説明

ベッド

【課題】排便をその場で行える機能性に優れた簡易構造のベッドを提供する。
【解決手段】背部レスト61と座部レスト62と下腿部レスト63とを有して椅子形状に変換するベッドである。座部レスト62には、使用者の臀部に対応する排便口62Aと該排便口を開閉するスライド蓋10が設けられる。スライド蓋10は、背部レスト61の起立時に座部レスト62の表面に平行する面に沿って排便口62Aを閉鎖する初期位置と排便口62Aを開放する退避位置との間を移動可能とされる。又、スライド蓋10には、該スライド蓋10を初期位置と退避位置との間で往復移動せしめる蓋開閉駆動部53が連結される。又、排便口62Aの両側には、表面高さがスライド蓋10よりも高くなる位置まで浮上可能な便座部11が設けられ、スライド蓋10を移動させる前に便座部11が便座昇降駆動部52により押し上げられ、使用者の臀部も便座部11と共に押し上げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身障者や病弱な高齢者などの要介護者を主対象とするベッドに係わり、特に自立歩行の困難な身障者がベッドを離れずして排便を行えるようにしたベッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、要介護者を主たる対象として、ベッド上で起き上がった姿勢のまま排便を行えるよう、種々の便器付ベッドが提案されている。
【0003】
例えば、使用者の臀部位置に対応して便器の昇降を許容する開口部を設けると共に、その開口部に水平状態から下方に旋回可能な開閉部を設け、その開閉部を下方旋回して開口部を開放したとき、開口部を通じて便器が使用者の臀部に接触する位置まで上昇するようにしたベッドが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−340398号公報(段落0032〜0061、図1〜図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように便器に対応する開口部が開閉部の下方旋回により開放する構成では、便器を開口部に対応する位置に据え付けてしまうと、開閉部が便器に干渉して開口部を開閉できなくなるので、便器を開口部の直下から退ける便器移動機構が必要となり、ベッド全体として構造が複雑となり、コスト高にもなるという問題がある。
【0006】
又、下方旋回する開閉部では、当該開閉部が自重や使用者からの荷重を受けて不用意に開放し、使用者の臀部が開口部に嵌まり込んでしまう危険性がある。尚、この点、特許文献1では、開口部に穴あきの布を張設し、その布が便器の便座に接触するようにしているが、その種の布では便器が上昇端に達するまで使用者の臀部を支持することは難しく、安全性に欠ける上、開口部を閉鎖するときに開閉部が前記布を介して使用者の沈み込んだ臀部を押し上げるようになるため、開閉部の上方旋回には大きな駆動トルクが必要になり、そのトルク不足により開口部が閉まらなくなる虞がある。
【0007】
本発明は以上のような事情に鑑みて成されたものであり、その目的は排便をその場で行える機能性に優れた簡易構造のベッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するため、
使用者の臀部及び大腿部を支持する座部レスト62と、使用者の上半身を支持するべく前記座部レストの一端部に連結して起伏可能とされる背部レスト61と、使用者の下腿部を支持するべく座部レスト62の他端部に連結して下方に屈曲可能とされる下腿部レスト63と、を有するベッドにおいて、
座部レスト62には、使用者の臀部に対応する排便口62Aと該排便口を開閉するスライド蓋10が設けられ、
スライド蓋10は、背部レスト61の起立時に座部レスト62の表面に平行する面に沿って排便口62Aを閉鎖する初期位置と排便口62Aを開放する退避位置との間を移動可能とされると共に、
スライド蓋10には、該スライド蓋10を前記初期位置と前記退避位置との間で往復移動せしめる蓋開閉駆動部53が連結されていることを特徴とする。
