説明

ベルトユニット及びこれを搭載した画像形成装置

【課題】蛇行補正を行いつつ、ベルトの損傷を防止できるベルトユニット及びこれを搭載した画像形成装置を提供する。
【解決手段】その裏面が複数のローラに係合して張架された無端状ベルト(14)と、複数のローラのうち少なくとも1本のローラ長が裏面のベルト幅よりも短く形成された短型ローラ(16)と、複数のローラのうち少なくとも1本のローラ軸(92)を傾くように軸変させる蛇行力発生機構(40)と、ベルト幅方向の端部を検知する検知手段(35)と、検知されたベルト幅方向の端部に基づいて蛇行補正のターゲットベルト位置を求め、蛇行力発生機構に対し無端状ベルトを蛇行補正のターゲットベルト位置で走行させることにより、無端状ベルトの幅方向の位置ずれを補正させる制御手段(92)とを具備し、この制御手段は、短型ローラのエッジ部分と裏面との接触位置を変えるべく、蛇行補正のターゲットベルト位置を無端状ベルトの走行時間に応じて変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シームレスのベルトを用いて画像を形成するベルトユニット及びこれを搭載した画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置では電子写真方式が用いられており、帯電器が感光体ドラムを予め帯電し、露光器が感光体ドラムの表面に光を照射すると、この感光体ドラムの表面には静電潜像が形成される。また、現像器はトナーを担持しており、現像バイアス電圧を印加すると、予め電荷を帯びたトナーは静電潜像に付着し、トナー像が形成される。
【0003】
そして、記録材は、転写ニップ上流側に配置されたローラ対によって転写ニップまで搬送され、可視化されたトナー像がシームレスのベルトを介して記録材に転写される。
ここで、当該ベルトの蛇行は画像品質に影響を与えるため、蛇行を補正する技術が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
詳しくは、文献1では、ベルトの裏面にガイドリブを接着して蛇行を補正しており、また、文献2では、ベルトを張架するローラのうち最低一本のローラ軸を傾けるように軸変させており、ベルトの蛇行力を打ち消すような逆方向の蛇行力を発生させてベルトの蛇行を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−251131号公報
【特許文献2】特開2007−65692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記文献2の技術によれば、上記文献1のガイドリブの端部に強い応力が生じても、その接着強度不足による剥がれや、積層のベルトを用いた場合による表面のクラック等も防止できる。
しかしながら、このローラ軸を軸変させて蛇行を補正しても、ベルト幅がローラ長よりも長く形成されていた場合には、ベルトの裏面のうち、ローラのエッジ部分と接触した箇所に傷が入ってしまうという問題がある。
【0007】
なぜならば、上記技術では、一定位置にてベルトが駆動されるように制御、換言すれば、蛇行補正のターゲットベルト位置が常に一定値であり、ベルトのストレスの生ずる箇所が常に同じ場所になるからである。
また、特に上記ベルトが、その裏面にヤング率の大きい樹脂層を用い、中間にヤング率の低い弾性層を用い、さらに表層に薄膜でヤング率の大きい離型層を用いた積層構造である場合には、ベルトの表面にもクラックが入り、離型層の剥がれの起点になる等の新たな問題も生ずる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消し、蛇行補正を行いつつ、ベルトの損傷を防止することができるベルトユニット及びこれを搭載した画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための第1の発明は、その裏面が複数のローラに係合して張架され、所定の周回経路を走行する無端状ベルトと、複数のローラのうち