説明

ヘモフィルス・インフルエンザb型菌用の培養培地

本発明は、タンパク態窒素源が比動物起源のものであり、かつ、少なくとも1つの植物系ペプトンを含むこと、およびヘム源がプロトポルフィリンIXを含むことを特徴とするヘモフィルス・インフルエンザb型菌用の培養培地に関する。この培地は、特に、ポリリボシル・リン酸(PRP)の製造のため、およびヘモフィルス・インフルエンザb型菌髄膜炎に対するワクチンの製造のために用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、タンパク態窒素源が少なくとも1つの植物系ペプトンを含んでおり、かつ、ヘム源がプロトポルフィリンIXからなっている、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)b型菌用の培養培地である。本発明はまた、ヘモフィルス・インフルエンザb型菌髄膜炎に対するワクチンの製造に用いるポリリボシル・リビトール・リン酸(PRP)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
莢膜は、ヘモフィルス・インフルエンザb型菌株の病原性の主要因子である。それは、リボシル・リビトール・リン酸の反復単位の連続からなる多糖である。ポリリボシル・リビトール・リン酸(PRP)または莢膜多糖体b型なる表現は、ヘモフィルス・インフルエンザb型菌莢膜を示すために互換的に用いられる。
【0003】
ヘモフィルス・インフルエンザb型菌集団は、しばしば、不均一であり;莢膜を持つ細菌と莢膜を持たない細菌とが共存する。莢膜を持たない細菌は、自然に生じる遺伝子変異の結果、それらの莢膜を発現する能力を喪失した。Hoisethら(非特許文献1)によると、莢膜発現の喪失は、細菌の各世代で0.1〜0.3%の頻度で生じる。遺伝子レベルでは、cap遺伝子座がこれらの細菌の表面での莢膜の発現に関与していることを示している(非特許文献2)。莢膜を持つ細菌は、18Kb遺伝子のコピーを少なくとも2つ持っているcap遺伝子座を有する。莢膜を持たない細菌は、もはや、18Kb遺伝子またはこの遺伝子のコピーを1つだけでも持ってはいない。莢膜を持つ細菌を同定するために、通常、抗PRP抗体の存在下での細菌のスライドガラス上での凝集試験が用いられるか、または、cap遺伝子座を特徴付ける分子生物学技術が用いられる。
【0004】
ヘモフィルス・インフルエンザb型菌感染を予防するために、PRP由来のワクチン、またはキャリアタンパク質と共有結合したPRPが用いられる。これらのワクチンを製造するためには、大量の培養培地中にて大量の細菌を製造することが必要であり、この培養培地からPRPが抽出され、次いで、精製される。それにもかかわらず、莢膜を持つヘモフィルス・インフルエンザb型細菌が莢膜を持たない形態へ復帰する容易さは、PRPの製造の障害となり得る。
【0005】
PRPの工業的製造に関しては、酵母エキス、グルコース、ヘミン、β−NADおよび無機塩を添加したタンパク態窒素の主要供給源である動物ペプトンをベースとする培養培地が一般に使用される。例えば、特許文献1に記載されている生産培地が挙げられる。
【0006】
BSEに関連するリスクのために、動物起源の製品、さらに詳しくはヒト起源またはウシ起源の製品の代わりにより良好な生物学的安全性を提供する生成物を用いることが求められている。
【0007】
Cartyら(非特許文献3)は、PRPの生産に関して動物ペプトンの代わりにダイズペプトンを用いることができることを示している。この培地(MP培地)の1リットル当たりの組成は以下のとおりである:ダイズペプトン:10g;酵母イースト:10ml;NaCl:5g;K2HPO4:2.5g;Na2HPO4:3.3g;デキストロース:5g;塩化ヘミン:10mg;NAD:10mg。
【0008】
Takagiら(非特許文献4)は、Carty培地(MP培地)の組成を最適化することを求めた。彼らは、ヘミンおよびβ−NAD濃度が増加した場合に培養培地中のPRP濃度が70%増加して0.25g/lに達することができることを示した。したがって、PRPの生産を増加させるためには、ヘモフィルス・インフルエンザb型菌の増殖に必要なコファクター(ヘミンおよびβ−NAD)濃度を増加させることが必要であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,459,286号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Hoiseth et al. Infectious and Immunity (1985), 49: 389-395
【非特許文献2】Kroll, J. S., et al., J. Bacteriol. (1988) 170: 859-864
【非特許文献3】Carty et al. in Dev. Indust. Microbiol. 26: 763-767 (1985)
【非特許文献4】Takagi et al. J. Chem. Tech. and Biotech 81: 182-188 (2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、特に培養容量が大きい(100リットル以上)場合に、最良の生物学的安全条件を適用しながら、PRPを製造する方法を改良することが依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明の主題は、タンパク態窒素源が非動物起源のものであり、少なくとも1つの植物系ペプトンを含むことを特徴とし、かつ、ヘム源がプロトポルフィリンIXからなることを特徴とする、ヘモフィルス・インフルエンザb型菌用の新規培養培地である。このような培地は、PRPの工業的製造に特に適している。それは、動物起源のペプトンの代わりに植物系ペプトンを用いるので、大きな生物学的安全性をもたらす。工業的に利用可能な培養上清中のPRPレベル(0.2g/l以上のレベル)を得るために必要なプロトポルフィリンIXはヘミンの10分の1〜20分の1であるので、生産コストの偶発性にも対応している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、動物起源のペプトンの代わりにエンドウペプトンを用いた培養培地におけるPRP生産レベル(mg/l)を、ヘミンの濃度(−◆−)または動物起源のプロトポルフィリンIXの濃度(−■−)もしくは合成起源のプロトポルフィリンIXの濃度(−(黒塗りの三角)−)(μg/l)の関数として表す。
【図2】図2は、動物起源のペプトンの代わりにコムギペプトンを用いた培養培地におけるPRP生産レベル(mg/l)を、ヘミンの濃度(−◆−)または動物起源のプロトポルフィリンIXの濃度(−■−)もしくは合成起源のプロトポルフィリンIXの濃度(−(黒塗りの三角)−)(μg/l)の関数として表す。
【図3】図3は、ヘモフィルス・インフルエンザ血清型bの種々の細菌集団の電気泳動プロファイルを表す: バンドMは、18kbおよび45kbの2つのバンドを有する不均一な貯蔵集団の電気泳動プロファイルを表し;バンドFは、45kbの単一バンドを有する選択固体培地での選択後の娘集団(F)の電気泳動プロファイルを表し;バンドBは、45kbの単一バンドを有する種々の白色細菌コロニー(B)のプロファイルを表し;バンドGは、18kbの単一バンドを有する種々の灰色細菌コロニーの種々のプロファイルを表す。 バンドMWは分子量マーカー(kb)の位置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
「ヘモフィルス・インフルエンザ血清型bの培養のための培地」なる表現は、ヘモフィルス・インフルエンザ血清型bの増殖を促進する培地であって、
タンパク態窒素源、
ヘム源、
β−NAD源、
炭水化物源
ビタミンおよび増殖因子の供給源、および
無機塩
を含む培地を意味すると解される。
【0015】
「タンパク態窒素源」なる表現は、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、ペプトンおよび/またはタンパク質の量がこの組成物の乾燥重量の少なくとも50%である調製物を意味すると解される。
【0016】
「非動物起源のタンパク態窒素源」なる表現は、非動物起源のものであるタンパク態窒素源を意味すると解される。結果として、該調製物は、動物細胞、動物組織、または動物臓器もしくは動物体からは製造されない。それは、一般に、植物、藻類、細菌、酵母または真菌類から製造される。
【0017】
本発明の培養培地は、第一に、液体培地を示すが、固体形態のものであってもよい。該固体形態は、液体培地に、通常10〜30g/lの濃度範囲で使用される寒天のようなゲル化物質を添加することによって得られる。
【0018】
本発明のヘム源は、式:
【化1】

[式中、Rは、Hまたは塩、好ましくは、アルカリ金属塩、特に、ナトリウム塩を表す]
で示されるプロトポルフィリンIXによって表される。
【0019】
本発明の場合、プロトポルフィリンIXは、鉄と錯体形成していない。これまでPRPの生産に推奨されていた培地は全て、ヘム源として、(ヘムに関する場合)鉄と錯体形成したプロトポルフィリンIX、または(ヘミンに関する場合)FeClと錯体形成したプロトポルフィリンIX、または稀であるが(ヘマチンに関する場合)FeOHと錯体形成したプロトポルフィリンIXを含有していた。たとえヘモフィルス・インフルエンザ血清型b株がプロトポルフィリンIXを鉄と錯体形成した形態に変換するフェロケラターゼを有するとしても(Loeb et al., J. Bacteriology (1995), 177; 3613-3615)、工業的に利用可能な濃度でPRPを製造するために、植物系ペプトンをベースとする培養培地中でヘム源として錯体形成していないプロトポルフィリンIXを使用することができることは示されていない。PRPの工業的生産を保証するためには培養上清中に少なくとも0.1〜0.2g/lのPRPが必要であると一般に考えられる。
【0020】
