説明

ベルト装置及び画像形成装置

【課題】モノクロモードでの画像形成にも容易に対応可能で、かつコンパクトなベルト装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】対をなす転写部材46および像担持体32をそれぞれに備えた複数の画像形成部48を順次通過する無端状のベルト43と、各画像形成部48を通過したベルト43の外周面をクリーニングするクリーニング部44と、前記ベルト43の外周面を押圧する押し当て部材45とを備え、かつ画像形成部48の転写部材46をベルト43に対する接離方向に移動可能としたベルト装置において、前記押し当て部材45をクリーニング部44と最上流の画像形成部48との間に配置し、一部の画像形成部48の転写部材46をベルト43からの離反方向に移動させた状態で、他の画像形成部48の転写部材46と押し当て部材45とでベルト43を支持したことを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト装置、及びそのベルト装置を用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等の画像形成装置のうち、中間転写方式を採用する装置では、感光体ドラムに形成されたトナー画像を転写ベルトに転写(一次転写)してから、転写ベルト上の画像を記録用紙に転写(二次転写)する。この種の転写ベルトを有するベルト装置においては、転写ベルトに付着した転写残トナーを除去するため、感光体ドラムの上流側にクリーニング部が設けられる。この種のクリーニング部を有するベルト装置の一例が例えば特開2008−9011号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
上記特許文献1においては、最上流の感光体ドラムを、その中心軸が他の感光体ドラムの中心軸よりも転写ベルト側に位置するように配置することで、クリーニング対向ローラへの中間転写ベルトの巻きかけ量を増大させ、クリーニング部におけるクリーニング効果を向上させている(段落0036等)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成においては、対向ローラでベルトを外側に膨らませることで、対向ローラにベルトを巻きかけているため、対向ローラを、最上流の感光体ドラムと駆動ローラとを結ぶベルト張架線より外側にオフセットして配置せざるを得ない。そのため、ベルト装置の厚さ(ベルトの送り側の外周面と戻り側の外周面との間の最大寸法)が大きくなり、厚さ方向での占有スペースが増大する問題がある。特に、クリーニング効果の向上のため、対向ローラに対するベルトの巻きかけ角を増大させる場合には、対向ローラをさらに外側に移動させる必要があり、上記の問題がより一層顕在化する。
【0005】
その一方で、画像形成装置においては、カラーモードからモノクロ(単色)モードに切り替える際に、感光体ドラム表面の摩耗低減や省電力化のため、モノクロモードで使用する感光体ドラム以外の感光体ドラムを転写ベルトから離間させて停止することが望まれる。従って、ベルト装置においては、かかる要請に対応可能な構成をとる必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑み、モノクロモードでの画像形成にも容易に対応可能で、かつコンパクトなベルト装置及び画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、対をなす転写部材および像担持体をそれぞれに備えた複数の画像形成部を順次通過する無端状のベルトと、各画像形成部を通過したベルトの外周面をクリーニングするクリーニング部と、前記ベルトの外周面を押圧する押し当て部材とを備え、かつ画像形成部の転写部材をベルトに対する接離方向に移動可能としたベルト装置において、前記押し当て部材をクリーニング部と最上流の画像形成部との間に配置し、一部の画像形成部の転写部材をベルトからの離反方向に移動させた状態で、他の画像形成部の転写部材と押し当て部材とでベルトを支持したことを特徴とするものである。
【0008】
かかる構成であれば、押し当て部材によりベルトが内向きに押圧されるため、クリーニング部の近傍でベルトが逆屈曲状態となり、この逆屈曲により、クリーニング部におけるベルトの巻きかけを形成することができる。このように内向きの押圧力でベルトの巻きかけを形成することにより、ベルト装置の厚さ方向の寸法増大を抑えることができ、ベルト装置のコンパクト化を図ることができる。
【0009】
また、一部の画像形成部の転写部材をベルトからの離反方向に移動させた状態で、他の画像形成部の転写部材と押し当て部材とでベルトを支持する構造であり、他の画像形成部では転写部材と感光体ドラムとの間に形成された転写ニップが保持される。そのため、モノクロモードにおいて、他の画像形成部でベルトへの画像転写を行うことができる。その一方で、一部の画像形成部の転写部材をベルトからの離反方向に移動させることにより、一部の画像形成部の感光体ドラムとベルトとが非接触となるので、該モードで使用しない一部の画像形成部では感光体ドラムの回転を停止させることができる。そのため、感光体ドラムの摩耗防止や省電力化を図ることができる。