少なくとも1本のローラ長が裏面のベルト幅よりも短く形成された短型ローラと、複数のローラのうち少なくとも1本のローラ軸を傾けるように軸変させる蛇行力発生機構と、ベルト幅方向の端部を検知する検知手段と、検知されたベルト幅方向の端部に基づいて蛇行補正のターゲットベルト位置を求め、蛇行力発生機構に対し無端状ベルトを蛇行補正のターゲットベルト位置で走行させることにより、無端状ベルトの幅方向の位置ずれを補正させる制御手段とを具備し、この制御手段は、短型ローラのエッジ部分と裏面との接触位置を変えるべく、蛇行補正のターゲットベルト位置を無端状ベルトの走行時間に応じて変更する。
【0010】
第1の発明によれば、無端状ベルトは、その裏面が複数のローラに係合して張架され、所定の周回経路を走行する。このベルトの蛇行は画像品質に影響を与える。そのため、蛇行が生じ得る場合には、制御手段が、検知手段によるベルト幅方向の端部に基づいて蛇行補正のターゲットベルト位置を求め、蛇行力発生機構に信号を出力すると、蛇行力発生機構はベルトを蛇行補正のターゲットベルト位置で走行させる。これにより、ローラ軸が傾くように軸変され、ベルトの幅方向の位置ずれを補正できる。
【0011】
ここで、ローラ軸を軸変させて走行中のベルトの蛇行を補正する場合であっても、ベルト幅がローラ長よりも長く形成されているため、蛇行力発生機構を用いてもベルトとローラの相対位置が常に一定のままでは、ベルトの裏面のうち、ローラのエッジ部分と接触した箇所に傷が入ってしまうし、一方、当該エッジ部分から突出したベルトの端部は若干垂れた状態になり、ベルトの表面のうち、このエッジ部分との接触箇所の反対側の箇所には引張り力が発生するので、ベルトの表面の当該箇所にクラックが入ってしまうという懸念がある。
【0012】
しかしながら、本発明の制御手段は、不変の蛇行補正のターゲットベルト位置を用いるのではなく、蛇行補正のターゲットベルト位置を無端状ベルトの走行時間に応じて変更している。よって、ローラのエッジ部分とベルトの裏面との接触位置が変わり続け、応力集中する箇所を常に変化させる。この結果、ベルトの裏面や表面の損傷を防止できる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明の構成において、無端状ベルトは、裏面を形成する樹脂層と、この樹脂層上に設けられた弾性体の中間層と、この中間層上に設けられた離型層とから構成されることを特徴とする。
第2の発明によれば、第1の発明の作用に加えてさらに、樹脂フィルム上に弾性体を積層し、さらにその表層に離型層を積層したベルトを用いると、ヤング率の大きい樹脂層、ヤング率の低い弾性体、そして、ヤング率の大きい離型層を積ねることになり、ベルトの表面にクラックが特に入り易くなって離型層の剥がれの起点になる等の懸念がある。しかし、上述した可変の蛇行補正のターゲットベルト位置を用いれば、蛇行補正によってベルトの表面のクラックも防止できる。
【0014】
第3の発明は、第1の発明の構成において、無端状ベルトは、その表面の潜像をトナーで現像し、トナー像を形成する感光体ベルトであることを特徴とする。
第3の発明によれば、第1の発明の作用に加えてさらに、トナー像を形成する感光体ベルトの場合にも、上述した可変の蛇行補正のターゲットベルト位置を用いれば、蛇行補正によってベルトの裏面や表面の損傷を防止できる。
【0015】
第4の発明は、第1から第3の発明の構成において、静電気力を用いて無端状ベルトを清掃するバイアスクリーニング手段をさらに具備することを特徴とする。
第4の発明によれば、第1から第3の発明の作用に加えてさらに、ローラ長がベルト幅よりも短く形成されており、このローラの周辺にてバイアスクリーニング手段が静電気力を用いて無端状ベルトを清掃しても、ローラ長とベルト幅とが略等しい場合に比して、バイアスクリーニング手段から付与された電流がローラのエッジ部分から逃げ難くなり、ベルトを確実に清掃できる。
【0016】
第5の発明は、第1から第4の発明のベルトユニットを搭載した画像形成装置であることを特徴とする。
