説明

ベタ基礎外周立上り部の型枠取付け金物

【課題】ベタ基礎の外周立上り部に配置される外型枠及び内型枠を、簡易且つ安価に、外型枠よりも内型枠を高い位置に支持した状態で設置することを可能にする型枠取付け金物を提供する。
【解決手段】両端部分14a,14bを垂直に曲折して形成された一対の外側規制片16a,16bと、外側規制片16a,16bと所定の間隔離れた位置に形成された一対の内側規制片17a,17bとを有する第1金物14と、L字形状に形成された本体部19と、本体部19の他端部分19bから張り出して接合された上部規制片24を備える受部20とからなる第2金物18とによって構成される。第1金物14の一端部分14aに第2金物18の本体部19を係止して本体部19を第1金物14に対して垂直に立設させ、第1金物14の他端部分14bに外型枠12を立設状態で係止し、第2金物18の本体部19から張り出した受部20に内型枠13を立設状態で係止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外型枠及び内型枠を、外型枠よりも内型枠を高い位置に支持した状態で設置するためのベタ基礎外周立上り部の型枠取付け金物、及び該型枠取付け金物を用いたベタ基礎外周立上り部の型枠取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ベタ基礎は、建物の下方の基礎地盤を覆って隙間無く一面に設けられる基礎であり、例えば基礎地盤上に基礎砕石層を敷設し、型枠や鉄筋を組み立てた後にコンクリートを打設することによって構築されることになる。また、ベタ基礎には、その外周部分や内側部分に、建物の土台等が載置される立上り部が立設して形成されるようになっている。これらの立上り部は、一般にベタ基礎のベース部を形成した後に、このベース部を作業床として一対の型枠を対向配置した状態で組み立て、さらに立上り部用のコンクリートを打設することによって形成されるようになっている。
【0003】
そして、このような立上り部を形成する際に、一対の型枠の組立作業を効率良く行えるようにするため金物として、例えば短冊状の板状材の両端部分を垂直に曲折することによって形成した一対の外側規制片と、これらの外側規制片と型枠の厚さ分隔離れた位置に設けられた一対の内側規制片とを備え、各外側規制片と内側規制片との間に一対の型枠の下端部分を各々係止することにより、一対の型枠を同じ高さの面から立設させた状態で組み立てることができるようにする型枠取付け金物が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、近年、ベタ基礎の構築をさらに効率良く行えるようにすることを目的として、ベース部のコンクリートと外周立上り部のコンクリートとを同じ工程で一連の作業として打設できるようにすることが望まれており、このような一連の打設作業か可能なように型枠を組み立てるための、型枠吊り金具や支持具も開発されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。これらの型枠吊り金具や支持具は、ベタ基礎の外周立上り部に配置される外型枠及び内型枠を、外型枠よりも内型枠を高い位置に支持した状態で設置して、ベース部のコンクリートと外周立上り部のコンクリートとを連続して打設できるようにするものである。
【特許文献1】特開平5−202613号公報
【特許文献2】特開2001−81967号公報
【特許文献3】特開2002−356993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2や特許文献3に記載の型枠吊り金具や支持具は、その構成が複雑になると共に、従来より一対の型枠を同じ高さの面から立設配置するために用いられていた型枠取付け金物とは別の部材として、外周立上り部のための専用の金物として製造されるものであることから、コストがかかることにる。したがって、従来より一対の型枠を同じ高さの面から立設配置するために用いられていた型枠取付け金物を利用して、簡易且つ安価に、外型枠よりも内型枠を高い位置に支持した状態で外型枠及び内型枠を組み立てることを可能にする、新たな外周立上り部用の型枠取付け金物の開発が望まれている。
【0006】
