説明

ベルト

ベルト本体内部に配置される抗張心線と、連続して接続されかつ歯頂部と歯元部の間に配置される、少なくとも2つの不等の半径を有する外形を有し、ベルト本体から突出する歯と、歯を受けるための溝を有するとともに、溝の外形が、少なくとも2つの不等の半径の間に配置される少なくとも1つの実質的に直線の部分を備えるスプロケットと、歯元部間で抗張心線に実質的に弧状の形状を持たせる方法で、抗張心線が支持されるように、スプロケット溝の所定部分に噛み合う歯頂部とを備えるベルト・スプロケットシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯元部間で抗張心線に実質的に弧状の形状を持たせる方法で、抗張心線が支持されるように、スプロケット溝の所定部分に噛み合う歯頂部を有するベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術のベルト・スプロケットシステムは、モールドの溝外形に基づいており、ベルト歯頂部とプーリ溝底部の間にクリアランスを要求する。硬化後のベルト高さには、このベルト歯頂部とプーリ溝底部の間のクリアランスを増大させるいくらかの縮みがある。このクリアランスは、ラック形状のベルト歯がスプロケット溝に噛み合うときに、ベルトのピッチラインを、プーリ溝の上方で弦状(chordal)にする。ベルトピッチラインが、駆動及び従動スプロケット歯によって繰り返し上昇・下降するとき、従動スプロケットの角速度が交互に増加・減少する。このコギング動作(cogging action)は、自転車ベダルクランクアームによって増幅され、そして、例えば自転車の乗り手によって、振動として感じられることがある。
【0003】
代表的な技術は、歯付き動力伝達ベルト・プーリシステムを開示したミラー(Miller)の米国特許第3756091号明細書があり、ベルトが、そこに保持(secured)される歯がある無端状の実質的に非伸縮性の抗張部材を有し、歯が、嵌め合い共役の曲線プーリ歯に噛み合うために、2つの交わる円弧から構成される断面形状を有することが開示される。歯のサイズ、曲率半径長さ、及び交差角や交差点は、そこに列挙された一連の設計基準や公式によって設定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
要求されるのは、歯元部間で抗張心線に実質的に弧状の形状を持たせる方法で、抗張心線が支持されるように、スプロケット溝の所定部分に噛み合う歯頂部を有するベルトである。本発明はこの要求に合致する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の主たる特徴は、歯元部間で抗張心線に実質的に弧状の形状を持たせる方法で、抗張心線が支持されるように、スプロケット溝の所定部分に噛み合う歯頂部を有するベルトを提供することにある。
【0006】
本発明の他の特徴は、以下の本発明の記述及び添付図面によって、指摘され若しくは明らかにされる。
【0007】
本発明は、ベルト本体内部に配置される抗張心線と、連続して接続されかつ歯頂部と歯元部の間に配置される、少なくとも2つの不等の半径を有する外形を有し、かつベルト本体から突出する歯と、歯を受けるための溝を有するとともに、溝の外形が、少なくとも2つの不等の半径の間に配置される少なくとも1つの実質的に直線の部分を備えるスプロケットと、歯元部間で抗張心線に実質的に弧状の形状を持たせる方法で、抗張心線が支持されるように、スプロケット溝の所定部分に噛み合う歯頂部とを備えるベルト・スプロケットシステムを備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
添付図面は、本明細書に組み込まれかつ一部を形成し、本発明の好ましい実施形態を示し、かつ記載とともに本発明の本質を説明する役割を果たす。
【図1】弦状効果を示す従来技術のベルト及びスプロケットの外形である。
【図2】本発明のスプロケット溝の側面図である。
【図2a】具体例の寸法の表である。
【図2b】具体例の寸法の表である。
【図3】本発明のベルト歯の側面図である。
【図3a】具体例の寸法の表である。
【図3b】具体例の寸法の表である。
【図4】溝内部における本発明のベルトの側面図である。
【図5】本発明のベルト歯及びスプロケットの代替的な実施形態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、弦状効果を示す従来技術のベルト及びスプロケットの外形である。従来技術の歯付きベルトシステムは、ピッチライン(C)を有するベルトを備える。ピッチラインは、一般的にベルト本体内部に位置する抗張心線Tに一致するが、必ずそうなるわけではない。抗張心線は、ベルト駆動システムにおいて、ベルト使用中にベルト荷重を負荷する。図1は、ベルトとスプロケットの側面図である。当技術において、“歯”はベルト幅を横切って配置され、かつ典型的には抗張心線に垂直に配置される。