第5の発明によれば、第1から第4の発明の作用に加えてさらに、長寿命のベルトによって、安定した画像が長期に亘って得られるため、画像形成装置の信頼性向上に寄与する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ベルトの応力集中する箇所を常に変化させており、蛇行補正を行ってもベルトの損傷を防止できるベルトユニット及びこれを搭載した画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施例のプリンタの概略構成図である。
【図2】コントローラを含めた図1のプリンタの構成図である。
【図3】図1のベルトユニットの斜視図である。
【図4】図3のベルト幅の端部及び従動ローラのエッジの説明図である。
【図5】図2のターゲットベルト位置調整部による蛇行補正のターゲットベルト位置の説明図である。
【図6】蛇行力発生機構の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施例であるタンデム方式のカラープリンタの概略構成図であり、図1の右方向がプリンタ1の正面に対応し、左方向が背面に対応している。
図1に示されるように、その装置本体2の下部には用紙(記録材)のカセット3が配置されており、カセット3には画像形成前の用紙Pが積層状態で収容され、この用紙Pは1枚ずつ分離され、カセット3からプリンタ1の正面に向けて送出される。
【0020】
カセット3から送出された用紙Pは、用紙搬送路4を介してプリンタ1の背面に向けて搬送される。装置本体2の内部には、用紙搬送方向で見て下流側にレジストローラ5、画像形成部6、2次転写部17及び定着部18が順番に配置されており、定着部18から送出された用紙Pは用紙搬送路20を経て排紙トレイ22に排出される。
【0021】
上述した画像形成部6等はコントローラ(メインECU)90に電気的に接続されている(図2)。コントローラ90はコンピュータとして機能する要素であり、CPUやメモリ等のハードウエア資源を有している。入力ポート91は、印刷の元になる画像データが外部から受信可能に構成され、この画像データは、文字や符号、図形、記号、線図、模様等の各種の画像がデータ化されたものである。このデータに基づき、コントローラ90はハードウエア資源を用いて所定のプログラムを実行する。
【0022】
再び図1に戻り、本実施例の画像形成部6は、4つの画像形成ユニット6M,6C,6Y,6Bで構成され、ベルトユニット30を備えている。
これら各画像形成ユニット6M,6C,6Y,6Bは、プリンタ1の背面側から正面側に向けて順に配列され、異なる4色(マゼンタ、シアン、イエロー及びブラック)の画像に対応して設けられており、それぞれ帯電、露光、現像及び転写の各工程を通じてマゼンタ、シアン、イエロー及びブラックの画像を順次形成している。
【0023】
具体的には、各画像形成ユニット6M,6C,6Y,6Bには、各対応色の可視像(トナー像)を担持する感光体ドラム7がそれぞれ設けられている。各感光体ドラム7は装置本体2に対して回転自在に設置され、ドラムモータによって図1の反時計回りに駆動する。
また、各感光体ドラム7の周囲の適宜位置には、それぞれ対応する帯電器8、露光部(LEDプリントヘッドユニット等)9、現像器10、1次転写ローラ12、摺擦ローラ13が設けられている。
【0024】
帯電器8は中間転写ローラ12の反対側に配置されており、対応する各感光体ドラム7の表面を一様に帯電させる。また、露光部9は、感光体ドラム7の回転方向で見て帯電器8の下流側に配置され、対応する感光体ドラム7の表面に向けて光をそれぞれ照射する。
現像器10は、感光体ドラム7の回転方向で見て露光部9の下流側に配置されており、各トナーコンテナ11M,11C,11Y,11Bからマゼンタ、シアン、イエロー及びブラックのトナーがそれぞれ供給され、これら各色のトナーを感光体ドラム7の表面に静電的に付着させる。
【0025】