【0009】
加えて、座部レスト62にスライド蓋10の移動案内をするガイドレール62Dが固設され、背部レスト61には、該背部レスト61の倒伏時にガイドレール62Dを収容するレール収容凹部61Aが形成されていることを特徴とする。
【0010】
又、排便口62Aの両側に、表面高さがスライド蓋10よりも高くなる位置まで浮上可能な便座部11が設けられ、座部レスト62の下方には、スライド蓋10を移動させる前に便座部11を介して使用者の臀部を押し上げる便座昇降駆動部52が設けられていることを特徴とする。
【0011】
更に、背部レスト61の起立時において排便口62Aが対向する位置に便器Tが設置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のベッドによれば、排便口を開閉するスライド蓋が座部レストの表面に平行な面に沿って移動可能とされていることから、排便口が不用意に開放してしまう危険性が少なく安全であり、しかも排便口に対応する定位置に便器を固設しても排便口の開閉に際してスライド蓋が干渉しないので、便器を前後左右に移動させるような機構が不要となり、全体として簡易構造のベッドにすることができる。又、スライド蓋には蓋開閉駆動部が連結されることから、その蓋開閉駆動部に流体圧シリンダなどを用いて排便口の開閉を自動化することができる。
【0013】
加えて、座部レストにスライド蓋の移動案内をするガイドレールが固設されていることから、スライド蓋の移動を円滑に行え、しかも背部レストにはその倒伏時にガイドレールを収容するレール収容凹部が形成されていることから、背部レストの倒伏時においてその背部レスト上に敷かれるマットレスがガイドレールに押されて隆起してしまうことを防止しながら、ガイドレールにより背部レスト上のマットレスを支持して該マットレスの沈み込みを防止することができる。
【0014】
又、排便口の両側に、表面高さがスライド蓋よりも高くなる位置まで浮上可能な便座部が設けられ、座部レストの下方には、便座部を介して使用者の臀部を押し上げる便座昇降駆動部が設けられていることから、その便座部により使用者の臀部両側を支持して排便口の開放時に使用者の臀部が排便口に落ち込むことを防止しながら、便座昇降駆動部による便座部および使用者の臀部の押し上げにより、スライド蓋の移動を負荷なく良好に行え、スライド蓋による使用者の臀部の擦過も防止できる。
【0015】
更に、排便口が対向する位置に便器が設置されることから、排便口から落下する排泄物を室内床上に落とさず便器に受容することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明を詳しく説明する。先ず、図1において、1は架台であり、この架台1はベースフレーム2と可動フレーム3とで構成される。ベースフレーム2は、複数の鋼材を接合するなどして構成される剛体であり、その前後左右には支持脚21が固着され、前後方向に延びる左右一対のサイドビーム22には支柱23が固着されている。
【0017】
図2および図3から明らかなように、ベースフレーム2には、サイドビーム22の内側で左右一対のガイドレール24が平行に設けられると共に、その両ガイドレール24上には左右一対のブラケット25が形成され、そのブラケット25により後述する旋回アーム4の一端が回転自在に支持される構成としてある。
【0018】
更に、図1に示すように、ベースフレーム2の長さ方向一端部には、可動フレーム3を前後方向に往復移動させるための駆動源として、モータ駆動式のシリンダ装置5が設置される。尚、シリンダ装置5は油圧シリンダでも空気圧シリンダでもよい。
【0019】
一方、図1および図4〜図5に示すように、可動フレーム3も複数の鋼材を接合するなどして構成される剛体であり、その下部にはベースフレーム2のガイドレール24に係合する移動用のローラ31が装着されている。そして、係る可動フレーム3には図1のようにシリンダ装置5の伸縮ロッド部51が接続され、その伸縮動作により可動フレーム3がベースフレーム2内でその長さ方向(ガイドレール24)に沿って往復移動するようになっている。尚、図4および図5において、32は可動フレーム3に固着した結合ピンである。
