説明

ベニカミキリフラスを有効成分とする歯周病原菌殺菌薬

【課題】(a)歯周病の原因となる嫌気性グラム陰性桿菌に対しては強い殺菌力を有している一方、(b)口腔内には生息する別の正常歯垢細菌であるレンサ球菌群に対しては殺菌力が弱い歯周病原菌殺菌薬、この歯周病原菌殺菌薬を含む口腔衛生剤及びこの歯周病原菌殺菌薬を含む食品の提供。
【解決手段】(1)ベニカミキリフラス成分を含む歯周病原菌殺菌薬。
(2)前記(1)記載の歯周病原菌殺菌薬を含有することを特徴とする口腔衛生剤及び(3)前記(1)記載の歯周病原菌殺菌薬を含有することを特徴とする食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯周病原菌殺菌薬に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯周病は、40才以上の国民の約80%が罹患する、いわば国民病である。
近年、アメリカで行われた大規模な疫学調査から、重症の歯周病患者は、動脈硬化、肺炎の発症率が高いばかりでなく、歯周病が糖尿病や早産にも深く関係することが判明した。歯周病が全身疾患の原因及び誘因となり、さまざまな慢性疾患を引き起こす可能性が強く指摘されている。高齢者の増加と共に、歯周病患者はますます増加傾向にあり、対策が急務である。
口腔内には、約700種、60億の細菌が常在するが、歯周病は、歯肉溝内に生息する嫌気性グラム陰性桿菌により発症することが知られている。歯周病は単独の細菌で発症する感染症ではなく、一群の弱毒菌により長期間の潜伏の後に発症する。歯周病原細菌は、多くの細胞に毒性を示す内毒素、直接免疫担当細胞を破壊する白血球毒素、及び、歯肉組織を破壊するタンパク分解酵素、コラーゲン分解酵素など多くの病原因子を産生する。
従って、個々の病原因子の排除による予防は困難であり、病原菌の増加を防止する必要がある。
しかし、これらの原因菌は、常在菌の一種と考えられ、口腔内の正常細菌がつくる正常歯垢(プラーク)、つまり、バイオフィルムに付着し、歯周病原細菌優勢で強固な病原性バイオフィルムを形成する。
このバイオフィルムの除去は極めて困難で、専門的歯面清掃、つまりスケーリング、によるプラークコントロールが最善の方法であるが、定期的な通院が必要となる。従って、高齢者や時間的に拘束される勤労者には困難であることが多く、簡便に、歯周病原菌の増殖を抑制する薬剤などの開発が急務である。
【0003】
現在、う蝕と歯周病の口腔感染症予防目的で行われているプラークコントロールは、スケーリングが最も有効な方法とされるが、このスケーリングは専門的な技術が必要とされる。従って、日常的な口腔感染症予防は、歯磨剤を用いたブラッシングが中心となる。
【0004】
歯磨剤と共に口腔感染症予防薬として殺菌剤を使用できる。また、洗口液に殺菌剤を添加したものを使用できる。この殺菌剤を用いる場合には、以下の問題点が指摘され、使用は限定的なものになっている。
薬剤である殺菌剤としては、グルクロン酸クロロヘキシジンがある。歯面に吸着し、長期使用により歯の着色や歯石沈着を起こす欠点が指摘されており、良好な薬剤と言うことができない。
ポピドンヨード剤は、殺菌効果は強いものの、強い粘膜刺激作用がある。また、一部では酵素製剤を含む歯磨剤が使用されているが、強い効果は望めない。
その他に、抗生剤を使用することがあるが、長期使用により耐性菌が出現するため、菌交代症による日和見感染発症の原因となり、短期的な治療目的以外の使用は困難であり、避けることが必要である。
【0005】
以上のことを前提として、殺菌効果の強い天然物の開発が必要とされる。
口腔には、正常歯垢細菌として多数を占めるレンサ球菌群と、通常菌数は少ないものの、増加と共に病原性を発揮する細菌群とが常在している。
前者には歯面や粘膜面に付着し、外来性細菌の定着を阻害する有益な、
Streptococcus mitisなどのグラム陽性レンサ球菌群が含まれる。
後者には、歯周病原細菌のPorhyromonas gingivaris(FDC381)、 Porhyromonas gingivaris(ATCC53978)、Prevotella intermedia(ATCC25611) などの嫌気性グラム陰性菌が含まれる。
従って、抗菌剤開発には、前記の全ての細菌に対して作用する抗菌剤は有効であるということはできず、前者の有益な常在細菌群には極力影響が少なく、後者の歯周病原細菌に強い抗菌作用を発揮する特性を有する薬剤の開発が必要となる。
【0006】
従来、行われた抗歯周病の医薬には以下の例が知られている。