【発明の効果】
【0010】
以上に述べた理由から、本発明によれば、コンパクトでありながらモノクロモードでの画像形成にも容易に対応できるベルト装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るカラー画像形成装置を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るベルト装置の概略構成を示す側面図である。
【図3】図2に示すベルト装置の拡大図である。
【図4】単色画像の形成時におけるベルト装置の概略構成を示す側面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係るベルト装置の概略構成を示す側面図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係るベルト装置の概略構成を示す側面図である。
【図7】トナーの投影像の外周長を説明する模式図である。
【図8】トナーと同じ投影面積の真円の外周長を説明する模式図である。
【図9】ベルト装置の関連技術を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係るカラー画像形成装置の概略構成図である。図1に示すカラー画像形成装置は、画像形成装置本体1、露光部2、作像部3、ベルト装置4、給紙部5、搬送路6、画像二次転写部7、画像定着部8、及び排出部9等より構成されている。
【0014】
露光部2は、画像形成装置本体1の上部に位置しており、レーザ光を発光する光源や各種光学系より構成されている。具体的には、図示しない画像取得手段から得られた画像データに基づいて作成される画像の色分解成分毎のレーザ光を、後述する作像部3の感光体に向けて照射することで、感光体の表面を露光するものである。
【0015】
作像部3は、露光部2の下方に位置しており、画像形成装置本体1に対して着脱可能に構成された複数のプロセスユニット31を備えている。各プロセスユニット31は、表面上に現像剤であるトナーを担持可能な像担持体としての感光体ドラム32と、感光体ドラム32の表面を一様に帯電させる帯電ローラ33と、感光体ドラム32の表面にトナーを供給する現像装置34と、感光体ドラム32の表面をクリーニングするためのクリーニング手段35等で構成されている。なお、各プロセスユニット31は、カラー画像の色分解成分であるイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの異なる色に対応した4つのプロセスユニット31(31Y,31C,31M,31Bk)からなっており、これらは異なる色のトナーを収容している以外は同様の構成となっている。
【0016】
ベルト装置4は、作像部3の直下に位置する。このベルト装置4は、支持部材としての駆動ローラ41及び従動ローラ42に周回走行可能に張架された無端状ベルトからなる中間転写ベルト43、中間転写ベルト43の表面をクリーニングするクリーニング部44、中間転写ベルト43の外周面を内側に押し込む押し当て部材としての押し当てローラ45、各感光体ドラム32に対して中間転写ベルト43を挟んだ対向位置に配置される転写部材としての一次転写ローラ46等で構成されている。また、クリーニング部44によってクリーニングされた廃トナーを収容する廃トナー収容器47が、中間転写ベルト43の下方に図示しない廃トナー移送ホースを介して配設されている。
【0017】
クリーニング部44は、中間転写ベルト43の外周面上を摺動して中間転写ベルト43の外周面上のトナーをクリーニングするクリーニングブレード44aと、このクリーニングブレード44aに対向する位置で中間転写ベルト43の内周面と接触するクリーニング対向ローラ44bとを有している。
【0018】
プロセスユニット31の感光体ドラム32及びベルト装置4の一次転写ローラ46が、画像形成部48を形成している。
【0019】
一次転写ローラ46は、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの異なる色に対応した4つの感光体ドラム32(32Y,32C,32M,32Bk)に対向した4つの一次転写ローラ46(46Y,46C,46M,46Bk)からなっている。これにより、中間転写ベルト43の走行方向の4箇所に、対をなす感光体ドラム32と一次転写ローラ46とからなる4つの画像形成部48(48Y,48C,48M,48Bk)が形成されている。クリーニング部44は、最上流の画像形成部48Yよりも上流側にあり、かつこれら4つの画像形成部48と直線的に並べた形で配置されている。クリーニング部44のクリーニング対向ローラ44bおよび各一次転写ローラ46(46Y,46C,46M,46Bk)は、駆動ローラ41と従動ローラ42の間に掛け渡した中間転写ベルト43を外側に膨らませるように配置されている。各一次転写ローラ46はそれぞれの位置で中間転写ベルト43の内周面を押圧しており、各一次転写ローラ46と各感光体ドラム32との間にそれぞれ一次転写ニップが形成されている。
