物の全重量に対して、約1重量%と40重量%との間、さらにより好ましくは約5重量%と30重量%との間の割合で、好ましくは存在する。水を含む溶媒は、好ましくは染料組成物の全重量に対して、約1重量%と99重量%との間、さらにより好ましくは約5重量%と95重量%との間の割合で、好ましくは存在する。
【0120】
一変形例によれば、本発明の組成物は、ケラチンのジスルフィド結合及び/または式(I)の蛍光染料のジスルフィド結合を還元し得る還元剤を含む。この還元剤は前記に記載の通りである。
【0121】
染料組成物はまた、毛髪染色組成物において従来使用されている種々のアジュバント、例えば、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性または双性イオン型界面活性剤またはこれらの混合物、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性または双性イオン型ポリマー、またはこれらの混合物、無機または有機増粘剤、特にアニオン性、カチオン性、非イオン性および両性の会合性ポリマー増粘剤、抗酸化剤、浸透剤、金属イオン封鎖剤、香料、緩衝剤、分散剤、コンディショニング剤、例えば、アミノシリコーンなどの修飾または非修飾の揮発性または不揮発性シリコーンなど、皮膜形成剤、セラミド、防腐剤、乳白剤または導電性ポリマーなどをも含んでよい。
【0122】
上記アジュバントは、そのそれぞれについて、組成物の重量に対して、0.01重量%と20重量%との間の量で一般に、存在する。
【0123】
当然のことながら、当業者であれば、本発明による染料組成物に本来付随する有利な特性が、意図される添加によりまったく、またはほとんど、損なわれることがないように、これらの可能な追加的化合物を、注意深く選択するであろう。
【0124】
染料組成物のpHは、一般に、約3と14との間、好ましくは、約5と11との間である。pHは、ケラチン線維の染色において一般に使用される酸性化剤または塩基性化剤により、または従来の緩衝系により、所望の値に調節してよい。
【0125】
酸性化剤の中で、例証として、塩酸、オルトリン酸、硫酸、カルボン酸、例えば酢酸、酒石酸、クエン酸または乳酸、あるいはスルホン酸などの無機または有機酸を挙げることができる。
【0126】
塩基性化剤の中で、例証として、アンモニア水、アルカリ炭酸塩、モノ−、ジ−およびトリエタノールアミンなどのアルカノールアミン、ならびにこれらの誘導体、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムおよび下記の式(γ)の化合物:
【0127】
【化19】

【0128】
式中、Wは、ヒドロキシル基またはC〜Cアルキル基により任意選択で置換されたプロピレン残基であり;Ra1、Ra2、Ra3およびRa4、は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、C〜Cアルキル基またはC〜Cヒドロキシアルキル基を表す
を挙げることができる。
【0129】
染料組成物は、液体、クリームまたはゲルの形態、あるいはケラチン線維、特に毛髪を染色するのに適したあらゆる他の形態など、種々の形態であってよい。
【0130】
本発明の別の課題は、ケラチン物質を染色する方法であって、少なくとも1つの式(I)の染料を含む組成物を、前記物質に塗布することにある。特定の実施形態によれば、本発明の方法において、少なくとも1つの式(I)の蛍光染料を含む組成物を塗布する前に、前処理として還元剤を塗布してもよい。
【0131】
この還元剤は、チオール、例えばシステイン、ホモシステインまたはチオ乳酸、これらチオールの塩、ホスフィン、亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、チオグリコール酸、ならびにそのエステル、特にグリセリルモノチオグリコレート、およびチオグリセロールから選択されてよい。この還元剤はまた、ボロハイドライドおよびこれらの誘導体、例えばボロハイドライドの塩、シアノボロハイドライドの塩、トリアセトキシボロハイドライドの塩またはトリメトキシボロハイドライドの塩:ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、第4級アンモニウム(テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウムまたはベンジルトリエチルアンモニウム)塩;ならびにカテコールボランから選択されてもよい。
てよい。
【0132】
この前処理は、短時間であってよく、前述の還元剤を用いて、特に1秒から30分、好ましくは1分から15分のものであってよい。
【0133】
別の方法によれば、式(I)の少なくとも1つの蛍光染料を含む組成物はまた、上記に定義の少なくとも1つの還元剤をも含む。この組成物は、次いで毛髪に適用される。
【0134】
mおよびnが1である式(I)のチオール蛍光染料がチオール−官能基−保護基Yを含むとき、本発明の方法は、SH官能基を元の位置に戻すことを目的とする脱保護ステップによって進行されてよい。
【0135】
例証として、pHを下記のように調節することにより、S−Y官能基をY保護基によって脱保護することが可能である:
【0136】
【表2】