特許文献1は、「ω−アルケニルイソチオシアナート、ω−アルキルチオアルキルイソチオシアナート、ω−フェニルアルキルイソチオシアナートを含む(わさび成分)抗歯周病剤」である。
歯周病原菌殺菌薬が対象とする菌は、Porhyromonas gingivaris、Actinobacillus atinomycetemcomitans、Fusobacterium nucleatum、及びPrevotella nigrescens等の歯周病原因菌であることを述べている。この発明は、口腔レンサ球菌に対する作用についても同等に作用するものであると考えられる。薬剤の作用の点では、歯周病原因菌と口腔レンサ球菌に同等に作用してしまう結果となる。
同様に、「ポリフェノール及び特定のリグナン類からなる歯周病予防又は治療用組成物」である発明(特許文献2)について同じことが指摘できる。また、ポリフェノールそのものが、抗う蝕及び抗歯周病組成物として用いられてきた(特許文献3、特許文献4、特許文献5)。
「松樹皮、ローズバッツ、ライチ種子から選ばれる少なくとも1種の植物の抽出物を、病原菌や免疫細胞が放出するプロテアーゼを阻害することができるプロテアーゼ阻害剤として含有する口腔用組成物」(特許文献6)、「ラクトフェリンとウシ初乳及びウシ初乳の免疫グロブリン濃縮物を用いる新規齲歯と歯周病治療用医薬組成物」(特許文献7)、「システインプロテアーゼが関与する疾患が、骨粗鬆症、歯周病、又は細菌・ウイルス感染症などのいずれかであるシステインプロテアーゼ阻害剤」(特許文献8)、「炭素数11〜16のδ−ラクトンから選ばれる少なくとも1種のラクトン類を有効成分とする歯周病原菌の付着抑制剤。」(特許文献9)、「ジヒドロファルネソール、イソカンフィルシクロヘキサノールなどから選ばれた口腔用組成物に添加するための抗菌香料。」(特許文献10)、「特定構造の大環状ラクトンを含有する抗菌性口腔用組成物及び虫歯菌と歯周病菌に対して増殖抑制能を有する前記抗菌性口腔用組成物」(特許文献11)など知られている。
いずれも歯周病原菌殺菌薬として選択的に作用することを述べるものではない。
【0007】
竹成分を用いる特許には、特許文献12がある。
これは、「油性基剤(A)及び竹酢液(B)、そして必要に応じて水(C)及び乳化剤(D)を含有する油中水型エマルジョン組成物であることを特徴とする竹酢液のクリーム状組成物」である。技術的な内容として、本発明と相違する。
特許文献13は、孟宗竹抽出物などとε−ポリリジンを組み合わせて用いるものである。又、対象とする菌は、「う蝕の原因は、主としてストレプトコッカス・ミュタンス(Streptococcus mutans)の増殖が、また歯周病の原因は、主としてポルフィロモナス・ジンジバリス(Porhyromonas gingivaris)やアクチノバシラス・アクチノミセテムコミタンス(Actinobacillus atinomycetemcomitans)」とするものである。
【0008】
以上の従来技術をみても明らかなように、口腔に用いられる医薬は従来口腔レンサ球菌と歯周病原細菌の両方を対象とするものであり、口腔レンサ球菌に対する殺菌作用が弱く、歯周病原細菌に対して十分に殺菌作用するといった両方の菌に対して相違する作用の医薬の開発が望まれていた。
【特許文献1】特開2006−131542号公報
【特許文献2】特開2005−162654号公報
【特許文献3】特開平1−90124号公報
【特許文献4】特開平7−285876号公報
【特許文献5】特開平1−90124号公報
【特許文献6】特開2005−179206号公報
【特許文献7】特開2003−137809号公報
【特許文献8】特開2005−139084号公報
【特許文献9】特開2003−300850号公報
【特許文献10】特開2002−265978号公報
【特許文献11】特開2001−163744号公報
【特許文献12】特開2005−200393号公報
【特許文献13】特開2004−123630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、(a)歯周病の原因となる嫌気性グラム陰性桿菌に対しては強い殺菌力を有している一方、(b)口腔内には生息する別の正常歯垢細菌であるレンサ球菌群に対しては殺菌力が弱い歯周病原菌殺菌薬、この歯周病原菌殺菌薬を含む口腔衛生剤及びこの歯周病原菌殺菌薬を含む食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは前記課題について鋭意研究し、以下のことを見出して、本発明を完成させた。本発明者らが薬剤として有効であることを見出したベニカミキリフラス抽出物について、歯周病原菌殺菌薬として歯周病原細菌に用いた場合は、12〜15%の発育阻害効果が認められ、さらに、0.06%においても10%の発育阻害効果があった。