これにより、各感光体ドラム7の表面には、露光部9による静電潜像に応じたトナー像が現像される。また、上記ベルトユニット30は中間転写ベルト(無端状ベルト)14を有する。
本実施例の中間転写ベルト14は、継ぎ目を有しないシームレスのベルトが用いられており、駆動ローラ15や従動ローラ(短型ローラ)16、各1次転写ローラ12や2次転写部17のローラ等の複数ローラ間に掛け回され、ベルトモータによって図1の時計回りに走行する。
【0026】
中間転写ベルト14は、後述する図4に示される如く、樹脂層50、中間層51、離型層52の順に積層されている。
この樹脂層50は中間転写ベルト14の裏面14bを形成し、駆動ローラ15や従動ローラ16等に当接しており、厚さ約100μm(1μm=1×10−6m)のヤング率Eの大きな樹脂で構成される。
【0027】
この樹脂層50上には、厚さ約300μmのヤング率Eの小さな弾性体の中間層51が設けられ、この中間層51上には、例えばヤング率Eの大きなウレタン或いはウレタンにPTFEを混ぜた厚さ約2μm程度の離型層52が設けられる。当該離型層52が中間転写ベルト14の表面14aを形成し、各感光体ドラム7に対峙する。
【0028】
そして、中間転写ローラ12に、感光体ドラム7の静電潜像に付着するトナーと逆極性の電圧を印加すると、感光体ドラム7上のトナーは感光体ドラム7から離れ、中間転写ベルト14の表面14aに順次転写されて1ページ分のトナー像として合成される。
その後、2次転写部17に、上記静電潜像に付着するトナーと逆極性の電圧を印加すると、中間転写ベルト14上のトナー像はその表面14aから離れ、レジストローラ5から送出された用紙Pに2次転写され、この用紙は定着部18に向けて送出される。
【0029】
なお、図1の摺擦ローラ13は、感光体ドラム7の回転方向で見て帯電器8の上流側に配置される。この摺擦ローラ13は、対応する各感光体ドラム7の表面に接触可能に構成されており、駆動モータによって図1の反時計回りに駆動することにより、感光体ドラム7の表面を研磨している。なお、各感光体ドラム7上に残留したトナーは図示しないクリーニングユニットで除去される。
【0030】
また、図1の参照符号60は、バイアスクリーニングユニット(バイアスクリーニング手段)である。このバイアスクリーニングユニット60は、中間転写ベルト14の走行方向で見て2次転写位置の下流側であって、各感光体ドラム7の1次転写位置の上流側、本実施例では従動ローラ16に対向して配置され(図3)、回転駆動するブラシ状部材61が接触して2次転写が行われた後の表面14aの残トナーを静電気力によって吸着し、この表面14aを清掃している。なお、この図3では、ベルトユニット30の構造を簡略化し、1次転写ローラ12や2次転写部17のローラ等を省略している。
【0031】
バイアスクリーニングユニット60には、静電気力を発生させるためのバイアスが印加されることから、従動ローラ16は、図3,4に示されるように、この従動ローラ16のスラスト方向(ローラ軸42の回転軸線方向)の面長であるローラ長が、中間転写ベルト14の裏面14bのベルト幅(ローラ軸42の回転軸線方向の長さ)よりも短く形成されている。
【0032】
また、本実施例では、図2の蛇行力発生機構40がこの従動ローラ16に蛇行力を付与する。この蛇行力発生機構40には種々の態様があり、その一例を図6に示す。当該蛇行力発生機構40は、従動ローラ16のローラ軸42の一端に設置される揺動アーム43を有している。このローラ軸42の一端とは、図3で見えるプリンタ1の右側面に対峙した端部でも良いし、その反対側であるプリンタ1の左側面に対峙した端部でも良い。
【0033】
揺動アーム43は板状部材で構成され、ローラ軸42を図3の矢印で示す上下方向(ローラ軸42の回転軸線方向に対して略直交方向)に移動させる。この板状の揺動アーム43は、その一端側がローラ軸42を回転自在に支持しており、バイアスクリーニングユニット60の一端も揺動アーム43に固定されている。一方、その他端側が駆動ローラ15に向けて延び、従動ローラ16近傍に配置された立体カム44の外周面に当接可能に構成されている。立体カム44はギヤ44aの一方の側面(図6では裏面)にカム部が一体形成されている。