【0137】
脱保護ステップはまた、毛髪の前処理ステップ、例えば毛髪の還元前処理、の間に行われてもよい。
【0138】
一変形例によれば、還元剤は、使用時に、式(I)の少なくとも1つの蛍光染料を含む染料組成物に添加される。
【0139】
別の方法によれば、式(I)の少なくとも1つの蛍光染料を含む組成物はまた、上記に定義の少なくとも1つの還元剤をも含む。この組成物は、次いで毛髪に適用される。
【0140】
別の一変形例によれば、還元剤は、後処理として、式(I)の少なくとも1つの蛍光染料を含む組成物の適用後に適用される。還元剤による後処理の継続時間は、短くてよく、例えば、上記に記載の還元剤を用いて、1秒から30分、好ましくは1分から15分であってよい。特定の一実施形態によれば、還元剤は、上記に記載のチオールまたはボロハイドライドタイプの薬剤である。
【0141】
本発明の特定の一実施形態は、式(I)の蛍光染料が、還元剤なしで、還元前処理または還元後処理を行わずに、毛髪に直接適用される方法に関する。
【0142】
酸化剤による処理は、任意選択で組み合わせられてよい。当分野において一般的であるいかなるタイプの酸化剤も使用されてよい。したがって、酸化剤は、過酸化水素、過酸化尿素、アルカリ金属臭化物、過ホウ酸塩および過硫酸塩などの過酸塩、ならびに酵素、中でもペルオキシダーゼ、ウリカーゼなどの2−電子オキシドレダクターゼ、およびラッカーゼなどの4−電子オキシゲナーゼを挙げることができる、から選択されてよい。過酸化水素の使用は、特に好ましい。
【0143】
この酸化剤は、式(I)の蛍光染料を少なくとも1つ含む組成物の塗布の前もしくは後に繊維に塗布し得る。
【0144】
本発明の染料組成物の適用は、一般に、周囲温度において行われる。しかし、20℃から180℃の範囲の温度で行われてもよい。
【0145】
本発明の主題はまた、第1のコンパートメントが、式(I)の少なくとも1つの蛍光染料を含む染料組成物を含み、nが2でmが0の場合に、第2のコンパートメントが、ケラチン物質および/または式(I)の蛍光染料のジスルフィド官能基を還元することができる還元剤を含む、マルチコンパートメント染色デバイスまたは染色「キット」でもある。
【0146】
これらのコンパートメントの1つはまた、1つまたは複数の直接染料または酸化染料タイプの他の染料をも含んでよい。
【0147】
本発明はまた、第1のコンパートメントが、式(I)の少なくとも1つの蛍光染料を含む染料組成物を含み;nが2でmが0の場合に、第2のコンパートメントが、ケラチン物質および/または式(I)のジスルフィド蛍光染料のジスルフィド結合を還元することができる還元剤を含み;第3のコンパートメントが酸化剤を含む、マルチコンパートメントデバイスに関する。
【0148】
別法として、染色デバイスは、mおよびnが1である式(I)の少なくとも1つの被保護チオール蛍光染料を含む染料組成物を含む第1のコンパートメント、被保護チオールをフリーのチオールにするために脱保護することができる薬剤を含む第2のコンパートメントを含む。
【0149】
上記に記載の各デバイスは、所望の混合物を毛髪に供給するための手段、例えば仏国特許FR2586913に記載のデバイスなどを備えていてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0150】
これに続いての実施例は、本発明を、事実上制限することなく例証するのに役立つ。下記の実施例のチオール蛍光染料は、従来の分光法および分光光度法により完全に特徴付けられている。
【実施例】
【0151】
合成の実施例
(実施例1)
1,1’−{ジスルファンジイルビス[エタン−2,1−ジイルイミノ(2オキソエタン−2,1−ジイル)]}ビス[4−(−2−{4−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]フェニル}ビニル)ピリジニウム]二塩化物[1]の合成
【0152】
【化20】