多くの口腔細菌に付着し、歯垢蓄積に重要な役割を果たすActinomyces菌属に対しても、殺菌効果が認められ、0.125%添加で約40%の発育阻害が認められた。一方、口腔の健康維持に必要な有益口腔レンサ球菌Streptococcus gordonii、Streptococcus sanguinis、Streptococcus oralis、Streptococcus mitisに対する発育阻害効果は、発育培地への0.125%を添加した場合には全く発育阻害効果が認められなかった。
【0011】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)ベニカミキリフラス成分を含む歯周病原菌殺菌薬。
(2)前記(1)記載の歯周病原菌殺菌薬を含有することを特徴とする口腔衛生剤。
(3)前記(1)記載の歯周病原菌殺菌薬を含有することを特徴とする食品。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ベニカミキリフラス成分を含む歯周病原菌殺菌薬、歯周病原菌殺菌薬を含有する口腔衛生剤、及び歯周病原菌殺菌薬を含有す食品が得られる。
ベニカミキリフラス成分を1重量%程度含有する場合には、グラム陽性レンサ球菌群及び歯周病原細菌に対して作用し、これらの全被検菌の発育はほぼ発育阻害活性を有している。0.25%程度とすることにより歯周病原細菌に対して作用し30から60%と顕著な発育阻害活性があり、0.1%程度とすることにより10から15%程度の阻害活性がある。グラム陽性レンサ球菌群に対しては0.25%程度で阻害活性は0から40%であり、0.1%程度でほとんど影響を与えない。以上のことから、本発明の医薬、それを含む口腔衛生剤及び食品は、歯周病原菌殺菌薬及び予防剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
ベニカミキリフラス及びベニカミキリフラス成分を用いる医薬については本発明者らにより既に発明されている(特開2003−277276号)。本発明では、歯周病原菌殺菌薬、歯周病原菌殺菌薬を含有する口腔衛生剤、及び歯周病原菌殺菌薬を含有する食品として有用であることを見出したものである。
【0014】
本発明の対象であるベニカミキリフラス及びベニカミキリフラス成分を取得するために用いられる原料の竹としては、モウソウチク属、シホウチク属、マダケ属、シュドササ属、ササモルフア属、ナリヒラタケ属、トウチク属などの竹類が用いられる。なかでも、マダケ属の孟宗竹及びハチクが好適に用いられる。
これらの竹が切り取られ、放置されると、ベニカミキリ(PurpuricenustemminckiiGuerin-Meneville1844)が卵をうみつけ、その幼虫が竹類を食べて成長する。その成長過程で、排泄物を竹の中に残す。これをベニカミキリフラスと呼ぶ。このベニカミキリフラスを集めて、ベニカミキリフラス及びベニカミキリフラス成分を本発明の歯周病原菌殺菌薬などの対象物質とする。
なお、ベニカミキリは、主に我が国では、本州(ヤブツバキ帯−ブナ帯下部)、佐渡、四国、九州、壱岐、対馬などに分布し、春から夏にかけて出現する。
【0015】
竹から得られるベニカミキリフラスは、しっとりとした粒状の薄黄色を帯びた組成物として得られる。このベニカミキリフラスは、水分を含有するので、これを乾燥させることにより水分を取り除いて粉状体とすることができる。乾燥させるには、30〜80℃の条件下に行う。80℃を越える高温で処理すると、分解などを伴うので、好ましくない。この粉状のものを、ガーゼなどを用いて患部に直接接触させることにより、薬剤として使用することができる。また、このベニカミキリフラスは、格別水分などを取り除くことなく、そのまま歯周病原菌殺菌薬として使用することもできる。また、このベニカミキリフラスから水又は有機溶媒により抽出されたベニカミキリフラス成分を歯周病原菌殺菌薬として用いることができる。
【0016】