【0020】
後述するモノクロモードに対応するため、各一次転写ローラ46のうち、ブラック用画像形成部48Bkの一次転写ローラ46Bkを除き、各一次転写ローラ48Y,48C,48Mは、図示しない駆動機構によりベルト43に対して接離する方向に移動可能に構成される。
【0021】
給紙部5は、画像形成装置本体1の下部に、記録媒体としての記録用紙Pを収容した給紙トレイ51や、給紙トレイ51から記録用紙Pを搬出する給紙ローラ52等からなっている。
【0022】
搬送路6は、給紙部5から搬出された記録用紙Pを搬送する搬送経路であり、一対のレジストローラ61の他、後述する排出部9に至るまで、図示しない搬送ローラ対が経路途中に適宜配置されている。
【0023】
画像二次転写部7は、搬送路6の途中に位置しており、中間転写ベルト43の駆動ローラ41と、中間転写ベルト43を挟んで駆動ローラ41に対向した位置に配置される二次転写ローラ71とからなっている。二次転写ローラ71は中間転写ベルト43の外周面を押圧しており、二次転写ローラ71と駆動ローラ41との間に二次転写ニップが形成されている。
【0024】
画像定着部8は、画像二次転写部7の搬送経路下流に位置しており、図示しない加熱源によって加熱される定着ローラ81、その定着ローラ81を加圧する加圧ローラ82等を有している。
【0025】
排出部9は、画像形成装置本体1の搬送路最下流に設けられ、記録用紙Pを外部へ排出するための一対の排紙ローラ91と、排出された記録媒体をストックするための排紙トレイ92とが配設されている。
【0026】
以下、図1を参照して上記カラー画像形成装置の基本的動作について説明する。
【0027】
画像形成装置において、カラーモードでの画像形成動作が開始されると、各プロセスユニット31Y,31C,31M,31Bkの感光体ドラム32が、図示しない駆動装置によって図の時計回りに回転駆動され、感光体ドラム32の表面が帯電ローラ33によって所定の極性に一様に帯電される。帯電された各感光体ドラム32の表面には、露光部2から形成する画像の色成分毎のレーザ光がそれぞれ照射されて、感光体ドラム32の表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体ドラム32に露光する画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。このように各感光体ドラム32上に形成された静電潜像に、各現像装置34によって現像剤であるトナーが供給されることにより、静電潜像は顕像であるトナー画像(現像剤像)として可視像化される。ここで、現像剤としては、トナーのみからなる一成分現像剤や、トナー及びキャリアとからなる二成分現像剤等を用いることができる。
【0028】
次いで、ベルト装置4の駆動ローラ41が図の反時計回りに回転駆動されることにより、中間転写ベルト43が図の矢印Aで示す方向に走行駆動される。また、各一次転写ローラ46には、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加される。これにより、各一次転写ローラ46と各感光体ドラム32との間の一次転写ニップにおいて転写電界が形成される。そして、各プロセスユニット31Y,31C,31M,31Bkの感光体ドラム32上に形成された各色のトナー画像が、上記一次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、中間転写ベルト43上に転写されて順次重ね合わせられる。かくして各画像形成部48(48Y,48C,48M,48Bk)を通過した中間転写ベルト43の表面には、各画像形成部48における画像を重ね合わせたフルカラーのトナー画像(未定着画像)が形成される。ここで、転写部材としては一次転写ローラ46に限定されることはなく、ブラシ等の導電部材を用いても良い。
【0029】
その後、各感光体ドラム32の表面に付着している残留トナーがクリーニング手段35によって除去され、次いで、その表面が図示していない除電装置によって除電作用を受け、その表面電位が初期化されて次の画像形成に備えられる。なお、感光体ドラム32の表面に付着している残留トナーは、クリーニング手段35を設けず、現像装置34によって回収されるように構成してもよく、その他種々公知のクリーニングを行う手段を用いることができる。また、中間転写ベルト43が駆動ローラ41の回転駆動によって更に走行することにより、表面に形成されたトナー画像は画像二次転写部7に向けて送られる。