本発明は、このような従来の課題に着目してなされたものであり、一対の型枠を同じ高さの面から立設させる金物を利用して、簡易且つ安価に、ベタ基礎の外周立上り部に配置される外型枠及び内型枠を、外型枠よりも内型枠を高い位置に支持した状態で設置することのできるベタ基礎外周立上り部の型枠取付け金物、及び該型枠取付け金物を用いたベタ基礎外周立上り部の型枠取付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、建物のベタ基礎の外周立上り部において、外型枠及び内型枠を、外型枠よりも内型枠を高い位置に支持した状態で設置するための型枠取付け金物であって、短冊状の第1板状材からなり、両端部分を垂直に曲折することによって形成された一対の外側規制片と、該外側規制片と所定の間隔離れた位置において、前記第1板状材から立ち上げることによって形成された一対の内側規制片とを有する第1金物と、短冊状の第2板状材の一端部分を垂直に曲折することによってL字形状に形成された本体部と、前記第2板状材の他端部分に垂直に張り出すようにして接合されると共に、さらに垂直に曲折して前記他端部分と所定の間隔離れて対向配置される上部規制片を備える受部とからなる第2金物とによって構成され、前記第1金物の一端部分に前記第2金物の前記本体部の曲折した一端部分を係止することにより前記本体部を前記第1金物に対して垂直に立設させ、前記第1金物の他端部分の外側規制片と内側規制片との間に前記外型枠を立設状態で係止させ、前記第2金物の前記本体部の他端部分と前記受部の前記上部規制片との間に前記内型枠を立設状態で係止させるベタ基礎外周立上り部の型枠取付け金物を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0008】
また、本発明のベタ基礎外周立上り部の型枠取付け金物は、前記第1金物の中間部位と前記第2金物の前記本体部の中間部位との間に介在して取り付けられて、前記本体部が前記第1金物に対して垂直に立設する状態を補強する斜め補強金物を備えていることが好ましい。
【0009】
さらに、本発明のベタ基礎外周立上り部の型枠取付け金物は、前記第1金物の前記外側規制片の端部及び前記第2金物の前記本体部の他端部分の端部には、折り曲げられることによって前記内型枠又は前記外型枠の被係止部に係止される折曲げ係止片が設けられていることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、上記ベタ基礎外周立上り部の型枠取付け金物を用いた型枠取付け構造であって、前記ベタ基礎の外周立上り部が設けられる通り線に沿って、前記型枠取付け金物を、前記第1金物を前記通り線と垂直に配置しつつ間隔をおいて複数設置し、これらの型枠取付け金物に跨るようにして、前記第1金物の他端部分の前記外側規制片と前記内側規制片との間に前記外型枠を立設状態で係止し、且つ前記第2金物の前記本体部の他端部分と前記受部の前記上部規制片との間に前記内型枠を立設状態で係止することにより、前記外型枠よりも前記内型枠を高い位置に支持した状態でこれらの型枠が設置されるベタ基礎外周立上り部の型枠取付け構造を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0011】
そして、本発明のベタ基礎外周立上り部の型枠取付け構造は、前記複数の型枠取付け金物に跨るようにして、前記第2金物の前記本体部における前記受部よりも下方の部分に、ラス網が、前記外型枠側とは反対側の面に沿って取り付けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のベタ基礎外周立上り部の型枠取付け金物、又は該型枠取付け金物を用いたベタ基礎外周立上り部の型枠取付け構造によれば、一対の型枠を同じ高さの面から立設させる金物を利用して、簡易且つ安価に、ベタ基礎の外周立上り部に配置される外型枠及び内型枠を、外型枠よりも内型枠を高い位置に支持した状態で設置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の好ましい一実施形態に係るベタ基礎外周立上り部の型枠取付け金物10は、図1に示すように、建物として例えば住宅建築物の基礎部分を構成するベタ基礎11をコンクリートを打設して構築する際に、ベタ基礎11の外周立上り部11aのコンクリートとベース部11bのコンクリートとを、一連の作業として同じ工程で効率良く打設できるようにすることを目的として、外周立上り部11aの外型枠12及び内型枠13を、外型枠12よりも内型枠13をベース部11bの厚さ分だけ高い位置に支持した状態で設置するために用いられるものである。また、本実施形態の型枠取付け金物10は、例えば先行形成したベタ基礎のベース部を作業床として、一対の型枠を同じ高さのベース面から立設させる際に用いられていた、従来の型枠取付け用の金物を第1金物14として利用して、簡易且つ安価に、外周立上り部11aの外型枠12及び内型枠13を、異なる高さに支持した状態で組み立てることを可能にするものである。