驚くべきことに、ヘム源としてプロトポルフィリンIXを使用し、タンパク態窒素源として植物系ペプトンを使用することによって、必要なプロトポルフィリンIX濃度が、ヘム源が鉄と錯体形成したプロトポルフィリンIXである場合に使用されるその濃度の10分の1〜100分の1となることが観察された。実施例1に示すように、PRPの最大生産(培養上清中の濃度は約0.4g/lである)を得るためには100〜200μg/lのプロトポルフィリンIX濃度で十分であるが、等量のPRP生産を得るためには10倍から20倍のヘミン濃度が必要である。さらにまた、プロトポルフィリンIXの濃度が10μg/l程度の低さであっても、相当量のPRPの生産が観察されたが、ヘミンの場合にはほんの僅かである。50μg/lのプロトポルフィリンIXでは、PRPの生産は、100μg/l(既に工業的規模で使用することができる割合)に達するか、またはそれを超えるが、培養培地が同濃度のヘミンを含有する場合には約10μg/lまたはそれ以下である(図1および2を参照)。
【0021】
したがって、本発明の主題は、
プロトポルフィリンIX濃度が少なくとも0.01mg/l、少なくとも0.02mg/l、少なくとも0.03mg/l、少なくとも0.04mg/l、または好ましくは、少なくとも0.05mg/lである本発明の培養培地
である。
【0022】
一般に、培養培地中のプロトポルフィリンIX濃度は、0.1mg/l〜5mg/l、好ましくは、0.1mg/l〜2mg/lである。これらの濃度範囲において、培養上清中でPRPの最適な生産をもたらすための原料が最適に使用される。
【0023】
本発明の主題に適しているプロトポルフィリンIXは、動物起源のものであってよく、動物(ウシ、ブタおよび同類のもの)の組織から製造され得る。これらの調製物の純度は、一般に、少なくとも80%、好ましくは、少なくとも90%、さらに好ましくは、少なくとも95%(重量/重量)である。混入物は、残りの量のアミノ酸、ペプチドおよび/またはタンパク質を含有し得るが、存在していてもよい残りの量のアミノ酸、ペプチドおよび/またはタンパク質は一般的に調製物の乾燥重量の5%未満、より一般的には1%未満であるので、該プロトポルフィリンIX調製物は、本発明の目的のためのタンパク態窒素源であるとは考えられない。
【0024】
好ましくは、より大きな生物学的安全性を確実にするために、動物起源の混入物を含まないプロトポルフィリンIXを使用する。このようなプロトポルフィリンIXを製造するために、2007年3月30日に出願された出願番号第07/02334号のフランス特許出願に記載されたスキーム2に記載されている工程を用いる製造方法を使用することができる。
【0025】
別の好ましい実施態様では、本発明の培養培地は、動物起源の混入物を含まないプロトポルフィリンIXを含む。
【0026】
本発明の主題によると、タンパク態窒素の主要供給源は、1つ以上の植物系ペプトンによって表される。それらは、一般に、加水分解物の形態のものである。それらは、タンパク質を最も多く含有する植物の部分から抽出されるタンパク質の酵素的または化学的処理によって得られる。好ましくは、遺伝子組換えされていない植物が用いられる。化学的ルートを用いる場合、方法の一つは、高温状態で加圧下にてタンパク質抽出物を塩酸で処理することである。次いで、該加水分解物を水酸化ナトリウムで中和し、次いで、固体副産物を除去する。酵素的ルートを用いる場合、古典的な方法の一つは、タンパク質抽出物をパパインで処理することである。
【0027】
植物系ペプトンは、主に、アミノ酸とMWが1KD以下の小ペプチドとの混合物を含有する調製物である。MWが1KDを超えるペプチドは、一般に、該混合物の40%未満である。必要な場合には、小さいサイズのペプチドを濃縮または選択するために、限外濾過した加水分解物を使用することもできる。1KD以下、または500ダルトン以下または350ダルトン以下のPMを有する加水分解物フラクションを選択するために、限外濾過した加水分解物をさらにクロマトグラフィー処理することもできる。かくして、40%を超えるペプチド、50%を超えるペプチド、または60%を超えるペプチドが1KD以下、または500ダルトン以下または350ダルトン以下のPMを有する植物系ペプトン調製物が得られる。本発明の主題に適している植物系ペプトンは、特に、ジャガイモから得られるもの、例えば、Organotechnieによって供給されるもの(plant peptone E1またはplant peptone ET1)、ダイズから得られるもの、例えば、OrganotechnieまたはKerryによって供給されるもの、ワタから得られるもの(Questによって供給されるHy cotton)、コメから得られるもの(Kerryによって供給されるHy rice)、Solabiaによって供給されるソラマメから得られるもの、コムギから得られるもの、例えば、Organotechnieによって供給されるもの(wheat peptone E1)またはKerryによって供給されるもの(HypepTM 4602、HypepTM 4601)、またはエンドウから得られるもの、特に、Kerryによって供給されるエンドウの酵素加水分解物(HY pea 7404)もしくはOxoidによって供給されるエンドウの酵素加水分解物(VG 100)、または「Acid hydrolyzed vegetable peptone」の名称の下に参照されるOxoidによって供給されるエンドウの酸加水分解物である。好ましくは、本発明の主題に適している植物系ペプトンは、コムギペプトンであり、より好ましくは、植物系ペプトンはエンドウペプトンである。
【0028】
植物系ペプトンを使用するための濃度を定義するためには、ペプトンのタンパク態窒素含有率が考慮される。この含有率は、Kjeldahl法(Lynch JM et al., J AOAC Int. (1999) 82(6):1389-98)を使用して算出される。通常、本発明の主題による植物系ペプトンのタンパク態窒素含有率は、ペプトン1g当たり8%〜15%(重量/重量)である。この範囲では、本発明の培養培地中の植物系ペプトン濃度が0.08〜2.25g/lの範囲、好ましくは0.4〜1.5g/lの範囲のタンパク態窒素濃度に相当する場合に優れた結果が得られる。
【0029】
したがって、本発明の主題は、総植物系ペプトン濃度が0.08g/l〜2.25g/lの範囲のタンパク態窒素濃度と等価である培地である。
【0030】
β−NAD(因子Vまたはβ−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドとも称される)の供給源としてβ−NAD自体の精製調製物またはニコチンアミドリボシド(NR)、β−ニコチンアミドアデニンモノヌクレオチド(NMN)もしくはβ−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート(NADP)から選択されるβ−NADの誘導体を含有する精製調製物が使用される。調製物の純度は、一般に、少なくとも80%、好ましくは、少なくとも90%、より好ましくは、少なくとも95%である。本発明の場合、好ましくは、動物起源のタンパク質混入物を含まないβ−NAD源が使用される。これらの精製調製物は、少なくとも1μMの濃度で使用される。例えば、β−NADは、培養培地1リットル当たり2〜50mgの範囲の濃度で使用される。
【0031】
炭水化物源としては、ヘモフィルス・インフルエンザb型菌によって代謝される糖、例えば、フルクトース、リボース、キシロース、フコース、グリセロール、または特に、グルコースを用いることができる。一般に、炭水化物源は非動物起源のものであり、培養培地中の炭水化物濃度は少なくとも10mMである。グルコースを使用する場合には、培養培地中のその濃度は、一般に2〜20g/lである。
【0032】
本発明の培養培地はまた、ビタミンおよび増殖因子の供給源を含む。この目的を達成するために、サッカロミセス・エスピー(Saccharomyces sp)の培養物に由来するビール酵母の自己分解物の可溶性フラクションから得られる酵母エキスが使用される。多数のアミノ酸およびビタミン、例えば、ビタミンB5、B1、B2、B6、PP、HおよびB12、微量元素およびオリゴヌクレオチド誘導体がその組成物中に見られる。Quest、DifcoまたはSolabiaによって製造されている市販の自己分解酵母エキスが本発明の主題に適している。
【0033】
本発明の培地中の酵母エキスの濃度は、通常、0.2g/l〜15g/lの濃度範囲内、好ましくは、0.2g/l〜10g/lの濃度範囲内、さらに有利には、0.2〜5g/lの濃度範囲内である。酵母エキスの濃度が0.2〜5g/lの範囲の濃度である場合に細菌によるRPR生産が良好であることが観察された。
【0034】
酵母エキスはまた、非動物起源のさらなるタンパク態窒素源でもある。酵母エキス中のタンパク態窒素の含有率は、実際に、一般的に9〜11%(重量/重量)である。培養の間の毒性廃棄物の蓄積の原因であり得る窒素性の異化亢進を回避するために、植物系ペプトンの濃度および酵母エキスの濃度は、一般に、培地中の総タンパク態窒素含有量が2.5g/lを超えないように調節される。好ましくは、植物系ペプトンの濃度および酵母エキスの濃度は、本発明の培地中の総タンパク態窒素含有量が0.5〜2.5g/lであるように調節される。
【0035】
本発明の培養培地はまた、無機塩を含む。使用される無機塩は、一般に、塩溶液の形態であり、それらのうち少なくとも1つは、細菌接種前に、培地の初期pHが6.5〜7.5、最も好ましくは、7〜7.5であるのに十分な緩衝力を発揮する。一般に、モル濃度が10-2mM〜100mMの濃度範囲内で変化する塩溶液の形態のNa+および/またはK+のような一価陽イオン、Ca++および/またはMg++のような二価陽イオン、HPO4--、H2PO4-および/またはPO4---形態のリン酸陰イオン、ならびにSO4--およびCl-陰イオンの混合物が使用される。
【0036】