【0030】
一方、画像形成装置本体1の下部では、給紙部5の給紙ローラ52が回転駆動することによって、給紙トレイ51に収容された記録用紙Pが搬送路6に送り出される。搬送路6に送り出された記録用紙Pは、レジストローラ61によってタイミングを計られて、画像二次転写部7の二次転写ローラ71とそれに対向する駆動ローラ41との間の二次転写ニップに送られる。ここで、中間転写ベルト43の表面に形成された上記のフルカラーのトナー画像が記録用紙Pに転写される。このとき二次転写ローラ71には、中間転写ベルト43上のトナー画像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、これにより、二次転写ニップに転写電界が形成されている。そして、二次転写ニップに形成された転写電界によって、中間転写ベルト43上のトナー画像が記録用紙P上に一括して転写(引力転写)される。
【0031】
なお、画像二次転写部7において、駆動ローラ41にトナー帯電極性と同じ極性の転写電圧を印加することにより、駆動ローラ41とトナーとの間の反発力によってトナー画像を記録用紙Pに転写しても良い(斥力転写)。
【0032】
その後、中間転写ベルト43上に付着している残留トナーは、クリーニング部44のクリーニングブレード44aによって除去される。除去されたトナーは、図示しないスクリューや廃トナー移送ホース等により廃トナー収容器47へ搬送され回収される。
【0033】
続いて、トナー画像が転写された記録用紙Pは画像定着部8へと搬送され、加熱されている定着ローラ81と加圧ローラ82によって記録用紙Pが加熱及び加圧されてトナー画像が記録用紙Pに定着される。そして、トナー画像が定着された記録用紙Pは、図示しない搬送ローラ対によって搬送され、排出部9において排紙ローラ91によって排紙トレイ92へと排出される。この定着作業は画像二次転写部7で行ってもよい。
【0034】
次に、図2及び図3に基づいて、本発明に基づく画像形成装置のベルト装置4について詳しく説明する。
【0035】
図2に示すように、このベルト装置4では、押し当てローラ45は、中間転写ベルト43の走行方向において最上流の画像形成部48Yとクリーニング部44との間(より詳細には最上流の一次転写ニップと、クリーニング対向ローラ44bに対するクリーニングブレード44aの接触部との間)の固定位置に設けられている。この押し当てローラ45により、中間転写ベルト43は、最上流の感光体ドラム32Yとクリーニング対向ローラ44bとの間に掛け渡したベルト張架線よりも内側に押し曲げられた逆屈曲状態となる。
【0036】
このように、画像形成部48Yとクリーニング部44との間に押し当てローラ45を配置することにより、クリーニングされた状態の中間転写ベルト43の表面に対して押し当てローラ45を押圧することができる。よって、中間転写ベルト43上の転写残トナー等が押し当てローラ45の表面に付着するのを防止することができ、また、押し当てローラ45に付着した転写残トナー等が中間転写ベルト43に再付着してベルト43を汚染し、画像品質に悪影響を与えるのを防止することができる。これによって中間転写ベルト43の長寿命化を図ることができ、ひいては安定した画像品質を有するカラー画像形成装置を提供することが可能となる。
【0037】
本発明とは逆に、押し当てローラ45をクリーニング部44よりも上流側に配置した場合、上記の不具合を防止するために、例えば押し当てローラ45にトナーと同極性のバイアスを印加し、あるいはローラ45の表面をフッ素樹脂等の低摩擦材料でコーティングする等して、押し当てローラ45への転写残トナーの付着を防止する必要があり、コストアップを招く。これに対し、上記のように押し当てローラ45を最上流の画像形成部48Yとクリーニング部44との間に配置すれば、高品質画像が低コストに得られる。
【0038】
図3は、上記ベルト装置4の拡大図である。図3に示すように、押し当てローラ45により中間転写ベルト43を逆屈曲させることで、クリーニング対向ローラ44bの外周面に対する中間転写ベルト43の巻きかけ角αが大きくなる。この巻きかけ角αの範囲内において、後述する線圧Fでクリーニングブレード44aが中間転写ベルト43に対して摺動する。このように、十分な巻きかけ角αを確保することにより、中間転写ベルト43の安定した走行及びクリーニングブレード44aによる安定したクリーニングを行うことができる。
【0039】