【0153】
合成スキーム:
【0154】
【化21】

【0155】
段階1:N,N’−(ジスルファンジイルジエタン−2,1−ジイル)ビス(2−クロロアセトアミド)の合成
40.3gのシスタミン二塩素塩を100mlの水に溶解し、35%の水酸化ナトリウム32mlを添加し(pH9.7)、温度を5℃に下げる。33.5mlのクロロアセチル塩化物を滴下して導入する一方で、温度を10℃以下かつpHを水酸化ナトリウムを添加することにより7.9と9.3との間に維持する。媒体を大気温度で2時間撹拌し続ける。沈殿物をろ別し、5×150mlの水で洗浄してから、Pの存在のもと、真空下で乾燥させる。35.3gの白色粉末を回収する。分析により、生成物は適合していることが示される。
【0156】
段階2:1,1’−{ジスルファンジイルビス[エタン−2,1−ジイルイミノ(2−オキソエタン−2,1−ジイル)]}ビス(4−メチルピリジニウム)二塩化物の合成
6.1gのN,N’−(ジスルファンジイルジエタン−2,1−ジイル)ビス(2−クロロアセトアミド)と4.5gの4−ピコリンを50mlのNMPに溶解し、19時間、80℃にする。この混合物を冷却した後、次いでアセトン沈殿させ、真空下で乾燥し、9.2gの塩を回収する。分析により、生成物は適合していることが示される。
H NMR(400MHz,DO):2.61(s,6H),2.82(t,4H),3.56(t,4H),5.31(s,4H),7.85(d,4H),8.51(d,4H)
【0157】
段階3:1,1’−{ジスルファンジイルビス[エタン−2,1−ジイルイミノ(2−オキソエタン−2,1−ジイル)]}ビス[4−(2−{4−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]フェニル}ビニル)ピリジニウム]二塩化物[1]の合成
837mgの4−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]ベンズアルデヒド、328μlのピロリジン、232μlの酢酸および490mgの1,1’−{ジスルファンジイルビス[エタン−2,1−ジイルイミノ(2−オキソエタン−2,1−ジイル)]}ビス(4−メチルピリジニウム)二塩化物を10mlのイソプロパノールに溶解し、大気温度で3時間30分間、撹拌し続ける。この混合物を1:1のジクロロメタン/アセトン溶液50ml中に注ぐ。沈降させることによって油が分離するので、それを真空下で乾燥させる。442mgの黒色粉末を回収する。分析により、生成物は適合していることが示される。
【0158】
(実施例2)
1,1’−{ジスルファンジイルビス[エタン−2,1ジイルイミノ(2−オキソエタン−2,1ジイル)]}ビス(4−{2−[4−(3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)フェニル]ビニル}ピリジニウム)二塩化物
【0159】
【化22】

【0160】
合成スキーム:
【0161】
【化23】

【0162】
19.88gの4−(3−ヒドロキシピロリジン−1−イル)ベンズアルデヒド、7.17gのピロリジン、6.05gの酢酸及び24.8gの1,1’−{ジスルファンジイルビス[エタン−2,1−ジイルイミノ(2−オキソエタン−2,1−ジイル)]}ビス(4−メチルピリジニウム)二塩化物を200mlのエタノールに溶解し、大気温度で48時間撹拌し続ける。この混合液をろ過し、100mlのイソプロパノールで3回洗浄する。43.19gの黒色粉末を回収してから、200mlのエタノール、50mlのメタノール及び25mlの水の混合液から再結晶化させる。ろ過し、真空下で乾燥させた後、35.8gの赤れんが色の粉末が得られる。分析により、生成物は適合していることが示される。
【0163】
(実施例3)
2,2’−{ジスルファンジイルビス[エタン−2,1−ジイルイミノ(4−オキソブタン−4,1−ジイル)ピリジニウム−1,4−ジイルエテン−2,1−ジイルベンゼン−4,1−ジイル(メチルイミノ)]}−二酢酸の合成
【0164】
【化24】