【0034】
また、これら揺動アーム43の一端側と他端側との中間部分は、ベルトユニット30のフレームに軸支されており、当該揺動アーム43はこの軸支部分回りに揺動する。
上述の立体カム44は前記フレームに配置されたモータ45で回転する。モータ45の出力軸にはウォームギア45aが形成されており、ウォームギア45aはホイールギア46と噛み合っている。ホイールギア46はアイドルギア47と噛み合っており、アイドルギア47と立体カム44のギヤ44aが噛み合っている。また、アイドルギア47はスリット板47aが一体で形成されており、スリット板47aの回転を検知するための光学センサ48が設けられている。スリット板47aの円周方向にはスリット孔47bが等間隔に形成されているが、一箇所だけスリット孔47bの間隔が他と異なっており、モータ45を所定方向に回転した際に、光学センサ48の検知間隔からその位置を検知して、そこを基準位置として立体カム46の回転角度を任意の位置に設定することが可能である。そして、この立体カム46が例えば時計回りに回転すると、上記揺動アーム43の他端側が下降する。これにより、この揺動アーム43の一端側がローラ軸42を上昇させる。
【0035】
これに対し、この立体カム46が例えば反時計回りに回転すると、上記揺動アーム43の他端側が上昇するので、この揺動アーム43の一端側がローラ軸42を下降させる。
蛇行力発生機構40は、コントローラ90の指示信号によってローラ軸42の一端を上下に移動させており、ローラ軸42を捩るように軸変でき、中間転写ベルト14に蛇行力を与えることができる。
【0036】
この中間転写ベルト14の位置はベルト位置検知センサ(検知手段)35で検出される。
本実施例のベルト位置検知センサ35は、図3に示される如く、中間転写ベルト14の片側の端部を、その表面14aと裏面14bとを挟むように配置されている。ベルト位置検知センサ35は、例えば発光部と受光部を有し、この発光部からの測定光が中間転写ベルト14で遮られた箇所と遮られずに受光部で感知される箇所とに基づき、中間転写ベルト14の端部の位置を検知する。
【0037】
このベルト位置検知センサ35の検知結果はコントローラ90に入力されており、図2のターゲットベルト位置調整部(制御手段)92は、従動ローラ16の捩り角度を変更して、中間転写ベルト14が常に中心を維持するように補正可能である。
詳しくは、ターゲットベルト位置調整部92は、蛇行力発生機構40に駆動信号を出力し、中間転写ベルト14を蛇行補正のターゲットベルト位置で走行させる。
【0038】
より具体的には、ベルト位置検知センサ35の検知範囲を考慮し、中間転写ベルト14の端部から従動ローラ16のエッジまでの距離Lは2mm〜4mmの範囲内で変更できる場合を想定する(図4)。
そして、仮に、この距離Lが3mmの場合を蛇行補正のターゲットベルト位置と規定すると、現在の距離Lが2mmであった場合には、ターゲットベルト位置調整部92は、中間転写ベルト14の幅方向の位置ずれ(−1mmの位置ずれ)が生じた旨を判定する。
【0039】
ここで、当該−1mmの中間転写ベルト14の位置ずれを無くしたいときには、ターゲットベルト位置調整部92は、蛇行力発生機構40に対し、規定した蛇行補正のターゲットベルト位置(3mm)になるように、現在の距離Lを1mm分だけ一気に増やす方向に蛇行させる信号を出力する。
一方、仮に、現在の距離Lが4mmであった場合には、ターゲットベルト位置調整部92は中間転写ベルト14の幅方向の位置ずれ(+1mmの位置ずれ)が生じた旨を判定する。
【0040】
当該+1mmの中間転写ベルト14の位置ずれを無くしたいときには、蛇行力発生機構40に対し、規定した蛇行補正のターゲットベルト位置(3mm)になるように、現在の距離Lを1mm分だけ一気に減らす方向に蛇行させる。
これにより、中間転写ベルト14は、その端部から従動ローラ16のエッジまでの距離Lが常に3mmの蛇行補正のターゲットベルト位置にて走行できる。