【0020】
又、図1において、6は架台1上に配置される平板状の床板フレームである。この床板フレーム6は、使用者の上半身を支持する背部レスト61、使用者の臀部及び大腿部を支持する座部レスト62、使用者の下腿部を支持する下腿部レスト63、及び使用者の足部を支持する足部レスト64に区分され、それら各レスト61〜64の隣り合うもの同士が屈曲可能に連結されている。尚、背部レスト61と座部レスト62は、その両者61,62の側縁から立ち上がるヒンジ65Aにより連結されて下向きに凸となる谷折状態に屈曲可能とされる一方、座部レスト62と下腿部レスト63、及び下腿部レスト63と足部レスト64は、それぞれヒンジ65B,65Cにより連結されて上向きに凸となる山折状態に屈曲可能とされている。
【0021】
そして、その各レスト61〜64の表面上には、3分割されたマットレスM1〜M3が取り付けられ、そのマットレスM1〜M3上に使用者が横臥できるようになっている。
【0022】
ここで、背部レスト61の裏面には、座部レスト62の下方位置まで延びる左右一対の作動板66が固着され、その作動板66,66の間には、図6および図7で明らかなように溝形のガイドレール67が固着されている。
【0023】
図1に示されるように、ガイドレール67内にはローラ41が回転自在に嵌め込まれ、そのローラ41が上記旋回アーム4の先端に回転自在に支持されている。又、作動板66の中間部分は、ベースフレーム2を構成する支柱23の上端部に回転自在に結合されている。これにより、背部レスト61は、作動板66とベースフレーム2との結合部P1を中心に上下方向に旋回可能にして支持され、座部レスト62との連結部分(ヒンジ65A)を中心に起伏することとなる。又、作動板66の先端部66Aは、該作動板66とベースフレーム2との結合部P1より下方にあって、可動フレーム3の前部(使用者のヘッド側にある上記結合ピン32)と伝動リンク7で連結される。
【0024】
伝動リンク7は、可動フレーム3の移動方向に対して若干傾斜し、作動板66に結合する一端側が他端側よりも低くなるように設定されており、これによりシリンダ装置5を駆動して可動フレーム3を図1の右方に移動させると、作動板の先端部66Aに伝動リンク7による引張力が作用し、以って作動板66が結合部P1を中心に揺動するために背部レスト61の上方旋回(起立動作)が行われ、逆に可動フレーム3を図1の左方に移動させれば、伝動リンク7による作動板の先端部66Aの押圧により背部レスト61の下方旋回(倒伏動作)が行われる。
【0025】
尚、背部レスト61が下方旋回して図1のように水平状態に倒伏したときには、その裏面がベースフレーム2の一端部上に配される背受け部26に当って背部レスト61が水平状態に維持されるようになっているが、背受け部26に代えて図示せぬ脚体を背部レスト61の裏面に直角に固着し、背部レスト61の倒伏時にその脚体がベースフレーム2の上面上もしくは床面上に直立して背部レスト61を支持する構成としてもよい。
【0026】
又、シリンダ装置5は、その伸縮ロッド部51を可動フレーム3に接続することに限らず、両端クレビス形のシリンダ装置5にして、これをベースフレーム2と旋回アーム4又は背部レスト61の裏面との間に架設するようにしてもよく、この場合でも背部レスト61を旋回させながら可動フレーム3の移動を行うことができる。
【0027】
一方、床板フレーム6を図1のようにフラットな状態に展開してベッド形にしたとき、座部レスト62、下腿部レスト63、及び足部レスト64は架台1を構成する可動フレーム3により支持される。
【0028】