【0165】
合成スキーム:
【0166】
【化25】

【0167】
段階1:N,N’−(ジスルファンジイルジエタン−2,1−ジイル)ビス(4−クロロブタンアミド)の合成
60gのシスタミン塩酸塩を500mlに溶解させ、5℃に冷却する。NaOH水溶液(30%)の添加により、pHを10まで上げる。無水THF(500ml)に4−クロロブタノール塩化物溶液(105g)を滴下して添加する一方で、pHをNaOH水溶液(30%)の添加により7より上に維持した。添加が終了し、pHが7で安定した後、この混合液を3日間撹拌し続ける。水相を3×500mlのジクロロメタンで抽出し、THF相と一緒にして、NaSOで乾燥させる。真空下で乾燥後、41gの白色粉末を回収した。分析により、予想される構造に一致した。
【0168】
段階2:1,1’−{ジスルファンジイルビス[エタン−2,1−ジイルイミノ(4−オキソブタン−4,1−ジイル)]}ビス(4−メチル−ピリジニウム)二塩化物の合成
30gのN,N’−(ジスルファンジイルジエタン−2,1−ジイル)ビス(4−クロロブタンアミド)を100mlのアセトニトリル中に分散させ、20.2mlの4−ピオリンを添加してから、反応混合液を80℃で2日間撹拌した。室温で冷却した後、溶媒を蒸発により除去し、得られる油を酢酸エチルで数回洗浄した。44.2gの薄茶色の固体を回収した。分析により、予想される構造に一致した。
【0169】
段階3:2,2’−{ジスルファンジイルビス[エタン−2,1−ジイルイミノ(4−オキソブタン−4,1−ジイル)ピリジニウム−1,4−ジイルエテン−2,1−ジイルベンゼン−4,1−ジイル(メチルイミノ)]}−二酢酸の合成
16.7gの[(4−ホルミルフェニル)(メチル)アミノ]酢酸及び6.3gのピロリジンを50mlのイソプロパノールで80℃で混合した。15分後、1.46gのピロリジンを添加してから、続いて22.5gの1,1’−{ジスルファンジイルビス[エタン−2,1−ジイルイミノ(4−オキソブタン−4,1−ジイル)]}ビス(4−メチルピリジニウム)二塩化物入りの100mlのイソプロパノール溶液を添加した。この反応混合液を2時間加熱してから、室温で冷却し、次いで1.4Lのアセトン上に注いだ。アルゴン下でろ過された、形成された沈殿物を170mlのアセトンで3回洗浄させてから乾燥した。得られる固体を400mlのイソプロパノール及び400mlの水中に分散させてから、1.2lのアセトンを添加した。得られる油を50mlのメタノールに溶解させ、750mlのアセトンを添加した。粘着性の濃褐色の油を500mlアセトンで粉末化させ、ろ別し、乾燥させた。20.5gの黒色粉末を回収した。分析により、予想される構造に一致した。
NMR H CDODppm:2.33(m,4H),2.48(t,4H),2.98(t,4H),3.31(s,6H),3.59(t,4H),4.54(t,4H),6.83(d,4H),6.99(d,2H),7.59(d,4H)7.75(d,2H),7.86(d,4H),8.56(d,4H)
【0170】
(実施例4)
1,1’−{ジスルファンジイルビス[エタン−2,1−ジイルイミノ(4−オキソブタン−4,1−ジイル)]}ビス{4−[2−{4−[ビス−(2−ヒドロキシエチル)アミノ]フェニル}エテニル]ピリジニウム}二塩化物の合成
【0171】
【化26】

【0172】
合成スキーム:
【0173】
【化27】

【0174】
20gの1,1’−{ジスルファンジイルビス[エタン−2,1−ジイルイミノ(4−オキソブタン−4,1−ジイル)]}ビス(4−メチルピリジニウム)二塩化物、1.8mlのピペリジン及び16gの4−[ビス−(2−ヒドロキシ−エチル)−アミノ]−ベンズアルデヒドを70℃で18時間、60mlのイソプロパノール中で一緒に混合した。室温で冷却した後、上清の溶液を捨て、得られる油を温イソプロパノール(100ml、80℃で2時間)で3回洗浄させた。この油を500mlの水に希釈し、冷凍させ、凍結乾燥させた。24gのフワフワしたえんじ色のパウダーが得られた。分析により、予想される構造に一致した。
NMR H CDOD ppm:2.25(m,4H),2.36(t,4H),2.81(t,4H),3.45(t,4H),3.64(t,8H),3.76(t,8H),4.46(t,4H),6.83(d,4H),7.07(d,2H),7.59(d,4H),7.82(d,2H),7.96(d,4H),8.57(d,4H)、
LC/MS勾配 ACONH 20mM−>CH3CN 10分 ESI+ m/z=429
【0175】
(実施例5)
2,2’−{ジスルファンジイルビス[エタン−2,1−ジイルイミノ(4−オキソブタン−4,1−ジイル)ピリジニウム−1,2−ジイルエテン−2,1−ジイルベンゼン−4,1−ジイル(メチルイミノ)]}−二酢酸の合成
【0176】
【化28】