前段に記載した成分に加えて、本発明の培養培地は、PRPの生産をネガティブに妨害しないことを条件に1つ以上の他の無機成分および/または有機成分をその組成に取り込むことができると明らかに解される。非常に好ましくは、非動物源由来の成分が導入される。かくして、本発明によると、該培地に、トリプトファンおよび/またはシスチンのような化学合成または微生物発酵によって製造されるアミノ酸、NH4+イオンをもたらす塩溶液の形態の無機窒素、および/または乳酸ナトリウムのような他の物質を加えることができる。これらの添加物は、一般に、低濃度で使用される。培養培地中のアミノ酸補充は、一般に、1mM以下の濃度である。同様に、アンモニウム塩および/または乳酸ナトリウムは、一般に、10mM以下の濃度である。最後に、鉄は植物系ペプトンおよび酵母エキスの組成物中に既に十分な量で存在しているので鉄イオンの形態の鉄の供給によって本発明の培養培地に補充するのは必要ではないが、万一に備えて、細菌増殖の間に生じる可能性のある鉄不足を回避するために0.5〜10mg/lの範囲であり得る濃度範囲で鉄塩の溶液を培養培地に加えることは可能である。
【0037】
有利には、本発明の培養培地は、ヒト起源もしくはウシ起源のタンパク質、ポリペプチド、ペプチドおよび/またはアミノ酸を含まないか、または、動物起源のタンパク質、ポリペプチドおよび/またはアミノ酸を含まないか、または、より有利には、動物起源の混入物を含まない。
【0038】
特定の実施態様によると、本発明の主題は、
0.1mg/l〜5mg/lのプロトポルフィリンIX、
2〜50mg/lのβ−NAD、
2〜20g/lのグルコース、
2〜5g/lの酵母エキス、
0.4g/l〜1.5g/lのタンパク態窒素濃度と等価のエンドウペプトン、および
塩溶液の形態のNa+、NH4+、Ca++、Mg++、HPO4--、H2PO4-、SO4--およびCl-イオンを含む無機イオンのカクテル(これにより、培地のpHが6.5〜7.5、好ましくは、7.0〜7.5となる)
を含む培養培地である。
【0039】
この培地組成物を使用することによって、液体媒体中での培養の間の莢膜を持たない復帰細菌の発生が予防される。実際に、この培地に、初めに莢膜を持つ細菌を100%含有している集団(18kb遺伝子のコピーを2つ持っているcap遺伝子座の細菌集団全体のゲノム)を接種することによって、40細菌世代と等価な培養期間の後、莢膜を持つ細菌をなおも100%含有している細菌集団が得られる。特に実施例3.2.2.1に記載されているものおよび実施例4で使用されているものを含むこの培地組成物は、莢膜を持つ細菌の集団に対して安定化の役割を果たすことによってPRP収率を向上することに貢献する(実施例4を参照)。
【0040】
別の態様によると、本発明の主題は、ポリリボシル・リビトール・リン酸(PRP)の製造方法であって、
(i) 本発明の液体培養培地中にてヘモフィルス・インフルエンザ血清型bを培養し、
(ii) (i)で得られた培養上清を回収し、そして、
(iii) 該培養上清からPRPを抽出する
ことを含む方法である。
【0041】
本発明の方法に従ってPRPを製造するためには、工程(i)において本発明の液体培地中にてヘモフィルス・インフルエンザ血清型bの一代以上の継代培養を行うことができる。該継代培養によって、バイオマスを増加させることができる。
【0042】
これを行うには、凍結乾燥製品または凍結製品から得られる細菌を一般的に1リットル以下の培地に接種する。一夜培養した後、または、培地の光学密度が十分になった時に、この最初の培養物を2回目の培養培地に移す。この2回目の培養培地は、最初の培養培地と同一であるが、その容量は最大10倍〜20倍多くてもよい。細菌集団の急速な増殖を促進するために、この2回目の培地に接種する細菌の量を、600nmでの2回目の培養培地の初期光学密度(OD)が0.2〜0.4となるように調節する。この2回目の培養は、通常、発酵槽中で行われるが、他のタイプの容器(フラスコ、スピナー、および同類のもの)を使用することができる。培養が発酵槽中で行われる場合、通常、培養期間じゅう、37℃±1℃の温度、持続撹拌、0.1バールの圧、30%のpO2、および毎分培地1容量につきガス0.25容量の空気流速が使用される。この種の培養の他のパラメーターを選択することは当業者の能力の範囲内である。細菌の指数増殖期の終わりに、それを大容量の別の発酵槽に移して同じ手順などを使用してバイオマスをさらに増幅することができる。得られた培養容量は、最大1000リットルであっても、またはそれ以上であってもよい。培養は、一般に、バッチ法によって行われる。他の培養方法、特に、流加培養法を採用することもできる。この場合、指数増殖期の間に培地に炭水化物栄養補助剤を添加して細胞増殖を延長することができ、指数増殖期の終わりに高い細菌密度を得ることができる。炭水化物の添加量は、添加時に培地中に存在する乳酸塩のレベルの関数として評価される。
【0043】
最後の培養物の上清は、最終的には細菌の不活化後に回収される。該不活化は、最終濃度0.35%〜0.37%(v/v)のホルマリン溶液を用いて慣用的に行われる。該上清は、遠心分離工程によって細菌から慣用的に分離される。次いで、当業者に周知の慣用方法に従って、得られた上清に含まれるPRPを抽出し、精製する。
【0044】
別の実施態様によると、本発明の主題は、PRPの製造方法であって、
(i) 固体培地上でヘモフィルス・インフルエンザ血清型bを培養し、
(ii) (i)で得られた1つ以上のコロニーを本発明の液体培養培地に移して培養し、
(iii) (ii)で得られた培養上清を回収し、そして、
(iv) 該培養上清からPRPを抽出する
ことを含む方法である。
【0045】
本発明の方法で使用することができる固体培養培地は、ヘモフィルス・インフルエンザ血清型bの培養に適している。それは、また、
タンパク態窒素源、
ヘム源、
β−NAD源、
炭水化物源、
ビタミンおよび増殖因子の供給源、
無機塩、ならびに
ゲル化物質、通常、10〜30g/lの濃度の寒天
を含む。
【0046】
PRPの工業的製造方法では、固体培地中での予備培養工程が慣用的に用いられる。通常、凍結乾燥製品または凍結製品から得られる細菌を再懸濁し、次いで、ウマの血液を加えたチャコールベース固体培地に接種する。10%CO2下にて37℃でインキュベーター中において16〜20時間培養した後、細菌コロニーを回収し、液体培地中にて増幅する。この方法は、タンパク態窒素源として動物起源のタンパク質を含有する固体培地を使用するという欠点を有する。したがって、本発明者らは、タンパク態窒素源が動物起源のタンパク質を含んでいない固体培地の組成を同定することを試みた。
【0047】
まず始めに、本発明者らは、酵母エキスが同時にタンパク態窒素源、ビタミンおよび増殖因子の供給源、ならびにヘム、β−NAD、炭水化物および上記のものと同じ特徴を有する無機塩の供給源としての役割を果たすことができる固体培地を使用することができることを示した。プロトポルフィリンIXの最小濃度0.05mg/l、β−NAD源については0.1μM、そして、炭水化物源については0.1mMが推奨されるが、培地中の酵母エキスの濃度は、0.2〜1.5g/lのタンパク態窒素の含有量に対応する。得られたコロニーは、該コロニーのサイズに象徴される増殖が必ずしも最適であるとは限らなくても生存可能である。それらを本発明の液体培養培地に直接移すことができる。次いで、培養容量を増幅し、PRPを抽出および精製するために上記の手順を行う。
【0048】
好ましくは、該固体培養培地は、タンパク態窒素源として、化学的または酵素的加水分解物の形態で使用される少なくとも1つの植物起源ペプトンを含む。特に、酵母エキス補助剤として、タンパク態窒素濃度の、コムギ、ワタ、コメ、ダイズ、ソラマメ、ジャガイモ、エンドウまたはこれらの混合物から得られる少なくとも1つの植物系ペプトンを使用することができ、該タンパク態窒素濃度は特に0.2g/l〜2g/lの範囲であり得、固体培地中の総タンパク態窒素濃度は好ましくは2.5g/l以下である。使用することができる植物系ペプトンの混合物の例としては、ダイズ、ワタおよびコメのペプトンをベースとする混合物、またはエンドウ、ワタおよびコムギのペプトンをベースとする混合物、または、エンドウおよびジャガイモをベースとする混合物を挙げることができる。本発明者らは、実際、該培養培地がタンパク態窒素源として植物系ペプトンも含む場合、細菌増殖および細菌の生存性が、煮沸または脱線維素処理したウマの血液を加えたチャコールベース固体培地(チャコール寒天)で観察されたものよりも優れていることに注目していた。それらは、使用した植物系ペプトンがエンドウペプトンである場合に最大である。
【0049】
したがって、本発明の主題は、固体培地のタンパク態窒素源が、動物起源のタンパク質を含んでおらず、少なくとも1つの植物系ペプトンを含んでいる、PRPの製造方法でもある。好ましくは、植物系ペプトンはエンドウペプトンである。
【0050】
有利には、本発明の固体培養培地は、ヒト起源もしくはウシ起源のタンパク質、ポリペプチド、ペプチドおよび/またはアミノ酸を含まないか、または、より有利には、動物起源の混入物を含まない。後者の場合、ヘム源は合成プロトポルフィリンIXからなり、β−NADおよび炭水化物源もまた非動物起源のものであり、ビタミンおよび増殖因子の供給源は酵母エキスによってもたらされ、ゲル化物質は寒天(藻類由来の製品)である。
【0051】
したがって、本発明の別の主題は、固体培養培地および液体培養培地が動物起源の混入物を含まない、PRPの製造方法である。
【0052】
最大量のPRPを製造する細菌コロニーを選択することができるように固体培地の組成を最適化することが求められている。このような培地の組成によって、
コロニーの優れた個別化;
コロニーの優れた生存性;
コロニーの形態を研究することができるようなコロニーの発生および十分なサイズ
を得ることができる。コロニー間で区別できるようにするためには、16〜24時間の培養の終わりに十分なサイズ(約3〜5mm)のヘモフィルス・インフルエンザb型菌コロニーを得ることを可能にする培地を有することが必要である。
【0053】
本発明のPRPの製造方法の好ましい実施態様の1つでは、固体培地は、
少なくとも1mg/lのβ−NAD、
少なくとも0.5mg/lのプロトポルフィリンIX、
固体培地中のタンパク態窒素濃度が少なくとも0.2g/lとなるのに十分な量の植物系ペプトンおよび酵母エキス(ここで、両者の割合は、培地中の植物系タンパク質の量と酵母エキスの量との比が、培地のタンパク態窒素の濃度が0.2g/l〜0.8g/lである場合には0.1〜9となり、培地のタンパク態窒素の濃度が0.8g/lを超える場合には1〜9となる割合である)、
炭水化物、
解毒剤、および