【0010】
歯付きベルトは、典型的には溝(D)を有するスプロケット(S)に噛み合う。ベルト歯(E)は、スプロケット溝(D)に噛み合う。図1は、1つのベルト歯に噛み合うスプロケットの一部を示すものである。典型的には多数の歯が、各スプロケットに噛み合う。
【0011】
ベルトは、部分(A)及び(B)を含むスプロケットの外周面を押し付ける。スプロケットは一般的に、歯付きベルトに噛み合う機械的デバイスを備える。スプロケット上の各溝は、回転軸に平行に延在する。
【0012】
使用中、AとBの間のピッチライン“スパン”は、ピッチライン(C)及びそれ故抗張心線Tを、AとBの間で実質的に直線にする。これは、製造中に、歯にいくらかの縮みがあるからであり、またはクリアランスが要求されることがあるかもしれないからである。このことは、結果として溝底部Gと歯頂部Hの間に、ギャップを生じさせ、又は非荷重状態とすることがある。これは次に、ラック形状のベルト歯がスプロケット溝に噛み合うときに、ベルトのピッチラインが、プーリ溝部分(A及びB)の上方で弦状(直線)となるようにする。点A及びBは、およそスプロケットが歯元部に噛み合うところである。
【0013】
結果として、ベルトピッチラインがスプロケット歯によって上昇・下降するとき、スプロケットの角速度が交互に増加・減少する。このことは、ベルト駆動システムにおいて、例えば自転車上で使用者によって感知され得る望ましくない振動を生じさせることがある。
【0014】
図2は、本発明のスプロケット溝の側面図である。本発明のシステムは、ベルトとスプロケットとを備える。
【0015】
一例のスプロケット溝は、図2aに示されるように、大きさが示される。図2a及び図3aの値は、単なる例として与えられたものであって、本発明の範囲を限定することが意図されるわけではない。
【0016】
溝は、ともにつながれる中心線CL中心の2つの半割り10及び20を備える。各半分は、連続して接続される3つの半径(ラジウス)R1、R2及びR3を備える。実質的に直線の部分S1は、R3とR4の間に接続される。本明細書で述べられる各半径は、1つの円の一部であって、各半径が意味することは実質的に一定である。代替的な実施形態では、各半径R1又はR2又はR3は、使用状態によって要求されるであろう、dR/dxの関数として変化しても良い。
【0017】
さらに、溝の各半分の各半径R1は、直線部分S2によって接続される。各部分S1及びS2は、使用中の溝への歯の噛み合いを容易にするために、溝と歯の間に所定のクリアランスを提供する。
【0018】
本発明のベルト本体は、いかなる従来の及び/又は適当な硬化された又は熱可塑性のエラストマー組成物を備えていても良い。本目的のために使用されるであろう適当なエラストマーは、例えばポリウレタンエラストマー(なお、ポリウレタン/ウレアエラストマーを含む)(PU)、ポリクロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、水素化NBR(HNBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレン(ACSM)、エピクロヒドリン、ポリブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、及びエチレンプロピレン共重合体(EPM)、エチレンプロピレンジエン三元共重合体(EPDM)、エチレンオクテン共重合体(EOM)、エチレンブテン共重合体(EBM)、エチレンオクテン三元共重合体(EODM)、及びエチレンブテン三元共重合体(EBDM)のようなエチレン−α−オレフィンエラストマー、並びにシリコンゴム、又はこれらのいかなる2以上の組み合わせを含む。抗張心線は、例えばプライされ又はブレイズにされ、いかなる適当な及び/又は従来の構造において、ポリエステル、炭素繊維、金属ワイヤ、ナイロン、アラミド、ガラス、又はこれらのいかなる2以上の組み合わせを備えていても良く、かつ、一般的にそれら自体が例えばプライされ又はブレイズにされ、いかなる適当な及び/又は従来の構造から成るとともに、一般的に1本又は複数本のヤーンを備えても良い、1本又は複数本のストランドを備えても良い。“ヤーン”は、撚りヤーン又は無撚りヤーンを含んでも良い、ヤーン製造業者から受け取った形状のフィラメント又は繊維の束に言及する。“ストランド”は、コード成形の中間工程として撚られ、プライされ、ブレイズにされた1本のヤーン又は複数のヤーンに言及する。
【0019】