【0041】
この結果、中間転写ベルト14の幅方向の位置ずれがなくなり、画像品質に影響を与える中間転写ベルト14の蛇行を補正できる。
しかしながら、本実施例では、中間転写ベルト14の蛇行を単に補正するのではなく、中間転写ベルト14のストレスが生ずる箇所を変更するために、この中間転写ベルト14を蛇行させる時期も設けている。
【0042】
具体的には、本実施例のターゲットベルト位置調整部92は、上述した蛇行補正のターゲットベルト位置を中間転写ベルト14の走行時間に応じて変更しており、従動ローラ16のエッジ部分と中間転写ベルト14の裏面14bとの接触位置を変えている。
換言すれば、この可変の蛇行補正のターゲットベルト位置によって、中間転写ベルト14の蛇行を解消させる期間の他、中間転写ベルト14を蛇行させる期間も積極的に設けているのである。
【0043】
より詳しくは、このターゲットベルト位置調整部92は、仮に、現在の距離Lが2mmであった場合には、−1mmの位置ずれが生じた旨を判定し、蛇行力発生機構40に現在の距離Lを増やす方向に蛇行させるが、固定の蛇行補正のターゲットベルト位置(上記3mm)になるように現在の距離Lを一気に増やすのではなく、蛇行補正のターゲットベルト位置を1000枚の印字枚数の経過毎に0.1mmずつ増やしている。
【0044】
つまり、蛇行補正のターゲットベルト位置は0.1mmずつ緩やかに増加することから、図5に示されるように、1000枚経過までの現在の距離Lは2.0mm、2000枚経過までの現在の距離Lは2.1mm、3000枚経過までの現在の距離Lは2.2mm・・・となり、当該蛇行補正のターゲットベルト位置の増加は、上記3mmの位置を超え、現在の距離Lが4mmになるまで、印字枚数で云えば21000枚に到達するまで継続される。
【0045】
次いで、現在の距離Lが4mmに到達した場合には、ターゲットベルト位置調整部92は+1mmの位置ずれが生じた旨を判定し、蛇行力発生機構40に現在の距離Lを減らす方向に蛇行させるものの、固定の蛇行補正のターゲットベルト位置(上記3mm)になるように現在の距離Lを一気に減らすのではなく、蛇行補正のターゲットベルト位置を1000枚の印字枚数の経過毎に0.1mmずつ減らしている。
【0046】
つまり、この場合の蛇行補正のターゲットベルト位置は0.1mmずつ緩やかに減少するので、21000枚経過までの現在の距離Lは4.0mm、22000枚経過までの現在の距離Lは3.9mm、23000枚経過までの現在の距離Lは3.8mm・・・となり、この蛇行補正のターゲットベルト位置の減少は、上記3mmの位置を超え、現在の距離Lが2mmになるまで、換言すれば、印字枚数が41000枚に到達するまで継続される。
【0047】
以後、蛇行補正のターゲットベルト位置の増加・減少を繰り返し、従動ローラ16のエッジ部分と中間転写ベルト14の裏面14bとの接触位置を変更している。
このように、本実施例のターゲットベルト位置調整部92は、現在の距離Lが上記3.0mmの位置に近づくに連れて、蛇行力発生機構40に蛇行解消を促すことになり、中間転写ベルト14の幅方向の位置ずれを解消する。しかし、現在の距離Lが上記3.0mmの位置から離れるに連れて、蛇行力発生機構40に蛇行を促すことになり、中間転写ベルト14の幅方向に位置ずれを発生させるのである。
【0048】
上述のベルトユニット30を搭載したプリンタ1では、カセット3から用紙Pが1枚ずつ分離して送出され、この用紙Pはレジストローラ5に到達する。このレジストローラ5は、用紙Pの斜め送りを矯正しつつ、各感光体ドラム7や中間転写ローラ12等による画像転写動作のタイミングを計りながら、用紙Pを2次転写部17に向けて送出する。
【0049】
また、プリンタ1では露光部9によるレーザ光の照射が制御される。これにより、画像形成部6において各感光体ドラム7上に原稿画像の静電潜像が作られ、続いてこの潜像から各感光体ドラム7上にトナー像が形成される。