塩溶液の形態のNa+、K+、Ca++、Mg++、Fe+++、HPO4--、H2PO4-、SO4--およびCl-イオンを含む無機イオンのカクテル(これにより、培養培地のpHが6.5〜7.5、好ましくは7.0〜7.5となる)
を含む。
【0054】
使用する炭水化物は、好ましくは、細菌によって代謝される非動物起源の糖であり、例えば、フルクトース、リボース、キシロース、フコース、グリセロール、または、特に、グルコースである。少なくとも0.1g/lの濃度のグルコースで優れた結果が得られた。通常、グルコースは、0.1g/l〜20g/l、好ましくは、0.1g/l〜10g/lの濃度で使用される。
【0055】
解毒剤は、Evans N. Mら(J. Med. Microbiol. Vol 7, pp 305-309, 1974)によって報告されているように、寒天調製物中に存在し得る阻害物質を中和することによって細菌の増殖を促進する。解毒剤としては、好ましくは、チャコール、デンプン、Tween(登録商標)、ポリビニルアルコール、オレイン酸ナトリウムまたは亜ジチオン酸ナトリウムが使用される。0.5〜10mg/lの濃度で使用したTween 80(登録商標)(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)で優れた結果が観察されたが、Tween(登録商標)を含まない固体培地組成物は、形態学的観点から区別できない小さいサイズのコロニーを生産する。β−NAD濃度が1mg/l未満の場合、プロトポルフィリンIX濃度が0.5mg/l未満の場合、またはグルコース濃度が0.1mg/l未満の場合にも形態学的観点から区別できない小さいサイズのコロニーが観察される。
【0056】
コロニーの優れた増殖および優れた生存性を確実にするためには、酵母エキスの量および植物系ペプトンの量は、総タンパク態窒素の濃度が少なくとも0.2g/lとなるような量である。培地中の植物系ペプトンの量と酵母エキスの量との比は、大きく変化することができ、該培養培地中のタンパク態窒素の濃度が0.8g/lを超えない限りは0.1〜9の範囲である。他方、高い濃度では、この比が1未満である場合に固体培地上での細菌懸濁液の拡散が劣るためにコロニーの個別化が劣る。
【0057】
この固体寒天ベース培地にヘモフィルス・インフルエンザ血清型b細菌の不均一集団(すなわち、莢膜を持つ細菌と莢膜を持たない細菌の両方を含有する集団)を接種することによって、18〜24時間の培養後に、白色コロニーおよび灰色コロニーが観察され、両者は白色光の光線を用いて透明度によって区別される。白色コロニーは、灰色コロニーよりも多くのPRPを生産する。さらにまた、白色コロニーはまた、ウマの血液を添加したチャコール寒天ベース固体培地から得られたコロニーよりも多くのPRPを生産する(実施例2を参照)。この培地組成物によって、最大量のPRPを生産するコロニーを選別することができるので、この培地組成物は選択培地組成物であると考えられる。
【0058】
本発明の方法のさらに好ましい実施態様によると、固体培地は、
5〜50mg/lのβ−NAD、
0.5〜5mg/lのプロトポルフィリンIX、
1〜10g/lのグルコース、
1〜10mg/lのTween 80、
3〜4g/lのK2HPO4
0.9〜3g/lのKH2PO4
0.5〜2g/lのK2SO4
20〜500mg/lのMgCl2
2〜50mg/lのCaCl2・2H2O、
1〜5mg/lのFeCl3・6H2O、
4〜8g/lのNaCl、
4〜8g/lの酵母エキス、および
4〜8g/lのエンドウペプトン(ここで、エンドウペプトンの量と酵母エキスの量との比は、培地のタンパク態窒素濃度が0.8g/lを超える場合には1以上である)
を含む。
【0059】
この培地組成物から得られる白色コロニーは、灰色コロニーと比べて最大400倍のPRPを生産する。制限酵素SmaIおよびKpnIを用いてゲノムDNAを消化することによって、それらのcap遺伝子座を研究した。次いで、実施例3に記載した操作条件に従って、消化産物に対してパルスフィールド電気泳動を行い、次いで、特異的PvuIIプローブを用いて可視化した。驚くべきことに、白色コロニーからの電気泳動プロファイルは全て、45kbの電気泳動バンドを持っている。18kbの電気泳動バンドは観察されない。結果として、これらのコロニーのcap遺伝子座は18kb遺伝子のコピーを少なくとも2つ持っており、このことは、白色コロニー由来の細菌集団が完全に莢膜を持つことを意味している。他方、灰色コロニーからの電気泳動プロファイルは、主に18kbの電気泳動バンドを持っている。この特に好ましい選択培地組成物によって、さらに、細菌集団が完全に莢膜を持っている白色コロニーを選択することができる。
【0060】
実際、固体培地上での予備培養期を含むPRP製造方法における収率の向上のためのさらなる手段の1つは、選択固体培地組成物から得られた白色コロニーだけを液体培地に移すことである。好ましくは、本質的に莢膜を持つ細菌からなる白色コロニーを得ることを可能にする固体培地組成物が用いられる。
【0061】
したがって、好ましい実施態様では、本発明の主題はまた、選択固体培地組成物上で得られた白色コロニーだけを液体培養培地に移すことを含む、PRPの製造方法である。
【0062】
特に好ましい実施態様では、これらの白色コロニーは、莢膜を持つ細菌集団に対して安定化の役割を果たす液体培養培地に移される。培養工程が全て、タンパク態窒素源が非動物起源のものである培地または合成プロトポルフィリンIXを使用する場合に顕著である動物起源の混入物を含まない培地で行われるということに加えて、この方法によって、ヘモフィルス・インフルエンザ血清型b集団が不均一であって莢膜を持つ細菌と莢膜を持たない細菌の両方を含有する場合にPRPの生産を最適化することもできる。固体培地上での培養の工程によって、完全に莢膜を持つ細菌の集団を含有する白色コロニーを選択することができる。液体培地中でバイオマスを増幅する工程は、上記のように、莢膜を持たない復帰変異体の発生を予防することによって莢膜を持つ細菌の集団を安定化する。そこで、最終的に得られる培養物1リットル当たりのPRPの収量は最大となる(実施例4を参照)。
【0063】
この方法はまた、完全に莢膜を持つ細菌の集団の生産に用いることができる。この集団のゲノムDNAの電気泳動プロファイルが、cap遺伝子座が18kb遺伝子のコピーを少なくとも2つ持っていることを示す場合(実施例3のプロトコールを参照)および本発明の選択固体培地組成物へのこの集団のアリコートの接種によって95%を超える白色コロニー、好ましくは少なくとも98%の白色コロニーが生産される場合、得られる細菌集団は完全に莢膜を持つ。安定化液体培地(すなわち、莢膜を持たない復帰変異細菌の出現を予防する液体培地)中での細菌増幅の後、得られた細菌集団は、凍結乾燥または凍結によって保存される(この場合、グリセロールのような非動物起源の凍結剤が該培養培地に加えられる)。かくして、完全に莢膜を持つ細菌の均一集団を含有する接種バッチが調製される。このバッチは、動物起源の混入物を含まない培養培地を用いて得られるので生物学的安全性のさらなる保証を与える。これらの接種バッチは、今度は、PRPを生産することに役立つことができる。
【0064】
したがって、本発明の主題は、以下のものである:
全ての工程が動物起源の混入物を含まない培地を用いて行われる、PRPの製造方法。
完全に莢膜を持つヘモフィルス・インフルエンザ血清型b細菌の集団の製造方法であって、
(i) ヘモフィルス・インフルエンザ血清型bを、
5〜50mg/lのβ−NAD、
0.5〜5mg/lのプロトポルフィリンIX、
1〜10g/lのグルコース、
1〜10mg/lのTween 80、
3〜4g/lのK2HPO4
0.9〜3g/lのKH2PO4
0.5〜2g/lのK2SO4
20〜500mg/lのMgCl2
2〜50mg/lのCaCl2・2H2O、
1〜5mg/lのFeCl3,・6H2O、
4〜8g/lのNaCl、
4〜8g/lの酵母エキス、および
4〜8g/lのエンドウペプトン(ここで、エンドウペプトンの量と酵母エキスの量との比は、培地のタンパク態窒素濃度が0.8g/lを超える場合には1以上である)
を含む固体培地上で培養し;
(ii) (i)で得られた1つ以上の白色コロニーを、
0.1mg/l〜5mg/lのプロトポルフィリンIX、
2〜50mg/lのβ−NAD、
2〜20g/lのグルコース、
2〜5g/lの酵母エキス、
0.4g/l〜1.5g/lのタンパク態窒素濃度と等価のエンドウペプトン、および
塩溶液の形態の無機イオン:Na+、NH4+、Ca++、Mg++、HPO4--、H2PO4-、SO4--およびCl-のカクテル(これにより、培地のpHが6.5〜7.5、好ましくは7.0〜7.5となる)
を含む液体培養培地に移して培養し、
(iii) (ii)で得られた細菌培養物を凍結または凍結乾燥させる、
製造方法。
全ての工程が動物起源の混入物を含まない培地によって行われる、完全に莢膜を持つヘモフィルス・インフルエンザ血清型b細菌の集団の製造方法。
【0065】
本発明の主題はまた、PRPの生産のための、この方法に従って得られる莢膜を持つヘモフィルス・インフルエンザ血清型b細菌の均一集団の使用である。
【0066】
本発明の主題は、本発明の方法の実施態様の1つから得られるPRPを含む、ヘモフィルス・インフルエンザb型菌髄膜炎に対するワクチンである。
【0067】
また、本発明の主題は、ヘモフィルス・インフルエンザ血清型b用の固体培養培地であって、該固体培養培地のタンパク態窒素源が非動物起源のものであり、該固体培養培地が
少なくとも1mg/lのβ−NAD、
少なくとも0.5mg/lのプロトポルフィリンIX、
培地中のタンパク態窒素濃度が少なくとも0.2g/lのタンパク態窒素であるのに十分な量のペプトンおよび酵母エキス(ここで、両者の割合は、培地中の植物系ペプトンの量と酵母エキスの量との比が、培地のタンパク態窒素濃度が0.2g/l〜0.8g/lである場合には0.1〜9となり、培地のタンパク態窒素濃度が0.8g/lを超える場合には1〜9となる割合である)、
炭水化物、
解毒剤、および
塩溶液の形態の無機イオン:Na+、K+、Ca++、Mg++、Fe+++、HPO4--、H2PO4-、SO4--およびCl-のカクテル(これにより、培地のpHが6.5〜7.5、好ましくは7.0〜7.5となる)