【0177】
合成スキーム:
【0178】
【化29】

【0179】
段階1:1,1’−{ジスルファンジイルビス[エタン−2,1−ジイルイミノ(4−オキソブタン−4,1−ジイル)]}ビス(2−メチル−ピリジニウム)二塩化物の合成
1.13gのN,N’−(ジスルファンジイルジエタン−2,1−ジイル)ビス(4−クロロブタンアミド)を0.5mlのN−メチルピロリジノン及び2.5mlのアセトニトリル中に分散させ、50℃で加熱した。0.71mlのピコリンを添加し、この反応混合液を50℃で5日間撹拌させた。数ミリグラムの炭酸セシウムおよび追加で0.35mlの2−ピコリンを添加した。65℃で1日後、反応混合液を50mlのアセトニトリルに注いだ。得られる粘性物質を酢酸エチルで数回洗浄し、エタノール中に溶解させ、ろ過し、真空下で乾燥させた。0.95gのベージュ色の固体を得た。分析により、予想される構造と一致し、化合物は、例えば以下の段階で用いられた。
LC/MS勾配 ACONH 20mM−>CH3CN 10分 ESI+ m/z=238(ジカチオン)
【0180】
段階2:2,2’−{ジスルファンジイルビス[エタン−2,1−ジイルイミノ(4−オキソブタン−4,1−ジイル)ピリジニウム−1,2−ジイルエテン−2,1−ジイルベンゼン−4,1−ジイル(メチルイミノ)]}−二酢酸の合成
0.35gの[(4−ホルミルフェニル)(メチル)アミノ]酢酸、0.47gの1,1’−{ジスルファンジイルビス[エタン−2,1−ジイルイミノ(4−オキソブタン−4,1−ジイル)]}ビス(4−メチルピリジニウム)二塩化物および42μlのピペリジンを70℃で2時間、3mlのメタノール中に混合した。
反応混合液を25mlの酢酸エチルに注ぎ、沈殿物をろ別し、乾燥させた。黒色粉末を得た。分析により、予想される構造が得られた。
LC/MS勾配 ACONH 20mM−>CH3CN 10分 ESI+ m/z=413
【0181】
(実施例6)
1,1’−{ジスルファンジイルビス[エタン−2,1−ジイルイミノ(4−オキソブタン−4,1−ジイル)]}ビス{2−[−2−{4−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]フェニル}エテニル]ピリジニウム}二塩化物の合成
【0182】
【化30】

【0183】
合成スキーム:
【0184】
【化31】

【0185】
0.37gの4−[ビス−(2−ヒドロキシ−エチル)−アミノ]−ベンズアルデヒド、0.47gの1,1’−{ジスルファンジイルビス[エタン−2,1−ジイルイミノ(4−オキソブタン−4,1−ジイル)]}ビス(4−メチルピリジニウム)二塩化物及び42μlのピペリジンを70℃で2時間、3mlのメタノール中で混合させた。
反応混合液を25mlの酢酸エチル中に注ぎ、沈殿物をろ別してから乾燥させた。黒色粉末を得た。分析により、予想される生成物が得られたことが示された。
LC/MS勾配 ACONH 20mM−>CH3CN 10分 ESI+ m/z=429
【0186】
染色の実施例
(実施例1)
染色方法 − 化合物[1]
【0187】
【表3】