続いて、感光体ドラム7の各トナー像は中間転写ベルト12に重ね合わされ(1次転写)、2次転写部17にて用紙Pに2次転写される。用紙Pは未定着トナー像を担持した状態で定着部18に向けて送られ、所望の画像が形成された後、用紙搬送路20を通って排紙トレイ22に排出される。
【0050】
ところで、上述の実施例では中間転写ベルト14について説明したが、本発明の無端状ベルトは、感光体ベルトに適用されていても良い。
詳しくは、この感光体ベルトは、その表面に有機系の感光層を有しており、この感光体ベルトの周囲の適宜位置には、帯電器、露光部、現像器等が設けられている。そして、この感光体ベルトの感光層に合成されたトナー像は、ドラム状の中間転写体を介して用紙に転写される。
【0051】
そして、このトナー像を形成する感光体ベルトの場合にも、上述した可変の蛇行補正のターゲットベルト位置を用いれば、感光体ベルトの裏面や表面の損傷を防止できるのである。
以上のように、本実施例によれば、中間転写ベルト14は、その裏面14bが駆動ローラ15や従動ローラ16等を含む複数のローラの表面に係合して張架され、感光体ドラム7のトナー像を1次転写し、次いで、用紙Pに2次転写させる。この中間転写ベルト14の蛇行は画像品質に影響を与える。
【0052】
そのため、蛇行が生じ得る場合には、ターゲットベルト位置調整部92が、ベルト位置検知センサ35によるベルト幅方向の端部に基づいて蛇行補正のターゲットベルト位置を求め、蛇行力発生機構40に信号を出力すると、蛇行力発生機構40は中間転写ベルト14を蛇行補正のターゲットベルト位置で走行させる。これにより、従動ローラ16のローラ軸42が傾くように軸変され、中間転写ベルト14の幅方向の位置ずれを補正できる。
【0053】
ここで、ローラ軸42を軸変させて走行中の中間転写ベルト14の蛇行を補正する場合であっても、ベルト幅が従動ローラ16のローラ長よりも長く形成されているため、蛇行力発生機構40を用いても中間転写ベルト14と従動ローラ16の相対位置が常に一定のままでは、中間転写ベルト14の裏面14bのうち、従動ローラ16のエッジ部分と接触した箇所に傷が入ってしまうという懸念がある。また、従動ローラ16のエッジ部分から突出した中間転写ベルト14の端部は若干垂れ下がり、その表面14aのうち、従動ローラ16のエッジ部分との接触箇所の反対側の箇所には引張り力が発生するので、表面14aの当該箇所にクラックが入ってしまうという懸念もある。
【0054】
しかしながら、本実施例のターゲットベルト位置調整部92は、不変の蛇行補正のターゲットベルト位置を用いるのではなく、蛇行補正のターゲットベルト位置を中間転写ベルト14の走行時間に応じて変更している。よって、従動ローラ16のエッジ部分と中間転写ベルト14の裏面14bとの接触位置が変わり続け、応力集中する箇所を常に変化させる。この結果、中間転写ベルト14の裏面14bや表面14aの損傷を防止でき、長寿命の中間転写ベルト14を提供できる。
【0055】
また、樹脂フィルムの樹脂層50上に弾性体の中間層51を積層し、さらにその表層に離型層52を積層した中間転写ベルト14を用いると、ヤング率の大きい樹脂層50、ヤング率の低い弾性体の中間層51、そして、薄膜でヤング率の大きい離型層52を積ねることになり、中間転写ベルト14の表面14aにもクラックが特に入り易くなって離型層52の剥がれの起点になる等の懸念がある。中間転写ベルト14の表面14aに対しては中間転写ベルト14の内側から張力が生じ、表面14aにはより大きな引張り力が発生し得るからである。しかし、上述した可変の蛇行補正のターゲットベルト位置を用いれば、蛇行補正によって中間転写ベルト14の表面14aのクラックも防止できる。
【0056】
さらに、従動ローラ16のローラ長がベルト幅よりも短く形成されており、この従動ローラ16の周辺にてバイアスクリーニングユニット60が静電気力を用いて中間転写ベルト14を清掃しても、ローラ長とベルト幅とが略等しい場合に比して、バイアスクリーニングユニット60から付与された電流が従動ローラ16のエッジ部分から逃げ難くなり、中間転写ベルト14を確実に清掃できる。
【0057】