押し当てローラ45を使用しない場合、巻きかけ角αの増大は、図9に示すように、例えばクリーニング対向ローラ44bの外側へのオフセット量(駆動ローラ41中心と従動ローラ42中心を結ぶ線から離反する方向のオフセット量)を増すことでも実現できる。しかし、これではベルト装置4の厚さ寸法が大きくなると共に、クリーニング対向ローラ44bと駆動ローラ41の上下方向の配置自由度が制約を受け、設計自由度の低下や画像形成装置の大型化を招く。これに対し、上記のように押し当てローラ45を用いて中間転写ベルト43を逆屈曲状態にすれば、押し当てローラ45による内側への押し込み量を増すことで、巻きかけ角αを増大させることができる。従って、クリーニング対向ローラ44bを外側に大きくオフセットさせる必要がなく、ベルト装置4の厚さ寸法の増大を抑えて、ベルト装置のコンパクト化を図ることができる。
【0040】
以上に述べた画像形成装置において、カラーモードからモノクロモードに切り替えられた際には、図4に示すように、一部の画像形成部、すなわちモノクロモードでの使用色以外の画像形成部(例えばカラー用画像形成部48Y,48C,48M)において、一次転写ローラ46Y,46C,46Mの駆動機構を起動し、これら一次転写ローラ46Y,46C,46Mを中間転写ベルト43から離反する方向に移動させる。その一方で、他の画像形成部、すなわち使用色に対応する画像形成部(例えばブラック用画像形成部48Bk)では、一次転写ローラ46Bkを移動させず、一次転写ニップを形成したままとする。
【0041】
本発明では、押し当てローラ45で中間転写ベルト43を外側から内側に押し込んで逆屈曲させているため、一次転写ローラ46Y,46C,46Mの移動に伴い、中間転写ベルト43がカラー用画像形成部48Y,48C,48Mの感光体ドラム32Y,32C,32Mから離反した非接触状態となる。これに伴い、中間転写ベルト43は、最下流のブラック用画像形成部48Bkの一次転写ローラ46Bkと押し当てローラ45との間で支持される。そのため、印刷中には、カラー用感光体ドラム32Y,32C,32Mを停止させることができ、ドラム表面の摩耗低減や省電力化を図ることができる。この時、カラー用一次転写ローラ46Y,46C,46Mの移動は、これらのローラが中間転写ベルト43に対して非接触となる位置まで行うのが望ましい。
【0042】
モノクロモードに対応するため、図2及び図4に示すように、カラー用感光体ドラム32Y,32C,32Mの回転中心を一直線上に配置すると共に、この直線を、押し当てローラ45とブラック用一次転写ローラ46Bkとの間に掛け渡したベルト張架線と平行にするのが望ましい。これにより、カラー用感光体ドラム32Y,32C,32Mと中間転写ベルト43との間の間隙dを各画像形成部48で一定にすることができ、カラー用感光体ドラム32Y,32C,32Mと中間転写ベルト43との接触を確実に防止することができる。この場合、ブラック用感光体ドラム32Bkの回転中心は、カラー用感光体ドラム32Y,32C,32Mの回転中心よりもベルト43への接近側に配置するのが望ましい。
【0043】
本発明のように、押し当てローラ45を最上流の画像形成部48Yとクリーニング部44との間に配置しておけば、一次転写ローラ46Y,46C,46Mを中間転写ベルト43から離反する方向に移動させ、あるいは中間転写ベルト43に接触するように復帰移動させる何れの場合でも、移動の前後でクリーニング対向ローラ44bにおける巻きかけ角αが変化しない。そのため、クリーニング部44でのクリーニング効果をカラーモードとモノクロモード間で均一化することができる。
【0044】
なお、以上の説明では、各色の画像形成部48をベルト43の搬送方向下流側に向けてイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの順で配置する場合を例示したが、各色の配置順序はこれに限られない。また、複数かつ一部の画像形成部48を使用して画像形成を行い、残りの画像形成部48を使用しない場合にも、上記と同様に、使用しない画像形成部48の一次転写ローラ46をベルトに対して非接触となる位置まで移動させ、使用色に対応する画像形成部48の一次転写ローラ46と押し当てローラ45とでベルト43を支持し、残りの画像形成部48の感光体ドラム32と中間転写ベルト43とを非接触にすることもできる。さらに、以上の説明では、一部の一次転写ローラ(ブラック用一次転写ローラ46Bk)を固定位置に配置しているが、この一次転写ローラ46Bkを他の一次転写ローラ46Y,46C,46Mと同様に、ベルト43に対する接離方向に移動可能としても構わない。すなわち全ての一次転写ローラ46Y,46C,46M,46Bkをベルト43に対する接離方向に移動可能に構成してもよい。
【0045】
本実施形態のカラー画像形成装置において、例えば、平均円形度が0.98以上の球形のトナーを使用する場合、クリーニングブレード44aによるトナーのクリーニング性を十分に確保するためには、中間転写ベルト43に対するクリーニングブレード44aの線圧Fを、少なくとも40N/m以上に設定する必要がある。ここで、上記中間転写ベルト43に対するクリーニングブレード44aの線圧Fとは、クリーニングブレード44aに付与する総荷重をクリーニングブレード44aの中間転写ベルト43に押し当てる先端稜線部の長さで割った値である。