【0014】
そして、本実施形態のベタ基礎外周立上り部の型枠取付け金物10は、建物のベタ基礎11の外周立上り部11aにおいて、外型枠12及び内型枠13を、外型枠12よりも内型枠13を高い位置に保持した状態で設置するための取付け金物であって、図2及び図3に示すように、短冊状の第1板状材15からなり、両端部分14a,14bを垂直に曲折することによって形成された一対の外側規制片16a,16bと、これらの外側規制片16a,16bと所定の間隔離れた位置において第1板状材15から立ち上げることによって形成された一対の内側規制片17a,17bとを有する第1金物14と、短冊状の第2板状材21(本体部19)の一端部分19aを接合片22として垂直に曲折することによってL字形状に形成された本体部19と、第2板状材21(本体部19)の他端部分19bに垂直に張り出すようにして接合されると共に、さらに垂直に曲折して他端部分19bの先端片23と所定の間隔離れて対向配置される上部規制片24を備える受部20とからなる第2金物18とによって構成される。
【0015】
また、本実施形態の型枠取付け金物10は、第1金物14の一端部分14aに第2金物18の本体部19の曲折した一端部分19aを係止することにより本体部19を第1金物14に対して垂直に立設させ、第1金物14の他端部分14bの外側規制片16bと内側規制片17bとの間に外型枠12を立設状態で係止させ(図1参照)、第2金物18の本体部19の他端部分19bの先端片23と受部20の上部規制片24との間に内型枠13を立設状態で係止させるようになっている(図1参照)。
【0016】
さらに、本実施形態では、型枠取付け金物10は、第1金物14の中間部位と第2金物18の本体部19の中間部位との間に介在して取り付けられて、本体部19が第1金物14に対して垂直に立設する状態を補強する斜め補強金物25を備えている。
【0017】
本実施形態では、第1金物14は、上述のように、一対の型枠を同じ高さの面から立設させる際に用いる、例えば特開平5−202613号公報に記載の型枠取付け用の金物と略同様の基本構成を備えるものであり、例えば幅35mm程度の短冊状の第1板状材15に曲折加工等を施すことによって容易に形成されたものである。第1金物14は、その両端部分が各々垂直上方に折り曲げられることにより、一対の外側規制片16a,16bを備えており、またこれらの外側規制片16a,16bから型枠12,13の厚さに相当する所定の間隔内側に離れた位置に、一対の内側規制片17a,17bが、第1板状材15に切込みを入れた部分を垂直上方に折り曲げるようにして立ち上げることによって設けられている。そして、第1金物14は、一端部分14aの外側規制片16aと内側規制片17aとの間、及び他端部分14bの外側規制片16bと内側規制片17bとの間に、適宜型枠の下端部を係止して、これらを立設させた状態で保持できるようになっている。
【0018】
また、本実施形態では、第1金物14における、一対の内側規制片17a,17bの間の中間部位の領域においては、両側の側縁部26aによって挟まれる中間部分が、一段高くなった帯状の上底部26bとなっている。一方、第1金物14における、各内側規制片17a,17bから折れ曲り部を介して各外側規制片16a,16bに至る領域には、上底部26bから枝分れするようにして、一対のガイド凸溝27が、平行に延設して各々設けられている。
【0019】
さらに、本実施形態では、第1金物14の各外側規制片16a,16bの上端部には、両側の突出片28の間に配置されて、略T字形状の折曲げ係止片29が上方に突出して設けられている。折曲げ係止片29は、型枠12の下端部を外側規制片16a,16bと内側規制片17a,17bとの間に嵌め込むようにして型枠12を立設配置した後に、必要に応じて型枠12側に折り曲げられることによって、型枠12の被係止部に係止される(図1参照)。これによって、第1金物14への型枠12の下端部の係止状態を安定して保持することが可能になる。