図3は、本発明のベルト歯の側面図である。歯外形は、半径R5、R6及びR7を備え、各半径は、点P4及びP1の間で連続的につながれている。参考のために、点P4は、中心線CL1上に配置される。点P1は、歯元部50、51に配置される。図2の溝外形の場合に対しては、歯外形に含まれる直線部分はない。点P1、P2、P3及びP4のデカルト座標位置の具体例の寸法値は、図3aに含まれる。
【0020】
図4は、溝内部の本発明のベルト歯の側面図である。歯と溝の間で僅かに寸法が異なるために、歯と溝の側面間に配置される2つのギャップ(α1)及び(α2)がある。本実施形態では、歯頂部は、溝底部に接触する。
【0021】
溝底部内部の歯端部における捕捉(capture)ゾーンβも開示されており、歯は溝内部で“捕捉”されている。このことは使用中に、部分30を参照する抗張心線Tの上覆い部分を、実質的に弧状の形状で支持する方法で、歯頂部が溝底部内部において荷重下で圧縮されることを意味する。しかしながら、歯全体が完全に圧縮されているわけではなく、代わりにそれは、溝底部と点P5の間の溝を占める歯の一部分のみである。これは、中心線CLの各側部における半径部分R1にも一致する。
【0022】
使用中にベルト及び歯が完全に噛み合わされるとき、歯材料は、実質的にギャップ(α1)及び(α2)を占めるように、伸張される。このことは、抗張心線の部分30がゾーンβ内部の材料によって支持されるのと同時に起こる。支持した結果、抗張心線Tは、図5を参照すると、歯元部50、51の間において半径RTで実質的に弧状の形状をとる。このことは結果として、使用中のベルト振動を顕著に減少させる。
【0023】
具体例の寸法は、図2aに並べられる。全ての寸法への言及は、原点(0,0)に対するものである。ゾーンβの上部のおよその位置は、座標(0,0)から距離“x”にある。
【0024】
図5は、本発明のベルト歯及びスプロケットの代替的な実施形態の側面図である。本実施形態では、溝底部内部にギャップすなわち材料の欠落がある。このことは結果として、歯頂部がその内部に僅かに伸張されるであろう、自由体積ζをもたらす。しかしながら、歯はF及びGにおいて溝を押し付ける。F及びGの間の歯頂部表面の部分100は、等しく分布された荷重によって単に支持されるビームに近似する。歯頂部の欠如及び自由体積ζは、スロットとしても参照される、溝底部の部分200の削除によっても達成され得る。
【0025】
部分100の幅は、システムの使用状態に従って調整されても良い。本実施形態では、表面部分100は、実質的に平坦である。座標0,0は、抗張心線Tから所定距離“Y”で配置される。
【0026】
本発明の形状がここでは述べられたが、変形は、ここで述べられた本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者によって構造において及び部分に関してなされても良いことは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト本体内部に配置される抗張心線と、
連続して接続されかつ歯頂部と歯元部の間に配置される、少なくとも2つの不等の半径を有する外形を有し、前記ベルト本体から突出する歯と、
前記歯を受けるための溝を有するとともに、前記溝の外形が、前記少なくとも2つの不等の半径の間に配置される少なくとも1つの実質的に直線の部分を備えるスプロケットと、
前記歯元部間で前記抗張心線に実質的に弧状の形状を持たせる方法で、前記抗張心線が支持されるように、前記スプロケット溝の所定部分に噛み合う歯頂部と
を備えるベルト・スプロケットシステム。
【請求項2】
前記溝が、隣接しかつ実質的に等しい半径の間の溝底部に配置される、第2の実質的に直線の部分をさらに備える請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記歯頂部は、実質的に平坦である請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記溝底部の部分が省略され、スロットが形成される請求項1に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−506875(P2011−506875A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537947(P2010−537947)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【国際出願番号】PCT/US2008/013524
【国際公開番号】WO2009/078930
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(504005091)ザ ゲイツ コーポレイション (103)
【Fターム(参考)】