ベニカミキリフラスより水抽出物を取り出す場合には、過剰量の水(熱水)と容器内で接触させる。水には熱湯を用いることが効果的である。通常、0.001〜0.007重量%程度の濃度になるように水量を調節する。抽出には、環流条件下に加熱する。加熱時間は、適宜設定する。加熱処理は、通常少なくとも15分以上、1時間程度は必要である。その結果、ベニカミキリフラスの抽出成分は熱水層に移行させることができる。この熱水処理は2回以上、通常3回程度まで繰り返すことが有効である。この一回目の操作により、一般には、ベニカミキリフラス重量に対して0.3〜1.0%程度、通常0.7重量%程度の割合で液状物が得られる。このようにして得られる液状物を環流条件下に濃縮する。最終的に、ベニカミキリフラスの抽出物は、茶褐色の粉末状のものとして得られる。収量は、ベニカミキリフラスの重量に対して1.0〜2.0重量%程度のものが得られる。温水の利用も可能である。圧力をかけた条件下にも行うことができる。このようにして得られる粉末状の水抽出物を、使用に際しては、適宜水に溶かして薬剤として利用する。後の実施例に示すようにベニカミキリフラス10gを用いて水抽出を行った結果、176.2mgのフラス抽出物を得ている。
【0017】
ベニカミキリフラスを有機溶媒に接触させて処理することにより有機溶媒による抽出物としたものを薬剤として利用することができる。有機溶媒としては、エタノール、メタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコール又はその誘導体、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸イソプロピルなどのエステル類、エチルエーテル、イソプロピルエーテルなどのエーテル類を挙げることができる。また、石油エーテル、n−へキサン、n−ペンタンなどの脂肪族炭化水素なども用いることができる。これらの中では、エタノール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコールなどが用いられる。これらには、水を含めて混合溶媒として用いることもできる。いずれも溶媒抽出した後、更に他の溶剤に接触させて、さらに特定の成分を取り出すことができるが、そのような操作を施すことなく、エタノール或いは1,3−ブチレングリコール溶媒のものを適当な濃度のものとして、患部に直接、塗りつけることによって、用いることができる。
【0018】
ベニカミキリフラスの有機溶媒抽出に当たっては、へキサンなどで抽出を行って、へキサン抽出物と残さに分け、この残さをメタノール抽出し、メタノール抽出物と残さに分け、メタノール抽出物を酢酸エチル溶解成分とブタノール溶解成分に分けることができ、残さを水抽出を行うなどして、各種溶解成分を取り出すこともできる。
【0019】
ベニカミキリフラスを、口腔衛生剤として用いる場合には、水抽出物又は有機溶剤抽出物として0.1〜1.10重量%程度の濃度のものを用いることが一般的である。
ベニカミキリフラス成分を含む歯周病原菌殺菌薬は、(a)歯周病の原因となる嫌気性グラム陰性桿菌に対しては強い殺菌力を有している一方、(b)口腔内には生息する別の正常歯垢細菌であるレンサ球菌群に対しては殺菌力が弱い医薬であるから、歯周病治療薬及び歯周病予防薬となる歯周病原菌殺菌薬、この歯周病原菌殺菌薬を含有する口腔衛生剤及び歯周病原菌殺菌薬を含有する食品として使用することができる。歯周病の原因となる嫌気性グラム陰性桿菌に対しては強い殺菌力を有している一方、(b)口腔内には生息する別の正常歯垢細菌であるレンサ球菌群に対しては殺菌力が弱い薬剤として用いる場合には0.5%以下の濃度とすることが有効であり、好ましくは0.25%以下の濃度とすること、更に好ましくは0.1%濃度とすることが必要である。
【0020】
本発明の歯周病原菌殺菌薬は、飲食物又は口腔衛生剤に添加して適用することができる。
添加する口腔衛生剤の剤型は液剤、固形剤、半固形剤のいずれであっても良く、歯磨き剤、トローチ剤、液状又は粉末状うがい薬、塗布液、チューインガムなどに適用可能である。
また、本発明の歯周病原菌殺菌薬を配合する飲食物としてはジュースなどの清涼飲料、キャンディ、チューインガムなどの菓子類が適当である。
本発明の歯周病原菌殺菌薬は、上記最終製品に対し、好ましくは0.001〜1質量%の濃度で、特に好ましくは0.002〜0.06質量%程度の濃度になるように添加して使用される。添加量が下限質量未満では歯周病抑制効果が発揮されず、添加量が上限質量を超えると、歯周病原菌殺菌薬として飲食物や口腔衛生剤等に配合するには適さないこともある。
【0021】
歯磨剤組成物は以下の通りである。
(A)ベニカミキリフラス成分 0.01〜0.5%
(B)キサンタンガム0.4〜2.0質量%、
(C)ノニオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤0.5〜10.0質量%、
(D)水10〜40質量%
【0022】
歯磨き組成物の組成は以下の通りである。
品名 質量部
リン酸水素カルシウム 20