【0046】
また、トナーの平均円形度については、フロー式粒子像分析装置FPIA−2000(東亜医用電子株式会社製、商品名)を用いて測定することが可能である。具体的には、容器中の予め不純固形物を除去した水100ml〜150ml中に、分散剤として界面活性剤好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1ml〜0.5ml加え、更に測定試料(トナー)を0.1g〜0.5g程度加える。その後、このトナーが分散した懸濁液を、超音波分散器で約1〜3分間分散処理し、分散液濃度が3000万個/μl〜1万個/μlとなるようにしたものを上記分析装置にセットして、トナーの形状及び分布を測定する。そして、この測定結果に基づき、トナー投影形状の外周長をLt(図7)、その投影面積をSとし、この投影面積Sと同じ真円の外周長をLc(図8)としたときのLc/Ltを求め、その平均値を円形度とする。
【0047】
本実施形態では、平均円形度が0.98以上の球形のトナーを使用する場合、クリーニングブレード44aの線圧F1を45N/mに設定している。このように、クリーニング性を十分に確保するためにクリーニングブレード44aの線圧F1を40N/m以上に設定すると、中間転写ベルト43の走行方向への移動に対するクリーニングブレード44aの抵抗が増す。そのため、クリーニングブレード44aと中間転写ベルト43との当接位置よりもベルト走行方向の上流側において中間転写ベルト43の弛みが発生し、振動(挙動)が不安定になりやすい。しかし、本実施形態では、押し当てローラ45によって中間転写ベルト43を押圧することにより、中間転写ベルト43に張力が付与されるため、中間転写ベルト43の弛みの発生を抑制することができる。
【0048】
以上の説明では、押し当てローラ45を固定位置に配置する場合を例示したが、図5に示すように、押し当てローラ45は中間転写ベルト43に対する接離方向に移動可能に構成しても良い。このように構成することにより、例えばベルト装置4が停止している非使用時には、押し当てローラ45を中間転写ベルト43に対して離間する位置に移動した状態としておくことができるので、押し当てローラ45への長時間の押圧により中間転写ベルト43に押し跡やカール癖がつくことを防止できる。
【0049】
このように押し当てローラ45を中間転写ベルト43から離間させた状態でも、図中の二点鎖線で示すように、中間転写ベルト43が感光体ドラム32(特にモノクロモードでの印刷時に中間転写ベルト43と非接触になる感光体ドラム32Y,32C,32M)に対して非接触となるようにクリーニング対向ローラ44bの位置を設定するのが望ましい。なお、感光体ドラム32と中間転写ベルト43が共に停止している状態であれば、感光体ドラム32と中間転写ベルト43は接触していても構わない。
【0050】
画像二次転写部7の二次転写ローラ71は、図示しない離接機構によって中間転写ベルト43に対して離接可能に構成しても良い。それにより、画像形成動作を行わないときは、二次転写ローラ71を中間転写ベルト43に対して離間させておくことにより、二次転写ローラ71と中間転写ベルト43が接触したまま長時間停止することによる二次転写ローラ71や中間転写ベルト43の表面の塑性変形(クリープ)を防止することができる。
【0051】
ところで、各画像形成部48(48Y,48C,48M,48Bk)にて中間転写ベルト43上にトナー画像を一次転写させる際、及び画像二次転写部7にてトナー画像を記録用紙Pに転写する際には、中間転写ベルト43に対して、一次転写ローラ46や二次転写ローラ71により転写バイアスが付与される。そのため、画像二次転写部7を通過した後の中間転写ベルト43の表面に、残留電位を生じている場合がある。この場合、中間転写ベルト43表面の残留電位によるチャージアップを避けるために、押し当てローラ45に導電性を付与し、これを接地(アース)させるのが望ましい。例えばローラを金属(導電性金属)で形成すれば、かかる導電性ローラが低コストに得られる。
【0052】
また、押し当てローラ45の表面をゴムやスポンジなどの弾性体で形成すれば、中間転写ベルト43の表面に対する攻撃性が弱まるので、中間転写ベルト43の長寿命化を図ることができる。この時、押し当てローラ45表面の弾性体として導電性を有するものを使用すれば、残留電位によるチャージアップを防止することも可能となる。
【0053】
更に、本実施形態においては、押し当て部材として回転可能な押し当てローラ45を用いた例を示したが、これに限るものでなく、例えばパッドや押圧バーのような非回転部材を押し当て部材として使用しても構わない。このような非回転部材を使用する場合、ベルトとの摺動部にフッ素樹脂等の低摩擦被膜を形成するのが望ましい。
【0054】
また、感光体ドラム32や一次転写ローラ46の設置数は4つに限ることはなく、3つ以下または5つ以上を設置しても良い。
【0055】