を含む、固体培養培地である。
【0068】
好ましくは、固体培養培地は、
5〜50mg/lのβ−NAD、
0.5〜5mg/lのプロトポルフィリンIX、
1〜10g/lのグルコース、
1〜10mg/lのTween 80、
3〜4g/lのK2HPO4
0.9〜3g/lのKH2PO4
0.5〜2g/lのK2SO4
20〜500mg/lのMgCl2
2〜50mg/lのCaCl2・2H2O、
1〜5mg/lのFeCl3・6H2O、
4〜8g/lのNaCl、
4〜8g/lの酵母エキス、および
4〜8g/lのエンドウペプトン(ここで、エンドウペプトンの量と酵母エキスの量との比は、培地のタンパク態窒素濃度が0.8g/lを超える場合には1以上である)
を含む。
【0069】
本発明は、結果的に本発明の内容を制限することなく本発明を例示する役割を果たす以下の実施例を考慮してさらに明瞭に理解されるであろう。
【実施例】
【0070】
実施例1: 植物系ペプトンベース培養培地中におけるPRPの生産に対するプロトポルフィリンIXの影響
1)方法
ヘム源がヘミンもしくは二ナトリウム塩形態の動物起源のプロトポルフィリンIX(ブタプロトポルフィリン)であるか、または二ナトリウム塩形態の純粋な合成起源のプロトポルフィリンIXである液体植物系ペプトンベース培養培地中での16時間の細菌培養の後に得られたPRPの生産を比較した。培養培地中のヘミンおよびプロトポルフィリンIX濃度範囲は、試験したヘム源の関数としておよび試験した植物系ペプトンの関数としてPRP滴定曲線を得ることができるように約0.010g/lから約2g/lまで変化する。Kerryによって供給されたエンドウペプトンの酵素的加水分解物(Hy pea 7404)およびOrganotechnieによって供給されたコムギペプトン(19559)を0.87g/lのタンパク態窒素と等価の培養培地中濃度で試験した。現行のPRP生産条件を参照して、漸増濃度のヘミンの存在下でSolabiaによって供給されたカゼイン加水分解物(HAC)のような動物起源のペプトンを0.87g/lのタンパク態窒素と等価の濃度で含有する培地中でのPRPの生産を測定した(表3を参照)。
【0071】
1.1)培地の調製
1.1.1. 限外濾過水中1g/lのβ−NAD(Fluka)の貯蔵溶液を、次いで、0.22μmで濾過滅菌した。
1.1.2. 溶解を補助するために25%アンモニア水(Cooper)5mlを含む限外濾過水中0.25/lのヘミン(Sigma)の貯蔵溶液。該貯蔵溶液を0.22μmで濾過滅菌する。
1.1.3. 溶解を促進するために25%アンモニア水(Cooper)5mlを含む限外濾過水中0.25g/lのブタプロトポルフィリンIX(Sigma)の貯蔵溶液。該貯蔵溶液を0.22μmで濾過滅菌する。
1.1.4. 溶解を促進するために25%アンモニア水(Cooper)5mlを含む限外濾過水0.25g/lの合成プロトポルフィリンIXの貯蔵溶液。該貯蔵溶液を、0.22μmで濾過滅菌する前に完全に溶解するために撹拌しながら水浴中にて80℃に加熱した。2007年3月30日に出願した出願番号第07/02334号のフランス特許出願に記載されたスキーム2に記載の工程を用いる方法に従ってプロトポルフィリンIXを二ナトリウム塩形態で合成した。
【0072】
ヘミンの貯蔵溶液およびプロトポルフィリンIXの貯蔵溶液を、濾過滅菌後の各活性化合物の含有量についてチェックした。逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)によってプロトポルフィリンIX含有量およびヘミン含有量を決定した。クロマトグラフィーチェーンは、二成分勾配液の形成を可能にするツインヘッドポンプモジュール、プログラマブル自動注入装置、ダイオードアレイUV検出器およびクロマトグラフィーカラム(タイプSynergi 4μm、Polar RP−80A(150×4.6)mm、ref 00F−4336−E0、Phenomenex)を含む。
【0073】
濾過後にチェックされるべきヘミン(Sigma)の貯蔵溶液を蒸留水で3倍に希釈する。濾過後にチェックされるべきブタプロトポルフィリンIX(Sigma)の貯蔵溶液および合成プロトポルフィリンIXの貯蔵溶液を蒸留水で4倍に希釈する。並行して、SigmaからのブタプロトポルフィリンIX(ref: 25838−5)でアンモニア水中プロトポルフィリンIX0.025g/l〜0.125g/lの範囲のキャリブレーションシリーズを調製し、Sigmaからのヘミン(ref: H5533−256)でヘミン0.050g/l〜0.150g/lのキャリブレーションシリーズを調製する。チェックされるべき試料およびキャリブレーションシリーズの種々の溶液を20μl(ヘミン溶液および試料について)および5μl(プロトポルフィリンIX溶液および試料について)の容量で注入する。アセトニトリルおよび10mM KH2PO4 pH 2.5の混合物からなる初期移動相を流速1ml/分で設定する。次いで、波長400nmで検出される目的分子を分取するために、この移動相から不連続勾配液を調製する。キャリブレーションシリーズを確立した後、チェックされるべき試料についてのピークの表面積に基づいて、そこから種々の濾過貯蔵溶液中のヘミン濃度およびプロトポルフィリンIX濃度を推定し、 それぞれ、ヘミン溶液については0.295g/lであり、ブタプロトポルフィリンIX溶液については0.187g/lであり、合成プロトポルフィリンIX溶液については0.249g/lであった。これらの濃度は、その後、標的濃度0.250g/lに調節されなかったが、ヘミンの貯蔵溶液およびプロトポルフィリンIXの貯蔵溶液中に実際に存在するこれらの濃度は結果の解析に使用した。
【0074】
1.1.5. 限外濾過水中125μg/lの自己消化酵母エキス(Solabia)の貯蔵溶液を、次いで、0.22μmで滅菌した。
1.1.6. 限外濾過水中465.12g/lのグルコースの貯蔵溶液を、次いで、0.22μmで濾過滅菌した。
1.1.7. 濃縮溶液
それは、酵母エキスの貯蔵溶液40ml、グルコースの貯蔵溶液43mlおよびβ−NADの貯蔵溶液5mlからなる。
1.1.8. 基本培地
基本培地1リットル当たりタンパク態窒素0.95g相当を提供するのに十分な量のコムギ植物系ペプトン(Organotechnie−Ref 19559)またはエンドウ植物系ペプトン(Kerry−Ref Hypea 7404)(ここで、タンパク態窒素の量はkjedhal法に従ってアッセイした)、
乳酸ナトリウムの50%水溶液(VWR): 1.8ml、
リン酸水素二ナトリウム・12H2O(Budenheim): 31.14g、
リン酸二水素ナトリウム・2H2O(Merck): 2.03g、
L−シスチン(Jera France): 0.07g、
37%HCl(VWR): 0.07ml、
L−トリプトファン(Jera France): 0.02g、
硫酸アンモニウム: 1g、
硫酸マグネシウム・7H2O: 0.4g、
塩化カルシウム・2H2O: 0.02g/l、
限外濾過水: 1リットルにするのに十分な量。
最後に、基本培地を、オートクレーブを使用して121℃で30分間滅菌する。
【0075】
1.2)操作プロトコール
500mlのエルレンマイヤーフラスコ中で培養を行った。種々の培養培地中の試験したヘミン(またはプロトポルフィリンIX)の理論濃度が10μg/l〜約2000μg/lとなるように、各エルレンマイヤーフラスコ中にコムギペプトンまたはエンドウペプトンを含有する基本培地100ml、濃縮培地8.8ml、および可変量のヘミン貯蔵溶液、ブタプロトポルフィリンIX貯蔵溶液または合成プロトポルフィリンIX貯蔵溶液を導入した(表1および2を参照)。各エルレンマイヤーフラスコに108〜1010細菌/mlを含有するヘモフィルス・インフルエンザ血清型bの凍結製品の内容物を0.2%(V/V)の接種率で接種する。インキュベーター中、37℃にて175rpmで撹拌しながら16時間インキュベートした後、少量の培養上清を回収することによって、各エルレンマイヤーフラスコ中にて得られた細菌懸濁液のODおよびPRP濃度を測定する。
【0076】
1.3) PRPのアッセイ
サンドイッチ型ELISAアッセイに基づいて二重に培養上清のPRP生産力を決定した。
ELISAマイクロプレートを、ヘモフィルス・インフルエンザb型細菌で過剰免疫したウサギから免疫血清の溶液(あらかじめ0.2M炭酸塩緩衝液pH9.6で希釈しておいた(希釈率:約1/2000))100μlを各ウェルに導入して+4℃で一夜感作する。ELISAマイクロプレートをすすぎ、飽和した後、各マイクロプレート中にて、蒸留水中1mg/mlのPRP精製溶液から、希釈緩衝液(PBS/0.05%Tween 20/1%ウシ血清アルブミン)による連続希釈液を生成することによってキャリブレーションシリーズを調製する。アッセイされるべき培養上清も希釈緩衝液による連続希釈を行って導入する。37℃で約2時間、さらにインキュベートし、次いで、マイクロプレートをすすいだ後、破傷風タンパク質とコンジュゲートとしたヘモフィルス・インフルエンザb型菌ワクチンを接種したウサギの血清をビオチン化剤で処理して得たビオチン化ウサギ抗体の溶液(あらかじめ希釈緩衝液で希釈しておいた(希釈率:約1/500))100μLをマイクロウェルに導入する。37℃で1時間インキュベートし、次いで、すすいだ後、各マイクロウェルに、ペルオキシダーゼ(Southern Biotechnology−ref 7100−05)と結合したストレプトアビジンの溶液(あらかじめ希釈緩衝液で希釈しておいた(希釈率:約1/5000))100μlを添加する。37℃で1時間インキュベートし、すすいだ後、各マイクロウェルに可視化溶液(0.03%の過酸化水素0.3μlを加えた0.05Mリン酸塩−クエン酸塩緩衝液(pH=5)中0.4mg/mlのオルト−フェニレンジアミンの溶液)100μlを添加する。光から保護した20分間の可視化時間の後、2NのH2SO4 50μl/ウェルを添加することによって反応を遮断する。492および620nmでマイクロプレートを測定する(プラスチックの吸光度を考慮するため)。キャリブレーションシリーズによる補間によって、試験した試料について得られた光学密度値から、種々の培養上清中のPRP含有量を決定する。