無水ケイ酸 8
ソルビット液 43
グリセリン 19
増粘剤 0.6
香料 0.8
水 8.595
ベニカミキリフラス成分 0.005
計 100
【0023】
チューインガム
品名 質量部
ガムベース 22
砂糖 49.5
グルコース 10
水あめ 17.995
香料 0.5
ベニカミキリフラス成分 0.005
計 100
【0024】
口中洗浄剤
品名 質量部
エタノール 10
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 1
サッカリンナトリウム 0.2
安息香酸ナトリウム 0.1
グリセリン 6
香料 0.2
クエン酸ナトリウム 適量(pH調整済み)
ベニカミキリフラス成分 0.005
水 残部
計 100
【0025】
以下に、本発明の内容を実施例により説明する。本発明のベニカミキリフラスの抽出液の製造方法として、有機溶媒による抽出液の製造方法及び水による抽出液の製造方法について示す。本発明のベニカミキリフラスの薬剤として用いた効果については、歯周病原細菌のPorhyromonas gingivaris(FDC381), Porhyromonas gingivaris(ATCC53978)、Prevotella intermedia(ATCC25611) を対象に、使用濃度に応じた発育阻害率及び濁りの度合いを測定した結果、 口腔レンサ球菌のStreptococcus gordonii(ATCC10558)、Streptococcus sanguinis(ATCC10556)、Streptococcus oralis(ATCC10557)、Streptococcus mitis(ATCC903)を対象に、使用濃度に応じた発育阻害率及び濁りの度合いを測定した結果より定めた。
ベニカミキリフラス成分の各種皮膚疾患に対しての毒性試験として、線維芽細胞を用いる「24穴マルチウェル・スクリーニング法」により行い、その結果から、その毒性の有無を確認することができる。
以下に、その内容及び実験結果について詳細に説明する。
【実施例1】
【0026】
(ベニカミキリフラスの有機溶媒による抽出液の製造)
竹から得られたベニカミキリフラス591gを、へキサンで抽出を行って、へキサン抽出物332mgと残さに分け、この残さをメタノール抽出し、メタノール抽出物14.6gと残さに分け、メタノール抽出物が酢酸エチルに溶解した区分3.685gと水により溶解した区分に分けることができ、水により溶解した区分について、n−ブタノール溶剤で処理し、ブタノール溶解区分1.931gと水区分に分けることができ、メタノール抽出残さを水(熱水)抽出を行って、水抽出物12.132gを得た。
【実施例2】
【0027】
(ベニカミキリフラスの有機溶媒による抽出液の製造)
竹から得られたベニカミキリフラス1037gを、へキサンで抽出を行って、へキサン抽出物509.9mgと残さに分け、この残さを、メタノール抽出し、メタノール抽出物と残さに分け、メタノール抽出物を酢酸エチル溶解区分5.41g及び水溶解区分にわけることができ、水により溶解した区分について、n−ブタノール溶剤で処理し、ブタノール溶解区分2.53gと水区分3.65gに分けることができ、メタノール抽出残さを、水(熱水)抽出を行って、水抽出物27.132gを得た。
【実施例3】
【0028】
(24穴マルチウェル・スクリーニング法(毒性試験))
24穴マルチウェル・スクリーニング法(高岡聡子著「組織培養入門」学会出版センタ−発行68頁記載)により、本発明のベニカリキリフラスの薬剤の毒性試験を行った。
(この方法は、ABCD各ライン(行)及び1から6列のウェル(合計24穴)を用意し、Aラインについて薬剤原液0.1mlを含む(A1)、及び濃度が倍々に希釈され、濃度が相違する((A2〜A5)、薬剤を含まない(A6))を用意する。次に、細胞の浮遊液を調製する。細胞数は、5×10/ml程度である。各ウェルに細胞浮遊液を0.9mlずつ分注する。これを水平にしたまま、左右に軽く揺すって、炭酸ガスふらん器で培養した。3〜7日培養し、培地をすて、メタノールを静かに注入し、10分以上固定。流水で洗った後、ギムザ染色を行い、染色異常が見られるかどうかで毒性を判定するものである。)
毒性試験の内容は、以下の通りであった。
(1)薬剤抽出液の作成
ベニカミキリフラス水抽出物(ベニカミキリフラス3.9gに、20ccの純水を添加して撹拌し、室温から100℃直前(沸騰直前)まで加熱し、この温度において煮出した状態として、1時間保ち、室温まで冷却し、遠心分離器により(1200rpm.10分間)、遠心分離を行った。上澄の清浄液を濾過滅菌し、薬剤原液を作成した。