【0020】
さらにまた、本実施形態では、第1金物14の一対の内側規制片17a,17bの間の中間部位には、その上底部26bの幅方向中央部に、補強金物係止孔30aが、長手方向に間隔をおいて3箇所に形成されている。これらの補強金物係止孔30aには、斜め補強金物25の下端係合部25aが選択的に係合係止されるようになっている。また、第1金物14の上底部26bを挟んだ両側の側縁部26aには、位置決め切欠き31が、複数箇所に切り欠き形成されている。
【0021】
第2金物18は、上述のように、本体部19と受部20とからなる。第2金物14の本体部19は、例えば幅35〜70mm程度の幅を有すると共に、両側縁部が縁取り補強リブ33として内側に折れ曲った短冊状の第2板状材21に、曲折加工等を施すことによって、容易に形成することができる。本体部19は、その一端部分19aを接合片22として垂直に曲折することにより、L字形状を備えるように形成される。
【0022】
また、本実施形態では、L字形状の本体部19の垂直に立設する部分の略中央部から、折れ曲り部分を介して一端部分19aの接合片22の先端に至る領域には、一対の被ガイド凸溝32が、平行に延設して設けられている。これらの一対の被ガイド凸溝32に、背面側から第1金物14に設けられた一対のガイド凸溝27を嵌め込むようにして重ね合わせることにより、第2金物18の本体部19の曲折した接合片22を有する一端部分19aを、第1金物14の一端部分14aに安定した状態で位置決めしながら接合することができるようになっている。
【0023】
さらに、本実施形態では、本体部19の一端部分19aの接合片22には、これの中央部分に、第1金物14の一端部分14aの内側規制片17aが挿通係止される係止穴34が設けられている。この係止穴34に内側規制片17aが挿通係止された状態で、本体部19の一端部分19aが、第1金物14の一端部分14aの折れ曲り部の内側に重ねるようにして嵌め込まれることにより、本体部19は、第1金物14に対して垂直に立設する状態を強固に保持することが可能になる。
【0024】
なお、本実施形態では、第2板状材21(本体部19)の両側縁部に設けられた縁取り補強リブ33を、接合片22の先端部においては縁部分が平坦な面となるように切り欠いておき、また平坦な面となった接合片22の先端部の縁部分には、固定釘を打込むための釘孔35を形成しておくこともできる(図3参照)。
【0025】
さらにまた、本実施形態では、L字形状の本体部19の垂直に立設する部分には、接合片22と受部20の張出し基端部との間の領域である中間部位に配置されて、補強金物係止孔30bが、当該中間部位における後述する受部20の接合部39が重ねて接合される上端部分において1箇所に形成されている。この補強金物係止孔30bには、斜め補強金物25の上端係合部25bが係合係止されるようになっている。
【0026】
そして、本実施形態では、L字形状の本体部19の垂直に立設する部分の上端部分である他端部分19bには、受部20が、内側に張り出すようにして取り付けられている。また、受部20の張出し基端部よりも上方の部分が、受部20の上部規制片24と対向配置される先端片23となっている。さらに、先端片23の上端部(本体部19の他端部分19bの上端部)には、第1金物14の各外側規制片16a,16bの上端部と同様に、両側の突出片36の間に配置されて、略T字形状の折曲げ係止片37が上方に突出して設けられている。折曲げ係止片37は、型枠13の下端部を上部規制片24と先端片23との間に嵌め込むようにして型枠13を立設配置した後に、必要に応じて型枠13側に折り曲げられることによって、型枠13の被係止部に係止される(図1参照)。これによって、第2金物18への型枠13の下端部の係止状態を安定して保持することが可能になる。
【0027】