1.4) 結果
結果を表1および2ならびに図1および2に示す。
【0077】
【表1】





【0078】
【表2】





【0079】
【表3】

【0080】
図1は、表1の結果を示しており、エンドウペプトンを含有する培地において使用されたヘム源およびその濃度の関数として得られたPRP生産曲線を示す。PRP生産曲線は、ヘム源として合成プロトポルフィリンIXを用いても動物起源のプロトポルフィリンIXを用いても同等である。他方、培地がヘミンを含有する場合のPRPの生産は、プロトポルフィリンIXを含有する培地の場合に比べると実質的に低く、このことは、試験された濃度範囲全体で言える。最適なPRP生産(約480mg/ml)を得るために使用されるプロトポルフィリンIXは約200μg/lにすぎないが、PRPの最大生産を得るために必要なヘミンは約2500μg/lである。したがって、PRPの最大生産を得るためにエンドウペプトンをベースとする培養培地中に必要とされるプロトポルフィリンIXはヘミンの約12.5分の1である。
【0081】
図2は、表2の結果を示しており、コムギペプトンを含有する培地において使用されるヘム源およびその濃度の関数として得られたPRP生産曲線を示す。PRP生産曲線は、ヘム源として合成プロトポルフィリンIXを用いても動物起源のプロトポルフィリンIXを用いても同等である。他方、培地がヘミンを含有する場合のPRPの生産は、等しい濃度のプロトポルフィリンIXを含有する培地の場合に比べると低く、これは、ヘミン濃度が低いほどより明らかに現れる。最適なPRP生産(約400mg/ml)を得るために使用されるプロトポルフィリンIXは約100μg/lにすぎないが、PRPの等価な生産を得るために必要なヘミンは約1500μg/lである。したがって、PRPの最大生産を得るためにコムギペプトンをベースとする培養培地中に必要とされるプロトポルフィリンIXはヘミンの約15分の1である。
【0082】
表1、2および3の結果はまた、培養上清中にて同濃度のPRPを得るためには、現在推奨されているPRP生産用培地組成物である動物系ペプトンおよびヘミンをベースとする培地中のヘミン濃度が、コムギペプトンまたはエンドウペプトンのような植物系ペプトンをベースとする培地中に必要なプロトポルフィリンIXの濃度の2〜5倍必要であることを示している。例えば、カゼインの加水分解物およびヘミンをベースとする培地中にて約400mg/lのPRP濃度を得るためには、ヘミン濃度は少なくとも500μg/lでなければならないが、コムギペプトンまたはエンドウペプトンおよびプロトポルフィリンIXをベースとする培地中では約100μg/lのプロトポルフィリンIX濃度で十分である。したがって、植物系ペプトンおよびプロトポルフィリンIXをベースとする培地は、動物ペプトンおよびヘミンを含有する培養培地よりも有利であり、PRPの生産に役立つと考えられる。
【0083】
実施例2: コロニーによるPRPの生産に対する固体培地の組成の影響
約108細菌を含有するヘモフィルス・インフルエンザ血清型b細菌の均一集団の凍結乾燥品をDulbecco PBS緩衝液(Gibco ref 14040−083)1mlに取り込む。この緩衝液で10倍段階希釈を行う。希釈液(10-5、10-6および10-7)各50μlを回収し、種々の本発明の選択固体培地組成物を入れたペトリ皿、または10%(v/v)の脱線維素処理して沸騰処理したウマの血液(BioMerieux、Ref 55832)を加えたチャコール寒天を含有する標準固体培地(Difco、Ref 289410)を入れたペトリ皿に接種する。
【0084】
10%CO2を入れたインキュベーター中にて37℃で一夜インキュベートした後、75Wランプ下で透明度によってコロニーを試験する。ペトリ皿は密閉されている。コロニーは、標準培地上では不透明であり、均一である。他方、選択培地上では白色コロニーおよび灰色コロニーが観察される。標準固体培地から4つのコロニーをランダムに回収し、1リットル当たりの組成が以下のとおりの2つの試験選択培地(AおよびB)から4つの灰色コロニーと4つの白色コロニーを回収した。
【0085】
【表4】

【0086】
回収した各コロニーのPRP含有量をパルスフィールドアンペロメトリック検出(HPAEC/PAD)クロマトグラフィーと結合した高速クロマトグラフィーによってアッセイする。
PRPの定量化は、多糖類の反復単位の成分の1つであり、酸加水分解後に定量的に遊離されるリビトールをアッセイすることによって行われる。
【0087】
2.1) 試料の調製
各コロニーを限外濾過水500μlに取り込み、次いで、該懸濁液100μlを回収し、限外濾過水300μlで希釈する。
【0088】
2.2) キャリブレーションシリーズの調製
限外濾過精製水中1mg/lのリビトール貯蔵溶液を用いて開始し、0〜20μg/mlの範囲のリビトールキャリブレーションシリーズを調製する。キャリブレーションシリーズの各試料の最終容量は400μlである。
【0089】
2.3) 酸加水分解
各試料調製物またはキャリブレーションシリーズの各試料に10Nのトリフルオロ酢酸溶液100μlを加える。120℃で2時間、加水分解を行う。次いで、全ての管を窒素流下で乾燥させ、分析時に各乾燥物を限外濾過精製水400μl中に取り込む。
【0090】
2.4) HPAEC−PADクロマトグラフィーによる分析
あらかじめ480nM水酸化ナトリウム溶液で平衡化しておいた分析カラムCARBOPAC MA1(4×250mm)(DIONEX # 44066)上に各加水分解物100μlを注入する。該カラムに1M水酸化ナトリウム48%および限外濾過精製水溶液52%を含有する溶液を流速0.4ml/分で40分間流して、PRPの2つの構成単糖を溶離する。カラムの温度は、分析の期間全体で30℃に維持される。単糖は、アンペロメトリーセルと結合したED40マルチモード電気化学検出器(DIONEX #44094)を用いて検出される。
【0091】
これらの条件下で、PRPの加水分解の間に遊離したリビトールに対応するクロマトグラフィーピークは19±5%分で現れる。
キャリブレーションシリーズからキャリブレーション曲線(クロマトグラフィーピークの表面積の関数としてのリビトールの量)を確立し、次いで、各試料調製物中に含まれるリビトールの量を補間によって決定する。それから各試料に含まれるPRPの量を推定し、次いで、各コロニー中のPRP濃度を推定して、リビトールがPRPの重量の41%であることが分かる。
【0092】
2.5) コロニーのバイオマスの決定
MicroBCA法(Pierce)に従って決定した各コロニーのタンパク質含有量は、各コロニーのバイオマスを反映する。そのために、コロニーを個々に回収し、次いで、滅菌限外濾過水200μl中に取り込む。該混合物を30秒間ボルテックス撹拌する。試料(10μl〜40μl)を回収し、製造者の推奨に従ってMicroBCAキット(Pierce)を用いてタンパク質アッセイを行う。100μg/mlのウシアルブミン血清からキャリブレーションシリーズを調製する。分光光度計にて562nmで試料およびキャリブレーションシリーズを測定する。キャリブレーションシリーズを用いて、コロニー1つ当たりのμgで表される試料のタンパク質濃度を算出する。
【0093】
2.6) 結果
タンパク質マスの単位(μgで表される)当たりのPRPのμgで表される結果を下記表に記載する。
【0094】
【表5】

【0095】
: タンパク質マス単位(μg)と比べて表されるコロニーによって生産されるPRPの量(μg)を表す。
N.D.: アッセイしていない
【0096】
コロニーによるPRPの生産が高いほど、タンパク質マスの単位当たりのアッセイしたPRPの量は高くなる。これらの結果は、白色コロニーによるPRPの生産がチャコール寒天から回収されたコロニーの生産の3〜5倍であることを示している。他方、灰色コロニーが生産するPRPの量は、一般的に、チャコール寒天から回収されたコロニーよりも低い。
【0097】
実施例3: 液体培地中のPRPの生産に対する選択固体培地上での培養工程の影響
2つのPRP生産方法を比較した。第一の方法では、貯蔵集団と称されるヘモフィルス・インフルエンザb型細菌の集団の凍結品の内容物(約108細菌/ml)を本発明の液体培養培地に直接接種する。あらかじめ貯蔵集団の特徴を分析しておいた(次の段を参照)。第2のプロトコールでは、莢膜を持つ細菌を100%含有する白色コロニーから娘集団を選択することを可能にする本発明の選択固体培地を用いて貯蔵集団から娘集団を調製する。次いで、娘集団を貯蔵集団と同じ培養培地に接種する。次いで、貯蔵集団および娘集団によるPRPの生産を測定し、第3工程で比較する。
【0098】
3.1)貯蔵集団の特徴
3.1.1: cap遺伝子座の分析
3.1.1.1: 試薬
細菌溶解緩衝液
Pett IV緩衝液: 10mM Tris−HCl pH7.4、1M NaCl
1X溶解溶液: 6mM Tris−HCl pH 7.4、1M NaCl、10mM EDTA、0.5%Brij 58、0.2%サルコシル、5mg/mlのリゾチーム、1μg/mlのRNase
ESP溶液: 10mM Tris−HCl pH7.4、1mM EDTA、1%SDS、1mg/mlのプロテイナーゼ
TE溶液: 10mM Tris−HCl pH7.4、0.1mM EDTA
酵素消化
SmaI:(GIBCO−BRL Ref: 15228−018)
10X消化緩衝液4:(GIBCO BRL、酵素を供給) − 使用時にヌクレアーゼを含まない滅菌精製水で10倍希釈する
KpnI:(INVITROGEN Ref: 155232−036)
10X消化緩衝液4:(INVITROGEN Ref: 155232−036) − 使用時にヌクレアーゼを含まない滅菌精製水で10倍希釈する
パルスフィールド電気泳動緩衝液
10X TBE緩衝液: 890mM Tris−HCl pH7.4、890mMホウ酸、250mM EDTA pH8.0 − 使用時に限外濾過水で20倍希釈する
ジゴキシゲニンで標識したPvuIIプローブ:
プラスミドpBR322−pU038(Department of Pediatrics − University of Oxford − John Radcliffe Hospital)から得たDNA調製物から特異的標識PvuIIプローブを得た。プラスミドDNA20μgを、あらかじめヌクレアーゼを含まない滅菌水で10倍希釈した10X緩衝液4(NEBIOLABS Ref. #B7002−S)中、40単位の酵素pvuII(NEBIOLABS Ref. #R0151−S)の存在下、37℃で2時間消化した。次いで、消化生成物を1%重量/容量で、0.25%容量/容量のブロモフェノールブルー、0.25%容量/容量のキシレンシアノールFF、および30%容量/容量のグリセロールを加えた1X TAE緩衝液の存在下でアガロースゲルにて電気泳動処理した。移動の終わりに、PvuII DNAフラグメントに対応する目的の2.1kbバンドを回収する。次いで、「Nucleospin」カラム(Macherey−Nalgel Ref: 740590.250)に通すことによってアガロースゲルからDNAを抽出し、次いで、260nmで分光光度測定して、その完全性をチェックする。最後に、標識化キット「DIG−Chem−Link Labeling and Detection Set」(ROCHE Ref: 1836463)を用いて、PvuIIプローブをジゴキシゲニンで標識する。標識プローブを−20℃で貯蔵する。
【0099】
3.1.1.2: 操作プロトコール
貯蔵集団のアンプルを解凍し、10%(v/v)脱線維素して沸騰したウマの血液(BioMerieux、ref 55832)を加えたチャコール寒天(Difco、ref 289410)からなる標準固体培地を入れたペトリ皿に接種する。10%CO2を入れたインキュベーター中にて37℃で18時間インキュベートした後、得られたコロニーを回収し、OD680nmが約1.8となるようにPett IV緩衝液に懸濁する。細菌懸濁液を2%(v/v)の低融点アガロース(Ref: BioRad、ref 162−0138)と混合し、50℃でテンパリングし、次いで、この混合物を約80μl/プラグの量でプラグモールド(BioRad Ref: 170−3713)中に分配する。かくして全細菌を含有するアガロースモールドが得られる。各プラグを1X溶解溶液1ml中に置く。37℃で6時間インキュベートした後、この溶液をESP溶液1mlと取り換える。50℃で一夜さらにインキュベートした後、各プラグをTE溶液4mlで30分間、3回洗浄する。次いで、各プラグに含まれている溶解した細菌のゲノムDNAを、酵素SmaI(GIBCO −BRL Ref: 15228−018)20単位を含有する1X消化緩衝液4(GIBCO BRL)300μlを用いて25℃で一夜消化し、次いで、TE溶液4mlで洗浄する。酵素KpnI(INVITROGEN ref: 155232−036)20単位を含有する1X緩衝液4(INVITROGEN Ref: 155232−036)200μlを用いて、消化を30℃で7時間続け、次いで、TE溶液で洗浄する。これら2つの制限酵素は、細菌ゲノムDNAのcap遺伝子座を遊離する。消化したプラグを0.8%v/vの認定アガロースゲル(BIORAD ref: 162−0138)中に挿入し、次いで、6ボルト/cm、角度120°、リニアプログレッション、初期スイッチ時0.9秒および最終スイッチ時11.54秒が適用されるような「Chef mapper」型(Biorad)セットの装置を用いて、0.5X TBE緩衝液中にて13時間パルスフィールド電気泳動処理する。製造者の推奨に従って装置「Vacugene XL Vacuum blotting System」(Pharmacia)を用いてセミドライトランスファーによってゲルを正帯電ナイロンフィルター(Roche Ref: 1209272)に移す。ナイロンフィルター上に移したDNAを312nmのUVで3分間固化する。次いで、フィルターを「DIG easy hyb」緩衝液(Roche ref: 1585738)中にて42℃で2時間プレハイブリダイズし、次いで、ジゴキシゲニンで標識した特異的PvuIIプローブを緩衝液1ml当たり20〜50ng含有する「DIG easy hyb」緩衝液中にて42℃で一夜ハイブリダイズする。このプローブは、ヘモフィルス・インフルエンザ血清型bのcap遺伝子座を特異的に認識する。次いで、フィルターを、65℃で低ストリンジェンシー緩衝液を用いて2回洗浄し、次いで、高ストリンジェンシー緩衝液で洗浄する。次いで、キット「Dig−Chem−link labeling and detection Set」(Roche)を用いてアルカリホスファターゼ標識抗ジゴキシゲニン抗体の溶液を添加した後、蛍光基質(CDP −star: Roche Ref: 2041677)を用いてフィルターを可視化する。得られた電気泳動プロファイルを図3に示す。18kbおよび45kbの2つのバンドが観察され、これは、貯蔵集団のcap遺伝子座の構造が不均一であることを示している。集団の一部は、45kbの電気泳動バンドに対応する、18kb遺伝子のコピーを2つ持っているcap遺伝子座を有しており、残りは、18kbの電気泳動バンドに対応する、非二重形態のcap遺伝子座を有している。結果的に、貯蔵集団は、莢膜をもつ細菌と莢膜を持たない細菌の混合物である。この不均一さは、さらにまた、選択固体培地上に貯蔵集団を接種した後に得られる白色コロニーのパーセンテージを測定するための試験を用いて確認される(実施例2を参照)。
【0100】
3.2)選択固体培地上での貯蔵集団の培養: 選択固体培地上で白色コロニーを形成する細菌のパーセンテージの測定および本質的に莢膜を持つ細菌からなる娘集団の誘導
3.2.1)白色コロニーを形成する細菌のパーセンテージの測定
選択固体培地上で培養する工程および得られたコロニーの形態学的分析は、実施例2に記載した同操作条件に従って行われる。選択固体培地の組成は、実施例2の選択培地Aのものに対応する。
可視化されたコロニー100個当たりの白色コロニーの数を決定する。コロニーの60%が白色コロニーの形態であり、これにより、最初の貯蔵溶液が不均一であり、かつ、莢膜をもつ細菌および莢膜を持たない細菌の混合物を含有することが実際に裏付けられる。
【0101】
3.2.2)娘集団の選択および特徴付け
3.2.2.1)娘集団の選択
選択固体培地A上で18〜24時間培養した後に得られた白色コロニーをBacto寒天を含まない選択固体培地と同一の液体培地の組成物2mlが入っている管に接種する。振盪しながら37℃で20時間さらにインキュベートした後、管の内容物を、1リットル当たりの組成が以下のとおりの本発明の液体培地50mlが入っているエルレンマイヤーフラスコに移す:
β−NAD: 5mg
プロトポルフィリンIX: 1mg
グルコース: 20g
酵母エキス: 5g
エンドウペプトン(Hypea 7404(Quest)):7.42g
乳酸ナトリウムの60%水溶液: 1.49ml
シスチン: 0.07g
トリプトファン: 0.02g
Na2HPO4・12H2O: 31.14g
NaH2PO4・2H2O: 2.03g
(NH4)2SO4: 1g
MgSO4・7H2O: 0.4g
CaCl2・2H2O: 0.02g
エルレンマイヤーフラスコを振盪しながら37℃のインキュベーター中に置く。600nmのODが2に近い場合には、細菌懸濁液中の最終濃度が20%(v/v)となるような量のグリセロールを添加する。該細菌懸濁液1mlをNunc管中に分配した後、−70℃で冷凍する。かくして、選択固体培地の組成物上で得られた白色コロニーから生産されて貯蔵集団の細菌に由来する娘細菌集団が凍結品の形態で得られる。
【0102】
3.2.2.2)娘細菌集団の特徴付け
パラグラフ3.1.1.2に記載したプロトコールに従って娘集団のcap遺伝子座の分析を行った。電気泳動プロファイルは、45kbの単一バンドを示し、娘集団のcap遺伝子座が本質的に18kb遺伝子の二重形態であることを示している(図3を参照)。結果的に、娘細菌集団は、本質的に莢膜を持つ細菌からなっている。選択固体培地に接種した場合に白色コロニーを100%生産するということによって、この集団の均一性が確認される。
【0103】
3.3)貯蔵集団の細菌および娘集団の細菌によるPRPの生産の比較
貯蔵集団または娘集団から得た約1010細菌が入っているアンプルの内容物を、パラグラフ3.2.2.1で示した組成の液体培地200mlが入っているエルレンマイヤーフラスコに直接接種する。
振盪(175rpm)しながら37℃+/−1℃で24時間インキュベートした後、培養上清を回収し、次いで、実施例1に記載の方法に従ってELISAによりPRP濃度を決定する。同試験を3回繰り返す。結果を下記表に示す。示された値は、3回の試験の平均値である。
【0104】
【表6】

*: mg/lで表される結果。
【0105】
結論: 莢膜を持つ細菌の均一集団からなる娘集団によるPRPの生産は約3倍増加する。結果的に、莢膜を持つ細菌を100%含有する白色コロニーを選択することを可能にする選択固体培地上での培養工程を使用する方法によって、得られるPRP収量が増加する。この方法はまた、莢膜をもつ細菌および莢膜を持たない細菌の混合物を含有する初期集団から完全に莢膜を持つ細菌集団を構成するために用いることができる。
【0106】
実施例4: 細菌集団およびPRP生産に対する安定化培養培地の役割
出発細菌集団は、cap遺伝子座が18kb遺伝子のコピーを少なくとも2つ持っており、選択固体培地上で白色コロニーを100%生産する、完全に莢膜を持つ細菌の集団からなる。
【0107】
4.1) 操作プロトコール
パラグラフ3.2.2.1の操作プロトコールに従って選択された娘集団から得られた細菌を1ml当たり108〜1010個含有する凍結品の内容物を、パラグラフ3.2.2.1に示した組成の液体培地500mlが入っている1リットルの発酵槽に接種する。振盪しながら37℃で14時間インキュベートした後、第1の培養物を、初期ODが0.3となるように同液体培地500mlが入っている第2の1リットルの発酵槽に移す。同条件下で約5時間さらにインキュベートした後(得られたOD値は約4)、第2の培養物を、初期ODが0.3となるように培地500mlが入っている第3の1リットルの発酵槽に移し、次いで、約3時間インキュベートした後(得られたOD値は約4)、同液体培地500mlが入っている第4の1リットルの発酵槽中に注ぐ。この操作プロトコールは、通常PRPの工業的生産のために13000リットルの発酵槽中で行われる工程の研究室スケールへの適応である。