また、本実施形態のベルト装置4においては、一次転写ローラ46を、中間転写ベルト43を挟んで感光体ドラム32の直下に配置したが、これに限らず、図6に示すように、感光体ドラム32の中心から中間転写ベルト43に向けて引かれた垂線よりずれた位置(オフセット位置)に一次転写ローラ46を配置しても良い。その場合も同様に、クリーニング対向ローラ44bに対する中間転写ベルト43の巻きかけ角αを十分に確保することができ、クリーニング対向ローラ44bによる安定したベルト走行及びクリーニングブレード44aによる安定したクリーニングを行うことができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。上述の実施形態は、本発明の構成をベルト装置に適用したものであるが、本発明の構成は、表面に静電潜像を担持する静電潜像担持体としての感光体ベルト等を駆動させるベルト装置にも適用可能である。また、本発明に係る画像形成装置は、図1に示すカラー画像形成装置に限らず、モノクロ画像形成装置や、その他の複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等であっても良い。
【符号の説明】
【0057】
1 画像形成装置本体
32 感光体ドラム(像担持体)
4 ベルト装置
43 中間転写ベルト(ベルト)
44 クリーニング部
44a クリーニングブレード
44b クリーニング対向ローラ
45 押し当てローラ(押し当て部材)
46 一次転写ローラ(転写部材)
48 画像形成部
α 巻きかけ角
d 間隙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0058】
【特許文献1】特開2008−009011号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対をなす転写部材および像担持体をそれぞれに備えた複数の画像形成部を順次通過する無端状のベルトと、各画像形成部を通過したベルトの外周面をクリーニングするクリーニング部と、前記ベルトの外周面を押圧する押し当て部材とを備え、かつ画像形成部の転写部材をベルトに対する接離方向に移動可能としたベルト装置において、
前記押し当て部材をクリーニング部と最上流の画像形成部との間に配置し、一部の画像形成部の転写部材をベルトからの離反方向に移動させた状態で、他の画像形成部の転写部材と押し当て部材とでベルトを支持したことを特徴とするベルト装置。
【請求項2】
前記クリーニング部に、ベルトの外周面上を摺動するクリーニングブレードと、クリーニングブレードに対向する位置でベルトの内周面と接触するクリーニング対向ローラとを設け、前記押し当て部材の押圧によりクリーニング対向ローラにベルトを巻きかけたことを特徴とする請求項1に記載のベルト装置。
【請求項3】
前記一部の転写部材をベルトに対する接離方向に移動させる前後で、クリーニング対向ローラに対するベルトの巻きかけ角が一定であることを特徴とする請求項2に記載のベルト装置。
【請求項4】
前記一部の画像形成部を、最下流の画像形成部以外の画像形成部とし、前記他の画像形成部を最下流の画像形成部としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のベルト装置。
【請求項5】
前記押し当て部材の位置を固定したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のベルト装置。
【請求項6】
前記押し当て部材の位置を、前記ベルトに対する離接方向に移動可能にしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のベルト装置。
【請求項7】
前記押し当て部材は、導電性を有するローラからなり、前記ローラは接地されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のベルト装置。
【請求項8】
前記押し当て部材は、表面が弾性体で形成されたローラであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のベルト装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のベルト装置と、前記複数の画像形成部と、ベルト装置のベルトに形成された未定着画像を記録媒体に転写する画像二次転写部と、記録媒体に転写された画像を定着させる定着部とを備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−19950(P2013−19950A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150913(P2011−150913)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】