【0188】
【表4】

【0189】
使用時に、組成物A(9ml)およびB(1ml)を混合し、次いで、この製剤を、90%の白色毛髪を含む天然の白色毛髪(NW)、パーマネントウェーブ処理白色毛髪(PW)あるいはトーンハイト4(TH4)を有する暗色毛髪の毛束に適用する。放置時間は大気温度(AT)で20分である。
【0190】
流水ですすいだ後、水で10倍希釈した定着液(fixer)(Dulcia Vital II(登録商標))をATで5分間適用する。流水ですすぎ、シャンプーした後、毛束を空気乾燥させる。このように処理した暗色毛髪の明色化が観察される:TH4の毛束は、非処理のコントロール毛束よりも視覚的に明るくなっていた。白色毛髪の束は、強いシェイドで着色されている。
【0191】
視覚的観察:
実施例[1]のすすぎおよびシャンプー洗浄の間に、眼に見える色のにじみは存在しない;シャンプーの泡およびすすぎの水は、事実上、着色されていない。
【0192】
観察された色は染色されたNW及びPWで維持され、明色化効果はシャンプー洗浄したTH4の毛髪において可視的な状態で残存している。
【0193】
シャンプー洗浄に関しての迅速さのテスト
処理された毛束を1連の24回のシャンプー作業で洗浄する。シャンプーの泡は着色されていないか、あるいは事実上着色されておらず、この色はNW及びPWの毛束上で、時間が経っても光沢がなくならないことが観察される。明色化効果もまた損なわれないまま残存している。
【0194】
視覚的な明色化を評価するための反射率の結果:
本発明による組成物の明色化効果は、毛髪の反射率の関数として示された。これらの反射率を、トーンハイトTH4の非処理の毛束の反射率と比較する。
【0195】
反射率は、KONIKA−MINOLTA(登録商標)、CM 3600d分光測色計装置を用いて、毛髪に波長範囲400から700ナノメートルの可視光を照射した後に、測定する。
【0196】
【表5】

【0197】
第1に、本発明の組成物で処理した毛束の反射率は、非処理の毛束の反射率と比べて大きいことが分かる。最も特に、580nmより大きな波長範囲において、染料[1]で処理した毛束の反射率は、対照毛束の反射率よりも非常に大きい。したがって、この化合物で処理される毛束は、明色化されたと考えられる。24回のシャンプー洗浄後にも、この効果が完全に保持されることにも留意する。
【0198】
毛束NW、PWの色を評価するためのL系における結果:
毛束の色を、MINOLTA(登録商標)CM 3600D分光測色計(イルミナントD65)を用いて、L系で評価した。
【0199】
このL系において、Lは、明度を表し、aは、緑/赤色軸、bは、青/黄色軸を表す。Lの値が大きくなるほど、色は明るく、あるいは弱くなる。反対に、Lの値が小さくなるほど、色は暗く、あるいは大幅に強くなる。aの値が大きくなるほど、シェイドは、赤味が強くなり、bの値が大きくなるほど、シェイドは、より黄色味が強くなる。
【0200】
TH4の染色された毛束と洗浄された毛束との間の着色の変化は、下記の等式に従い(ΔE)により測定される:
【0201】
【数1】

【0202】
この等式において、L、aおよびbは、染色前に測定した値を示し、L、aおよびbは、染色(またはシャンプー洗浄)前に測定した値を示す。
【0203】
ΔEの値が大きくなるほど、TH4の毛束と着色された毛束との間の色の差は大きくなる。
【0204】
【表6】

【0205】
天然の白色毛髪及びパーマネントウェーブ処理白色毛髪は明るい橙赤色に着色される。連続的なシャンプー洗浄による、シャンプー洗浄後、これらの値はほとんど変化しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