このうち、座部レスト62は、下腿部レスト63との連結側(ヒンジ65B側)が連接杆8を介して可動フレーム3の後部(使用者の足元側)に連結される。尚、図1において、68は座部レスト62の裏面に固着したブラケットで、そのブラケット68に連接杆8の一端が回転自在に結合されている。又、下腿部レスト63は、座部レスト62と足部レスト64との間でその両者62,64に連結されるのみで架台1とは連結されず、足部レスト64は、下腿部レスト63とは反対側の端部がヒンジ部材69を介して可動フレーム3の上端部に連結されている。
【0029】
しかして、以上のように構成されるベッドでは、シリンダ装置5を駆動して可動フレーム3を図1の右方に移動させることにより、床板フレーム6が図1のようなフラット状に展開したベッド形から椅子形に転換するが、その動作説明は後述する。
【0030】
次に、図8は可動フレームを部分的に拡大して示す。この図で明らかなように、可動フレーム3にはトリガーレバー33が取り付けられている。トリガーレバー33は連接杆8に確定運動を行わせるためのものであり、その一端部は可動フレーム3に回転自在に結合され、他端には直角に切り欠かれた凹部33Aが形成される。そして、そのトリガーレバー33は、可動フレーム3との結合部P2を中心に上下に揺動可能とされており、凹部33Aでは連接杆8と座部レスト62との結合部と同心のピンP3が支持される。尚、ピンP3にはローラ9が装着され、そのローラ9は可動フレーム3の内側面に形成される受座34により支持される。又、トリガーレバー33の支点側の一端には突片33Bが形成され、その突片33Bと可動フレーム3との間にはトリガーレバー33に図8の反時計回りの付勢力を与えるためのバネ35が掛けられる。更に、図8から明らかなように、連接杆8は、可動フレーム3との結合側の一端に長孔8Aを有し、その長孔8Aにより長さ方向への移動を許容されている。
【0031】
そして、以上のようなトリガーレバー33によれば、図1に示した背部レスト61の上方旋回が開始されたとき、使用者による上方からの荷重に抵抗して座部レスト62を押し上げ、連接杆8に上方旋回する切掛けを与えることができる。
【0032】
次に、図9は足部レストと可動フレームとの連結部分を拡大して示す。この図で明らかなように、可動フレーム3の一端上部にはブラケット36が取り付けられ、そのブラケット36によりヒンジ部材69の一端部が回転自在に支持されている。ヒンジ部材69は、先端側が折れ曲がった金属板でなり、その先端部は足部レスト64の裏面に固着したブラケット64Aに回転自在に結合されている。これにより、足部レスト64は、ヒンジ部材69との結合部P4を中心に上下に揺動可能とされ、且つヒンジ部材69と可動フレーム3との結合部P5を中心に上下に揺動可能とされるが、図9に示すようなヒンジ部材69に代えて、ブラケット64Aに軸を装着する一方、可動フレーム3に前記軸の移動案内をする長孔を形成するようにしてもよい。
【0033】
ここで、以上のように構成されるベッドの動作説明をする。図10は床板フレームが椅子形に転換する状態を順に示したリンク系の動作図で、黒丸は位置固定の回転支点、白丸は移動支点を表している。
【0034】
図10から明らかなように、床板フレーム6が椅子形に転換するとき、背部レスト61は図1に示したベースフレーム2と作動板66との結合部P1(回転支点)を中心に上方旋回し、最終的には座部レスト62に対してヒンジ65Aを中心に直立状態まで起き上がる。尚、背部レスト61が倒伏した状態では図1のように作動板66とベースフレーム2との結合部P1(図10において黒丸で表される回転支点)がヒンジ65Aの位置よりも座部レスト62側にあるため、背部レスト61の上方旋回が開始されると、これにヒンジ65Aで連結される座部レスト62はヒンジ65A側が背部レスト61により引き上げられ、これに相前後して座部レスト62のヒンジ65B側も図8に示したトリガーレバー33の作用で押し上げられる。このため、連接杆8は、可動フレーム3との結合部を中心とする上方旋回の切掛けを得て(つまり思案点を脱し)、背部レスト61から座部レスト62を介して上方旋回力を与えられる。しかして、連接杆8の上方旋回により、座部レスト62のヒンジ65B側がヒンジ65A側より上方に大きく押し上げられるために、背部レスト61の上方旋回中に座部レスト62と下腿部レスト63との連結部分(ヒンジ65B)が図10(a)〜(b)に示されるよう上方に向け凸状に折れ曲がる。このため、床板フレーム6上の使用者はその臀部が足元側にずれず、しかも大腿部と下腿部が座部レスト62と下腿部レスト63に支持されたまま折れ曲がるので無理な姿勢を強いられない。