さらにまた、長寿命のベルトによって、安定した画像が長期に亘って得られるため、プリンタ1の信頼性向上に寄与する。
本発明は、上記実施例に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。例えば上記実施例の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせることができる。
【0058】
例えば、上記実施例では従動ローラ16のローラ長を短くしたが、必ずしもこの形態に限定されるものではなく、バイアスクリーニングユニットの設置位置に応じて駆動ローラ15や、テンションローラも備える場合には当該テンションローラなどのローラ長を短くしても良い。また、蛇行力発生機構40も、上記従動ローラ16のローラ軸42を捩るように軸変させる場合の他、駆動ローラ15などのローラ軸を軸変させても良い。
【0059】
さらに、上記実施例では画像形成装置としてプリンタに具現化した例を示しているが、本発明の画像形成装置は複合機、複写機やファクシミリ等にも当然に適用可能である。
そして、これらいずれの場合にも上記と同様に、蛇行補正を行いつつ、ベルトの損傷を防止できるとの効果を奏する。
【符号の説明】
【0060】
1 プリンタ(画像形成装置)
14 中間転写ベルト(無端状ベルト)
16 従動ローラ(短型ローラ)
30 ベルトユニット
35 ベルト位置検知センサ(検知手段)
40 蛇行力発生機構
42 ローラ軸
50 樹脂層
51 中間層
52 離型層
60 バイアスクリーニングユニット(バイアスクリーニング手段)
90 コントローラ
92 ターゲットベルト位置調整部(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その裏面が複数のローラに係合して張架され、所定の周回経路を走行する無端状ベルトと、
前記複数のローラのうち少なくとも1本のローラ長が前記裏面のベルト幅よりも短く形成された短型ローラと、
前記複数のローラのうち少なくとも1本のローラ軸を傾くように軸変させる蛇行力発生機構と、
前記ベルト幅方向の端部を検知する検知手段と、
検知された前記ベルト幅方向の端部に基づいて蛇行補正のターゲットベルト位置を求め、前記蛇行力発生機構に対し前記無端状ベルトを前記蛇行補正のターゲットベルト位置で走行させることにより、前記無端状ベルトの幅方向の位置ずれを補正させる制御手段とを具備し、
この制御手段は、前記短型ローラのエッジ部分と前記裏面との接触位置を変えるべく、前記蛇行補正のターゲットベルト位置を前記無端状ベルトの走行時間に応じて変更することを特徴とするベルトユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のベルトユニットであって、
前記無端状ベルトは、前記裏面を形成する樹脂層と、この樹脂層上に設けられた弾性体の中間層と、この中間層上に設けられた離型層とから構成されることを特徴とするベルトユニット。
【請求項3】
請求項1に記載のベルトユニットであって、
前記無端状ベルトは、その表面の潜像をトナーで現像し、トナー像を形成する感光体ベルトであることを特徴とするベルトユニット。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のベルトユニットであって、
静電気力を用いて前記無端状ベルトを清掃するバイアスクリーニング手段をさらに具備することを特徴とするベルトユニット。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のベルトユニットを搭載したことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−98363(P2012−98363A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243930(P2010−243930)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】