【0108】
各培養の終わりに、慣用的な式N=Log X/X0 x 1/Log 2(式中、Xは培養の終わりのバイオマスを表し、X0は、培養開始時のバイオマスを表す)を用いて細菌世代数を算出する。1リットルの発酵槽中での第4の培養の終わりに得られた累積細菌世代数は、実際、13000リットルの発酵槽における培養の終わりに得られた細菌世代数に対応する。各培養の終わりに、実施例3に記載の方法に従って、cap遺伝子座を特徴付け、選択固体培地上で白色コロニーを形成する細菌のパーセンテージを決定した。得られた結果を下記表にグループ分けする。
【0109】
【表7】

【0110】
第4の培養物の終わりの累積世代数は24.09世代である。
継代培養は細菌集団の特徴を変えず、細菌集団は継代培養の間じゅう完全に莢膜を持ったままである。PRPの生産もまた、非常に高いレベルで培養の間じゅう安定したままである。したがって、培養の間じゅう細菌集団の特徴は感知できるほど変化しないので、この培地の組成は莢膜を持つ細菌集団に対して安定化の役割を果たす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク態窒素源が非動物起源のものであり、かつ、少なくとも1つの植物系ペプトンを含んでおり、ヘム源がプロトポルフィリンIXからなることを特徴とする、ヘモフィルス・インフルエンザ血清型b培養用の培地。
【請求項2】
プロトポルフィリンIX濃度が少なくとも0.01mg/lである、請求項1記載の培地。
【請求項3】
プロトポルフィリンIX濃度が0.1mg/l〜5mg/lである、請求項2記載の培地。
【請求項4】
植物系ペプトンがコムギペプトンである、請求項1〜3いずれか1項記載の培地。
【請求項5】
植物系ペプトンがエンドウペプトンである、請求項1〜4いずれか1項記載の培地。
【請求項6】
培養培地中の総植物系ペプトン濃度が0.08g/l〜2.25g/lのタンパク態窒素濃度と等価である、請求項1〜5いずれか1項記載の培地。
【請求項7】
動物起源の混入物を含まない、請求項1〜6いずれか1項記載の培地。
【請求項8】
0.1mg/l〜5mg/lのプロトポルフィリンIX、
2〜50mg/lのβ−NAD、
2〜20g/lのグルコース、
2〜5g/lの酵母エキス、
0.4g/l〜1.5g/lのタンパク態窒素濃度と等価のエンドウペプトン、および
塩溶液の形態のNa+、NH4+、Ca++、Mg++、HPO4--、H2PO4-、SO4--およびCl-イオンを含む無機イオンのカクテル(これにより、培地のpHが6.5〜7.5、好ましくは7.0〜7.5となる)
を含む、請求項5〜7いずれか1項記載の液体培養培地。
【請求項9】
ポリリボシル・リビトール・リン酸(PRP)の製造方法であって、
(i) 請求項1〜8いずれか1項記載の液体培養培地中にてヘモフィルス・インフルエンザ血清型bを培養し、
(ii) (i)で得られた培養上清を回収し、そして、
(iii) 該培養上清からPRPを抽出する
ことを含む方法。
【請求項10】
ポリリボシル・リビトール・リン酸(PRP)の製造方法であって
(i) 固体培養培地上でヘモフィルス・インフルエンザ血清型bを培養し、
(ii) (i)で得られた1つ以上のコロニーを、請求項1〜8いずれか1項記載の液体培養培地中に移して培養し、
(iii) (ii)で得られた培養上清を回収し、そして、
(iv) 該培養上清からPRPを回収する
ことを含む方法。
【請求項11】
固体培養培地のタンパク態窒素源が非動物起源のものであり、少なくとも1つの植物系ペプトンを含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
植物系ペプトンがエンドウペプトンである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
ヘム源がプロトポルフィリンIXからなる、請求項11または12記載の方法。
【請求項14】
固体培地が
少なくとも1mg/lのβ−NAD、
少なくとも0.5mg/lのプロトポルフィリンIX、
固体培地中のタンパク態窒素濃度が少なくとも0.2g/lであるのに十分な量の少なくとも1つの植物系ペプトンおよび酵母エキス(ここで、両者の割合は、培地中の植物系タンパク質の量と酵母エキスの量の比が、培地のタンパク態窒素の濃度が0.2g/l〜0.8g/lである場合には0.1〜9となり、培地のタンパク態窒素の濃度が0.8g/lを超える場合には1〜9となる割合である)、
炭水化物、
解毒剤、および
塩溶液の形態のNa+、K+、Ca++、Mg++、Fe+++、HPO4--、H2PO4-、SO4--およびCl-イオンを含む無機イオンのカクテル(これにより、培地のpHが6.5〜7.5、好ましくは7.0〜7.5となる)
を含む、請求項10〜13いずれか1項記載の方法。
【請求項15】
固体培地が
5〜50mg/lのβ−NAD、
0.5〜5mg/lのプロトポルフィリンIX、
1〜10g/lのグルコース、
1〜10mg/lのTween 80、
3〜4g/lのK2HPO4
0.9〜3g/lのKH2PO4
0.5〜2g/mlのK2SO4
20〜500mg/lのMgCl2
2〜50mg/lのCaCl2・2H2O、
1〜5mg/lのFeCl3・6H2O、
4〜8g/lのNaCl、
4〜8g/lの酵母エキス、および
4〜8g/lのエンドウペプトン(ここで、エンドウペプトンの量と酵母エキスの量の比は、培地のタンパク態窒素濃度が0.8g/lを超える場合には1以上である)
を含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
白色コロニーだけを液体培養培地中に移す、請求項14または15記載の方法。
【請求項17】
固体培養培地および液体培養培地が動物起源の混入物を含まない、請求項10〜16いずれか1項記載の方法。
【請求項18】
完全に莢膜を持つヘモフィルス・インフルエンザ血清型b細菌の集団の製造方法であって、
(i) ヘモフィルス・インフルエンザ血清型bを、
5〜50mg/lのβ−NAD、
0.5〜5mg/lのプロトポルフィリンIX、
1〜10g/lのグルコース、
1〜10mg/lのTween 80、
3〜4g/lのK2HPO4
0.9〜3g/lのKH2PO4
0.5〜2g/lのK2SO4
20〜500mg/lのMgCl2
2〜50mg/lのCaCl2・2H2O、
1〜5mg/lのFeCl3,・6H2O、
4〜8g/lのNaCl、
4〜8g/lの酵母エキス、および
4〜8g/lのエンドウペプトン(ここで、エンドウペプトンの量と酵母エキスの量との比は、培地のタンパク態窒素濃度が0.8g/lを超える場合には1以上である)
を含む固体培地上で培養し;
(ii) (i)で得られた1つ以上の白色コロニーを、
0.1〜5mg/lのプロトポルフィリンIX、
2〜50mg/lのβ−NAD、
2〜20g/lのグルコース、
2〜5g/lのa 酵母エキス、
0.4g/l〜1.5g/lのタンパク態窒素濃度と等価のエンドウペプトン、および
塩溶液形態のNa+、NH4+、Ca++、Mg++、HPO4--、H2PO4-、SO4--およびCl-イオンを含む無機イオンのカクテル(これにより、培地のpHが6.5〜7.5、好ましくは7.0〜7.5となる)
を含む液体培養培地中に移して培養し;そして、
(iii) (ii)で得られた細菌集団を凍結または凍結乾燥させる
ことを含む方法。
【請求項19】
全ての工程が動物起源の混入物を含まない培地を用いて行われる、請求項18記載の方法。
【請求項20】
PRPの製造のための、請求項18または19記載の方法に従って得られる集団の使用。
【請求項21】
請求項10〜19いずれか1項記載の方法に従って得られるPRPを含む、ヘモフィルス・インフルエンザb型菌髄膜炎に対するワクチン。
【請求項22】
タンパク態窒素源が非動物起源を含まないヘモフィルス・インフルエンザ血清型b用固体培養培地であって、
少なくとも1mg/lのβ−NAD、
少なくとも0.5mg/lのプロトポルフィリンIX、
培地中のタンパク態窒素濃度が少なくとも0.2g/lのタンパク態窒素であるのに十分な量の植物系ペプトンおよび酵母エキス(ここで、両者の割合は、培地中における植物系ペプトンの量と酵母エキスの量との比が、培地のタンパク態窒素濃度が0.2g/l〜0.8g/lである場合には0.1〜9となり、培地のタンパク態窒素濃度が0.8g/lを超える場合には1〜9となる割合である)、
炭水化物、
解毒剤、および
塩溶液の形態のNa+、K+、Ca++、Mg++、Fe+++、HPO4--、H2PO4-、SO4--およびCl-を含む無機イオンのカクテル(これにより、培地のpHが6.5〜7.5、好ましくは7.0〜7.5となる)
を含む固体培養培地。
【請求項23】
5〜50mg/lのβ−NAD、
0.5〜5mg/lのプロトポルフィリンIX、
1〜10g/lのグルコース、
1〜10mg/lのTween 80、
3〜4g/lのK2HPO4
0.9〜3g/lのKH2PO4
0.5〜2g/lのK2SO4
20〜500mg/lのMgCl2
2〜50mg/lのCaCl2・2H2O、
1〜5mg/lのFeCl3・6H2O、
4〜8g/lのNaCl、
4〜8g/lの酵母エキス、および
4〜8g/lのエンドウペプトン(ここで、エンドウペプトンの量と酵母エキスの量の比は、培地のタンパク態窒素濃度が0.8g/lを超える場合には1以上である)
を含む、請求項22記載の固体培地。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−532985(P2010−532985A)
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−515566(P2010−515566)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【国際出願番号】PCT/FR2008/051223
【国際公開番号】WO2009/007641
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(592055820)サノフィ・パスツール (20)
【氏名又は名称原語表記】SANOFI PASTEUR
【Fターム(参考)】