第2金物18の受部20は、例えば幅35〜70mm程度の幅を有する短冊状の第3板状材38に、曲折加工等を施すことによって容易に形成することができる。受部20は、略平坦な接合部39から垂直に折れ曲がって載置部40が形成されると共に、さらに垂直に折れ曲がって上部規制片24が形成された、略Z字形状を有するように形成される。受部20は、接合部39を、本体部19の垂直に立設する他端部分19bの内側面に、接着剤や溶接等を介して接合することにより、載置部40を垂直内側に張り出させた状態で、本体部19に一体として取り付けられる。これによって、受部20の上部規制片24は、本体部19の他端部分19bの先端片23と型枠13の厚さに相当する所定の間隔内側に離れた位置に、当該先端片23と対向して配置されることになる。
【0028】
なお、本実施形態では、受部20の載置部40から上部規制片24に亘って、これらの両側縁部及び中央部に沿って、3条の補強凸溝41が、平行に延設して設けられている。これによって、受部20における本体部19から内側に片持ち梁状に張り出す部分が、効果的に補強されるようになっている。また、載置部40の張出し基端部には、本体部19の他端部分19bに切り込みを入れて内側に折り曲げることによって形成した補強接合片42が、接着剤や溶接等を介して接合されている。補強接合片42が接合されていることにより、受部20からの型枠13の荷重によって張出し基端部に負荷されるモーメント力を強固に支持して、当該張出し基端部を効果的に補強できるようになっている。
【0029】
本実施形態の型枠取付け金物10では、さらに、第1金物14の中間部位と第2金物18の本体部19の中間部位との間に介在して、斜め補強金物25が取り付けられている。本実施形態では、斜め補強金物25は、例えば直径が4〜9mm程度の円形断面を有する鋼棒からなり、両端部が折れ曲っていると共に、パンチングでつぶされて下端係合部25a及び上端係合部25bが形成されている。斜め補強金物25は、その下端係合部25aを、第1金物14の3箇所の補強金物係止孔30aに選択的に係合係止し、その上端係合部25bを、第2金物14の本体部19の補強金物係止孔30bに係合係止して、第1金物14及び第2金物14の本体部19と共に、略直角三角形のトラス構造を形成する。これによって、第1金物14に対して第2金物18の本体部19が垂直に立設する状態を、強固に補強することができるようになっている。
【0030】
そして、上述の構成を有する型枠取付け金物10を用いてベタ基礎11の外周立上り部11aに、外型枠12及び内型枠13を、外型枠12よりも内型枠13を高い位置に保持した状態で設置するには、例えば、図1に示すように、基礎砕石を敷均し転圧して形成した基盤層43における、ベタ基礎11の外周立上り部11aが設けられる部分に、捨てコンクリート層44を形成する。しかる後に、捨てコンクリート層44を作業床として、ベタ基礎11の外周立上り部11aが設けられる通り線に沿って、型枠取付け金物10を、第1金物14を通り線と垂直に配置しつつ間隔をおいて複数設置する。また、設置した複数の型枠取付け金物10に跨るようにして、第1金物14の他端部分14bの外側規制片16bと内側規制片17bとの間に外型枠12を立設状態で係止すると共に、第2金物18の本体部19の他端部分19bと受部20の上部規制片24との間に内型枠13を立設状態で係止することにより、外型枠12よりも内型枠13を高い位置に保持した状態でこれらの型枠12,13を設置する。
【0031】
また、こられの型枠12,13の設置作業と並行して、或いは型枠12,13の設置作業に先立って、ベタ基礎11の外周立上り部11a及びベース部11bの内部に配置される補強鉄筋45の組立作業が行われる。さらに、複数の型枠取付け金物10に跨るようにして組み立てられた外型枠12及び内型枠13の上端分を、例えば型枠取付け金物10の第1金物14と略同様の構成を有する上部固定金物46を用いて、外周立上り部11aの幅に相当する所定の間隔を保持した状態で固定する。
【0032】
ここで、本実施形態では、好ましくは、複数の型枠取付け金物10に跨るようにして、第2金物18の本体部19における受部20よりも下方の部分に、ラス網47が、外型枠12側とは反対側の面に沿って取り付けられている。
【0033】