【0035】
又、背部レスト61の上方旋回の続行により連接杆8が直立状態から倒伏状態に移行すると、座部レスト62が下腿部レスト63側に押し出されつつ徐々に降下される。
【0036】
一方、可動フレーム3が図10の右方に移動することにより、同方向に足部レスト64が引かれ、これに連結する下腿部レスト63を図10の左回りに旋回させる。それ故、下腿部レスト63と足部レスト64は徐々に二つ折りにされ、背部レスト61が定位置(略直立に起立した状態)まで起き上がった状態では、図10(d)のように座部レスト62が架台上で水平状に支持されると共に、その座部レスト62の下方位置で足部レスト64が下腿部レスト63の裏側に折り畳まれる。尚、床板フレーム6が椅子形に屈曲した状態では、下腿部レスト63が座部レスト62に対して直角になるようにしてもよいが、本例によれば、図10(d)のように水平となった座部レスト62に対し、下腿部レスト63が鋭角状に折れ曲がって座部レスト62上における使用者(着座者)が下肢(脚部)を鋭角状に折り曲げて座部レスト62の下方位置で足を着地させることを許容されるのであり、このため着座者は身体の重心を前方に移して介護人の助けを借りずに自力で立ち上がることが可能となる。
【0037】
図11は、床板フレームを屈曲させる駆動系を省略した図で、(a)は背部レスト61が倒伏した状態、(b)は背部レスト61が起立した状態を示す。図11において、Tは便器(給排水管を接続した水洗式、あるいはポータブル式)であり、この便器Tは背部レスト61の起立時に座部レスト62の直下となる位置で室内床上に設置され、図11(b)の状態で座部レスト62に形成される後述の排便口が便器Tの上端開口部に対向するようになっている。
【0038】
又、52は座部レスト62に設けられる後述の便座部を押し上げる便座昇降駆動部、53は座部レスト62に設けられる後述のスライド蓋を移動せしめる蓋開閉駆動部である。本例において、便座昇降駆動部52は、ヘッド側(ロッド側)を上向きにして座部レスト62の下方でベースフレーム2に取り付けられる流体圧シリンダであり、そのロッド先端には転動ローラ52Aが取り付けられている。一方、蓋開閉駆動部53は、倒伏した背部レスト61の下方となる位置でベースフレーム2に水平状に取り付けられる流体圧シリンダであり、そのロッド先端は連結金具54を介して上記スライド蓋に連結されている。
【0039】
尚、便座昇降駆動部52として、転動ローラ52Aに代わるカムをモータで回転駆動する構成とするなどしてもよい。又、蓋開閉駆動部53として、リニアモータを利用することもできる。
【0040】
次に、図12は図11(b)のC−C線位置における座部レスト62の断面を示す。この図で明らかなように、便座昇降駆動部52は便器Tを挟んでその左右両側となる位置に配置されている。又、図12において、62Aは上記の排便口であり、この排便口62Aは座部レスト62の幅方向中央に形成されている。排便口62Aの両側縁を成す左右一対のリブ62Bには突片62Cが固着されており、その突片62Cにより上記スライド蓋10が排便口62A上で支持される構成としてある。特に、スライド蓋10は、座部レスト62の表面に平行する面に沿って、排便口62Aを閉鎖する位置(初期位置)と排便口62Aを開放する位置(退避位置)との間を移動可能とされている。一方、11は上記の便座部であり、この便座部11はスライド蓋10を挟んで排便口62Aの左右両側に設けられ、当該便座部11が便座昇降駆動部52を構成する転動ローラ52Aと上記リブ62Bとによって下方から支持されるようになっている。
【0041】