の蛍光染料、これらの有機または無機酸塩、光学異性体および幾何異性体、ならびに水和物などの溶媒和物
[式(I)において:
[ここで式(I)において:
・ Rは、1つもしくは複数のヒドロキシル基、あるいは−C(O)OR’基(ここでR’は水素原子、C〜Cアルキル基、または−C(O)−O基を表し、この場合、アニオン性対イオンAnは存在しない)で置換されたC1~Cのアルキル基を表し、
・ Rは、1つもしくは複数のヒドロキシル基で置換されていてもよいC1~Cのアルキル基を表し、
・ あるいは基R及びRは、それらを有する窒素と一緒になって、少なくともヒドロキシル、(ポリ)ヒドロキシ(C〜C)アルキル、及び/または−C(O)OR’基
で置換される飽和複素環式基を形成し(ここでR’は水素原子、C〜Cアルキル基、または−C(O)−O基を表し、この場合、アニオン性対イオンAnは存在しない)、
・ Rは、水素原子または−C(O)OR”基を表し(ここでR”は水素原子、アルカリ金属またはC1~Cのアルキル基を表す)、あるいはRは−C(O)−O基を表し、この場合、アニオン性対イオンAnは存在せず、
・ Zは、2価のアミドである−C(O)−N(R)−もしくは−N(R)−C(O)−基、あるいはアミドである−C(O)−N(R)−もしくは−N(R)−C(O)−基で中断される2価のC〜C10アルキレン基を表し、
・ nは1または2であり;
・ mは0または1であり;
・ Anはアニオン性対イオンを表し、
・ Yは:i)水素原子、ii)アルカリ金属、iii)アルカリ土類金属、iv)アンモニウム基:Nαβγδ、ホスホニウム基:Pαβγδ(ここでRα、Rβ、RγおよびRδは同一でも異なっていてもよく、水素原子または(C〜C)アルキル基を表す)、あるいはv)チオール−官能基−保護基を表し、
− ピリジニウム環の間の結合及びスチリル基の2重結合は、ピリジニウムに関して2位もしくは4位に位置し、
− n=1、m=1である場合にはY=Hもしくはチオール−官能基−保護基であり、n=2である場合にはm=0であり、
− 式(I)の化合物が他のカチオン性部分を含有する場合、1つまたは複数のアニオン性対イオンと結合するため、式(I)は電気的中性を達成できる、
ことが理解される]。
【請求項2】
Yが水素原子またはアルカリ金属を表す、請求項1に記載の式(I)のチオール蛍光染料。
【請求項3】
Yが保護基を表す、請求項1に記載の式(I)のチオール蛍光染料。
【請求項4】
Yが、下記の基:
(C〜C)アルキルカルボニル;
(C〜C)アルキルチオカルボニル;
(C〜C)アルコキシカルボニル;
(C〜C)アルコキシチオカルボニル;
(C〜C)アルキルチオチオカルボニル;
(ジ)(C〜C)(アルキル)アミノカルボニル;
(ジ)(C〜C)(アルキル)アミノチオカルボニル;
アリールカルボニル;
アリールオキシカルボニル;
アリール(C〜C)アルコキシカルボニル;
(ジ)(C〜C)(アルキル)アミノカルボニル;
(C〜C)(アルキル)アリールアミノカルボニル;
カルボキシル;
SO;M、ここで、Mはアルカリ金属を表し、あるいは式(I)のAnおよびMは存在しない;
任意選択で置換されたアリール;
任意選択で置換されたヘテロアリール;
任意選択でカチオン性の、任意選択で置換されたヘテロシクロアルキル;
下記の基;
【化2】

{式中、R’、R’、R’、R’、R’およびR’は、同一でも異なっていてもよく、水素原子または(C〜C)アルキル基を表し、あるいは2つの基R’とR’、および/またはR’とR’がオキソまたはチオキソ基を形成するか、あるいはR’がR’と、一緒になってシクロアルキルを形成し;vが1と3との間の、境界値を含む整数を表し;好ましくはR’からR’が水素原子を表し;An’はアニオン性対イオンを表す;}
イソチオウロニウム;
−C(NR’R’)=NR’R’;An’、ここで、R’、R’、R’およびR’は、同一でも異なっていてもよく、水素原子または(C〜C)アルキル基を表し、Anは上記に定義の通りである;
イソチオ尿素;
−C(NR’R’)=NR’;An’、ここで、R’、R’、R’およびAnは、上記に定義の通りである;
任意選択で置換された(ジ)アリール(C〜C)アルキル;
任意選択で置換された(ジ)ヘテロアリール(C〜C)アルキル;
−CR、ここで、R、RおよびRは、同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子または:
{i)(C〜C)アルキル;
ii)(C〜C)アルコキシ;
iii)任意選択で置換されたアリール;
i)任意選択で置換されたヘテロアリール;
ii)P(Z)R’R’R’、ここで、R’およびR’は、同一でも異なっていてもよく、ヒドロキシル、(C〜C)アルコキシまたはアルキル基を表し、R’はヒドロキシルまたは(C〜C)アルコキシ基を表し、Zは酸素またはイオウ原子を表す;
から選択される基}を表す;
立体的に妨害された環式基;および
任意選択で置換されたアルコキシアルキル、
から選択される保護基を表す、請求項3に記載の式(I)のチオール蛍光染料。
【請求項5】
Yが、アルカリ金属、または下記の基:
{(C〜C)アルキルカルボニル;
アリールカルボニル;
(C〜C)アルコキシカルボニル;
アリールオキシカルボニル;
アリール(C〜C)アルコキシカルボニル;
(ジ)(C〜C)(アルキル)アミノカルボニル;
(C〜C)(アルキル)アリールアミノカルボニル;
任意選択でアリール;
同一でも異なっていてもよい1つまたは複数の(C〜C)アルキル基によって任意選択で置換された5または6員のカチオン性単環式ヘテロアリール;
同一でも異なっていてもよい1つまたは複数の(C〜C)アルキル基によって任意選択で置換された8から11員のカチオン性二環式ヘテロアリール;
下記の式:
【化3】