(2)毒性試験として、前記24穴マルチウェル・スクリーニング法を行った。
(3)使用細胞は、以下の細胞を使用した。NHDF−NEO CRYOPRESERVED(ヒト皮膚線芽細胞 新生児)である。BIO WHITTAKER(ACAMBREX COMPANY製製造年月日:1999年5月10日 Lot番号:9F0889 保証書添付のもの)
(4)培養培地は、以下の培地を使用した。
FBM(改変 MCDB202血清添加)
(5)添加条件は以下の通りであった。原液のマルチウェルへの添加は、1ウェルあたり、0.1mlであった。希釈は、PBS(リン酸緩衝塩類溶液)により、最終濃度を、0%、12.5%、25%、50%の4段階とした。
(6)培養条件培地FBMに浮遊した細胞液0.9mlを、各24ウェルに添加した。36℃で4日間、加温した。
(7)鑑定法
(イ)ウェル内の培地を捨て(細胞は、ウェルに接地)、直ちに、メタノールで固定後、ギムザ染色を行った。顕微鏡により観察し、写真記録を行った(図3)。
(ロ)25cmのプラスチック培養瓶で原液50%を添加し、8日間観察した。また、培養後、ギムザ染色を行った。
(8)鑑定法(イ)の結果
以上の操作により得られた、24穴マルチウェル・スクリーニング法による対照結果によれば、対照結果(0%)と前記最終濃度0%、12.5%、25%、50%の結果と比較して、最終濃度0%、12.5%、25%、50%のいずれも、増殖及び形態に変化はなく、毒性がないことがわかった。
(9)鑑定結果(ロ)の結果
25cmのプラスチック培養瓶で原液50%を添加し、8日間観察した結果では、増殖及び形態共に影響は見られなかった。培養後、ギムザ染色を行った結果によれば、異常はなかった。
(10)結論 ベニカミキリフラスの水抽出液は、ヒト由来線維芽細胞に影響を与えず、薬剤として使用した場合に安全であると言うことができる。
【実施例4】
【0029】
予め凍結保存してある歯周病原因菌Porhyromonas gingivaris(FDC381)、
Porhyromonas gingivaris(ATCC53978)、Prevotella intermedia(ATCC25611) を対象に、使用濃度に応じた発育阻害率及び濁りの度合いを測定した結果、同じく口腔レンサ球菌のStreptococcus gordonii(ATCC10558)、Streptococcus sanguinis(ATCC10556)、Streptococcus oralis(ATCC10557)、Streptococcus mitis(ATCC903)を対象に、使用濃度に応じた発育阻害率及び濁りの度合いを測定した結果を算出した。
結果を表1に纏めた。表1の左側数値は濁り度合を示す。( )内は阻害率を示している。
又その結果を図1及び図2に示した。
【0030】
【表1】

【0031】
ベニカミキリフラス水抽出成分を0.75重量%程度含有する場合には、グラム陽性レンサ球菌群及び歯周病原細菌に対して作用し、これらの全被検菌の発育はほぼ発育阻害活性を有している。0.25%程度とすることにより歯周病原細菌に対して作用し30から60%と顕著な発育阻害活性があり、0.1%程度とすることにより10から15%程度の阻害活性がある。グラム陽性レンサ球菌群に対しては0.25%程度で阻害活性は0から40%であり、0.1%程度でほとんど影響を与えないことを示している。以上のことから、本発明の薬剤は、歯周病原菌殺菌薬及び予防剤として有用であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】歯周病菌発育阻害作用を示す図である。
【図2】歯垢形成菌発育阻害作用を示す図である。
【図3】24穴マルチウェル・スクリーニング法による対照結果を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベニカミキリフラス成分を含む歯周病原菌殺菌薬。
【請求項2】
請求項1記載の歯周病原菌殺菌薬を含有することを特徴とする口腔衛生剤。
【請求項3】
請求項1記載の歯周病原菌殺菌薬を含有することを特徴とする食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−274957(P2009−274957A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−230365(P2006−230365)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【Fターム(参考)】