ここに、スライド蓋10と便座部11は、それぞれ硬質底板10A,11A上に座部レスト62のマットレスM2と表面高さが同一となるクッション10B,11Bを固定して構成されている。
【0042】
尚、図13のように、座部レストと下腿部レストに共用されるマットレスM2には、スライド蓋10と便座部11に対応して切欠部M2aが形成され、その切欠部M2aに便座部11を構成するU字形のクッション11Bが嵌り、該クッション11Bの内側にスライド蓋10を構成するクッション10Bが嵌まり込むようになっている。
【0043】
そして、それらクッション10B,11Bをもつスライド蓋10と便座部11とにより使用者の臀部が支持されるようになっている。特に、便座部11はその表面高さがスライド蓋10よりも高くなる位置まで浮上可能とされ、係る便座部11が便座昇降駆動部52で押し上げられることにより該便座部11を介して使用者の臀部も押し上げられ、その状態でスライド蓋10の移動が行われるようになっている。尚、図12において、一点鎖線は使用者の臀部をあらわしている。
【0044】
次に、図14はフラット状に展開された床板フレーム6の平面概略図を示す。この図で明らかなように、座部レスト62には、スライド蓋10の移動案内をする左右一対のガイドレール62Dが固設されている。両ガイドレール62D,62Dは断面L字形の形態であり、その相互間に上記蓋開閉駆動部53が位置付けられている。又、背部レスト61にはガイドレール62Dに対応してレール収容凹部61Aが形成され、当該背部レスト61の倒伏時においてレール収容凹部61Aにガイドレール62Dが嵌まり込んで収容されるようになっている。ここに、背部レスト61が起立したとき、スライド蓋10は蓋開閉駆動部53の伸縮駆動により図14に示される初期位置(排便口62Aを閉鎖する位置)とガイドレール62D側の退避位置(排便口62Aを開放する位置)との間での往復移動が可能とされる。
【0045】
尚、スライド蓋10に蓋開閉駆動部53を連結するための上記連結金具54は、図14の点線位置で屈曲可能とされ、且つ蓋開閉駆動部53を構成する流体圧シリンダのロッド先端に対して連結金具54が上下方向に遊びを有して連結されており、これにより図10のような座部レスト62の傾き運動が許容されている。一方、座部レスト62には下腿部レスト63側に張り出す凸部62Eが形成され、下腿部レスト63には凸部62Eに対応して該凸部62Eを受け入れる凹部63Aが形成されている。尚、この凹部63Aは、図11(b)のように背部レスト61の起立時に便器Tの先端部を受け入れる。
【0046】
又、図15から明らかなように、便座部11は凸部62Eに向けて伸びる腕部11Cを有し、該腕部11Cの先端が凸部62Eの内側で座部レスト62にピンP6にて接合されている。従って、便座部11は便座昇降駆動部52から押圧力を受けたとき、ピンP6を支点に上方旋回してピンP6とは逆側が上がった傾斜姿勢でその表面高さがスライド蓋10よりも高くなる位置まで浮上する。尚、図15には、便座部11を押し上げるときの転動ローラ52Aの位置が示される。
【0047】
図16は、スライド蓋10が排便口62Aを閉鎖する初期位置にあって、便座部11が押し上げられる前の状態であり、この状態では便座部11とスライド蓋10の表面高さは同一となっている。ここに、便座昇降駆動部52を伸長して便座部11を押し上げた後、蓋開閉駆動部53を縮小することによりスライド蓋10の退避位置への移動が行われる。尚、本例において、座部レスト62は上記背部レスト61の起伏時に前後(図16の左右方向)に移動するため、背部レスト61の起伏途中には蓋開閉駆動部53の伸縮が行われてスライド蓋10に移動力が作用しないようになっている。
【0048】
図17は、便座部11が押し上げられた後でスライド蓋10が退避位置に移動されて排便口62Aが開放された状態を示す。この図で明らかなように、便座昇降駆動部52により便座部11が押し上げられると、当該便座部11で支持されている使用者の臀部も押し上げられるのであり、このためスライド蓋10に対し臀部の圧力が作用しなくなることからスライド蓋10の移動を円滑に行うことができる。尚、スライド蓋10を退避位置まで移動されると、便座昇降駆動部52が縮小されることにより、便座部11の降下が行われて排便可能な状態となり、排便後には図示せぬ手元スイッチの操作により便座部11が再度押し上げられ、次いでスライド蓋10が初期位置に戻された後、便座部11の降下が行われる。