のカチオン性複素環;
イソチオウロニウム;
−C(NH)=N;An’
イソチオ尿素;
−C(NH)=NH;および
SO;M、ここで、Mはアルカリ金属を表し、あるいは式(I)のAnおよびMは存在しない}
から選択される保護基を示す、請求項1から4のいずれか一項に記載の式(I)のチオール蛍光染料。
【請求項6】
中心のジスルフィド基の2つのイオウ原子の間に対称なC2軸を有する、請求項1に記載の式(I)のジスルフィド蛍光染料。
【請求項7】
二つの式(I)および(I)の一つに属し、請求項1から6のいずれか一項に記載の蛍光染料
【化4】

、これらの有機または無機酸塩、光学異性体および幾何異性体、ならびに水和物などの溶媒和物
[式(Ia)及び(Ib)において:
・ R’は、1つもしくは複数のヒドロキシル基または−C(O)−Oで置換されたC1~Cのアルキル基を表し、
・ R’は、1つもしくは複数のヒドロキシル基で置換されていてもよいC1~Cのアルキル基を表し
・ R’とR’は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、ヒドロキシル基、ヒドロキシ(C〜C)アルキル基または−C(O)OR’基を表し(ここでR’は水素原子またはC〜Cアルキル基を表す)、あるいは−C(O)−O基を表し、この場合、アニオン性対イオンAnは存在せず、これら2つの基R’またはR’の一つがただ水素原子を表し得ると理解され、
・ Rは窒素原子または−C(O)OR”基を表し(ここでR”は水素原子またはC〜Cアルキル基を表す)、あるいはRは−C(O)−O基を表し、この場合、アニオン性対イオンAnは存在せず、
・ nは1または2であり、
・ mは0または1であり、
・ tは1または2であり、
・ Anはアニオン性対イオンを表し、
・ Yは:i)水素原子、ii)アルカリ金属、iii)アルカリ土類金属、iv)アンモニウム基:Nαβγδ、Anまたはホスホニウム基:Pαβγδ、An(ここでRα、Rβ、RγおよびRδは同一でも異なっていてもよく、水素原子または(C〜C)アルキル基を表し、Anは上記の通りであり)、あるいはv)チオール−官能基−保護基を表し、
− ピリジニウム環の間の結合及びスチリル基の2重結合は、ピリジニウムに関して2位もしくは4位に位置し、
− n=1、m=1である場合にはY=Hもしくはチオール−官能基−保護基であり、n=2である場合にはm=0である、
と理解される]。
【請求項8】
下記の式:
【表1A】

【表1B】

【表1C】

【表1D】

【表1E】

【表1F】

(ここで、Anはアニオン性対イオンを表す)
から選択される、請求項1、6及び7のいずれか一項に記載の蛍光染料。
【請求項9】
適切な化粧用媒体中に、請求項1から8のいずれか一項に記載の式(I)の蛍光染料を含む染料組成物。
【請求項10】
場合により還元剤の存在下で、請求項1から8のいずれか一項に記載の式(I)の蛍光染料を少なくとも1つ含む適切な染料組成物がケラチン物質に塗布される、ケラチン物質を染色するための方法。
【請求項11】
前記ケラチン物質が6以下のトーンハイトを有する暗色のケラチン線維である、請求項10に記載のケラチン物質を染色するための方法。
【請求項12】
前記ケラチン繊維に酸化剤を塗布する追加の段階を含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
第1のコンパートメントが請求項1から8に記載の式(I)の蛍光染料を含む染料組成物を含み、第2のコンパートメントが還元剤を含む、マルチコンパートメントデバイス。
【請求項14】
ヒトのケラチン繊維、特に、好ましくは6未満のトーンハイトを有するヒトの暗色のケラチン線維を染色するための、請求項1から8に記載の、あるいは式(I)の蛍光染料の使用。
【請求項15】
特に6未満のトーンハイトを有する暗色のケラチン線維を明色化するための、請求項14に記載の使用。

【公開番号】特開2009−144136(P2009−144136A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−243365(P2008−243365)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】