ラス網47は、例えば13〜32mm程度の網目を有する公知のものを用いることができ、例えば結束線を用いて第2金物18の本体部19の立設する部分や補強鉄筋45に縛り付けることにより、ベタ基礎11の外周立上り部11aとベース部11bとを仕切るようにして、受部20の下方に容易に取り付けることができる。また、ラス網47には、図4(a)に示すように、例えばこれの上部に横方向に折曲げ加工を施したり、図4(b)に示すように、例えば縦方向に折曲げ加工を施すことにより補強リブ48を形成しておくことができ、これによってラス網47の曲げ強度を向上させることが可能になる。さらに、ラス網47には、下端縁部から上方に向けて切り込まれた切込み溝49が、外周立上り部11aとベース部11bとに連続して配筋される補強鉄筋45の配設ピッチに対応させて、複数形成されている。これらの切込み溝49に補強鉄筋45を挿通することにより、ラス網47を、補強鉄筋45との干渉を回避した状態で容易に取り付けることが可能になる。
【0034】
ベタ基礎11の外周立上り部11aとベース部11bとを仕切るようにしてラス網47が設けられていることにより、外周立上り部11aのコンクリートとベース部11bのコンクリートとを一連の作業として同じ工程で打設してゆく際に、ベース部11bのコンクリートを当該ベース部11bの上方から打設した後に、外周立上り部11aのコンクリートのみを、当該外周立上り部11aの型枠12,13の上方の開口から打設するといった作業によって、これらの打継目にコールドジョイントが生じるのを効果的に回避することが可能になる。すなわち、外周立上り部のコンクリートとベース部のコンクリートとを一連の作業として同じ工程で打設してゆく従来のベタ基礎のコンクリート打設方法によれば、コールドジョイントの発生を防止するために、まず外周立上り部とベース部との接合角部分のコンクリートを打設し、しかる後に外周立上り部のコンクリートを当該外周立上り部の型枠の上方の開口から打設し、さらにベース部のコンクリートを当該ベース部の上方から打設するとった方法が採用されていたが、本実施形態では、ラス網47を設けることによって、このような手間の係る打設作業を要することなく、外周立上り部11aのコンクリートとベース部11bのコンクリートとを一連の作業としてさらに効率良く打設してゆくことが可能になる。また、これによって、外周立上り部11aとベース部11bとの接合部分のコンクリートの品質を、さらに向上させることが可能になる。
【0035】
そして、上述の構成を備える本実施形態の型枠取付け金物10又はベタ基礎外周立上り部の型枠取付け構造によれば、一対の型枠を同じ高さの面から立設させる金物を利用して、簡易且つ安価に、ベタ基礎11の外周立上り部11aに配置される外型枠12及び内型枠13を、外型枠12よりも内型枠13を高い位置に支持した状態で設置することができる。
【0036】
すなわち、本実施形態によれば、一対の型枠を同じ高さの面から立設させる従来の金物と略同様の構成の、両端部分14a,14bを垂直に曲折することによって形成された一対の外側規制片16a,16bと、これらの外側規制片16a,16bと所定の間隔離れた位置において第1板状材15から立ち上げることによって形成された一対の内側規制片17a,17bとを有する第1金物14と、L字形状に形成された本体部19と、上部規制片24を備える受部20とからなる第2金物18とを組み合わせて用いることによって、型枠取付け金物10を簡易且つ安価に形成できると共に、第1金物14の他端部分14bの外側規制片16bと内側規制片17bとの間に外型枠12を立設状態で係止させ、第2金物18の本体部19の他端部分19bの先端片23と受部20の上部規制片24との間に内型枠13を立設状態で係止させることにより、外型枠12及び内型枠13を、外型枠12よりも内型枠13を高い位置に支持した状態で容易に設置することができる。これによって、外周立上り部11aのコンクリートとベース部11bのコンクリートとを、一連の作業として同じ工程で効率良く打設してゆくことが可能になる。
【0037】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、第1金物の中間部位と第2金物の本体部の中間部位との間に介在して取り付けられる斜め補強金物は、円形断面を有する鋼棒である必要は必ずしも無く、帯板形状を有する斜め補強金物等であって良い。また、第1金物の外側規制片の端部及び第2金物の本体部の他端部分の端部に、折曲げ係止片を設ける必要は必ずしも無い。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係る型枠取付け金物を用いたベタ基礎外周立上り部の型枠取付け構造を説明する要部断面図である。