【0049】
以上、本発明の構成例を説明したが、本発明は椅子形になるベッドにして上記のようなスライド蓋10や便座部11を有する構成であればよく、ベッド自体を椅子形にする機構は上記例に限らない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係るベッドの基本的構成例を示す側面図(ベッド形の状態)
【図2】架台を構成するベースフレームの側面図
【図3】図2のA−A拡大断面図
【図4】架台を構成する可動フレームの側面図
【図5】図4のB−B拡大断面図
【図6】背部レストの正面図
【図7】背部レストの側面図
【図8】可動フレームの部分拡大図
【図9】足部レストと可動フレームの連結部分を示す拡大図
【図10】本発明に係るベッドの動作説明図
【図11】同ベッドを椅子形に屈曲させる駆動機構を省略した側面図
【図12】図11(b)のC−C線位置における座部レストの断面図
【図13】スライド蓋と便座部を含むマットレスの形態を示す平面図
【図14】床板フレームの展開図
【図15】座部レストの平面拡大図
【図16】スライド蓋が初期位置にある状態を示す説明図
【図17】便座部を押し上げてスライド蓋を退避位置に移動させた状態を示す説明図
【符号の説明】
【0051】
10 スライド蓋
11 便座部
52 便座昇降駆動部
53 蓋開閉駆動部
61 背部レスト
61A レール収容凹部
62 座部レスト
62A 排便口
62D ガイドレール
63 下腿部レスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の臀部及び大腿部を支持する座部レストと、使用者の上半身を支持するべく前記座部レストの一端部に連結して起伏可能とされる背部レストと、使用者の下腿部を支持するべく前記座部レストの他端部に連結して下方に屈曲可能とされる下腿部レストと、を有するベッドにおいて、
前記座部レストには、使用者の臀部に対応する排便口と該排便口を開閉するスライド蓋が設けられ、
前記スライド蓋は、前記背部レストの起立時に前記座部レストの表面に平行する面に沿って前記排便口を閉鎖する初期位置と前記排便口を開放する退避位置との間を移動可能とされると共に、
前記スライド蓋には、該スライド蓋を前記初期位置と前記退避位置との間で往復移動せしめる蓋開閉駆動部が連結されていることを特徴とするベッド。
【請求項2】
前記座部レストに前記スライド蓋の移動案内をするガイドレールが固設され、前記背部レストには、該背部レストの倒伏時に前記ガイドレールを収容するレール収容凹部が形成されていることを特徴とする請求項1記載のベッド。
【請求項3】
前記排便口の両側に、表面高さが前記スライド蓋よりも高くなる位置まで浮上可能な便座部が設けられ、前記座部レストの下方には、前記スライド蓋を移動させる前に前記便座部を介して使用者の臀部を押し上げる便座昇降駆動部が設けられていることを特徴とする請求項1、又は2記載のベッド。
【請求項4】
前記背部レストの起立時において前記排便口が対向する位置に便器が設置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のベッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−125279(P2009−125279A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−303034(P2007−303034)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(506322732)Road Wide株式会社 (7)
【Fターム(参考)】