【図2】本発明の好ましい一実施形態に係る型枠取付け金物の斜視図である。
【図3】本発明の好ましい一実施形態に係る型枠取付け金物の分解斜視図である。
【図4】(a),(b)は、ラス網の取付け状況を説明する要部略示斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
10 ベタ基礎外周立上り部の型枠取付け金物
11 ベタ基礎
11a ベタ基礎の外周立上り部
12 外型枠
13 内型枠
14 第1金物
14a 第1金物の一端部分
14b 第1金物の他端部分
16a,16b 外側規制片
17a,17b 内側規制片
18 第2金物
19 第2金物の本体部
19a 本体部の一端部分
20 第2金物の受部
22 接合片
23 先端片
24 上部規制片
25 斜め補強金物
34 係止穴
37 折曲げ係止片
47 ラス網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物のベタ基礎の外周立上り部において、外型枠及び内型枠を、外型枠よりも内型枠を高い位置に支持した状態で設置するための型枠取付け金物であって、
短冊状の第1板状材からなり、両端部分を垂直に曲折することによって形成された一対の外側規制片と、該外側規制片と所定の間隔離れた位置において、前記第1板状材から立ち上げることによって形成された一対の内側規制片とを有する第1金物と、
短冊状の第2板状材の一端部分を垂直に曲折することによってL字形状に形成された本体部と、前記第2板状材の他端部分に垂直に張り出すようにして接合されると共に、さらに垂直に曲折して前記他端部分と所定の間隔離れて対向配置される上部規制片を備える受部とからなる第2金物とによって構成され、
前記第1金物の一端部分に前記第2金物の前記本体部の曲折した一端部分を係止することにより前記本体部を前記第1金物に対して垂直に立設させ、前記第1金物の他端部分の外側規制片と内側規制片との間に前記外型枠を立設状態で係止させ、前記第2金物の前記本体部の他端部分と前記受部の前記上部規制片との間に前記内型枠を立設状態で係止させるベタ基礎外周立上り部の型枠取付け金物。
【請求項2】
前記第1金物の中間部位と前記第2金物の前記本体部の中間部位との間に介在して取り付けられて、前記本体部が前記第1金物に対して垂直に立設する状態を補強する斜め補強金物を備える請求項1に記載のベタ基礎外周立上り部の型枠取付け金物。
【請求項3】
前記第1金物の前記外側規制片の端部及び前記第2金物の前記本体部の他端部分の端部には、折り曲げられることによって前記内型枠又は前記外型枠の被係止部に係止される折曲げ係止片が設けられている請求項1又は2に記載のベタ基礎外周立上り部の型枠取付け金物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のベタ基礎外周立上り部の型枠取付け金物を用いた型枠取付け構造であって、
前記ベタ基礎の外周立上り部が設けられる通り線に沿って、前記型枠取付け金物を、前記第1金物を前記通り線と垂直に配置しつつ間隔をおいて複数設置し、これらの型枠取付け金物に跨るようにして、前記第1金物の他端部分の前記外側規制片と前記内側規制片との間に前記外型枠を立設状態で係止し、且つ前記第2金物の前記本体部の他端部分と前記受部の前記上部規制片との間に前記内型枠を立設状態で係止することにより、前記外型枠よりも前記内型枠を高い位置に保持した状態でこれらの型枠が設置されるベタ基礎外周立上り部の型枠取付け構造。
【請求項5】
前記複数の型枠取付け金物に跨るようにして、前記第2金物の前記本体部における前記受部よりも下方の部分に、ラス網が、前記外型枠側とは反対側の面に沿って取り付けられている請求項4に記載のベタ基礎外周立上り部の型枠取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−77606(P2010−77606A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−244284(P2008−244284)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)
【Fターム(参考)】